オープン化と制御システムセキュリティ対策 · Agenda 1. 制御装置や制御システムにとってのサイバー 攻撃の脅威 2. オープン化と制御システムセキュリティ対策
システム制御理論は現代制御理論とも呼ばれ,いわゆる2-5-4代...
Transcript of システム制御理論は現代制御理論とも呼ばれ,いわゆる2-5-4代...
は し が き
システム制御理論は現代制御理論 とも呼ばれ,いわゆる
古典制御理論では設計の難しかった多変数制御 システムの
設計に有効に利用できることが知 られている.
この現代制御理論は,古典制御理論に比べ抽象的でわか
りに くいといわれている.その理由は,古典制御理論では
数学的記述が少なく,設計論 とい う立場がとられているの
に対し,現代制御理論では,理論の展開に重点が置かれて
きたため,実際にどのように利用したらよいか把握しに く
かったためであろう.
しかし,微分方程式でシステムを記述する工学の多 くの
分野,さらには,社会 ・経済学などでは,システムの安定
論,構造分析,制御などを問題にしてお り,状態方程式を
もとにこれ らを統一的に論ずる現代制御理論は,それぞれ
の分野の共通基礎としても利用 され,古典制御理論よりも
普遍的な学問といえよう.
本書は,このような観点から,設計論を重視し,システ
ム制御理論を平易に解説したものであ り,とくに,次の点
を工夫した.基本定理については,その物理的意味が把握
できるように,適切な例題を設けた.また,本質を失わな
い程度でその証明をやさしくしたが,これをとばして読み
進めても,設計法 として利用できるように配慮した.
以上の諸点から本書は, 大学学部, 工専の学生, およ
び,システム制御理論を利用されようとする技術者の入門
書に適していると思われる.
本書がシステム制御理論の発展に少しでも役立てば幸い
である.
終わ りに, 本書をま とめ るにあた り御助言を頂 き, ま
た,筆者の一人が日頃から御指導頂いている,東京工業大
学,古田勝久助教授に感謝いたします.また,グラフ作成
に助力頂いた千葉大学大学院学生須藤栄一君,いろいろお
世話頂いた実教出版富樫浩,梅沢俊介各氏に併せて謝意を
表します.
昭和54年8月
小 郷 寛
美 多 勉
目 次
第1章 動 的 シス テ ム と状 態 方程 式1
1-1動 的 シス テ ム と静 的 シ ス テ ム1
1-2電 気 シス テ ム と状態 方 程 式4
1-3機 械 シス テ ム と状態 方 程 式5
1-4電 気-機 械 シス テ ム と状 態方 程 式6
1-5ブ ロ ック線 図 と状態 方 程 式7
1-6非 線形 シス テ ムの線 形 化 と タ ン クシ ステ ム9
1-7ラ グ ラ ンジ ェの 運動 方 程 式 と状 態 方 程 式13
第2章 行 列 論20
2-1行 列 お よ び ブ ロッ ク行 列 の和 算 , 乗 算21
2-2行 列 式24
2-3逆 行 列25
2-4転 置 行 列28
2-5ベ ク トル の線形 独立 性 と行列 の ラ ン ク29
2-5-1ベ ク トルの線形独立性 (29)
2-5-2行 列 の ラ ン ク (30)
2-5-3ベ ク トルの線形独立性と行列の ランクとの関係 (32)
2-5-4代 数方程式 の解 とその存在条件 (33)
2-6固 有 値 , 固 有 ベ ク トル と対角 化 お よび ジ ョル ダ ン形 式34
2-6-1固 有値,固有ベ ク トルと対角化 (34)
2-6-2対 称行列の対角化 (36)
2-6-3ジ ョルダン形式への変換 (38)
2-7行 列 の トレース44
2-82次 形 式 と正定 関数 , お よび正 定 行 列45
2-8-12次 形式 と正定関数 (45)
2-8-2正 定,準正定行列 (45)
2-9行 列や ベ ク トル の微 分 , 積分48
2-10行 列 関 数 とケ ー リー ・ハ ミル トンの定理49
2-10-1行 列関数とexp(At) (49)
2-10-2ケ ー リー ・ハミル トンの定理 と最小多項式 (51)
2-11ベ ク トル空 間 と線 形変 換52
2-12静 的最 適 化 とラ グ ラ ンジ ェの未 定 定 数法55
第3章 状 態 方程 式 の解 とシ ス テ ムの 安 定性 理 論61
3-1線 形 時 不変 シス テ ムの応 答 と状 態推 移 行 列61
3-2種 々の 応答 計 算 法66
3-2-1ラ プ ラス変換に よる方法 (66)
3-2-2計 算機を利用 した応答計算 (67)
3-3線 形 時不 変 シス テ ムの漸 近 安定 性69
3-3-1漸 近安定性 とシステムの極 (69)
3-3-2ラ ウス ・フルビ ッツの安定判別法 (71)
3-3-3リ アプノフ方程式 と安定判別 (74)
3-3-4出 力の2乗 積分値の計算 (76)
3-4リ ア プ ノ フの安 定 性 理 論79
第4章 可制 御 性 , 可観 測 性 と線 形 シ ステ ム の構 造85
4-1可 制 御 性 , 可観 測 性 とそ の 双対 性86
4-2伝 達 関 数 行 列 と状 態 変 数変 換92
4-2-1伝 達関数行列 と極,零点 (92)
4-2-2状 態変数変換 とシステムの等価性 (94)
4-31入 力1出 力 シス テ ム の正 準形 式 とそ の応 用96
4-3-1対 角正準形式 とその応用 (97)
4-3-2可 制御正準形式 とその応 用 (101)
4-3-3可 観測正準形式 (105)
第1章
動的システムと状態方程式
こ こでは ,動的システム (dynamical system) の 定 義 と,い ろい ろな動 的 シス テ ム
の数 式表 現 を求 め る方 法 につ い て述 べ る.
1-1動 的 シ ス テ ム と静 的 シ ス テ ム
入力 (input)があ り, それ とな ん らか の因 果関 係 を保 ち なが ら出力 (output)を
出 す機 構 や 自然環境 を 一般 に システム (system), または , 系 と呼 ぶ . た とえば,
図1-1の 電 流 計は 入 力 と して端 子 間 に流れ る電流 を と り,
出 力 として指 針 の位 置 を とれ ば,1つ の シス テ ム とな る.
あ る時 刻 で の出 力が そ の時 刻 の 入力 だけ に 依存 す る シス
テ ムを静的 システム (Static system) と呼ぶ . また 出力 が, そ
の 時 刻, お よび過 去 の入 力や ,現 象 が始 ま った ときの 内部
状 態 に依 存す る シス テ ムを 動的システム と呼 ぶ. したが っ
て ,動 的 シス テ ムにお い ては ,過 去 の 入力 を 記憶 した り,
内 部状 態 を表 現 した りす る中 間変 数 が必 要 とな る. この 中間 変 数 は状態変数 (state
variable)と呼ば れ る (図1-2参 照).
1つ の シス テ ムで も,扱 い 方 に よっては
静 的 シ ステ ム と も動 的 シス テ ム ともみ な さ
れ る. た とえば ,電 流 計 では 指針 の位置 が
一 定 に落 ち着 くまで の時 間を 無視 す れば ,
10Aの 電 流 が流 れ た とき指針 は10Aの 目盛 を指 す. よって電 流 計は , 入 力の 電
流値 を1倍 して 出力 の 目盛 を指 示 す る静 的 シス テ ム とい え る. また,5Aの 電 流
図1-1 電流計
図1-2 動 的 シス テ ム
が 流 れ , 指針 が5Aの 目盛上 で静 止 して い る と き, 急 に10Aの 電 流 を流 す と,
指 針 は5Aか ら10Aの 目盛 へ移 動 す る. 指 針 が移 動 す る時 間 内 を 考 えれ ば, そ
の位 置 は刻 々変 わ り, あ る時刻 で の指 針 の位 置 は, そ の 時刻 での 入 力10Aば か
りで な く, 過 去 の入 力5Aに も依 存 す る. よ って, 動 的 シ ス テ ム と もい え る.
す なわ ち , 静 的 シス テ ムは定 常状 態 に ある シ ス テ ムを表 現 し, 動 的 シス テ ムは
過 渡 状 態 に あ る シス テ ム を表 現 し て い る.
同 じ理 由か ら, 直 流 回路 論 , 交流 回路 論 は 静的 シス テ ム, 過 渡 回路 論 は 動 的 シ
ス テ ム の立場 か ら回 路 をみ た とき の学 問 で あ る.
一 般 に , 静的 シス テ ム は代 数 方程 式 で ,動 的 シス テ ムは 微 分方 程 式 を使 って記
述 す る こ とがで き る. さ らに, 常 微 分 方 程式 で表 現 され る動 的 シ ス テ ムを集中定
数システム (lumped parameter system), 偏微 分 方 程 式 で表 現 され る動 的 シス テ ムを
分布定数 システム (distributed parameter system) とし て区 別す る. 本 書 で は, 以 下
集 中定 数 シ ステ ムだ け を 扱 う.
さて, 状 態変 数 がx1(t),x2(t),… ,xn(t)のn個 , 入 力変 数がu1(t),u2(t),
…,um(t)のm個 , 出 力 変数 がy1(t),y2(t),…,yl(t)のl個 で記 述 され る シス
テ ムを考 え て い こ う. これ らを ベ ク トル に ま とめ
(1-1)
と し て お く.x(t) ,u(t),y(t) は ,そ れ ぞ れ 状 態 変数 ベ ク トル (state variable vector),
入 力 変 数 ベ ク トル (input variable vector) , 出力 変 数 ベ ク トル (output variable vector)
と呼 ば れ る . こ の よ うな 動 的 シ ス テ ム は 単 一 のn階 , ま た は , 複 数 の 高 階 の 常 微
分 方 程 式 を 用 い て 記 述 さ れ る こ と も あ る が , 現 代 制 御 理 論 で は , 連 立n次 の1階
常 微 分 方 程 式 に よ っ て
(1-2)
(1-3)
とし て表 され る も のを考 え る. 後述 す る線 形 シ ス テ ムで は, これ らの表 現 の 間 に
は等 価 な変 換 が成 立 す る. ここで ,f,gはn次 元 とl次 元 の ベ ク トル 関 数 で
あ る . 式 (1-2) は 状 態方 程 式 (state equation) , 式 (1-3) は 出力 方程 式 (output
equation) と 呼 ば れ , 状 態 変 数 の 個 数nを シ ス テ ム (1-2) ,(1-3) の (動 的) 次
元 (order) とい う.
と くに ,f,gがxとuの 線 形 関 数 と な り
(1-4)
(1-5)
と お け る と き , 線 形 時変 シス テ ム (linear time-varying system) と呼 ば れ る . こ こ で ,
・は 微 分 記 号 で
(1-6)
を 意味 し,A,B,C,Dは それ ぞ れn×n,n×m,l×n,l×m次 元 の行 列 関数 で
あ る.
また,A,B,C,Dが 時 間 に よ らない一 定 行 列 で
(1-7)
(1-8)
とな る と き, 線形時不変システム (linear time-invariant system) と呼 ばれ る. 以下 ,
主 に, 線 形 時不 変 シ ス テ ムにつ い て考 え てい くが, この よ うな シ ステ ムは理 論 的
に扱 い やす く, また実 際 の シ ス テ ム もこの よ うな シ ステ ムで 近似 され る こ とが多
い. 簡単 のた め, シス テ ム (1-7) ,(1-8) をx=Ax+Bu,u=Cx+Duと 略
記す る こ ともあ る. また, シス テ ムの次 元nはt>t0に お け る シス テ ムの運 動 を
唯一 に決 定す るの に必 要 な,t=t0で の独 立 な内 部状 態 (初 期 値)の数 か ら求 め ら
れ る. と くに, 内 部変 数 で あ る状 態 変 数は い ろい ろに選 べ るので ,A,B,Cは 唯
一 に は定 ま らな いが ,後 で述 べ る よ うに 伝達 関 数行 列 や シ ス テ ムの基本 的 な 性 質
が等 しい とい う意味 で は, すべ ての シ ス テムは 等 価 であ る.
以下 , い ろい ろ な シス テ ムに おい て状 態 方程 式 (1-7) を求 め る方 法 につ い て
述 べ よ う. 出力 方 程式 (1-8) は入 力 や状 態 変数 の線形 結 合 を 出力 として取 り出
す こ とを意 味 して い る のに す ぎ ず , 式 (1-7) が 求 まれ ば 直 ちに 決定 で き る の
で, 本 章 では これ 以上 取 り扱 わ な い.
1-2 電 気 シ ス テ ム と状 態 方 程 式
電気システム (electrical system) を構 成 す る基 本 要素 は, コンデ ンサ, 抵 抗, コ
イル の3つ で あ る. 状態 方 程式 は , これ らの要 素 につ い て の作用 ・反 作用 の 法則
とキル ヒホ ッフの法則 よ り求め られ る. 作用 ・反作 用 につ い て考 えてみ よ う. い
ま, これ らの要 素を 通過 す る電 流 をi(t), 両 端 の逆 起電 力 をv(t) とす る と次 の
関 係式 が 得 られ る.
コ ン デ ン サ
(1-9a)
抵 抗 (1-9b)
コイル (1-9c)
電 圧 源 を入 力 とす る通 常 の回 路 では ,コンデ ンサ に つ いてi=Cvの 式を 使 い,
また, 状 態変 数 として コイル に 流れ る電流 と コ ンデ ンサ の両 端 の電 圧 を と る と,
積 分 項 が現 れ な いた め便 利 に状 態 方 程式 をた て る こ とがで きる. 状 態変 数 の数n
は独 立 につ な がれ た コ ンデ ンサ と コイル の数 に等 し くな る.
[例題1-1] 図1-3は , 入力電圧 をu(t)とした電気回路である.C1,C2の 両端の
電 圧 と,Lに 流れ る電 流 をそれ ぞ れ 状 態変 数
x1(t),x2(t),x3(t)とし て み よ う. す る と,
C2に 流 れ る電流C2x2とLに 流 れ る電流x3
が 等 しい こ とよ り,C2×2=x3, また ,Lの
逆 起 電 力Lx3とC2の 電 圧x2の 和 がC1の 電
圧x1に 等 しい こと よ り,Lx3+x2=x1. さ
らに ,Rに お け る電 圧降 下 とC1の 電 圧 の 和 が
uに 等 しい こ と よ り,R(C1x11+x3)+x1=u .
上述 の3式 を左辺に微 分項が くるように整理 し,行列とベ ク トルを用いて表すと
〓
の状 態 方程 式 とな る.
な お, 図 の よ うに ,x1が 出力 変数 と考 え られ る とき, 出 力方 程 式は
図-3
〓
となる.
1-3 機 械 シ ス テ ム と 状 態 方 程 式
機械 システム (mechanical system) を構 成 す る基 本 要 素は バ ネ, ダ ンパ (粘 性 摩
擦 分), マ ス (質 点) の3つ で あ る. 実際 に は 非 線形 な クー ロン摩 擦, 静 摩擦 等
が あ るが , これ らは 無視 で き る もの とす る.
状 態 方 程 式 は これ らの要 素 に つ い て の作用 ・反 作用 の法 則 (ダラ ンベ ー ル の原
理 等) と力 のつ りあ い を考 え る こ とに よ って求 め る こ とが で きる.
い ま, これ らの要 素 の変 位 をx(t), 加 わ る力 をf(t) とす る と, 次 の 関係 式 が
得 られ る.
バ ネ (1-10a)
ダ ンパ (1-10b)
マ ス (1-10c)
な お, 回 転座 標 系 で は, トル クをT(t) , 回 転 角 を θ(t), 慣 性 モ ー メ ン トをJ
とお くと, 上式 は, そ れ ぞれ
(1-11)
とな る.
また, 電 気 シ ス テ ム に お い て 電 荷q(t) を考 え る と,i(t)=q(t) な の で, 式
(1-9) は
(1-12)
とお け, 式 (1-10) と比 較 す る ことに よ って, 電圧-力 ,電 荷-変 位, コン デ ン
サ-バ ネ, 抵抗-ダ ンバ , コイル-マ スの 電 気系-機 械 系 のアナロジー (analogy)
が 成 り立つ こ とがわ か る.
機 械 シス テ ムに お いて は, 変 位x(t) と速 度x(t) を 状 態変 数 に と る と 簡単 に
状 態 方 程式 を た て る こ とが で き る. また , 電 気 シ ス テ ムに お い てq(t) とq(t) を
状 態 変 数 に と る こ と も で き る.
[例 題1-2]図1-4に お い て,u(t)は 入 力 とし
て の力 で あ る とす る.重 力 とのつ りあ い の 位置 鋤 か
らの マ スの 変位 をx(t) とす る と,マ スに対 し上 向 き
にKx,Dx,Mxの 力 が 加 わ り, 下 向 きにu(y) が 加
わ って い るの で, 力 の つ りあ い よ り
〓
を 得 る. 状 態 変数 と してx1=x( 位 置),x2=x( 速
度) を と る と,x1=x2と , 式 〓 よ りMx2+Dx2+
Kx1=uが 得 られ, 整 理 す る と
〓
の状態方 程式 となる.
1-4 電 気-機 械 シ ス テ ム (直 流 モ ー タ ) と状 態 方 程 式
冒頭 で 述 べ た 電流 計 な どは 電気-機 械 システム (electromechanical system) で あ
り, 流れ る電 流 で 電磁 力 を 発生 し, この 力 に よ って 指針 を振 る よ うに した もの で
あ る. ほ ぼ 同様 な 原理 に よ ってつ くられ た も のに モー タが あ る. こ こでは , と く
に 直流サーボモータ (DC servo-motor) に つ い て考 えて い こ う.
図1-5は , 粘 性 摩 擦 係 数Dと 慣 性 モ ー メ ン
トJの 負荷 に接続 され , 回 転角 θ(t)で運 転 され
て い る直 流 サ ー ボ モ ー タで あ る.La,Ra,Lf,Rf
は それ ぞ れ 電機 子回路 と界 磁 回路 の イ ン ダ ク タ
ンスお よび 抵抗 であ る. また ,va(t),vf(t)は そ
れ ぞれ の 回 路 の 入力 電 圧 で あ る (小 型 の モー タ
で は界 磁 は永 久 磁 石 で つ くられ てい る. これ は,
以 下 で述 べ るif=一 定 の条 件 に対応 す る).
この と き,次 の関 係 式 が知 られ て い る.
電 機 子 回路 の起 電 力 のつ りあ い
図1-4
バ ネ-マ ス-ダ ンパ 系
図1-5 直 流 サ ー ボ モー タ
(1-13a)
界磁回路の起電力のつりあい
(1-13b)
発 生 トル ク と消 費 トル クの つ りあい
(1-13c)
ここで ,Mは 電機 子 巻線 と界 磁巻 線 の相 互 イ ンダ ク タ ン ス に 比 例 した 定数 で
あ る.
と くに ,if=一 定 の と きには 定励磁制御 とい われ よ く利 用 され る. こ の場合 に
は ,式 (1-13b) は意 味 を な さ ない の で,K=Mifを モ ー タ定 数 と呼 ぶ こ とに
よ り, 式 (1-13a) と (1-13c) か ら
(1-14a)
(1-14b)
の2式 を得 る. こ こで, 状 態 変 数 をx1=θ (回転 角),x2=θ (角 速度 ),x3=ia
(電機 子 電 流) と し,u=vaと す る と,x1=x2と 上 述 の2式 よ り
(1-15)
を 得 る.
実 際 のサ ーボ モ ー タでは ,Laを 小 さい と し,式 (1-14a) に おい てLaia=0
と近 似す る こ とが 多 い. この ときに は ,式 (1-14a) と式 (1-14b) か らiaを
消 去 す る と
(1-16)
とな り,x1=θ ,x2=θ ,u=vaと お い て2次 元 の近 似 シス テ ムを得 る.
1-5 ブ ロ ック 線 図 と 状 態 方 程 式
制 御 シス テム は,しば しば ラブ ラス変 換 を使 って表 示 され た ブロック線図 (block
diagram) で 与 え られ る. こ こでは , ブロ ック線 図 か ら状態 方 程式 を 求 め る方 法 に
つい て 述べ てお こ う.
まず,図1-6(a) の よ うな シス テ ムに お い
て は
(1-17)
が 成 り立 つ ので ,E(s) を 消 去す る と
(1-18)
とな り, 同図 (b)で表 す こ とが で きる.
さて ,図1-7(a) の よ うな一次遅れ要素 (first order lag element) を もつ 単一 ブ ロ
ックが あ る もの とし よ う. この ブ ロ ックは上 で示 した手 順 の逆 を利 用 す る こ とに
よ って 同 図 (b)に変 換 で き る.1/sは 積 分作用を す る の で 積分器 (integrator)にか
え て, 時間 域 へ 変換 す る と, さ らに 同図 (c)とな る. こ の よ うな線 図 は 状態変数線
図 (state variable diagram) と呼 ば れ てい る. 積 分 器 の出力 をx(t) とす る と, そ
の入 力 側 はx(t) な の で, 信 号 の流 れ に そ って ま とめ る と
(1-19)
の状態 方程 式 を 得 る .
多 くの ブ ロ ックが あ る と きに は, 各 ブ ロ ッ クを 上述 の方 法 で 時 間域 に変 換 し て
か ら状態 方 程 式 に ま とめ れ ば よい. した が っ て,積 分 器 の数 だ け の状 態変 数が あ
る こ とに な る.
[例題1-3] 図1-8(a) のブ ロック線 図は, 上述の方法によって同図 (b)の ような状
態変数線 図とな る.た だし,左上 のブロッ クは分母 と分子 の次数が等しいので
〓
と変形 してか ら変換を行 った. 図の ように状態変数をとると, 信号 の流れに注目して
図1-6 ブロ ック線図 の等価変換
図1-7 状態変数線 図へ の変換
〓
の状態方程式を得 る. 出力yはx1に 等 しいので出力方程式は次の ようになる.
〓
以 上 で は1次 の伝 達関 数 を もつ ブ ロッ クだ け を扱 ったが , 高次 の伝 達 関数 を も
つ ブ ロ ックに つ いて は第4章 で述 べ る可 制御 正 準形 式 を利 用 して各 ブ ロ ックを部
分的 な状態 変 数 線 図に置 き換 えれ ば よい .別 な方 法 と して, ブ ロ ック線 図 全体 を
1つ の伝 達 関 数 に ま とめ, これ か ら可制 御正 準 形式 を 利用 して状 態 方程 式 を 求め
る方 法 も考 え られ る. ただ し, こ の場合 に は状 態 変数 の物 理 的意 味 が失 わ れ る こ
とが あ る.
1-6 非 線 形 シ ス テ ム の 線 形 化 と タ ン ク シ ス テ ム
一 般 の シス テ ムは そ の多 くが 非線形 (non-linear)であ る . これ は式 (1-2) の
関数fがxやuの2次 以上 のべ き関数 を 含 む 場 合 をい う. た とえば ,x(t)=
sinx(t)+cosu(t) 等 は非線 形 シ ステ ムで あ る. この場 合 , 適 当 な状 態 変数 や 入
図1-8
力 変 数 の基 準値 を与 え, この基 準値 の まわ りでfを テ ー ラ ー展 開 し,xやuの
1次 の項 だ け でfを 近 似す る方 法 が と られ る. これを 線形化 (linearization)ま た
は 線形近似 とい う. た だ し, 近 似 が 成 り立 つ 範 囲 は基 準値 や基 準 値 か らのず れ に
依 存 し一 様 では ない .
こ こで は, まず タンクシステム (tank system) を例 に と って 線 形 近 似 の物 理 的 意
味 に つ い て考 えて み よ う.
図1-9(a) の よ うな タ ン ク (水槽 ) が あ る もの とし よ う. こ こで ,S: タ ン ク
の 断面 積 ,M: 給 水 口の断面 積 , とす る. この タ ン ク シス テ ムにお いて は 毎秒 当
た りの 流入 水 量 と流 出水 量 が と もにQ0(m3/s) で平 衡 し, 水 位 がl0(m) の一 定 の
平 衡 値 を保 って い る もの とす る. この と き, ベ ル ヌー イの 定理 よ り
(1-20)
が 成 り立 ってい る. こ こで,gは 重 力 の加 速 度 で あ る.
次 に, 流 入 水量 が 微 小変 化 してQ0+uと な り, それ に 伴 い, 水 位 がl0+xま
で 微小 変 化 した と し よ う. こ の と き, 流 出 水量 をPと す る と,Pは
(1-21)
とな る.本 式 を 変形 し,x/l0に つ い て テ ー ラー展 開 す る と
(1-22)
と な る . こ こ で
(1-23)
を流体抵抗 と呼び,かつ,xは 微小と考え,第3項 以後を無視すると,Pは
(1-24)
図1-9タ ン ク シス テ ム
とな り, 流 出 水量 の変化 分 はxの
線形 関 数 (1/R)xで 与 え られ る こ
とがわ か る. この関 係 を 図示 す る
と図1-10と な る. また, この と
き, 図1-9(a) の シス テム は同 図
(b)の よ うに表 す こ とが で きる.
こ こで, 微 小変 化 分 だ け に注 目
す る と, 図1-9(b) の シス テ ムは
さ らに 図1-11の 線形近似システム (linearized system) とし て表 され る. 開閉 弁 の
記 号 で 流 体抵 抗 を表 す もの とす る. 明 らか に , この近 似 はxとuが 微 小 な と き
だ け成 立 し,Rはl0に 依 存 す る
線 形 近 似 され た シス テ ム の状態 方 程 式 を 求 め てみ
よ う. 時 刻tで 微小 入 力u(t) が あ り, 微 小変 位 が
x(t)に な って い た とし,さ らに ,次 のdt間 でx(t)
がdxの 変化 をす る と考 え よ う. す る と,dt間 に
タ ンクに貯 え られ る水 量 はSdxと な り, これ と流
出水 量 (1/R)xdtの 和 が 流 入水 量udtに 等 しい こ と よ り
(1-25)
を得 る.dtで 除 して ま とめ る と
(1-26)
の状態 方 程 式 とな る.
以 上 で は, あ らか じめ 線形 近 似 シス テムを 求 め , これ か ら状 態 方 程 式 を決 定 し
た が ,初 め に も述 べ た よ うに, 最 初 か ら非 線 形 の状 態 方 程式 を求 め , これ を 線形
近 似 して も よい .
fがtの 陽 な る関 数 とは な らな い (オー トノマス (autonomous) とい う) 非 線 形
シス テ ム
(1-27)
だ け に つい て考 え てい こ う. まず ,
図1-10 流 出水量の近似
図1-11
線形近 似システ ム