バイオガス購入要領この要領は、バイオガスの利用促進を図るため、当社が当社の導管(中圧導管に限る)に おいてバイオガスを購入する一般的かつ原則的な事項について定めたものです。詳細な利
バイオガス改質プロセスを利用した 水素の製造と二 …2 開発技術 1....
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バイオガス改質プロセスを利用した
水素の製造と二酸化炭素の分解
鹿児島大学大学院理工学研究科 化学生命・化学工学専攻
教授 平田 好洋
准教授 鮫島 宗一郎
助教 下之薗 太郎
2
開発技術
1. バイオガスの電気化学反応を利用した水素合成
2. バイオガス由来のCO を用いる水蒸気分解による
水素合成
3. CO2 及びCO の固体炭素と酸素への分解
4. バイオガス改質燃料による燃料電池発電
3
1.本件技術は、「低炭素社会をめざし、食物残渣、焼酎残滓等からメタン菌により発生するバイオガス(CH4:60%,CO2:40%)をNiカソード、Ruアノード、多孔質電解質を有する電気化学セルで改質し、水素を瞬時に大量に合成する技術」である。(特許5376381号)
特許内容の概要
1 mm CO2 + 2e- → CO + O2- ・・・(1)
Total reaction of Eqs. (1) + (4) CH4 + CO2 → 2H2 + 2CO・・・(7)
CH4 + O2- → CO + 2H2 + 2e- ・・・(4)
(oxidation of CH4) (reduction of CO2)
GDC : Ce0.8Gd0.2O1.9 (Gd-doped ceria electrolyte, 50 µm thickness)
M + CO2 → MO + CO (2)
MO + 2e- → M + O2- (3)
M + O2- → MO + 2e- (5)
CH4 + MO → CO + 2H2 + M (6)
cathode anode GDC porous film
(b) (a)
図1.(a)多孔質ガドリニウム固溶セリア(GDC)電解質を有する
電気化学セルを用いたバイオガスの改質及び(b)GDC膜の微構造
e-
O2-
H2 / CO
1 V
CO
CH4
CH4 / CO2
50 ml/min
4
400ºC
改質時間 (h)
0
体積分率
(%
)
14 2 4 6 8 10 12 0
40
50
500ºC 600ºC 700ºC 800ºC
30
10
20
0
40
50
30
20
10
0
40
50
30
20
10
(a) Cell 1
(b) Cell 2
H2
CO
CH4
CO2
Gas Key
(c) Cell 3, 800ºC
(ガス閉塞発生)
図2 改質ガスの組成
模擬バイオガスを電気化学セル1(a),2(b)および3(c)を通過させた後のCH4,CO2,H2およびCOの体積割合
(特許 5376381号)
5
40
60
0
20
0
Fra
ctio
n /
%
CH4/CO2 ratio
40
60
20
0 0.5 1.5 1 2 2.5
50 30 40 60 70
CH4 fraction / vol%
(a) Electric filed strength: 1.25 V/cm
Current density: 7.96 10-4 A/cm2
(b) Electric filed strength: 6. 25 V/cm
Current density: 3.98 10-3 A/cm2
CH4
H2
CO2
CO
図3.入口ガスのCH4/CO2比と出口ガス組成の関係。電気化学セルの温度は800℃であり、電場は1.25 V/cm(a)もしくは6.25 V/cm(b)であった。
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CO2 + 2e- → CO + O2- (1) CH4 + O2- → CO + 2H2 + 2e- (2)
(CH4酸化) (CO2還元)
H2O + 2e- → H2 + O2- (3) CO + O2- → CO2 + 2e- (4)
(CO酸化) (H2O還元)
全反応 (1) + (2) + (3) + (4) CH4 + CO2 + 2H2O → 4H2 + 2CO2 (5)
GDC : Ce0.8Gd0.2O1.9 (ガドリニウム固溶セリア電解質, 厚さ50 µm)
2.バイオガスの改質で生成したCOガスと水蒸気を多孔質電気化学セル中で反応させて、H2とCO2へ変換できる。
カソード アノード
e-
O2-
H2/CO
1 V
CO
CH4
GDC 電解質
カソード アノード
e-
O2- H2/CO2
1 V
CO
H2
GDC 電解質
H2O (a) (b) 300-500 ˚C 700-800 ˚C
H2
CO2
フィードバック
バイオガス CH4/CO2
図4 金属触媒付き多孔質電気化学反応器を用いたCH4-CO2混合ガスの改質反応(a)、及びCO-H2O混合ガスのシフト反応(b)の反応機構
7
図5 400 – 700 ºCの多孔質電気化学反応器を通過したCO、H2、CO2、O2ガスの割合
時間 (min)
出口ガス割合
(v
ol%
)
0 50 100 150 200 250
0
10
20
30
40
50
60
70 400ºC 500ºC 600ºC 700ºC
O2
CO
CO2
H2
8
COHCOCH 22 224 22
1OCCO
-- eOO 22
12
2
-- 22 OCeCO
-- eHCOOCH 22 2
2
4
-- 2
2 2 OCOeCOCathode
Anode
Total
reaction
Cathode
Anode
Total
reaction
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
図6 水素合成とCO分解の概念図
Anode
e-
O2-
CH4
Porous electrolyte
CO2
CH4
CO
Reforming cell
Cathode
1V
(a)
Cathode
e-
O2-
Electrolysis cell
Anode
(d)
H2
CO
Dense electrolyte
(c) Fuel cell
(b) CO gas separation membrane
O2
3.バイオガス改質で生成したCOガスを固体炭素とO2ガスへ電気化学的に分解できる。
9
図7 CO分解における(a)アノード側出口ガスのO2濃度 及び(b)CO分解率
酸素濃度(%)
0
1
2
3
4
5
6
7
CO分解率(%)
時間(h) 0 1 2 3 4 5
0
20
40
60
80
100
電圧 1.0 V 2.0 V 4.0 V 8.0 V
a)
b)
温度: 800℃
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従来技術とその問題点
1.水素合成
現在の水素の製造法は、ナフサ、メタノール、天然ガスなどの炭化水素系原料の水蒸気改質と、食塩電解の副生ガスや水素成分を多く含むコークス炉ガスの精製が大半である。いわゆる未利用資源であるバイオマスから発生するメタンガスを原料とする水素ガス製造は殆ど行われていない。
2.二酸化炭素の分解
理想的には植物の光合成プロセスがあるが、未だ工業的なプロセスは開発されていない。
12H2O + 6CO2 + 太陽光 → C6H12O6 (ブドウ糖) + 6H2O + 6O2 (1)
電気化学反応によるCO2を含む水溶液からのギ酸(HCOOH)、メタン(CH4)、エチレン(C2H4)、メタノール(CH3OH)などの合成プロセスは報告されてい
る。しかし、多孔質電気化学セルを用いたバイオガスのドライ改質によるH2-CO系燃料の合成はこれまで報告されていない。
CH4 + CO2 → 2H2 + 2CO (2)
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(複合電気化学反応を用いた水素の合成と二酸化炭素の削減)
これまで開発した数種の電気化学反応器で次の反応を促進できる
メタン、CO2を用いたドライ改質:CH4 + CO2 → 2H2 + 2CO (1)式
水性ガスシフト反応:CO + H2O → H2 + CO2 (2)式
CO分解:2CO → 2C + O2 (3)式
上記の反応の組合せにより水素の合成と二酸化炭素の削減を同時に進行できる
●バイオガスの場合( CO2 を循環したクローズドシステム化)
バイオガス(3CH4 + 2CO2)+ CO2 (循環) + H2O → 7H2 + CO2 (循環) + 5C + 5/2O2 (4)式
●100%メタンの場合
CH4 + H2O +CO2 (循環) → 3H2 + C + 1/2O2 + CO2 (循環) (5)式
①バイオガスもしくは天然ガス中のメタンを100%改質するために、CO2を添加する。
②添加するCO2は、改質反応で生成したCOの一部をシフト反応に用いて合成する。
③改質反応で出た残りのCOは固体炭素と酸素へ分解する。
◆水素を合成しながら、二酸化炭素を削減できるプロセスが実現できる。 ◆二酸化炭素を含まない天然ガス改質にも、適用可能である。
新技術の特徴
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表1 従来技術との比較
従来技術 新技術
A.メタン改質 CH4 + 2H2O
→ 4H2 + CO2 (1)
CH4 + CO2(バイオガス) → 2H2 + 2CO (2)
①従来技術では水蒸気生成のための熱量が必要であるが、新技術では不要である。
②新技術の改質ガスはH2-CO系燃料であり、固体酸化物形燃料電池へ供給できる。
③従来技術のメタン(天然ガス)は輸入しているが、バイオガスは国内で入手可能。
(水蒸気改質) (CO2改質)
B.一酸化炭素の除去
CO + 1/2O2 → CO2 (3) CO → C + 1/2O2 (4)
①従来技術はCOをCO2へ変化させる。CO2の削減とはならない。
②新技術ではCOを固体炭素と酸素へ分解でき、系外へCO2を排出しないシステムが可能である。
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本技術は次の用途へ展開が可能である。 (1) 食物残渣、非食用バイオマス、下水汚泥等からの水素の大量合成 (安価なバイオガスからの国内産水素の製造が可能) (2) 家庭用及び事業用定置型燃料電池の水素燃料としての展開 (燃料電池の普及にともなう水素の供給に対応する) (3) 燃料電池車用水素ステーションへ供給する水素燃料としての展開 (水素ステーションの設置は国策ですすめられる) (4) 鹿児島から打ち上げるロケットの水素燃料としての展開 (5) 火力発電所、製鉄所で発生するCO2の固体炭素と酸素への分解 (CO2の削減は世界的課題となっている)
想定される用途
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想定される用途案の一例(バイオガスと燃料電池による発電)
焼酎製造後のさつまいも
西薩クリーンサンセット事業協同組合(いちき串木野市)
地元焼酎メーカー5社の出資と国費による支援で建設した
焼酎滓のメタン発酵処理施設
C6H12O6 (ブドウ糖、メタン菌) 3CH4 + 3CO2 (1)
350 ton/day 12,000 m3バイオガス/day
バイオガス
60 % CH4
40 % CO2
改質2
2CO + 2H2O + 2H2 4H2 + 2CO2 (6)
CO2とH2の分離
固体酸化物形燃料電池による発電 高分子形燃料電池による発電 カソード
2O2 + 8e- 4O2- (3)
アノード
2H2 + 2O2- 2H2O + 4e- (4)
2CO + 2O2- 2CO2 + 4e- (5)
CO2の
回収、
再利用
カソード
4H+ + O2 + 4e- 2H2O (7)
アノード
2H2 4H+ + 4e- (8)
改質1
CH4 + CO2 2H2 + 2CO (2)
CO2の回収、再利用
アノード カソード
e− e−
H2O
H2 O2
O2−
電解質
アノード カソード
e− e−
H2O
O2 H2
H+
電解質
15
(a)
(b)
Vo
ltag
e
(V)
Pow
er d
ensi
ty
(mW
/cm
2)
1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0
50
100
150
200
250
0
0.2
0.4
0.6
0.8
Current density (A/cm2)
Sintering temperature
of GDC cell Key
1400 ºC 1450 ºC 1500 ºC
CO2
11.5
1.2
CO
46.6
33.6
H2
36.2
63.3
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
CH4
5.8
1.9
Outlet gas composition (vol%) Flow rate
157
67.5
(ml/min)
inlet
100
50
50
70.6
2.3 36.7 58.9 2.1
outlet Experiment
(La0.8Sr0.2)(Co0.8Fe0.2)O3 cathode -
Ce0.8Gd0.2O1.9 electrolyte - Ni-GDC anode
表2 50% CH4-50% CO2を800℃で改質したときの出口ガスの組成と流束
図8 H2-CO-CH4-CO2燃料を用いた固体酸化物形燃料電池の800℃での(a)端子電圧と(b)出力密度の電流密度依存性
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① 更なるコストダウンに向けた研究開発の促進
本件技術における水素製造の原料費(試算)は、現時点で、 世界の水素製造の
90%以上を占めるナフサの水蒸気改質法における原料費より、やや高い。そのため、低価格のバイオガス原料の入手、安価なカソード・アノードの触媒開発、改質温度の低温化(エネルギー費用の低減)等をすすめる必要がある。
③ 実用化に向けた実証試験による水素製造条件の確立
改質触媒の耐久性の確認、CO分解にともなう炭素析出への対応、長期間連続運転の実証等を確認する必要がある。
実用化に向けた課題
② 水素分離技術の確立
バイオガス改質で生成するH2/COあるいはH2/CO2系の高温混合ガスから水素を分離する技術を確立する。
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企業への期待
• 電気化学セルの構造設計(セル形状、ガス流路など)、スケールアップ、及び製造が可能な企業の参入が不可欠である。
• システム設計(熱、電気、ガスの管理、周辺機器(水素の貯蔵など))が可能な企業の参入が必要である。
• バイオマス原料を有する企業、セラミックスセル製造企業、水素ガス活用企業と共同で事業を行うことが有効と考えられる。
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本技術に関する知的財産権 発明の名称 : 電気化学反応器及びそれを使用した燃料ガスの製造方法
出願番号 : 特願2010-518027
: 再公表2009-157457
第5376381号
発明者 : 平田 好洋
出願人 : 国立大学法人 鹿児島大学
発明の名称 : 電気化学反応器及びそれを利用した二酸化炭素又は一酸化炭素からの炭素及び酸素ガスの製造方法
出願番号 : 特願2012-038563
出願日 : 2012年2月24日 発明者 : 平田 好洋、安藤 雅浩
出願人 : 国立大学法人 鹿児島大学
発明の名称 : 電気化学反応器及び燃料ガスの製造方法
出願番号 : 特願2012-121231
出願日 : 2012年5月28日 発明者 : 平田 好洋、鮫島宗一郎、松永直樹
出願人 : 国立大学法人 鹿児島大学
発明の名称 : 電気化学反応器並びにそれを利用した一酸化炭素及び水蒸気からの水素及び二酸化炭素の製造方法
出願番号 : 特願2013-168640
出願日 : 2013年8月14日 発明者 : 平田 好洋、鮫島 宗一郎、下之薗 太郎
出願人 : 国立大学法人 鹿児島大学
発明の名称 : 電気化学反応器並びにそれを使用した酸素の製造方法
出願番号 : 特願2014-040719
出願日 : 2014年3月3日
発明者 : 平田 好洋、上野 真奈、下之薗 太郎、鮫島 宗一郎
出願人 : 国立大学法人 鹿児島大学
公開番号
登録番号
19
産学連携の経歴
• 2011年度 JST「知的活用促進ハイウェイ」大学特許価値向上支援試験研究事業に採択、「銅電極付き電気化学セルを用いるバイオガスからの水素の大量合成」
• 2013年度 JST「知的活用促進ハイウェイ」大学特許価値向上支援試験研究に採択、「バイオガス改質の一酸化炭素と水蒸気の反応を利用した高純度水素の大量製造」
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お問い合わせ先 【ライセンスについて】 科学技術振興機構
知的財産戦略センター 主査 田中 史祥
TEL 03-5214 - 8293
e-mail ftanaka@jst.go.jp
shuuyaku@jst.go.jp
【技術内容について】 鹿児島大学
理工学研究科 化学生命・化学工学専攻 教授 平田 好洋
TEL 099-285-8325
e-mail hirata@apc.kagoshima―u.ac.jp