血液疾患患者の呼吸器合併症2Eur Respir J 1998; 12: 116–122 ! 対象 1.1.1984―12.31.1993 血液疾患患者で呼吸器合併症によりICU入室した患者 ! 方法
重症患者における タンパク質投与重症患者に対する タンパク投与の意義...
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重症患者におけるタンパク質投与
2020年09⽉15⽇宮⼭直樹 / 遠藤新⼤
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きっかけ
ü当院における栄養は早期経腸栄養を前提として、⽬標カロリーを設定し、投与を⾏っている
ü腎障害、呼吸不全の患者に対してはその組成の変更を⾏うが、他に気をつけること、介⼊できることはないのであろうか
ü⻑期呼吸不全で⼈⼯呼吸器離脱困難患者に対する栄養サポートはできないのであろうか
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アミノ酸とタンパク質
ü遊離アミノ酸は通常70g程度経⼝摂取されるü体内のアミノ酸プールと体内貯留(筋⾁、腸、肝臓、腎臓、⽪膚との間で、同化異化を繰り返しており、その量は約300 g/⽇
Springer;2007.75-92.
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重症患者に対するタンパク投与の意義
ü敗⾎症、⼿術、外傷、熱傷などの重症患者はストレスに対する⽣体反応として様々な⾝体的変化が惹起される。代表的なものが炎症によるタンパク異化の亢進である。ü体内で最⼤のアミノ酸貯蔵庫である筋タンパクの異化が亢進し、アミノ酸を遊離してエネルギー源や⽣命維持に必要なタンパク合成に利⽤される。ü重症患者で、タンパク質/アミノ酸の補給が全⾝のタンパク質バランスに好影響を与える可能性がある Crit. Care 2015, 19, 106.
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2020.8阿部先⽣勉強会より
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重症患者に対するタンパク投与の意義
ü異化反応は、MODS患者のICU滞在の最初の10⽇の間に最⼤1kg/⽇の筋⾁量の減少をもたらす JAMA.2013;310(15):1591-1600ü⾻格筋量の減少は免疫能を傷害し、創傷治癒遅延を招き、さらには⽣命予後の悪化にもつながるとされるüタンパク投与することが筋⼒の保持、筋⾁量の維持に繋がるかどうか、さらにはそれが⽣存率の上昇、⾝体的回復につながっているかは不明である
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タンパク投与量アセスメント
üタンパク投与量が適正であるかをアセスメントすることは重要である。• BIA(bioelectrical impendance analysis)法による⾻格筋量の測定は近年も⽤いられている• 超⾳波、CT、MRIでの除脂肪体重、筋⾁量のcheck• 安定同位体stable isotopesの利⽤
ü⾎清アルブミン、プレアルブミン、トランスフェリン、CRPなどを栄養指標として使⽤する研究もなされてはいるものの、現状では栄養状態の指標としては否定的である
Proc Nutr Soc 66:378-383, 2007
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タンパク投与量アセスメント⾮タンパク質カロリー /窒素⽐ (NPC/N⽐)
ü⼀般的にタンパク投与量は総エネルギー投与量の15−20%とする。ü必要⼗分なエネルギー投与がなければ、アミノ酸がエネルギー源として消費されてしまい、タンパク質は合成されないü⾮タンパクカロリー/窒素⽐ (NPC/N⽐)がタンパク投与量の算出に利⽤される。ü⼀般的に• ⾮侵襲下ではNPC/N⽐は150−200が最適とされている• 侵襲下では異化亢進に伴いNPC/N⽐150を超えないように• 重症熱傷、外傷などではNPC/N⽐80−100程度が適正とされているüASPENでも重症患者において70−100程度のNPC/N⽐、肥満患者では30−50程度のNPC/N⽐でのタンパク投与をと記載
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タンパク投与量アセスメント
ü窒素バランス窒素摂取量と排泄量の式を組み合わせることで、1⽇の窒素バランスを算出できる。適切な栄養管理のために、窒素バランスが+4〜6になるようにする。
窒素バランス(g/day)=窒素摂取量-窒素排泄量=タンパク摂取量(g/day)/6.25-[UUN+(4-6)]
タンパク摂取量(g/day)/6.25 ‥タンパク質の16%が窒素であることからUUN(g/day)‥24時尿中排泄量(4-6)(g/day)‥糞便中に排泄されるタンパク質由来窒素下痢などある場合は信頼性が低いü重度の負の窒素バランスが続く患者では感染率の上昇、⼈⼯呼吸、ICU滞在期間の延⻑、死亡率増加につながった
Nutr Clin Pract 2017;32:1125-205.
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•⽬標タンパク質量•投与期限•投与⽅法
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タンパク必要量
ICUブックにはü1⽇のタンパク必要量はタンパク質異化の程度に依存する。ü通常1⽇タンパク質摂取量は0.8−1.0g/kgがあるが、多くのICU患者ではタンパク質異化が亢進しているために、1⽇タンパク質必要量は⾼く、1.2−1.6g/kgである。
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実際にどのくらいのタンパクが投与されているのであろうか
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Nutr. Clin. Pract. 2017, 32 (Suppl. 1), 58S–71S.
ü2014International Nutrition Surveyü187のICU、約4000⼈のDATAü現在の観察研究では、重症患者に平均1.3g/kg/dayのタンパク質が処⽅されてているものの、処⽅されている量の55%(約0.7g/kg/⽇)しか摂取されていないことが報告されている
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⽇集中医誌 2014;21:243-252
ü2011International Nutrition Surveyの結果、⽇本は世界よりも栄養に関して、特にタンパク投与に関しては積極的に⾏なっていない現状がある。
*DATAが古いので、今後のInternational Nutrition Surveyの結果に注⽬を
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経腸栄養製剤成分⽐較表(1000Kcalあたり)ハイネ プルモケア リーナレンMP グルセルナREX メイン ハイネイーゲル
1kcal/ml 1.5kcal/ml 1.6kcal/ml 1kcal/ml 1kcal/ml 0.8kcal/mlナトリウムNa+ (23.0)⾷塩相当量
77mEq4.5g
37mEq2.2g
26mEq1.5g
41mEq2.4g
30mEq1.8g
72mEq4.2g
カリウムK+ (39.1) 40mEq 30mEq 7.7mEq 26mEq 31mEq 40mEq
クロールCl- (35.5) 62mEq 28mEq 2.8mEq 28mEq 26mEq 43mEq
カルシウムCa2+ (40.0)
47mEq(23.5mmol)
32mEq(16mmol)
15mEq(7.5mmol)
35mEq(17.5mmol)
50mEq(25mmol)
29mEq(14.7mml)
リンP2- (31.0)
60mEq(30mmol)
40mEq(20mmol)
14mEq(7mmol)
48mEq(24mmol)
58mEq(29mmol)
52mEq(26mmol)
タンパク質25kcal/kg投与時
50g1.25g/kg/⽇
42g1.05g/kg/⽇
35g0.88g kg/⽇
42g1.05g/kg/⽇
50g1.25g/kg/⽇
40g1.00g/kg/⽇
脂質 23g 61g 28g 56g 28g 22g
炭⽔化物 157g 70g 160g 97g 149g 167g
⾷物繊維 12g 0g 10g 9g 18g 13.8g
2020年7⽉14⽇作成 ⽂責:遠藤
ü ターゲットの投与量のハイネ、メインでぎりぎり>1.2g/kg/dayü 呼吸不全、腎不全で使⽤するプルモケア、リーナレンMPでは1.0g/kg/day前後ü 腹臥位などの処置で実際にはより少ない投与量なのが現状
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各ガイドラインを⾒てみよう
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ü⼗分な(⾼容量)タンパク質の投与を推奨。タンパク質必要量は1.2−2.0g/kg(実体重)/day熱傷や多発外傷ではさらに多くと
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2016.4.12 福島先⽣
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ü2016.9に⾏われたInternaPonal Protein Summitü重症患者ではより多くのタンパク質を必要とする可能性があり、タンパク質量最低 1.2g/kg/day、 2.0-2.5g/kg/day範囲でdoses upを推奨
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ü⼗分な根拠がないことから、⾄適タンパク投与量は不明とされている。ü喪失したタンパク量を考慮して必要タンパク量は1−1.2g/kg/day以上とされている
推奨の強さ「1」:
⾏うことを強く推奨する,または,⾏わないことを強く推奨する
クオリティC(低) :効果の推定値に対する信頼は限定的である。
真の効果は,効果の推定値と,実質的に異なるかもしれない。
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ü重症患者では、1.3g/kg/dayのタンパク質を徐々に投与する(推奨0)üESPENは2018に改訂されたが、前回のESPENでは1.2-1.5g/kg/dayのタンパク質投与となっており、上限を設けない記載になった
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ü現状として、根拠となる研究、ガイドラインの推奨度の低さは今後とも研究の余地があるものの、1.2−1.3g/kg/day以上をタンパク質量を管理⽬標としているものが多い。
APMEC:Asia-Pacific and Middle East Working Group on Nutrition in the ICU
CCPG:Canadian Clitical Care Nutrition Support Guideline
APMEC CCPG ESPEN J-CCNTG SCCM/ASPEN
1.2-2.2 - 1.3 1.0-1.2 1.2-2.0
ガイドラインのまとめ タンパク投与量
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ガイドラインの根拠となる研究を⾒ていこう
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タンパク摂取量の違いを⽐較したRCTは6つ
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J Neurosurg 62:186-193,1985
ü1985が初めての研究ü急性頭部外傷の対象患者20⼈におこなったRCTü⾼タンパク群で窒素バランスの値が(いずれの郡もーバランス)⼤きかったものの、nが少なく、臨床転帰の差はなし
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Rugeles. Indian J Crit Med.2013;17(6):343-349
ü単施設RCT 96時間以上経腸栄養のPt(n=80),4⽇間ü intervenPon group(15 kcal/kg with 1.7 g/kg of protein) VS
controls(25 kcal/kg with 20% of the calories as protein)
ü 48時間後のSOFA scoreの改善、⾎糖コントロールに有意差ありü ICU滞在期間、⼈⼯呼吸器使⽤期間に有意差なし。死亡率は未検証
エネルギー投与量有意差なし
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Rugeles. Journal of Critical Care 35 (2016) 110–114
ün=187で15kca/kg/dayと25kca/kg/day(タンパク質投与量1.7g/kg/dayで統⼀)の⽐較試験を施⾏
ü
ü ΔSOFAに差がなかった
ü筆者は2つの研究から低エネルギーかつ⼗分なタンパク投与を⾏うことで臓器障害などを減らす可能性を⽰唆
*タンパク摂取量のRCTではない
Caloric intake.
Protein intake.
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Doig. Intensive Care Med (2015) 41:1197–1208
ü多施設RCT 2010.12-2013.2 Nephro-ProtecPve trialオーストラリアとニュージーランドの16のICUü ICU2⽇以上が⾒込まれるPt(n=474)ü最⼤100g/dayのアミノ酸経静脈投与VS 標準栄養療法ü IntervenPon;1⽇あたり最⼤100gのアミノ酸を投与。(ICU⼊室2⽇以内)患者の理想体重で、最⼤総タンパク質摂取量が2.0g/kg/dayになるようにアミノ酸の注⼊を減量。
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APACHE II scores (20.2 ± 6.8 vs. 21.7 ± 7.6,P = 0.02)
pre- exisTng renal dysfuncTon (29/235 vs. 44/239, P = 0.07).
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ü 推定⽷球体濾過率にはわずかな改善がみられた
ü タンパク投与量1.7 g/kg/day VS 0.8 g/kg/day
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Primary outcome腎障害の期間;有意差なしSecondary outcome アミノ酸投与群でRRT多い傾向⼈⼯呼吸器装着期間、臓器障害;有意差なしTertiary outcome死亡率、ICU滞在期間、⼊院⽇数、DAY 90でのRRT依存;有意差なし
*腎障害などの臓器障害を認めず、安全に投与できる可能性
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Ferrie. J Parenter Enteral Nutr 2016 Aug;40(6):795-805
ü単施設RCT 2013-4の⼀年間 オーストラリアü経静脈栄養3⽇以上必要と⾒込まれるPt(n=119)アミノ酸含むPNでタンパク⽬標投与量1.2g/kg/dayと0.8g/kg/dayで⽐較DAY1からDAY10もしくはICU退出時まで⾏われた。
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ü 投与エネルギーはDAY1.2.9のみ有意差を持って1.2g/kg/day群で多く、最初の3⽇間,7⽇間の投与エネルギーも有意差あり
ü 実際のタンパク量1.1 g/kg/day VS 0.9 g/kg/day
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Primary outcome ICU退出時の握⼒有意差なしSecondary outcome6ヶ⽉死亡率、ICU滞在期間有意差なし筋⾁の厚さの測定で有意差あり
*タンパク投与量が多い群で1.1g/kg/day*実際のタンパク投与量の差が少ない
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Allingstrup. Intensive Care Med (2017) 43:1637–1647
ü単施設RCT 2013.06-2016.10 デンマークü緊急⼊院となり、⼈⼯呼吸器管理で3⽇以上滞在⾒込まれる
Pt(n=199)
EGDN群;初⽇から間接熱量計を元に算出したカロリー必要量をEN+PNを⽤いて100%を⽬指す早期⽬標指向(タンパク量は最低1.5g/kg/day)と通常群(EN25kcal/kg/dayタンパク1.2g/kg/day)通常群は7⽇⽬でカロリー⽬標未達成でSPN追加 投与は最⼤90⽇間
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Intensive Care Med (2017) 43:1637–1647
EGDN群VS通常群ü投与エネルギーは有意差あり(1877kcal/day VS 1061 kcal/day) ü実際のタンパク量1.47 g/kg/day VS 0.5 g/kg/day
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Primary outcome
6ヶ⽉後の健康関連QOLの⾝体スコア(PCSscore)有意差なしSecondary outcome
⾎糖値、インスリンの使⽤以外死亡率、滞在⽇数など有意差なし
*overfeedingの可能性*⾎糖コントロールが有意に悪くなり、タンパク質量の増加によるプラスの効果が否定された可能性*健康関連QOLが栄養介⼊に反応しない可能性
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Wischmeyer. Critical Care (2017) 21:142
ü4カ国(カナダ、アメリカ、ベルギー、フランス)11施設のICUによる多施設研究 2011.6-2015.1üBMI
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Primary outcome
タンパク投与量、総カロリーの増加有意差もって増加Secondary outcome
⼈⼯呼吸器管理期間、滞在期間、死亡率(院内死亡率は少し減少)、機能(握⼒、6分歩⾏など)、QOLで有意差なし
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RCT
üこれらの試験のいずれも死亡率を評価するのに⼗分なパワーが与えられていなかったüこのように、この分野のRCTは数が少なく、質も意義も様々であり、⾄適タンパク質投与量はまだ決定していない
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結局ガイドラインの根拠としているのは観察研究
全てではないが確認していく
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Weijs. Journal of Parenteral and Enteral NutriJon (2012)36:60-8
ü 単施設前向き観察研究 2004−2010 オランダü ICU⼊室中⼈⼯呼吸器装着患者(n=886)において、間接熱量計を元にターゲットのカロリーを設定し、到達した患者の内、タンパク投与量最低1.2g/kg/day以上とし、投与達成した群と達成できなかった群で⽐較。(実際の本研究では投与カロリー、タンパク共にターゲット未到達群、タンパクターゲットのみの到達群もあり)タンパク投与量はタンパクターゲット到達群、未到達群で1.31±0.18g/kg/day、1.06±0.18g/kg/day
PN
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ü設定したターゲットに到達したエネルギーとタンパク質群では、どちらの⽬標にも到達しなかった患者と⽐較して28⽇死亡率が50%減少した。
HR未調整
性別、年齢、BMI、APACHE IIscore、診断、⾼⾎糖指数で調整
さらにエネルギーターゲットまでの時間、PNの併⽤で調整
*エネルギーだけではなく、タンパク投与量が死亡率に影響する可能性
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Zusman. Critical Care (2016) 20:367
ü単施設コホート研究、2003−2015 イスラエルü96時間以上のICU滞在で経腸栄養のみ投与されたn=1171ü間接熱量計を使⽤して安静時エネルギー消費量(REE)を計算。処⽅カロリー/REEの割合に応じて、60⽇死亡率、ICU滞在期間、⼈⼯呼吸器装着期間を調べた研究。タンパクに関しては1.3g/kg/dayを⽬標として投与。
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Critical Care (2016) 20:367
ü60⽇死亡率に関して、REEの70%のエネルギー摂取量が最適であることを⽰唆している。それより低い摂取量と⾼い摂取量の両⽅が死亡率の増加と関連しているüタンパクの投与量が多いほど、60⽇死亡率が低下。タンパク1g/dayの増量ごとに死亡率1%低下を⽰唆。最⼤投与群は⽬標投与量(1.3g/kg/day)の140%、約1.8g/kg/dayであり、それ以上の投与が望ましいと⽰唆
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Nicolo. J Parenter Enteral Nutr. 2016 Jan;40(1):45-51
ü多施設後ろ向き観察研究The CriEcally III InternaEonal NutriEon Surveys 2013 (INS 2013; Daren Heyland, MD, principal inves- Egator)のdataより
ü ICU4⽇以上滞在した患者(n=2828)で、⽬標1.2g/kg/dayの80% 以上(0.96g/kg/day)を投与できた群とそれ未満だった群と⽐較üPrimary aim;60⽇死亡率üSecondary aim;在院⽇数
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üカロリー摂取量ではなく、タンパク摂取≧80%で、有意差をもって60⽇死亡率(4、12⽇共に)が低く、⽣存退院までの期間(12⽇)が短かった。
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Compher. CriJcal Care Medicine (2017) 45:2
ü⼀つ前にあげた論⽂と同様、The CriPcally III InternaPonal NutriPon SurveysのDATAからの後ろ向き観察研究ü栄養riskが⾼い患者(NUTriEon Risk in the CriEcally Ill, ≥ 5) 群でタンパク、エネルギー摂取量がターゲットに近づくほど、死亡率、⽣存退院までの期間を減少させた。
üタンパク摂取量10%増加毎に、死亡率が減少(4⽇;6.6%、12⽇;10.1%)
60⽇予測死亡率
⽬標タンパクの摂取率 4⽇
⽬標タンパクの摂取率 12⽇
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Koekkoek. Clinical Nutrition 38 (2019) 883-890
ü 後ろ向き観察研究 2011.1.1-2015.12.31 オランダü 最低1週間⼈⼯呼吸器管理を要するICU⼊室患者455⼈を対象としてタンパク投与量1.2g/kg/dayの3群に分類Primary aim;6ヶ⽉死亡率を低くする最適なタンパク投与量と期間を同定するSecondary endpoint;⼈⼯呼吸器使⽤期間、RRTの必要性、ICU滞在期間、⼊院期間など
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ü徐々に増量した(第3病⽇まで
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ün=113タンパク投与量依存して28⽇死亡率低下タンパク投与量H郡; 1.46 M郡;1.06L郡; 0.79g/kg/day
Allingstrup. Clin Nutr 2012;31:462-8.
üN=211⼈の⼈⼯呼吸器使⽤患者を⽬標エネルギー(25kcal/kg/day)⽬標タンパク質投与量(1.2g/kg/day)の達成度でタンパク質⽬標達成群VSタンパク質⽬標⾮達成群/⽬標エネルギー達成群VS共に未達成群の3群を⽐較タンパク質⽬標達成群でICU死亡率、院内死亡率有意に減少
Song. Asia Pac J Clin Nutr 2017;26(2):234-240
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ü観察研究では投与するタンパク質が多いほど死亡率が改善するという結果を⽰していることが多く、投与⽬標1.2−1.3g/kg/dayとなっている。(より多くの投与量を推奨するものもあるが)ü現状はこれらを元にガイドライン作成が⾏われている
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EFFORTtrial 現在進⾏中のRCT
• Heylandらの多施設RCT48時間以上⼈⼯呼吸器管理が⾒込まれる栄養⾼リスクのPt、4000⼈規模タンパク量≦1.2g/kg/day VS ≧2.2 g/kg/dayPrimary outcome 60⽇死亡率Secondary Outcome ⼊院期間、栄養状態の妥当性、死亡率、ICUと病院への再⼊院、⼈⼯呼吸器使⽤期間、ICU滞在期間など• 2018年1⽉に登録開始し、結果は2021,2年に発表か*The Effect of Higher Protein Dosing in Critically Ill Patients (EFFORT). Available online: https://clinicaltrials. gov/ct2/show/NCT03160547
栄養リスクとは、以下のいずれかで定義される。
(1)低BMI(25未満)または⾼BMI(35以上)
(2)中等度から重度の栄養不良(地域の評価で定義されたもの)
(3)虚弱体質(Clinical Frailty Scaleが5以上
(4)サルコペニア(SARC-Fスコアが4以上
(5)スクリーニングの時点から予測される機械的⼈⼯呼吸の持続時間が4⽇以上である
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•⽬標タンパク質量•投与期限•投与⽅法
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ü 投与期限に関して、ガイドラインではカロリーに対する記載はあるもののタンパクをいつまでに投与すべきかという⾔及はほとんどない
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ü ICU⼊室4⽇⽬までにタンパク質量は 1.2g/kg/dayの投与を推奨ü根拠となるもの論⽂の紹介は次のもの程度で、ほとんど専⾨家の意⾒レベル
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Weijs. Critical Care 2014, 18:701
ü先に載せた前向き観察研究(Weijs. Journal of Parenteral and Enteral Nutrition / Vol. 36, No. 1, January 2012 )のポストホック解析ICU⼊室中72時間以上⼈⼯呼吸器装着患者(⾮敗⾎症)(n=736)において、さらに、感染がなく、overfeedingのない患者群(n=419)では第4病⽇までのタンパク投与量増加が死亡率の減少につながっていた。* overfeeding (ratio energy intake/measured energy expenditure > 1.1)
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Bendavid. Nutrients 2019, 11, 106
ü単施設後ろ向きコホート研究 2013-2015 イスラエルü96時間以上ICU滞在したPt(n=2253)üEarly protein group(>0.7 g/kg/dタンパクを最初の3⽇間)とLate protein group (
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AMERICAN JOURNAL OF RESPIRATORY AND CRITICAL CARE MEDICINE (2013)187
EPaNICtrial post hoc解析ü 最初の3⽇間のタンパク質摂取量とICU在室期間の延⻑との関連が⽰された
2016.4.12 福島先⽣
ーグルコース累計摂取量ータンパク累計摂取量
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Koekkoek. Clinical NutriJon 38 (2019) 883-890
ü徐々に増量した(第3病⽇まで
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Zanten. CriJcal Care (2019) 23:368
üこのreviewでは以上の研究、ESPENに従って、DAY4以降はタンパク質⽬標は、少なくとも1.3g/kg/⽇であることを推奨
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Clinical NutriJon 37 (2018) 1913-1925
ü2018に発表。10つのRCT、3155⼈が対象となった研究ü予測エネルギー必要量の80%以上の投与群と80%以下の投与群で⽐較ü死亡率への影響がなかったという結論
ü Includeされた10の研究のうち、タンパクに関する記載があるものが5つのみü本研究の結果をもって、タンパク投与の制限まで⾏っていくのは良いとは⾔えないü⽬標エネルギー、タンパク投与量の問題は別個に扱える問題ではないので、今後の研究が必要。
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ü現時点では少量より開始して漸増し、4−6⽇以内のターゲットタンパク量到達することが現実的か
ü初期(3⽇以内)のタンパク投与は否定的な結果もある。今後の結果次第ではoverfeedingを避けつつ、初期より⾼タンパク投与を⾏うことも検討すべきか
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•⽬標タンパク質量•投与期限•投与⽅法
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ガイドラインが⽰す⽬標タンパク量を⽬指すべきであるかは検討の余地はあるものの
どのようにしてタンパク質の⽬標(1.2-1.3g/kg/day)に到達するのか?
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経腸栄養製剤成分⽐較表(1000Kcalあたり)ハイネ プルモケア リーナレンMP グルセルナREX メイン ハイネイーゲル
1kcal/ml 1.5kcal/ml 1.6kcal/ml 1kcal/ml 1kcal/ml 0.8kcal/mlナトリウムNa+ (23.0)⾷塩相当量
77mEq4.5g
37mEq2.2g
26mEq1.5g
41mEq2.4g
30mEq1.8g
72mEq4.2g
カリウムK+ (39.1) 40mEq 30mEq 7.7mEq 26mEq 31mEq 40mEq
クロールCl- (35.5) 62mEq 28mEq 2.8mEq 28mEq 26mEq 43mEq
カルシウムCa2+ (40.0)
47mEq(23.5mmol)
32mEq(16mmol)
15mEq(7.5mmol)
35mEq(17.5mmol)
50mEq(25mmol)
29mEq(14.7mml)
リンP2- (31.0)
60mEq(30mmol)
40mEq(20mmol)
14mEq(7mmol)
48mEq(24mmol)
58mEq(29mmol)
52mEq(26mmol)
タンパク質25kcal/kg投与時
50g1.25g/kg/⽇
42g1.05g/kg/⽇
35g0.88g kg/⽇
42g1.05g/kg/⽇
50g1.25g/kg/⽇
40g1.00g/kg/⽇
脂質 23g 61g 28g 56g 28g 22g
炭⽔化物 157g 70g 160g 97g 149g 167g
⾷物繊維 12g 0g 10g 9g 18g 13.8g
2020年7⽉14⽇作成 ⽂責:遠藤
ü ターゲット量でハイネ、メインでぎりぎり>1.2g/kg/dayü 呼吸不全、腎不全で使⽤するプルモケア、リーナレンMPでは1.0g/kg/day前後ü 腹臥位などの処置で実際にはより少ない投与量なのが現状
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CriEcal Care (2018) 22:156
üVery intact-protein formula(8g/100kcal)という製剤とStandard high protein formula (5g/100kcal)の⽐較üPrimary outcomeでDay5でのタンパク投与量がVHPF群で1.49g/kg/day、SHPF群で0.76g/kg/day⾎中アミノ酸濃度が有意に⾼かった。
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Clinical Nutrition 38 (2019) 2623-2631
ücontaining 1220 kcal and 100 g of hydrolysed whey protein per 1000 ml
(protein-to-energy ratio 82 g/1000 kcal) という製剤の使⽤で19/20⼈でDAY4でタンパク摂取量≧1.2g/kg/dayを達成できたという論⽂(実際摂取量は1.98 g/理想体重kg/day、1.69 g/実体重kg/day)
ü1.2g/kg/dayを達成するのに5g/100kcal製剤では困難である。üこういった⾼タンパク製剤に関する論⽂も増えてきている。Overfeedingを避けつつ、⾼タンパクを⽬指す対策が増えてきている
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経腸栄養製剤成分⽐較表(1000Kcalあたり)ハイネ プルモケア リーナレンMP グルセルナREX メイン ハイネイーゲル
1kcal/ml 1.5kcal/ml 1.6kcal/ml 1kcal/ml 1kcal/ml 0.8kcal/mlナトリウムNa+ (23.0)⾷塩相当量
77mEq4.5g
37mEq2.2g
26mEq1.5g
41mEq2.4g
30mEq1.8g
72mEq4.2g
カリウムK+ (39.1) 40mEq 30mEq 7.7mEq 26mEq 31mEq 40mEq
クロールCl- (35.5) 62mEq 28mEq 2.8mEq 28mEq 26mEq 43mEq
カルシウムCa2+ (40.0)
47mEq(23.5mmol)
32mEq(16mmol)
15mEq(7.5mmol)
35mEq(17.5mmol)
50mEq(25mmol)
29mEq(14.7mml)
リンP2- (31.0)
60mEq(30mmol)
40mEq(20mmol)
14mEq(7mmol)
48mEq(24mmol)
58mEq(29mmol)
52mEq(26mmol)
タンパク質25kcal/kg投与時
50g1.25g/kg/⽇
42g1.05g/kg/⽇
35g0.88g kg/⽇
42g1.05g/kg/⽇
50g1.25g/kg/⽇
40g1.00g/kg/⽇
脂質 23g 61g 28g 56g 28g 22g
炭⽔化物 157g 70g 160g 97g 149g 167g
⾷物繊維 12g 0g 10g 9g 18g 13.8g
2020年7⽉14⽇作成 ⽂責:遠藤
当院採⽤多いもので5g/100kcal
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ü今後は⾼タンパク製剤の採⽤を検討しても良いかも
Clinical NutriJon ESPEN 38 (2020) 111-117
東邦⼤学医療センター⼤森病院ICUで⾏われた後ろ向きコホート研究üタンパク質>1.2 g/kg/dayを達成した群の半数以上でペプタメンインテンス® の使⽤していた(研究内容は1.2 g/kg/day以上のタンパク質投与で28⽇死亡率改善したというもの
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タンパク投与⾏うなら Supplemental PN(SPN)??
üSPNは、overfeedingのリスクのために感染症の罹患率を⾼める可能性がある
Critical Care (2016) 20:117
ü早期PNは、ICU滞在⽇数、⼈⼯呼吸器管理期間、感染率の上昇、腎代替療法増加と関連している
N Engl J Med 2011;365:506-17.
üガイドラインでAPMECのみ;⽬標エネルギー投与量の60%以上に達しない場合に考慮(栄養リスク⾼い;3⽇、その他;7⽇)とある程度推奨ESPEN2019は4−7⽇ SCCM/ASPENで7-10⽇して個々の症例毎に検討
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Wischmeyer. Critical Care (2017) 21:142
ü4カ国(カナダ、アメリカ、ベルギー、フランス)11施設のICUによる多施設研究 2011.6-2015.1üBMI
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üEN+SPNで感染症の増加を⽰す傾向もなかった
ü で
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Primary outcome
タンパク投与量、総カロリーの増加有意差持って増加Secondary outcome
⼈⼯呼吸器管理期間、滞在期間、死亡率(院内死亡率は少し減少)、6ヶ⽉QOL有意差なし
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CriEcal Care (2017) 21:142
üサブグループ解析でNUTRICscore≧ 5の栄養リスク⾼い患者群、BMI
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ü TOP-UP pilot trialに引き続いてn=160のRCTが⾏われている
ü この結果も合わせて、今後SPNを⾏うべきかどうか検討の余地がある
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Doig. Intensive Care Med (2015) 41:1197–1208
J Parenter Enteral Nutr 2016 Aug;40(6):795-805
CriKcal Care Medicine 2018 Aug;46(8) :1293-1301
üDoigらのRCTのポストホック解析üサブグループ解析で腎機能正常患者の中では、アミノ酸投与群は、90⽇死亡率が低かったという結果もあるcovariate-adjusted risk difference, –7.9%; 95% CI, –15.1 to –0.7; p = 0.034
ü アミノ酸製剤の投与ということに関して、先ほどタンパク投与量の中であげた2つのRCTで死亡率などに影響がなかったという結果であり、現時点では積極的に⾏なっていくべきかは不明
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NEXIS試験(Nutrition and EXercise in Critical Illness: A Randomized Trial of Combined Cycle Ergometry and Amino Acids in the ICU)
• アミノ酸の静脈内投与(最⼤2.5g/kg/⽇)とin-bed cycle ergometry exercise が、ICU患者の⾝体的回復に及ぼす影響を評価する。• Primary outcome 6分歩⾏テスト• Secondary outcome 筋量、筋⼒、死亡率、⼊院期間などなど• 2017年9⽉に登録開始し、結果は2021,2年に発表か
*Nutrition and Exercise in Critical Illness (NEXIS). Available online: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/ NCT03021902
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どのようにしてタンパク質の⽬標に到達するのか?
⾼タンパク製剤の採⽤or
カロリーを考えながら、1週間を⽬処にSPN(amino acid therapy)を検討
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少しだけpostICUの話
ü ICU滞在後に筋⼒と筋⾁量が著しく低下した患者では、回復のためにかなりの期間(数ヶ⽉から数年)、カロリーとタンパク質の供給量を⼤幅に増加させる必要がある
Puthucheary and Wischmeyer CriJcal Care (2017) 21:20
ü先にあげたreviewでもさらに段階的に投与量を増やしていく必要性を述べている
Zanten. CriJcal Care (2019) 23:368
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ü ICU退出後、エネルギー、タンパク質のターゲット量よりも過⼩投与となっている
CriJcal Care. 2018;22((Suppl 1):366.
ü⼀般病棟でICU退出後経⿐胃管を抜去すると、摂取カロリーが⽬標値の22%、タンパク質摂取量が27%低下する
Van Zanten AR, personal communicaJon
少しだけpostICUの話
ü 経⼝栄養摂取が⼗分になるまで経管栄養を延⻑することを検討すべきである
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現在研究中のRCT3つ乞うご期待
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EFFORTtrial
• Heylandらの多施設RCT48時間以上⼈⼯呼吸器管理が⾒込まれる栄養⾼リスクのPt、4000⼈規模タンパク量≦1.2g/kg/day VS ≧2.2 g/kg/dayPrimary outcome 60⽇死亡率Secondary Outcome ⼊院期間、栄養状態の妥当性、死亡率、ICUと病院への再⼊院、⼈⼯呼吸器使⽤期間、ICU滞在期間など• 2018年1⽉に登録開始し、結果は2021,2年に発表か*The Effect of Higher Protein Dosing in CriPcally Ill PaPents (EFFORT). Available online: hnps://clinicaltrials. gov/ct2/show/NCT03160547
栄養リスクとは、以下のいずれかで定義される。
(1)低BMI(25未満)または⾼BMI(35以上)
(2)中等度から重度の栄養不良(地域の評価で定義されたもの)
(3)虚弱体質(Clinical Frailty Scaleが5以上
(4)サルコペニア(SARC-Fスコアが4以上
(5)スクリーニングの時点から予測される機械的⼈⼯呼吸の持続時間が4⽇以上である
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ü 引き続いてn=160のRCTが⾏われている
ü 結果も合わせて、今後SPNを⾏うべきかどうか検討の余地がある
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NEXIS試験(NutriBon and EXercise in CriBcal Illness: A Randomized Trial of Combined Cycle Ergometry and Amino Acids in the ICU)
• アミノ酸の静脈内投与(最⼤2.5g/kg/⽇)とin-bed cycle ergometry exercise が、ICU患者の⾝体的回復に及ぼす影響を評価する。• Primary outcome 6分歩⾏テスト• Secondary outcome 筋量、筋⼒、死亡率、⼊院期間などなど• 2017年9⽉に登録開始し、結果は2021,2年に発表か
*NutriPon and Exercise in CriPcal Illness (NEXIS). Available online: hnps://clinicaltrials.gov/ct2/show/ NCT03021902
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結語
ü重症患者のタンパク投与に関して、ガイドラインで⽰されている数値は根拠に乏しいものの1.2−1.3g/kg/day以上という数値は共通している
üいつまでに達成するかに関しても、研究の余地はあるものの、overfeedingのない範疇で早期に達成するべきである
ü⻑期⼊室患者に対してはターゲットカロリーのみでは達成できないタンパク投与に関しては追加の投与を検討するべきである
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私⾒
ü重症患者におけるタンパク投与量に関して、ガイドラインに記載はあるが、いずれも低いエビデンスレベルの推奨で、まだまだ絶対的に従う根拠としては乏しい。
üあと数年以内に発表されるであろうRCTをもってタンパク投与に関して改めて検討していけたらと思う
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NUTRIC Score
Nutrition in Clinical Practice 32(Suppl 1)
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アミノ酸製剤⼀覧
h^p://www.peg.or.jp/lecture/parenteral_nutriTon/02-09.html