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ICT利活用促進 105 IT 教育班 共同研究テーマ 市町村における今後のICT利活用促進に向けて -市町村のネットワーク・ICT機器整備調査を通して- 主任研究主事 屋 良 直 子 研究主事 山 里 研究主事 嘉 数 裕 明 研究主事 新 垣 勇 人 テーマ設定の理由 文部科学省では高度情報化社会に向け、学校教育分野・社会教育分野における情報化の推進のため、様 々な取組を実施している。学校現場においても同様で、文部科学省の「教育の情報化ビジョン」(2011)で は、教育の情報化が目指すもの(3つの側面を通じた教育の質の向上)として、情報活用能力の育成、教 科指導における情報通信技術の活用、校務の情報化について示した。これを受け、文部科学省は「学びの イノベーション事業」(2011)を実施し、一人一台のタブレット型端末、すべての教室に電子黒板や無線LAN などが配備された環境において、ICTを活用した教育の効果検証をはかった。また総務省は「地域雇用 創造ICT絆プロジェクト」(2011) を実施し、ICT支援員配置のほか、3学年以上の全児童生徒・担任 にタブレットPC、3学年以上の全普通教室に電子黒板、無線 LAN 環境などの環境構築の推進を支援した。 直近では、「2020 年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」(2016)の中間取りまとめで、ICT機器等 の整備や教員のICT指導力の点で課題を明らかにし、今後の方向性をまとめている。 本県の県立学校は、すでに Office365 による全教職員のメールアカウント配布、専門高校のネットワー ク・機器整備事業などが実施され、利活用がなされている。また今年度より、県立高等学校向けの「進路 相談支援システム」がリニューアルされ、生徒一人一人の個人情報の収集・分析が的確に行われ、よりよ い進路ガイダンスが進められている。これらは、沖縄県が「沖縄県教育情報化基本計画(平成 24 年~平成 33 年)」とそのアクションプランである「沖縄県教育情報化推進計画(平成 24 年~平成 28 年)」で、学 校教育分野の整備を計画的に進められてきた成果である。しかし、市町村においては、国や県の方針があ るものの、各市町村の教育情報化推進計画の整備や専任担当配置、予算などの影響で計画的な整備に足並 みがそろっていない現状がある。 ところで、文部科学省は「第2期教育振興基本計画」に基づき、「教育の IT 化に向けた環境整備4か年 計画」(以下、環境整備4か年計画)として、平成 26~29 年間に総額 6,712 億円(単年 1,678 億円)を地方 財政措置している。この財政措置を活用するためには、各教育委員会が、所管学校のICT環境の整備方 針や計画等について検討し、財政担当課などに要望する必要がある。そのためには、教育委員会が積極的 に学校現場から要望や情報提供を求め、その経費を予算要求していかなければならない。 そこで本研究では、市町村のネットワーク・ICT機器整備調査を通して、各市町村の整備状況を明ら かにする。さらに、市町村が今後の整備を行う上で、学校現場のネットワークやICT機器の整備状況や その方法等の情報共有を行う。また、これまでの市町村における現有のネットワーク・ICT機器環境下で 行われているICTを活用した実践事例を集め「ICT活用実践事例集」を作成し学習指導の工夫を共有 する。これらの研究を通して、学校においてICTを利活用した「わかる授業」構築の一助になるととも に、環境整備中の市町村には、文部科学省の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」(以下、 情報化の実態等に関する調査)及び本調査結果を基に、今後の良好で質の高い学びを実現する教育環境の 整備推進を支援するため本テーマを設定した。 Ⅱ 研究目標 (1) 沖縄県と各市町村教育委員会で整備されているネットワーク環境・ICT機器整備において、整備 状況やその方法を明らかにし、学校におけるICT利活用促進を支援する。 (2) 沖縄県内公立小中学校のICT活用実践事例集を作成することにより、授業における効果的なIC T活用の幅を広げることができるようにする。

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ICT利活用促進

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産業教育班

IT教育班

IT 教育班 共同研究テーマ

市町村における今後のICT利活用促進に向けて -市町村のネットワーク・ICT機器整備調査を通して-

主任研究主事 屋 良 直 子

研究主事 山 里 崇

研究主事 嘉 数 裕 明

研究主事 新 垣 勇 人

Ⅰ テーマ設定の理由

文部科学省では高度情報化社会に向け、学校教育分野・社会教育分野における情報化の推進のため、様

々な取組を実施している。学校現場においても同様で、文部科学省の「教育の情報化ビジョン」(2011)で

は、教育の情報化が目指すもの(3つの側面を通じた教育の質の向上)として、情報活用能力の育成、教

科指導における情報通信技術の活用、校務の情報化について示した。これを受け、文部科学省は「学びの

イノベーション事業」(2011)を実施し、一人一台のタブレット型端末、すべての教室に電子黒板や無線 LAN

などが配備された環境において、ICTを活用した教育の効果検証をはかった。また総務省は「地域雇用

創造ICT絆プロジェクト」(2011) を実施し、ICT支援員配置のほか、3学年以上の全児童生徒・担任

にタブレットPC、3学年以上の全普通教室に電子黒板、無線 LAN環境などの環境構築の推進を支援した。

直近では、「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」(2016)の中間取りまとめで、ICT機器等

の整備や教員のICT指導力の点で課題を明らかにし、今後の方向性をまとめている。

本県の県立学校は、すでに Office365による全教職員のメールアカウント配布、専門高校のネットワー

ク・機器整備事業などが実施され、利活用がなされている。また今年度より、県立高等学校向けの「進路

相談支援システム」がリニューアルされ、生徒一人一人の個人情報の収集・分析が的確に行われ、よりよ

い進路ガイダンスが進められている。これらは、沖縄県が「沖縄県教育情報化基本計画(平成 24 年~平成

33 年)」とそのアクションプランである「沖縄県教育情報化推進計画(平成 24年~平成 28年)」で、学

校教育分野の整備を計画的に進められてきた成果である。しかし、市町村においては、国や県の方針があ

るものの、各市町村の教育情報化推進計画の整備や専任担当配置、予算などの影響で計画的な整備に足並

みがそろっていない現状がある。

ところで、文部科学省は「第2期教育振興基本計画」に基づき、「教育の IT化に向けた環境整備4か年

計画」(以下、環境整備4か年計画)として、平成 26~29年間に総額 6,712億円(単年 1,678億円)を地方

財政措置している。この財政措置を活用するためには、各教育委員会が、所管学校のICT環境の整備方

針や計画等について検討し、財政担当課などに要望する必要がある。そのためには、教育委員会が積極的

に学校現場から要望や情報提供を求め、その経費を予算要求していかなければならない。

そこで本研究では、市町村のネットワーク・ICT機器整備調査を通して、各市町村の整備状況を明ら

かにする。さらに、市町村が今後の整備を行う上で、学校現場のネットワークやICT機器の整備状況や

その方法等の情報共有を行う。また、これまでの市町村における現有のネットワーク・ICT機器環境下で

行われているICTを活用した実践事例を集め「ICT活用実践事例集」を作成し学習指導の工夫を共有

する。これらの研究を通して、学校においてICTを利活用した「わかる授業」構築の一助になるととも

に、環境整備中の市町村には、文部科学省の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」(以下、

情報化の実態等に関する調査)及び本調査結果を基に、今後の良好で質の高い学びを実現する教育環境の

整備推進を支援するため本テーマを設定した。

Ⅱ 研究目標

(1) 沖縄県と各市町村教育委員会で整備されているネットワーク環境・ICT機器整備において、整備

状況やその方法を明らかにし、学校におけるICT利活用促進を支援する。

(2) 沖縄県内公立小中学校のICT活用実践事例集を作成することにより、授業における効果的なIC

T活用の幅を広げることができるようにする。

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Ⅲ 研究の方針

1 沖縄県と各市町村との教育委員会で整備されているネットワーク環境・ICT機器整備において、

各市町村の整備状況やその方法を明らかにし、学校におけるICT利活用促進を支援する。

2 各教育委員会へ、学校現場のニーズを踏まえた機器整備、ネットワーク整備のための基礎資料を提

供する。

3 沖縄県内公立小中学校のICT活用実践事例集を作成する。

4 沖縄県内公立小中学校のICT活用実践の好事例を取材し動画資料を作成する。

Ⅳ 研究計画

月 取組み内容 備考

テーマ検討

市町村立小中学校の機器整備に関する課題の洗い出し

小中学校ICT活用実践事例作成方法検討

テーマ検討会

市町村立調査内容の検討①

市町村立調査内容の検討②

市町村立調査内容の検討③

小中学校ICT活用実践事例作成依頼方法検討

市町村立調査アンケート用紙作成とwebアンケートページ作成

○webアンケートページ作成

公開調査準備

小中学校ICT活用実践事例作成、提出

市町村立調査アンケート実施、回収

○電子メールにて依頼

○教育センターWebページ内

Webアンケートシステムにて

調査

10 市町村立調査アンケート集計、分析し各市町村へ送付

中間報告会

小中学校ICT活用実践事例取りまとめ

○予算編成の資料として提供

11 小中学校ICT活用実践事例取りまとめ

小中学校ICT活用実践事例について授業参観(取材)

授業取材

1 小中学校ICT活用実践事例集を関係各位へ公開(電子媒体) ○教育センターWebページで

公開

Ⅴ 研究内容(調査内容)

1 「市町村のネットワーク・ICT機器整備調査」について

国や県の方針、学校現場のニーズを踏まえたネットワーク・機器整備を行うための基礎資料を目指

し、各教育委員会や学校現場におけるネットワーク・ICT環境整備の実態についてアンケート調査を

実施した。アンケート内容は、国(教育の情報化ビジョン、教育の情報化に関する手引き)や県(教育情

報化推進計画平成 28年~平成 33年(今年度策定予定))に合わせた調査項目を抽出した。

(1) 調査の詳細

○ 調査対象:市町村教育委員会及び公立小中学校

○ 調査内容:① ネットワーク・ICT環境整備状況に関すること

② ICT推進体制・サポート体制に関すること

③ ソフト整備に関すること

④ 校務支援システムに関すること

⑤ フィルタリングに関すること

⑥ 校務の情報化に関すること

(2) 調査対象及び回答数:市町村教育委員会 30委員会、県立・市町村立小中学校 250校

(3) 調査結果と分析

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① ICT環境整備状況に関すること 毎年文部科学省が行っている「情報化の実態等に関する調査」の平成 27年度結果が8月末に公表

された(表1)。「教育の情報化の手引き」(平成 22年 10月、文部科学省)では、教育の情報化に

ついて、以下の3点を目指している。

○子どもたちの情報活用能力育成

○教科指導におけるICT活用

○校務の情報化を通して教育の質の向上

今回の本教育センター調査では、「情報化の実態等に関する調査」において未調査項目を中心に

調べた。その結果を図1、図2に示す。表1(文科省調査結果)や図 1(教育委員会集計結果)による

と、調査結果では市町村間で機器整備に差があるように見えるが、それは各市町村の「整備計画」

の違いである。すなわち、学校へ電子黒板、タブレット型端末、PC、その他ICT機器のどちらを

先に整備するかなど、各市町村の整備方針に大きく左右している事がわかった。今後、教育の機会

均等化、いつでもどこでも学ぶための教材や教授法が環境に依存することなく利活用できるように、

文部科学省の「情報化の実態等に関する調査」及び本調査結果を基に整備を進めていただきたい。

表1 平成 27年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(平成 28年 8月文部科学省)

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市町村別小学校の ICT 機器整備状況【N=30】 市町村別中学校の ICT 機器整備状況【N=30】

図1 市町村立小中学校ICT機器整備状況(教育委員会集計結果)【N=30】

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図2 小中学校のICT機器整備現状:左 及び要望:右(公立小中学校集計結果) 【N=250】

② ネットワーク環境、ICT推進体制・サポート体制に関すること

図3は、平成 27 年度「情報化の実態等に関する調査」の普通教室 LAN整備率、無線 LAN 整備率で

ある。文部科学省はいずれも整備率 100%を目指しているが、特に無線 LAN平均整備率は約 40%で

あった。また図4は、各市町村教育委員会のネットワークセグメントの整備状況である。特に、ネ

ットワークセグメント数が「1」、すなわち行政のネットワークと学校のネットワークが同一とな

っている委員会が5つあった。今後ICTを利活用したわかる授業構築のためには、ぜひ、ネット

ワークセグメントを4セグメント以上(例:市事務の行政用、教師用、教育用、校務支援用)に切り

分けを検討していただきたい。

また、ICT推進体制・サポート体制については、図5に市町村教育委員会の配置状況と各小中

学校 の希望配置形態を示している。回答した市町村(N=30)のうち、約半数の 16市町村が支援員

を配置済み、又は今年度中に配置予定であるとしている。なお、公立小中学校は、常駐あるいは定

期巡回、要請来校による支援員派遣を要望している学校が 96%に上っており、各委員会は今後配置

計画が必要であることがわかった。「環境整備 4か年計画」において、「ICT支援員の配置(情報

技術者委嘱を含む)」も組み込まれている。わかる授業構築のため、子どもと向き合う時間確保のた

めにも配置への調整をお願いしたい。

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図3 平成 27年度 「学校における教育の情報化の実態等に 関する調査」(文部科学省) 【N=41】 図4 市町村委員会のネットワーク整備現状

図5 市町村委員会におけるICT支援員配置現状(左)、及び小中学校の支援員要望配置形態(右)

③ ソフト整備に関すること

今年度8月に公開された「情報化の実態等に関する調査」において、市町村の教師用デジタル(電

子)教科書の整備状況に大きく差がある事がわかった(図6)。なお、図7は市町村委員会の教師用デ

ジタル(電子)教科書整備状況とその管理方法、図8は小中学校の教師用デジタル(電子)教科書整備

要望についての調査結果である。小中学校の整備率はほぼ同率だが、今年度中の整備を加えると 85

%以上の市町村で整備完了となる予定である(図7)。また管理方法は、各校のNASサーバにイン

ストールする方法、教師用

端末にインストールする方

法と分かれている(図7)。

年に2,3回あるアップデ

ートを考えると、NASサ

ーバにインストールし、I

CT支援員がその都度アッ

プデートをかけるで、校務

の効率化が図られると考え

る(ただし、電子教科書の

NASインストールは「学

校ライセンス版」であることが必要)。図6 平成 27年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査

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図8 小中学校の教師用電子教科書整備要望

図7 市町村委員会の教師用電子教科書整備現状とその管理方法

④ 校務支援システムに関すること【N=30】

教員の負担軽減と児童生徒と向き合う

時間確保の観点から進められている「校

務支援(児童生徒情報管理)システム」の

導入及び活用が各委員会で進んでいるこ

とがうかがえる(図9)。県立総合教育セ

ンター版「校務支援(児童生徒情報管理)

システム」は本年度でサポートを終了す

るが、今後は各市町村教育委員会で整備

計画を策定するなど、校務の情報化を図

っていただきたい。 図9 市町村委員会の校務支援システムの整備現状

⑤ フィルタリングに関すること 【N=30】

わかる授業構築のため、教育用教材を

多く提供している動画サイトや無料のク

ラウドストレージ利用が進んでいる中、

市町村によってはセキュリティーポリシ

やネットワーク環境の問題からその利用

を禁止あるいは制限しているところもあ

る(図 10)。今後、教育の機会均等の観点

から学校のニーズに臨機応変に対応でき

るようにしていただく事を願いたい。と

ころで、各学校の動画サイトなどの利用 図 10 市町村委員会の動画サイト等の利用許可現状

希望は、NHKの動画サイトに関して、「常時閲覧希望」67%、「委員会にフィルタリング解除依頼

で閲覧希望」19%となった(図 11)。また、「You Tube」や無料クラウドストレージの利用に関して

は、クラウド型ネットワークの脆弱性の懸念や不適切サイトの閲覧を制限するために制限閲覧や利

用に不安の声が多かった。今後、安心して利用できるよう研修を計画していきたい。

図 11 小中学校のインターネットを介した動画サイト閲覧及び無料クラウドストレージ利用要望調査

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⑥ 校務の情報化に関すること 【N=30】

近年、ほとんどの市町村で複合機の導

入が進んでいる(図 12)。資料・公文等の

PDF化と全教師へのメールアドレス付与

は、会議のペーパレス化や文書取り扱い

担当から公文の電子メール配布が可能と

なる。そのことにより、消耗品費の削減

につながり、予算の有効活用にもなる。

また、複合機やドキュメントスキャナは

アンケートのマークシート化にも利用で

きる。校務の情報化が、教員の負担軽減

と「子どもと向き合う時間の確保」につながる。 図 12 校務の情報化のための機器整備現状 【N=30】

○その他、ネットワーク・ICT機器整備に関する意見など【市町村教育委員からの意見】

・本村は、行政ネットを利用しているため、セキュリティ面で規制が高い状況である。外部記録媒

体(USBメモリーなど)が一切使用できない(一部許可制)。そのため、行政ラインと学校ライン

を分けて外部記録媒体が使えるように、教員側からの要望が多い。

・ICT専門分野の知識や経験を持った職員の不足

・校務支援システムを今後どうしたらいいか。

・財政難であるため、補助事業又は交付金事業を探している状況である。また、整備後の維持管理

費について、予算確保が難しいので、何らかの補助がほしい。

○その他、ネットワーク・ICT機器整備等に関する意見など【小中学校からの意見】

・(校務の情報化)生徒情報管理システムは、バージョンアップの際には、手間と作業に時間が奪

われている状況です。「学力向上Webシステム」のようにWeb化を希望します。

・ICT機器の操作に対して苦手意識を持つ職員がまだいる。積極的に活用を進めるためにもソフ

ト面の充実(ICT支援員の配置等)が必要だと思われます。

・公立教員に公務用メールアドレスの配布

(4) 調査のまとめ

文部科学省は「第2期教育振興基本計画」に基づき、各都道府県・市区町村のICT環境整備促

進のため「環境整備 4か年計画」として総額 6,712億円を地方財政措置している。この財政措置を

活用するためには、各都道府県が、学校のICT環境の整備方針や計画等について検討し、財政担

当課などに予算要求する必要がある。しかし、本年度8月 31日に公表された平成 27年度「情報化

の実態等に関する調査」の結果は、各都道府県においてICT環境整備があまり進んでいないこと

が明らかになった。これらICT環境整備の遅れを受け、文部科学省は『地方公共団体間の整備状

況の差がますます拡大し、このような状況が新たな教育格差をも生みかねない』として、図 13 の

ように次期教育振興計画に向けたICT整備目標の再整理を行い、各都道府県向けに「教育情報化

の推進に対応した教育環境の整備充実について(通知)」として、ICT環境の整備促進を通知し

た(平成 28年8月 31日付 28 文科生第 440 号)。また、中央教育審議会(中教審)は、2020 年度

から始まる次期学習指導要領に、論理的思考力をはぐくむためのICT機器を活用したプログラミ

ング教育や児童生徒が主体的に授業に参加する「アクティブ・ラーニング」を導入する改定案も示

した。

このような国の方針のもと、本県におけるICT環境整備状況を明らかにできた。その結果は、

平成 27 年度「情報化の実態等に関する調査」結果における都道府県のICT環境整備格差と同じ

く、各市町村においても同様な格差があることが分かった。しかし、これらの整備格差は、各市町

村のICT機器の整備優先順が異なることに起因することも推察できた。そこで各市町村は、次期

学習指導要領改訂も見据え、来年度まで活用できる「環境整備 4 か年計画」の地方財政措置等を活

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用し、協働型・双方向型の授業革新や校務の情報化に向けたICT環境の整備充実等をはかる必要

がある。

図 13 第3期教育振興基本計画に向けたICT整備推進の流れ

2 「平成 28年度 沖縄県小中学校ICT活用実践事例」について

(1) 実践事例作成の詳細

平成 27年度及び平成 28年度9月までのICT機器の効果的な活用について、以下の中より1

つ選択して作成し、提出を依頼した。(小中併置はどちらかの校種で提出)

① タブレット型端末を活用した実践事例(タブレット型端末を導入されている学校は必須事項)

② 実物投影機を活用した実践事例

③ PC教室のPC等を活用した実践事例

④ その他のICT機器を活用した実践事例

(2) 実践事例提出数(1校1事例を依頼したが、複数事例提出校あり)

小学校 97校 99編

中学校 39校 45編

(3) 実践事例(一部抜粋)

① 小学校実践事例

・タブレット型端末活用事例

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共同研究

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・実物投影機・PC活用事例

・特別支援学級ICT活用事例

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② 中学校実践事例

・タブレット型端末活用事例

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産業教育班

IT教育班

利活用促進

・実物投影機・PC活用事例

Ⅵ 研究の成果と課題

1 成果

(1) 「市町村のネットワーク・ICT機器整備調査」(市町村教育委員会、公立小中学校)を実施・分

析し各市町村へ情報提供できた。

(2) 現有環境を有効活用した沖縄県内における小中学校のICT活用実践事例を作成できた。

2 課題

(1) 「市町村のネットワーク・ICT機器整備調査」(市町村教育委員会、公立小中学校)結果を基に

した、市町村育委員会の整備計画への反映

(2) 動画によるICT活用実践事例の作成

〈参考文献〉

文部科学省 2013 第2期教育振興基本計画(平成 25年6月 14日 文部科学省)

文部科学省 2016 平成 27年度情報化の実態等に関する調査結果

文部科学省 2016 教育情報化の推進に対応した教育環境の整備充実について(通知)

文部科学省 2016 「2020 年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」最終まとめ

文部科学省 2014 環境整備 4か年計画

文部科学省 2010 教育の情報化に関する手引き

文部科学省 2011 教育の情報化ビジョン

閣議決定 2013 世界最先端 IT 国家創造宣言

沖縄県教育委員会 2012 沖縄県教育情報化基本計画(平成 24 年~平成 33 年)

沖縄県教育委員会 2012 沖縄県教育情報化推進計画(平成 24 年~平成 28 年)