週5日勤務の共働き夫婦 家事育児 実態調査2019 ~夫のホンネ、妻 … · 2)...

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-1- (C) Recruit Co., Ltd. All rights reserved. 週5日勤務の共働き夫婦 家事育児 実態調査 2019 ~夫のホンネ、妻のホンネ~ 序章 調査にあたって/調査概要/調査対象者の特徴的な属性 第一章 夫への要望、妻への要望、お互いに求めることがすれ違っている 第二章 家事育児に積極参加したい男性は、多くの女性よりも孤独な状態にある 第三章 男性の家事スキルが夫婦間の家事育児満足度に大きく影響する 第四章 家事育児の満足度が高い夫婦ほど、配偶者の仕事を深く理解している 第五章 女性だけを支援しても、女性活躍は進まない おわりに 幸せな両立をする世帯が増えることを願って ※本レポートは、iction!サイト内の連載記事を加筆・再構築した調査報告の総集編です。 株式会社リクルート HR 研究機構 iction!事務局

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週5日勤務の共働き夫婦 家事育児 実態調査 2019

~夫のホンネ、妻のホンネ~

序章 調査にあたって/調査概要/調査対象者の特徴的な属性

第一章 夫への要望、妻への要望、お互いに求めることがすれ違っている

第二章 家事育児に積極参加したい男性は、多くの女性よりも孤独な状態にある

第三章 男性の家事スキルが夫婦間の家事育児満足度に大きく影響する

第四章 家事育児の満足度が高い夫婦ほど、配偶者の仕事を深く理解している

第五章 女性だけを支援しても、女性活躍は進まない

おわりに 幸せな両立をする世帯が増えることを願って

※本レポートは、iction!サイト内の連載記事を加筆・再構築した調査報告の総集編です。

株式会社リクルート HR 研究機構 iction!事務局

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序章

【調査にあたって】

政府が女性の就業支援を国家戦略の一つと位置付けたのは 2012 年のこと。2015 年には女

性活躍推進法も制定され、女性の就業率は年々上昇を続けています。その一方で、第 1 子

出産を機に離職する女性の割合は 46.9%(※1)。子育て中も継続的に働くことに関しては、

いまだ男女で大きな差がある状態です。

また、外で働く女性が増えたことにより、男女の家庭内での役割にも変化が起こっていま

す。夫婦で家事・育児をシェアする家庭や、育児休業を取得する男性の話を耳にする機会

も増えました。けれどそんな家庭はまだまだ少数派で、世の中全体では「お互いにフルタ

イムで働いているのに、夫は家のことをほとんどしない」「男が育児のために仕事を休む

なんて、会社に言いづらい」といった悩みや嘆きが数多く聞かれます。

こうした不満を解消していくことこそ、男女が分け隔てなく仕事と家庭を両立できる姿に

繋がっていくのではないか。私たち iction!は解決のヒントとして、夫と妻それぞれのホン

ネに着目することにしました。特に今回は、女性の社会進出とともに増えてきた、夫婦と

もフルタイム勤務もしくはそれに近い働き方をしている共働き家庭に注目。週 5 日以上勤

務かつ、1 日平均 6 時間以上勤務の世帯を対象にして、調査を実施しています。

iction!(イクション)とは…

2015 年に「子育てしながら働きやすい」社会の実現を目指す取り組みとしてスタート。

2019 年 9 月より、さまざまな働き方が共生する社会の実現に向けて、「十人十色の働き方

を、みんなでつくるプロジェクト」としてリニューアル。

※1:「第1子出産前後の女性の継続就業率」及び出産・育児と女性の就業状況について(平成 30 年 内閣府男女共同

参画局)

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【調査概要】

1)本調査

<調査回答者>

●全国 25~49 歳の夫婦

●夫婦共働き(共に週 5 日以上勤務かつ、1 日平均 6 時間以上勤務)

●第 1 子の年齢が 2~6 歳(小学校に上がる前)

●配偶者、第 1 子と同居している(単身赴任など別居していない)

<調査手法>

インターネット・リサーチ法

(対象者とその配偶者に同一の質問を行い、同一夫婦

の回答を聴取)

<サンプル数>

計 1,039 組の夫婦

(男性 1,039 人 / 女性 1,039 人)

<調査実施時期>

2019 年 3 月 1 日(金)~3 月 5 日(火)

※株式会社マクロミル協力のもと、同社保有のモニタを対象に実施。

<調査のポイント>

妻の育休終了後~子が小学校に上がる前までにフォーカス。

同一夫婦で夫の意見と妻の意見を収集し、一方の考えや行動が配偶者にどんな影響を及

ぼすのかを分析。

夫婦の労働時間にあまり差がない共働きとして、夫婦ともに週 5 日以上&1 日平均 6 時

間以上働く世帯を対象に設定。

2)追加調査

本調査と同一家庭(計 1,039 組の夫婦)に同一手法で追加調査を呼びかけ、600 世帯が回

答。内、追加調査の時点で夫婦の労働時間にあまり差がない共働きで、夫婦ともに週 5 日

以上&1 日平均 6 時間以上働くという条件に該当する、490 世帯の回答をもとに分析。

※調査実施時期:2019 年 6 月 18 日(火)~6 月 20 日(木)

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【調査回答者の特徴的な属性】

1)5 組に 1 組が、30 代後半から 40 代での第 1 子出産

現在の年齢に注目してみると、20 代は少数でほとん

どが 30 代以上。40 代も男性 26%、女性 17.5%で、

このことから 5 組に 1 組以上が 30 代後半~40 代で

初産を経験しているようです。

2)世帯年収 1,000 万円以上が、1/4 以上を占める

世帯年収の平均は 822 万円。1,000 万円以上の家庭も 1/4 以上いるという結果。夫婦

二人で稼ぐことの力強さを感じさせられます。

※参考:児童のいる世帯の全体平均は 739.8 万円(厚生労働省 平成 29 年 国民生活基礎調査の概況

より)

3)親やきょうだいにはそこまで頼れない!?

9 割が夫婦と子どものみの核家族。原則はパートナー同士で協力して家事・育児をす

るのが大前提のようです。また、配偶者の次に欠かせないものが「保育園・幼稚園の

延長保育」で約半数という結果。「妻の親の協力」が欠かせないと回答した女性も

46.2%と少なくありませんが、頼れる親族や知人が生活圏内にいない家庭も多いのか

もしれません。

4)子 1~2 名の家庭が大半

子ども 2 人の家庭が 49.9%で最多。僅差で 1 人

(45.7%)という結果になりました。

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第一章

夫への要望、妻への要望、

お互いに求めることがすれ違っている

「スマホばかり見て、子どもが泣いても気づかないのはいかがなものか(妻・28 歳)」

「家事をやっても、やり方が気に食わないのかすぐに怒る(夫・47 歳)」

配偶者の家事・育児に対してどう感じているのかを調べたところ、

夫も妻もたくさんの不満・言い分を抱えていることが分かりました。

第一章では、そうした不満の内容にスポットをあて、

夫婦がすれ違っている要因を探ります。

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■夫に不満を募らせる妻たち

そもそも、週 5 勤務の共働き夫婦は配偶

者の家事・育児をどう感じているのでし

ょう。そこには明らかな男女差がありま

した。

「配偶者の家事・育児不満度」を調べる

と、夫の家事・育児に不満がある妻は、

52.9%と半数越え。夫より 20 ポイントも

高いのは、共働き夫婦であっても女性がよ

り多くの家事・育児を引き受けている現状

と重なります。また、「配偶者の家事・育

児の参加状況納得度」についても、納得し

ていない割合は妻が夫より 24.8 ポイント

高いという結果でした。

その一方で、「家事・育児で配偶者を頼りに

しているか」を問うと、「とてもあてはま

る」「ややあてはまる」と回答した妻は約8

割。「まったくアテにしていない訳ではな

いものの、納得はしていない」が、妻側の

ホンネのようです。

■妻のダメ出しに怯える夫たち

妻が不満とストレスを抱えている隣で、夫は家事・

育児をどう考えているのでしょうか。「自分が仕事

と家事・育児を両立することは考えていない」と回

答した夫は、わずか 7.1%。夫の 9 割以上は自身が

家事・育児に参加するつもりであるようです。

では、お互いへの不満はなぜ生まれるのでしょう。

「家事・育児において困っていること」について尋

ねてみたところ、夫と妻では見事に意見がすれ違っ

ている事実が見えてきました。

夫側で特徴的だったのは、「家事・育児に協力しているつもりが、妻から文句を言われる」

が上位(35.8%)なこと。その一方で妻の場合は、「夫が家事に協力的でない」が高い傾向

にあります。つまり、「協力してくれないと怒る妻」VS「協力しているのにダメ出しをされ

る夫」という食い違いが浮かび上がって見えます。

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■すれ違う、互いの言い分

では、実際にあがったそれぞれの不満の一部を見てみましょう。

1) 夫の雑な家事を嘆く妻 VS 妻の一言にやる気を失う夫

妻が夫に抱く不満で多いのは、

家事・育児のレベルが自分の基

準と違うこと(中途半端)。「私が

やり直しをしなければならない

ので二度手間になる」といった

意見もありました。その一方で、

夫側は「細かいことが気になる

のは分かるが、あまりうるさく

言われたくない」、「家事をやっ

ても感謝してくれない」という

意見。夫なりに努力はしている

ものの、認められないためやる

気を失くしている様子です。

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2) 夫はなぜ家事・育児に消極的なのか?

妻からは、夫の家事・育児へのスタンスに対する意見も多く寄せられました。たとえば、

「言わない限り動いてくれない」「あくまでも私(妻)のサポート役で、自主性がない」

という意見。『家事・育児は女性がメインで男性はサブ』という意識が態度や行動に見

え隠れしているようです。しかし、その原因はすべて夫の意識の問題なのでしょうか。

1)の意見を踏まえると、もしかしたら夫が主体的に家事・育児を行った場合でも、妻

が必要以上に委縮させている可能性がありそうです。

3)妻のあるべき姿(期待する役割)が男女で異なる?

「配偶者に不満に思っていることや、もっとしてほしいこと」という質問で、夫と比べ

て妻側に突出していたのは、「身の回りのことをきちんと行ってほしい」という項目。

妻側の自由回答でも、「(夫は)自分のことくらい、自分でやってほしい」とありました。

そんな意見とは正反対に、夫側は「自分(夫)をほったらかしにしないでほしい」「母

親としてだけでなく、妻としても機能してほしい」という声が散見されます。つまり、

夫が妻に期待する役割の中には、「夫の身の回りの面倒を見る」が含まれていそう。自

分が家事・育児へ参加することに前向きな男性ですら、この意識はいまだ根強いようで

す。

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■子どもを最優先にしながら、夫婦でフェアな状態を模索する、現代の共働き夫婦

ここまで、すれ違う意見ばかりをご

紹介してきましたが、共働き夫婦が

不平不満を言ってばかりかと言え

ば、そうではありません。たとえば、

「自分がもっとするべき・したいと

思うこと」。夫も妻も、子どもへの時

間を増やしたいという回答で一致し

ており、仕事との両立に悩みながら

も、子ども最優先に暮らそうとする

共通意識が見て取れます。

また、妻に家事・育児の負荷をかけて

いることを、夫は理解している様子。

「妻の自由時間を増やしたい」と考

えている夫が多いことは、妻への労

いと共に、自らが家事・育児を引き受

けようとする姿勢も感じられます。

このように、お互いに言い分はあっ

ても、日々の生活には相手の存在が

必要なことをちゃんと分かっている

のが、調査に回答いただいた共働き

夫婦の特徴。「夫婦間の家事育児の両

立において重要だと思うもの」とい

う問いに対して、お互いに気配りや

思いやりを持つことが夫婦間の家

事・育児には重要だと考えてる人が大

半ですし、「家事・育児において欠か

せないと思うもの」という質問でも、

配偶者の協力がダントツの1位にな

っており、頼りにしていることは明ら

かです。

では、お互いが不平不満を少なく暮ら

していくには、どうしたら良いのでし

ょうか。そのヒントとして、「共に不

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満がない」と回答した夫妻の意見をご紹介します。

"妻の家事は少し雑なところがあり、僕がやり直すこともある。でも必要以上には言わない。それが秘訣(夫・

33 歳)"

"はじめは育児も家事も女の私がするものだと思われていたし、夫は手伝うという感覚だった。しかし、た

くさん話し合い少しずつやってもらうことを増やして、今は不器用ながら出来ることを考えてたくさん協

力してくれている。分からないからやらなかっただけで、少しずつ教えたらやってくれるようになったのが

嬉しいし、人柄の良さを感じて惚れ直した。(妻・26 歳)"

細かなやり方や考え方が違うのは、家族でも少なからずあるもの。多少の違いは認め合って、

納得のいく家事・育児体制が実現できると良いですね。

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第二章

家事育児に積極参加したい男性は、

多くの女性よりも孤独な状態にある

「妻は実家に頼りすぎだと思う(夫・36 歳)」

「仕事帰りに会社の人と平気で飲みに行く(妻・30 歳)」

夫婦がパートナーに感じている不満のなかには、

家庭の外の人物が関係している意見もありました。

そこで第2章では「家事・育児にまつわる人間関係」にフォーカス。

男女で置かれている環境や意識・スタンスの違いが浮かび上がっています。

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■妻の一番の相談先は「自分の母親」。ママ友にだって、あれこれ聞いておきたい!?

「家事・育児について相談や愚痴を言う相手」を尋ねたところ、女性の場合は「自分の母親」

が 60.2%とダントツの 1 位。妻の母による意見やアドバイスが家庭内の家事・育児に大き

く影響していると言えそうです。

「ママ友」が重要な存在になっている人が多いのも女性の特徴。年の近い子どもがいる親同

士なので、“共感しやすい相手”なのかもしれません。保育園・幼稚園の送り迎えの際に言葉

を交わす光景が目に浮かびます。

なお、仕事関連の友人・知人に家事・育児の話をする女性は 33.1%で、第 3 位という結果。

女性の場合は、母親を真っ先に頼りながらも、子どもを通じたコミュニティや職場のコミュ

ニティなど、相談先が多岐に渡っているようです。

■男性は仕事以外の付き合いがあまりない!?交友関係の狭さが目立つ

女性が、「自分の母親」「ママ友」「職場」で家事・育児の話をしているのと比較すると、男

性は明らかに傾向が異なりました。

一番の相談相手は、「職場(仕事関連の友人・知人)」。しかし、その割合は 37.8%と、女性

側で 3 位だった割合(33.1%)とほとんど変わりません。「自分の母親(夫の母)」に家事・

育児の相談をするのも 2 割程度で、親同士のコミュニティ(ママ友・パパ友)の存在はほと

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んど見えてこない結果でした。

何よりも特徴的だったのは、「相談する相手はいない」と回答した男性が 3 割を超えている

こと。また、全体的にどの属性もあまり相談先にはなっておらず、職場だけが突出した相談

先になっているのも女性との違いです。

これらの傾向を総合すると、男性は仕事以外のコミュニティとの繋がりが薄く、家事・育児

に対して適切なアドバイスを得たり、子どもの親同士で共感したりするような機会が女性

に比べて少ないのだと分かります。

■家事・育児が話のタネにならない夫たち

そこで私たちは、こうした男女の違いがなぜ起こるのか、家事・育児の満足度にどう影響し

ているのか知るため、追加調査を実施。すると、そこには男性のホンネが隠れていました。

まず明らかになったのは、そも

そも家の外に話し相手を求めて

いるか。女性の場合は、「相談し

たいことがある」「話を聞いてほ

しいことがある」と答えた人が、

家事で約 7 割、育児で約 8 割と、

大半の人たちが話し相手を求め

ています。

ところが、男性では家事につい

て相談したいことや話を聞いて

ほしいことがある人は約 3 割

で、育児は約 4 割。そもそも男

性は、家庭内のことに関して外

で話し相手を求めていない場合

が多数派のよう。第一章でもご

紹介した、「女性の方が家事・育

児に不満を感じている」という

結果と照らしあわせると、もし

かしたら家事・育児の参加度合

いや課題意識の差が影響してい

る側面もあるかもしれません。

■父親同士で家庭の話を共有する機会が増えていけば、解決できるものがあるかもしれない

その一方、3~4割存在する「話し相手を求めている男性」はどんな話題について会話した

いのでしょうか。その内容を調査すると、興味深い事実が見えてきました。

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一番の興味は「配偶者との分担

割合・分担内容について」。その

次の関心事は「家事のやり方や

コツ」と、自らも家事・育児に参

加し、夫婦ともに両立していく

ための具体的な方法を知りたが

っていることが分かります。ま

た、夫婦それぞれに同様の質問

をした結果を比較してみると、

上位に大きな男女差はありませ

ん。同じ悩みを抱えていたり、同

じヒントを求めている可能性が

あるため、親同士が気軽に話し

合えるようなコミュニティの輪

が性別に関係なく広がっていく

と良いのかもしれません。

女性との唯一の違いは、第一章でも夫が妻に感じている不満としてご紹介した「妻から家事

のやり方について文句を言われる」ことについて、家の外で話したいと思っている人が多い

こと。ヒントやアドバイスが欲しいことに加えて、気晴らしに愚痴を言いたいという気持ち

も交じっていそうです。

妻が夫に怒っているという構図だからこそ、こうした愚痴は異性にはなかなか話しづらく

同性の方が共感しやすいもの。ひょっとしたら、「自分も家事・育児に参加すべきだとは思

っているが、妻から家事・育児のやり方にいつも文句を言われている」という夫たちの中に

は、家の外に相談相手がおらず、解決策が見えないまま家事・育児を敬遠してしまう人がい

るのかもしれません。

男性同士で家事・育児についてざっくばらんに話す機会が増え、お互いの知恵やアイデアを

共有する場が増えることも、男性の家事・育児参加をさらに促進していくためには必要なこ

とではないでしょうか。

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第三章

男性の家事スキルが

夫婦間の家事育児満足度に大きく影響する

夫の家事・育児に納得していない妻たちは、どんな不満を抱いているのでしょうか。

調査で寄せられたコメントを見てみると、

「夫の家事は無駄が多い(妻・34 歳)」

「子どもが泣いても夫は何もできず、私に押し付けてくる(妻・31 歳)」

など、やはり多くの妻が“夫の家事・育児スキル”に不満を感じているようです。

第3章では、男性の家事・育児スキルに注目。

様々な角度から調査した結果をご紹介していきます。

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■夫が一通り家事をできる家庭は、できない家庭に比べて夫婦円満の割合が高い

そもそも男性は、自身の家事スキルをどう捉え

ているのでしょうか。「一通りの家事ができる

か」という質問に「家事ができる」と回答した男

性は全体の 7 割。実際に一通りの家事を行って

いるかはさておき、自分にはできないと思って

いる人の方が少数派なようです。

次に、『夫が一通りの家事をできる家庭』と『夫

が一通りの家事をできない家庭』で満足度を比

較してみました。すると、『できる家庭』は 4 割

が夫婦共に不満がないのに対し、『できない家

庭』は 2 割程度という結果。また、妻だけが不満

に感じている割合にも差があり、『できる家庭』

で 24%、『できない家庭』で 40.9%。夫が一通りの家事をできるか否かは、夫婦間の満足度

に影響しているようです。

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■結婚するまで実家暮らしだった男性は要注意!?

では、家事ができる男性とできない男性とでは、何が違うのでしょうか。まず注目したいの

は、「育った環境(自身の親の働き方)」。両親共働きの家庭で育った男性と、母親が専業主

婦の家庭で育った男性では、幼少期の“お手伝い”経験や、家事への参加意識に差が生まれや

すいのではないかと、環境が影響している可能性を探っていきました。ところが、どちらの

男性も両親が共働きだった割合は5~6割と大きな違いが見られなかったのです。

さらに、両親の働き方が子育ての価値観を左

右し、男性の家事スキルに影響している可能

性も探ってみました。しかし、「子どもが小さ

いうちは、母親がそばにいた方が良い」とい

う価値観を支持した男性は、むしろ両親共働

きの家庭で育った人の方がやや高い結果

(64.3%)。これは、女性の場合もほぼ同様の

値を示しており、男女とも親世代のやり方や

価値観はそれほど重要ではなさそうです。

一方、独身時代の生活にも目を向けてみると、

明らかな関連が見られました。「結婚前に 1 人

暮らしの経験がある」と答えた割合で比較し

てみると、一通りの家事ができる男性の 8 割

以上は 1 人暮らしをしていたのに対し、一通りの家事ができない男性は約 5 割が 1 人暮ら

しを経験しないで結婚生活をスタート。女性の場合も家事ができないと回答した人は 1 人

暮らしの経験が 3 割程度しかなく、生活に必要な一通りのことを実際に自分でやってきた

経験の差が、結婚後にも影響しているようです。

■細かな作業をやりたがらない夫たち

経験の差が家事の得意・不得意に影響しているなら、その差をどうやって埋めていけば良い

のでしょうか。そのヒントとして、夫婦の家事・育児分担割合をもとに、男性が得意な家事・

苦手な家事を見ていきましょう。

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調査家庭における、家事・育児分担

割合の全体平均は、夫:妻=3:7 と

いう結果。項目別にみてみると、夫

の実施割合が 4 割を超えているの

は、「浴室や水回りの掃除」「ゴミだ

し」「子どもと遊ぶ」。妻よりも夫が

実施している家事は「ゴミだし

(60.2%)」のみでした。

一方、夫の実施率が低いワースト 3

に注目すると、ある傾向が見えて

きます。「食事のしたく・調 理

(17.7%)」「子どもの幼稚園・保育

園関連の雑務(19.1%)」が 2 トッ

プで、3 位が「食事の買い出し

(23.8%)」。調理は材料を切ったり

煮たり焼いたりといくつもの手順

がありますし、幼稚園・保育園の雑

務も、すべての持ち物に名前を書

いたり連絡ノートをチェックしてサインを書いたりと、こまごまとした作業が山のように

あります。食事の買い出しだって、冷蔵庫の中身を思い浮かべつつお店の特売品もチェック

しながら、献立を考えて買い物することが必要で、かなり頭を使う作業です。

このような複雑かつ細かな家事・育児ほど、夫はやっていないということ。シャンプーの補

充や子どもが持ち帰ってきた弁当箱を洗うといった、「見えない家事」も該当しそうです。

言い換えれば、手間のかかる複雑な家事ほど妻が引き受けているということ。生活に必要な

一通りの家事を自分一人で行った経験がないと、そうした細やかさが必要なことに気づき

づらく、「家事が雑」という烙印を押されやすいのかもしれません。

■「きちんと分担」派も「役割は決めない」派も。理想のかたちは家庭ごとに違っていい

では、夫婦ともに週 5 日以上 1 日平均 6 時間以上働く家庭における、理想的な家事の参加

状況とはどのようなものなのでしょうか。

追加調査の結果によると、今の家事参加状況については男女で開きがあるものの、理想的

な状態のイメージは男女で差が縮まっており、「どちらかに極端な負荷をかけるべきでは

ない」と考える人が多いことが分かります。

その一方、家事の役割を分担することに関しては人によって意見が分かれる結果になりま

した。きちんと分担できている状態を理想とする人ともいれば、気づいた人が気づいたと

きに出来ている状態が良いと考える人も。女性の方が後者を希望する割合が多いのは、

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「お願いしたことしかやってくれない」といった妻の不満の裏返しのようにも感じられま

す。また、夫よりも一通りの家事をやってきた人が多いからこそ「はっきりと線引きをす

るのは難しい」という意見なのかもしれません。

「お互いの得意・不得意を考慮して分担する」「平等にシェアする」「その場で気づいた

方、できる方がやる」…。夫婦が円満に家事・育児を両立する方法は一つではないし、仕

事内容や働き方が変わることや、子どもの人数や年齢の変化によっても、ベストなかたち

は変わっていくものでしょう。だからこそ、夫婦で協力するやり方の選択肢は多い方が良

いはず。そのためには夫婦どちらも一通りの家事ができる状態になっておくこと。それが

夫婦円満な家事・育児にたどり着ける一番の近道なのかもしれません。

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第四章

家事育児の満足度が高い夫婦ほど、

配偶者の仕事を深く理解している

「5:5 にしろとは言わないけれど、あまりに不平等(妻・33 歳)」

「平日は妻に任せきりになってしまい、申し訳ない(夫・37 歳)」

今回の調査では、家事・育児の実施割合に言及した意見もたくさん寄せられました。

たしかに夫も妻も外で働く場合、家事・育児を平等に担うのがフェアなように思えます。

けれど、家族それぞれにライフスタイルが異なるなかで、

一律に 5:5 を目指すことは家族の幸せに繋がるのでしょうか。

第 4 章では、多くの夫婦が気にしている「家事・育児の実施割合」と

満足度の関係に注目。

“平等”を敢えて疑い、夫婦円満の秘訣を探っていきます。

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■円満家庭も不満のある家庭も、家事・育児の分担比率はあまり変わらない

まず注目したのは、「夫婦のどちらも配偶者の家事・育児

に不満はないと回答した家庭」と、「夫婦のどちらか、も

しくは夫婦共に不満がある家庭」では家事・育児の分担に

差があるのか。しかし、円満家庭が妻:夫=65.6%:34.4%

の比率だったのに対して、不満のある家庭は妻:夫=

70.2%:29.8%と、明らかに差があるとまでは言えない結

果でした。

家事・育児を平等に担うことが夫婦円満の絶対条件だと

は言い切れないようです。

■夫婦の収入差や夫婦の年代も、家事・育児の満足度には

影響していない

では、家事・育児の負担が不平等でも不満のない夫婦は、どうして現状に納得できているの

でしょうか。そこで注目したのは夫婦の年収差。夫婦の年収に差がある世帯と、あまり差が

ない世帯で満足度を比較してみました。ところが、この場合も満足度に大きな差は認められ

ず、各家庭における理想の家事・育児のあり方は、収入の違いだけで一概に語れるものでも

ないようです。また、「時代とともに家族内の役割意識が変化していることも関係している

のではないか(女性の社会進出&男性の家事・育児参加への納得度)」という仮説のもと、

世代別の満足度も比較しました。しかし、こちらもはっきりとした違いがあるとは言えず、

家事・育児の満足度との相関性はない結果でした。

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■円満家庭の共通点は、夫婦の会話が多いこと!?

円満とは、どちらかが一方的に自分の都合を押し付けるのではなく、お互いが納得してい

る状態です。「夫婦間でできていること」を質問しても、円満家庭の場合は、「お互い思い

合えている」「お互いに気配りができている」「お互い尊重し合えている」が不満家庭より

も 40 ポイント以上高いことを示していました。不満のある家庭は、「普段からお互いの仕

事の状況について話し合えている」「家事・育児の不満があったら言い合えている」など

夫婦間での会話についても円満家庭に比べ半数ほどの割合。

そこで私たちは、夫婦が日常的に会

話している内容にも注目しました。

すると、不満のある夫婦とない夫婦

では、やや異なる傾向が見えてきま

した。

夫婦でよく会話している内容に大き

な違いはなく、どちらの家庭も「家

計の話」が第 1 位で割合もほぼ同

じ。子育てをしながら家族で暮らし

ていくうえで、お金の話題は避けて

通れないようです。ただ、それ以外

の項目では、いずれも円満家庭の方

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が日常的に話している割合が高い結果。不満のある家庭の方が、お互いの状況や考えをあ

まり話していない可能性がありそうです。

また、一番差が大きかったのは「子どもの教育方針」ですが、「妻の仕事の内容」「妻の職

場環境・人間関係」「妻の仕事で得た喜び」など、“仕事の話”が日常会話になっているのか

も違いとして浮かび上がっていました。

■不満のある家庭ほど、結婚後にパートナーの仕事への関心が薄れている

そこで今度は「配偶者の仕事への理解度」に注目。結婚前と現在で、相手の仕事について

どの程度理解しているかを調査してみると、そこには明らかな違いがありました。

円満家庭は、「結婚前」の時点で相手の仕事への理解度が 10 ポイント以上高いのに加え、

「現在」は不満のある家庭に比べて約 20 ポイントも高い結果。円満家庭は一緒に暮らす

うちにお互いの仕事への理解を深めているのに対し、不満のある家庭は結婚前→現在で理

解度が下がっており、真逆の動きを示しています。

また、不満のある家庭と比較すると、「仕事で得た喜び」と「今後のキャリア」の理解度

で特に差が大きいのも特徴。夫婦で仕事の話をよくする家庭は、単に相手の仕事内容や日

常的な愚痴を聞くだけでなく、パートナーの働く価値観やキャリア観まで理解している。

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だからこそ、お互いの仕事を応援しあえる協力のあり方を模索できるのではないでしょう

か。

では、相手が自分の仕事を理解していないことが原因で家事・育児に不満を持つ人たち

は、具体的に何を不満に感じているのでしょうか。ここでは自分の仕事の実態やキャリア

観をもっと知ってほしいと考えている妻たちの意見をご紹介しましょう。

“私も夫と同じくらい仕事を対等にしているつもりだし、私は持ち帰りの仕事が大量にあって主人にはな

いのに、夫は自分だけが疲れていると思って家事・育児を押し付けてくる(妻・34 歳)”

“子どもがまだ小さいので急な熱発時の対応や育児時間の確保のために、自分(妻)が仕事を抑えている

が、本当は私もキャリアアップや給料アップを目指したい。妻もしっかり働きたいと思っている気持ちを

きちんと理解してほしい(妻・36 歳)”

もちろん、夫婦がともに働きながら子育てをしている家庭だからこそ、慌ただしい日常を

送っているのが一般的。二人でゆっくり話す時間をなかなか取れないのが現実かもしれま

せん。でも、今回の調査対象のように夫婦ともに一定以上の時間を仕事に費やす家庭は今

後ますます増えていくでしょう。だからこそ、あなた自身がそうであるように、パートナ

ーの人生も「働くこと」が大きな割合を占めていることにもう少し関心を持っても良いか

もしれません。

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第五章

女性だけを支援しても、

女性活躍は進まない

第5章のテーマは、家事・育児と働く価値観や職場環境の関係性について。

行政も企業も、様々な取り組みで女性が働きやすい環境を整備していますし、

女性の力が社会から期待されているのは事実。

では、肝心の働く女性たちはどのような想いでいるのでしょうか。

仕事と家事・育児の両立に対する男女の意識差や

取り巻く環境の違いから、

女性のキャリアについて考えます。

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■母親の働きやすさが向上している一方で、父親が取り残されている

今回調査した夫婦は、いま働く職場環境をどう感じているのでしょうか。仕事と家事・育児

を両立していくうえで鍵となる「働き方の柔軟性」について尋ねてみると、男女によって自

身の職場環境の捉え方に違いが見

えてきました。

女性は、「子どもの発熱など急な用

事が入ったときに仕事を休みやす

い(61.9%)」「仕事と子育ての両立に

関して社内関係者の理解がある

(57.6%)」「仕事と子育ての両立に関

して社内関係者が協力的である

(42.3%)」と半数前後の割合で現在

の職場が両立しやすい環境だと回

答。フルタイムもしくはフルタイム

に近い働き方をするワーキングマ

ザーが一般化していく流れの中で、女性の働きやすさは着実に向上しているようです。

しかし男性の場合、上記 3 項目が当てはまると回答した人は 1~2 割程度。その一方で「仕

事の進め方を自分でコントロールできる」人は 37.7%と女性より高い数値を示しています。

つまり、男性は4割近くが自分の裁量で仕事を進められるのに、家事・育児を理由とした遅

刻・早退・休暇が取りづらいと感じているのです。男性の家事・育児参加率が依然として低

い背景には、本人の意欲だけでなく職場の上司・同僚たちの無理解や配慮に欠ける言動も影

響していそう。言い方を変えれば、「女性だけが」家庭と両立しやすい職場環境になってい

る状態とも考えられます。

■家庭が最優先だけれど、働くことは人生における大事な要素

このように、仕事と家庭の両立に向けては男女で職場の理解・協力に大きな違いが見られた

ことを踏まえ、今度は「仕事観」にも注目してみましょう。

「仕事より家庭を優先したい」と回答した人は、女性で7割以上。男性も半数以上は家庭優

先だと回答しており、二人とも一定時間以上を仕事に費やす夫婦であっても、家族を犠牲に

してまで仕事を優先したいとは思っていない人が多数派です。

しかし、仕事の優先度が必ずしも低いわけではない様子。「仕事は自分の人生において重要

な要素だと思う」と回答している人は、男性 67.9%、女性 57.4%。「自分の仕事にやりがい

を感じている」割合も男女とも過半数を超えており、ホンネでは「どちらも大事」だと思っ

ている人が多いと言えます。

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■職場の理解が、夫婦の役割意識に影響している

では、男女ともにホンネでは仕事も家庭

も大切だと考える人が多いのに、女性の

方がキャリア形成や昇進について消極

的で、会社からの評価や仕事を通したや

りがいをある程度諦めているのはなぜ

でしょう。追加調査で、「子どもの発熱な

ど、急に保育園のお迎えや看病などが必

要になった場合」というケースを想定し

て、夫婦のどちらが対応すべきだと思う

かを尋ねてみると、女性の 9 割以上が

「自分(妻)が行くべき」だと回答。男性

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の場合、「自分(夫)が行くべき」と考えている人は 3 割程度しかおらず、多くの家庭にとっ

て、仕事を調整して子どもの対応をするのは、妻の役割になっていることが分かります。

また、同じようなケースが発生したときに

仕事を休みづらい理由も調査。男性の方が

より休みづらいと感じていることは他の調

査結果からも明らかなものの、その理由は

男女でやや傾向が異なりました。

たとえば、男性も女性も休みにくい理由は

「自分の仕事を代わってもらえる人がいな

い」がトップ。しかし、女性の場合は「周り

の目が気になるから」と職場環境や人間関

係を理由にする人が多いのに対して、男性

の場合は「急にずらせない仕事や会議が多

い」と業務上の理由をあげる傾向が強いの

が特徴です。

これは、もちろん仕事の性質や役職・役割の違いによるところも大きいでしょう。しかしそ

の一方で、男性は女性よりも「(休むことに)社内の理解がない」と回答しており、この結

果からも男性が家事・育児のために仕事を調整することは、女性よりも困難が多いという今

の職場事情が垣間見えます。

■働く時間の長さで評価している限り、「女性活躍」は進まない!?

このように「男性(夫)の休みにくさ」は、女性が家事・育児を率先して引き受けざるを得な

い要因になっていると考えられ、夫婦間の話し合いだけでは解決できない、社会全体の構造

上の問題とも言えます。

その一方、仕事上のキャリアを諦めている女性たちは、その気持ちの原因を何だと捉えてい

るのでしょうか。「もともと自分は子供・家庭の方が仕事より大事だと思っているから」と

いう、自分の意思でキャリアを重視しない理由を除き、外部環境が阻害要因になっている場

合に目を向けてみると、「時間に制約がある働き方をしていると、適正な評価がされないと

感じる」が一番の阻害要因にあげられています。

つまり、夫婦ともに一定時間以上働く家庭であっても、大部分の妻は家事・育児のために時

短勤務や残業を免除された働き方をしており、それが自身の希望するキャリアへの足かせ

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だと感じているのです。会社の人事制度や評価

基準に則って働く以上、仕事と家庭を両立しよ

うとすると、いわゆる「マミートラック※」に

入らざるを得ないと感じているのが、現状なの

かもしれません。

しかし、一歩引いて考えてみると、もはや男性

だって無制限に働く時代ではありません。働き

方改革も進み、新たな残業規制の基準も施行さ

れています。こうした世の中の流れがあるから

こそ、企業が従業員を評価するモノサシは、働

く時間の長さよりも仕事の価値の大きさが重

視されるようにシフトしていくのではないで

しょうか。そうすれば、性別による仕事上の役割や任せ方の差が縮まり、それが家庭内の役

割意識にも影響していくかもしれません。

※ マミートラックとは、仕事と子育ての両立はできるものの、昇進・昇格とは縁遠いキャリアコースのこ

と。軽微な仕事ばかり任されたり、自ら負担の少ない補佐的な仕事を選んだりすることで、管理職などへ

のキャリアアップという階段を上らず、キャリアにおいて、ひたすら同じ役職や仕事内容などのまま、ト

ラックを周回し続けるような状態を指す。

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おわりに

幸せな両立をする世帯が増えることを願って

●きっかけは、家事・育児を「やらなくなった」夫の言い分

働き盛りの年代であるはずの 30~34 歳で女性の就業率が落ち込み、深い谷のような線を

描く現象「M 字カーブ」は、時代の変化と共に徐々に解消されつつあります。いまや共働

き世帯は 1,200 万世帯へ増加。子育てをしながら働き続けることは、女性にとって当たり

前の選択肢の一つとなりました。

また、男性の育児休業の取得が推進されるなど、女性に限らず男性にも家事・育児への参

加が求められています。男性が料理をしたり、洗濯をする。テレビコマーシャルでも、そ

んなシーンが多く見受けられるようになりましたね。

社会は着実に変わってきています。では、なぜ私たちは今、仕事と家庭を両立している夫

婦の関係性に目を向けようと思ったのか。

それは、同僚の男性がこぼしたこんな一言にあります。

「僕のせいで、両立に忙しい妻が不機嫌になるのはイヤだ。だから、僕は高い位置のもの

を取ることと重いものを持つことしかやらない。自分ができることに集中すると決めた」

彼も妻もフルタイム勤務。二人とも忙しい毎日を送っているので、何か自分にできること

をやろうと思った彼は、妻が仕事で帰りが遅い日に、子どもと先に夕食を済ませた後、皿

洗いをしてキッチンを片付けておきました。しかし帰宅した妻は、彼が洗ったお皿を見て

軽く舌打ち。納得する洗い方ではなかったのか、無言ですべての皿を洗いなおす妻の姿を

見て、彼はもう積極的に家事をしないと強く決めたそうです。

その後も様々な共働き夫婦の男性側の話を聞くと、同じようなエピソードに遭遇します。

・男性も家事や育児に携わるべきだ。

・どちらかと言えば携わりたいという気持ちはある。

・でも、いざやってみれば妻と喧嘩になってしまう。

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「家は心を落ち着ける場所であってほしいのに、ちっとも落ち着けない」そんなことを話

す男性もいました。

世の中を見渡せば、男性の育児休業を義務化する会社や、OECD 先進諸国における日本男

性の育児に関与する時間の短さなど、「男性はもっと家事・育児に関与せよ」というメッ

セージを毎日のように目にします。物理的にも、働き方改革によって時間的な余裕が生ま

れたことで、以前よりは家事・育児に参加できるという男性も少なくはないはずです。

多くの男性は、家事・育児をやろうと思っているし、実際にトライをしている。けれど、

妻との些細なコミュニケーションのズレが大きなすれ違いとなり、家事から離れていく男

性もまた多いのです。

その一方、夫婦でお互いの仕事の状況を確認しながら、できることを補完しあい、とても

良い関係を築いている家庭もたくさんあります。その違いを見つめることこそ、幸せな両

立をする世帯が増えていくヒントになるのではないか。そんな想いで今回の実態調査を設

計しました。

●本当に幸せな両立って何だろう?

今回の調査を通して、以下のようなことが見えてきました。

・家事の分担比率と両立生活への満足度は比例するわけではない

・夫は、妻から怒らないでいてほしいと思っているし、思いやってほしいとも思っている

・夫は妻に比べ、家庭の外に相談相手が少ない

・お互いの仕事に関心が高く、会話をしている夫婦ほど、両立生活への満足度が高い

もちろん夫婦のあり方は多種多様で、家庭によって理想的な働き方や暮らし方は異なりま

す。夫にも妻にも家事・育児の一つひとつに得意・不得意があって当然だと思います。だ

からこそ、お互いにハッピーな両立生活を過ごすためには、「これさえやっていれば絶対

に間違いない」という 100 点満点の正解はありません。現代の共働き夫婦が向き合ってい

るのは、それほど難しいテーマなのではないでしょうか。

でも、一つ確かなことは円満な家庭ほど夫婦がお互いの状況をきちんと把握し、お互いを

頼り、相談しあいながら、自分たちの理想のかたちを築いているということ。

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だとしたら、お互いの仕事や大切にしたいものを普段からよく話し、尊重していくこと。

そうすることで、柔軟に家事・育児を協力するあり方や仕事と家庭の比重の置き方を変え

ていくこともできるはず。一つの家族として、「ここは大事にしたいよね」「将来はこうな

るといいよね」と相談しあうことで、幸せな共働きをする家庭が一世帯でも増えることを

願うと共に、この調査結果が、そのヒントになれば幸いです。

育児中の方も、これから子育てや両立を考えるご夫婦も。

それぞれが自分らしく、お二人らしい幸せな両立のあり方が見つかりますように。

2019 年 11 月 iction!事務局一同