エレクトロニクス業界の歴史と動向1 エレクトロニクス業界の歴史と動向 2020年群馬大学電気電子工学特別講義Ⅱ集積電子回路工学 第426回アナログ集積回路研究会講演
無溶媒プリンテッド有機エレクトロニクス 製造プロ …...1...
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無溶媒プリンテッド有機エレクトロニクス 製造プロセスの開発
千葉大学 大学院工学研究科電気電子系コース
准教授 酒井 正俊
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従来技術とその問題点
フレキシブル、軽量、大面積を特徴とする有機エレクトロニクスの生産技術として、従来型の印刷法(インクジェットなど)に期待が寄せられ、世界中で研究が行われてきた。
これまで、プリンテッドエレクトロニクスにおいて、無溶媒でパターニングから有機薄膜形成まで一貫して行えるプリント技術は提案・実証されたことがなかった。
ところが、有機半導体材料を適正濃度で溶解することができる有機溶媒は特殊なものが多く、引火性、毒性など産業化に際してネガティブな要因を持つことがある。また、EUなどでは特に厳しい環境基準が制定されていることもあり、有機溶媒やその蒸気の放散を伴う従来型の印刷手法では、無毒化のためのコストがかさむことが懸念される。
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新技術の特徴・従来技術との比較
• プロセス中に有機溶媒を全く使用しないので、競合する印刷技術と比べて低環境負荷。トナーを再充填して使えるので半導体材料にも無駄が生じない省資源なグリーン技術である。
• 均質で結晶性の有機薄膜が得られる。
• 配向制御も可能。
• 精細プリント、広範囲プリント両方に適用可能である。
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想定される用途
• フレキシブルシートデバイス
• プラスチックエレクトロニクス
• 医療用ソフトセンサと周辺回路
• テーラーメイド情報タグ
• IoTウェアラブルデバイス
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ゼログラフィ技術による有機半導体トナーのパターニング
charging
unit dram
cleaner toner feeder
toner
roller laminate rollers
cover film
base film
drawing laser
パターニング ラミネート
photo-
sensitive
dram
無溶媒・乾式のパターニング+製膜 ← レーザープリンタと同様の手法
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①ドラムの帯電 ②露光
④現像
⑤転写 ⑥定着
ゼログラフィの6つのステップ ③トナーの帯電
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①トナーの帯電
トナーマーキングのステップ
②転写 電源
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有機半導体トナーの作製と帯電
印刷用トナー:顔料、樹脂、ワックス成分、電荷制御剤等からなる混合物
50μm
100μm
100μm
有機半導体トナー:単成分 (C8-BTBT)
撹拌
トナー
キャリア粒子
C8-BTBT粉末 粉砕後
直径2~5μm
SEM像
キャリア粒子 フェライト系材料を樹脂でコーティングした球形の粒子(直径約100 μm )正または負の帯電付与性をもつ。 日本画像学会より頒布されている。
トナーが摩擦帯電し、キャリア粒子の表面に付着する。
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帯電した有機半導体トナーの静電転写の原理
仮データ
50 μm
キャリア
C8-
BTBT
+ +
+
+ + +
+ +
+
+ + +
+ +
+ + +
Magnet
V
E
polyimide film
Au electrode +
DC +1.5kV
キャリア粒子との撹拌による摩擦帯電によってトナーを帯電させ、帯電したトナー粒子のみを電場によって基板上に転写する。
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0
Charge/Toner
Forc
e
キャリア粒子
トナー
トナーに働く力
vdW力+鏡像力
電場から受ける力
qE2
vdW力+鏡像力
qE1
𝐹𝑎 = 𝐹𝑣𝑑𝑊 +𝛼𝑞2
4𝜋𝜀0𝑟2
𝐹 = 𝑞𝐸
q1
q2
電場E2を印加したとき、q1<q<q2の電荷qを持ったトナー粒子が、電場による力によってキャリア粒子から引き離され、基板上に転写される。
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帯電した有機半導体トナーの転写の結果
正帯電付与性キャリアを用いた場合
電場Eの向き Au電極→キャリア
C8-BTBTトナーは正にも負にも帯電させることができる。
パリレン 表面
Au電極
電場Eの向き Au電極←キャリア
負帯電付与性キャリアを用いた場合
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トナーマーキング直後:Au電極上とその近傍にトナー粒子が散布されている。
ラミネート後:C8-BTBTが溶融して薄膜化
トナーマーキングの様子とラミネートにより形成される薄膜
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トナーマーキング+ラミネートにより得られたC8-BTBTのFET特性
-10 -5 0-0.4
-0.2
0
0.2
VDS (V)
I D (
VGS (V) 2 0 -2 -4 -6 -8 -10
-10 -5 00
0.2
0.4
0.6
10-13
10-12
10-11
10-10
10-9
10-8
10-7
VGS (V)
| I D | (A)
| I D
|1
/2 (
VDS= -10V
IG
W=5mm
ゲート電流 < 10-11 A
電界効果移動度 0.3 ~ 0.03 cm2/Vs フレキシブル基板上での有機FETのキャリア移動度としては標準的
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2 4 6 8 10
20
40
60
0
diameter of toner particle (m)
dia
mete
r of
dis
c (
m)
トナー粒子の直径とラミネートによってできる薄板領域の直径
C8-BTBTトナー粒子を 直径dの球と仮定
ラミネートによって、C8-BTBTが厚さ50nmの薄板(円板)になったときの円板の直径は? → 解像度を制限する要因
仕上がり膜厚50nmとして、20μmの解像度を得たければ、トナー粒子の直径を少なくとも5μm以下にしないことには達成できない。
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ここまでのまとめ
レーザープリンタと同じ原理により、無溶媒パターニングを実証した。
単成分有機半導体トナーを基板上に静電転写可能
カラーレーザープリンタのように、複数のトナーカートリッジを備えれば、n型/p型を塗り分ける等も可能
本格的なゼログラフィ方式&小粒径のトナーを用いれば、より自在なパターニングが可能
キャリア粒子の選択により、C8-BTBTトナーは正にも負にも帯電する→パターニングの自由度
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無溶媒印刷の立ち位置 は3Dプリンタに近い
金型が必要なく、データから造形できるため、プロトタイピング向き。
量産品を作るのなら、金型などの設備をいったん作り、大量生産する方式にコスト面でかなわない。しかし、少量・テーラーメイド生産への対応は容易。
版が必要なく、データから印刷できるため、プロトタイピング向き。溶媒フリー。
3Dプリンタ トナー印刷
将来は、レーザープリンタのような装置でフレキシブルシートデバイスを試作・テーラーメイド生産できるようになることを思い描いている。
Amazon Webサイトより MakerBot
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実用化に向けた課題
• 本格的なゼログラフィ技術の導入⇒現在よりも高精細なパターニングが可能となる。対向電極が存在しない領域も含めたより自在なトナー転写が可能となる。
• トナーの帯電量を測定する必要がある。⇒転写に適正な電場の強さを決めることができる。
• トナーの粒径をさらに細粒に。粒径分布も先鋭にする。⇒パターニング解像度の向上、均一化。
• CMOS回路の実現に向けて、溶融に適したn型有機半導体材料の探索
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企業への期待
• 本格的なゼログラフィ技術の導入により、より高精細で、意図した部分のみへ有機半導体トナーを転写することが可能となるので、ゼログラフィの技術を持つ企業との共同研究を希望。
• フレキシブルなテーラーメイド型の電子デバイスの応用展開を考えている企業にとっては、事業化手段の一つとして提案できる。
• 解像度向上のため、粉砕と粉体の扱いを得意とする企業との共同研究を希望。
• これまでこのような手法が存在しなかったため、適正な融点と電子特性を両立する材料の開発が行われてこなかった。化学企業には、溶融に適したn型有機半導体の開発を期待。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :有機半導体デバイスの製造方法、および粉体
• 出願番号 :特願2015-168491
• 出願人 :千葉大学、日本化薬株式会社
• 発明者 :酒井正俊、工藤一浩、貞光雄一