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環境への取り組み ANAグループでは公共輸送機関としての役割を果た しながら、持続可能な社会のために地球環境と共生し続 ける企業でありたいと考えています。自らの環境負荷を 謙虚に認識することを出発点とし、人と地球のためにで きることを常に考え、挑戦していきます。また、地球環境 を想う心をステークホルダーの皆様と分かち合える活動 にも積極的に取り組んでいきます。 「ANAグループエコロジープラン2008-2011」の 達成に向け、社員一人ひとりの自覚とチームワークで環 境保全活動に取り組んできました。2008年には環境省 より航空業界、運輸業界として第 1 号の「エコ・ファースト 企業」と認定されています。今後もCO2 削減を主とする 地球温暖化対策をはじめ、日本の森の再生を目的とした ANA カーボン・オフセットプログラム、お客様とともに地球 環境について考える e-flight、3R 活動(reduce、reuse、 recycle)、森づくりやサンゴ再生プロジェクトへの参加、 バイオ燃料導入に向けた 取り組みなど、ANAらしい ユニークで先進的な活動 をステークホルダーの皆 様 、地 域 の 皆 様 の ご 協 力 の下、推進していきます。 環境リーディングエアラインを目指して ANAらしい環境保全活動 世界初のバイオ燃料による太平洋横断フライト 2012年4月、バイオ燃料搭載機による太平洋横断フライトを行いま した。ボーイング 787型機のデリバリーフライトとして実施したもので、 既存のジェット燃料に使用済み食用油を主体としたバイオ燃料を15%混 合、環境負荷の低い最新鋭機ボーイング787型機とバイオ燃料の相乗効 果により、ボーイング 767型機と比べ約 30%の CO2削減を実現しました。 また、ボーイング社などの関連専門機関・企業で構成されたバイオ燃料開 発グループにも参画、2020年までの代替航空燃料の使用開始を目指し、 開発支援に積極的に取り組んでいます。 ANAグループ環境理念 環境を大切にする心は、私たち自身が地球に 負荷をかけていることの自覚から始まります。 私たちは、資源とエネルギーを大切に利用し、 豊かで持続可能な社会の創造に貢献します。 私たちは、率先して環境保全に取り組み、 地球を想う心を世界の人々と分かち合います。 シアトルにてバイオ燃料を給油 全日本空輸株式会社 92

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環境への取り組み

 ANAグループでは公共輸送機関としての役割を果たしながら、持続可能な社会のために地球環境と共生し続ける企業でありたいと考えています。自らの環境負荷を謙虚に認識することを出発点とし、人と地球のためにできることを常に考え、挑戦していきます。また、地球環境を想う心をステークホルダーの皆様と分かち合える活動にも積極的に取り組んでいきます。

 「ANAグループエコロジープラン2008-2011」の達成に向け、社員一人ひとりの自覚とチームワークで環境保全活動に取り組んできました。2008年には環境省より航空業界、運輸業界として第1号の「エコ・ファースト企業」と認定されています。今後もCO2削減を主とする地球温暖化対策をはじめ、日本の森の再生を目的としたANAカーボン・オフセットプログラム、お客様とともに地球環境について考えるe-flight、3R活動(reduce、reuse、recycle)、森づくりやサンゴ再生プロジェクトへの参加、

バイオ燃料導入に向けた取り組みなど、ANAらしいユニークで先進的な活動をステークホルダーの皆様、地域の皆様のご協力の下、推進していきます。

環境リーディングエアラインを目指して

ANAらしい環境保全活動

世界初のバイオ燃料による太平洋横断フライト 2012年4月、バイオ燃料搭載機による太平洋横断フライトを行いました。ボーイング787型機のデリバリーフライトとして実施したもので、既存のジェット燃料に使用済み食用油を主体としたバイオ燃料を15%混合、環境負荷の低い最新鋭機ボーイング787型機とバイオ燃料の相乗効果により、ボーイング767型機と比べ約30%のCO2削減を実現しました。また、ボーイング社などの関連専門機関・企業で構成されたバイオ燃料開発グループにも参画、2020年までの代替航空燃料の使用開始を目指し、開発支援に積極的に取り組んでいます。

ANAグループ環境理念環境を大切にする心は、私たち自身が地球に負荷をかけていることの自覚から始まります。

私たちは、資源とエネルギーを大切に利用し、豊かで持続可能な社会の創造に貢献します。

私たちは、率先して環境保全に取り組み、地球を想う心を世界の人々と分かち合います。

シアトルにてバイオ燃料を給油

全日本空輸株式会社92

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「ANAグループエコロジープラン2008-2011」の目標と実績 項目 目標 2012年3月期の実績※1

地球温暖化 航空機燃料に 対策 よるCO2排出量 の低減

事業所使用 エネルギーの 削減

大気汚染 航空機の排出 対策 ガス基準適合 低公害車の導入 騒音対策

省資源化の促進

環境社会貢献活動の推進

※1. 詳細はWebサイトにて報告※2. 機内•空港内やグループ内事業所で発生する廃棄物を、機内•空港内や自社•グループ内で再生利用すること

国内線・国際線の有償輸送トンキロ当たりCO2排出量を、2012年3月期において対2007年3月期比で10%削減国内線2009~2012年3月期のCO2排出量を年平均470万トン以内に抑制全事業所計で年1%削減

リース機を含め全機ICAO(国際民間航空機関)排出ガス基準に適合ハイブリッド・電気自動車など、低公害車の積極導入リース機を含め全機ICAO騒音基準チャプターⅣに適合廃棄物削減、営業用紙5%削減

クローズド・リサイクル※2を全事業所へ展開

全国50空港周辺での森づくり

国際環境絵本コンクールサンゴ再生プロジェクトへの参画次世代人材への環境教育支援

2012年3月期にANAグループの航空機が排出したCO2総量は、国際線ネットワークの拡充、便数の増加により国内線・国際線合計で839万トンとなり、前期比+5.0%(+40万トン)に増加しましたが、有償輸送トンキロ当たりでは1.13kg-CO2と、目標の10%には届かなかったものの、基準年である2007年3月期に比べ9.3%削減しました。国内線の生産量は微減という状況下、2012年3月期の排出量は419万トンとなり、2011年3月期の421万トンから、さらに削減しました。2009~2012年3月期の年平均CO2排出量は428万トンとなり、目標値内に抑制されました。改正省エネ法の施行後、新たにシステムを導入し一元管理を行うことにより、ANA全事業所の総地上エネルギー(原油換算)消費量は前期から原単位で2%削減、省エネ法をクリアしました。今後省エネ法のほか、震災による電力不足に対応したエネルギー削減に一層努めていきます。ANAグループ保有の航空機エンジンは、すべてICAO条約第16付属書の排出ガス基準に適合しています。 2012年3月期は、低公害・低排出ガス車台数は102台増加、985台となり、総台数の25%となりました。基準年(2003年3月期:178台)から5.5倍に増加しています。全機ICAO騒音基準 チャプターⅣの騒音基準に適合しています。

廃棄物量は全体で前期比11%増加していますが、収集バウンダリの変化によるものです。紙類の使用量は7%削減しました。営業用紙だけを見れば8%削減しています。各事業所内で使用したコピー用紙や、機内誌『翼の王国』などの一部回収を行い、再び機内誌の作成に使用したり、全国の事業所で使用する事務用封筒・名刺などに活用しています。ANAグループ全体で3R活動を推進し、客室乗務員の制服のリサイクルなども積極的に行っています。また、手荷物用ビニールシートのリユースやリサイクルに取り組み、対象空港を拡大しています。2012年3月期には新たにオホーツク紋別空港「とっかりの森」と徳島空港「巣立ちの森」を加え、全国7カ所で森づくり活動を実施しました。2004年以来の森づくりは、27空港、35カ所となりました。(2012年6月現在)2011年3月期より、活動を休止しています。2012年3月期は、春2回・秋2回サンゴ植えつけを行いました。ダイバー・ノンダイバーのボランティアなど累計1,844名が参加しています。植林活動時の「青空塾」の開催や新宿御苑グリーンチャレンジフェスティバルなど環境教育の機会を提供しました。

 「ANAグループエコロジープラン2008-2011」では、「国内線・国際線の有償輸送トンキロ当たりCO2排出量を、2012年 3月期において対2007年 3月期比で10%削減」「国内線2009~2012年3月期のCO2排出量を年平均470万トン以内に抑制」という目標を立てました。世界的な景気減退や東日本大震災の影響も受けて、2012年3月期は有償輸送トンキロ当たりCO2は、若干増加したものの、さまざまな燃料節減策によって、概ね目標を達成することができました。また、国内線CO2排出量は目標値内に抑制することができました。

航空燃料によるCO2排出量の低減 ANAグループCO2排出量目標と実績

(kg-CO2/RTK)

(100万トン)

1.3

1.2

1.1

1.0

有償輸送トンキロ当たりCO2排出量(国内線・国際線合計)(左軸)

国内線CO2排出量(右軸)

5.0

6.0

4.0

2007(基準年)

2008 2009 2010 2011 2012 (3月期)

年平均470万トン以内

-10%

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アニュアルレポート 2012 93

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 ANAグループは、京都議定書に代わる地球温暖化対策の国際的枠組みが新たに発効される見込みの2020年を次のターゲットに見据え、2012年4月より新たな中長期環境計画「ANA FLY ECO 2020 ~もっと、ずっと、青い空へ~」を策定しました。「ANA FLY ECO 2020」

では、ANAグループが中核として取り組むべき環境課題を「地球温暖化対策」とする基本方針は継続し、グローバル水準を考慮した目標値を設定しました。この中長期環境計画を達成することにより、世界トップ水準の環境リーディング・エアラインを目指していきます。

ANAグループ中長期環境計画「ANA FLY ECO 2020」

 地球温暖化対策の具体的な施策としては、ANAグループが世界で初めて導入したボーイング787型機のような環境に優しい最新鋭航空機を今後も積極的に採用していくことや、飛行方式の工夫、航空機の空力特性を向上させるための自社改修、エンジンの定期的洗浄、装備・搭載物品の軽量化などを実施していきます。

 また、環境社会貢献活動については、お客様や地域の皆様をはじめとするさまざまなステークホルダーの皆様にご協力いただき、ANAグループの社員ボランティアも参加しながら、地域の活性化につながる付加価値の高い活動を継続的に展開していきます。

▶ANA FLY ECO 2020 目標

ANAグループCO2排出量目標と実績

(kg-CO2/RTK)

(100万トン)

1.3

1.2

1.1

1.0

国内線CO2総排出量(右軸)    有償輸送トンキロ当たりCO2排出量(国内線・国際線合計)(左軸)

5.0

6.0

4.0

2008 2009 2010 2011 2012 2013 (3月期)2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 202120072006

-20%

0 02 (32013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021

年平均440万トン以内

項目 目標 地球温暖化 航空機燃料によるCO2排出量 対策 の低減

地上エネルギー バイオ航空燃料の導入 大気汚染 航空機の排出ガス基準適合 対策 低公害車の導入 騒音対策 省資源化の促進

環境社会貢献活動の推進

【単位当たり目標】 2021年3月期の有償輸送トンキロ当たりCO2排出量(国内線・国際線合計)を、2006年3月期比で20%削減【総量目標】 2013年3月期~2021年3月期の国内線CO2排出量を年平均440万トン以内に抑制全事業所計年1%削減(改正省エネ法への対応)バイオ航空燃料の期間内本格使用開始に向けた検討リース機を含め全機ICAO排出ガス基準に適合ハイブリッド車・電気自動車など、低公害車の積極導入と、バイオ燃料使用の検討リース機を含め全機ICAO騒音基準チャプター4適合廃棄物削減、営業用紙含めペーパーレス化の推進 機内誌などのクローズド・リサイクルをはじめとする3R活動の促進地域・社会に新たな価値を提供できる森づくり チーム「美らサンゴ」によるサンゴ再生プロジェクトを通した環境啓発活動の強化

全日本空輸株式会社94

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環境への取り組み

 航空機の消費燃料の節減は、環境負荷低減に直結します。私たちは、早くから機材や運航面などでさまざまな燃料節減に積極的に取り組んできました。以下、ANAグループの取り組みの一例をご紹介します。

機材

◆環境性能の高い機材の積極的導入 ANAグループがローンチカスタマーとしてボーイング社と共同開発したボーイング787型機は、炭素繊維の複合材の採用による大幅な軽量化とエンジン性能の革新により、従来のボーイング767型機に比べ燃費効率が約20%向上しました。 ANAグループでは、2012年3月期において6機を導入していますが、今後合計55機の導入を予定しています。

◆ウイングレットの装着 主翼の端に取りつけられる小さな翼を装着することにより、飛行中に発生する空気抵抗を減らすことができます。

長距離運航をする ボ ー イ ン グ767-300ER型機では、約5%の燃費向上効果があり、1機当たりのCO2排出量を年間2,100トン削減することができました。

環境負荷低減に向けた取り組み

ウイングレット装着

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東京~札幌間の1座席当たりのCO2排出量比較(2012年3月期)

ボーイング787-8型機(2011年11月より就航)

ボーイング777-300型機

ボーイング777-200型機

エアバスA320-200型機

ボーイング747-400型機

ボーイング767-300型機

(kg-CO2)ボーイング767-300型機の約20%減

63.1

68.7

69.8

71.5

71.8

B787-8DMS(335席)

B777-300(514席)

DHC8-300(56席)

B777-200(405席)

B737-800(167席)

A320(166席)

B747-400D(565席)

B767-300(270席)

DHC8-400(74席)

B737-500(126席)

B737-700(120席)

A321(195席)

B747SR(536席)

F-50(50席)

B767-200(234席)

L1011(341席)

B737-200(126席)

YS11(64席)0 10 20 30 40

36.235.3

31.6

26.926.3

26.2

21.129.1

27.2

24.724.023.222.322.3

22.222.0

19.818.6

(g/座席キロ)

B737-700INT(120席)

B787-8INT(222席)

A320INT(110席)

B767-300ER(202席)

B777-200ER(223席)

B777-300ER(247席)

B747-400(339席)

B747LR(326席)

0 10 20 30 40

24.125.627.228.5

34.334.3

39.3

38.5

(g/座席キロ)

省燃費型の航空機導入の状況 CO2の発生を減少させること、すなわち燃料消費を削減する最も有効な方法は、①最新のエンジンテクノロジーを駆使した効率のよいエンジンを採用し、②翼型などの改善により空気抵抗を減少させ、③複合材料などにより重量軽減された、燃料効率のよい新鋭機を導入することです。ANAグループは早くからこの方法に取り組み、効果をあげています。

機種別燃料消費率【国際線】

【国内線】

※ 国際線(飛行距離9,260km、満席)で計算した場合(ただし、B737-700INT、A320INTは5,556km)※ ■は退役済みの航空機

※ 国内線(飛行距離926km、満席)で計算した場合※ ■は退役済みの航空機

アニュアルレポート 2012 95

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運航

◆飛行管理装置 データリンク機能の導入 飛行条件に応じて最適な速度や航路を計算し、エンジン出力の調整などを自動的に行う装置を強化、航空路上の風のデータも条件として考慮する機能を導入しています。これにより、最適な巡航高度や降下開始点の選択が可能となりました。

◆RNAV(広域航法) ANAグループでは、2002年6月から、航空保安無線施設や衛星などを利用して自機の位置を算出し、任意の経路を飛行する航法(RNAV)を導入しています。従来の航法に比べて距離や時間の短縮、燃料やCO2排出量の削減が可能となります。

◆省エネ降下方式の促進 降下開始点から、水平飛行することなく最終進入開始点まで連続的に降下していく運航方式で、CO2削減、騒音低減に効果があります。関西空港における深夜早朝時間帯の運用開始を手始めに、対象空港を順次拡大中です。

▶省エネ降下方式のイメージ図

省エネ降下方式:エンジン推力を下げたまま継続的に降下する

一般的な降下方式:エンジン推力を水平飛行時に上げる

着陸滑走路

出発経路 航空路 到着経路 進入

滑走路 滑走路

従来の経路 RNAV航法の経路

航空保安無線施設

航空保安無線施設

航空保安無線施設

▶RNAV経路と従来経路のイメージ図

EFP(Effi cient Flight Program)推進プロジェクト ANAグループでは、安全運航の堅持を前提に、担当するフライト一便一便で自らが実施できるECO Flightを運航乗務員自身が主体となってアイデアを出し合い、一人ひとりが安全性・快適性・定時性を守りつつ環境に配慮した飛行を実践しています。 2008年からは、運航乗務員自らの手で作成したECO Flightガイドブック『ECO Flightのすすめ』にそれらのノウハウを集約したことで、実施率がさらに向上しています。例えば、従来は着陸時の滑走距離を短くするために逆噴射装置を作動させ、エンジンの推力をあげていましたが、滑走路の状況などを判断して安全に止まれることを前提に、可能な限りエンジンをアイドル状態で運用し、CO2削減・騒音低減など、環境にやさしい着陸を心がけています。ECO Flightのすすめ

全日本空輸株式会社96

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その他◆地上電源の優先使用 地上に駐機している航空機は、機内搭載の補助動力装置から空調や照明などの電気を供給していますが、よりエネルギー効率のよい地上電源装置や整備用電源車から機内への電気供給を積極的に実施し、大幅にCO2を削減しています。

◆エンジンの洗浄・交換 ANAグループでは、専用の車両を独自開発し、エンジンコンプレッサー(圧縮器)部分の洗浄を行っています。エンジンは使用するにつれて、コンプレッサー部分に微小なほこりが付着し、燃費が悪くなるため、定期的な洗浄でエンジン性能を回復させています。また、エンジンの長期間使用も各部の劣化により燃費低下の原因になります。ボーイング767型機、747型機、777型機に装着している30台のエンジンを新しいものと交換しました。

◆フライトシミュレ-タ-の活用 ANAグループでは、燃料やCO2排出の削減、騒音問題、訓練空域狭隘などの改善のため、パイロットの訓練・審査の大部分を地上のフライトシミュレーター(模擬飛行装置)で実施しています。

◆フライトでの軽量化 機内に搭載する各アイテムの小型化・軽量化、搭載数の削減なども継続的に行っています。『Sky Shop』(機内ショッピングカタログ)の紙質変更・ページ数削減、備品の予備搭載数の見直し、食器・グラスの軽量化などを行いました。2012年 4月からは、客室乗務員の携行マニュアルを電子化(タブレット型端末)し、1人当たりのマニュアルを1/3に軽量化しました。また、新軽量型コンテナを700台導入、使用しています。外板部分を炭素繊維強化プラスチックに、開閉部分を防汚・防水性の高いキャンバス素材に変更することにより、従来のアルミ製コンテナと比較して30kgの軽量化(従来比約30%減)を実現しました。その他、国内線・国際線ともに機体に搭載する水の量を継続的に見直し、フライトの軽量化を促進しています。なお、2010年より羽田空港において搭載した水が余った場合、社内施設で中水として利用しています。

エンジンの洗浄 国際線新造機ビジネスクラスの軽量化食器

環境への取り組み

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羽田・成田空港の業務用連絡車に、電気自動車を導入 ANAグループでは、2012年3月、成田空港の地上ハンドリング・サービス用業務車両として、初めて電気自動車を1台導入したのに続き、同じく3月に、羽田空港においても2台導入しました。その後も導入を続けています。空港内の航空機整備工場や貨物上屋などの屋内作業用については以前からフォークリフトや小型牽引車として電気自動車を使用していましたが、係員の移動や備品類の運搬などに使う、空港地区全体が活動場所となる屋外の業務用連絡車への導入は、当期が初めてとなります。 2012年3月期に導入したこれら3台を1年間使用した場合、約5トンのCO2削減が見込まれます。ANAグループでは、今後も全国の空港で電気自動車などの低公害車の導入を積極的に進めていきます。 羽田空港の地上ハンドリング・サービス用電気自動車

アニュアルレポート 2012 97

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e-fl ight 2011~787から始まる、お客様と取り組むエコ e-flightは、空の上から美しい地球を眺めながら、次世代に残さなければいけない大切な地球環境についてお客様とともに考える機会として、2006年より実施しています。 2012年3月期も環境性能に優れたボーイング787型機の導入に合わせてさまざまな取り組みを行いました。

787カーボン・オフセットキャンペーンを実施 機内で気軽にカーボン・オフセットに参加できるキャンペーンを実施し、ご参加いただいたお客様には参加証明として間伐材で作られた「787オリジナルピンバッジ」をプレゼントしました。お支払いいただいたオフセット料金を、鳥取県の森づくり(J-VER※)に活かしたことから、ANAの森林保全への貢献が評価され、鳥取県から「J-VERとっとりの森を守る優良企業」として認定されました。

・ オフセット総額:4,364,000円(546トンのCO2削減)※ 環境省が2008年11月に創設した国内における自主的な温室効果ガス排出削減・吸収量をクレジットとして認証する制度。

ANAカーボン・オフセットプログラム ANAグループでは、2009年10月1日から国内線全線で「ANAカーボン・オフセットプログラム」を導入しています。このプログラムは、お客様がご搭乗される航空機が排出するCO2(二酸化炭素=カーボン)を吸収するために必要な森づくりの資金を、お客様から任意にご提供いただき、CO2排出量をオフセット(相殺)しようという取り組みです。一般社団法人more trees(モア・トゥリーズ)と連携して、CO2排出を手軽にオフセットできるしくみを

作りました。2010年からは、携帯電話からの入力画面の変更やパソコンからの参加を可能にするなどシステムを改善してきました。さらに2011年11月からは、環境性能の高いボーイング787型機の導入により、オフセット料金をリニューアルしました。今後も、より参加しやすいプログラムにしていきます。

http://www.ana.co.jp/ana-info/ana/csr/offset/index.html

環境コミュニケーション

ミニ787オリジナルピンバッジ

東北海岸林再生マイルのご寄付を受付 東日本大震災による津波の影響で壊滅状態となった海岸林を再生させるため、ANAグループでは公益財団法人オイスカによる「海岸林再生プロジェクト10カ年計画」を長期支援しています。趣旨にご賛同いただいたお客様からは、マイルのご寄付(1口3,000マイルから)を受け付けさせていただきました。ご寄付いただいたマイルは、被害に遭った海岸林やクロマツの並ぶ美しい風景を、被災地の方々自らが苗木を育てて再生する活動支援に役立てられています。(2011年11月1日~12月15日)

・申込人数: 371人、申込口数:641口・ ご寄付いただいたマイル数:1,923,000マイル (1,923,000円相当)

クレジット購入

森林再生プロジェクト

地域活性化

CO2排出

吸収

お客様

オフセット料金

全日本空輸株式会社98

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使用済み自動車などの適正処分の全国ネットワーク ANAグループでは全国で約4,000台の車両を使用しています。その多くは特殊な車両であるため、処分には運搬手段や処分能力などの点で種々の困難が伴います。 これらの使用済み自動車などの処分をもれなく適正かつ効率的に行い、廃棄物処理法および2005年4月より施行された自動車リサイクル法のいずれにも対応できるように、全国ネットワークを作りました。 これは、北海道、東北・関東、北陸、関西・中部、中国、四国、九州および沖縄の各地域で十分な能力と信用ある

運搬事業者と処分工場を選定し、これらを拠点としてその地域内の空港からの使用済み自動車などを適正かつ効率的に処分するしくみです。 2012年3月期は、このネットワークを通じて、全国の空港で使用した101台の車両を廃棄物処理法に沿って、適切に処分しました。また、これにより金属くず約187トンを再資源化しています。

適用される法律名 1 特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法) 2 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法) 3 自動車リサイクル法 4 特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法) 5 特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収・破壊法) 6 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法 7 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法) 8 エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法) 9 大気汚染防止法 10 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOx・PM法) 11 水質汚濁防止法 12 下水道法 13 浄化槽法 14 騒音規制法 15 振動規制法 16 悪臭防止法 17 工場立地法 18 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(公害防止組織整備法) 19 毒物及び劇物取締法 20 容器包装等リサイクル法 21 建設リサイクル法 22 建築物における衛生的環境の確保に関する法律 23 食品リサイクル法  など

▶適用される主な環境関連の法律

 ANAグループでは、2003年3月期以来、環境法令遵守の体制づくりを進めています。航空機はもとより自動車整備工場、機内清掃サービスなど多岐にわたった業種に携わっており、廃棄物処理法をはじめとして、1事業所当たり平均7件程度の適用を受けています。 環境法令変更などにも適切に対応し、2012年3月期においても環境に関する事故や法令による罰則の適用はありませんでした。

環境法令とコンプライアンス

成田整備地区2002年取得

ISO 14001認証

(株)ANAケータリングサービス2007年取得

スカイビルサービス(株)2009年取得

成田整備地区

ISOISO 1414001001認証認証

(株)ANAケ リ グサ ビ カイビルサ ビ (株)

アニュアルレポート 2012 99

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▶ICAO離着陸サイクル

▶エンジンからの排出ガス量(2012年3月期)

大気汚染と航空のかかわり ANAグループの事業と大気汚染とのかかわりは、①航空機からの排出ガス、②地上用車両からの排出ガスなどが主たるものです。航空機からの排出ガスについては、国際民間航空機関(ICAO)の排出基準として、ICAO条約第16付属書に、航空機の離着陸を模擬したLTOサイクルでエンジンを運転した際に排出されるNOx(窒素酸化物)、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、SN(煙濃度)の単位推力当たりの排出ガス量を規制しています。 国内の航空法にも、「航空機の発動機の排出物基準」として航空法施行規則の附属書第3に定められています。

 着陸時の高度3,000フィートから、離陸上昇時の高度3,000フィートまでを離着陸サイクルとして、エンジンをこの条件で運転し、各排出量を計測するものです。 エンジンテスト条件は下表の出力状態および作動時間が条件となっています。

出力状態 定格出力(%) 作動時間(分) 離陸 100 0.7 上昇 85 2.2 降下 30 4.0 地上滑走 7 26.0

排気ガスの少ない航空機の導入 ANAは航空機から有害排気ガスを減らす最も効果的な方法として、改良型の新型エンジンを装備した最新鋭機を積極的に導入してきました。ANAグループが保有する航空機のエンジンは、すべてICAO条約第16付属書の排出基準をクリアしています。

ANAグループ ANAグループ (千トン) 前期比(%) NOx(窒素酸化物) 6.34 4.9 HC(炭化水素) 0.68 ‐9.2 CO(一酸化炭素) 4.85 1.9

燃料投棄について 航空機の不具合や急病人の発生により予定外の着陸をする場合、もし航空機重量が着陸限界を超えていれば安全のために重量を減らす必要があります。このため、やむをえず燃料を投棄しなければなりません。空港などにより投棄場所や高度が指定されており、市街地域を避けて洋上などで行われます。高々度で投棄された燃料は霧状となって拡散されるため、地上への直接的な影響はありません。2012年3月期は、計2回、約163kℓの燃料投棄が、日本列島東海岸沖太平洋上で発生しました。

大気汚染対策

(3月期)

0

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

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2001

2003

2005

2007

2009

900

800

700

600

500

400

300

200

100

0

9

8

7

6

5

4

3

2

1

燃料投棄回数と投棄量の推移

(㎘) (回)

■投棄量(左軸)  投棄回数(右軸)

3,000フィート

上昇

降下

離陸

地上走行

全日本空輸株式会社100

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環境への取り組み

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航空機の水洗と排水処理 羽田空港および成田空港では、夜間に航空機の水洗を実施しています。2012年3月期のANAグループの水洗実施回数は1機当たりの実施回数の大幅減少により、また使用水量は作業の改善により、ともに減少しました。作業後の水は、空港内の排水処理施設にて適正に処理した後、排水しています。

防雪・防氷剤の使用削減と環境対策 航空機は安全のために、翼や動翼、胴体などに雪氷が付着したままでは離陸できません。除雪時にはお湯または圧縮空気(乾雪の場合)で雪を吹き飛ばし、続いて防氷剤を塗布して出発します。ANAグループは、1996年以降、プロピレングリコール(PRTR法適用外の材料)に全面転換していますが、さらなる環境対策を目指し、2009-10冬季に、キルフロスト社製の環境対応型防氷液「DFサステイン」を、千歳空港および函館空港において部分的に使用開始しました。キルフロスト「DFサステイン」は、石油系のプロピレングリコールの代わりに植物性グリコールを使用しており、製品使用時のCO2の排出が0となるほか、水棲動物に対する毒性が現行品より大幅に低下しているなど、優れた環境特性を持っています。防氷液としての性能も現行品より優れており、使用結果も良好でした。2010-2011冬季には、函館空港においてその使用割合を増加しました。今後も継続的に使用拡大を目指していきます。

▶ANAグループで使用した主な第一種指定化学物質(2012年3月期) 指定化学物質 用途 CAS No.※ 特記

1 メチルエチルケトン(MEK) 洗浄剤 78-93-3 ̶

2 トリブチルホスフェート 動翼・着陸装置などの作動油 126-73-8 SKYDROL500B4

3 トルエン ペイントなどの希釈剤 108-88-3 揮発成分の少ない塗料を選定している

※ 化学物質特定に係る国際的標準番号

0

1997

1998

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2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

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2008

2009

2012

2011

2010 (3月期)

15

12

9

6

3

300

800

700

600

500

400

ANAグループの水洗使用水量と実施回数

(千トン) (回)

■使用水量(左軸)  実施回数(右軸)

PRTR(環境汚染化学物質排出・移動登録)法への対応 ANAグループでは当該物質の正確な把握と確実な法定届け出を行うよう、購入品目と数量、成分および出庫量を関連づけてデータベース化し、一元的に管理しています。また、グループ会社での全体の情報も集約できるように、組織連携を強化してきました。2012年3月期の排出・移動総量は、24,180kgとなりました。前期より増加していますが、これは指定化学物質の対象品が21品目追加されたことによるものです。

 前期に使用量が多かったペイント剥離剤のジクロロメタンについては、非メチレンクロライド系剥離剤を導入することで、使用量を前期比5分の1へと大幅に削減することができました。今後も、環境への負荷を考慮した適切な作業の実施、指定有害物質を含まない代替材料や技術の研究など、改善を進めていきます。

化学物質の使用削減

アニュアルレポート 2012 101

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1997

1998

1995

1996

1993

1994

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2012

2011

2010 (3月期)

0

2,000

1,600

1,200

800

400

0

10,000

8,000

6,000

4,000

2,000

■使用水量(左軸)  実施回数(右軸)

内際の防雪・防氷の実施回数と防・除雪氷液の使用量

(㎘) (回)

▶ICAO Annex 16/チャプター4 基準(ANAG Fleet)

チャプター3/3 測定点の余裕値合計(EPNdB)

14

18

12

10

8

6

4

2

5 10 15 20 25 30 350

チャプター3 基準適合範囲

チャプター4 基準範囲

DHC8 Q300

DHC8 Q400

B787-8 STD

B747-400

B747-400D

A320-200

B767-300ERB777-300

B767-300

B777-200

B737-500

B777-300ER

B737-800B737-700

チャプター3/2 測

定点の組み合わせの

最小余裕値合計(EPN

dB)

 近年、航空機騒音の軽減に対する要求は強くなっており、飛行方式・航空機材の改善に向けた継続的な努力により、地上の皆様や機上のお客様への騒音低減が図られています。 ANAグループが保有する全機についてICAO騒音基準のうち最も厳しいチャプター4基準に適合しています。下のグラフは各機種の騒音基準値からの余裕度を示して

騒音対策

航空機の外装ペイント作業におけるPRTR物質や揮発性ガスの排出削減 ANAグループでは、水質・土壌汚染対応として2009年3月から国内工場で実施する機体の塗装剥離作業に「非メチレンクロライド系中性剥離剤」(PRTR法適用外の環境にやさしい材料)を導入しています。さらに海外工場の一部でも導入しており、順次拡大する計画です。 また、2005年3月期から塗料メーカーと進めてきた、クロムを含まない低VOC(揮発性有機化合物)型中塗剤の開発は、2010年3月期に最終試作品が完成し、実機の一部に試験塗装を実施しました。現在、実運用評価は良好で、塗装試験範囲を拡大・評価しつつ導入に向けて努力を続けています。 なお、上塗剤については2003年3月期から揮発性ガスの発生が少ない「低VOC外装塗料」を導入し、すでに全機対応を完了しています。

います(右上に行くほど、静かな航空機ということができます)。ANAが世界に先駆けて導入した最新鋭ボーイング787型機は、エンジンのシェブロンノズル(鋸歯状排気ノズル)、新素材などの最新技術を積極的に採用した結果、格段の騒音低減を実現した航空機であることが、このグラフからもわかります。

航空機材の改善 航空機の騒音を低減する静穏化技術実証機試験プログラムに参画し、ANAのボーイング777-300ER型機を使用した試験飛行と効果を基に、騒音の発生源(機体およびエンジン)の改良、航空機性能の改善に協力しました。 以下に、実施ならびに検討中の騒音軽減策の例を紹介します。

 また、防雪・防氷剤の使用量そのものを減らすため新型機材の開発導入と作業改善に努めていますが、2010-11冬季は、北海道・東北地方の大雪日数増加に伴い、使用量も増加しました。

吸音面積の拡大例

鋸歯状排気ノズルの例

全日本空輸株式会社102

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環境への取り組み

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方式 概要 離陸

着陸

離着陸

通常より高い高度(3,000フィート)まで離陸上昇を継続し、高騒音を極力空港地域内に収めるとともに、住居地域での高度を確保し騒音を抑制する。

フラップと脚を下げるタイミングを遅くし、機体の空気抵抗を減らして、必要なエンジン推力を減らし、騒音を抑制する。

最終着陸時使用するフラップ角を小さくセットし、機体の空気抵抗を減らして、必要なエンジン推力を減らし、騒音を抑制する。

滑走路の一方に居住地域がない場合、風向、風速から可能な限り、その方向で離着陸を行う。

空港周辺(低高度)で旋回などにより、居住地を極力迂回したり、河川上の経路を選択する。

非精密進入において、FMSのVNAV機能を使用し降下する方法。極力空港近くまで高高度を維持し、その後連続的に降下するため、エンジン推力の変化を抑え、騒音軽減を図ることができる。燃料節減効果もある。

空港周辺でRNAV/LLZを利用し、経路短縮とともに居住地を避けて飛行する。深夜帯の羽田では木更津(陸上)を通らず、海上でショートカットして着陸進入する。

※1. FMS: Flight Management System。飛行条件に応じて最適な速度や航路を計算し、これに基づきエンジン出力調整や操縦などの飛行管理を自動的に行う装置。※2. VNAV: Vertical Navigation。あらかじめ登録された降下経路情報により、一定の降下角での進入を可能とする機能。※3. RNAV(広域航法): Area Navigation。航空保安無線施設や衛星ならびに自蔵航法機器を利用して自機の位置を算出し、任意の経路を飛行する航法。※4. LLZ: Localizer。着陸時に、滑走路の中心から左右のずれを航空機に対して電波で示すシステム。

▶ANAが実施している主な騒音軽減運航方式

飛行方式の改善 地上に与える騒音影響を少なくするよう、種々の飛行方式を工夫しています。

滑走路

通常のコース

住居地域

滑走路住居地域

海住居地域

滑走路

河川

住居地域

着陸滑走路

通常のコース

住居地域

急上昇方式

ディレイドフラップ進入方式

低フラップ角着陸方式

優先滑走路方式

優先飛行経路方式

FMS※1のVNAV※2機能を利用した連続降下方式

RNAV※3/LLZ※4飛行方式

アニュアルレポート 2012 103

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ANAグループの3R活動

 ANAグループでは、機内・空港内や事業所で発生した廃棄物を再び活用していく、省資源・リサイクル活動を推進しています。

◆機内・空港内およびグループ内での 「クローズド・リサイクル」の促進 機内・空港内やグループ内事務所で発生する廃棄物を、再び機内・空港内や自社・グループ内で活用していくクローズド・リサイクルに努めています。 事業所で発生した使用済みOA紙を再生紙として活用するほか、使用後不要になった機内誌などを回収し、再び時刻表や事務用封筒、名刺などに再生させ、全国の事業所で使用しています。

省資源化への取り組み

機内誌(左)と機内誌からリサイクルした時刻表(右)

航空機整備 航空機の重心測定方法の変更(搭載済み燃料を廃棄せずに測定)

航空機塗装作業で使うシンナーなどの溶剤を委託会社で浄化して再利用

超高圧水でエンジン部品を洗浄して洗浄剤の使用量を削減

機内空調用活性炭、航空機格納庫排水処理用の活性炭の再利用

航空機エンジン部品、修理用アルミ端材を金属素材としてリサイクル

航空機内 国際線機内から出るごみ(ビン、缶)を分別回収 航空貨物部門 貨物防水・防塵用ビニールシートを固形燃料、ごみ袋とし

てリサイクル 地上施設・設備 雨水と厨房排水処理水(中水)の利用 空港内で使用した自動車などを金属素材としてリサイクル

◆その他の取り組み

◆制服のリサイクル 客室乗務員・地上係員や運航乗務員の使用済み制服を、元の繊維状態に戻して、自動車の吸音材として再利用しています。 なお、制服自体もペットボトルなどからのリサイクル素材でできています。

◆お客様手荷物梱包用ポリ袋のリユース・リサイクル 2010年9月より羽田空港において、お客様の手荷物やベビー・カーなどを梱包するために使用していたポリ袋のリユース・リサイクルを行っており、他空港にも拡大中です。

羽田空港での梱包用ポリ袋回収

全日本空輸株式会社104

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ANAグループ 単位 ANA単体 合計 オゾン層破壊 ハロン・フロン(航空機) 全排出量 kg 0 0 水資源 水資源の消費(建物での使用)合計 万トン 37.1 59.2 自然生態系破壊 水質汚染 廃水処理(建物での使用)量 万トン 5.4 13.9 航空機防除氷液の使用量 kℓ 右記に含む 1,521 有害物質 PCB(ポリ塩化ビフェニル)保管量 トン 7.2 13.8 地球温暖化 森林破壊 紙の使用量 トン 右記に含む 5,382 エネルギー エネルギー消費(原油換算) 総計 原油万kℓ 276 329 航空機エネルギー(原油換算)消費 原油万kℓ 272 322 地上エネルギー(原油換算)消費 原油万kℓ 4.49 6.28 (機体電力供給含む) 航空機 燃料消費 万kℓ 286.8 340.6 消費量(提供座席キロ当たり) L/100ASK 3.62 3.63 大気汚染 全保有数 航空機 機 右記に含む 226 自動車 台 右記に含む 3,978 低公害車保有割合 % 右記に含む 25 CO2(二酸化炭素)排出量 総計 万トン-CO2 714 850 航空機(総排出量) 万トン-CO2 706 839 航空機排出量(提供座席キロ当たり) kg-CO2/RTK 右記に含む 1.13 地上設備・自動車(総排出量) 万トン-CO2 8.4 11.1 NOx(窒素酸化物) (航空機のLTOサイクル※での排出量) 万トン-NOx 0.53 0.61 HC(炭化水素) (航空機のLTOサイクル※での排出量) 万トン-HC 0.07 0.08 CO(一酸化炭素) (航空機のLTOサイクル※での排出量) 万トン-CO 0.39 0.48 上空投棄 燃料:航空機 総投棄量 kℓ 右記に含む 163 回数 回 右記に含む 2 廃棄物 廃棄物 排出量 総計 万トン 右記に含む 2.36 機内ごみ・し尿ごみ 合計 万トン 右記に含む 1.76 (地上)全廃棄物合計 万トン 0.34 0.61

上記のデータは、2012年3月期におけるANAおよび連結子会社の一部(航空輸送、航空機整備、グランドハンドリング、ケータリング、車両整備、ビル管理など)の環境にかかわるものを集計したものです。なお、連結子会社の一部データは集計に含まれていません。※ ICAOの定める離発着標準モデル

▶2012年3月期環境データ一覧

 環境に関する2012年3月期のデータをまとめました。ANAグループが環境や社会に及ぼしている影響について、数値やグラフでご報告します。

ANAグループ環境データ

主要環境データ

航空機のCO2排出量の推移

1,000

800

600

200

400

0

(万トン)

2008 2009 2010 2011 2012ANAグループ(国内線・国際線合計)ANA(国内線・国際線合計)

(3月期)

835

711806

677759

614

799

627706

839

5.4 5.76.4 6.3 6.3

地上エネルギー消費量の推移

8

6

4

2

0

(原油換算: 万kℓ)

2008 2009 2010 2011 2012

ANA グループ会社 車両 AGP※ ※ AGP: Airport Ground Power

3.6 3.74.5

0.80.8 0.9

0.7

4.5 4.5

0.51.0

1.00.7

1.00.6

0.3 0.30.3 0.2 0.3

アニュアルレポート 2012 105

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乗員訓練センター&ビジネスセンタービル

ANAケータリングサービス羽田ターミナル地区成田ターミナル地区

機体メンテナンスセンター(羽田)エンジンテストセル

エンジンメンテナンスビルコンポーネントメンテナンスビル機体メンテナンスセンター(成田)

10,516

7,232

4,510

3,065

2,951

2,397

2,269

1,476

1,421

主要事業所のエネルギー消費(原油換算: kℓ)

4,0000 8,000 12,000

年間エネルギー消費の内訳(機体への電力供給含む)(2012年3月期)(原油換算: %)

地上エネルギー 2

航空機エネルギー98

地上エネルギー消費の内訳(2012年3月期)(%)

施設用燃料 6

熱 11

ガス 2

電力 81

4.5万原油kℓ

主要事業所のエネルギー消費の推移(原油換算: kℓ)

2008 2009 2010 2011 2012

 BCビル(IT+運航訓練室)  原動機センター(テストセル含む) 羽田ターミナル地区  成田ターミナル地区 機体メンテナンスセンター(羽田)  機装センター 機体メンテナンスセンター(成田)

12,000

6,000

4,000

14,000

2,000

0

地上エネルギー消費量 震災後の電力不足のため、徹底した節電や省エネ対策を実施しました。 総量としては、ANA単体では大きな変化はなく、新たにANAテレマート(株)長崎コールセンターや(株)ANAケータリングサービス川崎工場の稼働といった、使用エネルギー絶対量の増加要因がありましたが、前期並みの水準となりました。また、原単位については、大きく減少しています。

廃棄物の排出量 ANAグループ全体では23,645トンの排出量となりました。 航空機系廃棄物の収集範囲の変化により、全体総量としては約2,400トン程度増加しましたが、その他一般廃棄物、産業廃棄物量は若干の減少となっています。 航空機系ごみはANAグループの廃棄物全体の約7割と多くを占めていますが、し尿処理量を除き機内ごみだけを見ると減少しています。 地上から出るごみは、全体の中では3割弱です。産業廃棄物では廃棄プラスチックの割合が多く、削減努力は行っているものの産廃全体の中の3割強を占めています。一般ごみ、産業廃棄物ともに、今後とも3R活動を一層進めていきます。

22.8 23.6 23.521.2

23.6

廃棄物の排出量の推移

30

20

10

0

(千トン)

2008 2009 2010 2011 2012

一般廃棄物(航空機系) 一般廃棄物(地上系)産業廃棄物(一般+特別)

17.6 17.2

3.52.9 2.4

3.8

17.3 14.9

3.82.5 3.7

17.5

2.42.82.4

全日本空輸株式会社106

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廃棄物の内訳(2012年3月期)(%)

一般廃棄物(地上系)15

産業廃棄物(一般+特別)10

機内ごみ 14航空機汚水 61

23,645トン

産業廃棄物の内訳(2012年3月期)(%)

廃油 11

廃酸 1廃アルカリ 8

動植物性残さ 10

木くず 8

汚泥 17金属くず 8

廃プラスチック 37

その他 0

2,425トン

紙の消費量 ANAグループ全体では5,382トンの消費実績となりました。前期比7%(440トン)減少しています。時刻表、旅行パンフレット、カレンダー、機内誌など営業活動に関連するものが前期に続き減少しています。 紙類使用量は2007年3月期と比較すると半減しています。全体の紙類使用量は大きく削減させたものの、事務所内で使用するコピー用紙はほぼ前期並みの使用量でした。

9.98.9

7.3

5.8 5.4

紙の使用量の推移

10

6

4

2

0

8

(千トン)

2008 2009 2010 2011 2012

旅行パンフレット 時刻表 機内誌『翼の王国』カレンダー 航空券 OAコピー用紙

4.7 4.4 3.4 2.6 2.3

2.3

1.9

0.40.10.5 0.4

0.10.5 0.3

0.10.5 0.4

0.20.4

0.40.10.4

1.4

1.2

1.1 1.1

2.01.7

1.1 1.1

自動車保有状況 ANAグループ全体で、3,978台(リース車を含む)の自動車を運行しています。低排出ガス車の保有数は102台増加し、985台となりました。タグ車、フォークリフト車を中心に電気自動車の保有が58台増加し、200台になりました。伸び率は前期比40%増となっています。 また低公害車の全体に占める割合は25%となり、前期より1%増加しています。

自動車保有台数の推移

4,000

3,000

2,000

1,000

0

(台)

2008 2009 2010 2011 2012車両総台数 低排出ガス車

(3月期)

3,076

594

3,429

669

3,520

794

3,693

883 985

3,978

保有する自動車の内訳(2012年3月期)(%)

登録車 17

非登録車 833,978台

低排出ガス車の内訳(2012年3月期)(%)

電気自動車 20

ガソリン/軽油 低排出ガス車 78

ガソリン/軽油ハイブリッド車 2

985台

アニュアルレポート 2012 107