遠赤外線・近赤外線遠赤外線・近赤外線 1.赤外線とは 1.1 赤外線の定義 原子あるいは分子の熱運動により発生するので 文献①によれば、赤外線の定義は「赤色光0.74μm-波長1000μm
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Oct. 2005赤外線用カメラレンズの設計ノウハウ
株式会社ジェネシア
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CodeVを用いた赤外線用カメラレンズの設計手法について
2005年10月20日株式会社ジェネシア 池田優二
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--- 電磁波の一種波長帯 0.8μm ~ 1000μm
0.そもそも、赤外線とは?(赤外線の特長)
江藤秀雄他(1982) 「放射線の防護」 より
--- 赤外線の性質目に見えない
透過力が強い(散乱されにくい) 熱線として温度(=T)をもつ物質から放射される
B(λ)dλ = 2hc2/λ5 * 1/ (exp(hc/kTλ) –1 ) * dλ (プランク輻射)
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1. 赤外線カメラの用途
医療分野 サーモグラフィ (放射性) 自動車分野 ナイトビジョン (不可視性、透過性、放射性)
防犯用など 暗視野カメラ (不可視性、放射性)気象分野 水蒸気/雲カメラ (放射性)
軍事分野 高分解能人検知カメラ (不可視性、放射性、透過性)
などなど… 用途はかなり広い
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人の検知に使われることが多い、なぜか?
--- 人の体温 ~ 300 K (36℃) --- 肌の放射率ε~1 (ほぼ黒体とみなせる)
⇒ 10μm付近に放射のピークがある ウィーンの偏移則 T ×λ = 3000 [K μm]
人の皮膚からの放射(鶴田匡夫:第4光の鉛筆より抜粋 元論文 Hardy, 1954)
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2. 赤外カメラの設計上、製造上の難点
□ 使用可能なレンズ材が希少 よい設計解を得るのが困難 ガラスに比較して加工法そのものが確立していない 取り扱い注意な材料も (毒性、潮解性など)
□ 検査がしづらい(目に見えないので)
□ 可視域に比較して明るい光学系が求められることがある 光学系、検知器の効率が低い 解像度が低い エアリディスク径=1.22λF
□ レンズもしくは、鏡筒そのものがノイズ源となることがある 冷却/真空技術が必要
熱、構造も考慮したシステム設計が必要になる
そして、これらを解決するような知識や、ノウハウ、経験に裏打ちされた洞察力が求められる
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3. 赤外線用カメラレンズの設計
と、いうわけで、、、本日は、“CodeVを使った赤外カメラの設計の一例”を紹介します。下記仕様のレンズについて、実際の設計過程をご一緒に見ていくことで、赤外線カメラの設計に関連するコツやノウハウのヒントを掴んでいただけると思います。
--- 赤外線カメラ 光学系仕様書 --- 波長帯 : 8μm~12μm 画角 : 全角 20度
F値 : 1.0 結像性能 : RMS スポット径 30um以内
レンズ枚数 : 3枚以内 (非球面も含む)検知器 : MCT単素子受光器
(スキャンミラーを使って、二次元画像を取得) 光学系サイズ : 20mm3以内
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レンズ材は希少 8~12um帯を透過する材料… Ge、ZnSe、KRS5... 用途や加工法等に併せて使い分ける必要あり
例) ・可視光で検査をしたい ⇒ 可視透過材ZnSeを 量産性/コストを意識 ⇒ プレス可能な低移転温度 (Tg)のものを
4.1 レンズ材料の選定
→ 本設計では、VITRON社(日本代理店:ジェネシア)
のIG2, IG3, IG4, IG5, IG6 から選択 ・プレスにより製作を意識 ・GeやZnSe以外の可能性 を意識
IR4の透過率曲線(VITRON社カタログより)
IG4
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PRV PWL 12000.0 11000.0 10000.0 9000.0 8000.0'IG2' 2.4882 2.493 2.4967 2.4996 2.5024'IG3' 2.781 2.7841 2.787 2.7896 2.7919'IG4' 2.6029 2.6059 2.6084 2.6105 2.6121'IG5' 2.5948 2.5996 2.6038 2.6075 2.6105'IG6' 2.7721 2.7747 2.7775 2.7803 2.7831
END
← 波長を入力← 材料名と 屈折率を入力
プライベートガラス機能‘PRV’を使って屈折率データを入力
n – νマップ
IG2
IG5
IG4
IG3IG6 屈折率-アッベ数図(n-μマップ)を作成
光学ガラス(可視域)のn-νマップ
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4.2 設計---最適化(“aut”機能)
詳細は省略(2004年ORAセミナ資料等を参照ください)設計結果:
5mm
IG4 IG5
IG4絞り
スキャンミラー(ズーム機能“ZOO”で実現)
10度
検知器(冷却環境下)
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光学性能(結像性能)
画角0度 (ストレール比:0.99)
画角5度 (ストレール比:0.99)
画角10度 (ストレール比:0.97)
画角15度 (ストレール比:0.94)
画角20度 (ストレール比:0.85)
*スポットダイアグラムボックスの大きさは30um×30um
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4.3 ナルシサス解析
ナルシサス現象: スキャンミラーを有する熱センサーにおいて、 スキャンミラーの角度によってバックグラウンド光 が変化する現象。S/Nを低下させる原因になる。 ⇒ ナルシサス解析(“NAR”)
codeVリファレンスマニュアルより抜粋
熱的背景光 小 熱的背景光 大
(a) 視野角 0度 検知器は自分自身の放射を見る
(b) 視野角 off-axis検知器は外部の熱的背景光を見る
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narcld s13scn s8ban 1000 15000rps s2..5 0.015pvt s8 ade 6 0 1go
N A R C I S S U S I N D U C E D T E M P E R A T U R E C H A N G E( units = deg. C)
-------------------------------------------------------------------------------Surface | Scan Mirror AngleNumber RPS | 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00
-------------------------------------------------------------------------------2 0.015 0.366 0.451 0.347 0.229 0.063 0.000 0.0003 0.015 0.004 0.003 0.003 0.004 0.003 0.002 0.0034 0.015 0.004 0.003 0.003 0.004 0.003 0.003 0.0035 0.015 0.941 0.940 0.528 0.000 0.000 0.000 0.000
-------------------------------------------------------------------------------Sum: 1.316 1.398 0.881 0.237 0.069 0.006 0.007
-------------------------------------------------------------------------------
解析結果
← レンズ面反射率← スペクトルバンド幅
← NITC値(℃)
← スキャンミラー角度
NITD:物体のリアル背景光に換算した ナルシサス効果による温度差異値
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4.4 透過率解析
赤外透過のレンズ材は、一般に屈折率(n)が高く、レンズ界面での反射ロスが大きい
R = (n-1)2/(n+1)2 n = 1.5 のときR= 4%n = 2.0 のときR=11%n = 4.0 のときR=36% !!
⇒ 系のトータル効率解析 (“TRA”解析)
検出限界のみならず、ゴースト/フレア、ナルシサス現象にも影響
⇒ ゴースト解析 (“GHO”解析)
反射防止膜の設計/解析⇒ 多層膜設計/解析
(“MUL”環境)
TRA
GHO MUL
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FIELD (X,Y)=( 0.00, 10.00) DEG
Surface Transmittance1 REF 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000
2 REF 0.9609 0.9708 0.9756 0.9702 0.9475 0.9650ABS 1.0000* 1.0000* 1.0000* 1.0000* 1.0000* 1.0000
3 REF 0.9499 0.9624 0.9716 0.9730 0.9591 0.9632
4 REF 0.9512 0.9633 0.9723 0.9734 0.9592 0.9639ABS 1.0000* 1.0000* 1.0000* 1.0000* 1.0000* 1.0000
5 REF 0.9612 0.9710 0.9759 0.9705 0.9481 0.9653 ………
11 REF 0.9589 0.9695 0.9753 0.9714 0.9508 0.9652ABS 1.0000* 1.0000* 1.0000* 1.0000* 1.0000* 1.0000
12 REF 0.9599 0.9701 0.9755 0.9709 0.9493 0.9651
------------------------------------------------------------------------PRODUCT REF 0.7681 0.8219 0.8557 0.8411 0.7460 0.8065
ABS 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000
Ave Transmittance: 0.7681 0.8219 0.8557 0.8411 0.7460 0.8065
透過率解析の例: codev> tra;go
← 各面の反射率
← トータル効率
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REFL 1 REFL 2 DBFL EFL DISC PUPIL RATIO MAGNIFICATION
3 2 6.963288 -2.382516 -14.613310 0.364950 -0.238252
4 2 6.774908 -2.405560 -14.081769 0.464115 -0.240556
5 2 -21.234918 44.876913 -2.365907 0.843107 4.487691
………
ゴースト解析: codev> gho;go
•“ghost_view”マクロも有効 (視覚的イメージが得られる)
“ghost_view”マクロの結果 (反射面 S3 --- S4 )
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mulmdawl 12000 11000 10000 9000 8000ref 10000ang 0 5 10 15 20coa 0.25 0 1.45coa 0.25 0 2.20…sub 2.6inc 1.0mpl; rfl; ran 0 0.03;gosav mir_mltigo
ARコート設計/解析: codev> mul; ….; go
← R = 1%
←参照波長指定
←膜厚、材料指定
←多層膜ファイル‘*.mul’の保存
膜のレンズデータへの貼付codev> mlt s2..4 mir_mlti.mul
⇒ ‘TRA’解析へ
←基板屈折率指定
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4.5 おまけ (S/Nを極限まで高めるには…)
□ レンズや機構部品からの熱輻射を抑える必要がある。□ それには、光学系そのものを真空下で極低温まで冷却し なければならない。□ 冷却によって生じる“レンズ形状の変化”、“屈折率の変 化”、“レンズ面間隔の変化”等を考慮する必要がある。 (より具体的には、温度変化による“焦点位置変化”や “温度収差”) → 環境解析“ENV” で
□ さらに、機構部品とレンズの熱収縮率差による熱応力
が問題になることがある → 複合問題
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S/Nを極限まで高めた赤外線カメラレンズ系の事例
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5. まとめ
□ CodeVを用いた10um帯の赤外線用カメラレンズの設計例 を紹介しました。
□ 赤外線そのものが持つ特性のため、赤外線カメラの設計には、 可視光用カメラとは異なった手法やノウハウが求められます。
□ しかし、赤外線に関する正しい知見さえあれば、CodeVに実装 されている機能を組み合わせることで、多くの場合、満足のいく 設計解が得られるとも言えます。
□ とはいうものの、今後、特に検知器の感度向上や大型化に 伴い、ますます高度な光学系が求められるでしょう。きたる 需要に備えた機能追加(コールドストップ有効性解析、赤外
材料の追加、熱解析ソフトとのインターフェース等々)について も、引き続き期待しております。