抗体注射剤製造時の注意点について本日の研修で知ってほしいこと 2...

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2018年9月14日 第一三共プロファーマ株式会社 技術部 畠山敏雄 CONFIDENTIAL 抗体注射剤製造時の注意点について ~低分子注射剤の製造方法と比較して~ 富山県製剤技術研修会(第4回)

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2018年9月14日第一三共プロファーマ株式会社技術部畠山敏雄

CONFIDENTIAL

抗体注射剤製造時の注意点について~低分子注射剤の製造方法と比較して~

富山県製剤技術研修会(第4回)

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本日の研修で知ってほしいこと

2

本研修では、これまで培ってきた注射剤製造技術の知識と技術を基本としながら、主に抗体注射剤を製造する際の注意点について、シングルユースシステム技術を紹介しながら説明します

抗体注射剤を製造する際の注意点 シングルユースシステム技術

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目 次

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1. 抗体について2. 低分子医薬品とバイオ医薬品の違い3. 抗体注射剤を製造する際の注意点4. シングルユースシステム技術について5. プレフィルドシリンジ製剤について

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抗体について(1)

4

βシート

H ON C

C NO H

水素結合

2次構造︓単純な立体構造1次構造のポリペプチド鎖が、水素結合により単純な立

体構造をしたものを2次構造という。螺旋構造になったものをαへリックスという。プリーツ状の構造になったものをβシートという

αへリックス

抗体(タンパク質) は、ペプチド結合やジスルフィド結合のような共有結合の他、弱い非共有結合(水素結合、疎水結合など)により、複雑な立体構造を形成している

システイン同士ジスルフィド結合(S-S結合)

3次構造︓複雑な立体構造2次構造体(αへリックス、 βシート)が、共有結合、水素

結合、疎水結合、イオン結合で複雑に組み合わさり、立体構造を形成し安定に保たれている

出典︓東京大学生命科学教育用画像集

H N C CH H

R1

ON C C OHH H O

R2H2O ペプチド結合

1次構造︓アミノ酸の配列順序タンパク質を構成するアミノ酸(20種類)の配列順序を1次構造という (ポリペプチド︓アミノ酸が10個以上結合)

アミノ酸 アミノ酸

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βシートαへリックス

抗体について(2)

抗体医薬品の主流はIgG1抗体で、『Y』字の形をとり、2本の重鎖と2本の軽鎖の計4本のポリペプチド鎖より成る

抗体は抗原だけに結合(特異性)する性質を持つ 抗体の性質はタンパク質を構成するアミノ酸の種類や割合、配列などで決定される

SS SS

可変領域(抗原結合部位)

SSSS

ジスルフィド結合

定常領域

重鎖

軽鎖

IgG1抗体

抗原

出典︓東京大学生命科学教育用画像集

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抗体について(3)

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SS SSSSSS

ピログルタミン酸化

脱アミド化

NH NH2

ONH2

NH

ONH

グルタミン(Gln)

NH

O

NH2

O

NH

NH

O

OH

O

NH N

H

O

O

OH

HN

変性 酸化S S

O

メチオニン(Met)

アスパラギン酸(Asp)

凝集体

断片化

抗体はタンパク質で構成され、振盪によるストレスだけでも、凝集体が生成したり、断片化する恐れがあります

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タンパク質の凝集体形成は、薬効減少だけでなく、免疫原性の要因となる可能性がある。(副作用)

何故、凝集体が生成するといけないのか?

出典︓Characterization of Antibody Aggregation_J.Pharm.Sci. (2010) 99 764-781

Subvisible particles(SVP)と定義される0.1~10μmの粒子の規制や評価が検討されている。(USP<1787>では、2-10μmのモニタリングが推奨)

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低分子医薬品とバイオ医薬品の違い

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低分子医薬品とバイオ医薬品の違い (1)

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バイオ医薬品有効成分がタンパク質由来(成長ホルモン,インスリン,抗体など)である

薬、あるいは細胞,ウイルス、バクテリアなどの生物から産生される物質に由来する薬。化学合成の低分子医薬品に比べて分子量が大きく複雑である。

出典︓Clinical considerations for biosimilar antibodies. Mellstedt H.EJC Suppl. 2013 Dec;11(3):1-11.NEB

出典︓バイオ医薬品 医療の新しい時代を切り開く 日本製薬工業協会

低分子医薬品段階的な化学合成の工程を経て生産される薬。低分子であり、比較的単純

な有機化合物である。

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低分子医薬品分子量 小さい(主に500以下)

剤形 主に錠剤

原薬の製造法 主に化学合成

保管方法 常温

血中半減期 数時間

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低分子医薬品とバイオ医薬品の違い (2)

Abso

rban

ceat 214

nm

Time (minutes)

バイオ医薬品非常に大きい(数千~15万程度)

主に注射剤

生物(細胞)を利用した方法で生産

冷蔵/冷凍

数日~数週間(抗体の場合)

Abso

rban

ceat 214

nm

Time (minutes)

出典︓ICH Q3B・ 報告が必要とされる閾値・ 構造決定が必要とされる閾値・ 安全性の確認が必要とされる閾値

有効成分

目的物質(不均一性)

目的物質関連物質

出典︓ICH Q6B目的物質関連物質とは・・・・製造中や保存中に生成する目的物質の分子変化体で、生物活性があり、

製品の安全性及び有効性に悪影響を及ぼさないもの。これらの分子変化体は目的物質に匹敵する特性を備えており、不純物とは考えない。

不純物

製造工程由来不純物

目的物質由来不純物(凝集体など)

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低分子注射剤原薬 粉体(多くは室温)

製剤化工程

剤形

貯法

水性注射剤(最終滅菌、無菌操作法)凍結乾燥注射剤

多くは室温

原薬

液調製(添加剤、pH調整など)

製剤

低分子医薬品とバイオ医薬品の違い (3)

写真提供︓ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社

抗体注射剤溶液(多くは冷凍、冷蔵)

水性注射剤(最終滅菌、無菌操作法)凍結乾燥注射剤

多くは冷蔵

原薬

液調製(添加剤、希釈など)原薬をそのまま充填する場合もある

↓製剤

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抗体注射剤を製造する際の注意点

本日、ご紹介する注意点は、必ずしも全ての品目や製造施設に適用されるものではありません。一般的に考えられる参考情報としてご活用ください。

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抗体注射剤の製造方法

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WCB融解

培養1250mLフラスコ→1Lスピナーフラスコ→5Lスピナーフラスコ→20Lプラスチックバック→250Lファーメンター

培養21000Lバイオ

リアクター

ハーベスト(フィルターろ過による細胞分離)

培養35000Lバイオ

リアクター

培養上清液

精製工程

精製1プロテインA

カラム

精製2陽イオン交換カラム

濃縮・緩衝液置換1

ウィルス除去

出典 ヒューマンサイエンス財団 抗体医薬品を対象としたモジュール2.3 モックアップ(記載例)2018年5月

低pH処理ウイルス不活化

精製3陰イオン交換カラム

疎水カラム

濃縮・緩衝液置換2

培養上清液

培養工程

製剤工程

写真提供︓ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社

無菌ろ過

凍結乾燥

融解 混合 充塡

半打栓

巻締め全打栓

シングルユースシステム 又はSUS316L設備 凍結乾燥製剤

水性注射剤

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無菌ろ過

乾熱滅菌

洗浄洗浄

凍結乾燥融解 混合 充塡 半打栓 巻締め

原薬輸送

包装

製剤輸送

蒸気滅菌

ゴム栓バイアル添加剤(あれば)原薬

選別

-70℃以下-20℃±5℃

5±3℃

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シングルユース

抗体注射剤の品質に及ぼす製造工程は ?

無菌ろ過

乾熱滅菌

洗浄洗浄

凍結乾燥融解 混合 充塡 半打栓 巻締め

原薬輸送

包装

製剤輸送

蒸気滅菌

ゴム栓バイアル キャップ添加剤

(あれば)原薬

選別

-70℃以下-20℃±5℃

5±3℃

抗体注射剤の品質(凝集体、断片体等)に影響を与えそうな製造工程はどこですか?

キャップ

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抗体注射剤の品質に及ぼす製造工程

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融解 混合 無菌ろ過 充填 凍結乾燥 巻締め水分

再溶解時間

不純物︓凝集体不純物︓断片体

無菌性

CQA

リスクあり リスクなし

低分子

注射剤にもある項目

抗体

注射剤

・・

出典 EFPIA Working Group - Mock CTD P.2 Document

工程名 影響因子融解 凍結融解ストレス混合 混合時のシェアストレス無菌ろ過 無菌ろ過時のシェアストレス充填 充填時のシェアストレス凍結乾燥 凍結、乾燥によるストレス

工程名 影響因子輸送 振盪によるシェアストレス製造室の環境等 製造室の温度や光の影響

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抗体注射剤の処方例

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Component Amount Function A-Mab 500 mg Active ingredient Sucrose 1.8 g Isotonicity agentAcetic Acid 20 mM Buffering agent Polysorbate 20 2 mg Surfactant Sodium Acetate q.s. to pH 5.3 pH adjustment WFI q.s. to final volume of 20 mL Solvent

出典︓EFPIA Working Group - Mock CTD P.2 Document, Overall risk assessment prior to process characterization

出典︓Advanced Drug Delivery Reviews 63 (2011) 1118‒1159, Protein‒excipient interactions: Mechanisms and biophysical characterization applied to protein formulation development一部変更

添加剤の例 備考等張化剤 塩化ナトリウム、スクロース、トレハロース 浸透圧調整、凍結保護剤

緩衝剤 酢酸、リン酸、ヒスチジン pH維持、緩衝イオンによるタンパクの安定化

界面活性剤 ポリソルベート20、ポリソルベート80 抗体の吸着防止抗体の安定化(物理的(振盪、混合等)ストレス)

pH調節剤 水酸化ナトリウム、塩酸 pH調整(緩衝剤のみでpH調整する傾向)

安定化剤 アルギニン、グリシン、スクロース、トレハロース

抗体の安定化(物理的(振盪、混合等)ストレス、光・熱ストレス)

界面活性剤が処方される場合、フィルター完全性試験において、バブルポイント値が低下することがある(実液でのバブルポイントレシオの活用を検討)

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融解工程

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原薬(凍結)の輸送

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冷凍輸送時の温度分布バリデーション、輸送試験(振動、落下試験)を必要に応じて実施する

原薬保管容器(Celsius)バッグ容量︓2L、4L、6L、12L冷却温度︓-80℃まで滅菌︓ガンマ線滅菌済

保護シェルを分解するとプラスチックバックが入っている

温度ロガー

入荷時の荷姿

原薬保管容器(Celsius)の梱包形態

写真提供︓ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社

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原薬の凍結/融解

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熱 熱濃度高

抗体原薬

原薬の凍結/融解温度による品質への影響を評価し、冷却速度及び融解速度を設定する

(凍結/融解を繰り返し安定性を確認しておく)

原薬をタンクで冷凍輸送しようとした際に失敗した例

タンパク質濃度分極

写真提供︓ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社

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混合工程

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混合時のシェアストレス

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出典 EFPIA Working Group‒Mock CTD P.2 Document

混合時のシェアストレスによる品質への影響を評価し、混合速度(混合方法も含む)を設定する

液調製用シングルユース設備

超伝導により撹拌羽を浮かせ軸部と非接触にする方法もある

混合時のシェアストレス

写真提供︓ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社

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無菌ろ過工程充填工程

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アイソレータ(Grade A)

① 無菌コネクター② ベント用バッグ③ フラッシング用バッグ④ 貫通用ポート⑤ 受け用バッグ

⑥ 秤量器+ハンガー⑦ ガス供給ライン⑧ ベントライン⑨ ペリスタリックポンプ⑩ 充填針

製造環境の影響(光、温度)

液調製室(Grade C)

無菌ろ過及び充填用シングルユースの例

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充填によるシェアストレスの影響

チョコ停止、IPCの待ち時間に充填針の先が

乾燥する影響無菌ろ過による

シェアストレスの影響

製造環境(照明、温度)

写真提供︓ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社

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無菌ろ過によるシェアストレスの影響

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Pump

薬液

Filter膜

ろ液

Pumpで送液しFilterでろ過する

写真提供︓ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社

無菌ろ過によるシェアストレスの影響を評価し、無菌ろ過速度を設定する

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充填によるシェアストレスの影響

写真提供︓ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社

ピストンポンプ

摺動部

IPC待ち、チョコ停止など、長時間充填を停止する場合は、針先の薬液の乾燥に注意する

配管経路内の乱流を抑える

充填は泡立ちを抑える

IPC︓In-process controls

配管経路内の乱流、充填時の泡立ちによるシェアストレスの影響を評価し、充填速度を設定する

シリンダーとピストンの摺動、充填時のシリンダ内の圧力上昇に伴う、シェアストレスの影響を評価する

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ペリスタリックポンプ使用時の注意点

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4.80

4.90

5.00

5.10

5.20

0 500 1,000 1,500 2,000

充填量

(g)

充填本数 (本)

充填量の推移のイメージ

校正 充填量は、チューブの弾性低下に伴い低下傾向を示す〈対策〉・充填量の校正頻度を上げて、充填管理幅内にコントロールする

・充填量全数管理システム(自動充填量校正)を備えた充填機を採用する

チューブを”しごく”際にチューブ内に気泡が発生し、気泡抜き作業が必要となる場合がある

薬液の粘度、充填量、充填速度から適切なチューブ径を選択する

充填針からの”液ダレ”を防止するため、ポンプの加速度、サックバック(逆回転)等のプロセスパラメータを最適化する

充填量が低下

出典︓Flexicon カタログ

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凍結乾燥工程

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凍結乾燥工程

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温度

時間

棚温度

真空度

品温

凍結工程 1次乾燥 2次乾燥

薬液(液体)氷薬液(液体)

薬液成分中の氷薬液の成分(固体)

① 凍結乾燥開始

② 凍結(初期)

⑥ 凍結乾燥終了

③ 凍結(終了)

④ 1次乾燥(初期)

⑤ 1次乾燥(終了)

昇華した水蒸気

② ③

④ ⑤

凍結及び乾燥工程で凝集体が発生するリスクがある(最適な賦形剤の選定、凍結乾燥プログラムの最適化)

凍結工程 乾燥工程

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包装工程

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高薬理活性製剤注射剤の包装

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高薬理活性製剤注射剤を取り扱う医療従事者の安全性を確保する包装

(破瓶のリスク及び破瓶発生時の飛散リスクを低減)

バイアルを樹脂製のコップ(プロテクター)へ挿入し、シュリンクラベルで固定する

写真提供︓株式会社岩田レーベル

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製剤輸送

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コールドチェーン(1)

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海外の会社工場 空港 空港

工場 陸送 空港 航空機 空港 陸送 海外の会社倉庫での保管 トラックの

積み込み降ろし倉庫での保管及び航空機への

搬入

貨物室内 航空機からの搬出及び倉庫での

保管

トラックの積み込み降ろし

倉庫での保管

輸送中の振動によるシェアストレスの影響を評価し、輸送条件を設定する(輸送試験、振盪試験の実施)

写真提供︓va-Q-tec Japan合同会社

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コールドチェーン(2)

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ドライアイスを入れて冷気を乾電池駆動のファンで循環させて冷却する

Pharma Closed -Active Containerドライアイスタイプ

バッテリーを電源とした冷凍機を搭載し、冷却・加温を行う

Pharma Closed -Active Container電動タイプ

Pharma Closed –Passive Container真空断熱剤及び蓄冷剤タイプ

真空断熱パネルと蓄冷剤を組み合わせ冷却する

写真提供︓va-Q-tec Japan合同会社

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コールドチェーン(3)

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製品毎 72時間 80時間 60時間 80時間 50時間

工場 物流センター 卸倉庫SB

スタビリティバジェット安定性試験データ(長期、加速、凍結-融解試験)を基に、許容される逸脱時間と温度を前もって設定し、工場から医療機関に届くまでの時間と温度を管理する

ユーザーSB SB SB SB SB

抗体注射剤は温度管理が重要である

スタビリティバジェットの設定イメージ

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抗体注射剤を製造する際の注意点(製剤工程︓まとめ)

工程名 影響因子融解 凍結濃縮ストレス混合 混合時のシェアストレス無菌ろ過 無菌ろ過時のシェアストレス充填 充填時のシェアストレス凍結乾燥 凍結乾燥によるストレス

工程名 影響因子輸送 振盪によるシェアストレス製造室の環境等 製造室の温度や光の影響

乾熱滅菌

洗浄洗浄

半打栓 巻締め 包装無菌ろ過 凍結乾燥融解 混合 充塡

原薬輸送

製剤輸送

蒸気滅菌

ゴム栓バイアル キャップ添加剤(あれば)原薬

シングルユース

選別

冷凍-70℃以下-20℃±5℃

5±3℃

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1. 原薬及び製剤の輸送、保管 コールドチェーンの確立(冷凍/冷蔵輸送業者の管理)

2.製造設備 冷凍/冷蔵施設の整備(自家発電装置も検討、夜間休日のトラブル対応) 原薬融解設備の整備 シングルユースシステムを採用する場合は、保管及び廃棄設備の整備 排水処理設備の整備

3. 品質試験 分析試験機器設備の整備 生物活性試験設備の整備 バイオセーフティ組織の設置

4. 品質保証部門 生物由来製品製造管理者の確保

5. バイオ人材の育成 注射剤製造技術者の育成 分析技術者の育成 QA担当者の育成

抗体製剤試験に必要な機器の例 非タンパク性不純物(RP-HPLC法) サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC法) 還元SDSキャピラリーゲル電気泳動(SDS-cGE, 還元) キャピラリーゾーン電気泳動(CZE法)

(医薬品医療機器等法第68条の16)生物由来製品の製造業者は、製造所ごとに、厚生労働大臣の承認を受けて生物由来製品製造管理者を置かなければならないとされています。 生物由来製品製造管理者は、以下の(1)から(4)の者とされています。(1) 医師、医学の学位を持つ者(2) 歯科医師であって細菌学を専攻した者(3) 細菌学を専攻し修士課程を修めた者(4) 大学等で微生物学の講義及び実習を受講し、修得した後3年以上の生

物由来製品若しくはそれと同等の保健衛生上の注意を要する医薬品、医療機器等の製造等(治験薬として製造する場合を含む。)に関する経験を有する者

抗体注射剤を製造する際の注意点(その他)

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シングルユースシステム技術について

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PIC/S(EU) GMP Annex1 改訂案

日本が草案作成を担当した分野• WG1︓環境モニタリング ・WG3︓ろ過滅菌• WG2︓シングルユースシステム ・WG4︓全体見直し

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PIC/S(EU) GMP Annex 1 無菌医薬品の製造の改訂案(2017年12月20日)

Annex1改訂案の目次1. 適用範囲 6. 機器2. 原則 7. ユーティリティ3. 医薬品品質システム 8. 生産及び技術4. 職員 9. 環境モニタリング5. 施設 10. 品質管理

シングルユースが追加8.112-116︓Closed systems8.117-123︓Single use systems

Annex1 改訂案では、ICH9の品質リスクマネージメントの考え方を取り込み、ユーティリティやシングルユースなどの新項が追加されている。改訂の動向に注視する必要がある。

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シングルユースシステムとSUS 316L設備

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SUS 316L設備従来の

注射剤設備

SUS 316L設備現在の

注射剤設備

シングルユースシステム

高薬理活性製剤(封じ込め)

抗体注射剤

シングルユースシステムとSUS316L設備どちらを採用した方が良いのだろうか ?<シングルユースシステムとSUS 316L設備の選定方法を検討した文献>Haruku Shirahata & Masahiko Hirao & Hirokazu Sugiyama, J Pharm Innov (2017) 12:1‒13 Decision-Support Method for the Choice Between Single-Use and Multi-Use Technologies in Sterile Drug Product Manufacturing

低分子注射剤

写真提供︓ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社、日本ポール株式会社

低分子注射剤

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シングルユースシステムの利点と欠点

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利点 欠点設備 ユーティリティ設備の最小化 初期設備投資の抑制 高薬理活性物質の暴露リスクを低減

無菌性及び無塵性(異物)の品質保証をベンダーに大きく依存する。サプライヤー管理が非常に重要である

製造効率 洗浄滅菌(C/SIP)時間の短縮

製造管理 滅菌バリデーションが不要 洗浄バリデーションが不要

設備 使い捨てのため、変動費負担が大きい無塵性(異物) 材料由来の異物が混入する可能性がある無菌性 ピンホールによるリークの可能性がある作業員の教育 取り扱いを熟知する必要がある供給安定性 納入期間が変動することがある

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液調製工程で使用するシングルユースシステムの例

液調製用タンク

混合機

工程モニタリング用の圧力計、温度計も設置可能

無菌接続コネクタ

センサー

写真提供︓ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社

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アイソレータ(Grade A)

充填工程で使用するシングルユースシステムの例

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① 無菌コネクター ② ベント用バッグ ③ フラッシング用バッグ ④ 貫通用ポート ⑤ 受け用バッグ⑥ 秤量器+ハンガー ⑦ ガス供給ライン ⑧ ベントライン ⑨ ペリスタリックポンプ ⑩ 充填針

液調製室(Grade C)

無菌ろ過フィルターは、液調製室(Grade C)側とアイソレータ(Grade A)内のどちらに設置する設計が良いのか ?

写真提供︓ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社

無菌ろ過フィルター

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無菌接続技術

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抗体注射剤の開発品目の増加に伴い、無菌接続技術を利用したReady-to-Use部材も普及してきている

写真提供︓ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社

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シングルユースシステムの材質

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シングルユースシステムは、プラスチック材質で構成されており、安全性(抽出物/溶出物試験)を評価する必要がある

ULDPE 層(Ultra low density polyethylene)透過性, 物理的強度が高い

EVA 層(Ethylene Vinyl Acetate)外層であるULDPEとEVAの組み合わせにより、折り曲げ亀裂に対する

物理的強度、低温時の柔軟性を確保するEVOH 層(Ethylene Vinyl Alcohol)ガスバリア性が高い薬液

ULDPEEVOH

EVA

・ 抽出物試験 ・ 水蒸気透過性試験・ 機械的強度試験 ・ 二酸化炭素透過性試験・ γ線照射耐性試験 ・ 酸素透過性試験・ 保管寿命試験 ・ 生物学的安全性試験

シングルユースシステムを構成する材質の例

材質試験項目の例

出典︓国立医薬品食品衛生研究所 生物医薬品部 シングルユースシステムを用いて製造されるバイオ医薬品の品質確保に関する提言(案)v5

ULDPE

出典︓Merck ホームページ シングルユースマニュファクチャリング>Mobius PureFlex Film Technology 追記

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抽出物/溶出物

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Leachables(溶出物)

Extractables(抽出物)

Extractables苛酷条件下でシングルユース製品から内容液に移行する化学物

質.苛酷条件とは内溶液の組成、pH、温度、接触時間等の点で、バイオ医薬品製造工程の使用条件と比較して、内容液に化学物質が移行しやすい条件を言う.

Leachables 実際の使用条件下で、シングルユース製品から内容液に移行する化学物質

出典︓国立医薬品食品衛生研究所 生物医薬品部 シングルユースシステムを用いて製造されるバイオ医薬品の品質確保に関する提言(案)v5

Extractables ︓モデル溶剤を使用し評価したメーカーのデータを活用することもできる。Leachables ︓実薬液又は適切なモデル溶剤を使用し評価する。

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評価開始

リスクは無視できる高分子素材か?

Yes No

リスク評価スコア算出・ 製造のプロセス段階 ・ 温度・ 薬液との相互作用 ・ 期間

・ 希釈比(面積/ 容量)

溶出傾向は︖ 容認できるリスク

リスクコントロールの確認

High or Medium - Risk

Low-Risk

リスクはコントロールされたか︖ *1,*2 リスクコントロールの文書化

Yes

最大投与量に基づく毒性評価*2

毒性リスクレベルが容認できるか︖

事業判断は︖

部品交換最大投与に基づく毒性評価

毒性リスクレベルが容認できるか︖ 浸出物試験の報告書作成

Yes

No

工程に特異的な条件での溶出物プロファイルの確立

YesNo

浸出物試験

No

Yes

溶出物試験の報告書作成

薬液と接触するか︖

(追記)*1 メーカーが所有するデータ

(モデル溶媒)を活用し毒性を評価することもできる

Yes

No

No

出典︓BIOPHORUM OPERATIONS GROUP (BPOG) BEST PRACTICES GUIDE FOR EVALUATING LEACHABLES RISK FROM POLYMERIC SINGLE-USE SYSTEMS USED IN BIOPHARMACEUTICAL MANUFACTURING

(追記)*2 ICH M7 「潜在的発がん

リスクを低減するための医薬品中DNA 反応性(変異原性)不純物の評価及び管理ガイドラインについて」などが、毒性評価の判定基準の参考になる

参考

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プレフィルドシリンジ製剤について

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医療過誤の防止シリンジ本体に薬剤名が表示されており、投薬過誤を防止

無菌性の確保・異物混入の防止・コアリングの防止アンプルカットを必要とせず、ガラス片等の異物混入、細菌汚染を防止

簡便性・迅速性注射筒への吸引・移し替え操作を要さず、簡単・安全に短時間で注射準備が可能

製剤特性に伴う有用性粘稠な製剤での吸引操作の労力の軽減等

経済性薬剤投与に伴う医療機器点数を削減でき、在庫管理の負担軽減、経費全体の節減に寄与

プレフィルドシリンジ(Prefilled Syringe)の特徴

写真︓ BD Neopak™ カタログ

出典︓片山通博, 平成29年度 包装アカデミー 日本包装技術協会主催 2017年11月9日

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プレフィルドシリンジの市場規模

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2000年

約25百万本

2003年

約100百万本

2013年

約250百万本

2000年以降、飛躍的に増加

造影剤・ヒアルロン酸製剤ヘパリンロック製剤

ワクチン・抗体医薬その他の注射剤

出典︓片山通博, 平成29年度 包装アカデミー 日本包装技術協会主催 2017年11月9日

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製剤設計︓求められる品質

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1.無菌性 薬液に触れる全てのシリンジパーツを(自社で)滅菌 輸送時等のストッパー移動保証 航空機輸送による減圧を想定(590mmHg) ブリスター包装による移動防止

2.安全性 シリコン剥離抑制 製造直前塗布・焼付方式 動物由来原料使用回避

3.含量均一性 製造ラインでの吸着防止 充填重量管理

シリコン由来不溶性微粒子

の抑制

出典︓片山通博, 平成29年度 包装アカデミー 日本包装技術協会主催 2017年11月9日

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製剤包装設計︓求められる機能と形態

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1.扱い易さ バレル(太さ、透明性) ルアーロック針の脱落防止

フィンガーグリップ バックストップ機能 ガスケット脱落防止

2.廃棄性/安全性 使用後針と分離可能

3.シュリンク バージン性保証、遮光機能 色、デザインによる識別

4.ラベル 色、デザインによる識別 目盛表示

バレル(外筒)

ガスケット(プランジャーストッパー)

フランジプランジャーキャップ

(トップキャップ)

ルアーロックフィンガーグリップ(バックストップ)

出典︓片山通博, 平成29年度 包装アカデミー 日本包装技術協会主催 2017年11月9日

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摺動性不良 液漏れ(密封性)の問題 キャップ開封に関わる不具合(液とび、開封不良) 針刺し事故(針付きシリンジ) 医療機器(用具)との嵌合不良 プランジャーの脱落、空回り シリコーン由来(影響する)異物 使用(注入)時の破損 バレル内面への気泡付着 トラブルを未然

に防止する設計

プレフィルドシリンジの使用品質トラブル

出典︓片山通博, 平成29年度 包装アカデミー 日本包装技術協会主催 2017年11月9日

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ご静聴ありがとうございました

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参考文献 片山通博, 平成29年度 包装アカデミー 日本包装技術協会主催 2017年11月9日 EFPIA Working Group - Mock CTD P.2 Document CTD-第2部(モジュール2)︓品質に関する総括資料モックアップ(記載例) ヒューマンサイエンス振興財団 Haruku Shirahata & Masahiko Hirao & Hirokazu Sugiyama, J Pharm Innov (2017) 12:1‒13 Decision-Support Method

for the Choice Between Single-Use and Multi-Use Technologies in Sterile Drug Product Manufacturing BIOPHORUM OPERATIONS GROUP (BPOG) BEST PRACTICES GUIDE FOR EVALUATING LEACHABLES RISK FROM

POLYMERIC SINGLE-USE SYSTEMS USED IN BIOPHARMACEUTICAL MANUFACTURING Characterization of Antibody Aggregation_J.Pharm.Sci. (2010) 99 764-781 バイオ医薬品 医療の新しい時代を切り開く(日本製薬工業協会) Clinical considerations for biosimilar antibodies. Mellstedt H.EJC Suppl. 2013 Dec;11(3):1-11.NEB 国立医薬品食品衛生研究所 生物医薬品部 シングルユースシステムを用いて製造されるバイオ医薬品の品質確保に関する提言(案)v5 Targeted stakeholders consultation on the revision of annex 1, on manufacturing of sterile medicinal products, of the

Eudralex volume 4 蛋白質科学入門(裳華房) 化学 (啓林館) バイオ医薬品ハンドブック(じほう) ICH Q3B ICH Q6B

謝辞 ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社 千手 昌平 様 日本ポール株式会社 粟津 洋寿 様 山川 大介 様 メルク株式会社 プロセスソリューションズ事業本部 井出 直人 様 株式会社岩田レーベル 三輪田 徹 様 va-Q-tec Japan合同会社 高崎 武裕 様