現在のインドにおける政治状況と...

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現在のインドにおける政治状況と モディ政権の政策 2016年10月27日 中央大学法学部兼任講師 三輪博樹 第1回インドワークショップ 1

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現在のインドにおける政治状況とモディ政権の政策

2016年10月27日

中央大学法学部兼任講師

三輪博樹

第1回インドワークショップ

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構成

•政治体制の特徴政治体制/連邦議会/連邦制/連邦制の特徴中央集権的な連邦制/中央集権的な傾向の変化

•政党政治の特徴主要2大政党/インド政治における基本的な対立軸独立後の政党政治

•政治情勢と今後の見通し第16回連邦下院選挙(2014年)の結果/最近の世論調査結果上院と下院のねじれ状態/州におけるインド人民党の勢力拡大今後行われる州議会選挙(主要州)

•モディ政権の政策政策をめぐる対立/モディ政権の政策に関する見通し農村向けの政策の重要性/土地収用法の改正案などはどうなるか野党インド国民会議派の戦略/各州の政治動向への配慮中央政府と州政府の対立/州の政治動向が政策にもたらす影響

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■政治体制

•政治体制は共和制。大統領が国家元首を務める。

•執政府は議院内閣制によって運営。

•大統領の役割は名目的なものであり、実際の政治権力は首相が握っている。

プラナブ・ムカジー(Pranab Mukherjee)大統領

ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相

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■連邦議会

•連邦議会は二院制。

•上院(Rajya Sabha):各州および連邦直轄領の代表の集まりと位置付けられる。任期は6年。

•下院(Lok Sabha):国民の代表の集まりと位置付けられる。任期は5年であるが、解散の可能性がある。

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■連邦制

•インドでは連邦制が採用されており、中央と29州、および7つの連邦直轄領から構成される。

•中央政府は国防、外交、通信、通貨、関税などを所管し、州政府は、法と秩序、公衆衛生などを所管する。

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■連邦制の特徴

•各州には、州知事(Governor)、州首相(Chief Minister)、州議会が置かれる。

•州議会については、一院制を採用する州と二院制を採用する州に分けられる。

•インドの連邦制は、州に比べて中央の権限が強いことを特徴とする。

大統領

連邦議会 連邦内閣

州知事

州内閣州議会

中央

選挙で選出 助言

解散 解任

多数派が組閣

多数派が組閣

任命

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■中央集権的な連邦制

•州政府の管轄事項が少ない州政府の管轄事項は連邦政府の管轄事項よりも少なく、憲法に規

定のない事項は連邦政府の管轄となる。

•中央政府による政治介入州政府が中央政府の意向に従わない場合には、中央政府は大統

領に助言をして州政府を解任し、州知事を代理人として当該州を大統領直轄統治のもとに置くことが可能である。

•州政府の財源が乏しい連邦政府の財源に比べると州政府の自主財源は乏しく、州政府は

連邦政府の財源に依存せざるを得ない状態となっている。

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■中央集権的な傾向の変化

•経済自由化州や都市が国境を越えて世界経済と直接結びつくようになり、州の

発展のためには州政府の経営手腕が重要なものとなった。

•地方自治制度(パンチャーヤット制度)の改革地方自治制度の整備と権限移譲を行う上で、州政府の役割が増

大した。

•大統領直轄統治の濫用の抑制1994年の最高裁判所の判決により、大統領直轄統治の濫用が抑

制されるようになった。

•地域政党の増加1980年代末以降、政党政治において多党化が進展し、特定の州

や地域に支持基盤を持つ地域政党が増加した。8

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■主要2大政党

•1885年に結成。

•異なった宗教が平和的に共存できる社会

を目指す「政教分離主義(Secularism)」を

主張している。

•1980年に結成。

•ヒンドゥー教にもとづく国づくりをすべきだという「ヒンドゥー・ナショナリズム(Hindunationalism)」を主張している。

インド人民党 Bharatiya Janata Party (BJP)

インド国民会議派 Indian National Congress

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■インド政治における基本的な対立軸

•インド国民会議派とインド人民党の対立は、インドの国家建設の根幹に関わる部分での対立であるため、両党が国政の場で歩み寄ることは非常に難しい。

インド国民会議派主張:政教分離主義(Secularism)(異なった宗教が平和的に共存できる社会を目指す)

インド人民党(BJP)主張:ヒンドゥー・ナショナリズム(Hindu nationalism)(ヒンドゥー教にもとづく国づくりを目指す)

批判:偽りの 政教分離主義(Pseudo-secularism)(インド人民党の主張こそが真の政教分離主義である)

批判:宗派主義(Communalism)(インド人民党の主張は、国家を分裂に導く偏狭な宗派主義である)

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■独立後の政党政治

•独立直後から1960年代後半までは、インド国民会議派が圧倒的な勢力を保持。

•1990年代以降の政党政治は2極的な構図。2大政党であるインド国民会議派とインド人民党を中心として多数の政党が連合し、2つの政党連合が対抗。

インド国民会議派とインド人民党(BJP)の議席率

有効政党数(多党化を示す指数)の変化

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■第16回連邦下院選挙(2014年)の結果

•インド人民党が勝利を収め、インド国民会議派から政権を奪回。

•選挙後には、インド人民党を中心とする「国民民主連合」が政権を樹立。

•中央の政局は、インド人民党による一党優位の状況となった。

議席数 増減 得票率(%)

国民民主連合(NDA) 336

インド人民党(BJP) 282 +166 31.00

シヴ・セーナー(SHS) 18 +7 1.85

テルグ・デーサム党(TDP) 16 +10 2.55

公民の力党(LJP) 6 +6 0.41

アカーリー・ダル(SAD) 4 ±0 0.66

民族ローク・サマタ党(RLSP) 3 ---- 0.19

アプナー・ダル(AD) 2 +2 0.15

その他(5政党、各1議席) 5 ---- ----

統一進歩連合(UPA) 60

インド国民会議派 44 -162 19.31

民族主義会議派(NCP) 6 -3 1.56

民族ジャナタ・ダル(RJD) 4 ±0 1.34

ムスリム連盟(IUML) 2 ±0 0.20

ジャールカンド解放戦線(JMM) 2 ±0 0.30

その他(2政党、各1議席) 2 ---- ----

第三グループ 144

全印アンナ・ドラヴィダ進歩連盟(AIADMK) 37 +28 3.27

草の根会議派(AITC) 34 +15 3.84

ビジュ・ジャナタ・ダル(BJD) 20 +6 1.71

テランガーナ民族会議(TRS) 11 +9 1.22

インド共産党マルクス主義(CPI(M) ) 9 -7 3.25

YSR会議派(YSRCP) 9 ---- 2.53

社会主義党(SP) 5 -18 3.37

庶民党(AAP) 4 ---- 2.05

全印統一民主戦線(AIUDF) 3 +2 0.42

ジャンムー・カシミール人民民主党(JKPDP) 3 +3 0.13

インド国民民衆党(INLD) 2 +2 0.51

ジャナタ・ダル世俗主義(JD(S) ) 2 -1 0.67

ジャナタ・ダル統一派(JD(U) ) 2 -18 1.08

その他(3政党、各1議席) 3 ---- ----

無所属 3 -6 3.02

合計 543

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■最近の世論調査結果

•インド人民党と国民民主連合への支持は、2015年以降やや低下傾向を示すようになったが、それでもなお高い水準を維持している。

336354

299 288 286304

282314

255 243 234259

60 57 71 81110

94

44 40 53 6292

540

50

100

150

200

250

300

350

400

2014選 2014.8 2015.4 2015.8 2016.2 2016.8

予想獲得議席数

国民民主連合(NDA) インド人民党(BJP) 統一進歩連合(UPA) インド国民会議派

各政党陣営の予想獲得議席数

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■最近の世論調査結果

•ナレンドラ・モディ首相に対する国民の支持は、現在

もなお高い水準にある。

57

36 3740

50

6 7 8

22

13

0

10

20

30

40

50

60

2014.8 2015.4 2015.8 2016.2 2016.8

ナレンドラ・モディ ラフル・ガンディー

首相として誰が適任だと思うか

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■上院と下院のねじれ状態

•インド人民党は現在、上院では過半数割れの状態。

•上院議員のほとんどは各州の州下院議員によって選出される。連邦下院選挙と州議会選挙の日程は必ずしも同じではないため、このようなねじれ状態が生じる。

インド国民会議

派, 60

インド人民党

(BJP), 55

社会主義党

(SP), 19

全印アンナ・ドラ

ヴィダ進歩連盟

(AIADMK), 13

草の根会議派

(AITC), 12

ジャナタ・ダル統

一派(JD(U) ), 10

その他(22政党)・

無所属, 67

インド人民党

(BJP), 280

インド国民会議

派, 45

全印アンナ・ドラ

ヴィダ進歩連盟

(AIADMK), 37

草の根会議

派(AITC), 32

ビジュ・ジャナタ・

ダル(BJD), 20

シヴ・セーナー

(SHS), 18

テルグ・デーサム

党(TDP), 16

テランガーナ民族

会議(TRS), 11 その他(27政党)・

無所属, 79

主要政党の議席数(2016年10月25日時点) 主要政党の議席数2016年10月25日時点)上院 下院

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■州におけるインド人民党の勢力拡大

•インド人民党が上院で勢力を拡大させるためには、州下院選挙で勝利を続けていくことが必要である。

•2014年の政権発足以来、インド人民党は多くの州で勝利を収めている。しかし・・・

2013年11月時点の各州の州政権 2016年6月時点の各州の州政権

■ インド人民党の単独政権

■ インド人民党が参加する連立政権

■ インド国民会議派の単独政権

■ インド国民会議派が参加する連立政権

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■今後行われる州議会選挙(主要州)

•現在のモディ政権の任期中(2019年5月まで)に、インド人民党もしくは国民民主連合が上院で過半数を確保できる可能性は低い。

•2017年グジャラートパンジャーブウッタル・プラデーシュ

•2018年マディヤ・プラデーシュカルナータカラージャスターン

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■政策をめぐる対立

•インド国民会議派とインド人民党は国家建設の根幹に関わる部分では対立しているが、外交政策や経済政策などでは、両党の違いはほとんど見られない。

•物価対策、雇用創出、インフラ整備、農村政策、汚職対策などの主要な政治イシューに関しても、両党の主張内容にほとんど違いはない。

•現在のインドにおける与野党間の政策的な対立は、これらの政策イシューについて「どちらがよくうまく進められるか」という点をめぐる対立が中心である。

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■モディ政権の政策に関する見通し

•野党インド国民会議派が有権者向けのメンツを保つことができる状況が整えられれば、会議派がモディ政権の政策に対して賛成にまわる可能性は高い。

•例:GST法案の成立

連邦内閣が、会議派からの要求を一部受け入れる形で法案の修正を行った。

その結果、会議派は法案に対して賛成にまわり、2016年8月に上下両院で可決された。 The Indian Express, Aug. 8, 2016.

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■モディ政権の政策に関する見通し

•外交政策や安全保障政策の面では、モディ政権に対する評価は比較的高い。外交や安全保障に関しては与野党間に大きなスタンスの違いが見られないため、野党側からの反対が出にくいという面もある。

•例:印パ関係とテロ対策

2016年9月29日、インド政府は、陸軍の特殊部隊がパキスタン側 に 「 局 部 攻 撃 ( SurgicalStrike)」を実施したと発表した。

これに対して、インド国内では与野党を問わず賛成の意思が示された。 The Diplomat, Sep. 30, 2016.

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■モディ政権の政策に関する見通し

•その一方で、以下の2つの問題は、モディ政権にとっての足かせとなる可能性が高い。

① 農民をはじめとする貧困層に配慮しなければならない。

② 各州の政治動向に配慮しなければならない。

•インド人民党が次の連邦下院選挙(2019年)で勝利を収めて政権を維持し、さらに、上院と下院のねじれ状態が解消されたとしても、政策の内容によっては実行に移すことが極めて困難になる場合がある。

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■農村向けの政策の重要性

•現在のインドでは、GDPに占める農業の割合はそれほど大きくない(約15%)。

•しかし、農村部の人口の約65%は農業に従事しているため、農村向けの政策は非常に重要である。

•現在のモディ政権においても農村政策は重要であるため、農民にとって不利になるような政策を進めることは難しい。

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■土地収用法の改正案などはどうなるか

•現時点では、モディ政権が土地収用法の改正案を成立させることは極めて困難である。土地収用法の改正案は、産業開発のために農地などを収用する

ためのものであるため、取り扱い方によっては農民の強い反発を招く可能性がある。

2017年以降、パンジャーブ州やウッタル・プラデーシュ州など、農村人口の多い州で州議会選挙が予定されている。

•国有企業の民営化、民間企業の参入、外資規制の緩和などといった規制緩和策は、労働者などにとって不利になる可能性があるため、こちらも慎重に進める必要がある。

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■野党インド国民会議派の戦略

•野党インド国民会議派は現在のところ弱体化しているが、農村政策や貧困層向けの政策は、モディ政権を攻めるための決め手となりうる。

•したがって会議派は、土地収用法の改正に関しては強硬に反対しており、妥協の動きは見られない。

•また会議派は、規制緩和策に対しても難癖を付けてくる可能性が高い。

Deccan Chronicle, Mar. 18, 2015.

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■各州の政治動向への配慮

•インド人民党もインド国民会議派も、州議会選挙では地域政党と協力を行わなければならない場合が多いため、地域政党の意向を無視することはできない。

•連邦下院選挙と州議会選挙の日程は必ずしも同じではなく、毎年どこかの州で州議会選挙が行われるため、州議会選挙に配慮した政策も必要である。

•例:モディ内閣の閣僚数

モディ首相は当初「スリムな内閣」を標榜し、閣僚の数を削減した。

しかしその後、州議会選挙に向けた対策のひとつとして当該州の出身者を多く閣僚に抜擢した結果、現在の内閣は肥大化し、憲法が定める上限の人数に達しつつある。

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■中央政府と州政府の対立

•財政面での対立。州政府に対する中央政府からの補助金の金額が焦点となる場合が多い。

•特に、中央政府と州政府の与党が異なる場合に対立が生じやすい。

•例:GST法案への反対意見

GST法案に対して、タミル・ナードゥ州の与党である全印アンナ・ドラヴィダ進歩連盟(AIADMK)から反対意見が示された。

反対の理由は、GSTの導入によって同州政府の税収が減少すること、州政府の財政的な自立性が損なわれることの2つであった。 ジャヤラリタ州首相

( AIADMKのWEBサイトより)

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■州の政治動向が政策にもたらす影響

•経済特区(SEZ)の建設などの経済政策や開発政策は州政府の主導で行われることが多い。

•そのため、州での政権交代や政治対立によって、経済政策や開発政策に大きな影響が生じることがある。

•例:ウッタル・プラデーシュ州における政権交代

ウッタル・プラデーシュ州では、2007年に成立した多数者社会党(BSP)政権のもとで、「Kashiram Multispecialty Hospital」と呼ばれる病院の建設が進められていた。

しかし、2012年の州議会選挙で多数者社会党は敗北。代わって政権についた社会主義党(SP)によって、この病院建設はいったん停止され、その後、医療大学の建設計画に変更された。

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以上

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