発達が気になる子どもの理解と対応 ~感覚統合の視 …...感覚処理(Sensory...

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発達が気になる子どもの理解と対応 ~感覚統合の視点から~ 2016年7月11日 うめだ・あけぼの学園 作業療法士 酒井康年 埼玉県保育士会 特別研修会

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発達が気になる子どもの理解と対応 ~感覚統合の視点から~

2016年7月11日

うめだ・あけぼの学園

作業療法士 酒井康年

埼玉県保育士会 特別研修会 Ⅰ

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感覚統合理論を使うとき

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感覚統合理論は 子どもたちを理解するために使います

• 行動を理解する(推測する)

• 感じていること、考えていることを理解する(推測する)

• 好きなこと、嫌いなことを理解する(推測する)

• 困っていることを理解する(推測する)

• 助けてほしいことを理解する(推測する)

• どうやってあげれば良いかを理解する(予測する)

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嫌いなこと、怖いこと、不安に思うこと

• 音が嫌い 耳をふさぐ

• 新しい場所が怖い

• 暗いところに入りたがらない

• 狭い場所が嫌だ

• 高いところが嫌い

• 揺れるところが嫌い

• 段差が嫌い

• 触られることがきらい

• 絵の具がきらい 粘土がきらい

• 嫌いな服がある

• 歯磨き 耳かき 頭洗い

• 帽子 靴下 マフラー 手袋

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好きすぎること、やりすぎること

• 回るものを見る

• キラキラしているものを見る

• 自分が回る • ジャンプする • つま先歩き • トントンする • ツンツンする • 叩く • 舐める

• 噛む • 匂いを嗅ぐ • 布団 • タオル • 母の二の腕 • 敷き布団の下 • 水 • ぶら下がる

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「ヘンだな」と思うこと

• 物を触る

• 指しゃぶり

• 目の前で手を振る

• 横目で見る

• ベタベタする

• ロッキング

• 並べる

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感覚のこと

• 一般的な感じ方と異なる感じ方にある子がいる。

• 感覚の感じにくい(鈍麻)子と感じすぎる(過敏)子がいる。

• 生活の現れへの影響

• 発達障害 と 生活障害

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感覚のこと

• 一般的な感じ方と異なる感じ方にある子がいる。

• 感覚の感じにくい(鈍麻)子と感じすぎる(過敏)子がいる。

• 生活の現れへの影響

• 発達障害 と 生活障害

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このビデオから学べること

• 感覚の感じ方の違いについては、後ほど

• このような感覚を感じ取り、生活のしずらさを抱えつつ暮らしている人がいるということを知らせてくれる

• 私には感じないもの、気づかないものを、感じ・気づく人がいるということを知らせてくれる

• 私の持っている感覚世界の当たり前は、他の人にとってはどうなんだろう??

• 感じ方が異なれば、心持ちは大きく異なるだろう

• 感じ方をのぞきつつ、その人の心持ちに想いを馳せることが重要

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感覚過敏の世界 自分と環境の境界も自覚できにくい。

見るもの、聞くもの、触るものがすべて

絡まり合って、感覚機能が無統制のま

ま入り乱れた世界に生きている。

まるで万華鏡の世界に身をおき、雑

音だけのラジオが音響スィッチが故障

したままで鳴り響いたり、突然消えたり

する。完全な混乱の中で、危険な襲撃

者に追われ続けているような、激しい

恐怖、パニックあるいは興奮の状態を

想像してほしい。

(テンプル・グランディン)

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感覚上のトラブルの例

• 触覚防衛 • 聴覚防衛 • 姿勢不安 • 重力不安 • 視覚防衛 • 聴覚防衛 • 偏食 • 探求行動 • 自己刺激行動 • 感覚遊び • 感覚無視 • 偏食

• 特定の衣服しか着ない • 特定の衣服を着られない

• 人に触られることを嫌がる(自分からはくっつくのに)

• 人が近づくと逃げる、切れる • 指先で物をもつ • トイレに座ることを嫌がる • 靴下をはけない or 脱げない • 大きい音or特定の音が苦手 • 光が苦手 • 高いところが苦手 • 揺れる物が苦手 • 机の下に頭を入れることができない • 新聞をめくる音、ビールを開ける音

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感覚のこと の 生活障害 の波及 本人の生活への影響

• スキンシップができない • 顔がふけない • 歯磨きができない • 頭を洗うことができない • 髪の毛が切れない • 耳掃除ができない • 爪を切れない • 抱っこでないと寝ない • おんぶができない • ベビーカーに乗らない • ある音が苦手で店に入れない

• 特定のメーカーの食品しか食べない

• 小さな音でも、泣いて嫌がる • 長い時間寝ることができない

本人の生活へ影響したことの家族への影響

• 当たり前の子育ての、子どもを可愛がる行為ができない

• 当たり前の子育ての、セルフケアと呼ばれる、身支度ができない。清潔が保てない

• 身の回りのことができず、周囲から非難される(かもしれない)

• 家事行動や、外出行動が大きく制限される

• 食品選択の自由が制限される

• 夜の自由な時間が制限される

• 親が睡眠不足になる。疲労の蓄積。ストレスの増大。

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感覚統合理論を使うとこんなことができます

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感覚防衛に対して

対応方法の原則

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感覚過敏への対応 〜対応の方向性〜

• 症状の改善

–そもそも、音が嫌ではなくなる

–触ることが平気になる

• 自分の症状とのつきあい方を学ぶ

–準備体操をしてからであれば、粘土に触れる

–手ふきタオルがあれば、絵の具に触れる

• 自分の症状の回避の方法を学ぶ

–服のタグを切る

–必要なときにイヤーマフをつける

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感覚過敏への対応 〜対応にあたっての大前提〜

• 本人の「イヤ」「コワイ」「キモイ」は尊重する。

–ずっとそのままで良いという意味ではない。

• 何はなくとも、状況と思いを理解すること。

–理解することは支援への第一歩

• 「慣れ」 は考えない。

–絶対ないとは言えないが、誤学習と悪影響への懸念。

• 「記憶を書き換える」ことへの取り組み。

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感覚過敏への対応 〜対応の原則〜

• 得体が知れない ⇒ 得体の紹介

• 因果関係の明確化

• 主体的関与

• 自己の操作

• 目的を持つ

• 刺激の量の調整

• 予測と準備

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必要なのは

• 能動的な学習

• 「刺激を入れる」ことではない。脳が自分の体験として獲得すること。脳は、人は、機械ではない。刺激を入力すれば、勝手に脳が変わってくれるわけではない。100%変化しないとは言えないが、、、。

• 大切なのは、我慢したり、繰り返すことではなく、記憶の書き換え作業。意味ある経験、活動の繰り返し。

• 結果が出ているからといって、プロセスが正しいとは限らない

• 適切なコミュニケーション

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感じにくいとき 感覚がたくさん欲しい時

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好きすぎること、やりすぎること

• 回るものを見る

• キラキラしているものを見る

• 自分が回る • ジャンプする • つま先歩き • トントンする • ツンツンする • 叩く • 舐める

• 噛む • 匂いを嗅ぐ • 布団 • タオル • 母の二の腕 • 敷き布団の下 • 水 • ぶら下がる

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Sensory Needs (センソリーニーズ/感覚嗜好)

• ある感覚に対する好み、嗜好性

• 誰にでも、大なり小なりある

• 複数の感覚に対して持っていることも

• 一般にはくせ、遊び、趣味などの形になっている

• Needsがあることは、問題があることを意味しない

• Needsを知ると、行動を理解することの一端になることがある

• Needsを介すると仲良くなれる確率が高くなる

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コミュニケーションに対して

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Sensory needsを介して

• 苦手な感覚がわかり

• Needsがわかれば

• 本人が喜ぶ形の遊び方、関わり方がわかる

• 仲良くなれるチャンスが増える

• コミュニケーションが成立する sensory communication

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感覚のトラブルに対する対応

• 「やめさせる」は至難の業

• 「やめさせる」必要性は、本当にあるのか

• 社会的に容認される形への変更は考える必要がある

• “趣味の時間”としての理解

• その行動を“抑制”するのではなく、その行動を“制御・調整”できることを考える。(本人が)

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Sensory Diet

• 「一日を通して人が経験する感覚入力(活動と感覚)の種類と量のことを指す。効果的な感覚栄養によって、人は落ち着き、集中力に満ち、冷静で的確な判断をし、ひいては何かを学んだり物事に対して適切に反応できるようになる」

– Johanna M.Anderson:自閉症とその関連症候群のこどもたち,協同医書出版社,2004.p15

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行動調整に対して

• 動きたい やりたい という思いが強い場合 – 「いかに止めるか」「やめさせるか」ではなく

– 「いかにできるか」「どこでならできるか」を考える

• 同時に、その枠組みをどう提示するか – いつまで

– どれぐらい

– どこまで

• 勝手行動と社会的行動 – 枠組みないと、自分勝手な行動

– 枠組みの中の行動にすることによって、社会的行動になっていく

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合法的離席と社会的行動

• 勝手に走り回る =勝手行動

• 先生の指示や大人の許可があって行う行動 =社会的行動 ≒合法的行動

–大人の言うことを聞かせることではない

–他者の言いなりになることを求めるのではない

–やみくもに抑え込めば良いということとも違う

• 社会的な目じるしに、自分の行動を合わせていく力 =社会的行動

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感覚のトラブルについて

※自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)

⇒多くの人が、感覚のトラブルを持つ

※感覚のトラブルを持つ人

⇒ASDの可能性もある

⇒他の障害でも、トラブルを持つ人はたくさんいる

⇒定型発達でも、トラブルを持つ人はたくさんいる

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子どもたちの育ちの助けのために

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感覚統合(Sensory Integration; SI) 感覚処理(Sensory Processing)とは

外界や身体内部から伝わってくる様々な感覚刺激を適切に処理し適応行動に結びつける際の脳の中でのプロセスをいう

足の内側の触覚

関節や筋肉の 感覚

頭の傾き

視覚

脳 (感覚統合)

感覚刺激の 交通整理

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感覚統合の原則

• 原則1 感覚は脳の栄養素

物理的な栄養は食べ物から

機能的な栄養は感覚情報から

• 原則2 交通整理をする

• 原則3 感覚統合は発達する

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スキンシップの観点から

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子どもの発達における 環境との相互作用

スキンシップにおいて

• 子どもの発達においてスキンシップは大変重要

• スキンシップなどを通じて、アタッチメント/愛着を形成する

• アタッチメントという安全保障ができるからこそ、冒険に出て行かれる

• ヒトの赤ちゃんはくっついてもらうことの天才 赤ちゃん学会編「赤ちゃん学CAFE Vol.1」 より

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ぴったりくっついている感じ

いいにおい♪

手で、しっかり固定

あったかいし

寄りかかれる安心感、ホッ

心地よい布 包まれる感じ

いいこえ♪ いつものリズム♪

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子どもの発達における 環境との相互作用

スキンシップ(だけではないけれど)を通して、アタッチメントが形成されることで

–心地よさ

–人への信頼感

–気持ちを落ち着けること

– この世での安全基地

などを、経験の中から、学んでいくと考えられる。

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スキンシップに含まれる要素を 整理してみよう

mothering

• 触覚:触れられる、包まれる

• 固有覚:トントンというリズミカル刺激(パッティング)、ぎゅっと圧迫される

• 前庭覚:軽く揺れる、リズミカルに

• 聴覚:リズミカル、静かな、優しい、心臓の音?

• 視覚:優しい、笑顔

• 嗅覚:いいにおい、いつものにおい

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渾然一体となった

同時的体験

肌のぬくもり

母や父の身体に押し付けられた圧迫感

自分の肌に触れる布

鼓動の音や語りかける声

匂い

包み込む愛情

我々の体験は

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感覚は脳の大切な栄養素

• 脳の情報=感覚刺激

• その感覚刺激としては、五感

視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚

• 感覚統合では

触覚、前庭感覚、固有感覚

• 感覚情報は脳の発達にとって、非常に大切な栄養素です。

物理的な栄養は食べ物から

機能的な栄養は感覚情報から

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感覚

• 視覚

• 聴覚

• 味覚

• 嗅覚

• 表在覚(触覚・痛覚・温冷覚)

• 固有受容覚

• 前庭覚

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触覚

• 自分を包んでくれる。安心感の提供 →情動の安定 • 覚醒の調整 • パーソナルスペース

• 素材や対象物を識別する

• 自分から触ることと触られることは大きく異なる –アクティブタッチとパッシブタッチ

–自分でくすぐるとくすぐったくない

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固有受容覚

• 関節と身体運動、及び身体と身体部位の空間での位置の感覚。

• 筋肉の中の受容体からの感覚でつかむ。

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固有受容覚

• 自分の身体のポジションや運動の状態を把握するときに重要な役割

• 「からだで覚える」ときに重要

• 力加減を行うときにも重要

• 情動の安定に影響する

• 覚醒の調整

• 振動、衝撃、圧、曲、速

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前庭覚

• 空間の中での頭部の位置と運動に関する感覚。

• 姿勢の調整

• 傾き、スピード、揺れなど。

• 平衡感覚。

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前庭覚

• 自分の行っている運動を把握するときに重要

• 情動に影響

• 覚醒の調整

• 自律神経にも影響

• 眼球運動と大きく関係する

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各感覚に共通する特徴

• 好みがある

• 精度が異なる

• 個人差がある

• 覚醒への影響

• 情動への影響

覚醒を 情動を 覚醒を 情動を

あげる 起きる

あげる 下げる 寝かす

落ち着かせる

一般的な傾向

不規則な、急な、強い 規則的な、リズミカルな、おとなしい

一般的な例として

例えば

触覚

くすぐる さする かく ひっかく つねる 熱冷

なでる 包む くるむ 暖める

固有

急に強くたたく 貧乏揺すり

トントンとパッティング キュッ ギュー

前庭

ジェットコースター 落下 地震

ロッキングチェア 電車 ハンモック

視覚

チカチカした光 まぶしい 動く光 フラッシュ

暖色系の 明度を落とした コントラストの低い 無

聴覚

ハードロック 叫び声 突然の音

ゆったりしたリズム クラシック(?) 無

嗅覚

刺激的な スパイス 異臭

刺激の少ないハーブ お香

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どの感覚にも共通の特徴

みんな同じ感覚を生きているとは限らない

大切にしたい 七感 味覚 嗅覚 視覚 聴覚 触覚 前庭感覚 固有感覚

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Sensory Needs (センソリーニーズ/感覚嗜好)

• ある感覚に対する好み、嗜好性

• 誰にでも、大なり小なりある

• 複数の感覚に対して持っていることも

• Needsがあることは、問題があることを意味しない

• Needsを知ると、行動を理解することの一端になることがある

• を介すると仲良くなれる確率が高くなる

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運動発達の観点から

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子どもの発達における環境との相互作用

• 姿勢をコントロールする経験から、自分自身が安全でいられることを経験する。

• 重力や身の回りの空間との関連で自分の体を信頼するようになる。

• 自分の体をコントロールする基本的な力を得ることで、今度は、環境をどれだけコントロールできるかを試すようになる。

• 走る、登る、運ぶ、投げる、 押す、引くといった活動で、 自分の身体的協調性と力 をチャレンジしていく。

Play:A Skill for Life, American Occupational Therapy Association,1986

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思ったように身体が動くって? • ランダムな動きの中から、意図した運動を学習していく

• シンプルな運動の学習から

• 「触るには、どうする」というような、行為自体が一つの運動で成立するシンプルな内容

• その時の運動の学習は、「こう動かしたら、こういう結果になる」「修正して、こう動かしたら、あ、こうなる」という段階(トライ先行)から、結果を予想して「あそこに触るために、これぐらい動かそう」という段階(結果先行)へと進んでいく。

– 運動の順モデルの獲得から逆モデルの獲得へ

• 次第に、「つかむ」という行為になると、「リーチする」「つかむ」という少なくとも二つ以上の運動が関与する内容に

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子どもの発達における感覚統合の役割

http://ameblo.jp/nepal-nikki/entry-10237152940.html

http://yaplog.jp/bunnymama/archive/123

これって、オレの身体!? オレの身体って、こんな感じ!?

いつも見えるこの物体??

!! 動いている感じ!!

動け!! おなじもの!!

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これって、オレの身体!? オレの身体って、こんな感じ!?

重力が重い頭を引っ張ります

!? あ、いかん、 頭が倒れる!

首をこっちにひっぱろう

あ、行き過ぎた

あ、戻しすぎた

よかった、ちょうどだ

首がまだグラグラ

している状態

この流れがスムーズに、自動的にできるようになることを、首がすわる、と言う

子どもの発達における感覚統合の役割

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この世に生まれるということ • 狭い子宮という世界から、広い制限のない世界に放り出される

• フィルターのかからない、直接経験される、各感覚経験

• 身体運動という点では、身体の重さ、重力の大変さ、思い通りにならなさ

• そういったことが、同時に、しかし自分に関わりのある形で提供されていく。刺激にさらされることが重要なのではない。適切な刺激量のコントロールと、経験していくことの重要性。

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子どもの発達における環境との相互作用

• 重力への抵抗として 首がすわる→腰が座る→四つばい→つかまり立ち→立位→ジャンプ・・・・

抗重力の動きを学んでいく。従重力の動きのコントロールは難しい。

• 環境に打ち克つことの経験 与えられた環境である、重力下に生きるという事を克服していく過程

• 環境を支配する 環境の中で、自由度を獲得し、自分でコントロールできるようになっていく

• 環境と仲良くなる。 与えられた環境に適応していく。床と馴染んだり、物に身体を合わせられる。

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Mana Video

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運動を通してできるもの

• 「オレの身体って、こんな感じ」というイメージをもつこと

–大きさ、長さ、重さ、広さ

–スピード、コントロール、パワー

• 「この身体はオレのもの」と実感できること

–自己の確認

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自分の身体を知る

• 運動を通じて、環境を経験していくと、その経験を通じて、「オレの身体ってこんな感じ」を豊かにしていく

• 豊かになった「オレの身体ってこんな感じ」を使って、新たにチャレンジをしていく

• 「オレの身体ってこんな感じ」を身体図式 Body Schema、身体像 Body Imageと呼ぶ

• 身体図式は、教えてできるものではなく、子どもが見つけていく、作っていくもの。子ども自身の活動が不可欠

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当事者の方々の著書

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乳幼児期に必要な運動経験

• 特定の運動技能・運動競技技術を習得することではない

• Splinter Skill(断片的技巧) • 繰り返し練習したことによって、獲得された技能。

• 様々な力の積み上げの上に獲得されたものではなく、特定の技術だけを限定的に習得した場合に使われる事が多い。

• ネガティブな文脈で用いられる事が多いが、状況によっては必要な事もある。

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乳幼児期に必要な運動経験

この環境の中に置かれた

与えられた自分の身体を

自分の力で

まかなえるようになること

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身体図式が変更されるとき

環境の中にあって

現状の身体(図式)では

解決し得ない

新たな課題に出会い

解決に向かうとき

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これはどう考えますか???

• よちよちMOON WALK 歩行補助 歩行器 ヨチヨチお歩きの補助グッズ

• ヨチヨチお歩きの救世主!

• 歩き始めたばかりの赤ちゃんのお歩き補助に!

• 歩き始めたばかりの赤ちゃんは、もう歩くのが楽しくて仕方ありません。

• これがあればコケて怪我をする心配もありませんね^^

• 少しでも早く自分の足で歩けるように、しっかりとお手伝いしてあげてくださいね♪

コケないような体にならない心配がありま

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安全に転ぶことができる環境作り 自己修正と試行錯誤

• 失敗は成功のもと

• 転ばないで歩けるようになる子はいない

• しかし、けがはしないように

• 転ぶことは子どもの権利

• けがをさせないのは大人の義務

• 身体的なけがだけでなく

• 心理的・精神的ななけがにも注意が必要

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端を知る

• 自分のバランスの端っこ

• 自分のパワーの端っこ

• 自分のスピードの端っこ

• 自分の身体の端っこ

子どもたちは端を知る遊びが好き

転ぶことができるのは、若いうち

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発達が気になる子は

端を知る前に • 力尽きてしまう:身体的持久力 • 力尽きてしまう:心理的耐久力 • 心身共に不器用ゆえに、試行錯誤が集約しない • 集中力が切れてしまう • 他に注意が逸れてしまう

• 目的理解が不充分:端を拡げるのではなく、端は限界と感じてしまう。チャレンジが難しい

• 探索が弱い:いつもと同じパターン:端は知るよしもなく、今の点のみに

• 自分の身体に可能性があることを知らない • 実際に自分の身体に可能性が極めて少ない

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感覚統合で大切にしていること

• Inner Drive(内的欲求)

–すべての子どもには、感覚統合を発達させるための内的欲求がある (Ayres)

A.J.Ayres:子どもの発達と感覚統合,協同医書出版社,1982.P22

• Therapy Should be FUN!!

–楽しくなければセラピーではない、楽しいだけでもセラピーではない (小西)

• マニュアルではない、オーダーメイドのプログラム

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【こうしたらいい】 の使い方

• 「何のためにやるか」を考える

• 楽しくやる →楽しかったらOK 体験できればOK – 遊びとして

– 感覚運動体験として

– 活動の経験として

• 感覚統合療法としてやる – その活動が、本人の必要な機能にあっているか(評価)

– その活動が、本人の好きな活動にあっているか(計画)

– その活動の段階が、本人の機能向上段階にあっているか(判定)

– <できないことを繰り返し練習する>ことでも<できることを繰り返す>ことでもない

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Richな環境

• 5感をフルに活用できる

• その年齢で処理できる情報量に適した、過不足ない

• ある程度整理された

• 能動的に関わることが出来て

• チャレンジができる

=探索行動・探索活動が保障される環境

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協調性と協応性 自動化と努力性

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よく聞かれること

• スキップ

• 縄跳び

• 跳び箱

• 自転車

• 文字

• はさみ

• 紐結び

• 体操・お遊戯

• 折り紙

• 公園での遊び

• 自転車

• 転ぶ

• 笛、ピアニカ

• 箸

• ブランコ

• 定規で線を引く

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行為機能と運動企画

行為機能 Praxis • Ayers:行為機能を「不慣れな行為の順序を考え、構成し、そして実施する脳の能力」「運動パターンを別の目的に応じた用い方をするために必要となる概念操作/運動企画能力」

• 意図的な行いを示すもの 運動企画 Motor Planning • 脳のなかにおける活動のための「図式」 • 身体図式、感覚運動知覚を基礎

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身体図式に関連する3つの概念

• 身体図式 Body Schema

意識下の機能、触・固有・前庭が重要、行動・行為・運動の重要な材料。機能的には皮質下でコントロールされている

• 身体像 Body Image

意識化されているもの、図式に加えて視覚が重要な役割、行動・行為・運動のモニターも。皮質下と皮質にまたがってコントロールされる。

• 身体概念 Body Concept

意識レベルで操作されるもの、知識、聴覚が重要な役割。身体像にコトバによるラベリングがなされる。皮質レベルによってコントロールされる。

• 小西紀一:対象操作機能と適応反応,感覚統合研究10:17-24,2004.

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運動の自動化

• 背景で働く自動性を新たに精緻化し、動作の調整を一つずつ低次のレベルへ切り替えていくこと

(ベルシュタイン:デクステリティ,p234)

• 行為機能を必要としないレベルになっていく

• 参照:行動の階層性

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二重課題 Double Task

• 複数の課題を同時に行う

• 「 ~ しながら ○○ する」

• ワーキングメモリーの資源の影響や注意の配分能力の影響を受ける

• 何が二重課題になるかは、人によって大きく異なる

• 運動+運動や運動+認知、認知+認知など様々な組合せがあり得る

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発達障害作業療法学 (作業療法学 ゴールド・マスター・テキスト 7),メジカルビュー社,2011

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ニキリンコ・藤家寛子 自閉っ子、こういう風にできてます!

花風社、2004

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自閉は身体障害

• すべてがマニュアル操作

• 定型発達の人には想像しにくい

• この身体がふつうだと思っていたので、定型発達の人たちがそれほどラクをしているとは想像していませんでした

• 目がオーバーフローする

• P39

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発達障害当事者研究 綾屋紗月・熊谷晋一郎 医学書院 2008

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人はなぜ声を出せるのか

なぜ人びとは「その場にちょうどいい発声」をやすやすと決定し、話をすることができるのだろう。私の場合は、「どのくらいの声量で?」「どんな声質で?」「声の高さは?」「しゃべり方は?」『どのようなイントネーションで?」「どのタイミングで?」「呼吸との兼ね合いは?」「どんな表情をしながら?」といった大量の決定すべき具体的な項目が毎回立ち現れ、それらの所作をすべて手探りで調整し、「発声」というひとつの行動に結びつけなければならない。

P143

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まとめ

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理解することから始めよう

• こういったことに対して「どう対応するか」がもっとも気になるところ・・・?

• どう対応するかの前に、どう理解するかを考えたいと思います

• 理解することだけでは、何も変わらないと思うかも知れません。

• でも、理解できないことは、支援につながりません

• 理解できることは、支援につながります

• だから、理解することは、支援の第一歩です

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まとめ

• 遊んで育てる=一人では豊かな遊びの展開が困難な子どもを支援する

• 豊かな遊びの展開ができれば、自分で様々な経験を、学習を蓄積することができる

• 発達につまずきがあると、その学習が妨げられる。

• 発達障害は障害です。「○○ができない」ことが障害なのではなく、そのことにより「様々に学習ができない」ことが障害されている

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脳の栄養となるきっかけ

栄養となり得るのは、チャレンジするとき

自己の身体を更新する事態に遭遇するとき

Sensory dietとして

スキンシップが該当

私たちが行うクセも該当

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子どもたちを支援するために

できないことがすべて課題になるわけではない。

発達全体の中で何を課題とし、何を支援の対

象とし、何を本人の得意なものとして伸ばして

いくか。一人一人について、考えていく。

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分かるために どこに挿入する?

• 判断すべき情報を減らす

• 判断しやすくする

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感覚統合がお手伝いしたいこと

• 運動すること

• 形ができるようになること、も大切ですが、すべてではない

• エラーをして、繰り返し挑戦すること

• ただし、けがをしないように(リスク管理) – 身体的なけが – 心理的なけが

失敗をすることは子どもの権利 けがをさせないことは大人の義務

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心理的・精神的なけが

• 「もうやだ」

• 「どうせ、ボクには」

• 「コワイ」

• うまくいかない子にとって、単なる繰り返しは、失敗の再生産にしかならなくなってしまう

• できることからコツコツと

• 「できた!」「ボクでもできる!」というステップの積み重ね

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A.J.Ayres:感覚統合と学習障害,協同医書出版社,1978.P168 Sensory Integration and Learning Disorders

おわりに

われわれは子供に適応反応を示すよう強制する

ことはできない。われわれにできるのは、適応反

応を引き出す可能性のある環境をあたえることの

みである。

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支援の原則

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支援を考える時のKey word ~可視化~

見えないもの 見えにくい もの

可視化

再び 見えない化

加えていく支援 足し算の支援 抽象化

減らしていく支援 引き算の支援

具体化

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支援を考える時のKey word ~構造化~

混沌としている

整理された環境

ファジーな環境

加えていく支援 足し算の支援 抽象化

減らしていく支援 引き算の支援

構造化

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少ない 多い

支援の量

環境から要求される、自分で学習する力

一般の 子育て環境

例えば 病院

セラピー室

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スモールステップの原則??

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対応策の選択肢

本人の力が向上することを期待する

環境調整によって、持っている力を引き出す

そのまま、放っておく (根拠と見通しとリスク管理を伴った見守り)

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成長に伴って

• 視覚情報 → 聴覚情報 ??

• 絵カードは卒業しないといけない?

• ライフステージに応じて、変更する必要はある。

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私の評価の視点

作業 環境

作業遂行

作業療法の視点 p55

3つの観点で評

価・分析を行っている。

それぞれの評価・分析の過程において、いつも感覚統合理論が、通奏低音のごとく流れている。

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行動調整に対して

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言葉と運動と行動

• 言葉には3つの働きがある ① 「コミュニケーションとしての手段」

② 「現実の深い分析と総合(概念の深化)」

③ 「行動の高次の調節器」

行動の調節器

• ルールを守る、約束を守る

• 青信号の言葉と赤信号の言葉

• 自己調整力のある言葉

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青信号と赤信号

• 赤信号は切り替えにも必要

• 気持ちの切り替え、やっていたことの切り替え

• ブレーキをかけてあげる

• 体全体にブレーキが行き届くまで

• 言葉でブレーキがかからない時は体にもブレーキを

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ブレーキのかけかた

• 離れたところから声をかける

• 近づく

• 小声で声をかける

• 歌をうたう

• 音を出す

• Body touch

• Plasure touch

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事後の指摘ではなく、事前の指示を

• 終わってから指摘することは無意味

• 次回は、今度とお化けは出てこない

• 次回には活かされない

• 今から行う行動に指示をする

• 直接指示と思い出すこと

• 失敗したら、そこで修正

• 今すぐできなければ、他でできるはずがない

• エラーの修正、プランの修正

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その場でリセット

• 「次 気をつけてね」はない

すぐにリセット

• 「その場」で、できなければ、「次」は来ない

• 「その場」で、できると、褒められる

• 「その場」が、失敗体験から成功体験になる

• 「次」に、「この前成功しているからよろしくね」というポジティブな話ができる

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交渉するときはToolで

コトバ

行動

Tool Tool

コトバ Tool

コトバ

他者からの関わり

子どもの表現

交渉

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~自分自身へのブレーキについて~

• できない約束はしない

– 本人が約束を守ることの大切さ、守れることを学ばない

– 大人からの働きかけが、結局無効であることを経験してしまう

• 確実にできる約束をし、認められる経験の蓄積を

• 小さい、些細なことからで構わない。

• 相手との関係を蓄積していくステップになるから

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前方連鎖アプローチ

Forward chaining approach

• 子どもがまず手順の第一段階を習得するのを助ける

• 次に、セラピストが残りのステップを実行し、手本を見せる。

• 子どもが最初のステップを習得したら、今度は2つめのステップまでを自分でやれるように練習する

• そうやってすべてのステップを身につけていく

Backwards chaining Reverse chaining

• 子どもとセラピストは一緒になって課題を行い、子どもは出来る範囲でセラピストを手伝いますが、最後のステップだけは一人でできるように練習します。

後方連鎖アプローチ 逆連鎖

不器用さのある発達障害の子どもたち 運動スキルの支援のためのガイドブックp45