EU・カナダ包括的貿易投資協定(CETA)による 農産品の関 …...EU・カナダ包括的貿易投資協定(CETA)による 農産品の関税引き下げの見通しと主要点
教養教育科目 はじめての経済学 - u-toyama.ac.jp...7 企業の投入物 産要素...
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教養教育科目
はじめての経済学第 3 回経済の循環
2016 年 4 ⽉ 25 ⽇(⽉)5 限担当教員: 経済学部唐渡広志(からと・こうじ)研究室: 経済学研究棟4階432号室email: [email protected]: http://www3.u-toyama.ac.jp/kkarato/
1
講義の目的
経済循環図を利⽤して,お⾦の流れからみた「経済」の全体像を理解する。「経済」を理解するための⾔葉の意味を知る。経済循環図を利⽤して,どのようなときに「経済の規模」が拡⼤・縮⼩・決定するのかを理解する。
2
経済循環
家計企業
海外の財・サービス市場 お⾦の流れ
消費 C
所得Y
貯蓄 S投資 I
政府⽀出 G
租税 T
⽣産要素市場
政府
国債 B
租税 T
所得 Y
財・サービス市場
輸出 X 輸⼊M
3
(C + G + X−M)
補助⾦ U 社会保障 U
経済活動と経済循環:キーワード 経済活動
財・サービスを消費したり,⽣産したり,取引したりすること。
経済主体 経済活動の単位を⽰す:家計,企業,政府
経済循環図とは,ある⼀定期間における市場を通じた経済主体の経済活動を単純化して⽰したものである。
財・サービス市場 家計:さまざまな⽣産物やサービスを買う
企業:さまざまな⽣産物やサービスを売る
• 売り買い所有権の移転
⽣産要素市場 家計:労働,資本,⼟地を企業に貸す
企業:労働,資本,⼟地を家計から借りる
• 貸し借り時期が来たら所有者に返す(所有権は移転しない,使⽤権の売買)
4
お金と物・人の流れ:より単純化された経済循環図
5
企業
⽣産要素市場
財・サービス市場
お⾦の流れ物・⼈の流れ
⽣産要素(需要)
消費財・サービス(供給)
収⼊
⽀出
家計
⽀出
収⼊
消費財・サービス(需要)
⽣産要素(供給)
売上
所得費⽤
消費
投⼊
産出
6
企業の行動:投入と産出
投⼊(労働,資本,⼟地の使⽤権を購⼊) 労働者を雇う ⼟地やオフィスを買う・借りる 銀⾏から融資を受ける,株式や社債を発⾏する ⼯場やオフィスで利⽤する設備・備品を買う・借りる 中間財を購⼊する
産出(⽣産物を販売) 財・サービスを⽣産・販売する
企業の⽣産活動 産出家計
投⼊他の企業
労働,⼟地,資本
家計
他の企業
中間財:原材料,燃料,仕⼊れ品
7
企業の投入物 ⽣産要素
労働,⼟地(⽣産することができない投⼊物)
資本(⽣産することができる投⼊物であり,⻑期間に渡って使⽤されるもの)• 道具,機械,⼯場,オフィスなどの物的資本.または資⾦そのもの(貨幣資本).
中間投⼊物(中間財・サービスともいう) ⽣産することができる投⼊物のうち短期間の経済活動で使い切ってしまうもの(原材料,燃料,仕⼊れ品など)
例 ⾃動⾞製造業の場合:⾞体,エンジン,タイヤなどの多くの部品
床屋の場合:シャンプー,整髪剤など
投⼊物の分類
⽣産することができない労働
⽣産要素投⼊物
⼟地
⽣産することができる資本中間投⼊物
8
生産要素使用の対価と生産要素市場
⽣産要素使⽤の対価:賃⾦,地代,レンタル料,利⼦,配当など借りる=⼀定期間使⽤する権利(使⽤権)を購⼊すること。労働の使⽤権の購⼊賃⾦⼟地の使⽤権の購⼊地代資本の使⽤権の購⼊
• 物的な資本の場合– コピー機のレンタル料⾦,オフィスの賃貸料など
• 貨幣的な資本– ⾦融機関からの借り⼊れ,社債の発⾏利⼦
– 株式を発⾏して資⾦調達配当
⽣産要素市場労働市場,⼟地市場,資本市場
9
生産要素使用の対価(内訳)
データ出所:「法⼈企業統計調査」財務省
⾮鉄⾦属製造業
サービス業
中間投⼊物の対価は含まれない
⽣産要素の中では労働への対価が最も⾼い割合を占めている
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家計の収入:所得
家計は,消費と貯蓄を⾏う主体であると同時に,労働,⼟地,資本など「⽣産要素の使⽤権」の所有者である.労働サービス使⽤権の提供賃⾦⼟地サービス使⽤権の提供地代資本サービス使⽤権の提供:
• 定期預⾦からの利⼦• 株式購⼊による利潤配当• 特許料 など
⽣産要素提供の対価として,家計が獲得する収⼊のことをまとめて「所得」とよぶ。
所得
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所得と消費・貯蓄ある家計の1ヶ⽉の消費と貯蓄(世帯主の年齢45-49歳の平均)
所得 消費と貯蓄可処分所得 390,292 消費 295,494
貯蓄 94,798税⾦・社会保険料 74,373 税⾦・社会保険料 74,373合計 464,665 464,665
データ出所:「家計調査」総務省
消費の内訳 295,494 ⾷料 64,272 住居 16,794 光熱・⽔道 27,787 家具・家事⽤品 7,463 被服及び履物 10,429 保健医療 10,819 交通・通信 46,223 教育 19,400 教養娯楽 29,522 その他の消費⽀出 62,785 可処分所得=所得-税⾦・社会保険料
貯蓄=可処分所得のうち消費しなかった⾦額
貯蓄の⾏⽅銀⾏預⾦・郵便貯⾦,有価証券,保険・年⾦準備⾦,住宅や⾞のローン返済など
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貯蓄と投資
経済学における「貯蓄」の概念消費しなかった部分を「貯蓄」という(貯蓄残⾼は別の概念)
• 銀⾏に預ける,年⾦を⽀払う,ローンの返済を⾏う• 株に投資をする.
– 個⼈にとっては投資だが,経済全体のお⾦の流れからみると「貯蓄」と考える
経済学における「投資」の概念「企業」が銀⾏からの融資や株式・社債の発⾏で得た資⾦を元に,
• ⼯場に新しい設備を導⼊する• 運転資⾦にして従業員の給与に充てる• コンピューター・サーバーをレンタルすること
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フローとストック
日付 お支払い金額 お預かり金額 摘要 残高
07/06 18,773 ○○カ-ド 500,000 07/15 200 利息 500,200 08/01 250,000 給与 750,200 08/02 7,540 公共料金 742,660 08/02 210 テスウリヨウ 742,450
フローデータ⼀定期間の間に⽣じる量
ストックデータその時点までに存在する量
(累積した量)貯蓄残⾼
経済循環図はフローデータを扱っている
生産要素市場におけるお金とモノ・人の流れ
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お⾦の流れモノ・⼈の流れ
労働市場
⼟地市場
⽀出
家計
収⼊
資本市場
⽣産要素市場
企業
貯蓄投資
所得
収⼊ ⽀出
賃⾦,地代,利⼦,配当など
15
単純化された経済循環図(お金の流れだけに注目)
家計企業
財・サービス市場
⽣産要素市場
お⾦の流れ消費 C
所得Y
資本市場貯蓄 S投資 I
↓⽀出 [4]
↓収⼊ [5]
[1]収⼊↑
[2]⽀出↑
↓[3]⽀出↑収⼊ [6]
いろいろ省略してすっきり
支出と収入
[1]. 収⼊:全家計が受け取った⾦額(所得)Y
[2]. ⽀出:全家計が⽀払った消費 C
[3]. ⽀出:全家計の⽀払った貯蓄 S
[4]. ⽀出:全企業が⽀払った⾦額(所得)Y
[5]. 収⼊:全企業が受け取った消費 C
[6]. 収⼊:全企業が受け取った投資 I
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消費: Consumption
貯蓄: Saiving
投資: Invetment
経済規模(所得の大きさ)の決定1
17
ある⼀定期間において,全家計が受け取った所得 [1]と全企業が⽀払った所得 [4]が同じならば,全家計が⽀払った⾦額と全企業が受け取った⾦額は等しくなるので,
消費 C + 貯蓄 S = 消費 C + 投資 I⇔
貯蓄 S = 投資 I
が成⽴する(貯蓄されたものは,必ずどこかに投資されている)。すなわち,貯蓄と投資が等しいとき,経済の規模(所得Y)が決まる。
⾦額受け取った
⾦額⽀払った
⾦額⽀払った
⾦額受け取った
企業:家計:
654321
ICYSCY
⼀般には,経済の規模(所得)をGDPという概念で表現します(後⽇学習)。
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経済循環の数値例1
⽣産要素市場
財・サービス市場
資本市場
家計企業Y = 100
C = 60
S = 40
C + I = 100
I = 40
C = 60
お⾦の流れ
所得: Y
消費: Consumption
貯蓄: Saiving
投資: Invetment
(例えば,銀⾏)
労働市場
⼟地市場
例. 経済規模の拡大と縮小
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銀⾏から企業への貸し出し(投資I )が増えると,⽣産要素市場を通じて,家計に⼊る所得 Y が増える。
1. 所得Y が増えると,消費 C と貯蓄 S が増える。
2. 消費 C が増えると,企業の収⼊が増える。
3. 企業の収⼊が増えると,家計に⼊る所得Y が増える。
4. 1に戻る経済の規模は拡⼤する
銀⾏から企業への貸し出し(投資I )が減ると,⽣産要素市場を通じて,家計に⼊る所得 Y が減る。
1. 所得Y が減ると,消費 C と貯蓄 S が減る。
2. 消費 C が減ると,企業の収⼊が減る。
3. 企業の収⼊が減ると,家計に⼊る所得Y が減る。
4. 1に戻る経済の規模は縮⼩する
20
投資の増加と経済成長
データ出所:内閣府『国⺠経済計算』
期間: 1981 - 2010
1988年
1989年
1990年
2008年
2009年
-10
-8
-6
-4
-2
0
2
4
6
8
10
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25
経済成⻑率
[%]
企業の設備投資の増加率 [%]
経済規模の拡⼤
経済規模の縮⼩
21
政府の行動
政府から市場へ:政府⽀出(公共サービスや社会保障)公共サービス:⺠間経済(市場)に任せておいても提供されない(されにくい)もの。外交,橋,灯台,道路,国防など。
社会保障:児童,⾼齢,障害への⼿当。⽣活保護。医療(国⺠皆保険制度)。失業,労災のための給付。
市場から政府へ:徴税企業,家計からの租税収⼊国債*の発⾏:資本市場からの資⾦調達
• 公共事業や財政⾚字補填のための国債• 家計や企業が国債を購⼊する。
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単純化された経済循環図(お金の流れだけに注目)
家計企業
財・サービス市場
⽣産要素市場
お⾦の流れ消費 C
所得Y
資本市場
貯蓄 S投資 I
↓⽀出 [4]
↓収⼊ [5]
[1]収⼊↑
[2]⽀出↑
↓[3]⽀出↑収⼊ [6]
政府⽀出 G
租税 T1
政府租税 T2
所得Y
→⽀出 [8] ←⽀出 [7]
↑⽀出 [9]
政府⽀出: Government Expenditure租税: Tax,国債は省略
C + I + G
支出と収入
[1]. 収⼊:全家計が受け取った⾦額(所得)Y
[2]. ⽀出:全家計が⽀払った消費 C
[3]. ⽀出:全家計が⽀払った貯蓄 S
*[7]. ⽀出:全家計が⽀払った租税 T1
[4]. ⽀出:全企業が⽀払った所得 Y
*[8]. ⽀出:全企業が⽀払った租税 T2
[5]. 収⼊:全企業が受け取った⾦額(消費)C
[6]. 収⼊:全企業が受け取った⾦額(投資)I
*[9]. 収⼊:全企業が受け取った⾦額(政府⽀出)G
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消費: Consumption
貯蓄: Saiving
投資: Invetment
租税: Tax
政府⽀出: Government Expenditure
経済規模(所得の大きさ)の決定2
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ある⼀定期間において,全家計が受け取った所得と全企業が⽀払った所得(租税T2 を除く)が同じならば,全家計が⽀払った⾦額と全企業が受け取った⾦額は等しいので,
消費 C + 貯蓄 S + 租税 T1 = 消費 C + 投資 I + 政府⽀出 G − 租税 T2
⇔
貯蓄 S + 租税 T1 +租税 T2 =投資 I + 政府⽀出 G
が成⽴する(貯蓄されたものは,必ずどこかに投資されている)。すなわち,貯蓄と投資が等しいとき,経済の規模(所得Y)が決まる。
金額受け取った金額
支払った
金額支払った
金額受け取った
企業:
家計:
2
1
TGICYTSCY
⺠間貯蓄 公的貯蓄 ⺠間投資 公共投資
25
経済循環の数値例2
財・サービス市場
家計企業
Y = 100
C = 60
S = 30
Y = 100
I = 30
C + G = 80
政府 T1 = 10
G = 20
⽣産要素市場
T2 = 10
⾦融機関
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海外との取引,企業の貯蓄
家計企業
海外の財・サービス市場
お⾦の流れ
消費 C
所得Y
家計の貯蓄 S1投資 I
政府⽀出 G
租税 T1
⽣産要素市場
⾦融機関
政府租税 T2
(C + G + X−M)
所得Y
財・サービス市場
輸出 X 輸⼊M
企業の貯蓄 S2
消費支出,政府支出,貯蓄
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• 家計は貯蓄を取り崩している(社会の⾼齢化の影響)。• 企業は内部留保を増やしている。⾃⼰資⾦での投資や借⾦の返済。
-50
0
50
100
150
200
250
300
350
消費⽀出政府⽀出家計の貯蓄企業の貯蓄
家計の貯蓄企業の貯蓄
経済規模(所得の大きさ)の決定3
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ある⼀定期間において,全家計が受け取った所得と全企業が⽀払った所得(租税と貯蓄を除く)が同じならば,全家計が⽀払った⾦額と全企業が受け取った⾦額は等しいので,
消費 C + 家計の貯蓄 S1 + 租税 T1 + 輸⼊M =消費 C + 投資 I + 政府⽀出 G +輸出 X − 租税 T2 −企業の貯蓄 S2
⇔
貯蓄 (S1 +S2)+ 租税 (T1 + T2) =投資 I + 政府⽀出 G + (輸出 X − 輸⼊M)
が成⽴する。
金額受け取った金額
支払った
金額支払った
金額受け取った
企業:
家計:
22
11
STXGICYMTSCY
国内貯蓄 国内投資 経常収⽀
貯蓄超過と財政赤字
29
経常収⽀
貯蓄 S + 租税 T =投資 I + 政府⽀出 G + (輸出 X − 輸⼊M)
貯蓄 S-投資 I=政府⽀出 G-租税 T + (輸出 X − 輸⼊M)
貯蓄超過(+/ − )
経常収⽀(+/ − )財政⾚字(−/+)
近年の⽇本経済• 家計と企業:貯蓄超過(家計の貯蓄は減っているが,企業の貯蓄は増えている)
• 政府:慢性的な財政⾚字政府は家計や企業の貯蓄を利⽤して国債を買っている(⽇本国債の買い⼿のほとんどが⽇本の家計や企業)
世界全体の経済• 世界全体の貯蓄と投資は⼀致する(貯蓄されたものは必ずどこかに投資されている)
国内貯蓄 国内投資
輸出と輸入
30
0
20
40
60
80
100
1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015
輸出・輸⼊額
[兆円
]
輸出輸⼊ 経常収⽀⿊字
データ出所:「貿易統計」財務省
海外への⼯場移転の活発化(現地への中間財輸出,完成品の逆輸⼊増⼤)
リーマンショック
まとめ 経済循環図
経済活動,経済主体,財・サービス市場,⽣産要素市場
企業の⾏動 投⼊と産出 投⼊物:⽣産要素,中間投⼊物(中間財・サービス)
⽣産要素使⽤の対価:賃⾦,地代,利⼦,配当など
家計の⾏動 家計:⽣産要素使⽤権の所有者 所得:⽣産要素使⽤権の対価 可処分所得:所得から税⾦・社会保険料を除いた⾦額
貯蓄:可処分所得のうち消費しなかった⾦額。株式への投資も貯蓄と考える。
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貯蓄と投資(⺠間経済) 貯蓄と投資が等しいとき経済の規模が決まる。
企業の投資が増えると,経済の規模が拡⼤する。
企業の投資が減ると,経済の規模は縮⼩する。
貯蓄と投資(⺠間経済と公共経済) 政府の租税や国債の発⾏は公的な貯蓄になる。
⺠間貯蓄,公的貯蓄の和が⺠間投資,公共投資の和に等しいところで経済の規模が決まる。
貯蓄と投資(⺠間経済と公共経済,海外)
国内貯蓄が国内投資と経常収⽀の和に等しいところで経済の規模が決まる。
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参考文献
1. N.G.マンキュー(2014)「マンキュー⼊⾨経済学第2版」pp.38 – 40, 388 – 392 .
2. ⼋⽥達夫(2013)「ミクロ経済学 Expressway」pp.21-31