お金が消える? - boj.or.jp · 電子マネーで世界最先端を走る中国、 ......
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⽇本銀⾏仙台⽀店⻑副 島 豊
本資料と講演内容は、日本銀行の見解を表すものではありません。また、特定の企業との取引を推奨・保証するものでもありません。
多くの内容は二次情報に基づいているため、情報の真偽や確度は完全ではありません。
2017年8月
お金が消える?電子マネーで世界最先端を走る中国、
日本の対応と現状、未来
今日の話題
リテール決済の大変革
世界の先頭を走る中国
日本はどうなる?
1
急激に変わった中国人のライフスタイル
中国を旅行して気が付くこと
中国の旅行者が日本に来て驚くこと
いつから突然こうなった?
きっかけは、あるネットショッピング企業
遅れていた、不便だった、問題があったからこそ急激に変わった
2
3
中国でネットショッピングが急成長
1.21.9
2.83.8
5.3
7.6
0
2
4
6
8
2012 2013 2014 2015 2016 2017推計
中国ネット小売市場
取引規模兆元 130兆円
出典)BTMU China 経済週報 2017年6月21日第353期
楽天3兆円Amazon Japan 1兆円
4
EC(電子商取引)市場は更に巨大
67.9
10.213.4
18.3
23
0
5
10
15
20
25
2011 2012 2013 2014 2015 2016
B2B+ネット小売+生活サービスEC
兆元 390兆円2016年内訳 16 + 5 + 1 兆元
出典)BTMU China 経済週報 2017年6月21日第353期
5
消費に占めるネットショッピングの割合が1割を超えた
日本や米国の約2倍の割合
中国全土で店舗販売網を作るのは困難、品揃えにも
限界、地方の需要も取り込めた
中国の消費ブームは更に高まる
GDPに占める民間消費のウェイトは約35%、先進国と
比べると格段に低い(米国は7割弱、日本は6割弱)
代表的企業は2強:アリババ、JD.com、その他は小規模
あのアマゾンさえ全く歯が立たない
なぜ中国がネットショッピング大国に?
6
中国EC市場シェアの7割を占める
年間流通総額:約60兆円、現在も成長中
Amazon 売上高は全世界で15兆円(B2Cは7兆)、楽天3兆円
アクティブ・ユーザー*は4億人強、全人口の1/3* 頻繁な利用者(その年間利用回数は平均58回)
何でも売っている、業務用の機械なども
中国国内がほとんど
強い市場支配力
顧客囲い込み、購買データを一括管理、マーケティング
アリババ 世界最大のEC企業EC:エレクトリック・コマース
7
① 自社在庫は持たず、売り手と買い手のマッチング
Amazon(自社在庫)ではなく楽天市場(場の提供)タイプ
収入は、売り手からの手数料(Tモール<次頁>では取引高の0.5~5%)と、出店料、Web上での広告料
② サービス提供のプラットフォームをPCからスマートフォンに拡張
③ 信頼性の高い決済サービス「アリペイ」
②+③ ⇒ 爆発的化学反応
決済が伴う生活の場(消費・支払行為)に入り込む、アプリに多様な日常サービスを取り込み
④ 自前の物流ネットワークを保有せず、各地の運送業者を組織化
アリババのビジネスモデル
8
スマホやタブレットなどモバイルデバイスからの購入
2011年のシェアは1% ⇒ 最近、7割超
ソーシャル・ネットワーク・システムSNSとの連動
広告画面での誘導、クーポンの配信、有名ブロガーの発言、口コミ
中国のSNSは国際標準と異なる
Facebook Weibo(微博)
TwitterLine、WhatsApp WeChat (微信)
YouTube Youku(优酷)
重要なマーケティング・ツール
PCファーストからモバイルファーストへ
9
Tモール(天猫商城):主に大手小売・海外ブランド企業 5万社
タオバオ(淘宝網):売り手は小規模小売・メーカー 700万社
主なショッピングサイト
創業者 ジャック・マー中国IT業界のスーパースター
創業は1999年、杭州市のアパートで始めた零細卸売企業間(B2B)の取引サイト
2003年、2008年に立ち上げた上記ECサイトが爆発的成長
10
クレジットカードがさほど普及していなかった
銀聯カードの多くはデビッドカード、与信しない
本来ネットショッピングはクレジットカードが便利、代引きは現金管理リスクあり
商品配送と代金回収に「取りはぐれ」リスク
お金を払ったのに物が来ない、物を配送したのにお金が支払われない
アリペイ=第三者支払サービス
「取りはぐれ」がなく安心
ツーフーパオ
アリペイという発明
11
1. ユーザーは通常の預金口座のほかにアリペイ用の口座を作る
2. 資金をアリペイ口座に予め入れておく
3. ショッピングサイトで商品を購入する
4. アリペイ口座の資金(購入代金+送料)がロックされる
5. 出店企業にアリペイが代金確保と商品配送依頼を連絡
6. ユーザーが商品を受け取り、アリペイへ商品受取りを通知
7. アリペイから出店企業に商品代金が振り込まれる
新しいビジネスチャンス
アリペイ口座に滞留している資金をネットショッピング以外でも使う
そのキラーデバイスがスマートフォン
支払いと商品受け渡しのプロセス
12
QRコードで簡単支払
電気ガス水道ほか公共料金、外食・屋台、弁当デリバリー、医療費、タクシー代、電車、航空チケット、海外送金、家賃、映画、etc
個人間の支払い
携帯番号が口座番号代わり、相手の番号が判れば振り込める、お年玉(紅包)や小遣いをあげる中国の風習にもマッチ ← 普及のためのキラーコンテンツ
簡単に割り勘支払い(AA制)
金額を設定するとスマホに請求が届き、それを承認すれば支払い完了
MMFで資金運用:余剰宝
最低1元単位(約15円)から、いつでも・何単位からでも運用可能、解約も含めてすべてスマホで指示OK
アリペイ決済件数:1.7億件/1日(2016年)
アリペイonスマホ → 日常生活へ
13
ワンクリックで余剰資金のMMF運用指示が可能
サービス開始後1年で世界第4位規模のMMFに爆発成長
アリペイ口座で赤残(自動で当座貸越、与信機能)
買物履歴、支払履歴、口座残高は、個人情報の宝庫
マーケティングに活用
Eコマースはリテール金融ビジネスとシナジー、芝麻信用
ネットバンキング、マイクロファイナンス(花唄)にも着手
アリペイを核に、アント・フィナンシャル 「螞蟻金融」グループを設立
巨大金融機関に急成長、企業価値7兆円弱、上場が注目
金融業への進出は必然だった
Zhima credit
P14-17の画像の出所:日本銀行 FinTechセンター
14
金融を含む様々なサービスを提供
QRコード作成または
読み取りによる実店舗決済、送金
口座間送金
映画館座席予約
飛行機、電車予約
MMF投資
個人信用スコア
レンタル自転車
タクシー予約
このほかにもエアB&B予約、保険購入、Eコマース、割り勘など多数
旅先での情報(カード限度額引上げ、ローミング、人気店情報、タクシー予約など)
都市サービス(税金、公共料金支払い、病院予約、交通違反検索、交通カードチャージ、台風情報など)
スマホ画面のイメージ
支払者がQRコードを生成する
QRコード決済 タイプ1
① 支払者がQRコード
生成(多くの場合、コードは1分毎に自動変更)
② 資金受領者がコードを読み、金額を指定して引き落とし
③ 支払者はショートメッセージ、または口座明細で取引確認
15
QRコード決済 タイプ2お店側がQRコードを掲示する
①資金受領者(お店)がQRコードを掲示
し、支払者がスマホでコードを読む
②支払者は金額を入力し、送金
③お店は資金受領をSMSまたはアプリの取引履歴で確認
タイプ1に比べ、店側の負担
は軽い。設備不要。紙にQRコードを印刷して貼る。店側の
スマホで受取確認。
16
広がるQRコード決済の世界
17
市場の魚屋
自動販売機
乗捨てレンタル自転車
レストラン出前
リテール決済は1強から2強へ
18
支付宝53.7%
騰訊金融39.5%
壹銭包1.8%
連連支払0.8%
聯動優勢0.8% 易宝
0.6%
快銭0.5%
百度銭包0.4%
その他2.0% AliPay
利用者4.9億人
関連グループ会社の主業はEコマース
モバイル決済ユーザー数ではWeChat Payに抜かれた
が、ネット決済ではまだシェアが高い。 今後は?
WeChatPay利用者8.4億人
親会社テンセントの主業は、ゲームなどのインターネット付加価値サービス、デジタル広告
ショート・メッセージ・サービスWeChatの顧客を基盤に、利用者数急増。
(注)2016/1Q、決済額シェア(出所) 易現・三菱東京UFJ銀行(中国)
強⼒なライバルが突然登場
19
芝麻信用(セサミクレジット) 個人の行動データから格付
使用情報:アリペイでの支払履歴、学歴や職歴、住宅や車、不動産などの保有状況、交友関係(SNSから入手)など
5つの領域を指標化し総合して信用スコア化• 身分特質、支払能力、過去の支払実績、消費の特徴
個人が進んで不足情報を提供する(評価でプラス)、好条件の人ほど集まる(保険と逆)、行動が改善する(スコア低い人向けサービスも)、信用社会構築は国策・国家プロジェクト
信用スコアに応じて特典
デポジット不要(中国は診察や図書館貸出にもデポジットが必要)、金利優遇、婚活サイト百合網、Airbnb予約し易い、ビザ
でも、、なんだか怖くない? 米国にもFICOがあるけど
ネット社会の行きつく先
20
「より良い意思決定をしたければ、通常はデータを収集する企業側の条件を受け入れなければならない」
• Googleで何かを検索するだけで履歴が残る
• 検索直後からスマホに関連する広告が入りだす
• 好みそうな本やサービスを推奨してくれる
「個人がデータを共有・統合されることのリスクとリターンを評価できるようにする」、 「企業にデータを収集することの責任を課すルール作り」
Amazonチーフサイエンティストの問いかけ
『アマゾノミクス』 アンドレアス・ワイガンド、⽂藝春秋、2017年
21
さて、
リープ・フロッグ(蛙飛び)で
3周先を走る中国
・ 日本はどうする?
・ 日本はどうなる?
22
1. 日本に来る中国人観光客にスマートフォン決済サービスを提供
家電や高級品(銀聯カードで対応)の爆買いから日用品へ
資金決済サービスの提供業者が増加(コンビニが率先導入)
2. 中国のネットショッピングサイトで日本の商品を売る
Tモールへの出店(仲介業者あり)
日本から中国までの物流(日本の物流企業がサービス開始)
マーケティング(メディアとりわけSNSの活用)
爆買いから爆売りへ
爆買いブーム後、2つの対応
23
アリババ・ジャパンが日本企業に対して出店を誘致
日本企業のアリババに出店には、申請の際の言葉の壁や中国での商標登録、保証金など様々なハードルがあるため、日本にオフィスを構えて事務手続きを軽減させ、出店を誘致
日本の大手運輸業の対応
出店者へ物流サービス提供:倉庫に取りに来て、輸出関税手続きを代行、中国でアリババの配送網に繋ぐ
出店のハードルは低下
24
越境EC市場のポテンシャル
越境ECの体験者:日5%、米31%、中26%
中国消費者の購入先:米27%、日18%、カナダ14%、豪・仏11%
出典)「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)平成28年度」、経済産業省
1兆円
25
拡大する越境EC市場
出典)「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)平成28年度」、経済産業省
26
出典)「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)平成28年度」、経済産業省一部情報を補記している
様々な越境ECルート
アリババのTモールを活⽤したケース
取引相⼿は⽇本のEC企業(海外向け)最近の動き
27
日本の大手越境EC業者はまだ少ない
中国消費者の購入先:米27%、日18%、カナダ14%、豪・仏11%
⇒ 中国市場は大きい・伸びるのに日本の越境EC業者は少ない
出典)「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)平成28年度」、経済産業省
28
日本のデジタル決済の現状と近未来
決済(お金の支払と受取)は、皆が同じ手段を使うほど便利
今の日本は乱立状態*、アリペイのような1強がいない
非接触型電子マネーが先に普及
後発のQRコード方式は端末設備が不要という強み
なにより、現金が安価に何時でも何処でもATMで提供
加えて、インフレがなく現金の価値が下がらない、お札がきれい、偽札が殆どない、治安がよく盗難リスクが小さい
⇒ 1強に集約化され急速に非現金化が進むとは考えにくいが、、
* 代表的なデジタル決済手段: プリペイド電子マネー(Suicaほか交通系電子マネー、WAONほか流
通系電子マネー、楽天Edy)、後払い式(iD、QUICPay)、既存手段取り込み型(Apple Pay、Android Pay)、QRコード決済(LINE Pay、楽天Pay、Alipay、d払い<準備中>)、クレジットカード、デビッドカー
ド、プリペイドカード(au WALLETほか)