チョコレイト・サイエンス 5 周年記念イベント …...「チョコレイト・サイエンス5 周年記念 チョコレート学入門」 とき:2019 年12 月14
サイエンスのために 大学図書館とオープン が できること ·...
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サイエンスのために大学図書館とオープン○△□が
できること(20分)
エルゼビア・ジャパン主催フォーラム「オープン・サイエンスのミライ」第20回図書館総合展、2018/10/30
林 豊(九州大学附属図書館eリソース課)[email protected]://orcid.org/0000-0001-7761-3444
自己紹介
▱ 九州大学附属図書館 eリソース課 システム企画係• システム全般の担当(旧リポジトリ担当)• 12年目(京大→国立国会図書館→京大→九大)
▱ 学生時代は数学専攻
▱ いろいろ書いたり話したり• https://researchmap.jp/hayashiyutaka
1. 学術情報流通の課題サイエンスを支える基盤として
「質保証された学術情報が効率的に流通し、研究者が適切な評価を受けられるサステイナブルなしくみ」
が崩れている(商業出版社にコントロールを握られている)
②
①
③
①
①コスト、質保証
▱ ジャーナルが値上がりする理由• 寡占化、非代替性、論文の爆発的増加(中国、インドなど)• 為替+消費税(日本)• 査読コストはどのくらい?
▱ 査読(質保証)• 研究者はジャーナルの価値の源泉を無償提供 →なぜ?• ポストオープンピアレビューの可能性• ハゲタカジャーナル/国際会議の問題
▱ 出版流通コストの分担• 機関(購読)、著者/助成機関(APC→投稿料?)、読者
(PPV)
②流通、アクセス
▱ 機関リポジトリ(グリーンオープンアクセス)• 学内紀要、博士論文……成功• 査読論文……うまくいってない(著作権譲渡契約がネック)
▱ オープンアクセスジャーナルの普及• APC(値上がり?)• ハイブリッドによる二重取り問題
▱ 近年の動向• プレプリントサーバーのブーム(研究者による受容)• Article Sharing(SharedIt、Wiley Content Sharing、Cambridge Core Share)• Sci-Hub →潰せばそれで終わり?(e.g., 漫画村)• オープンアクセスジャーナルへの転換(OA2020)• ジャーナル不買というカード(e.g., 独Project DEAL)• 出版社飛ばしのしくみ(Gates Open Research、European Open Access Platform)• 欧州助成機関の強気なポリシー(Plan S)
欧州助成機関によるPlan S① 論文著者は、無制限の著作権を留保する。全ての出版物はcc-byなどのオープンライ
センスで出版されなければならない。② 助成機関は、OA雑誌およびOAプラットフォームの満たすべき条件を確立する。③ 適切なOA雑誌やプラットフォームが存在しない場合、助成機関はその構築に向けて
支援をする。④ 論文のOA出版のための費用は、研究者個人ではなく、助成機関もしくは学術機関が
負担する。⑤ OA出版費用に関する助成額は標準化され、上限が設けられる。⑥ 透明性を確保するため、助成機関は大学、研究機関、図書館に対して、そのポリシー
と戦略をこの原則に合わせることを要求する。⑦ この原則は、全ての学術出版に適用されるが、モノグラフや著書については、履行開
始が2020年1月1日に間に合わない可能性があることは理解されている。⑧ 長期保存およびエディトリアルの革新可能性から、オープンアーカイブやリポジトリ
における研究成果の登録は認められる。⑨ ハイブリッドモデルの学術雑誌は、本原則に適合しない。⑩ 研究助成機関はこの原則の履行状況をモニターし、違反していた場合は、制裁措置を
取る。Cite: RCOS Diary – mihoチャネル(2018/9/6付)https://rcos.nii.ac.jp/en/miho/2018/09/20180906/
Gates Open Research
Cite:ビル・ゲイツ氏、論文公開で世界主導(日本経済新聞、2018/10/6付)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36185510V01C18A0TJM000/
European Open Access Platform構想
Cite: Rather than simply moving from “paying to read” to “paying to publish”, it’s time for a European Open Access Platform (LSE Impact Blog, 2017/4/10)http://blogs.lse.ac.uk/impactofsocialsciences/2017/04/10/rather-than-simply-moving-from-paying-to-read-to-paying-to-publish-its-time-for-a-european-open-access-platform/
③研究評価
▱ 多様な研究評価• 有名海外出版社のブランド信仰、機械的な評価指標(IF等)
からの脱却• 日本語による研究業績の評価• 分野による違い(e.g.,「○○学では査読論文より招待論文の
ほうが上だ」)• オルトメトリクス
▱ 研究不正• 再現性の担保 →論文のエビデンスデータの保存・公開
ノーベル化学賞受賞者・野依氏の危惧
▱ 「日本の多くの研究者は論文を海外の学術誌に投稿する。採択されない論文も含めて、査読のために多くのデータを提供する。結果として知的資産である膨⼤な情報が海外へ⼀⽅的に流出している。先端技術や産業と関わりのある機微なデータが含まれる場合もあり、出版社によってはデータの取り扱いや行⽅に不透明感がつきまとう」
▱ 「⽇本では、海外出版社の評価システムに安易に乗っかっている。論⽂を管理する図書館の担当者を除くと、ほとんどこの問題を認識していない。⽇本の研究者はあまりに⾃⼰中⼼的で⾒識が狭い」
▱ 「この問題が解決しない最大の原因は指導者にある。⼤学の学⻑や学部⻑は出版業界の仕組みを研究者たちに説明し、問題点を周知しなければならない。そうしないと購読をやめようとしても、研究者は困ると文句を⾔うだけだ」
Cite:海外誌への論文投稿「知的資産の流出」 野依良治氏(日本経済新聞、2018/10/14付)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36410180S8A011C1TJM000/
2. 大学図書館でできること九州大学の取り組みの紹介
2018.10 九州大学キャンパス移転完了、新中央図書館グランドオープン(19,279㎡)
九州大学の取り組み
▱ キャンパス移転(2005-)、新中央図書館(2018.10)
▱ 附属図書館事務組織再編(2018.10)• eリソース課 ←eリソースサービス室
• 専門職員(資料電子化・保存担当) [1]• eリソース管理係 [3]• リポジトリ係 [2+1]• システム企画係 [2]
▱ 他部署との関係• 学術研究・産学官連携本部/URA……薄い• IR室……研究者DB―リポジトリ連携で協力• デジタルライブラリ担当 [3](図書館→情報システム部)
九州大学の取り組み
▱ オープンサイエンス関連の取組• 機関リポジトリ公開(2006.4)• 蔵書検索+機関リポジトリ+デジタルアーカイブの統合
(2013.12)• 研究データの保存等に関するガイドライン(2015.8)• DOI登録開始(博士論文、紀要)(2015.10)• 九州大学オープンアクセス⽅針(2016.1)
&研究者データベースとリポジトリの連携(2018.1)• ORCID加盟検討タスクフォース(2017.10)• JPCOARスキーマ(オープンサイエンス対応)採用(2017.12)• ハゲタカジャーナルへの注意喚起?• デジタルアーカイブのオープン化(2018.10)• オープンデータ推進WG(2018.10-)
九州大学の取り組み:今後
▱ 研究者との本音の対話(アドボカシー)
▱ 情報提供ポータルサイト
▱ データポリシーの策定(2019年度?)• 研究者とデータを守るために
▱ NII研究データ基盤の導入(2020年度~)• 管理基盤(GakuNin RDM)• 公開基盤(WEKO3)
3. おわりに実務経験を通して感じること
実務経験から感じること
▱ 著作権譲渡+査読無償提供+研究評価という“搾取”
▱ 本質的な課題と大学図書館の取り組みがうまく噛み合ってない• アクセスの問題(表層)だけを改善しようとしても無理が生
じる• 内部は出版社にガチガチに固められている• 抜本的な”改革”は単独では無理。大学図書館はどのラインま
で手を出せるか?
実務経験から感じること
▱ 継続する論文数増加→出版コストの最適化/分担が必要• オープンアクセスジャーナルは悪夢の再演になるのでは?
(APC高騰)• APC→投稿料?
▱ 出版社抜きのオルタナティブな出版エコシステム(リポジトリベース)は実現可能か?• 研究者はそれに乗ってくれるか?• 一部の文系研究者はリポジトリを非常に愛用(出版社との棲み
分けができている)
▱ 主役である研究者の意識/意志がいちばん大事• ボイコットでも、ジャーナル不買でも、抜本的な改革でも• 大学図書館がすべきことは本音でのアドボカシー