成人看護学 急性期実習...

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成人看護学 急性期実習 実習指導案 【成人看護学Ⅰグループ】 ○住友聖子 河野静香 藪原由紀子 山本ひとみ 松本真湖 指導講師:工藤美恵

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成人看護学

急性期実習 実習指導案

【成人看護学Ⅰグループ】

○住友聖子 河野静香 藪原由紀子

山本ひとみ 松本真湖

指導講師:工藤美恵

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成人看護学 急性期実習 実習指導案

○住友聖子 河野静香 藪原由紀子 山本ひとみ 松本真湖 工藤美恵(指導講師)

はじめに

急性期は、状態の変化が著しく、生命の危機に脅かされていることも少なくない。高度で専門的な

治療が集中的に行われており、その中で学生が患者の状態を的確に把握するのはとても困難である。

講義で周術期患者の特徴を学んではいるが、臨床現場で目の当たりにする術後患者の様相は、学生の

想像をはるかに超えている 1)。また、緊迫した雰囲気の中で、多くの学生が実際の援助ができないま

まに臨地実習を終了しており、満足感を得られていないという現状がある 2)。

そこで今回の急性期実習では、周術期患者を受け持ち、一連の看護を経験することで、急性期にあ

る患者を統合的に理解させたいと考えた。臨床の場でしか学べないことを経験させ、既習内容と関連

づけて、観察やアセスメントの重要性を伝えたい。また、学生が看護を行ったと実感できるよう関わ

り、看護の喜びや達成感が感じられるよう指導案を作成した。

Ⅰ.仮設校の設定

愛徳県立総合看護学校 3年課程

※一学年は 40 名、年齢層は幅広い

1.教育理念・目的・目標

【教育理念】

生命尊厳を根底とした豊かな感性と倫理観を形成し、県民の健康福祉の向上に貢献できる専門知

識・技術を備えた人材を育成します。

【教育目的】

あらゆる健康レベルにある患者及び家族を理解し、多様なニーズに応じて必要な知識・技術に基

づいた看護実践能力や倫理観を備えた看護師を育成します。

【教育目標】

1)人間を身体的・精神的・社会的に統合された尊厳ある存在として幅広く理解する能力を養う。

2)人々の生活の場や健康状態に応じて、科学的根拠に基づいた看護を実践できる能力を養う。

3)看護師の専門的な役割と責務を自覚し、保健・医療・福祉等他職種と連携して、チーム医療

の一員として協働できる能力を養う。

4)人々の多様な価値観を認識し、専門職業人としての倫理観と感性を養う。

5)看護専門職者として、県民に貢献するために生涯学び続ける姿勢を養う。

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2.臨地実習の目的・目標

【臨地実習の目的】

人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として捉え、学習した看護学の知識・理論と技

術を実際の看護場面に適応し、実践する能力を養う。

【臨地実習の目標】

1)対象を健康レベルや生活面、社会面など多角的にとらえニーズを把握できる。

2)看護の理論と実践を統合し、対象に合った看護を展開できる能力を養う。

3)人々の多様な価値観を認め、円滑な人間関係を築くとともに、対象の情緒的問題について支

援できる。

4)医療チームとしての看護師や他職種の役割を理解できる。

5)看護実践を通して、看護の喜び、充実感・満足感・責任感を持つことができる。

6)最新知識・技術を自ら学習・研鑽する姿勢を養う。

【領域別の設定(科目名)既習学習内容】

1年 2年 3年

前期 後期 前期 後期 前期 後期

基礎看護学

●基礎実習Ⅰ(1)

●基礎実習Ⅱ(2)

成人看護学

●成人実習Ⅰ(2)

●急性期実習(2)

●慢性期実習(2)

老年看護学

●老年実習Ⅰ(2)

●老年実習Ⅱ(2)

小児看護学

●小児実習(2)

母性看護学

●母性実習(2)

精神看護学

●精神実習(2)

在宅看護論

●在宅実習(2)

統合と実践

●統合実習(2)

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Ⅱ.実習指導計画

1.実習の概要

1)実 習 名 : 急性期実習

2)実習期間 : H25.2.17~3.7 2単位 90 時間(6時間/日)

3)実習場所 : 媛島病院 病床数 300 床

(内科・外科・脳外科・整形外科・小児科・産婦人科・耳鼻科・眼科・皮膚科)

4)病 棟 : 外科病棟

2.実習目的・目標

【実習目的】

急性期にある患者及び家族を理解し、健康回復・維持に向けて、患者の状態に応じて必要な知識・

技術に基づいた看護実践能力や倫理的態度を養う。

【実習目標】

1)成人期にある患者の発達段階をとらえ、急性期における病態・治療・症状が患者の生活や心

理状態に及ぼす影響について理解することができる。

2)急性の経過をたどる患者および家族に対して救命に必要な看護、苦痛の緩和、早期回復に向

けての援助方法が理解できる。

3)周術期にある患者に必要な看護計画を立案でき、患者の状態に応じた観察及び援助が行える。

4)急性期における医療チームでの看護師の役割・責務を知り、他職種との協働・連携の必要性

が理解できる。

3.対象学生

3年課程の2年生

氏 名 特 徴

名東 あずま (20) 女 しっかり者、成績優秀、リーダー

入野 松 (20) 男 ムードメーカー、成績は中の下

国府 開 (35) 男 社会人経験者、グループの相談役

淡路 みなみ (28) 女 母親が看護師、成績は中、サブリーダー的存在

★羽野 うらら (20) 女 真面目で一生懸命、成績は良い

学習への取り組みはよい、やや視野が狭い、気づきの芽はある

【レディネス】

あまり目立つ方ではなく物静かなタイプではあるが、誰とでもうまく関係を築くことができ、社会

性はある。成績は良く、意欲も十分だが、緊張に弱い部分がある。

実習を重ねるごとに、深い関わりが出来るようになっている。今まで、特に大きなつまずきはなく、

実習の評価も高い。領域別実習も終盤にさしかかり、自信もついてきている。

急性期には興味を持っており、本実習の事前学習はさらに意欲的に取り組んでいる。

月曜日 入浴介助

火曜日 病棟カンファレンス

水曜日 シーツ交換

木曜日 入浴介助

金曜日 体重測定

はの

うらら

です。

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4.受持ち患者の設定

名前:喜多 民也 年齢:49 歳 性別:男性 病名:直腸結腸癌(一時的人工肛門造設術)

身長:170 cm 体重:65 kg 既往歴:なし 職業:営業(OT 製薬)

家族構成:妻 52 歳 長女 18 歳 長男 16 歳

家庭環境:家族関係もよく、娘もよく病室を訪れ、患者と談話している。

キーパーソン:妻

性格:【本人談】おおらかな性格、情に厚い

【娘 談】優しくて、いつも話を聞いてくれる

【妻 談】頼りない

【看護師】人当たりがよい、話しやすい

嗜好:タバコ・お酒 香辛料、辛いものが好き

現病歴:職場の健診にて便潜血検査陽性で再検査となった。妻の勧めもあり総合病院を受診し、大腸

ファイバー検査で腫瘍が見つかったため、手術目的(低位前方切除術、一時的人工肛門造設

術)で入院となる。術後経過が良好であれば、3 ヶ月から 6 ヶ月で人工肛門閉鎖予定。

【経過】

月日(曜日) 病日 経過 安静度

2 月 18 日(火) 入院・手術前日 入院・入院前オリエンテーション

手術前の処置 病棟内フリー

2 月 19 日(水) 手術当日 大腸切除術

家族への病状説明 体位変換

2 月 20 日(木) 術後 1 日目

膀胱留置カテーテル抜去

酸素中止

起座位許可

尿器にて排尿

介助にて立位

2 月 21 日(金) 術後 2 日目 胃管カテーテル抜去

夕方、腸蠕動確認後水分許可 トイレ歩行可

2 月 22 日(土) 術後 3 日目

輸液ライン抜去・ドレーン抜去

流動食 ストーマのガス処理の指導

看護師によるパウチの交換・装着

病棟内フリー

2 月 23 日(日) 術後 4 日目 3 分食

2 月 24 日(月) 術後 5 日目 5 分食

栄養指導・薬剤指導

2 月 25 日(火) 術後 6 日目 7分食 ストーマ周囲の皮膚洗浄

2 月 26 日(水) 術後 7 日目 全粥

2 月 27 日(木) 術後 8 日目

常食

ストーマパウチの装着・洗浄

(看護師見守り)

2 月 28 日(金) 術後 9 日目 抜糸

3 月 1 日(土) 術後 10 日目 ストーマパウチの装着・洗浄(自己)

3 月 2 日(日) 術後 11 日目

3 月 3 日(月) 術後 12 日目

3 月 4 日(火) 術後 13 日目

退院指導

・ストーマ造設中の注意事項

・通院、退院後の生活

・次回手術について

きた

たみや

です。

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3 月 5 日(水) 術後 14 日目

3 月 6 日(木) 術後 15 日目 退院

3 月 7 日(金) 術後 16 日目

5.本実習の指導方針

1)教材観

今回の実習は、成人看護学の急性期実習である。成人期は、身体的・生理的諸機能が成熟して、

安定した時期である。それと同時に、家庭内の責任や社会的役割が重くなっており、疾患を持つこ

と、入院することが、本人および家族に及ぼす影響は大きい。また急性期は、身体機能の急激な低

下により生命の危機に陥りやすい。身体機能の悪化の早期発見と回復の促進、心理・社会的危機の

回避、日常生活行動の支援、社会的支持が必要となる。なかでも周術期は、治療のためとはいえ、

外科的操作によって生体に侵襲が加えられて、生活行動の規制を余儀なくされ、自尊心を喪失する。

看護師は、それらのことに対処しようと、心身ともにさまざまな葛藤や反応を起こしている患者に

対して、適切な援助を提供する役割がある。

今回、直腸癌で治療を受ける喜多さんは、壮年期にあたり、社会的にはもっとも生産的で優れた

活動力をもち、家庭においては父親として次の世代を育てる責任がある。この時期に入院・手術を

受けることは、身体的・精神的な苦痛、麻酔や手術に対する不安や侵襲、ストーマ造設によるボデ

ィーイメージの変容や日常生活の変化などの問題に加えて、社会的問題の占める割合も大きい。患

者や家族に及ぼす影響を理解して支援し、意欲を失うことなく、生活に適応できるように指導・援

助していくことは看護の重要な役割であり、本実習を学習する意義は大きい。

本実習において学習する内容は次の通りである。

(1)悪性新生物により健康問題が生じた壮年期にある患者や家族に及ぼす身体的・精神的・社会的

影響を理解した援助ができる。

(2)消化器疾患の病態生理、症状、治療、検査について理解できる。

(3)手術療法を受ける患者の苦痛を理解し、共感的な態度で必要な援助ができる。

(4)手術による生体侵襲を理解し、術後の合併症を予防あるいは早期発見するための観察、および

苦痛緩和の援助ができる。

(5)患者の個別性を捉えた看護過程の展開ができる。

2)学生観

対象学生のうららは、2 年生 10 ヶ月目であり、基礎実習Ⅰ・Ⅱ、成人実習Ⅰ、老年実習Ⅰ、小児

実習、母性実習、慢性期実習を終了しており、精神実習と在宅実習、統合実習を残すのみとなって

いる。子どものときに、虫垂炎の手術を受け、この時にやさしく接してくれた看護師にあこがれ、

看護師になることを目指している。おとなしい性格で協調性はあり、真面目で一生懸命取り組むタ

イプである。気付きの芽はあり、実習を重ねていくうちに、個別性のある看護展開ができつつある。

外科病棟での実習は今回が初めてであるが、自身の幼少時の経験より周術期の看護に関心があるた

め、意欲はあり事前学習への取り組みはよい。

急性期では状態の変化が著しく、それに応じた看護展開が求められる。学生はその場の事象を捉

えることすら難しい状態となることが多い。また臨床の場では実際の患者の状態変化と学習内容に

ギャップを生じることもあり、戸惑いや緊張なども起こる可能性が高い。状態に応じた個別性のあ

る看護を展開することは困難に感じることも予測される。

実習グループは、リーダーあずまを中心に良好な関係を築けており、学びや看護体験を共有でき

ると考える。

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3)指導観

今回の急性期実習は、麻酔や術後侵襲に伴う生体反応を理解し、術後合併症の予防と早期発見の

ための看護を学ぶことをねらいとしている。その上で、刻々と変化する患者の状態に応じた、個別

性のある看護過程の展開が求められている。また喜多さんは壮年期であるため、社会のなかでの役

割や家庭での位置づけ、また精神面での影響についても気付かせるようにしたい。

学生が患者の状態変化に対応できないことが予測されるため、リアリティショックを和らげなが

ら、役割モデルを通して急性期の看護展開を学ばせたい。

今回の実習で強調したい内容や指導にあたって留意したいことは次のことである。

(1)急性期患者の状態変化と学習内容を関連させて理解できるように、毎日のカンファレンスの時

間を活用し、振り返りをする。

(2)身体面、心理面だけでなく、社会面に目を向けるよう助言する。

(3)臨地実習でしか経験できないことは、できる限り経験できるよう調整する。

(4)共に実施すること、役割モデルとなることを意識する。

(5)悪性疾患に対する患者・家族の不安や思いを学び、共感的な態度で援助ができるようにしたい。

(6)患者の立場に立ってストーマ造設術を受けた患者の精神的援助が考えられるようにしたい。

(7)本実習で学生が主体となって看護の実践をすることにより、看護の喜びや達成感が感じられる

ように指導者として関わる。

(8)周術期一連の経過を通して、手術室実習で他職種の連携や薬剤師・管理栄養士による指導など

について学習し、チーム医療の重要性や看護師の役割が理解できるようにする。

(9)カンファレンスやグループ学習などを取り入れ、学習の共有化を図るとともに、司会やリーダ

ーの役割も経験し、自分の考えや意見を明確に述べられるようにする。

Ⅲ.指導案

1.週案

1)実習1週目(2 月 17 日~2 月 21 日)

【指導目的】対象患者を理解し問題点が抽出でき、看護計画の立案、実施ができる。

週 指導目標(学習目標) 指導内容(学習内容) 指導方法・留意点

①病棟の特徴や構

造、一日の流れを

把握する。

☆病棟オリエンテーション

・病棟の構造と設備

・看護体制、看護方式

・入院患者の特徴

・物品の場所

・病棟の週間予定、日課

・記録物の取り扱い

・医療廃棄物の取り扱い

・避難経路

・外科病棟の特徴を踏まえたオリエ

ンテーションを行う。

・学生がリラックスできるような雰

囲気を作る。

・分からないことはいつでも質問す

るよう伝える。

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②壮年期の特徴をふ

まえ、受け持ち患

者を身体的・精神

的・社会的側面か

ら統合的に理解で

きる。

☆入院時アナムネーゼ聴取

・現病歴、既往歴

・入院前の生活習慣

※食生活、嗜好品

・家族構成、社会的役割

※生計者、経済的問題、

家族の不安、

仕事について

・告知、病状説明の内容

・精神面

※疾患に対する理解度や不安

入院生活について

・受け持ち患者に学生を紹介し、そ

の場に居やすい環境を作る。

・患者に対するプライバシーの配慮

について、役割モデルとなって示す。

・社会面にも目を向ける事ができる

よう助言する。

③手術前日から術後

2日目までの経過

を理解できる。

☆術前オリエンテーション

・手術前後のスケジュール

・手術の流れ

・禁煙の状況、排痰法

・絶飲食の説明

☆術前の看護

・下剤内服、便の状態確認

・胃管挿入

・患者、家族の精神面への配慮

☆手術の見学

・申し送りの内容

・術中の患者の状態、管理の方法

※麻酔の導入時、覚醒時

・プライバシーの配慮

・麻酔侵襲、手術侵襲

・手術に関係している職種

☆術後の看護

・病棟帰室時の状態観察

・術後の回復経過・合併症

・ストーマの受け入れ

・看護師によるストーマ管理

・手術前後の患者の状態がイメージ

できたか口頭で確認する。

・事前学習の確認と不足部分へのア

ドバイスをする。

・病棟以外への連絡調整。

・術後合併症や観察項目の理解につ

いて質問し確認する。

④情報をアセスメン

トして看護問題を

抽出し、患者の状

態に合った計画を

立案できる。

・アセスメント

※情報の意味づけは正確か

※身体面、精神面、社会面

・看護問題、計画

・優先順位

・受け持ち患者について全体像把握

の確認をする。

・看護問題や計画の方向性が間違っ

ていないかどうか、適宜確認する。

・学生の思考過程を聞く。

⑤立案した計画を、

患者の状態に合わせ

て実施できる。

☆術後の観察、援助

・全身状態の観察

・術後合併症予防

・苦痛緩和の援助

・早期離床への援助

・患者、家族への精神面の援助

・手術後の観察、援助は看護師とと

もに行う。

・ルート、ドレーンに注意しながら、

安全、安楽に行えるよう指導する。

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2)実習2週目(2 月 24 日~2 月 28 日)

【指導目的】患者の状態に合わせた看護計画の評価、修正ができる。

週 指導目標(学習目標) 指導内容(学習内容) 指導方法・留意点

①術後の全身状態の

経過が、精神的影

響も考慮して観察

できる。

・バイタルサイン

・創部の状態、創痛

・腹部症状の観察

・食事(内容、摂取量)

・排便

・検査データ

・ストーマ

・患者、家族の訴え

・学生に主体的に実施させ、情報を

アセスメント出来るよう助言する。

・既習知識を確認し、患者の状態と

結びつけて考えられるように助言す

る。

・観察のポイントを質問し、経過と

ずれがあれば助言する。

・精神面に配慮することが出来るよ

う助言する。

②立案した計画を患

者の状態に合わせ

て実施し、評価・

修正ができる。

・実習計画の確認

・看護計画の実施

・実施後の振り返り

・ストーマの管理(セルフケア)

・優先度が考慮できているかを確認

し、できていなければ、ともに考え

修正していく。

・一緒に援助し、その後振り返りの

機会を作る。

③チーム医療の重要

性や看護師の役割

が理解できる。

・生活指導

・食事指導(管理栄養士)

・薬剤指導(薬剤師)

・他職種が関係している援助には参

加できるよう調整する。

・チーム間の連携の場面を見学し、

それぞれの役割が理解できるように

する。

④中間カンファレン

スに積極的に参加

できる。

・カンファレンスの記録物

・グループメンバーそれぞれが、受

け持ち患者の術後経過、看護計画を

まとめて発表する。

・学生の発表を聞く時の態度に注意

する。

・学生の思いが言葉になるように関

わる。

・患者の状態に適した助言をする。

・今後の実習が充実するよう、疑問

点や問題点について話し合う。

3)実習3週目(3 月 3 日~3 月 7 日)

【指導目的】実施した看護を振り返り学びを共有することで今後の意欲につなげる。

週 指導目標(学習目標) 指導内容(学習内容) 指導方法・留意点

①退院への留意点に

ついて理解でき

る。

・患者のもつ価値観、生活対象の健

康レベルを尊重した指導方法

・社会的側面

・退院後家族の協力の必要性

・定期受診の必要性を説明

・ストーマの管理

※パウチ交換

スキンケア

トラブル時の対処方法

・栄養士による栄養指導

・患者のもつ価値観や生活歴も尊重

しながら指導できるよう助言する。

・社会的側面への配慮が出来るよう、

助言する。(仕事復帰)

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②実施した援助を振

り返り、看護計画

の評価ができる。

・患者の状態に合わせた看護計画の

立案・実施・修正

・目標達成度の判断、援助行為の振

り返り、評価

・患者や家族の反応、観察事項など

から目標の達成度を判断する事を指

導する。

③カンファレンスを

通して急性期での

学びを共に有し、

今後の課題を明ら

かにする。

・看護過程を展開する事によって、

学び、感じたことを学生間で共有す

る。

・実習目標達成度の自己評価

・自己の今後の課題の明確化

・今回の実習を乗り越えたことを褒

める。

・実習を通して嬉しかったこと、分

かったことを発表する事で看護の喜

びを再認識させ、次の実習への意欲

に繋がるような、声かけを行う。

2.日案

実習第 1 週 3 日目(2 月 19 日(水))手術当日

【指導目的】

手術前後の全身状態の観察ができ、身体的、心理的変化を理解することができる。

【指導目標】

(1)バイタルサインの測定や術前術後の全身状態の観察ができ、報告できる。

(2)術後に考えられる問題を予測し、合併症の予防・早期発見の必要性を理解できる。

(3)チーム医療における病棟・手術室の看護師と他職種の役割が理解できる。

時間 指導内容 指導方法・留意点 評価の視点

8:30 申し送りに参加

・術前の予定を確認する。

・申し送り内容から、患者の現

在の状態を把握するように助

言する。

・カルテ・看護記録からの情報

収集を促す。

・メモを取っているか。

・必要な情報がとれているか。

8:45 本日の行動計画の発表

・スタッフの前で行動計画を発

表してもらう。

・手術当日の予定を把握しており、

行動計画に反映されているか。

・今の患者の思いを述べることが

できるか。

9:00

バイタルサイン測定

観察

排尿を促す

術衣に更衣する

胃管挿入

コミュニケーション

報告

・看護師とともに実施する。

※バイタル測定は一人で

実施する。

※胃管挿入見学はポイン

トを説明しながら行う。

・術前の精神状態はどうか。

・リラックスできるようコミュ

ニケーションを促す。

・ポイント(チューブ挿入の長さ、

挿入後の確認事項など )を理解し

ているか。

・正確に測定し、報告できるか。

・心理状態に配慮したコミュニケ

ーションがとれているか。

・患者との関係はどうか。

・術前処置の根拠が分かるか。

9:55 手術室搬入 ・患者に付き添う。

・申し送りを見学する。

・申し送り内容をメモしているか。

・患者の心理状態に配慮している

か。

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10:00

手術の見学(手術室)

※手術中に1時間休憩

をとる

・手術室との連絡調整。

・学生の居場所の確保。

・患者の状態、麻酔、手術内容

の見学。

・清潔、不潔に注意する。

・病棟帰室に間に合うよう、学

生に更衣をさせる。

・気分不良などあれば、見学を

中断する。

・清潔、不潔に注意して見学でき

る。

14:00 病室帰室 ・手術直後の一連の処置や観察

をともに行う。

※麻酔の覚醒状態

※創部の観察

※ドレーン、ラインなど

※バイタルサイン

※腸蠕動音、呼吸音

※痛みの程度

・バイタル測定など一人ででき

ることは実施させる。

・学生の心理状態を観察する。

・事後指導

・正確に測定できているか。

・患者の状態を冷静に観察できて

いるか。

・アセスメントは的確か。

・事前学習はできているか。

・異常正常を理解した上で観察し

ているか。

・声かけはできているか。

15:00 術後状態確認 ・ともに訪室し、学生に術後状

態の観察をさせる。

・不足しているところは、その

場で確認する。

※麻酔の覚醒状態

・できる範囲で学生にさせ、自

信に繋げる。

・観察項目に不足はないか。

・正確に観察できているか。

・アセスメントは的確か。

・前回の観察が反映されているか。

・声かけはできているか。

15:30 術後状態確認

報告

・一人で、術後状態の観察をさ

せる。

・正確に観察できているか。

・情報を整理して報告できる。

16:00

学生カンファレンス ・学習内容を共有し、知識を深

める。

・学生の言動をすぐに評価した

り、批判したりせずに最後まで

学生の意見を傾聴する。その中

から、学生が周術期患者の心理

的・身体的変化に気付けるよう

助言する。

・本日の行動計画は適切であった

か。

・適切でなかったことはどうすれ

ば良いか。

・実施した援助方法は適切である

か。

Ⅳ.評価基準

実習の評価は実習記録、評価表、指導者による観察、面接をもとに総合的に評価する。

評価項目、評価基準は「成人看護学(急性期実習)評価表」として、末頁に掲載する。

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Ⅴ.看護場面

【看護場面】実習 3 日目 喜多さん OP 当日(帰室直後)

学生 臨地指導者

考え・気持ち 言動 言動 考え・留意点

『 う わ ぁ ~ 。 え

っ!?喜多さん、う

なってる。なんか怖

い・・・。』

『私、どうしたらい

いん?』

OP 直後の喜多さんを見て

動揺している。

表情はこわばり、手・足が

すくんだ様子。

それ以上の言葉はみられ

ず。

「まず、喜多さんの意識レ

ベルの確認とバイタルサ

インを測定する?」

「喜多さんに声をかけし

ながらね。」

*学生の表情・動作

を観察。

*急激な変化に伴う

学生の心情を想定す

る。

*指導者が声をか

け、何をすれば良い

か導く。

10:00 手術室搬入 ※OP 前までの学生との関係は良好。

OP 前の喜多さん

14:00 手術室より病棟に帰室

「行ってくる。

悪いもん全部、

とってくるわなぁ。」

頑張ってください。

喜多さん、笑顔だ。

元気になって帰って

きてほしいなぁ。

手術直後

病室にて

「喜多さん・・・・。」

ちょっと表情が固い

な。手術直後の様子を

見て驚いているかな。

まずは何をすべきか

声をかけよう。

う・・・、

う・・・、

う・・・

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『喜多さんに触れて

も 大 丈 夫 な の か

な・・・。いつもと同じ

ように測定して良い

のかな。』

『やばい・・・。

どうしよう。』

『わたし、熱も測れ

なかった・・・。』

『あっ・・・メモ・・・

バイタル書かな。』

渡されるもどうして良いか

わからず、手が震える。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・はい。」

メモ帳を出し、書きとめる。

「・・はい。」

「喜多さん、分かります

か?手術終わって病室に

帰ってきましたよ。」

学生に体温計を渡す。

「いける?」

「貸してね。」

「バイタル言うから書き

留めてよ。」

術直後のその他の観察項

目について、患者に声をか

け、説明しながら行う。

*役割モデルを示

す。

*学生の態度・表情

から実施可能か判断

し、計画の修正を図

る。

*役割を与え、チー

ムメンバーとして患

者に関われる環境を

提供する。

*学生に何もできな

かったと思わせない

配慮をする。

*患者への声かけ、

説明が、学生への説

明になるようにす

る。

*メモをとっている

か確認する。

・麻酔覚醒の状態

・バイタルサイン

・術後合併症の観察

・創部の状態

・ドレーン挿入の位置

・排液の確認

・全身状態の観察

・ストーマの状態

・疼痛の有無

・感覚麻痺の有無

・間欠的空気圧迫装置

・モニター類装着

だいぶ、緊張して

いるみたい。わた

しが、やってみせ

るか。

固まっている・・・。

どうしたらいいか

分からないか。今

は、バイタル測定

は難しいかな。

何をしたらよいか

言 っ て あ げ な い

と。

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『看護師さん、いろ

いろしてるなぁ。

あ~喜多さん大丈夫

かな。』

『しまった。傍観者

になっていた。看護

師さんの動きを見て

勉強しないと。』

見学しているが、手は動い

ていない。

「あっ・・はい。」

一生懸命な表情で

書きとめながら、看護師や

患者の様子を見る。

退室

カンファレンスルームへ行

く。

「バイタル以外にも

メモってね。」

その他の観察を終え、退室

する。

学生とともに、カンファレ

ンスルームへ移動する。

学生 臨地指導者

考え・気持ち 言動 言動 考え・留意点

『ホンマに怖かったな

ぁ。イメージと違っ

た。』

うららは緊張した様

子。

「はい。怖かったです。

喜多さん、うなってい

たし・・・。」

「何をして良いのか分

からなかったです。」

「 い け る ? 緊 張 し

た?」

「初めてのことは緊張

するよね。」

「でも看護師として、

見たりすることはたく

さんあるだよ。」

*学生が発言しやすい

雰囲気をつくる。

*学生の心情を理解し

共感した態度を取る。

カンファレンス

ルーム

あら?バイタルだ

け書いて手が止ま

ってる。他の観察

項目にも目を向け

てほしい。メモを

促そう。

まだ緊張してい

るみたいだな。

ゆっくり、確

認しよう。

カンファレン

スルームでも

行こうかな。

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『なんか、落ち着いて

きたかな。』

『他にか・・・。

えっと、何してたっ

け?』

『やっぱり来たか。

根拠・・・。

勉強したんだよね。』

=深呼吸=

少し表情が和らぐ。

「はい。体温は 36.8℃、

脈は 90 回 /分、血圧

130/80、SpO2100%で

した。尿量は 300ml、

ドレーンの排液は 50ml

でした。胃管からは少

量の排液がありまし

た。」

「胸部と腹部の聴診と

創部・ドレーンの観察

をしていました。」

「創部やドレーンを見

るのは術後出血がない

かどうかを見るためで

す。」

「肺の聴診は、術後合

「よし、一旦深呼吸し

ようか。」

=深呼吸=

「じゃあ、記録したこ

とを言ってくれる?」

「他に看護師がしてい

たことは?」

「どうしてそういうの

を見てたと思う?」

*リラックスを促す。

*情報の整理の確認を

する。

*事前学習の確認をす

る。

ちょっとリラッ

クスしてもらわ

ないと、次に進ま

ないな。

ちょっと落ち着

いたかな。

じゃあ、確認し

ていこうかな。

バイタルは、聞き取

ってメモできてい

るな。他のことは見

れているかな。

やったことは見

れているな。

根拠はわかって

いるかな。

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『術後イレウスって、

もしかして今じゃな

い?』

『ノートを見たら分か

るかも・・・出しても

いいかな。』

『えっ、何だろう??』

『宿題が出た・・・。

明日、答えられるよう

に勉強しとかないと。』

併症の無気肺を早期発

見するためで、腹部は

術後のイレウスを起こ

す可能性があるので確

認する必要がありま

す。」

「・・・えっと・・・。」

ポケットあたりを触っ

ている。

自分の勉強してきたノ

ートを見る。

「術後 2~3日頃に発生

しやすいです。」

「・・・・・。」

「はい。」

「ちゃんと勉強してい

るね。でも、術後イレ

ウスって、いつから起

きる?」

「ノート見てもいい

よ。」

「そうだね。だから今、

聴診する意味はイレウ

スとは違うかな。」

「じゃあ、OP 直後で聴

診 す る 理 由 は 分 か

る?」

「術直後だと麻酔・手

術侵襲の影響は大きい

んだよ。喜多さんは、

腸の OP やし・・・。

いろんな事を関連づけ

て学習してきてね。明

日、聞かせてよ。」

*不十分な点やズレを

修正する。

*術後の変化を経時的

に観ていく大切さを伝

える。

*不足している部分を

確認する。

*自己学習を促す。

勉強してる。ほめ

とこう。でもイレ

ウスはちょっとず

れているか。

手術直後の腹部聴

診と手術侵襲や麻

酔などとが、つなが

ってないみたいだ

な。確認しよう。

考える力、アセスメ

ントの力をつけてほ

しい。ちょっと勉強

してきてもらおう。

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『えっ!?他にもある

んだ!?』

『えっと・・・確か・・・。

「喜多さん」って呼ん

でたような。』

『なるほど。

ひとつひとつ、意味が

あるんだな。』

「・・・・・・・。」

「・・・・喜多さんに

声かけをしていまし

た。」

「意識の確認です。」

「麻酔から醒めている

かをみるためです。」

「他にも手術直後の観

察で、大切なポイント

があるんだけど分かる

かなぁ・・・。」

「看護師が喜多さんに

最初にしてたこと思い

出せる?」

「声かけで何を確認し

てたのかなぁ?」

「そうだね。何で意識

の確認する?」

「そう。覚醒が十分で

ない時には、舌根沈下

や呼吸抑制が起きたり

することがあるんだ

よ。」

「看護は根拠があって

展開されるから、次、

羽野さんが訪室する時

に今確認したこと、知

ったことを活かして実

施してみて。私も一緒

に行くから。」

*足りない知識を捕足

する。

*次にどうするのか

導き出せるように働き

かける。

出てこないか・・・。

ヒントを出して、

導いていこうかな。

学生が実施でき

ることを増やし

て、充実したと思

ってもらいたい。

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学生 臨地指導者

考え・気持ち 言動 言動 考え・留意点

『根拠が分かったら観

察の意味が分かるか

ら、なんかスムーズに

出来たな。喜多さんが

順調に回復するよう

に、私に出来ることは

何か考えよう!勉強頑

張るぞ!!』

『忙しい中でも私(学

生)のこと気にかけて

指導してくれた。

こんな看護師さんがい

る所で私も働きたい。』

『あんな看護師さんに

なりたい。』

「ありがとうございま

す。指導を受けて観察

の意味がより分かって

実施することができま

した。看護師さんが観

察・アセスメントや援

助をしているから、喜

多さんの異常早期発見

や回復に繋がるんです

ね。」

「明日の実習も頑張り

ます。よろしくお願い

します。」

「落ち着いて観察でき

ていたね。明日は術後 1

日目。喜多さんの状態

は変化しているから、

観察や援助のポイント

を復習して明日も一緒

に実施していきましょ

うね。」

*学生をねぎらい、次

の意欲を引き出す

うららは、喜多さんの病室へ訪室。

帰室 1 時間後の観察を看護師の見守りにて実施できた。

まずまず、うまく出来

たな。やっぱり根拠が

分かれば視点がズレ

ないな。手術直後のシ

ョックは問題ないみ

たいだし、よかった。

明日は、術後1日目の

観察が出来るよう勉

強してきてもらおう。

やる気が伝わっ

てくるなぁ。

よかった。

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Ⅵ.考察

今回取り上げた場面では、うららはリアリティショックを受け、強い緊張状態に陥ってしまった。

急性期(周術期)にある患者の状態は身体的・精神的に変動が著しく、実際に学生は戸惑い自分の予

定通りに行動することができない可能性がある。たとえ術中を見学していても、術後の状態をイメー

ジするのは難しいと考えられる。また病態の展開が早く、多くの学生が実際の援助ができないままに

臨地実習を終了してしまうため、看護を行ったという実感ができにくい。よって指導者は、それらを

あらかじめ予測し、看護を行った実感が得られるように、学生と関わりを持たなければならない。

ここでは、うららに役割を与えることで、傍観者ではなく看護チームの一員として患者に携わって

いるという体験を提供し、更には指導者が役割モデルを示すことができた。またその後、フィードバ

ックで、知識・技術の確認をした後、うららが主体になって実施できる機会を作った。

様々な看護場面で看護行為を行う看護師を見ることで、学生は臨地実習でなければ学ぶことはでき

ない臨床の知を学ぶことができるとある 3)。今回の場面では、看護チームの一員として患者に携わる

体験により、「何もできなかった」という思いを軽減する事ができたと言える。また、看護師が役割モ

デルを示したことは、学生に術直後の看護をイメージしやすくしたと考えられる。そして、その後の

フィードバックにより、既習内容と関連付けることができ、看護行為の根拠を再確認できた。一連の

関わりが、学生の主体的な行動への動機付けとなり、さらには学生の自信にも繋がったと考える。

荒木らは「学生は、わずかなつまずきで劣等感を抱いたり、自己嫌悪に陥ったりする反面、わずか

なきっかけで優越感を感じたり達成感を得たりする」と述べている 2)。指導者は、学生のレディネス

や個別性を考慮し、学生のつまずきに気付き配慮する必要がある。そして、学生が今後の実習への意

欲を高め、看護の喜び・充実感を得られるよう指導していく必要がある。

おわりに

今回、実際に実習指導案を作成して、学生の学びを深めるためには、実習指導者の意図的な関わり

がいかに大切かが分かった。この指導案のように、学生のことを思い、考えられる実習指導者になり

たいと思う。

現実は日常の看護業務を行いながらの学生指導となり、達成感や満足感が得られるような実習指導

ができていないかもしれない。しかし、看護学生は将来、自分たちの仲間になることを忘れず、看護

の質を上げるためにも、効果的な実習指導をする努力を続けなければならないと思う。

【謝辞】

今回、成人看護学実習指導案作成にあたり、ご指導・ご助言いただきました、NHO 東徳島医療セ

ンターの工藤美恵先生をはじめ、講義していただきました諸先生方、担当いただきました看護協会の

方々に深く感謝いたします。

引用・参考文献

1)明石惠子:急性期(周手術期)看護実習の“困難”をどう乗り越えるか,看護展望,Vol.26,No.11,

17-22,2001

2)荒木玲子,蘇原孝枝:急性期実習における学生たちの達成感について,足利短期大学研究紀要,第

26 巻,33-36,2006

3)藤岡完治ほか:学生とともに創る臨床実習指導ワークブック,第 2 版 10 刷,医学書院,2011

4)安酸史子,鈴木純恵,吉田澄恵:ナーシング・グラフィカ 22,成人看護学―成人看護学概論,メディ

カ出版,2009

5)佐藤みつ子,宇佐美千恵子,青木康子:看護教育における授業計画,第 4 版,医学書院,2011