Characteristics and factor analysis of visitor’s rambling ... ·...

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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.13, 2015 2 Reports of the City Planning Institute of Japan, No.13, February, 2015 * 1 学生会員・東京都市大学環境情報学部(Tokyo City University) **2 正会員・東京都市大学環境情報学部(Tokyo City University) 駅前大型商業地における回遊行動の実態と要因分析 -港北ニュータウンタウンセンター地区を対象として- Characteristics and factor analysis of visitor’s rambling activities in the large Commercial District : A case study on Town Center District of Kohoku New Town 川瀬 浩子*・高嶋 駿*・室田 昌子** Hiroko Kawase*Shun Takashima*Masako Murota** This study was made to grasp of visitor's rambling activity and to find out promoting factors about rambling activity at Kohoku New Town. We make a survey of visitor's attribute and something of the purpose in the city moreover compare two districts in Kohoku New Town. As a result, we can reveal difference that purpose of use of a shopping district. We examined the factors for the rambling activities by discriminant analysis on the basis of the above results. Keywords: Rambling activity, Kohoku New Town, The Large Commercial District 回遊行動、港北ニュータウン、駅前大型商業施設 1 .研究背景と目的 計画的に開発が進み、各施設が配置されてきたはずのニュータ ウンにおいて、昨今、果たして魅力ある中心部が形成されている のかといった疑問が提起されている。施設ごとの囲い込みが多く 行われるなか、今後は、魅力的な街づくりのために地域としてど のような一体性を持たせれば良いのか、施設同士にいかなる連携 が必要であるのかを検討するべきであると考えられる。 本研究では上記の背景を受け、広い範囲に多くの商業施設があ るタウンセンター地区において、週末のセンター北、センター南 2 箇所の回遊性の特徴や違いを把握するためのアンケート調 査を実施した。調査から得られた来街者の属性や来街実態を元に、 どのような人の回遊性が高いのかを分析する。また、特に回遊性 が高いという結果になったセンター北において、回遊性を高める ための要因について検討を行う。 2 .対象となる商業施設の特徴と研究方法 2-1 対象となる商業施設の特徴 本研究の対象地( 以下 TC 地区と いう) には、地図-1 のようにセンタ ー北、センター南駅の駅前広場を 中心にそれぞれ1 5 5 施設と10 12 3 施設、南よりに8 9 2 施設、中間地点に 6 7 2 施設の 12 の商業施設が立ち並ぶ。各商 業施設名は表-1 を参照。このなか で、 PREMIERE YOKOHAMA とサ ウスウッドは共に 2013 10 月に 開業し、本研究における回遊行動 の変化にも影響すると考えられる。 また、商業施設の中の 店舗構成は表-2 の通り。フ ァッションや、飲食、レス トラン、生活雑貨等の業種 が多くあることに変わり ないが、2 施設の開業やそ の他店舗の入れ替わりに よって、美容、健康やスポ ーツ、アウトドア、医療等 の業種が増加している。 2-2 アンケート実施方法 本研究では表-3 で示したアンケート調査を行い、来街者属性 と来街実態の現状、および北と南の回遊行動の特徴を把握し、さ らに北において、その回遊行動の要因について分析を行う。 質問項目は、①来街者の属性( 性別、居住地域、年齢、同伴者) TC 地区の利用方法( 来街目的、利用頻度、交通手段) 、③TC 【表-1 】商業施設名リスト 【地図-1 】商業施設配置地図 業種区分 店舗数 構成比 店舗数 構成比 前年比 ファッション 202 31.7% 221 31.1% 109.4% 飲食、レストラン 113 17.7% 130 18.3% 115.0% 生活雑貨 49 7.7% 57 8.0% 116.3% 食品 46 7.2% 40 5.6% 87.0% 美容、健康 37 5.8% 46 6.5% 124.3% 家具、インテリア 29 4.6% 26 3.7% 89.7% 塾、教室 20 3.1% 21 3.0% 105.0% 娯楽 10 1.6% 10 1.4% 100.0% スポーツ、アウトドア 9 1.4% 13 1.8% 144.4% 医療 8 1.3% 12 1.7% 150.0% 書店 6 0.9% 7 1.0% 116.7% 薬、ドラッグストア 6 0.9% 6 0.8% 100.0% 家電 4 0.6% 4 0.6% 100.0% 玩具 3 0.5% 3 0.4% 100.0% キッズ 3 0.5% 3 0.4% 100.0% ホームセンター 1 0.2% 1 0.1% 100.0% その他 91 14.3% 111 15.6% 122.0% 合計 637 100.0% 711 100.0% 111.6% 20132014【表-2 】商業施設内の店舗構成 地図番号 施設名 1 モザイクモール港北 都筑阪急 2 PREMIERE YOKOHAMA 3 ショッピングタウンあいたい 4 Yotsubako 5 ノースポート・モール 6 港北みなも 7 ルララこうほく 8 パインクリエイトビル 9 ホームセンターコーナン港北センター南店 10 港北TOKYU S.C. 11 サウスウッド 12 キーサウス - 147 -

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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.13, 2015 年 2 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No.13, February, 2015

* 1 学生会員・東京都市大学環境情報学部(Tokyo City University) **2 正会員・東京都市大学環境情報学部(Tokyo City University)

駅前大型商業地における回遊行動の実態と要因分析

-港北ニュータウンタウンセンター地区を対象として-

Characteristics and factor analysis of visitor’s rambling activities in the large Commercial District : A case study on Town Center District of Kohoku New Town

川瀬 浩子*・高嶋 駿*・室田 昌子**

Hiroko Kawase*・Shun Takashima*・Masako Murota**

This study was made to grasp of visitor's rambling activity and to find out promoting factors about rambling activity at Kohoku New Town. We make a survey of visitor's attribute and something of the purpose in the city moreover compare two districts in Kohoku New Town. As a result, we can reveal difference that purpose of use of a shopping district. We examined the factors for the rambling activities by discriminant analysis on the basis of the above results. Keywords: Rambling activity, Kohoku New Town, The Large Commercial District

回遊行動、港北ニュータウン、駅前大型商業施設

1.研究背景と目的 計画的に開発が進み、各施設が配置されてきたはずのニュータ

ウンにおいて、昨今、果たして魅力ある中心部が形成されている

のかといった疑問が提起されている。施設ごとの囲い込みが多く

行われるなか、今後は、魅力的な街づくりのために地域としてど

のような一体性を持たせれば良いのか、施設同士にいかなる連携

が必要であるのかを検討するべきであると考えられる。

本研究では上記の背景を受け、広い範囲に多くの商業施設があ

るタウンセンター地区において、週末のセンター北、センター南

の 2 箇所の回遊性の特徴や違いを把握するためのアンケート調

査を実施した。調査から得られた来街者の属性や来街実態を元に、

どのような人の回遊性が高いのかを分析する。また、特に回遊性

が高いという結果になったセンター北において、回遊性を高める

ための要因について検討を行う。

2.対象となる商業施設の特徴と研究方法 2-1.対象となる商業施設の特徴

本研究の対象地(以下 TC 地区と

いう)には、地図-1のようにセンタ

ー北、センター南駅の駅前広場を

中心にそれぞれ1~5の5施設と10

~12の3施設、南よりに8、9の2

施設、中間地点に6、7の2施設の

計12の商業施設が立ち並ぶ。各商

業施設名は表-1 を参照。このなか

で、PREMIERE YOKOHAMAとサ

ウスウッドは共に 2013 年 10 月に

開業し、本研究における回遊行動

の変化にも影響すると考えられる。

また、商業施設の中の

店舗構成は表-2の通り。フ

ァッションや、飲食、レス

トラン、生活雑貨等の業種

が多くあることに変わり

ないが、2 施設の開業やそ

の他店舗の入れ替わりに

よって、美容、健康やスポ

ーツ、アウトドア、医療等

の業種が増加している。

2-2.アンケート実施方法

本研究では表-3 で示したアンケート調査を行い、来街者属性

と来街実態の現状、および北と南の回遊行動の特徴を把握し、さ

らに北において、その回遊行動の要因について分析を行う。

質問項目は、①来街者の属性(性別、居住地域、年齢、同伴者)、

②TC地区の利用方法(来街目的、利用頻度、交通手段)、③TC地

【表-1】商業施設名リスト

【地図-1】商業施設配置地図

業種区分 店舗数 構成比 店舗数 構成比 前年比

ファッション 202 31.7% 221 31.1% 109.4%飲食、レストラン 113 17.7% 130 18.3% 115.0%生活雑貨 49 7.7% 57 8.0% 116.3%食品 46 7.2% 40 5.6% 87.0%美容、健康 37 5.8% 46 6.5% 124.3%家具、インテリア 29 4.6% 26 3.7% 89.7%塾、教室 20 3.1% 21 3.0% 105.0%娯楽 10 1.6% 10 1.4% 100.0%スポーツ、アウトドア 9 1.4% 13 1.8% 144.4%医療 8 1.3% 12 1.7% 150.0%書店 6 0.9% 7 1.0% 116.7%薬、ドラッグストア 6 0.9% 6 0.8% 100.0%家電 4 0.6% 4 0.6% 100.0%玩具 3 0.5% 3 0.4% 100.0%キッズ 3 0.5% 3 0.4% 100.0%ホームセンター 1 0.2% 1 0.1% 100.0%その他 91 14.3% 111 15.6% 122.0%合計 637 100.0% 711 100.0% 111.6%

2013年 2014年

【表-2】商業施設内の店舗構成

地図番号 施設名

1 モザイクモール港北 都筑阪急

2 PREMIERE YOKOHAMA

3 ショッピングタウンあいたい

4 Yotsubako

5 ノースポート・モール

6 港北みなも

7 ルララこうほく

8 パインクリエイトビル

9 ホームセンターコーナン港北センター南店

10 港北TOKYU S.C.

11 サウスウッド

12 キーサウス

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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.13, 2015 年 2 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No.13, February, 2015

区の利用実態(利用した商業施設と業種、滞在時間)、④最もよく

行く商業地の利用方法と利用実態、⑤地域評価、⑥その他(最も

よく行く商業地との使い分け、TC地区の印象)の6項目である。

分析では主に①~③のデータを利用する。また、回答者の属性

と来街実態を比較する際に利用するデータは、同様の方法で実施

された表-4の2013年調査のもの。ただし、質問項目は①~③と

⑥となっている。なお、本論文におけるセンター北、センター南

は、それぞれアンケートを実施した調査地を指している。

調査地8月9日 (土) 8月2日 (土)

8月17日 (日) 9月7日 (日)9月13日 (土) 8月10日 (日)9月14日 (日) 8月16日 (土)8月3日 (日) 8月23日 (土)9月6日 (土) 8月24日 (日)

10月12日 (日)センター北駅前広場 10月4日 (土)

回収数調査目的調査方法調査時間

*この調査は、論文「駅前大型商業地における来街者の地域評価と回遊に関する分析~港北ニュータウンタウンセンター地区を対象として~」と共通の調査である。

調査場所/調査日

商業施設「1」商業施設「10」

センター北駅構内

ヒアリング形式によるアンケート調査10時~17時

商業地における来街者の属性、回遊行動、地域評価の実態把握

センター北 センター南

361

センター南駅構内

商業施設「11」

322

調査地

10月12日 (土)10月13日 (日)10月19日 (土)10月20日 (日)8月25日 (日)9月1日 (日)

回収数調査時間

調査場所/調査日

9月28日 (土)

10月6日 (日)商業施設「10」

センター南駅前広場

商業施設「1」

9月22日 (日)

センター南

27252710時~15時

センター北駅前広場

センター北

3.アンケート調査の結果 3-1.回答者の属性

表-5 は、調査の回答者の属性をまとめたものである。全体を

通して都筑区内在住の 30~40 代の来街者が多いことが分かる。

調査地による違いは見られないが、年による比較では、同伴者に

違いが見られた。

3-2.回答者の来街実態

表-6では、2回の調査の回答者の来街実態をまとめた。全体を

通して、来街目的はショッピングや食事、来街頻度は週1回以上、

月1~3回というケースが多い。調査地による違いは見られない

が、年による比較では2014年は滞在時間がセンター北で121分

以上、センター南で91分~120分とかなり長いことがわかる。

3-3.回答者の属性と来街実態のまとめ

表-6 より 2013 年から 2014 年にかけて、調査地に関わらず滞

在時間が伸びたということが分かる。これは回答者の偏りを防ぐ

ために調査地を変更したことにより、滞在時間の長い電車利用の

回答者の割合が大幅に増加したことが理由の一つだと考えられ

る。その人数は前年比で、センター北においては1.9倍、センタ

ー南においては3.9倍となっている。さらに、これらの回答者の

平均滞在時間も 2013 年から 2014 年にかけて、北で 70.2 分から

85.5分、南で81.4分から89.1分と伸びている。

4.回遊行動の分析 4-1.回答者の施設間回遊

表-7は2014年の回答者の回遊施設数とその平均をまとめたも

のである。なお、本研究において回遊とは2つ以上の商業施設を

利用したこと、非回遊とは1つの商業施設のみを利用したことと

定義する。ここでは、アンケ―ト調査において質問項目③以降が

未記入の回答者を除いているため、表-7の総計が表-5、表-6に比

べて減っている。結果は、調査地に関わらず1箇所のみの回遊、

つまり非回遊者が多いとわかった。調査地別にみると、センター

南に比べてセンター北利用者の回遊施設数が多いと言える。また

2013年と比較して、2014年の方がはるかに平均回遊施設数が多

いことから、回遊性が向上しているという結果になった。

【表-3】アンケート調査実施概要(2014年)

【表-5】回答者の属性

【表-6】回答者の来街実態

【表-4】アンケート調査実施概要(2013年)

実数(人) 構成比 実数(人) 構成比 実数(人) 構成比 実数(人) 構成比

361 52.9% 322 47.1% 527 66.0% 272 34.0%

項目 区分 実数(人) 構成比 実数(人) 構成比 実数(人) 構成比 実数(人) 構成比

男性 149 42.9% 124 38.5% 185 37.5% 106 41.4%女性 198 57.1% 198 61.5% 308 62.5% 150 58.6%総計 347 100.0% 322 100.0% 493 100.0% 256 100.0%10~20代 64 18.3% 41 12.9% 16 3.0% 15 5.5%30代 85 24.4% 75 23.6% 91 17.3% 75 27.7%40代 86 24.6% 81 25.5% 166 31.6% 90 33.2%50代 54 15.5% 57 17.9% 109 20.7% 40 14.8%60代以上 60 17.2% 64 20.1% 144 27.4% 51 18.8%総計 349 100.0% 318 100.0% 526 100.0% 271 100.0%子供と父母 70 25.8% 81 29.5% 151 28.7% 135 50.8%夫婦 66 24.4% 52 18.9% 128 24.3% 68 25.6%御一人 70 25.8% 101 36.7% 230 43.6% 62 23.3%友人 55 20.3% 30 10.9% 6 1.1% 0 0.0%その他 10 3.7% 11 4.0% 12 2.3% 1 0.4%総計 271 100.0% 275 100.0% 527 100.0% 266 100.0%都筑区 183 52.0% 142 44.4% 304 58.6% 127 47.2%横浜市(都筑区以外)

108 30.7% 130 40.6% 135 26.0% 91 33.8%

川崎市 38 10.8% 28 8.8% 68 13.1% 39 14.5%その他 23 6.5% 20 6.3% 12 2.3% 12 4.5%総計 352 100.0% 320 100.0% 519 100.0% 269 100.0%

同伴者

居住地域

センター北 センター南

センター北 センター南

センター北 センター南

属性 センター北 センター南

調査件数

2014年 2013年調査年

性別

年齢

項目 区分 実数(人) 構成比 実数(人) 構成比 実数(人) 構成比 実数(人) 構成比

ショッピング 279 53.9% 263 58.3% 638 59.7% 392 63.6%食事 119 23.0% 88 19.5% 104 9.7% 69 11.2%健康・医療 15 2.9% 13 2.9% 12 1.1% 4 0.6%スポーツ・アウトドア 1 0.2% 2 0.4% 14 1.3% 4 0.6%塾・教育 8 1.5% 6 1.3%薬・ドラッグストア 15 2.9% 12 2.7% 54 5.1% 24 3.9%娯楽・遊び 42 8.1% 32 7.1% 14 1.3% 14 2.3%デート 3 0.6% 1 0.2%その他 36 6.9% 34 7.5% 232 21.7% 109 17.7%総計 518 100.0% 451 100.0% 1068 100.0% 616 100.0%初めて 12 3.4% 11 3.4% 7 1.3% 5 1.9%年に数回以下 43 12.1% 49 15.4% 21 4.0% 32 12.0%月1~3回 134 37.7% 121 37.9% 116 22.3% 99 37.2%週1回以上 166 46.8% 138 43.3% 376 72.3% 130 48.9%総計 355 100.0% 319 100.0% 520 100.0% 266 100.0%自動車利用 200 55.4% 158 49.2% 374 71.2% 193 72.0%電車利用 122 33.8% 139 43.3% 64 12.2% 36 13.4%その他 39 10.8% 24 7.5% 87 16.6% 39 14.6%総計 361 100.0% 321 100.0% 525 100.0% 268 100.0%30分以下 11 3.2% 15 4.9% 75 19.4% 29 12.8%31分~60分 59 17.3% 78 25.5% 133 34.5% 72 31.9%61分~90分 49 14.3% 50 16.3% 69 17.9% 19 8.4%91分~120分 102 29.8% 95 31.0% 57 14.8% 62 27.4%121分以上 121 35.4% 68 22.2% 52 13.5% 44 19.5%総計 342 100.0% 306 100.0% 386 100.0% 226 100.0%

2013年センター北 センター南

2014年調査年

来街目的

来街頻度

交通手段

滞在時間

来街実態 センター北 センター南

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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.13, 2015 年 2 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No.13, February, 2015

4-2.2施設間の相関

表-8 は、2014 年調査における 2 つの商業施設間の回遊の組み

合わせを示した実数と相関係数の表である。ここでは全体集計で

の数値を示している。黒く塗りつぶされている部分が実数の多い

箇所、太字が相関係数の高い箇所を表している。実数が多い商業

施設、つまりは多くの回答者が利用している商業施設の組み合わ

せは、商業施設 1-5 や 10-11、1-3、1-4 となっている。センター

北の方が回答者が多く、回遊者の割合も高いため、センター北駅

近くに位置する商業施設同士の組み合わせが多いという結果に

なった。また、相関が1番高かった組み合わせは商業施設6-7で、

次いで 1-5、2-4 である。これらの組み合わせはいずれも①比較

的近隣に位置し広場や歩道橋の繋がりがある、②とりわけ大規模

な総合型商業施設の組み合わせ、③顧客対象が同じ商業施設同士、

④駐車サービスが充実しているといった条件にあてはまると考

えられる。反対に相関が低かったのはセンター北駅周辺とセンタ

ー南駅周辺に位置する、比較的距離の離れている商業施設の組み

合わせであった。これらの結果から、センター北とセンター南の

間における回遊性は非常に低いということが言える。

4-3.回答者の業種間回遊

表-9 は、2014 年調査の回答者が各商業施設の中で回遊した 2

業種の組み合わせを表している。ここでも全体集計での数値を示

している。2業種間の組み合わせで多かったのは、店舗構成でも

多くの割合を占めているファッション-生活雑貨、ファッション-

食品、生活雑貨-食品であった。これら 3 業種は回答者の属性で

も多くみられた、女性や30代~40代、都筑区在住といった者が

よく利用する業種だと考えられる。なお、この結果は2013年調

査の結果と比較してもほとんど変わらない。

4-4.判別分析

2014 年調査の結果より、センター南よりも滞在時間が長く、

回遊施設数が多いことから、回遊性が高いという結果になったセ

ンター北において回遊と、回答者の属性と来街実態についての判

別分析を行った。説明変数は、回答者の属性と来街実態に関する

項目のうち、検定で正規性があるとみなされた「性別」、「居住地」、

「年齢」、「同伴者」、「交通手段」、「滞在時間」の6項目とした。

これらの判別分析の結果を表-10に示す。この結果は非回遊度を

示したものであるため、「性別 女性」、「居住地 都筑区」、「年

齢 10~40代」、「同伴者 子供連れ」、「交通手段 電車」、「滞

在時間 121分以上」の6項目が回遊に関係するということを表

している。この中で、性別と滞在時間の2つの項目においては、

女性の方が回遊性が高く、滞在時間が長いほど回遊するという一

般的な傾向が見られた結果と言える。その他の 4 項目の結果に

おいては、正準判別関数係数やTC地区の特色を合わせてみる必

要があると考えられる。

【表-7】回答者の施設間回遊と平均回遊施設数(2014年)

【表-9】回答者の業種間回遊(2014年)

非回遊 回遊 非回遊 回遊1箇所 2箇所~ 1箇所 2箇所~

実数(人) 195 132 327 200 87 287構成比 59.6% 40.4% 100.0% 69.7% 30.3% 100.0%

実数(人) 90 43 133 82 33 115構成比 67.7% 32.3% 100.0% 71.3% 28.7% 100.0%実数(人) 100 83 183 118 54 172構成比 54.6% 45.4% 100.0% 68.6% 31.4% 100.0%

実数(人) 29 24 53 21 16 37構成比 54.7% 45.3% 100.0% 56.8% 43.2% 100.0%実数(人) 41 37 78 46 23 69構成比 52.6% 47.4% 100.0% 66.7% 33.3% 100.0%実数(人) 46 35 81 51 22 73構成比 56.8% 43.2% 100.0% 69.9% 30.1% 100.0%実数(人) 29 20 49 42 11 53構成比 59.2% 40.8% 100.0% 79.2% 20.8% 100.0%実数(人) 44 12 56 39 15 54構成比 78.6% 21.4% 100.0% 72.2% 27.8% 100.0%

実数(人) 34 27 61 51 19 70構成比 55.7% 44.3% 100.0% 72.9% 27.1% 100.0%実数(人) 81 38 119 35 14 49構成比 68.1% 31.9% 100.0% 71.4% 28.6% 100.0%実数(人) 44 22 66 65 23 88構成比 66.7% 33.3% 100.0% 73.9% 26.1% 100.0%実数(人) 28 16 44 17 12 29構成比 63.6% 36.4% 100.0% 58.6% 41.4% 100.0%

実数(人) 115 60 175 97 37 134構成比 65.7% 34.3% 100.0% 72.4% 27.6% 100.0%実数(人) 53 47 100 82 31 113構成比 53.0% 47.0% 100.0% 72.6% 27.4% 100.0%実数(人) 14 19 33 14 11 25構成比 42.4% 57.6% 100.0% 56.0% 44.0% 100.0%実数(人) 6 5 11 5 7 12構成比 54.5% 45.5% 100.0% 41.7% 58.3% 100.0%

実数(人) 5 3 8 5 1 6構成比 62.5% 37.5% 100.0% 83.3% 16.7% 100.0%実数(人) 15 23 38 23 19 42構成比 39.5% 60.5% 100.0% 54.8% 45.2% 100.0%実数(人) 64 55 119 68 41 109構成比 53.8% 46.2% 100.0% 62.4% 37.6% 100.0%実数(人) 109 49 158 103 26 129構成比 69.0% 31.0% 100.0% 79.8% 20.2% 100.0%

実数(人) 125 63 188 107 32 139構成比 66.5% 33.5% 100.0% 77.0% 23.0% 100.0%実数(人) 48 56 104 75 51 126構成比 46.2% 53.8% 100.0% 59.5% 40.5% 100.0%実数(人) 22 13 35 18 4 22構成比 62.9% 37.1% 100.0% 81.8% 18.2% 100.0%

実数(人) 6 2 8 11 2 13構成比 75.0% 25.0% 100.0% 84.6% 15.4% 100.0%実数(人) 44 12 56 52 20 72構成比 78.6% 21.4% 100.0% 72.2% 27.8% 100.0%実数(人) 29 19 48 29 17 46構成比 60.4% 39.6% 100.0% 63.0% 37.0% 100.0%実数(人) 64 33 97 67 22 89構成比 66.0% 34.0% 100.0% 75.3% 24.7% 100.0%実数(人) 43 65 108 33 26 59構成比 39.8% 60.2% 100.0% 55.9% 44.1% 100.0%

平均回遊施設数

全体 1.50 1.14

性別

男性 1.46 1.46

女性 1.52

2014年センター北 センター南

総計平均回遊施設数

総計

1.44

年齢

10~20代 1.75 2.08

30代 1.45 1.45

40代 1.53

1.35

御一人 1.53 1.34

1.38

50代 1.45 1.23

60代以上 1.27 1.31

友人 1.50 1.93

居住地域

都筑区 1.51 1.40

横浜市(都筑区以外)

1.60 1.40

同伴者

子どもと父母 1.70 1.44

夫婦 1.40

1.86

月1~3回 1.55 1.53

川崎市 1.76 1.24

その他 1.45 2.17

週1回以上 1.49 1.09

交通手段

自動車 1.41 1.29

電車 1.73 1.66

来街頻度

初めて 1.38 1.17

年に数回以下 1.82

その他 1.77 1.18

滞在時間

30分以下 1.00 1.31

31分~60分 1.30 1.44

121分以上 1.80 1.69

61分~90分 1.54 1.41

91分~120分 1.40 1.36

区分 ファ 雑貨 家具 スポ レス キッズ 書店 娯楽 食品 薬 美容 他

ファッション 117 31 5 93 8 57 4 114 8 5 14生活雑貨 117 32 3 76 7 64 2 110 7 5 12家具・インテリア 31 32 0 18 1 19 40 22 2 0 2スポーツ 5 3 6 1 2 4 6 0 1 0レストラン・飲食 93 76 18 6 8 36 13 68 5 5 12キッズ 8 7 1 1 8 4 19 5 0 0 2書店 57 64 19 2 36 4 1 69 6 4 7娯楽 36 27 4 2 40 4 13 19 1 1 3食品 114 110 22 6 68 5 69 1 21 10 17ドラッグストア 8 7 2 0 5 0 6 1 21 4 1美容健康 5 5 0 1 5 0 4 0 10 4 1その他 40 34 15 0 33 7 27 11 56 6 0

2014年度

【表-8】2施設間の相関(2014年) 施設1 施設3 施設5 施設4 施設2 施設7 施設6 施設9 施設8 施設10 施設12 施設11

係数 0.1 0.3 0.1 0.1 0.0 0.0 -0.1 0.0 -0.5 -0.1 -0.3実数(人) 27 89 25 9 14 14 4 2 12 1 5係数 0.1 0.2 0.1 0.1 0.1 0.0 0.0 -0.1 0.0 -0.1実数(人) 17 8 3 5 6 2 1 3 1 2係数 0.2 0.1 0.1 0.1 0.0 0.0 -0.3 0.0 -0.1実数(人) 19 8 9 14 3 2 7 1 4係数 0.3 0.0 0.1 0.0 0.1 -0.1 0.0 0.0実数(人) 6 1 4 1 1 4 1 3係数 0.0 0.0 0.0 0.1 -0.1 0.1 0.0実数(人) 1 1 1 1 2 1 2係数 0.3 0.2 0.1 0.0 0.0 0.0実数(人) 11 6 2 8 1 4係数 0.2 0.1 -0.1 0.0 0.1実数(人) 5 2 5 1 6係数 0.2 0.1 0.1 0.1実数(人) 2 9 2 5係数 0.1 0.1 0.1実数(人) 4 1 3係数 0.1 0.2実数(人) 12 47係数 0.1実数(人) 5係数実数(人)

施設11 - - - - - - - - - - -

施設12 - - - - - - - - - -

施設10 - - - - - - - - -

施設8 - - - - - - - -

施設9 - - - - - - -

施設6 - - - - - -

施設7 - - - - -

施設2 - - - -

施設4 - - -

施設5 - -

2014年

施設1

施設3 -

- 149 -

公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.13, 2015 年 2 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No.13, February, 2015

5.考察とまとめ 本研究ではアンケート調査により、2013年から2014年にかけ

て回遊性が向上したという結果になった。しかし、その要因は2

施設の開業や店舗構成の変化によるものではなく、調査の実施場

所の変更により、2013 年には十分な数のサンプルを得られなか

った電車利用者の票が増えたことに起因すると考えられる。

また、センター北とセンター南について、その回遊性を比較す

ると、調査年や属性、来街実態に関わらずセンター北の方が回遊

性が高いという結果になっている。2014 年では、センター北に

おいて平均1.50施設、センター南において平均1.14施設を利用

している。これについても、2施設間の相関を見ると分かるよう

に、センター北駅周辺の商業施設間の方がセンター南駅周辺の商

業施設間より相関が強いという結果が出ている。さらに、センタ

ー北駅周辺とセンター南駅周辺の商業施設の組み合わせにおい

てその相関が非常に弱く、センター北とセンター南の間の回遊が

ほとんど見られないことが分かった。このことから、回遊性の向

上を検討する際、センター北駅周辺とセンター南駅周辺はTC地

区一体としてではなく、異なる2つの地域として捉え、個々の取

り組みを打ち出す必要があると分かる。

そこで、2014 年調査の結果から、センター南に比べ回遊性が

高いという結果になったセンター北において回遊と、回答者の属

性と来街実態についての判別分析を行うと、回遊に関係性の強い

6項目が「性別 女性」、「居住地 都筑区」、「年齢 10~40代」、

「同伴者 子供連れ」、「交通手段 電車」、「滞在時間 121分以

上」であると求められた。この中で、性別と滞在時間の2項目に

ついては、女性の方が回遊性が高く、滞在時間が長いほど回遊す

るという一般的な傾向が見られた結果と言えるため、それ以外の

4項目について結果を検討した。

○「居住地 都筑区」

居住地について、都筑区内と都筑区外の属性を比較すると、回

遊に影響があるという結果が出ている「性別 女性」、「年齢 10~40 代」、「同伴者 子供連れ」、「滞在時間 121 分以上」の項

目において都筑区内より都筑区外の方が構成比が高かった。これ

は判別分析の結果と矛盾しているが、正準判別関数係数を見ると

-.080と低い値であることから、この結果に納得できる。 ○「年齢 10~40代」

10代~40代と50代以上を比較した場合も、回遊に影響する

という結果の出ている 10 代~40 代において都筑区外の割合が

高いという結果になっている。

○「同伴者 子供連れ」 同伴者について子供連れとそうでない場合を比較すると、属性

や来外実態において分析結果に影響するような違いは見られな

い。これはTC地区が子供連れにとって回遊しやすい環境が整っ

ていることを示しているのではないかと思われる。

○「交通手段 電車」

交通手段においては各商業施設の駐車料金制度が関係してい

ると考えた。駐車サービスの充実している商業施設については 相関がみられることから、駐車料金制度により長く車を停める事

が難しいことで、電車利用者の方が回遊する傾向にあるのだと考

えられる。 以上のことから、回遊しているのはむしろ都筑区外に住んでい

る者だというのが一つ言える。ここで、都筑区外に住んでいる者

の属性と来街実態で高い割合の項目を見てみると、性別-女性

(95.6%)、年齢-30 代と 40 代(各 32.4%)、同伴者-子供と父母

(31.6%)、交通手段-自動車と電車(各47.9%)、滞在時間-121分以

上(57.1%)となっている。すなわち、都筑区外に住んでいる 30代40代の子供連れの女性の回遊性が高いということが分かる。 最後に、本研究におけるアンケート調査では、商業施設間の回

遊と業種間の回遊に着目しており、回遊者は2施設以上の商業施

設を回遊した者と定義している。しかし、正確な回遊行動を把握

するためには、施設内の店舗回遊についても調査する必要があり、

各商業施設内の回遊行動が明らかになる事で、より明確な回遊性

向上のための取り組みを打ち出すことができるだろう。

謝辞 本研究において、アンケートの立案・実施をサポートしてくだ

さった丸山様をはじめとした都筑区役所の皆様、アンケート調査

にご協力いただいた各商業施設、各駅の皆様に深く感謝し、ここ

に記して謝意を申し上げます。

参考文献 1) 氏原岳人、阿部宏史、入江恭平、有方聡(2014 年)「二極の異

なる商業エリアを有する中心市街地内の回遊行動の実態分

析」 日本都市計画学会 都市計画論文集 vol.49 No.3

p317-p320

2) 中門睦、土橋義章、金キョンハン、井関崇之、小林祐司、姫

野由香、佐藤誠治(2012年)「バス交通に関する利用者側から

みた利便性評価(その 2)-大分市の施設利用者を対象として」-

日本建築学会九州支部研究報告 第51号 p801-p806

3) 勝田裕子、横田隆司、飯田匡、伊丹康二(平成24年)「回遊型

商業地区における路地の空間構成と来街者特性に関する研究

―大阪市西区堀江を対象として―」日本建築学会 近畿支部

研究発表会 p557-560

4) 竹内昌史、兼田敏之(2009 年)「商業集積地区における歩行者

回遊行動の分析―平成20年名古屋市大須地区調査を事例とし

て―」日本建築学会大会学術講演梗概集 p1085-1086

固有値 .222a

分散の説明率(%) 100.0

正準相関係数 .426

Wilksのラムダ .819

カイ2乗検定の有意確率 40.820

グループ重心の関数

回遊 -.620

非回遊 .354

性別 男性 .712

Q1居住地域都筑区 -.080

Q2年齢10~40代 -.320

Q3連れ子供連れ -.254

Q6交通手段電車 -.958

Q8滞在時間120分以内 1.796

(定数) -.875

正準判別関数係数

【表-10】判別分析の結果(2014年 センター北)

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