軸との締結と軸継手...(1)フランジ形たわみ軸継手(flange coupling)...

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Copy Right by C.KANAMORI 2008 1 軸との締結と軸継手 締結の種類 キーとキー溝 沈みキー 平行キー,くらキー 接線キー 半月キー すべりキー キーの設計 軸の伝達トルク→ キーの長さ,幅,高さ それ以外の締結方法 スプライン セレーション 圧力ばめ テーパーリング 軸継手 軸継手の要求仕様 継手の分類・種類 固定軸継手 たわみ軸継手 自在軸継手 オルダム軸継手

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軸との締結と軸継手締結の種類

キーとキー溝

沈みキー

平行キー,くらキー

接線キー

半月キー

すべりキー

キーの設計

軸の伝達トルク→

キーの長さ,幅,高さ

それ以外の締結方法

スプライン

セレーション

圧力ばめ

テーパーリング

軸継手

軸継手の要求仕様

継手の分類・種類

固定軸継手

たわみ軸継手

自在軸継手

オルダム軸継手

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軸との締結回転運動や回転トルクを伝達歯車,プーリーなどと軸とを締結

締結なし

焼きばめ

フランジ付テーパリング

基本

キーのせん断力,圧縮力,摩擦力,併用

テーパ

リジッド形クランピングタイプ

傾斜テーパピンと

テーパ

テーパピン

丸ピン

スプリングピン

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主な軸との締結機構:キーとキー溝(1) 沈みキー(sunk key)

仕組:軸とボスの両方にキー溝+その空間にキーがある.特徴:荷重伝達能力が高い.要点:キーとキー溝のはめあい種類:平行キー,こう配キー(1/100勾配)材料:キー材=S35C,S45C,SF55など(市販品のほとんど)規格:軸の直径と適合するキー寸法→JIS

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主な軸との締結機構:キーとキー溝(2) くらキー(saddle key)

仕組:ボスのみにキー溝,軸は加工しない

+その空間に1/100テーパキーを打ち込む

特徴:伝達能力低

伝達力はキーと軸との接触圧力によって

生じる摩擦力のみ

(3) 平キー(flat key)

仕組:ボスのみにキー溝,軸にキー幅の平面

+その空間に1/100テーパキーを打ち込む

特徴:伝達能力低

伝達力はキーと軸との接触圧力によって

生じる摩擦力+摩擦トルク

くらキーよりは伝達能力が高い

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主な軸との締結機構:キーとキー溝(4) 接線キー(tangential key)

仕組:1/100テーパキーを2本1組+120°隔てて2組を軸に取り付ける.

特徴:伝達能力高重荷重,交番トルクが作用する軸に適用トルクをキーの圧縮力として受ける→キーが薄い→キー溝が浅い→ボス,軸を弱めない

(5) 半月キー(woodruff key)仕組:半月キー+軸に半月状のキー溝特徴:テーパ軸用

・ ボスと軸の締結時に半月キーが自動的に調整される.

・ キー溝がフライスカッターで容易に加工・調整ができる.

伝達能力低←半月状のキー溝で軸が弱い

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主な軸との締結機構:キーとキー溝(6) すべりキー(sliding key)

仕組:キーをボスまたは軸に固定特徴:伝達能力低

軸とボスとが軸方向に移動できる.

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キーの設計用途

・ 軸と同等の伝達能力:沈みキー

・ 軸の伝達能力より小:くらキー,平キー

・ 軸の回転が正逆両方向(交番)で伝達トルクが大:接線キー

キーの寸法

長さ l,幅 b,高さ hキーの強度

a) キーのせん断応力τ →長さ l,幅 bb) キー溝壁の圧縮応力σ →長さ l,高さ h※キー材は軸に対して安価なので、

キーは軸よりも弱くする(安全弁)

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キーに作用する力:せん断応力→幅

軸に加わるトルク: T,軸:直径 d,→キー:長さ l,幅 b,高さ hキーにかかる力: F

キーにかかるせん断応力: τ

キーの許容せん断応力: τa

キーの使用時のせん断応力τが、τa ≧ τ となるようキーの寸法を設計しなければならない。

軸のせん断強さ: τd

軸の伝達できるトルク: Td

2TFd

=

2F Tbl bld

τ = =

3

16d ddT π τ=

キーの許容せん断応力: τa のと

き、軸の伝達トルクを伝達できるキーの bl 値は次式で表される。

232 216 8

d da d

T ddbld bld bl

π τπτ τ= = =

2

8 8d d

a a

d dbl dπ τ π ττ τ

= =

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キーに作用する力:bl 値→幅 bキーの許容せん断応力: τa としたとき、

軸の伝達トルクを伝達できるキーの bl 値は次式で表される。

いま、τd =τa とし、l = 1.5 d と仮定すると

キーの幅 b は

2

8 8d d

a a

d dbl dπ τ π ττ τ

= =

112 4

b d dπ= ≒

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キーに作用する力:圧縮応力→高さ

キーに生ずる面圧: P

許容面圧(圧縮応力): Pa

通常 Pa ≦ 10 kgf/mm2

いま、 Pa =(2~3)τd 、l = 1.5 d と仮定すると

キーの高さ h は

( )4

2F TP

h l hdl= =

34 416

d dT dhPdl Pdl

π τ= =

キーにかかる力: F

4ThPdl

∴ =

214 (2 3 )(1.5 ) 12 18

d

d

d dd

π τ πτ

= =∼ ∼

(1 0.7) (1 0.7)4d b=∼ ∼≒

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主な軸との締結機構:スプライン(7) スプライン (spline)

仕組:軸の周りに等ピッチで直接キーを削り出したもの特徴:伝達トルク大,軸とボスとが軸

方向にすべり運動できる.歯形形状:・ 角形スプライン

加工:容易用途:1形(軽荷重用),

2形(中荷重用),歯数:6,8,10枚の3種類調整:小径合わせ

・ インボリュートスプライン加工:比較的容易機能:自動調心性,

伝達トルク大調整:大径合わせ,

歯面合わせ

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主な軸との締結機構:セレーション(8) セレーション (serration),

セレーション軸 (serrated shaft)Serrate(形容詞):「のこぎり歯状のギザギザの」

仕組:スプライン軸の歯の高さを低くして歯数を多くしたもの.

特徴:伝達トルク大軸とボスとが軸方向に移動しない.遊びなし.半永久的結合用.

加工:ボス・・・ブローチ加工(引き抜き)キー(軸) ・・・ホブ切り(インボリュート)

歯形形状:・ 三角歯セレーション

機能:伝達トルク大規格:なし

・ インボリュートセレーション機能:自動調心性,伝達トルク大調整:歯面合わせ規格:JIS歯数:10~60枚

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主な軸との締結機構:圧力ばめ(9) 圧力ばめ(press fit)

焼きばめ(shrink fit)

仕組:

圧力ばめ=穴径より少し大きい軸径を

持つ軸を圧入.

焼きばめ=穴部を加熱し膨張させ挿入.

冷めると収縮して締結.

→軸と穴の接触面の摩擦力により締結.

用途:車輪と車軸,タービン(軸と羽根車)

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主な軸との締結機構:テーパーリング(10)テーパーリング(taper ring)

仕組:1組のテーパリング(イン

ナーリングとアウターリング)を加

圧スリーブで押し込んで、締付力

を発生させる。

特徴:軸とボスを簡単・強力・確実

にノンバックラッシで締結

機能:センタリング機能なし.

ボスガイドが必要.

※ツバキエマソン:

パワーロックシリーズ

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軸継手(coupling)軸継手の機能

駆動軸と従動軸を連結

→回転運動とトルクを伝達

軸継手選定上の一般的な注意事項

1. 心合わせが完全に行えているか

・・・軸継手の形式を決める目安

2. 回転の釣り合いが成立しているか

3. 取り付け,取り外しができるか

・・・保守性

4. 伝達能力は要求を満たしているか

(トルク&回転数,軽量,小型)

5. 回転体に突起物がないか

・・・ 安全確保

6. 連結の確実性が高いか

・・・運転中の振動でゆるまないこと

偏心(平行誤差)

偏角(角度誤差)

エンドプレイ(軸方向誤差)

心合わせ(心出し)

偏心+偏角

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継手の分類・種類

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継手の分類・種類

固定軸継手(rigid coupling)=2軸が完全に同心な場合=同一直線上の2軸を連結

たわみ軸継手(flexible coupling)=小さな偏心,偏角,軸方向変位を許容する

自在軸継手(universal joint)ボールジョイント(ball joint)=偏角を許容する

オルダム式軸継手(orudam coupling)=偏心を許容する

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固定軸継手:筒型軸継手(1) 筒型軸継手 (muff coupling):構造が簡単,小型・・・多種

キーを使用するタイプ

=キーやピンのせん断力で支える

・・・伝達トルク大

キーを使用しないタイプ

=摩擦力のみによる

・・・伝達トルク小

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固定軸継手:フランジ形軸継手(2) フランジ形軸継手(flange coupling)

特徴:大型,高速・・・多種

2

4 2DT d Zπ τ ⎛ ⎞= ⎜ ⎟

⎝ ⎠

a) 大トルク伝達用・はめあいで接続→加工精度高

合わせ面:はめ込み,リーマボルトとボルト穴(リーマ加工)

・伝達トルク=ボルトのせん断強さで決まる

・注意:ボルトのねじ部では、せん断力を受けないようにする.

・伝達トルクT(ボルト直径 d,ボルト穴ピッチ円直径 D,ボルト本数 Z,許容

せん断応力τ(通常2kgf/mm2=かなり安全側)

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固定軸継手:フランジ形軸継手(2) フランジ形軸継手(flange coupling)

特徴:大型,高速・・・多種

b) 小トルク伝達用・はめあいで接続しなくてよい

合わせ面:はめ込みでなくて良いボルト穴:精度が低くてよい

・伝達トルク=ボルトの引張力による

摩擦力の大きさで決まる

・伝達トルクT(摩擦係数μ,ボルト1本の引張力 P,ボルト穴ピッチ円直径 D,ボルト本数 Z)

2DT Z Pμ ⎛ ⎞= ⎜ ⎟

⎝ ⎠

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たわみ軸継手:フランジ形たわみ軸継手(1) フランジ形たわみ軸継手 (flange coupling)

仕組:フランジ形固定軸継手のボルトをゴム、ばね、革などで包む

原理:2つのフランジ同士のたわみにより許容する

用途:市販品が多数ある.伝達トルク,回転数により選定する

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たわみ軸継手:歯車軸継手(2) 歯車軸継手 (flexible gear coupling)

仕組:2軸を外歯車と内歯車で連結.

特徴:高速,大馬力(大出力,大トルク),高価

歯面潤滑が重要.

歯形修正と軸心のずれの許容効果

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たわみ軸継手:ゴム軸継手(3) ゴム軸継手 (rubber coupling)

仕組:軸に取り付けたフランジの間に

ゴムでできた中間部を挟み込む

特徴:大きな軸心のずれを許容できる

振動や衝撃を吸収できる

伝達トルク小

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たわみ軸継手:チェーン軸継手(4) チェーン軸継手 (chain coupling)

仕組:軸にスプロケットを取り付け、スプロケット同士をチェーンにより連結原理:チェーンとスプロケットのがたにより許容する

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たわみ軸継手:ダイヤフラム形軸継手(5) ダイヤフラム形軸継手 (diaphragm coupling)

仕組:薄い金属性ダイヤフラムを介して、軸を連結

原理:ダイヤフラムの弾性変形によって軸心のずれを調整する.

特徴:軸トルクは伝える.曲げモーメントは伝えない.

伝達トルク大,高速回転.継手の脱着が容易.構造が簡単.

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たわみ軸継手:ディスク形軸継手(6) ディスク形軸継手 (disk coupling)

仕組:薄い金属性ディスクを介して、軸を連結

原理:ディスクの弾性変形によって軸心のずれを調整する.

特徴:軸トルクは伝える.曲げモーメントは伝えない.

伝達トルク大,高速回転.継手の脱着が容易.構造が簡単.

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自在軸継手:不等速自在軸継手(1) 不等速自在軸継手

(universal joint)形式:十字軸形軸継手こま形自在軸継手クローズカップリング

特徴:1組で使用すると駆動軸が一定角速度で回転しても従動軸の角速度は一定とならない

角速度を一致させるためには、同一平面内でαの等しい2組の継手が必要

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自在軸継手:等速自在軸継手(2) 等速ボールジョイント (ball joint)

仕組:同一平面内の2個1組のボールを軸から等距離に、

軸角の1/2に配置したもの

機能:駆動軸の角速度と従動軸の角速度とが常に一致する

固定用等速ジョイント

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自在軸継手:等速自在軸継手(3) 大角度スライドジョイント (High Angle Pluning joint)

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自在軸継手:等速自在軸継手(4) スライド用等速ジョイント (Pluning joint-Tripod Type)

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オルダム軸継手(1) オルダム軸継手 (orudam coupling)

用途:軸が平行で軸心がずれている場合

注意:摩擦部分が大きく振動が発生しやすいので,高速用途には不向き