概要 - 伝統的構法データベース · xm ym K hF h h M C C E Cx nx F N m C C n θ ⊥ = = +...
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概要 伝統的構法や在来軸組工法などの軸組工法には数多くの仕口が存在するが、そのうちの包み
込み貫接合部についての回転剛性と耐力について、実験結果、理論式、耐力、解析モデル及び
注意点などについての内容を記載している。
○力の伝達方法
中立軸
貫のめり込み破壊
L1
My
xp
図 力の伝達方法
○設計における考え方と適用範囲 包み込み貫接合部は、引張抵抗は小さく、回転の抵抗が主であるため、接合部設計上は引張
りとせん断は考慮せず、回転を拘束した接合条件として考える。ただ、引張力の大きな部分に
包み込み貫接合部や同じ抵抗機構の仕口を設ける場合は、貫が抜け出す可能性が高くなるため、
接合部配置における構造計画上の注意が必要である。
貫の面圧で接合部の初期剛性が決まり、その後、曲げモーメントが大きくなるに従い、貫の
めり込み破壊が生じる。大変形時は貫のめり込み破壊が進行し、柱や楔の割裂が生じると耐力
が低下する場合がある。また、部材の乾燥収縮による隙間の発生を抑制することが困難である
ことを考慮すると、設計上は初期剛性に十分な安全率を持たせることが必要になる。実験では
加力直前に楔を打ち込んだため、初期剛性に関して理論値と実験値は概ね一致しているが、設
計上は注意が必要である。
以降に記載する理論式または上記記述では、貫のめり込み破壊を取り上げているが、理論値
は実験値と比較して小さく、かなり安全側の評価となっている。これは貫の木口と柱が接触す
る面のめり込み抵抗や摩擦抵抗が考慮されていないためと考えられる。しかし、実際の接合部
は貫の木口と柱の間に隙間が生じている場合が多く、現状の理論式を用いて安全側の評価を行
うのが妥当と考えられる。
文献1)(一社)日本建築学会:木質構造接合部設計マニュアル、2009
共通
使用データNo.No.152 ~ 158 1 軸組 - 接合部 2 仕口 18 包み込み貫第 2版 曲げ(回転)
No.152 ~ 158 1 軸組 - 接合部 2 仕口 18 包み込み貫第 2版 曲げ(回転)
●姿図・寸法
W
h
L
LL1
15 15
No W h L L1
J5-1 15 120 120 75J5-2 30 120 120 75J5-3 45 120 120 75J5-4 60 120 120 75J5-5 30 105 120 75J5-6 30 120 120 90J5-7 30 120 120 × 150 135
図 接合部試験体
(引用:伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会 , 実験データライブラリー)
【使用材料】
木材: スギ無等級材、 仕口仕様:柱 - 貫 包み込み貫接合部
試験方法:正負水平繰り返し加力
●適用条件 スギ無等級材の天然乾燥材料を使用。よって、含水率の低い人工乾燥材や強度区分の異なる JAS 材やエンジニ
アリングウッドなどによる仕口の設計等に引用するときは、含水率や強度区分の違いによる補正を意識する必要
がある。また、実験では加力直前に楔を打ち込んだと思われるが、実際の設計等に引用するときは、部材の乾燥
収縮による初期剛性の低下を意識する必要がある。
データNo.152
~158
1軸組-接合部
2仕口
18包み込み貫
第2版
曲げ(回転)
●概要 スギ無等級材による包み込み貫接合部の正負水平繰り返し加力により、荷重 - 変位曲線を収録している。
●理論式 前述の適用範囲の形状の一般的な包み込み貫接合部における理論式は存在しないため、掘立柱式柱脚接合部の
理論式を援用する。二次剛性は初期剛性の 1/8 程度とする。また、実験で大変形領域に至るまで荷重低下は見ら
れなかったため、終局変形角は 1/15rad に 1.5 倍の安全率を見込んだ 1/10rad とする。
【初期剛性】1)
( ) ( )2
3 23 2 11 1
1
1
2
3323 2 4 6
[ ]
[ ][ ]
[ ](=0.4)
(= 50=140)[ / ]
p p p p p
p
WE LK x x L x L x h xh h L
x mm
h mmL mmW mm
E E N mm
θ µ
µ
⊥
⊥
= + + − + − = +
:中
:貫せい
:埋込み深さ
:貫幅
:摩擦係数
:材料の繊維直交方向ヤング係数
立軸の深さ
【降伏モーメント】1)
2
4 41 13 3
(=0.8 =2.4)[ / ]XY
(=5)
my xm ym
p pp xm ym
m cv
xm
ym
K hF h hM C Cx nxx E C C
F F N mmCC
n
θ
⊥
= = + = +
:縁端距離を無限大としたときのめり込み降伏応力度
:端距離が無限大のときの 方向のめり込み増大係数
:端距離が無限大のときの 方向のめり込み増大係数
:繊維方向に対する繊維直交方向の置換係数
文献1)(一社)日本建築学会:木質構造接合部設計マニュアル、2009.
【許容耐力】
貫のめり込み破壊の可能性が高いことより、設計上は靭性能に期待できることとし、下式で概ね把握できる。
加えて、施工性やばらつき、部材の乾燥収縮による隙間の発生等も考慮して、初期剛性の評価は注意が必要である。
32
21
8.07.0
0.21.1
0
0,
:安全係数
:基準化係数
、 断続的な湿潤 常時湿潤:含水率影響係数
、 短期数 長期:荷重継続期間影響係
fj
j
mj
dj
ufjjmjdjSL
K
K
K
K
PKKKKP ⋅⋅⋅⋅=
No.152
~158
1軸組-接合部
2仕口
18包み込み貫
第2版
曲げ(回転)
●モデル化要素モデルの例:
z
x
b
h
中立軸L1
My
xp
z
y
b
h
中立軸L1
My
xp
X
Y Z
z
x y
等価モデル:
伝統的構法や在来軸組などの仕口は一般的にピン接合としてモデル化する。
x z
接合部のモーメントが全体の耐力や剛性に大きく影響する場合は回転バネでモデル化する。軸バネは考慮せず、
Y 軸回りの回転以外は自由とする。
x z
No.152
~158
1軸組-接合部
2仕口
18包み込み貫
第2版
曲げ(回転)
●特性値
J5-1 W=15mm、h=120mm、L=120mm、L1=75mmK My Mmax Mu θ v
(kNm/rad) (kNm) (kNm) (kNm) (rad)実験値 0.027 0.077 0.084
(平均値) (16.65) (0.10) (0.16) (0.14) (0.012)
J5-2 W=30mm、h=120mm、L=120mm、L1=75mmK My Mmax Mu θ v
(kNm/rad) (kNm) (kNm) (kNm) (rad)実験値 0.18 0.30 0.29
(平均値) (8.50) (0.21) (0.38) (0.33) (0.041)
J5-3 W=45mm、h=120mm、L=120mm、L1=75mmK My Mmax Mu θ v
(kNm/rad) (kNm) (kNm) (kNm) (rad)実験値 0.12 0.27 0.31
(平均値) (10.81) (0.32) (0.56) (0.46) (0.047)
J5-4 W=60mm、h=120mm、L=120mm、L1=75mmK My Mmax Mu θ v
(kNm/rad) (kNm) (kNm) (kNm) (rad)実験値 0.25 0.52 0.48
(平均値) (13.52) (0.43) (0.67) (0.57) (0.083)
J5-5 W=30mm、h=105mm、L=120mm、L1=75mmK My Mmax Mu θ v
(kNm/rad) (kNm) (kNm) (kNm) (rad)実験値 0.051 0.077 0.053
(平均値) (6.35) (0.21) (0.34) (0.30) (0.048)
J5-6 W=30mm、h=120mm、L=120mm、L1=90mmK My Mmax Mu θ v
(kNm/rad) (kNm) (kNm) (kNm) (rad)実験値 0.045 0.043
(平均値) (8.12) (0.30) (0.51) (0.44) (0.062)
J5-7 W=30mm、h=120mm、L=120 × 150mm、L1=135mmK My Mmax Mu θ v
(kNm/rad) (kNm) (kNm) (kNm) (rad)実験値 0.55 0.76 0.67
(平均値) (14.35) (0.62) (1.02) (0.86) (0.060)
注:K剛性、My 降伏モーメント、Mmax 最大モーメント *(n=3、5% 下限値)
No.152
~158
1軸組-接合部
2仕口
18包み込み貫
第2版
曲げ(回転)
●荷重変形 J5-1
0
0.1
0.2
0 0.1 0.2
実験値 理論値 平均値 5%下限値
モーメント
M [k
Nm
]
貫の回転角θ [rad]
J5-2
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0 0.1 0.2
実験値 理論値 平均値 5%下限値
モーメント
M [k
Nm
]
貫の回転角θ [rad]
W=15mm、h=120mm、L=120mm、
L1=75mm
W=30mm、h=120mm、L=120mm、
L1=75mm
J5-3
0
0.2
0.4
0.6
0.8
0 0.1 0.2
実験値 理論値 平均値 5%下限値
モーメント
M [k
Nm
]
貫の回転角θ [rad]
J5-4
0
0.2
0.4
0.6
0.8
0 0.1 0.2
実験値 理論値 平均値 5%下限値
モーメント
M [k
Nm
]
貫の回転角θ [rad]
W=45mm、h=120mm、L=120mm、
L1=75mm
W=60mm、h=120mm、L=120mm、
L1=75mm J5-5
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0 0.1 0.2
実験値 理論値 平均値 5%下限値
モーメント
M [k
Nm
]
貫の回転角θ [rad]
J5-6
0
0.2
0.4
0.6
0.8
0 0.1 0.2
実験値 理論値 平均値 5%下限値
モーメント
M [k
Nm
]
貫の回転角θ [rad]
W=30mm、h=105mm、L=120mm、
L1=75mm
W=30mm、h=120mm、L=120mm、
L1=90mm
J5-7
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
0 0.1 0.2
実験値 理論値 平均値 5%下限値
モーメント
M [k
Nm
]
貫の回転角θ [rad]
W=30mm、h=120mm、L=120 × 150mm、
L1=135mm
No.152
~158
1軸組-接合部
2仕口
18包み込み貫
第2版
曲げ(回転)
●破壊性状
J5-1-1 J5-1-2 J5-1-3
J5-2-1 J5-2-2 J5-2-3
J5-3-1 J5-3-2 J5-3-3
J5-4-1 J5-4-2 J5-4-3
J5-5-1 J5-5-2 J5-5-3
No.152
~158
1軸組-接合部
2仕口
18包み込み貫
第2版
曲げ(回転)
J5-6-1 J5-6-2 J5-6-3
J5-7-1 J5-7-2 J5-7-3
写真 損傷写真
(引用:伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会 , 実験データライブラリー)
No.152
~158
1軸組-接合部
2仕口
18包み込み貫
第2版
曲げ(回転)
解説○構造システムと施工の注意点
包み込み貫接合部は主に伝統構法における軸組の仕口に用いられる。柱に対して貫がめり込
むことでモーメント抵抗を発揮する。実験の範囲では、0.1rad に至る大変形領域まで荷重低下
は見られず、貫のめり込み変形が進行した。ただし、貫の回転角が大きくなるにつれて貫の浮
き上がりが顕著になることが確認されており、貫に引張力が作用する場合は引き抜ける可能性
がある。包み込み貫接合部には引張耐力は期待できないため、設計上は注意が必要である。
この他の注意点として、含水率、ヤング係数、材料欠点が耐力や剛性に及ぼす影響が考えら
れる。含水率やヤング係数については、「データ」の許容耐力で示した方法により補正すること
ができるため、材料指定、検査などで一般的には対応できる。しかし、材料の欠点については、
あまり簡単ではなく、また、加工材料選別の時点で接合部位置に欠点が入らないようにするこ
とは、生産性などの要因によりなかなか難しい。よって、このような欠点については計算の上
では安全率を大きく確保することで対処しておき、加工や施工業者との意思の共有や検査体制
を整えることが重要になる。または、金物補強を追加するなどの方法により安全の担保または
危険の分散をとることも可能である。特に、耐力剛性上重要な接合部のときは、これらには注
意する必要がある。
○解析モデル 一般的な伝統的構法建築物や在来軸組工法においては、包み込み貫接合部はピン接合でモデ
ル化してよい。ただ、変形が周囲の接合部に影響を与え、全体の構造性能上問題になるとき、
または周囲の構造性能上問題になるときは、包み込み貫接合部におけるモーメント抵抗を半剛
接バネでモデル化する。
共通
使用データNo.No.152 ~ 158 1 軸組 - 接合部 2 仕口 18 包み込み貫第 2版 曲げ(回転)