関東部会報告レジュメ 団体保険の被保険者に対する...

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関東部会報告レジュメ 1 団体保険の被保険者に対する募集規制の明確化と実務上の留意点 損保ジャパン日本興亜 古田 一志 1. はじめに ○ 平成 25 年 6 月に金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキン グ・グループ」(以下「保険WG」という)が取りまとめた報告書(以下「保険WG報 告書」という)を踏まえた平成 26 年改正保険業法(以下、「改正法」という)が本年 5 月 29 日に施行された。 ○ 改正法では、「団体保険」が定義されるとともに、団体保険の被保険者に対する募集規 制の明確化が図られた。 ○ 本報告では、その規制の変更点、および実務上の留意点を整理するとともに、改正され ていない条文・募集規制への影響等について検討したい。 ○ なお、本稿中、考察・意見に関する部分は筆者個人の見解であり、所属する会社等の見 解ではないことを念のためお断りしておきたい。 (1)「団体保険」の定義 ○ 改正法 294 条では、「団体又はその代表者を保険契約者とし、当該団体に所属する者を 被保険者とする保険」と定義(294 条の 2、294 条の 3、及び 300 条1 項において同義)。 ○ 法人が当該法人の従業員一人のみを被保険者として加入する保険など、定義の文言に該 当するものを広く含み得るものとされた(パブコメ 19番)。 (2)「加入勧奨」の考え方 ○ 「加入勧奨」は、平成 18 年、保険契約の販売・勧誘時に説明すべき重要事項(「契約概 要」・「注意喚起情報」)の明確化の際、保険会社向けの総合的な監督指針(以下、「監督 指針」)において用いられた。 平成 18 年 2 月 28 日 金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」26 頁 36 番 「加入勧奨」とは、保険契約者である団体が、その構成員に対して当該保険に加入するかどうかの勧誘 (意思確認)を行なう場合 を指します。 例えば、特定の金融機関の住宅ローン契約者を構成員とする団体や特定のカード会社の会員を構成員と する団体が、その構成員に行う被保険者の募集などがこれに該当すると考えます。 →「加入勧奨」は、保険契約者である団体が行為主体である前提 ○ 改正法 294 条では、「団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の 当該保険契約に加入させるための行為」とされるとともに、「当該団体保険に係る保険 契約の保険募集を行った者以外の者が行う当該加入させるための行為を含み」とされ、 その行為主体は必ずしも保険契約者である団体のみでなく、団体以外の者(保険会社・

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関東部会報告レジュメ

1

団体保険の被保険者に対する募集規制の明確化と実務上の留意点

損保ジャパン日本興亜 古田 一志

1. はじめに

○ 平成 25 年 6 月に金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキン

グ・グループ」(以下「保険WG」という)が取りまとめた報告書(以下「保険WG報

告書」という)を踏まえた平成 26年改正保険業法(以下、「改正法」という)が本年 5

月 29日に施行された。

○ 改正法では、「団体保険」が定義されるとともに、団体保険の被保険者に対する募集規

制の明確化が図られた。

○ 本報告では、その規制の変更点、および実務上の留意点を整理するとともに、改正され

ていない条文・募集規制への影響等について検討したい。

○ なお、本稿中、考察・意見に関する部分は筆者個人の見解であり、所属する会社等の見

解ではないことを念のためお断りしておきたい。

(1)「団体保険」の定義

○ 改正法 294 条では、「団体又はその代表者を保険契約者とし、当該団体に所属する者を

被保険者とする保険」と定義(294 条の 2、294 条の 3、及び 300 条 1 項において同義)。

○ 法人が当該法人の従業員一人のみを被保険者として加入する保険など、定義の文言に該

当するものを広く含み得るものとされた(パブコメ 19番)。

(2)「加入勧奨」の考え方

○ 「加入勧奨」は、平成 18年、保険契約の販売・勧誘時に説明すべき重要事項(「契約概

要」・「注意喚起情報」)の明確化の際、保険会社向けの総合的な監督指針(以下、「監督

指針」)において用いられた。

平成 18 年 2月 28 日 金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」26 頁 36 番

「加入勧奨」とは、保険契約者である団体が、その構成員に対して当該保険に加入するかどうかの勧誘

(意思確認)を行なう場合を指します。

例えば、特定の金融機関の住宅ローン契約者を構成員とする団体や特定のカード会社の会員を構成員と

する団体が、その構成員に行う被保険者の募集などがこれに該当すると考えます。

→「加入勧奨」は、保険契約者である団体が行為主体である前提

○ 改正法 294 条では、「団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の

当該保険契約に加入させるための行為」とされるとともに、「当該団体保険に係る保険

契約の保険募集を行った者以外の者が行う当該加入させるための行為を含み」とされ、

その行為主体は必ずしも保険契約者である団体のみでなく、団体以外の者(保険会社・

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保険募集人等)も行為主体と成り得る考え方とされた。

2. 従来の団体保険の被保険者に係る募集規制

(1) 保険募集に関する情報提供等

① 平成 26 年改正前保険業法(以下、「旧法」)300 条 1 項各号(重要事項不告知の禁止等)

・適用場面:「保険契約の締結又は保険募集に関して」

・相手方 :「保険契約者又は被保険者」

→団体保険など契約形態を問わず、被保険者も各禁止行為の相手方に含まれる。

② 旧規則 53条 1項 10 号(重要事項説明に係る体制整備)

・適用場面:「保険募集に際して」

・相手方 :「保険契約者及び被保険者(保険契約の締結時において被保険者が特定で

きない場合を除く。)」

→「保険契約の締結時において被保険者が特定できない場合」の考え方

加入勧奨によって団体保険の被保険者となるのは、団体保険の締結・成立が前

提となることから、概念的には当該団体保険に係る保険募集が行われた後(保険

契約の締結後)に被保険者となるとも考えられる。

一方で、実務上は、団体に対する保険募集の前段階、あるいは保険募集と並行

して加入勧奨が行われるケースもあるが、保険募集人からは、団体内部で被保険

者が特定されているか否か(特定されていたにしてもその範囲)は必ずしも明ら

かではなく、どこまでの説明体制が求められるか判断が悩ましい面があった。

○ この点、保険会社・保険募集人は被保険者に直接書面を交付する方法に限らず、団体を

介して説明するような方法を講ずれば同号の「適切な方法」の要件を充足するという見

解がある1。

○ 実務上、個々の被保険者への説明が困難な場合は、団体を通じて被保険者に対し募集資

料を配布する等団体の事情に応じた方法で適切に情報提供が行われていた。

(2) 加入勧奨に関する体制整備

○ 旧法下では、「加入勧奨」は「保険募集」には当たらず、また、基本的には保険業法上

の保険募集に係る規制の対象とはならない旨が明確に示されていた2。

○ 監督上は、(生命保険の実務上用いられている)団体保険・(損害保険の実務上用いられ

ている)団体契約・財形保険の被保険者となる者に対する加入勧奨を対象として、保険

募集に際して顧客に対して行うのと同程度の情報提供や意向確認が行われることを確

保するための措置を講じることが求められていた(旧監督指針Ⅱ-4-2-2(5)①/契約概

要・注意喚起情報に係る体制整備関係、および旧監督指針Ⅱ-4-2-2(5)②/意向確認に係

1 石田満「保険業法における業務運営に関する措置」(損害保険研究 65 巻 3・4 合併号)103 頁参照 2 金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」平成 18 年 2月 28 日 27 頁 39 番のほか、平

成 19 年 12 月 21 日 26 頁 4 番(規則改正案に係るパブリックコメント)、平成 23 年 9月 6日 14 頁 33 番など

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る体制整備関係)。

3. 改正法における団体保険の被保険者に係る募集規制

(1) 行為規制

① 情報提供義務・意向把握義務

○ 改正法 294 条 1項(情報提供義務)・294 条の 2(意向把握義務)

・ 適用場面:保険契約の締結・保険募集・加入勧奨

・ 相手方 :「保険契約者及び被保険者」(改正規則 227 条の 2第 3項)

○ 引受保険会社・取扱保険募集人が加入勧奨を行う場合に限らず、団体が加入勧奨を行う

場合も、引受保険会社・取扱保険募集人が両義務を負う。

② 禁止行為

○ 改正法 300 条 1項 1号に掲げる行為(被保険者に対するもの)に限り、加入勧奨(改正

法 294 条と同一定義)が適用場面に追加された。

○ ただし書きが新設され、改正法 294 条 1項で義務の適用が除外される「保険契約者等の

保護に欠けるおそれがないものとして内閣府令で定める場合」(後述(2)②)につい

ては、「重要事項不告知」は禁止行為から除外され、「虚偽説明」のみ適用される。

(2) 適用除外

義務の適用場面として、加入勧奨に広く網を掛けたうえで、行為規制の必要性や実務等

を勘案し、義務の適用除外となるものが定められた。

① 団体の自治に委ねるもの

○ 改正法 294 条 1項の加入勧奨に付された括弧書きでは、以下Ⅰ・Ⅱの2要件をいずれも

満たすものは義務の適用場面となる加入勧奨から除くこととされている3。

Ⅰ.当該団体保険に係る保険契約者又は当該保険契約者と内閣府令(改正規則 227 条の 2

第 1 項)で定める特殊の関係のある者(当該保険契約者から委託を受けた者。ただし、当

該団体保険の引受保険会社・取扱保険募集人を除く)が加入勧奨を行う場合

○ 「保険契約者から委託を受けた者」から、引受保険会社・取扱保険募集人が除かれてい

るのは、委託元の団体による管理が働きにくいことが想定され、適切な情報提供を確保

するため(パブコメ 21番)。

○ ただし、Ⅰ.の要件を厳密に解釈し、引受保険会社・取扱保険募集人が加入勧奨に関与

した場合は一律義務の対象とすると、取扱保険募集人が委縮し、被保険者との接点を避

3 保険WG報告書において、団体における自治による被保険者への情報提供等の補完を認めるものとして、保

険会社や保険募集人に対して改めて被保険者に対する情報提供等を義務づける必要はない、とされていた類型

である。保険WG報告書 15 頁参照

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けるなど加入者に対する情報提供等の程度の低下等が懸念される。

○ 団体から保険募集と同程度の情報提供等が期待できる限り、重ねて引受保険会社・取扱

保険募集人に情報提供等を義務付ける必要性は乏しく、引受保険会社・取扱保険募集人

が加入勧奨に関与する場合であっても、その行為は団体が行う加入勧奨の「支援」に留

まり、Ⅰの要件への該当性を否定するものではないと考えて差し支えないと思われる

(パブコメ 21番)。

Ⅱ.当該保険契約者から当該団体保険に係る保険契約に加入する者に対して必要な情報が

適切に提供されることが期待できると認められるとき(改正規則 227 条の 2 第 2 項 1

号~15 号に該当する団体保険。)

○ Ⅱ.の要件である、改正規則 227 条の 2第 2項に該当する団体保険(以下、「適用除外

団体保険」という)のうち、1 号から 14 号は、地方公共団体や企業・企業グループ、

労働組合、学校など保険業に該当しないものとして法 2条 1項 3号および同号を受けた

施行令 1条の 3に掲げられた団体が契約者となる団体保険4。

○ 15 号は、バスケット条項として、1 号から 14 号のほか、同項に該当する団体保険の要

件を示すものであり、「団体保険に係る保険契約に関する利害の関係」・「団体の構成員

となるための要件」・「団体の活動と当該保険契約に係る補償の内容との関係」に照らし、

団体と被保険者との間に一定の密接な関係があり、当該団体から加入勧奨を受ける構成

員に対して必要な情報が適切に提供されることが期待できると認められるか、個別具体

的に総合的に判断する(パブコメ 33 番・34番)。

○ 15 号に該当する具体例として、「団体定期保険の運営基準」5(昭和 61 年 3 月 28 日発出

の旧大蔵省銀行局長通達)に列記された第Ⅰ種~第Ⅲ種団体がその構成員に対して加入

勧奨を行う場合は、基本的にこれらの要件に当てはまる(パブコメ 28 番・29 番)。

○ 以上より、1号~14 号までの団体、および 15 号に該当するとされている第Ⅰ種~第Ⅲ

種団体については、基本的には保険商品を問わず、団体から被保険者に対して必要な情

報が適切に提供されることが期待できる類型ということになる。

○ 他方、第Ⅳ種団体やその他の団体については、団体の属性だけでは判断できず、採用す

る保険商品の特性を踏まえ、上記 15 号該当の3要件に照らして判断する6。

② 保険契約者等の保護に欠けるおそれがないもの

4 第 1 号から第 14 号には施行令 1条の 3第 2号に該当するものが含まれていないが、義務の適用を意図する

ものではなく、第 15 号に該当するものとされている(パブコメ 32 番)。 5 保険WG(第 8回)事務局説明資料 16 頁参照

http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/hoken_teikyou/siryou/20121221/01.pdf 6 「必要な情報が適切に提供されることができるかどうか」の観点からは、対象となる保険商品自体の理解の

し易さも重要な要素と思われ、旧監督指針の意向確認書面制度において商品特性に応じて規制の軽重が設けら

れていたことも参考になると考えられる。

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○ 改正法 294 条1項では、「保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして内閣府

令で定める場合は、この限りではない」として、上記①とは別途、適用除外の規定が設

けられた7(改正規則 227 条の 2第 7項、改正監督指針Ⅱ-4-2-2(2)⑨)。

○ 特に団体保険に関する具体的な類型は以下のとおり(改正規則 227 条の 2第 7項)。

イ. 被保険者が負担する保険料の額が零である保険契約

ロ. 保険期間1ヶ月以内、かつ被保険者が負担する保険料が千円以下の保険契約

ハ. 被保険者に対する商品の販売若しくは役務の提供又は行事の実施等に付随して締結

する保険契約

ニ. 確定拠出年金等、年金制度の運営者が契約者となり、同制度の加入者が被保険者とな

る保険契約

(3) 体制整備

① 適用除外団体保険の加入勧奨に係る体制整備

○ 改正前と同様、「保険募集と同程度」の情報提供・意向確認が求められるが、保険募集

に関して求められる情報提供自体が改正されていることに留意が必要89(改正規則 53

条第 1項第 5号、227 条の 8、改正監督指針Ⅱ-4-2-2(2)⑩キ、Ⅱ-4-2-2(3)④イ(注))。

② 改正規則 227 条の 2第 2項に該当しない団体保険の加入勧奨に係る体制整備

ア. 情報提供義務・意向把握義務に係る体制整備

○ 改正規則 227 条の 2第 2項に該当しない団体保険(以下、「適用団体保険」という)の

加入勧奨については、改正法 294 条、294 条の 2、294 条の 3、300 条 1 項(該当条文に

係る監督指針に規定する対応・体制整備を含む)の対象とされ、これらに基づいた対応

が必要となる。

○ 団体自身が当該団体保険の取扱保険募集人の場合、加入勧奨と並行して、団体自ら保険

募集人の立場で両義務を履行することが考えられる。

○ 団体と取扱保険募集人が異なる場合、取扱保険募集人が情報提供義務に係る事実行為の

一部を団体に委託することも認められる余地はあり(パブコメ 418 番)、実務上は保険

会社・保険募集人が作成した情報提供が必要な事項を網羅した書面や意向把握・確認を

7 保険WG報告書において、保険契約者と被保険者が異なる保険契約であって、被保険者に対する情報提供等

を求める必要性が乏しいと考えられる、とされていた類型。保険WG報告書 15 頁参照 8 情報提供が必要な事項として、その他保険契約の締結・加入判断に参考となるべき事項や比較推奨に係る事

項、直接支払サービス等が追加されている(改正規則 227 条の 2第 3項 2号・4号~15 号)。ただし、比較推奨

に係る事項(4号)については、加入勧奨は通常、保険募集人ではなく、「団体」が選別・採用した保険契約を

構成員に案内するものであり、基本的には加入勧奨の場面では情報提供を要する事項に該当しないと考えられ

る。 9 「意向把握」とされていないのは、一般的に団体保険は加入パターンが定型化された単純な仕組みの商品が

採用されている実態があることや、「保険募集人と顧客が共同のうえ相互に顧客のニーズに関する情報の交換」

を前提としない団体保険の形態では、意向把握のプロセスを踏むことは現実的に困難であることを考慮したも

のと思われる。

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行うための書面の配布など、団体の協力を得ながら、適切に義務を果たしていくことが

考えられる。

イ. その他の体制整備

○ 適用団体保険の加入勧奨は保険募集と同等の行為とされ、情報提供義務・意向把握義務

のほか、募集規制に準じた取扱いが求められる。主に以下の点について、加入勧奨にお

ける情報提供及び意向把握・確認等を行う場合の適切な措置を講じることが求められる

(改正監督指針Ⅱ-4-2-2(4))。

(ア) 募集規制の潜脱防止

○ 加入勧奨にあたっては、改正法 300 条 1 項に規定する禁止行為の防止など募集規制に準

じた取り扱いが求められ、募集規制の潜脱が行われないような適切な措置が求められる

(改正監督指針Ⅱ-4-2-2(4)①)。

○ なお、加入勧奨は、改正法300条1項2号以下の禁止行為の適用場面とされていないが、

改正監督指針の当該規定は、2号以下の禁止行為も加入勧奨に直接適用されるという趣

旨ではなく、「加入勧奨にかかる体制整備として、当該規制の潜脱が起こらないよう措

置を求めるもの」とされている(パブコメ 422 番・423 番・424 番)。

(イ) 銀行窓販に係る規制

○ 銀行等が契約者となり、その預金者が被保険者となる適用団体保険の加入勧奨にあたっ

ては、当該団体保険の引受保険会社又は取扱保険募集人は、改正監督指針Ⅱ-4-2-6-2

~Ⅱ-4-2-6-10 に規定されている銀行窓販に係る規制を踏まえた適切な措置を講じる

必要がある(改正監督指針Ⅱ-4-2-2(4)③)。ただし、当該団体保険の取扱保険募集人が

銀行ではない場合は適用がない(パブコメ 434 番)。

(ウ) 電話による加入勧奨に係る規制

○ 適用団体保険において、電話による加入勧奨を行う場合は、電話による新規の電話募集

等に係る改正監督指針Ⅱ-4-4-1-1(5)の規定を踏まえた適切な措置が求められる(改

正監督指針Ⅱ-4-2-2(4)④)。

○ 適用除外団体保険に係る加入勧奨は行為規制と同様、対象外となる(パブコメ 594 番)。

4. 改正されていない他の募集規制の考え方

○ 改正法において、適用場面に「加入勧奨」が明示された条文に対し、同様の手当てがな

されていない他の条文・募集規制では「加入勧奨」は規制対象にならないと考えるので

あろうか。

○ 以下、今般の改正により、改正されていない条文・規制の考え方等に影響が及び得るか、

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また、募集規制に準じた取扱いが求められるとされている適用団体保険では、改正され

ていない主な条文・募集規制についてどのような点に留意すべきか、検討する。

① 法 275 条(保険募集の制限)

○ 適用団体保険における加入勧奨についても法 275 条は直接適用されるものではなく、法

293 条の 3等に基づく体制整備義務の一環として、加入勧奨が適切に実施されるための

措置を講じることが求められる(パブコメ 420 番・421 番)。

○ 法 275 条が保険募集を担う主体を制限しているのは、保険募集においては保険契約者の

利益を侵害する不適正な勧誘等が行われる危険があるので、募集主体の資格を限定して

おく必要があるため、と説明される10。また、「保険募集の取締に関する法律」におい

ても本条の前身となる 9条(募集を行うことができる者)は、「保険契約者の利益を保

護し、あわせて保険事業の健全な発達に資する」という同法の目的を達するための規定

とされていた11。

➤ 適用団体保険であっても、団体自身が加入勧奨を行うこと自体制限されるものではない

と考えるが、団体保険の契約者になれば保険募集人でなくとも実質的に保険の販売がで

きるという点で、本条の存在意義・募集制度の根幹を揺らがすことになりかねず、団体

保険における行為規制適用有無の判断や、適用団体保険の採用・運用には特に慎重を期

すべきである。

( 「➤」以下の記載は筆者による考察・意見。以下同様。)

② 法 283 条(所属保険会社等の賠償責任)

ア.1項

○ 法 283 条 1項

所属保険会社等は、保険募集人が保険募集について保険契約者に加えた損害を

賠償する責任を負う。

○ 加入勧奨への本項適用有無の判断のポイントになると思われる以下3つの観点から検

討する。

Ⅰ.加入勧奨に関して生じた損害は「保険募集について」加えた損害に該当するか。

Ⅱ.加入勧奨の相手方となる被保険者は本条の「保険契約者」に該当するか。

Ⅲ.加入勧奨に関して加えた損害は「保険募集人が加えた損害」に該当するか。

Ⅰ.加入勧奨に関して生じた損害は「保険募集について」加えた損害に該当するか。

○ 「保険募集について」とは、保険募集の定義にある「保険契約の締結の代理又は媒介」

10 山下友信「保険法」(有斐閣,2005 年)146 頁参照 11 鴻常夫監修「『保険募集の取締に関する法律』コンメンタール」(安田火災記念財団,1993 年)137 頁参照

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に限らず、保険募集と密接な関連関係のある行為も含む趣旨とされている12。

○ 改正法 294 条の 3 では、「加入勧奨に係る業務」はその他保険募集の業務に密接に関連

する業務として「保険募集の業務」に含まれるとされているが、「保険募集の業務」は、

保険募集周辺の事務的な業務と思われるダイレクトメール発送業務等が含まれる概念

であり(パブコメ 117 番)、このことをもって加入勧奨に関する行為が「保険募集に密

接な業務」に該当するかどうかは判然としない。

○ 改正前、「加入勧奨」と「保険募集」は、保険に加入しようとする者に対する勧誘・商

品説明・意向確認・申込受付・保険料領収等、具体的な行為・プロセスで明確に区分さ

れるものではなかったが、行為主体・目的において明確な差異があった。

【図表1】加入勧奨・保険募集の行為主体・目的 ※筆者作成

(改正前)

行為 行為主体 目的 (行為規制)

加入勧奨 団体(契約者) 構成員の福利・生活・サービスの向上等 なし

(体制整備)

保険募集 保険募集人 保険募集人自身の事業(保険募集等)のため 適用

(改正後)

行為 行為主体 目的 (行為規制)

加入勧奨

団体(契約者) 構成員の福利・生活・サービスの向上等 適用除外

(体制整備)

保険募集人

・保険募集人自身の事業(保険募集等)のため

・団体からの委託業務(加入勧奨)の遂行 適用

保険募集 保険募集人自身の事業(保険募集等)のため 適用

➤ 改正法では保険募集人も加入勧奨の行為主体となり得ることとなったことで、保険募集

人が自らのために加入勧奨を行う場合や、自らに課せられる義務を履行する場合が想定

されることになるが、このような場合においては「加入勧奨」に関する行為という形式

面をもって、「保険募集について」に該当しないとする結論は適当ではないと思われる。

➤ また、改正法では、「既契約の一部の変更をすることを内容とする保険契約」として、

保険契約の一部を変更する契約(変更契約)も法 294 条 1 項の「保険契約」に該当する

ものとされている(パブコメ 66 番)。被保険者が団体保険に加入する場合、団体保険の

契約変更(加入者追加等)を行うことになるが、取扱保険募集人が行為主体となる加入

勧奨は「変更契約の勧誘」とも考え得るか。

➤ 改正法下では、形式的には加入勧奨に関する行為に起因した損害であっても、「保険募

集について」加えた損害に該当する可能性があり、個別の事案に応じて、対象となる具

体的な行為の主体や目的を勘案のうえ、「保険募集と密接な関連関係」の有無を判断す

12 鴻・前掲(注 11)155 頁参照

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べきと思われる。

Ⅱ.団体保険の被保険者は本条の「保険契約者」に該当するか。

○ この点につき、被保険者や保険金受取人も保険募集に関して損害を被ったのであれば賠

償請求権者となりうると解すべき13、という見解や、保険契約者が被保険者等の委任を

受けて、実質的に被保険者等の代理人的立場で保険契約を締結する場合は、当該被保険

者等に賠償請求を認める意味がある、という見解がある14。

○ 改正法では、情報提供義務は「被保険者」に対しても負うことが明らかにされているこ

とに照らしても被保険者に生じた損害も対象になると考えるべきであるという指摘も

ある15。

➤ 加入勧奨を伴う団体保険では、形式的には団体が契約者となるが、提供された情報に基

づき、当該団体保険への加入を判断するのは被保険者であり、その判断次第で実際に不

利益を被り得るのは当該被保険者であること、また、改正法では保険会社・保険募集人

が加入勧奨の主体として被保険者に損害を与え得ることになったことから、団体保険の

被保険者も本条の「保険契約者」に該当し得ると考えるべきであろう。

Ⅲ.加入勧奨に関して加えた損害は「保険募集人が加えた損害」に該当するか。

○ 適用団体保険において、取扱保険募集人が行為主体となって加入勧奨を行う場合や、直

接被保険者に対し情報提供等を行う場合、これらの行為に起因して被保険者に損害を与

えた場合は「保険募集人が加えた損害」に該当することは疑いない。

○ 一方、適用団体保険であっても加入申込の受付や団体内制度としての説明等、引き続き

団体が主体となる行為も存在する。また、取扱保険募集人が情報提供義務等に係る事実

行為の一部を団体に委託等することも考えられ、引き続き団体と被保険者との接点は相

当程度生じることになる。このような場合において、団体が被保険者に損害を与えてし

まった場合、当該損害が「保険募集人が加えた」と評価されるかどうかが問題となる。

○ この点、保険募集人が団体の行為を利用している以上は、団体は保険募集人の補助者と

して位置づけられ、保険募集人の不法行為責任が成立する可能性は否定されないとする

指摘がある16。

➤ この指摘のとおり、適用団体保険においては、取扱保険募集人が情報提供等の義務を履

行するため、一定の事実行為を団体に委ねることも想定されており、団体が当該事実行

為の遂行につき、被保険者に損害を与えた場合は「保険募集人が加えた損害」と評価さ

れ得るであろう。

ただし、「加入勧奨」は本来、保険会社や保険募集人が団体に委託等するものではな

く、団体に委ねることがあるのは、加入勧奨に伴う情報提供・意向把握に係る一部の

13 山下・前掲(注 10)160 頁参照 14 竹濱修「保険業法逐条解説(ⅩⅩⅧ)」(生命保険論集 176 号)129 頁参照 15 山下友信「保険募集の意義・団体保険の加入勧奨行為の規制」(ジュリ 1490 号)38 頁参照 16 山下・前掲(注 15)38 頁参照

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関東部会報告レジュメ

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事実行為に過ぎない。また、団体保険は団体が構成員向けの福利・生活・サービスの

向上を図る等、団体側の目的で利用されるものである。

このような事情を踏まえると、取扱保険募集人が団体に義務の履行に係る事実行為

を委ねていない場合、団体は義務の履行を補助するものではなく、「保険募集人が加え

た損害」には該当しないと考えるのが適当と思われる。

また、一定の事実行為を団体に委ねる場合であっても、団体の行為は必ずしも保険

募集人の履行補助者としての行為とは限らず、団体自身の目的に基づく行為である可

能性もあり、個々の事案に応じて、加害行為の内容・経緯・目的等を勘案し「保険募

集人が加えた損害」と評価し得るか否か判断すべきであろう。

➤ 以上Ⅰ~Ⅲの検討を踏まえると、本条は改正されていないものの、改正法において加入

勧奨の考え方が見直されたことによって、加入勧奨に関して被保険者に生じた損害であ

っても、本条の対象となり得、当該取扱保険募集人の所属保険会社に損害賠償責任が生

じる可能性が高まったように思われる。

なお、このことは適用団体保険に限らず、適用除外団体保険においても同様と思わ

れる。前述のとおり、適用除外団体保険であっても、「団体保険に係る保険契約の締結

又は保険募集を行った者」が加入勧奨に関与する場合、加入させるための行為に至ら

ない団体の支援であれば行為規制の対象とはならないが、団体の支援の範囲を超えて

加入勧奨したときは行為規制の対象となる(パブコメ 21 番)。取扱保険募集人による

(団体の支援を超えた)主体的な加入勧奨や、課せられる義務の履行に関する行為に

ついては、適用団体保険と適用除外団体の場合と取扱いに差異を設ける合理的な理由

はないと思われ、募集規制に準じた取扱いが求められるとされている適用団体保険の

みならず、適用除外団体保険においても留意が必要であろう。

イ.2項(保険会社の免責事由)・4項(保険会社の求償権)

○ ア.で所属保険会社に損害賠償責任が認められる場合、2 項・4 項の適用を検討するこ

とになる。

○ 2 項では、所属保険会社は、保険募集人の選任・雇用・委託について相当の注意をした

こと、および保険募集人の行う保険募集につき、保険契約者に加えた損害の防止に努め

たことをいずれも立証すれば、1項の損害賠償責任を免れるとされているが、従来から

本条の保険会社の責任は事実上無過失責任に近い解釈・運用が行われてきたところと理

解されている1718。

17 竹濱・前掲(注 14)131 頁 18 本条に相当する銀行法の規定(銀行法 52 条の 59)において、金融庁の法令解説では「実際に(所属銀行

の)免責が認められる場合は限定される」という考え方が示されている。なお、銀行代理業者(許可制・乗合

可)には体制整備義務が課せられている(銀行法 52 条の 44 第 3項)。

金融庁「【法令解説】銀行法等の一部を改正する法律」アクセスFSA36 号(2005 年 11 月 30 日)

http://www.fsa.go.jp/access/17/200511d.html

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○ なお、本項に関しては、保険募集人による不適切な保険募集の発生防止等の観点から、

「保険会社による保険募集人の実効的な監督指導が期待できず、かつ保険募集人が賠償

資力を有する場合は、2項の免責規定を活用すべき」とする見解19がある。

➤ 加入勧奨に係る業務も含めて保険募集人の体制整備義務が導入され、保険会社と保険募

集人の具体的関係に変化が生じ得ると思われるものの、直ちに本項の解釈・運用が変更

されることは考えづらいように思われるが、上記見解は改正法の背景・趣旨に整合する

ものと感じられるところであり、今後の本項を巡る動向を注視したい。

○ また、所属保険会社が保険契約者(団体保険の被保険者)にその損害を賠償したときは、

4項に基づき、保険募集人に求償することができるが、保険募集人は所属保険会社の補

助者として保険会社のために活動しており、それによって保険会社は利益を得ているこ

と、一方で保険募集人は資力の十分でない者も多いことから、保険会社と保険募集人の

具体的な関係により、求償権を制限することも認められるべきとされている20。

○ 保険WG報告書では、保険募集人の体制整備義務等改正法の効果を見極めたうえで、改

めて検討することが適当とされ、導入は見送られたが、特に乗合代理店を念頭に保険会

社による管理・指導の規律付け補完・強化の観点から、保険会社による求償権行使を義

務づける考え方が示されている21。

➤ 改正法の保険募集人の体制整備義務に関して、所属保険会社の指導・監督に従い適切か

つ主体的に業務を実施する体制で足るとされている個人代理店・小規模法人代理店(パ

ブコメ 452 番)は引き続き従来の考え方も当たり得ると考えられるが、保険募集人の規

模や業務の特性等に応じて、改正法の趣旨を踏まえた適切な判断・運営が必要である。

③ 改正法 294 条第 3項(顧客に対する説明)

○ 顧客に対する保険募集人の権限等の説明については、保険募集人は保険契約の締結の代

理をする場合と媒介をする場合があり、どちらの場合かによって告知や保険料の受領の

方法等が異なることがあるところ、保険契約者が保険募集人の権限(代理か媒介か)を

誤解して不測の損害を被ることを防止する趣旨とされている22。

➤ 本項の適用場面に加入勧奨が追加されていないのは、保険会社は、(適用団体保険の被

保険者に対する情報提供義務・意向把握義務の遂行を取扱保険募集人に委託することは

あっても)勧誘や加入申込の受付等、加入勧奨自体を保険募集人に委託するものではな

い(なんら権限を与えるものではない)ことを踏まえたものと思われるが、被保険者に

対し権限の誤認を招かないよう留意が必要であろう。

19 木下孝治「募集チャネルの多様化と保険募集規制の課題」(保険学雑誌 588 号)76 頁参照 20 鴻・前掲(注 11)159 頁参照 21 保険WG報告書 20 頁参照 22 安井孝啓「改訂版 最新 保険業法の解説」(大成出版社,2010 年)979 頁参照

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④ 法 309 条(保険契約の申込みの撤回等)

○ 本条は、「保険会社等若しくは外国保険会社等に対し保険契約の申込みをした者又は保

険契約者」は、書面により、申し込みの撤回等を行うことができるとされている。申し

込みの撤回等を行うことができるのは、「保険契約の申込みをした者又は保険契約者」

とされていることから、加入勧奨において、被保険者が契約者である団体に対して行っ

た加入申込みに適用がないことは明らかであろう。

➤ なお、団体保険では、保険期間1年以下の保険商品・被保険者が自発的に郵便等で加入

を申込む形態、つまりクーリングオフ対象外の商品・形態が採られることが一般的であ

り、その限りでは保険募集の場合と差異はなく、手当の必要性は乏しい。

➤ 一部の団体保険には、団体内の加入申込受付の仕組みを構築する中で、自主的にクーリ

ングオフのように申込受付け後の取消可能期間を設ける例も見られる。

5. まとめ

➤ 改正法において、実務にも配慮のうえ、団体保険の被保険者に対する募集規制の明確化

が図られたことは、今後、団体保険に係る保険募集・加入勧奨の一層の品質向上に取組

み、被保険者の保護を充実させていくうえで、大きな意義がある。

➤ 今後、ICTの進展や他業界からの参入等、環境変化によって、団体保険の類型や加入

勧奨の方法も多様化していくことが考えられる中、団体と構成員の関係が希薄な団体で

の安易な団体保険の利用に慎重な対応を促す意味でも重要である。

➤ 保険会社・保険募集人は今般の改正の趣旨を踏まえ、新たに出現する団体保険の類型も

含め、行為規制の適用有無を慎重に判断するとともに、情報提供、意向把握・確認、そ

の他募集規制が一層実効性のあるものになるよう、創意工夫・改善活動に努めていくこ

とが肝要である。

➤ また、改正されていない募集規制についても当該規制の趣旨や、改正に伴い考え方が変

わり得る点に留意した対応が必要であろう。

➤ なお、適用団体に該当すると考えられる類型のうち、家電製品販売業者が契約者となり、

家電製品購入者を被保険者とする動産総合保険(団体保険)のような類型は、製造・販

売業者が製品購入者に提供している「延長保証」と機能の面で重なるものであるが、「延

長保証」には保険業法の規制が及ばない。一方の団体保険は改正法で規制が一定強化さ

れることになるが、両者が重なるマーケットの動向や両者の線引きのあり方については

動向を注視したい。

以上

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【参考1】改正法における団体保険の被保険者に対する募集規制に係る条文

規制 対象/保険会社 対象/保険募集人

(1)

行為規制

・法 294 条 1 項(情報提供義務)

・法 294 条の 2(意向把握義務)

・法 300 条 1 項 1号(禁止行為/虚偽説明・重要事項不告知)

(2)

適用除外

・規則 227 条の 2第 1 項(団体保険の契約者と特殊な関係にある者)

・規則 227 条の 2 第 2 項(団体保険における保険契約者から加入者に対して必要な

情報が適切に提供されることが期待できると認められるとき)

・規則 227 条の 2第 7 項(情報提供義務の適用除外)

・規則 227 条の 6(意向把握義務の適用除外)

・監督指針Ⅱ-4-2-2(2)⑨(情報提供義務の適用除外)

(3)

体制整備

- ・法 294 条の 3(保険募集人の体制整備義務)

・規則 53 条 1項 4 号(情報提供に係

る体制整備)

・規則 53 条 1項 5 号(適用除外団体

保険における保険契約者から加入者

への情報提供等の確保)

・規則 227 条の 7(社内規則等)

・規則 227 条の 8(適用除外団体保険におけ

る保険契約者から加入者への情報提供等の確

保)

・監督指針Ⅱ-4-2-2(2)⑩キ.(適用除外団体保険における保険契約者から被保険者

への情報提供の確保)

・監督指針Ⅱ-4-2-2(3)①カ.(適用除外団体保険における意向把握・確認の方法)

・監督指針Ⅱ-4-2-2(3)④イ.(注)(適用除外団体保険における被保険者への意向確

認の確保)

・監督指針Ⅱ-4-2-2(4)(適用団体保険の加入勧奨に係る体制整備)

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【参考2】

【改正前の団体保険・改正後の適用除外団体保険の当事者関係図】

【改正後の当事者関係図(適用団体保険)】

【改正後の当事者関係図(適用除外団体保険/例外ケース)】

構成員(被保険者)

加入勧奨

加入申込

保険会社業務委託等

取扱保険募集人 保険募集

(保険契約締結)

団体(契約者)

情報提供等に係る一部事実行為

情報提供義務・意向把握義務・禁止行為(300条1項1号)

構成員(被保険者)

加入勧奨

加入申込

保険会社業務委託等

取扱保険募集人 保険募集

(保険契約締結)

団体(契約者)

情報提供等に係る一部事実行為

情報提供義務・意向把握義務・禁止行為(300条1項1号)

保険会社

業務委託等

取扱保険募集人

保険募集(保険契約締結)

団体(契約者)

加入勧奨構成員(被保険者)

加入勧奨の委託

情報提供義務・意向把握義務・禁止行為(300条1項1号)

加入勧奨の一部

※団体が取扱保険募集人に加入勧奨を委託等する例外的なケース

保険会社

業務委託等

取扱保険募集人

保険募集(保険契約締結)

団体(契約者)

加入勧奨構成員(被保険者)

加入勧奨の委託

情報提供義務・意向把握義務・禁止行為(300条1項1号)

加入勧奨の一部

※団体が取扱保険募集人に加入勧奨を委託等する例外的なケース

構成員(被保険者)

加入勧奨保険会社

業務委託等取扱保険募集人

保険募集(保険契約締結) 団体

(契約者)

【体制整備義務】(情報提供・意向確認)

加入勧奨の支援

構成員(被保険者)

加入勧奨保険会社

業務委託等取扱保険募集人

保険募集(保険契約締結) 団体

(契約者)

【体制整備義務】(情報提供・意向確認)

加入勧奨の支援

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