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表18 日本の SWOT 強み(S) 高品質の製品 高品質のイメージ 健全な位置づけ 安全で衛生的な製品 弱み(W) 価格 購入しやすさ 純輸入国と認識されていること 機会(O) 日本国内のレストランおよび海外 のレストラン. 高級料理店 若い消費者 健康重視の消費者 脅威(T) 持続可能性 市場から遠い(CO2フットプリント) 出典:主要業者へのインタビューによる 表19 中国の SWOT 強み(S) 大量の供給 低コスト 低コストで加工可 3 世界の関税 弱み(W) 品質の調整(とくに加工の段階) 製品の安定性 市場との距離 機会(O) 主な輸入品国に近い 巨大な魚介類市場 品質と安定性の改善 脅威(T) 衛生上の問題 環境と持続可能性の問題 出典:主要業者へのインタビューによる 3. 流通実態 (1) 概況 他の多くの市場と同様、水産物についても国内生産(漁獲と養殖)、輸入の2つの流 れから国内流通経路に供給される。2006 年においては国内生産8億ポンド、輸入 20 42

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表18 日本の SWOT

強み(S)

• 高品質の製品

• 高品質のイメージ

• 健全な位置づけ

• 安全で衛生的な製品

弱み(W)

• 価格

• 購入しやすさ

• 純輸入国と認識されていること

機会(O)

• 日本国内のレストランおよび海外

のレストラン.

• 高級料理店

• 若い消費者

• 健康重視の消費者

脅威(T)

• 持続可能性

• 市場から遠い(CO2フットプリント)

出典:主要業者へのインタビューによる

表19 中国の SWOT

強み(S)

• 大量の供給

• 低コスト

• 低コストで加工可

• 第 3 世界の関税

弱み(W)

• 品質の調整(とくに加工の段階)

• 製品の安定性

• 市場との距離

機会(O)

• 主な輸入品国に近い

• 巨大な魚介類市場

• 品質と安定性の改善

脅威(T)

• 衛生上の問題

• 環境と持続可能性の問題

出典:主要業者へのインタビューによる

3. 流通実態

(1) 概況

他の多くの市場と同様、水産物についても国内生産(漁獲と養殖)、輸入の2つの流

れから国内流通経路に供給される。2006 年においては国内生産8億ポンド、輸入 20

42

億ポンドとなっている(図 18)。

図 18 英国水産物市場の概況(2006 年:一部推定)

総消費金額 年間52億£

家庭内 24億£

冷凍品 10.6億£

チルド品 11.3億£

専門店 2.4億£

フードサービス28億£

フィッシュ&チップス11億£

学校 5億£

レストラン等 12億£

卸売り業者

冷凍/チルド

卸売り市場

総供給額 年間28億£

輸入:19億£ 外国船水揚げ:1億£ 国内養殖: 3億£国内漁獲:4.9億£

水産加工会社

輸出:9.3億£

出典:TNS、HM C&R、MFA、Seafish surveys.等により作成。

養殖部分が不明であったため SSPO による推定値を利用

それらが 終消費者に至るまでには、大きく4つの流れがあり、①卸売市場を経由す

るケース、②加工業者を経由するケース、③卸売り業者を経由するケース、④輸出に向

かうケースに分かれる(それらの複数を経由するケースもある)。

消費者がそれらを消費する際には、大きく小売店から購入して家庭内で消費するケー

スと、フードサービスによる場合に分かれる。

フードサービスは、消費者向けの、より大きなチャネルで、小売の 46%に対し、54%

となっている。水揚げから小売、フードサービスにいたる価格変化は、おおむね表のと

43

おりである。タラ類を例とすると、漁船価格(漁船からの売値)を 100 として外食産

業価格の 685 まで、その価格は大きく変化する。

表20 イギリスの魚介類の価格上昇モデル(原価/トン = 100)

タラ コダラ ウミザリガニ

原価 100 100 100

水揚げ費込み 110 114 111

加工/配送費込み 154 203 158

小売価格 225 422 244

または外食産業価格 685 1032 585

出典: Pro-Intal Consulting 推計

ヒアリング等により得られた、キーとなる市場およびサプライチェーンにおける 近

のトレンドとして注目される動きは以下のとおりである。

・ 今後 も成長が期待できるのは、生鮮・チルド分野

・ 供給サイドから小売・消費者に向かうバリューチェーンの市場パワーに動きがある。

・ 消費者嗜好が市場を動かし、バリューチェーンの川上分野に対し、インパクトを増

大させている。

・ 海外の供給サイドが市場ニーズに、より良く対応しつつある。

海外の供給サイドは市場の影響をより大きく受けるので、供給チェーンの中での垂

直統合が増えており、消費者ニーズへの対応がより容易になっている。

・ 英国に水揚げされる量は輸入量より縮小している(特にタラ類)。臨機応変な生産に

は生産ボリュームの調整が重要なので、海外の供給者がより選好される傾向にある。

・ 品質志向の高まりは「トロールもの」より「1 本釣りもの」選好を加速させ、船上

処理技術の向上をうながしている。

・ 低コスト国間の 2 度冷凍産品における競争激化は重要ファクターとなりつつある。

・ 原料価格における低価格競争激化が予想される。

・ 第一次加工業者は、利益を確保するため、市場への距離の短かさをいかせる、生鮮・

チルド分野に力を入れている。

・ 配送・物流チェーン全体を通じての、適正な低温管理の重要性は増大し、国内企業

より海外の企業が先を行っている。

・ 小売分野への大規模供給者にとって、サプライチェーンを通じての原料トレース力

は極めて重要である。

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・ 漁業資源の持続性は、重要課題となりつつあり、加工業者の多くは英国の原料を使

わないようになっている。

・ 英国の漁港は、魚類の取り扱いと品質において、より高い基準を志向しつつある。

・冷蔵市場対策

・バイヤーのために、価格透明度を高め、標準化された入札箱

・より信頼性のある生産情報

・トレーサビリテイ推進

・衛生基準の向上

・漁港ガイドラインの開発改善

・電子オークションの導入(エージェントの、新技術と労働実態志向も影響)

(2) 輸送コスト

日本からの輸送方法とコストに関しては、

・ 「移送は簡単。生鮮なら空輸、冷凍なら船」(水産物輸入業者)

との意見が一般的であり、現在の輸送コストは、

・ 20トンコンテナ当り2千ポンド(4千ドル)

・ 空輸は1キロ8-10ポンド(チルドものはドライアイスパックで空輸)

とされている。豪州から英国までのブリ空輸コストは1キロ7-8ポンドとされている。

EU向け輸出ライセンスを保有する加工業者の数が極めて少ない結果、1つのコンテ

ナを満杯にすることができず、その結果輸送コストがかなり割高になる傾向にある。

移送コストには、英国に入る際の、相当額の、取り扱い手数料、通関手続コストが加

わる。それらのコストは、1コンテナ当り 1500-6000 ポンドになる。ヒアリングによ

れば、平均は 3000-4000 ポンドとのことであった。(輸入税18%を除く)。手続きの

内容については次章を参照。

日本から輸入する乾燥食品の、注文から受け取りまでの時間は、概ね 75 日だが、水

産物の場合、通関とヘルスチェックのため、より長い日数がかかる可能性がある(通関

手続きは、乾燥食品は平均7日だが水産物は平均 14-21 日)。なお、アントワープ(オ

ランダ)経由の、英国への輸入は、より簡便で早い、と考えられている。日本から英国

への船積は、約 26 日である。

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(3) 輸入手続きと法制度

水産物の移送はEU内では概ね制限はないが、EU外からの水産物輸入は厳しく規制

されている。欧州と英国の基準に合致するもののみの輸入が許可され、公衆の健康にリ

スクがないように管理されている。全輸入品には、衛生証明(Health Certificate)と

トレーサビリティが、さらに特定の物品には一層の保証が要求される。

輸入者は、4~5の政府機関と交渉し、数種類の書類を提出しなければならない。国

境では、港湾衛生担当官が、積送品に対し多くのチェックを実施するが、そのチェック

の種類は積送品の種類、輸出国等により異なる。 終的な内容はEC委員会の 新勧告

を確認する必要がある。

本リポートの英国編末尾関連情報で以下の詳細を示す。

・ 法制―国際、欧州、英国の各法制による輸入にかかる法制

・ 英国での検査概要

・ 獣医学的チェック概要

・ 国境査察部署手続

・ 拒絶された託送について

・ 情報開示のオフィシャルウェブサイト

英国に輸入される食用水産物すべてに、担当官署が発行した衛生証明書を要し、衛生

証明書は船積荷物に付随していなければならない。

魚を含む動物性食品は、EUが認めた施設で生産されなければならず、施設の番号は

衛生証明書に記載されなければならない。

飲食物の生産・販売のあらゆる面をカバーしたEUと英国の法制があり、その多くは、

「善管注意義務(デユーデリジェンス)」に基づき、加工業者・生産者にコンプライア

ンス上の責任を課している。地方自治体が運用する英国の貿易基準は、この法制を求め

ている。

英国は、EUの共通貿易システムの一部であり、CCT(共通関税)は、日本を含め、

非EU諸国からの物品にも適用される。関税の多くはGATT評価コード(CIF評価

にほぼ等しい)に基づく従価税である。生鮮水産物にはVAT(付加価値税)は課税さ

れない。

EU法制は、水産物輸入がEUの食品・獣医学オフィスにより検査されることを求め、

水産物輸出国を 2 種に分類する。

・ 完全一致国―検査対象、健康・安全基準がEUに等しい

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・ リスト記載前の国―基準はEUに等しいが、EUによる検査をまだ実施していない

EUは、情報と産品が追加的国家法制に従っているかどうかを確認するため、現地検

査を実施する権利を保有している。

欧州に水産物を船積みする者は、拘束的関税分類情報(BTI)を入手する必要があ

る。BTIは無料で、関税・間接税にかかるトラブルを防止し、6 年間有効である。

英国では、食用飲食物の加工、輸入、販売は厳しく規制されている。英国の消費者は、

これまでBSE等の食糧危機に見舞われた経験から、自らの権利と自らを保護する法制

に対する意識が高い。

FSA(食品監督庁)は英国の政府機関で、基準・法制・品質・健康・消費者保護に

責任を有する。地方自治体所属の貿易基準担当官は、この法制を運用執行する。

英国の小売業者に課される基準は、自己規制から法的強制まで様々であり、国際的に

認められた基準(HACCP 等)から国内法制(水質、環境にかかるもの等)までいろい

ろある。

到着港手続、関税、取り扱い手数料等は概略以下のとおりである。

積送品が英国に到着すると、輸入業者、またはその代理人は水産物をBIP(国境検

査ポスト)に提出し、OFI(魚類検査官)が獣医学的チェックを行う。

獣医学的チェックは、書類検査、同一性確認、現物確認等で、輸入される水産物積送

品ごとに実施される(獣医学チェック指示書 97・98EC のとおり)。「積送品」は POAO

(第三国からの輸入・英国NO.4)において「同一の獣医学的証明書と書類、又は獣

医学的規則に基づくその他の書類を伴う同タイプの産品で、同一の移送手段により、同

一の第三国又はその一部からのもの」と定義される。

チェックは地方自治体が任命するOFIが実施する。現物チェックはBIPにおいて

行われなければならない。BIPには、必要に応じて積送品を開封し、サンプリング調

査するための衛生設備が設置されている。

全ての積送品は書類検査の対象となり、衛生証明書と付属書類が合致するかが確認さ

れる。積送品に付随する証明書は以下の要件を満たすことが必要となる。

・ 原本であり、固有の登録番号があること(ファックスやコピーは原本とみなされな

い)

・ 形式と内容が、国毎、産品毎に定められた様式に従っていること。

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・ 正当な官庁の署名があり、担当官の氏名・役職があること(活字体又はスタンプ)

・ 書類は1枚であり、必要事項が全て満たされていること

・ 産品受託者は1名であること

・ 終目的地であるEU加盟国のEUの公式言語であること(BIPのOFIが内容

を理解できること)

・ 証明書と付属書類の内容が、CVED書類パート1と同一であること

・ タイプ又は明確な手書きであること

・ 訂正抹消は線引きによること(修正液は不可)、証明書に署名した人物が訂正印・サ

インをすること

OFIは原産国をチェックし、関係リストを認証する(FSAサイトでも利用可)。

全産品は、わずかの例外はあるが、同一性チェックに従い、書類と産品を照合する。O

FIのチェックは以下の 2 点である

・ 封印が無傷であること

・ スタンプと衛生マークがあること

封印に疑念があれば、OFIはコンテナを開き、個々のパッケージをチェックする。

産品付属の送り状、BL,エアウエイビル、パッキングリスト等はOFIがチェックす

る(指示書97・98EC,3(3)条)

現物チェックは産品が適法で付属書類に合致するかを確認するため、BIPにおいて

実施される。チェック頻度等は「付属Ⅰ94・360EC決定」にある。

・ 密閉コンテナの魚類産品の20%(常温、生鮮、冷凍、乾燥,塩蔵等)

・ 上記以外の産品の50%

・ 2枚貝類の50%

EUと同等合意のある国(現在はニュージーランドとカナダ)はより簡便なチェック

となる。産品が傷んでいれば、チェック頻度はあがり、第三国の同一産地の産品が汚染

(認められない物質があるか、 大残留限度がオーバー)されていれば、続いてある1

0の産品に対し、100%をチェックする。EU法制違反が連続又は繰り返しあれば、

DEFRAはEU(DG SANCO)に連絡し、DG SANCOはすべてのEU B

IPに連絡する。チェックは同一産地の、さらに次の 10 産品に対しても実施される。

チェックは付属Ⅲ指示書 97・98EC の基準により、

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・ 五感チェック

・ 切る、調理する等の実地テスト

・ 残留物、病原体、汚染物質等への研究所テスト

・ コールドチェーンでの温度、中断等のチェック

・ 重量チェック

・ 包装物資のチェック

等に亘る。

過去に陽性反応があるか、公衆の健康に直接的危険があるときは、研究所テスト結果

判明まで、産品は返送保管する。現物チェックが終了したら、OFIは再封印し、再ス

タンプする。

産品がBIPに到着する前に、以下の準備が必要となる。

・ 産品はリストⅠ又はⅡの国産で、承認されたところのものか

・ 産品は真正な衛生証明書付か

・ 産地と産品はEU法制の必要指示どおりか

・ 充分なトレーサビリティ情報付か、特に正確な表示があるか、は 低以下のことを

満たすこと

a) 魚類の品目の明示

b) 生産方法

c) 漁獲地域

d) 魚類の学名

e) パッケージに生産場所番号があるか(EU法制853・2004付属Ⅱ、Ⅰ条)

f) 原産国

産品はBIPの承認を受ける、これ無しで英国に入ったものは密輸品として処理され

る(動物産品規則16)。全BIPは港湾健康協会のサイトに掲載。

・ 担当のBIPには産品到着をあらかじめ( 低6時間前)知らせる必要があり、ま

た全BIPにも 低1日前に知らせる(動物産品原産規則17)。

・ CVED(共通獣医学入国証明書)のパート1は完成していること(規則136・

2004)。CVED完成はEUのTRACESオンラインシステムを使うこと。

産品の獣医学的チェックには手数料が必要で、2006 年の水準は、動物原産産品規則

の表3に記載されている。港湾、空港により、産品の呈示、取り扱いごとに必要(HM

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RC手数料)。産品が獣医学的チェックをしていない場合は保管手数料、廃棄又は再輸

出コストを要する。ヒースローやガトビックのような混雑する空港では手数料は高価で、

魚類輸入を日常的に行う港湾では安価である。

次は2007年1月1日から適用、輸入魚類産品の獣医学的チェックの 低手数料は、

規則882・2004(付属Ⅴ、B項、Ⅱ章)にある。第三国から直接水揚げされた生

鮮魚類産品は別の扱いである。

BIP担当官は以下の場合は産品を拒絶する。

・ POAO規則21を満たさない場合

・ 正しくないBIPに呈示された場合(規則24)

・ 規則21(5)の違反がある場合あり

・ 動物又は公衆へのリスクがある場合(規則25)

BIPのチェックで、産品がEUへの入国の必要事項を満たさないときは、産品は再

送又は廃棄される(規則21)。

・ 産品が公衆又は動物の健康にリスクがない場合はEU以外の国に再送する

・ 再送ができない場合、又は輸入者が選択すれば、廃棄される

OFIが、産品が公衆又は動物の健康にリスクがないと判断した場合は、規則22で、

さらに他の選択肢があり、規則26により動物副産物として使用される。

OFIが規則25に基づき、告知する場合、OFIは即時の廃棄を命じる。輸入業者

は再送又は廃棄、保管、移送等のコストを負担する。再送は同じBIPから、告知から

60日以内に実施する。

第三国から輸入された水産物は、HMRC(歳入関税庁)の必要事項を満たす必要が

あり、HMRCの書類を完成し、産品は通関前にHMRCのチェックを受け、関税を払

い、税関担当官はOFIがCVEDを発行していることをチェックする。詳細はHMR

Cサイトに掲載されている。

(4) 主要物流センター

a.ビリングスゲイト魚市場

ビリングスゲイト魚市場は 1327 年以来、ロンドンの主要な水産物基地で、英国 大

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の内地市場であり、フードサービス、独立した小売業者、地元魚市場等が相手である。

水産物が、年間平均 25 千トン販売され(英国の約5%)、売上額は約 200 百万ポン

ドである。その約4割は輸入物である。

ビリングスゲイトの商人は、EU内に登録された、又はEUの承認を得た会社からだ

け仕入れができる。

市場は、

・ 魚屋

・ フィッシュ&チップス

・ デリカ

・ パブ

・ レストランやフードサービス

・ ホテル

・ デパート

等に供給する。

b.グリムズビイ

グリムズビイは輸入水産物の主要な港である。スコットランドのピーターヘッドは英

国の漁船にとってはより重要だが、主要市場から遠く、物流費が高い。グリムズビイ港

のある英国東岸のハンバー地区は、水産物取引と水産業の主要センターを形成しており、

同港は輸入水産物の主要港である。

グリムズビイは1950、60年台における世界 大の漁港であり、多くの雇用があった。

40、50 年台の業務用冷蔵設備の発達が長期の魚保存能力を創り、コールド保管設備の

幕開けとなった。同港地区は、イングランドとウェールズを通じて、水産物加工の単一、

大のセンターで、欧州でも 大のものの1つであり、100 超の会社が、水産物製造に

関わっている。燻製、塩蔵等のニッチ産品も扱う。小麦粉、パン粉、ソース等で下拵え

したものも主要加工産品である。

グリムズビイの魚は国際的産品で世界的供給チェーンを持つ。地元漁獲もの、世界中

から移送されたもの(主にアイスランド、フェロー、ノルウェー)があり、3分の2は

加工業者に直接売られ、グリムズビイを英国のセンターとしている。

1996年オープンのグリムズビイ魚市場は英国水産物産業にとって重要で、セリ市

場、漁船向け氷、値付け、チルド保管、格付け、計量、箱供給、洗浄等々のサービスを

提供する。100 超の加工業者、10 の販売業者でユニークな集合をなし、伝統的処理技

術、完璧なインフラ、充分な物流等が強みである。

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「1946年からハンバーでビジネスしているが、今や地域 大。ハンバーは昔から食

品加工センターで、水産、農業関係も加え、食品加工スキルの強力な集積地になってい

て、我々のニーズを満たしてくれる」

「大漁港のグリムズビイとイミンガムまでのアクセスもいいし、欧州 大のコールド設

備もある。チルド市場は冷凍市場より急速に拡大しているし、ハンバーはその中心とな

りつつある」(ブルークレストのCEO)

グリムズビイは、高品質のサービス、アクセスし易いコールド保管場、物流等、小売

分野におけるジャストインタイムのニーズに適合し、欧州一のコールド保管センターと

なっている。DFDS、サルベンソン、ACS&T,セルシウス等、リーディングカン

パニーが集まっている。

(5) 卸売業者

英国の小売業者が海外から直接仕入れるケースは極めてまれであり、また、レストラ

ン、パブ、ケータリング(仕出)業者等が、海外から直接購入するケースもほとんどな

い。通常、その多くは卸売業者を通じる。

大手の企業の一部は、様々な直接輸入の複雑な処理ができるインハウスバイヤーを有

しているが、彼らの値引き交渉に臨むスタンスは一般の卸売業者と同様である。

ロンドンのビリングスゲイトのような卸売市場は、海外の同様の施設ほど、水産物物

流に力はないが、市場には、レストランや独立した小売業者相手の、多くの小さい、専

門の会社がある。彼等の扱う単位は比較的少量であり、スポット買いをする。

魚類販売は必ずしも卸売市場を通す必要はなく、市場外にも多くの卸売り会社が存在

する。英国全土に店舗を有する巨大な企業から、極めて限定された地域の顧客に特化し

た小規模業者まで、その規模は様々である。

(6) 小売セクター

a.概況

小売セクターを通ずる水産物販売の構成は以下のとおりとなっている。

・ スーパー 84%(大手6社で 77%のシェア)

・ 魚屋 11%(独立系の小売店が一般的)

・ その他 5%

52

ただし、加工済み水産物(主に缶詰と冷凍)の販売チャネルはやや異なり、以下のと

おりとなっている。

・ スーパー 73%

・ コンビニ 8%

・ 独立食品店 5%

・ デイスカウント 3%

・ その他 11%

他の食品と同様に、スーパーは明確に主要チャネルであるといえる。しかし、高付加

価値商品については必ずしも 適な販売チャネルとは言えない場合もあり、独立系小売

業者やアップマーケットストア等の調査も検討の余地はあろう。

小売分野におけるキロ当り平均価格は 2006 年に 6.8%上昇し、数量は 3%下落した。

・ チルド市場は金額で 3%増加、数量は急落

・ 冷凍市場は金額 4%増加、数量は下落

・ 缶詰市場は金額横ばい、数量は下落

図 19 イギリスにおける魚介類部門の小売市場

金額/×103ポンド 2006 年 5 月 2007 年 5 月 変化率

全市場

冷蔵

冷凍

缶詰

缶詰

冷凍

冷蔵 全市場

冷蔵

冷凍

缶詰

量/トン 2006 年 5 月 2007 年 5 月 変化率

金額/×103ポンド

量/トン

出典:Seafish industry authority

数量でチルドと冷凍は各々、市場の 36%、37%を占めるが、チルドは金額で 54%と

支配的、冷凍は 30%、缶詰は 16%である。

53

チルド水産物市場は 2006 年に 4%伸びたが、消費者の購入する回数は減少し、量も

減少している。消費者の 83%はチルドを買い、年に 16.5 回、平均キロ 8.5 ポンド使う。

チルドの主なタイプは、ナチュラルで、50%を占める。チルド消費増加の主因は、

健康的、栄養がある、新鮮等である。マイナス面としては販売棚にある時間が短く、割

高、取り扱いが難しい、等があげられている。

表 21 タイプ別冷蔵魚介類売上高(2006 年)

百万£(変化率) 千トン(変化率) £/kg(変化率)

ト ー タ ル 1,265 +4% 149 - 4% 8.46 +8%

パ ン 粉 付 95 +8% 13 + 0% 7.52 +8%

衣 つ き 6 -2% 1 -11% 7.88 +9%

そ の 他 加 工 283 +12% 38 + 8% 7.53 +4%

未 加 工 653 +0% 76 - 9% 8.64 +10%

燻 製 228 +3% 23 - 4% 9.94 +7%

出典:Seafish industry authority

図 20 冷蔵魚介類に対する消費者意識

魚 類 甲 殻 類

肯定的

否定的

・知的 ・海の味

・新鮮 ・魚の香り

・特別 ・しっかりした味

・自然 ・デリケート

・健康的 ・多様 ・正直

・軽い ・栄養に富む

・デリケート

・ジューシー

・腐りやすい

・高価

・扱いにくい ・判断しにくい

・変化しやすい

・リスキー

・高価

・難しい

・手間がかかる

冷 蔵

魚 類 甲 殻 類

肯定的

否定的

・知的 ・海の味

・新鮮 ・魚の香り

・特別 ・しっかりした味

・自然 ・デリケート

・健康的 ・多様 ・正直

・軽い ・栄養に富む

・デリケート

・ジューシー

・腐りやすい

・高価

・扱いにくい ・判断しにくい

・変化しやすい

・リスキー

・高価

・難しい

・手間がかかる

冷 蔵

出典:Seafish industry authority

冷凍分野においては、パン粉下拵えが37%と も多い。

54

冷凍販売は 2006 年に 4%伸びたが、これは価格上昇と購入頻度増加による。反面、

数量はほとんど横ばいであった。

消費者の87%が冷凍品を購入し、その頻度は年に平均11回、キロ 4.98ポンドを使う。

表 22 タイプ別冷凍魚介類販売額(2006 年)

百万£(変化率) 千トン(変化率) £/kg(変化率)

ト ー タ ル 729 +4% 146 + 0% 4.98 +4%

パ ン 粉 付 258 +1% 55 - 5% 4.72 +6%

衣 つ き 137 +7% 26 + 3% 5.24 +4%

そ の 他 加 工 142 +4% 36 + 1% 3.90 +3%

未 加 工 179 +8% 27 + 9% 6.53 +0%

燻 製 14 -4% 2 -10% 7.07 +6%

出典:Seafish industry authority

冷凍水産物は利便性、安価である等の要素で評価されるが、反面、精彩なく、舌触りが

悪く、質が劣る、と見られている。

図 21 冷凍魚介類に対する消費者意識

魚 類 甲 殻 類

肯定的

否定的

・現代的 ・入手しやすい

・安価 ・長持ち

・便利 ・バラエティに富む

(調理済み/衣つき)

・新鮮 ・無臭

・安全

・信頼できる

・便利

・味が薄い ・安っぽい・偽者

・色が悪い ・見た目が悪い

・無臭 ・弱弱しい

・低品質(新鮮でない)

・水っぽい

・硬くて噛みにくい

・味が薄い

・すぐに解ける

冷 凍

魚 類 甲 殻 類

肯定的

否定的

・現代的 ・入手しやすい

・安価 ・長持ち

・便利 ・バラエティに富む

(調理済み/衣つき)

・新鮮 ・無臭

・安全

・信頼できる

・便利

・味が薄い ・安っぽい・偽者

・色が悪い ・見た目が悪い

・無臭 ・弱弱しい

・低品質(新鮮でない)

・水っぽい

・硬くて噛みにくい

・味が薄い

・すぐに解ける

冷 凍

出典:Seafish Industry Authority

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図 22 魚介類小売市場のシェア( 2006 年 8 月~2007 年7月)

食品合計

水産物

食品合計

水産物

出典:Seafish Industry Authority

水産物販売のシェアは、大手小売チェーン7社で 77%を占め、テスコ 27%、セイン

ズベリ 18%、アスダ 12%等である。特に、テスコとセインズベリは市場の支配的小売

業者であり、2 社で 45%のシェアを占める。

しかしチルド分野においては2つの小規模チェーンが重要であり、

・ ウエイトローズは冷凍では 2.8%にとどまるが、チルドでは 6.7%を占める

・ マークス&スペンサーは冷凍では 1.9%にとどまるが、チルドでは 7.2%を占める

スーパー店頭の品目数は店舗によりかなり異なり、マークス&スペンサーとセインズ

ベリの12-15から、ウェイトローズの26まで様々である。マークス&スペンサー

は もよく売れるものに焦点を置き(5品目で8割になる)、他のチェーンはニッチも

のも扱う傾向がある。 もポピュラーな5品目は、サケ、マグロ、タラ、小型タラ、エ

ビである。

56

表 23 主要な小売店に在庫のある魚介類種の数

販売されている種数 人気上位 5 種 (%)

Marks & Spencer 12 80%

Waitrose 26 60%

Sainsbury 15 80%

Tesco 20 62%

Morrison 22 Na

Asda 17 40%

出典:Marine Conservation Society, Store checks

b.環境対策 近年、水産物販売に関して小売分野では水産物のサスティナビリティ(維持可能性)

と環境対策が重要課題となっている。MCS(海洋保存協会)は、種の保存の観点から、

販売を「回避すべき魚種」のリストを公表しているが、主要小売グループ中、このリス

トの魚種を店頭に置いているのは、テスコのみである。MCSはまた、「維持可能魚種」

のリストを公開しているが、流通業者の間では、近年このリストへの注目がますます高

まっている。

また、MCSは小売業者の環境配慮に対する姿勢を評価し、以下のような格付けを好

評している。

表 24 MCSによる小売業者の環境配慮格付け

M&S Waitrose Sainsbury Tesco Morrisio

n

Asda

持続可能な種の売上高(%) 33% 65% na 10% 65% 8%

獲るべきでない魚種の売上

高(%)

0% 0% na 6% 0% 1%

環境指針(5 点満点) 5 4 4 3.5 2 2

天然魚指針(10 点満点) 10 9.5 9.5 6.5 7 6.5

養殖魚 指針( 10 点満点) 9 9 8 6.5 2.5 6

認定天然魚販売 (6 点満点) 6 4 2 4 2 4

出典: Marine Conservation Society

57

MCSによれば、主要な小売業者は持続性にかかる責任を自覚し、方針を実施してい

る。一方、Asda、Morrision 等、安売りを戦略とする業者においてはそうした意識は比

較的希薄なものとなっている。

(7) フードサービスセクター

フードサービス業界においても統合が進展しつつあるが、小規模の会社もニッチ分野

を保持し、大小様々な企業が存在している。

表 25 主要な外食産業

会社名 会社のタイプ 店舗数

Mitchells & Butler パブレストラン 799

Spirit Group パブレストラン 510

Gondola カジュアルダイニング 505

Restaurant Group カジュアルダイニング 279

Tragus レストラン 162

Whitbreas カジュアルレストラン&ホテル 157

出典:British Hospitality Association

小売業界同様、フードサービス業界においても直接仕入れを行うケースはまれであり、

相当数の専門化した卸売業者が多い。ロンドンの高級レストラン向けのプレミアム魚を

扱うもの、バルクサービス向けに特化したもの等、専門化が進んでいる。

ある調査によると、フードサービス業界の水産物仕入れについて、

・ 79%は卸売業者経由(うち 13%は現金決済)

・ 加工業者からの仕入れ4%

となっている。フードサービスは英国における食費の 20%を占める(80%は家庭内消

費)。水産物はフードサービスにおける 大のタンパク源商品であり、テイクアウトの

フィッシュ&チップスは大きなインパクトを持つ。インタビューした業者の14%は今

後魚メニューを増やしたい、と答えている。

58

図 23 家庭内外で消費される食事のタンパク質の割合

家庭外での割合

家庭内での割合

豚肉

羊肉

牛肉

鶏肉

家庭外での割合

家庭内での割合

豚肉

羊肉

牛肉

鶏肉

豚肉

羊肉

牛肉

鶏肉

出典:Seafish Industry Association

件数ベースでは、魚を中心とする食事は全体の 8%で、鶏肉の 7.5%、ビーフ 5.4%等

を上回っている。この数値はレストランでは 9%と若干高い。

外食産業においては、35-64 歳の層が重要で、2006 年における外食利用者の 62%を

それらの層が占めている。この層の中でも、水産物消費は 35-44 歳の層において増加し

ており、45-64 歳の層では減少している。18-34 歳(市場の 21%)において、水産物消

費が も伸びているのは、今後の消費拡大を支える要素となろう。

表 26 フードサービス産業の内訳(2005 年)

提供食事数(百万件) 総食品仕入れ額(百万£)

ホテル 644 1,324

レストラン 734 1,537

クイックサービスレストラン 2,006 2,130

パブ 1,104 1,243

レジャー 533 595

出典:Pro-Intal Consulting, British Hospitality Association

こフードサービス市場は、レストラン、カフェ、パブ、ホテル、クイックサービス、

テイクアウト等の収益目的チャネル、病院、ケアホーム、学校、大学、刑務所、ケータ

59

リング等の社会的チャネルに二分される。

収益目的チャネルは、家庭外食事の 58%を占め、フードサービス売上の 74%を占め、

日本産水産物の参入機会がある分野である。一方の社会的チャネルは、極めてコスト、

価格志向で、低価格調達志向の強い大規模契約ケータリング会社が多い。この分野は、

テイクアウトの 42%を占め、フードサービス売上の 26%を占めるが、高品質をセール

スポイントとする日本産水産物には参入機会が乏しい。

の分野では年間約 120 千トン、23 億ポンド(2006 年)の水産物を消費する。数量で

は、

・ 75%が魚類(うちサーモン、ます等の淡水魚が 13%)

・ 25%が甲殻類・貝類

となっている。

フィッシュ&チップスは、収益目的チャネルでは 大の分野で、市場の 33%を占め

るが、しかし同分野における低価格マーケットである。一方レストランは数量では 25%

だが、消費者価格での市場価値の約 43%を占める。

図 24 タイプ別収益目的チャネルの水産物販売

フィッシュ&チップス

ホテル

カフェ

クラブ/レジャー

パブ

レストラン

フィッシュ&チップス

ホテル

カフェ

クラブ/レジャー

パブ

レストラン

出典:Seafish Industry Association

60

2006 年にレストランで消費された魚料理数は65百万でその内訳は、以下のとおり

である。

・ シーフード専門レストラン 13.8 百万

・ 英国風レストラン 12.8

・ 中国料理レストラン 11.4

・ イタリアンレストラン 7.8

・ インド料理レストラン 3.2

・ フレンチレストラン 2.3

・ その他 13.7

使用される魚の種類別には以下の 3 品目でかなりの部分を占めるが、レストランの形

態により、使用される魚種は相当異なる。

タラ 30%(フィッシュ&チップスとパブが圧倒的)

Haddok(小型タラ) 18%

サケ 10%(レストラン、ホテルでは主流)

図 25 品目別収益目的チャネルの水産物販売

クルマエビ

シーバス

ツノガレイ

温水エビ

タラ

コダラ

サーモン冷水エビ

二枚貝

その他

ホタテ

マグロ

クルマエビ

シーバス

ツノガレイ

温水エビ

タラ

コダラ

サーモン冷水エビ

二枚貝

その他

ホタテ

マグロ

タラ

コダラ

サーモン冷水エビ

二枚貝

その他

ホタテ

マグロ

出典: Seafish Industry Association

61

本プロジェクトで重点を置いた品目のなかでは、

・ サケ 10%

・ ホタテ 3%

となっているが、タイ、サバ、ブリ、イクラ、については、現状0に等しい。

レストランのような、より品質訴求型の店舗での品目別販売は、重点調査品目のウェ

イトがより高まる傾向にあり(サケ 15%、ホタテ 7%)、あまり一般的でない「その他

品目」が 23%(利益チャネル全体では 13%)とかなり高くなっている点に注目すべき

である。

図 26 フードサービス運営者が求める供給サイドの改善

新しいメニューの提案

より良いラベリング

低価格

さらなる革新

より良く迅速なサービス

高品質の製品

各改善法を望んでいる経営者の割合(%)

出典:Seafish Industry Association

フードサービス運営者において購入時の重要な基準とされているのは、

・ より高い品質

・ よりよいサービス

・ よりよいイノベーション

・ 低価格

などとなっており、価格要素に比べて、品質、イノベーションなどの比率が高くなって

いる点が注目される。

近年、パブは主要フードサービスの成長チャネルの1つであり、下拵え食品の大口使

用がある。パブ運営者の約25%は、下拵え食品の使用を増やすと言っている(魚関係

62

だけではないが)。レストランにおいてはそうした傾向はみられない。

フィッシュ&チップスは英国のフードサービス分野で相当の地位を占め、特にタラに

ついては主要な市場である。英国には 6,600 超のフィッシュ&チップスがあり、年間約

5億ポンドの水産物を販売し、その中心はタラ、と Haddock(小型タラ)である。タラは

英国南部でよりポピュラーであり、小型タラは英国北部でよりポピュラーである。同セ

クターはフードサービスにおけるタラ販売の 42%、小型タラの 18%を占める。

近年、大西洋タラの資源減少が問題となっており、供給の減少が続いていることから、

太平洋タラの安定供給が可能であれば、この分野には大きな機会がある。

(8) 食品加工セクター

大手小売店におけるプライベートブランドは、加工水産物市場の相当部分をしめている。

・ 缶詰水産物市場の39%

・ 冷凍水産物の47%

・ チルド水産物の69%

今日、他の食品市場と同様、独自ブランドの商品は、大手の極めて著名なメーカーの

ものが大半を占めており、英国の水産物セクターでは、4つの著名なメーカーが市場の

大半を支配している。

<缶詰水産物>

缶詰水産物市場は、327 百万ポンドの市場であり、極めて成熟し、産業構造は供給寡

占体制となっている。プライベートブランドと2つの主流ブランドが販売の92%を占

め、第3のブランド(グレンリッチ)は市場シェアの2%を占めるにすぎない。

2つのキープレイヤーは、

・ ハインツ(ジョンウエストを合併し、市場の28%を持つ)

・ ミツビシ(子会社のプリンスを通じて25%のシェアを持つ)

<冷凍食品>

冷凍食品は 729 百万ポンドの市場で、缶詰同様に成熟したマーケットである。プライ

ベートブランドと2つの中心的ブランドで市場の93%を占める。

2つの主要ブランドの水産物プレイヤーは、

・ バーズアイ(冷凍水産物市場の13%)

63

タラの切り身フィッシュフィンガー 6.8%

フィッシュフィンガー 3.3%

小型タラ 1.1%

タラステーキ 1.0%

フィッシュフィンガー 1.0%

2006 年に、バーズアイの冷凍食品ビジネスは、ユニリーバによりベンチャーキャピ

タルグループのペルミアに 11.5 億ポンドで売却された。

・ ヤングス(冷凍食品市場の11%)

スコテイッシュアイランドスカンピ3.3%

チップショップのタラ切り身 3.1%

むきエビ 1.7%

アドミラルパイ 1.5%

チップスショップの小型タラフィレー1.2%

(9) 販売方法

英国の水産物市場に成功裡に参入するには、海外の供給業者は英国に拠点を有する業

者を選定する必要がある。カテゴリーマネジメントが一般的で、バイヤーは供給業者を

制限して販売コストを削減する。通常、スーパーは生産者から直接仕入れることはせず、

各カテゴリー別に、数社の、専門の供給業者を持っている。これらの卸売業者や流通業

者は、小売業者に、切れ目無く商品を配送するために、特定の産品を世界中から輸入す

る。小売業者によっては、新たな商品、海外供給業者の詳細な検査を行うが、その責任

を供給業者にまかせるケースもある。

したがって、ターゲットとする顧客グループ(スーパー、レストラン、加工業者等)

にアクセスが可能な英国を拠点とする流通業者を選定する必要がある。以下のような条

件を満たす適切なパートナーを見つけることが極めて重要である。

・ スーパーや仕出し業者から優先的に使われる供給業者であること

・ 特別なタイプの産品の取り扱いに熟練していること

・ 海外の供給業者とのコワークに熟練していること

・ 必要に応じて、産品のグレード付け、パック、貯蔵する設備とスキルを有している

こと

以上は重要な基準であり、決定前にいくつかの異なる会社を選定し、検討することが

64

重要である。輸出業者は、取り扱い産品の範囲が広ければ、よりよく働く傾向がある。

英国では、候補の輸入業者にアプローチする前に、リサーチし、主要な小売業者を訪ね

ることが重要で、その結果、オファーされる産品、小売価格、小売業者が求めるもの等

についての、より良いアイデイアが与えられる。

優良な会社のいくつかは、単一の分野のみで仕事をしているので、比較的小規模で(ロ

ンドンのトップエンドレストランのように)、水産物分野では、広範囲な輸入業者とセ

ールスエージェントが居るので、市場のダイナミックスを会得し、パートナー選びの一

助とするために、いくつかの組織と会うことが有益であろう。

英国人は、伝統的に魚の大量消費者ではないので、消費者にアピールするには小さい

サイズやフィレを提供する必要がある。小売バイヤーに対しては、従来経験のない産品

を取り扱い、下拵えするための教育が必要である。卸売業者を通してレストランに供給

するのは、より容易なルートである。

英国のバイヤーに産品を提供する前には、ターゲットの消費者を注意深く考慮し、充

分準備することが必要である。英国の消費者が日本の消費者と同様の特性と習慣を持つ

とは、考えないことである。

供給業者は、輸入業者や小売業者からその能力を信頼される必要がある。以下の点を

明確にすることが必要となる。

・ 供給シーズン

・ 輸出できる数量

・ 輸出コスト-移送費と関税等

・ 船積み時期

・ 産品のラテン語名(学名)と市場での名前(英国では共通の名前が異なることが多

い)

・ 流通業者や顧客が期待するマージン

(10) 販売促進方法

英国では水産物の販促は限定的である。よくあるのは、販売価格や販売商品のポイン

トに焦点を当てるやり方で、マスメディアをつかったり、商品の試食をしたりといった

ケースはごく限られる。

本プロジェクトのインタビュー結果によれば、高品質の日本産水産物がターゲットと

する購買層は、

・ 食事に対して強いこだわりを持つ比較的裕福な層(少数ではあるが拡大しつつある)

・ 比較的若く健康志向の強い層

65

であり、これらの層に対し日本産品の魅力をアピールし、知名度を上げるためには一定

の支援が必要で、以下のような手段が有効であろう。

<PRキヤンペーン>

単に、単独の商品をアピールするのではなく、食文化トータルとしての日本食をアピ

ールし、その中に商品を位置づけるやり方が有効であろう。日本の食文化については、

すでに一定の高い評価ができつつあり、それをさらに促進する手法が望ましい。日本の

もつ、伝統とモダンさの融合、エキゾシズムといった点を強調することは、上記のグル

ープには有効であろう。

<有名シェフの活用>

英国においては、影響力のある著名なシェフ達の推奨は極めて強い影響力を有し、食

品販売上大きなインパクトを与える。何人かシェフは、視聴率の高い、自分のTVプロ

グラムを持つ。インパクトの例として、2008.1.18 ロンドンイブニングスタンダード紙

に、以下の記事が掲載された。

「スーパーのウェイトローズでは冷凍ホタテ販売が2週間で 600%以上急増した。これ

はシェフのラムゼイ(41 歳)のレシピ(ホタテとトマトとハーブソースをあしらったフラ

イ料理)が放送されたためであった。」

近年、日本食などの優れた点をいかし、あらたなメニューを開発したいという希望を

もつシェフも増加しており、そうした日英シェフの交流により、新たな日本食ブームが

促進される可能性もあろう。

<メニュー提案>

インタビューした何人かのレストラン向け水産物卸業者は、レストラン向けのメニュ

ー提案の重要性を指摘していた。新たな産品の販売に際しては、その調理法を合わせて

提案することが有効とのことである。例えば、西京漬け、味噌漬け、などは、日本レス

トランにおいては現地で人気のメニューとなっており、そうした一定の下処理を施した

商品の提案も可能性はあろう。

特に、いくらのような、使用される量が極めて限定されている商品については、新た

な利用法の提案と合わせて行うことが必要であろう(欧州におけるいくらの利用は、現

状、カナッペのトッピング(英国)、カルパッチオの飾り(イタリア)といった、ごく

限定されたもの)。

66

<フードサービスを通じての普及>

一般に、英国の家庭での料理は極めて保守的であり、前記のとおり、かなり食の経験

のあるものでなければ、家庭で調理を試みるケースは少ない。したがって、家庭内消費

の市場に新たな産品で参入するためには、まず、その産品がフードサービス市場におい

てかなり普及し、実際に体験した層が拡大するということが必要となる(例えば巻き寿

司などは、フードサービスでかなり普及した結果、その後に「巻き寿司セット」のよう

な家庭向け商品がスーパーの店頭などでも売られるようになっている)。

(11) ビジネス慣行

英国は、日本ほど電子的メデイアや通信システムが普及しておらず、情報として、ウ

ェブサイトより、パンフレットや産品サンプルの方が好まれる。インターネットは広が

っているが、バイヤーの手にパンフやサンプルがある方が、よりインパクトになる。パ

ンフは高価である必要はないが、以下のような点が必要であろう。

・ 自己の会社を正確に描くこと

・ 技術的情報を含むこと

・ 全産品の詳細を記すこと

・ 顧客と消費者に対する産品のメリットを記すこと

価格情報は、個別に、できれば英国ポンド表示(少なくともユーロ表記)で、 近時点

の交換レートを添えて提供することが必要である。英国の会社は自社と供給業者とのリ

レーション構築を期待する。英国を長い目でみた戦略市場として扱うことが重要である。

水産物分野は、他の食品分野のように、インターネットの普及は進んでいない。ホー

ムデリバリー向けのオンラインショッピングは、スーパーから始まって、徐々に一般化

しつつあるが、スーパー自身は自己の在庫仕入れにインターネットはまだ使っていない。

英国に対し、インターネットで商品の販売オファーをしようとする際には、英国及び欧

州法に合致する必要がある。

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