季節調整法に関する最近の動向:X-12-ARIMA から …ARIMA...

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- 41 - 要約 2012 年、米国センサス局が独自に作成、配布を行ってい る季節調整プログラムを X-12-ARIMA から X-13ARIMA- SEATS へ更新した。X-13ARIMA-SEATS はスペイン中 央銀行の協力を得て米国センサス局が開発したものであ り、特筆すべき特徴は SEATS の導入である。SEATS 加えたことで、X-12-ARIMA SEATS を両方使えるよ うになり、これまでできなかった両者の比較、共通の診 断を可能にしている。こうした季節調整法の発展は、国 民経済計算の四半期季節調整系列の推計精度をさらに高 めていく可能性を持つものと考えられる。ただ一方で、 この SEATS が導入されたことでこれまでの調整法が一 変してしまうということはないことには注意すべきであ ろう。基本は X-12-ARIMA と変わらず、SEATS を含め いくつかの追加的な要素が加わったにすぎない。本稿で は、X-13ARIMA-SEATS が国内ではあまり紹介されてい ないことを踏まえ、X-12-ARIMA の機能の拡張を中心に、 その特徴について紹介する。 目次 1X-13ARIMA-SEATS への進化とその背景 1-1X-12-ARIMA と基本は変わらない 1-2.他国の季節調整について - SEATS を利用する 国は意外に多い 2X-13ARIMA-SEATS の詳細 2-1X-12-ARIMA<Version 0.3> での変更点 2-2regARIMA における新たな回帰変数 2-2-1.季節性外れ値(Seasonal Outlier)と一時的 レベルシフト(Temporary level shift2-2-2.制約付きストック曜日要因回帰変数 Constrained Stock Trading Day Regressors【補論:Genhol について】 2-3.新たな検定方法など 2-3-1SEATS に利用される新たな診断方法 2-3-2spectrum スペックの追加 2-3-3.ユーザー定義の回帰変数(User-defined holiday regression)のグループ検定 2-3-4AICC 検定での lom loq の追加 2-3-5.安定した季節性の存在に関するモデルベ ース F 検定 3.国民経済計算の四半期系列における X-13ARIMA- SEATS の利用 1X-13ARIMA-SEATS への進化とその背景 1-1X-12-ARIMA と基本は変わらない 2012 年、米国センサス局が独自に作成、配布を行っ ている季節調整プログラムを X-12-ARIMA Version 0.3 X-13ARIMA-SEATS Version 0.1( 以 下、X-13A-S)へ 更新した。数多くの米国統計を取り扱う米国センサス局 内でも、X-12-ARIMA の利用から X-13A-S の利用への 移行が進んでいるという。X-13A-S はスペイン中央銀行 の協力を得て米国センサス局が開発したものであり、ウ ェブサイト 2 ではその特徴として、以下の 4 つのポイン トが挙げられている。 広範囲にわたる時系列モデルの作成、誤差項が ARIMA モデルに従う線形回帰モデルのモデル選択 機能(regARIMA モデルの利用) 季節調整法に関する最近の動向:X-12-ARIMA から X-13ARIMA-SEATS 野村證券金融経済研究所経済調査部エコノミスト (元内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部企画調査課政策調査員) 野木森 1 1 本稿作成に当たっては、内閣府経済社会総合研究所の豊田欣吾前国民経済計算部長(現内閣府大臣官房審議官(大臣官房・経済社会シ ステム担当))、二村秀彦企画調査課長、木滝秀彰企画調査課課長補佐、茂呂賢吾国民支出課長、植松洋史国民支出課課長補佐、三谷将 大国民支出課課長補佐、松本雅子国民支出課研究専門職をはじめとする国民経済計算部の職員、高部勲氏(内閣府経済社会総合研究所 特別研究員)、Craig McLaren 氏(OECDOffice for National Statistics)から有益なコメントをいただいた。また、2012 3 月の米国セン サス局訪問の際には、David Findley 氏、Brian Monsell 氏、Demetra Lytras 氏に季節調整に関する様々な情報を提供していただいた。本稿 を通じてお世話になった方々に感謝の意を表したい。なお、本稿の内容は筆者が属する組織の公式の見解を示すものではなく、内容に 関しての全ての責任は筆者にある。 2 http://www.census.gov/srd/www/x13as/

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要約

2012 年、米国センサス局が独自に作成、配布を行ってい

る季節調整プログラムをX-12-ARIMAからX-13ARIMA-

SEATS へ更新した。X-13ARIMA-SEATS はスペイン中

央銀行の協力を得て米国センサス局が開発したものであ

り、特筆すべき特徴は SEATS の導入である。SEATS を

加えたことで、X-12-ARIMA と SEATS を両方使えるよ

うになり、これまでできなかった両者の比較、共通の診

断を可能にしている。こうした季節調整法の発展は、国

民経済計算の四半期季節調整系列の推計精度をさらに高

めていく可能性を持つものと考えられる。ただ一方で、

この SEATS が導入されたことでこれまでの調整法が一

変してしまうということはないことには注意すべきであ

ろう。基本は X-12-ARIMA と変わらず、SEATS を含め

いくつかの追加的な要素が加わったにすぎない。本稿で

は、X-13ARIMA-SEATS が国内ではあまり紹介されてい

ないことを踏まえ、X-12-ARIMA の機能の拡張を中心に、

その特徴について紹介する。

目次

1.X-13ARIMA-SEATS への進化とその背景

1-1.X-12-ARIMA と基本は変わらない

1-2.他国の季節調整について - SEATS を利用する

国は意外に多い

2.X-13ARIMA-SEATS の詳細

2-1.X-12-ARIMA<Version 0.3> での変更点

2-2.regARIMA における新たな回帰変数

2-2-1.季節性外れ値(Seasonal Outlier)と一時的

レベルシフト(Temporary level shift)

2-2-2.制約付きストック曜日要因回帰変数

     (Constrained Stock Trading Day Regressors)

 【補論:Genhol について】

2-3.新たな検定方法など

2-3-1.SEATS に利用される新たな診断方法

2-3-2.spectrum スペックの追加

2-3-3.ユーザー定義の回帰変数(User-defined

holiday regression)のグループ検定

2-3-4.AICC 検定での lom や loq の追加

2-3-5.安定した季節性の存在に関するモデルベ

ース F 検定

3.国民経済計算の四半期系列における X-13ARIMA-

SEATS の利用

1.X-13ARIMA-SEATS への進化とその背景

1-1. X-12-ARIMA と基本は変わらない

2012 年、米国センサス局が独自に作成、配布を行っ

ている季節調整プログラムを X-12-ARIMA Version 0.3 か

ら X-13ARIMA-SEATS Version 0.1(以下、X-13A-S)へ

更新した。数多くの米国統計を取り扱う米国センサス局

内でも、X-12-ARIMA の利用から X-13A-S の利用への

移行が進んでいるという。X-13A-S はスペイン中央銀行

の協力を得て米国センサス局が開発したものであり、ウ

ェブサイト 2 ではその特徴として、以下の 4 つのポイン

トが挙げられている。

● 広範囲にわたる時系列モデルの作成、誤差項が

ARIMA モデルに従う線形回帰モデルのモデル選択

機能(regARIMA モデルの利用)

季節調整法に関する最近の動向:X-12-ARIMA から X-13ARIMA-SEATS へ

野村證券金融経済研究所経済調査部エコノミスト

(元内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部企画調査課政策調査員)

野木森 稔 1

          1 本稿作成に当たっては、内閣府経済社会総合研究所の豊田欣吾前国民経済計算部長(現内閣府大臣官房審議官(大臣官房・経済社会シ

ステム担当))、二村秀彦企画調査課長、木滝秀彰企画調査課課長補佐、茂呂賢吾国民支出課長、植松洋史国民支出課課長補佐、三谷将

大国民支出課課長補佐、松本雅子国民支出課研究専門職をはじめとする国民経済計算部の職員、高部勲氏(内閣府経済社会総合研究所

特別研究員)、Craig McLaren 氏(OECD、Office for National Statistics)から有益なコメントをいただいた。また、2012 年 3 月の米国セン

サス局訪問の際には、David Findley 氏、Brian Monsell 氏、Demetra Lytras 氏に季節調整に関する様々な情報を提供していただいた。本稿

を通じてお世話になった方々に感謝の意を表したい。なお、本稿の内容は筆者が属する組織の公式の見解を示すものではなく、内容に

関しての全ての責任は筆者にある。2 http://www.census.gov/srd/www/x13as/

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● X11 のノンパラメトリック手法による調整とともに、

SEATS によるモデルベース(パラメトリック手法)

による調整を行う機能

● オプション別の調整値における質と安定性の診断

● 効率的に素早く多くの系列を作る機能

X-13A-S の公表に当たって、特筆すべき特徴は 2 つ目

にある SEATS(Signal Extraction in ARIMA Time Series)3 の

導入である。SEATS は、X11 のような移動平均ではな

く、モデルによる調整であることが大きな違いであり、

スペイン中央銀行の Victor Gómez 氏と Agustín Maravall

氏によって開発された TRAMO-SEATS に含まれる季節

調整法である(詳細は Gómez and Maravall(1997)、高部

(2009)などを参照)。ただし、これが導入されたことで

これまでの調整法が一変してしまうということはない。

基本は X-12-ARIMA と変わらず、SEATS を含めいくつ

かの追加的な要素が加わったにすぎないことには注意さ

れたい。

1-2. 他国の季節調整法 - SEATS を利用する国は意外に

多い

センサス局の X-13A-S の開発の理由には、SEATS の

機能や性能面の評価もあるが、いくつかの国(特に欧州

諸国)で SEATS を利用して公的統計が作成されている

現状を意識した可能性が高い。欧州連合統計局(Eurostat)

の示すガイドライン(Eurostat (2009))では、TRAMO-

SEATS 4 と X-12-ARIMA の二つを取り上げており、両者

に性能の優劣は考えず、どちらの利用も構わないという

考えが見て取れる 5。

実際、図表 1 に示されるように、各国の状況を見ると、

欧州では多くの国が SEATS を利用し、今後も SEATS の

利用を続ける可能性が高い国がたくさんあることが分か

る 6。また欧州では Eurostat の推奨する Demetra(詳細

は United Nations (2012)、 高 部(2009)、Eurostat (2002)

などを参照)という季節調整ソフトが多くの国で利用さ

れてきていた。同ソフトは TRAMO-SEATS も X-12-

ARIMA が同時に利用でき、いわば X-13A-S の機能を先

取りして提供されていたと言える。欧州では Demetra の

普及とともに、プログラムの容易さとスペイン中央銀行

の活動により、SEATS を利用する国が増えていったと

見られる。

しかし、日本のように X-12-ARIMA を長期にわたっ

て使い続けてきた国にとって SEATS の利用はほとんど

メリットがないと言える。Monsell(2009a) では、「X-13A-S

= X-12-ARIMA + SEATS」と示され、同じインターフェ

イスで X-12-ARIMA と SEATS が利用でき、共通の診断

が利用できることを強調しているに過ぎない。SEATS

は X-12-ARIMA よりも良いパフォーマンスの季節調整

値が作成できることがあることもあるようだが、はっき

りした優位性があるとは示してない 7。

ちなみに、図表 2 はフランス国立統計経済研究所

(INSEE)の Dominique Ladiray 氏が示した季節調整手法

の開発の系譜であるが、X-12-ARIMA 以外にもたくさん

の方法があることが分かる 8。移動平均法を利用した

X11 は手法の一つに過ぎず、ARIMA モデルをベースと

した SEATS、日本で開発された BAYSEA (Akaike and

Ishiguro (1983)) や DECOMP ( 北川 (1997)) をはじめとし

たベイズモデルや状態空間モデル等の高度な統計手法を

主体とする方法が開発されている。ここで、「ノンパラ

メトリック(またはセミパラメトリック)」と「パラメ

トリック」という大きな枠組みが示されているが、前者

はシンプルでユーザー自身が調整に関する設定を行いや

すいが、移動平均など単純な方法が中心となるため十分

な調整ができない可能性があるという欠点を持つ。一方、

          3 ちなみに、2012 年 12 月現在では、 新バージョンである SEATS+ は反映されていないとのこと。4 TRAMO と SEATS についてはスペイン中央銀行のウェブサイトに詳細がある

(http://www.bde.es/bde/en/secciones/servicios/Profesionales/Programas_estadi/Notas_introduct_3638497004e2e21.html)。5 p6: “These guidelines focus the technical framework on two approaches: TRAMO-SEATS (supported by Banco de España) and X-12-ARIMA

(supported by the Bureau of Census in the US) which are the most commonly used within the ESS. This document does not discuss their relative

merits as both can be considered equally valuable (as is reflected in their widespread use).”6 欧州各国の統計局に関する季節調整方法の利用状況については Hungarian Central Statistical Office (2007) の中の調査結果に、2006 年時点

と少し前ではあるが、非常に詳しく示されている。United Nations (2010) の p62 によれば、アジア諸国は X-12-ARIMA を使っている国

が多いようである。7 SEATS の理論では無限観測値の仮定をおいており、ややこの定式化は強すぎるとの指摘もある(高部(2009))。また、特に四半期デー

タを利用するときは、時系列が長期になると構造が変化する可能性も高くなるため、ある程度短い系列に X-12-ARIMA を利用する方が、

安定性が高まる場合も考えられる。8 国友(2004)の「付録 B. 季節調整法小史」にも示されるように、日本の EPA 法や MITI 法は同じ移動平均法を利用したもので、図表 2

では X11 法と同じ系統として扱われていることになる。

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後者には高度な統計的な手法を多く含むことでより精緻

な調整が可能となるが、自動化されることでユーザーに

とってブラックボックス化する傾向がより顕著になる、

といった問題がある。両者には一長一短があるが、

X-13A-S の開発は、前者にあたる X11 と X-12-ARIMA、

後者にあたる SEATS の融合という形をとっており、国

際的な公的統計における季節調整方法は更なる改善に

向けて動き出したと見るべきであろう。こうした季節

調整法の発展は、国民経済計算の四半期季節調整系列

の推計精度をさらに高めていく可能性を持つものと考

えられる。

図表 1: 欧州における季節調整方法の利用状況(2006 年時点)

回答数

現在利用している方法 将来利用する計画の方法

TRAMO-SEATS

X11 X12 OtherTRAMO-SEATS

X11 X12 X13 Other

オーストリア 4 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓

ベルギー

デンマーク 1 ✓ ✓ ✓ ✓

フィンランド 3 ✓ ✓ ✓

フランス 8 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓

ドイツ 1 ✓ BV4.1 ✓

ギリシャ 1 ✓ ✓

アイルランド 1 ✓ ✓

イタリア 2 ✓ ✓

ルクセンブルグ 1 ✓ ✓

オランダ 1 ✓ ✓

ポルトガル 2 ✓ ✓ ✓ ✓

スペイン 2 ✓ ✓

スウェーデン 1 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓

英国 1 ✓ ✓ ✓

ブルガリア 2 ✓ ✓

キプロス 1 ✓ ✓ ✓ ✓

チェコ 2 ✓ ✓ Dainties ✓

エストニア 1 ✓ ✓ ✓

ハンガリー 1 ✓ ✓

ラトビア 1 ✓ ✓

リトアニア 1 ✓ ✓ ✓

マルタ 1 ✓ ✓

ポーランド 1 ✓ ✓

ルーマニア 1 ✓ ✓

スロバキア 9 ✓ ✓

スロベニア 1 ✓ ✓

クロアチア 3 ✓ ✓ ✓ ✓

アイスランド 1 ✓ ✓ ✓

ノルウェイ 1 ✓ ✓ ✓

スイス 1 ✓ ✓

トルコ 1 ✓ ✓

国数

32 31 25 6 16 2 21 2 8 9 1100% 97% 78% 19% 50% 6% 66% 6% 25% 28% 3%

(注)ベルギー以外は各国の統計局が回答している。また、回答に統計局以外の研究機関が含まれ、一か国当たりで複数回答

になっているものもある。

(出所)Hungarian Central Statistical Office(2007)

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図表 2:手法開発のフローチャート

(出所)Hungarian Central Statistical Office(2007)

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2.X-13ARIMA-SEATS の詳細

X-13A-S は X-12-ARIMA に SEATS を加えたことで、

X-12-ARIMA と SEATS を両方使えるようになり、これ

までできなかった両者の比較、共通の診断を可能にして

いる。SEATS については、高部(2009)などの非常に

詳しい解説が存在する。先にも示したように SEATS に

明らかな優位性があるわけではない。この新たに導入し

た SEATS を使わないとなれば、X-13A-S での変化は、

スペクトラム・スペックやストック系列に関する営業日、

イースターの処理といったものが X-12-ARIMA に加わ

った程度で、新たな特徴はそれほど多くない。そこで、

X-12-ARIMA の 新バージョンを含め、SEATS そのも

のの機能を除く X-13A-S の特徴を以下で紹介する。

2-1. X-12-ARIMA<Version 0.3> での変更点

X-13A-S で使われる X-12-ARIMA のバージョンは

2007 年にリリースされた X-12-ARIMA の Version 0.3(以

下、X12A-ver0.3)である。X12A-ver0.3 での も重要な

特徴は Monsell (2007b) にて以下のように示されている。

A) モデル選択における新たな自動識別手法の導入

B) force スペックの導入:原系列の年合計値と季節調

整値の年合計値を一致させる新たなオプション

C) 集計季節調整法(composite seasonal adjustment)の

修正

D) 診断のファイルの統合

E) metadata スペックの導入:ユーザー自身が診断のフ

ァイルにメタデータを組み込むことが可能に

F) X-12-ARIMA のアウトプットへのアクセスに関する

新たなオプション

G) 名前にスペースのあるファイルも適用可能に

X12A-ver0.3 より前のバージョン(以下、旧バージョン)

については、国友 (2004)、日本銀行(1997)など、和文

でも優れた解説が既に存在する 9。本稿では Monsell

(2007a) を参照し、まず以下で、自動モデル選択、force

スペック、集計季節調整法を中心に X12A-ver0.3 の重要

な変更点の内容をつかみ、X-13A-S の解説の入り口とし

たい。

A) モデル選択における新たな自動識別手法の導入

X12A-ver0.3 での ARIMA モデルの自動選択プロシジ

ャ に は、TRAMO (Time Series Regression with ARIMA

Noise, Missing Observations and Outliers) を基にした手法

が導入されている 10。具体的には以下の 5 つのステップ

からなる。

1. デフォルト・モデルの推計 : デフォルト・モデル

(airline モデル 11)の推計に加え、 初の外れ値の

識別と回帰変数のテストが行われ、残差の診断が示

される。

2. 階差の次数の識別:モデルに必要な階差の次数を決

定するために経験的単位根検定が行われる。

3. ARMA モデルの次数の識別:SBIC (Schwartz's Bayes

Information Criterion) に基づいて ARMA のパラメー

タの次数を決定するために反復プロシジャを適用す

る。

4. デフォルト・モデルと識別されたモデルの比較:識

別されたモデルをデフォルト・モデルと比較して、

結果に応じて変更する。

5. 終モデルチェック: 終モデルにおける妥当性チ

ェックする。

これらについては、Census (2011) にプロシジャの概

要が示され、高部(2009)に理論的な詳細が示されてい

る。ステップ 2. では選択が可能であり、ユーザーは

automdl スペックの diff を利用して階差の次数を特定化

することができる。また、maxdiff では非季節階差と季

節階差の 大、maxorder では非季節 ARMA と季節

ARMA の次数の 大を決めることもできる。デフォル

トはともに(2 1)となっている。

automdl スペックによる ARIMA モデルの自動選択プ

ロシジャは TRAMO ベースに変更されたわけだが、旧

バージョンの自動選択モデルも利用可能である。もし利

用したい場合は、pickmdl スペックを利用することにな

るが、デフォルトの設定 12 を利用するのに必要であっ

          9 英文の手法解説では、優れた文献として ONS(2007) などがある。10 これは TRAMO プロシジャとかなり似たものだが、regARIMA のモデリングのオプション、変換、外れ値識別プロシジャ、モデル診断

など X-12-ARIMA のモデル推計プロシジャを使うための修正が施された X12A-ver0.3 独自のものとなっている。結果として、X12A-

ver0.3 で選択されたモデルは TRAMO の選択とは異なることがある。11 松本・松本・森本 (2010) では、airline モデルは次数 (0 1 1)(0 1 1) であり、ヨーロッパ諸国の経済統計データのうち 50%のものをモデル

化することができ、ロバストであると示されている(より詳細は奥本 (2000)、Gómez and Maravall(1997) を参照)。12 (0, 1, 1)(0, 1, 1)s、(0, 1, 2)(0, 1, 1)s、(2, 1, 0)(0, 1, 1)s、(0, 2, 2)(0, 1, 1)s、(2, 1, 2)(0, 1, 1)s の 5 つのモデルからなる(s は季節周期を表す)。

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た x12a.mdl というファイルは必要ない(これらの自動

選択プロシジャの比較については奥本 (2010) などを参

照)。もちろんのことだが、pickmdl スペック、automdl

スペック、さらに arima スペックは同時に利用できない。

B) force スペックの導入

次に、「季節調整値の暦年合計値」と「原系列の暦年

合計値」が一致するように季節調整を行いたい場合に有

用なスペックの導入についてである。旧バージョンにお

いても、その調整を可能にするために比例デントン法

(Denton(1971)、国友・川崎(2011)など)が利用でき

るようになっていた(x11 スペックの force)。しかしな

がら、この方法は、第 4 四半期と第 1 四半期の間での変

化に問題が生じたり、データが加わることで大きな修正

が生じる可能性があるという問題を持つ。これに対応す

るため、カナダ統計局がいくつかのベンチマーク法を開

発している。その一つが Regression-based 法 13 であり、

これは λ(回帰方程式のウェイト行列を決めるために利

用される)、 ρ (AR(1) パラメータ)という二つのパラメ

ータを利用する。 ρ = 1 となる特別なケースでは、比例

デントン法と同じ式になるため、1 に近い ρ を選ぶこと

は比例デントン法に近い結果をもたらすが、新しい観測

値が加わっても修正をより小さくすることができる。

この機能を X12A-ver0.3 に組み込むために、新たに

force スペックが導入された(デフォルトでは λ= 0、月

次で ρ = 0.9、四半期で ρ =0.729(=0.93))。もちろん、こ

のスペックでは、比例デントン法と Regression-based 法

の両方を選択できるようになっている(図表 3 の type

では Regression-based 法を指定する regress となっている

が、デントン法を指定するdentonに変えることができる)。

一方、force スペックを利用することで合計値を一致させ

ることは、ときに便利ではあるが、不安定な季節パター

ンを持つ上で乗法型分解(multiplicative decompositon)

を用いた場合などでは、季節調整値の質を低下させる可

能性があることには注意する必要がある(Census

(2011))。

・force スペックに関連したその他のオプション

その他、force スペックに引数 (arguments) がいくつか

組み込まれることで、新たな特徴が加わっている。

【target】季節調整値の合計を一致させるターゲットを

以下のように設定できる。

①原系列(target=original)<デフォルトでの設定>

②曜日要因調整済み原系列(target=calendaradj)

③永続的な事前調整因子(permanent prior adjustment factors)

について調整された原系列(target = permprioradj)

④曜日要因と永続的な事前調整因子の両方について調整

された原系列(target = both)

【usefcst】季節調整系列の年合計を調整した上で、そ

の系列に予測を加えるかどうかを決める(usefcst = yes

がデフォルトでの設定)。これは forecast スペックでも

使われる予測値の修正因子を提供する。

【indforce】間接的季節調整値を調整する方法を選択す

          13 Dagum and Cholette (2006)、野木森・林 (2012) の補論などを参照。

series{ title= "Retail Shoe Store Sales" # show how to specify force spec format="datevalue"file="shoers.dat" name="shoers" } x11 { } force { type = regress lambda = 1.0 rho = 0.95 save = saa }

Monsell(2007a)

図表 3:X12A-ver0.3 インプットファイルでの forceスペックの実行例

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る。もし indforce = yes(デフォルトでの設定)としたら、

間接的季節調整値は合計したものを年合計値に一致させ

ることになる。もし indforce = no としたら、年合計値に

ついて調整を行った構成要素となる季節調整値を 後に

合成することになる。

C) 集計季節調整法(composite seasonal adjustment)の

修正

カナダ統計局で開発された X-11-ARIMA(Dagum

(1980))のように、X-12-ARIMA は直接的季節調整値

(Direct Seasonally Adjusted Series)と間接的季節調整値

(Indirect Seasonally Adjusted Series)の計算、そして比較

を可能にしている。前者は系列の合計値に直接季節調整

を行う方法であり、後者はそれぞれ季節調整を行った系

列を合成する方法である。X12A-ver0.3 ではいくつか発

展がある。

・間接的季節因子(Indirect Seasonal Factors)

旧バージョンの X-12-ARIMA では、乗法季節調整で

の各間接的季節因子は、原系列の合計を季節調整系列の

合計で割ったものとして計算されていた。すなわち、

:時点 t の構成要素系列 i、 :時点 t の構成要素系列 i

の季節調整系列、n:集計した調整値の構成要素の数、T:

系列の時系列の長さ、とすると、

 (1)

となる。このとき、 が持っていない曜日要因効果

(calendar effects)と事前調整因子(prior factors)を が

含んでいる場合は は季節因子(seasonal factors)と

は言えなくなってしまう。そこで、季節因子を得るため、

 (2)

というように、 を曜日要因効果、事前調整因子を調

整した構成要素系列 に置き換えた。この方法では、

曜日要因効果、事前調整因子を取り除くことができてい

る。

X12A-ver0.3 では、式 (2) の因子が間接的季節因子

(Indirect Seasonal Factors)となり、式 (1) の因子は間接

的合成調整因子(indirect combined adjustment factors)と

なっている(composite スペックの引数 save などで表示

できる)。

・間接的外れ値因子(Indirect outlier factors)

X12A-ver0.3 では、composite スペックの引数 indoutlier

を使うことで、間接的外れ値因子(indirect outlier

factors)と調整値がプログラムから導出できるかどうか

を特定化することができる(indoutlier = yes がデフォル

トでの設定)。これは、広範囲に影響力のある外れ値が

間接的トレンド要素の抽出、間接的季節調整の診断など

に問題を起こす場合に有用であろう。

これらの間接的外れ値因子は間接的季節因子と似た方

法で計算される。 は時点 t の構成要素系列 i におけ

るレベルシフト調整系列とすると、間接的レベルシフト

因子(indirect level-shift factors)は

(3)

で得られる。もし、レベルシフト外れ値が構成要素系列

i で特定されない、見つからないなら、 となる、

ということである。

同様に、 を時点 t の構成要素系列 i における加

法的外れ値調整系列とすると、加法的外れ値因子(indirect

AO factors)は

(4)

となる。

これらを使う時に注意すべき点は、これらの間接的外

れ値因子が一致性のある効果であると言えるような、構

成要素系列が同じような外れ値効果を持っているかどう

かを検討すべきである。例えば、ほとんどか全ての構成

要素が同じ観測期間ではレベルシフトを持つというとき

が理想的な状況となる。もしそうでない場合、ユーザー

は間接的外れ値効果を特定できない(つまり、indoutlier

= no とすべき)。

D) 診断のファイルの統合

旧バージョンでは、季節調整診断は .xdg ファイルに、

モデル診断は .mdg ファイルに保存されていた。しかし、

X12A-ver0.3 では、これらの診断は統合された診断ファ

イルである .udg ファイルに保存される。

E) metadataスペックの導入

metadata スペックを使って、ユーザー自身が診断ファ

イルにメタデータ(データのタイトル等)を組み込むこ

とが可能になった。

F) X-12-ARIMAのアウトプットへのアクセスに関する

新たなオプション

連邦政府関係機関の電子情報は障害者にもアクセスで

きるようにする必要があるとする米国のリハビリテーシ

ョン法第 508 条に基づき、公表物に関するアクセスの改

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- 48 -

善を行った。

G) 名前にスペースのあるファイルも適用可能に

X12A-ver0.3 では、「x12a "c:\export specs\xuu1"」とい

うように、引用符 (") を利用することで、名前にスペー

スのあるファイルも適用可能になっている。

2-2.regARIMA における新たな回帰変数

以上に見たように、X-13A-S で使われる X-12-ARIMA

部分については、X12A-ver0.3 での変更が大きく影響し

て い る。 本 節 以 降 で は、Monsell(2007b) と Monsell

(2009b) を参照し、X-13A-S へのアップデートにおける

新しいオプションの紹介を行う。SEATS を使わないと

なれば、以下に示される新たなダミー変数の導入などが

X-13A-S の特徴の重要なポイントとなる。

2-2-1.季節性外れ値(Seasonal Outlier)と一時的レベ

ルシフト(Temporary level shift)

・季節性外れ値(Seasonal Outlier、SO)

まずは regARIMA モデルにおける新たな回帰変数で

ある「季節性外れ値効果(seasonal outlier effect)」であり、

時系列が t0 から開始とするとき、以下のように定義さ

れる。

s は時系列の周期になる(月次なら 12、四半期なら 4)。

この回帰変数は季節パターンの突発的な変化を捉え、

その他の期における対照的な変化をそのままにして系列

のレベルを維持する。なお、現時点では、outlier スペッ

クでの自動検出はできない。

Monsell (2007b) では、突発的な変化が起きたら、次の

期は逆の動きで相殺するような動きが出ることも想定さ

れ、そうした場合はこの回帰変数を二つ連続させること

で対応する例も示されている(図表 5)。また、この回

帰変数の動きは他のレベル変化に適用する回帰変数と似

ているため、それらを同時に利用するとうまく推計でき

ない可能性があるとしている。

・一時的レベルシフト(Temporary Level Shift)

次に、一時的レベルシフト(temporary level shift)に

ついてである。レベルシフトが一定期間続いていること

が疑われた場合、これまでは、

・その影響についてのユーザー定義の回帰変数(user-

defined regressor)を作成する

・その期間について加法的外れ値(additive outliers)を特

定化する

といった対応が考えられていた。しかし、X-13A-S では、

あらかじめ定義された回帰変数の一つとして一時的レベ

ルシフト(temporary level shift)が加わった。Monsell (2009b)

では、2 つ以上のレベルシフト(LS)や加法的外れ値(AO)

などの回帰変数で対応するのではなく、一つの回帰変数

を特定化するだけでよいことが示されている。

T T+1 T+2 T+3 T+4

Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4

T T+1 T+2 T+3 T+4

(出所)Monsell (2007b) (出所)Monsell (2007b)

図表 4:季節性外れ値 図表 5:季節性外れ値(逆の動きを同時に利用した場合)

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を t0から t1 のレベル変化期間をもつ一時的レ

ベルシフト(temporary level shift)とすると、この回帰

変数は以下のようになる。

(6)

このはずれ値は regression スペックの引数 variables で

特定化できるが、outlier スペックで自動的には識別され

ない。

図表 6:一時的レベルシフトを利用する時としない時のインプットファイル

図表 7:一時的レベルシフトなど外れ値の形状

series{ title= "Import m12000" format="datevalue" file="m12000.dat" name="m12000" } arima { model = (0 1 1)(0 1 1) } regression { variables = ( LS1996.Jun LS1996.Oct TC1999.Apr ) } check { } outlier { } forecast { maxlead = 24 }

series{ title= "Import m12000" format="datevalue" file="m12000.dat" name="m12000" } arima { model = (0 1 1)(0 1 1) } regression { variables = ( TL1996.Jun-1996.Sep TC1999.Apr ) } check { } outlier { } forecast { maxlead = 24 }

Monsell(2009b)

1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39

(Level Shi )(Addi ve Outlier)

(Temporary Change)

(Temporary Level Shi )

Ramp

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2-2-2.制約付きストック曜日要因回帰変数(Constrained

Stock Trading Day Regressors)

・係数タイプストック曜日要因(One Coefficient Stock

Trading day)

を月次\四半期 t の平日の数、 は月次\四半

期 t の土曜日、日曜日の数、としたとき、

(7)

というように、フロー系列の曜日要因については一つ

の回帰変数を使うことができる。この制約は全ての平日

が同一の効果を持ち、土曜日と日曜日が同一の効果を持

つと仮定することになる。

一方、これまでストックについては一つの回帰変数を

使うことができず、ストック曜日要因についての回帰変

数は以下のように定義された。

0  

0 (8)

ここで、w を在庫が棚卸された日とし、 は w と t

月の長さより小さい日数である。w = 31 は棚卸が月の

後にあったことを仮定することになる。

Findley and Monsell (2009) では、フロー系列の曜日要

因の動きの式 (7) のような曜日要因の制約をどうやって

ストック系列に課すのかを示し、式 (7) の制約を基礎と

した制約付きストック曜日要因回帰変数を以下のように

式 (8) から作れることを示した。

(9)

これは X-13A-S に組み込まれており、regression スペッ

クの引数 variables で使うことができる(tdstock1coef[d]、

d は在庫が棚卸された日)。

・月末ストックイースター変数(End-of-month Stock Easter)

X-13A-Sでは、月末ストックイースター変数(End-of-month

Stock Easter)についての回帰変数も組み込まれている。

を m 月 y 年の月次フロー系列のイースター回

帰変数を示すとする。月末ストックイースター変数、

は以下のように定義される。

0 (10)

1 ≤ w ≤ 21 のとき、 は 2 月にゼロになり、

は 3 月だけがゼロにならない。

ストックイースターとストック曜日要因で利用された

棚卸された日は同じにすることが推奨されるが、現時点

では月末ストックイースター変数しか X-13A-S には導

入されていない。月末ではないストックイースター変数

は補論にある Genhol などを利用して作成する必要があ

る。

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【補論:Genhol について】

X-13A-S では、米国経済に重要な影響を持つイースター、レイバー・デー、感謝祭という三つの毎年移動する

移動祝日(moving holidays)に関する回帰変数を持っているが、他の移動祝日(旧正月やラマダン)については、

ユーザー定義の回帰変数で regARIMA モデルに取り込む必要がある。その場合、米国センサス局が開発した

Genhol を利用することで効率的に変数を作成できることがある。

Genhol は米国のイースターのように月をまたぐ可能性がある休日要因の変数を作るためのソフトウェアであ

る。単純に 10 日間休日があったとすると、それが 3 月に 10 日間、4 月に 10 日間とすべてまとまっていればい

いが、3 月に 2 日、4 月に 8 日とまたがってしまう場合は、それぞれ効果を 2/10、8/10 と割らなければならない

ときなどに有効に利用することができる。

必要となるのは毎年移動する祝日の日付(連休等の場合は 終日など)であり、この日付のファイル 14 を

XXX.txt とする。もし、その日付の前の 7 日間に影響があるとした場合、図表 8 のような XXX.inp というインプ

ットファイルを作る(XXX.dat が結果を出力するファイル、begbefore =-8、endbefore =-1 は期間が 8 日前から

1 日前までという意味)。

図表 8 Genhol のインプットファイル例

global{ numhol = 1 outfi le = "XXX.dat" outspec = "XXX.reg" fi rst = 1990 last = 2015 period = 12}holiday1{ name = XXX begbefore = -8 endbefore = -1 infi le = "easter500.txt" center = calendar}

そして、Windows であれば MS-DOS を起動させるなどして、Genhol のあるファイルを指定し、genhol XXX.inp

とすれば、月をまたいだことを考慮した休日要因ダミー変数を XXX.dat に作ることができ、XXX.reg では

regression スペックでこのダミー変数を利用するための引数 user などに関するコードを提供してくれる。また、

begafter = X を入れれば、休日後の影響も追加することができる。

Genhol はイースター、ラマダン、アジア旧正月 15 を意識して作られたものである。日本の統計においては、

国内休日要因を勘案しての直接の適用はやや難しいと考えられるが、輸出、輸入などへの適用は有用であると考

えられる。既に、アジア旧正月などの影響は大きいとみられるが、今後さらにグローバル化が進むことで、ラマ

ダンによる輸出入への影響なども考える必要が出てくれば非常に有用であろう。

          14 イースターについては http://www.census.gov/srd/www/genhol/genhol_examples.html 参照。ちなみに、休日日数の長期平均が必要とな

るため、米国センサス局のウェブサイトでは 1600 年代からとかなりの長期のデータが公表されている(http://www.census.gov/srd/

www/genhol/easter500.html)。15 Findley, Monsell and Hou (2012) では、Genhol で作成された中国の旧正月変数を使ったストック系列の調整が示されている。

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2-3.新たな検定方法など

2-3-1.SEATS に利用される新たな診断方法

X-13A-S では、SEATS によりデータの無限期間を仮

定した Wiener-Kolmogorov フィルターを使って季節調整

を計算することもできるが、有限のフィルターを使った

診断もできるようになっている。マニュアルによれば、

SEATS スペックにおいて、out = 1 とした場合(デフォ

ルト)、無限フィルターによる診断結果が示されるが、

out = 0 とした場合、有限サンプルに関する診断が示さ

れる(out = 2 とした場合は有限サンプルに関する診断

の要約が示される)。

また、slidingspans スペックによるスライディングス

パン分析(重複する期間を持つ複数のデータの季節調整

値を比較して安定性を分析するもの)による診断におい

ても、x11 スペックで季節調整を行ったときと、SEATS

スペックで季節調整を行ったときの両方についての期間

の自動選択が用意されている。x11 スペックを利用した

場合は、診断期間は季節フィルターによって選ばれ(3

× 3 であれば 6 年、3 × 5 であれば 8 年、3 × 7 であれば

11 年など)、SEATS スペックでの期間はモデルの MA パ

ラメータによって選択される。length でユーザーが設定

することもできる。

2-3-2.spectrumスペックの追加

スペクトル解析 16 は原系列から季節変動を十分に取

り除けているのかどうかを検証するのに有用である。参

考図表 2 にあるように spectrum スペックは seats スペッ

クとともに加わった X-13A-S の新たなスペックとなる。

旧バージョンの X-12-ARIMA では、series と composite

スペックにスペクトルの特定化が可能であり、series、

composite、x11、check スペックなどでは結果の出力形式に

関して利用できた。X-13A-S では新たに spectrum スペ

ックが入り、これらの機能がそこに含まれるようになっ

ている。図表 9 のように、引数 spectrumstart は spectrum

スペックの start に変わるなどしている。

2-3-3.ユーザー定義の回帰変数(User-defined holiday

regression)のグループ検定

もし regARIMA モデルにユーザー定義の回帰変数と

して複数の移動祝日(moving holidays)などを取り入れ

ようとしたならば、過去の X-12-ARIMA では、合成し

た効果として検定する必要があり、個々の祝日要因を

別々に検定することはできなかった。しかし、X-13A-S

では、5 つまでユーザー定義の回帰変数のグループを検

定できるようにしている。これらのグループはプログラ

ムのアウトプットにそれぞれリストにされ、 検定統

計量のような診断がグループごとに作られ、ユーザーは

その効果を外すべきか決めることができる。

regARIMA モデルにおけるユーザー定義の回帰変数の

グループについては、regression スペックの chi2test が検

定に利用される。chi2test = yes とすれば、 検定統計量

はすべてのユーザー定義の回帰変数のグループに対し作

られ、その結果(chi2testcv で与えられる)が有意でな

いなら、 regARIMA モデルから外されることになる。回

帰変数のグループの推計された係数ベクトルを とする

と x2 検定統計量は以下のようになる。

 (11)

2-3-4.AICC 検定での lom や loq の追加

X-12-ARIMA では AICC (Akaike’s Information Criterion,

bias Corrected) を基にした自動検定が過去から行われて

いる。

 (12)

regression スペックの aictest は曜日要因、イースター、

ユーザー定義の回帰変数をそれぞれあるとき、ないとき

で推計し、 も低い AICC をもつモデルを選ぶ。

X-13A-S では、aictest で特定化できる回帰変数として、

新たに月の長さ (lom)、四半期の長さ (loq)、閏年 (lpyear)

が加えられている。回帰変数が検定される順序は、

①曜日効果変数

②月の長さ、四半期の長さ、閏年変数

③イースター変数

④ユーザー定義の回帰変数

となっている。

          16 理論的な内容は山本(1998)などが詳しい。

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X-12-ARIMA Version 0.3 X-13ARIMA-SEATS Version 0.1

series{ title= "Shoe store sales" format="datevalue"file="shoe.dat" name="shoe"spectrumstart = 1995.jan savelog = peaks save = sp0 }arima { model = (0 1 1)(0 1 1) }regression { variables = (td easter[8]) save = td }check { save = spr } outlier { } forecast { maxlead = 24 }x11 { save = ( sp1 sp2 ) }

series{ title= "Shoe store sales" format="datevalue"file="shoe.dat" name="shoe"}arima { model = (0 1 1)(0 1 1) }regression { variables = (td easter[8]) save = td }check { } outlier { } forecast { maxlead = 24 }x11 { } spectrum{ savelog = peaks start = 1995.jan save = (sp0 sp1 sp2 spr ) }

図表 9  スペクトルに関するインプットファイルの新旧比較

(出所)Monsell(2009b)

2-3-5. 安定した季節性の存在に関するモデルベース F 検

X-13A-S では、原系列に安定した季節性があるか見る

ためのモデルベース F 統計量が新たに加わっている。こ

の F 検定は参考図表 1 の 2、3 にあるような固定的季節

性 (Fixed Seasonal) を回帰変数グループとした 検定(式

(11) に該当、旧バージョンでもあった regARIMA モデル

の回帰パラメータのあるグループが合計でゼロであるか

を決めるのに使われる)から作成される。regARIMA モ

デルに固定的季節性回帰変数のグループを加えると、そ

れに関する x2 検定が作成され、系列の安定した季節性

の指標として提供されることになる。回帰変数に関する

x2 検定は、検定統計量 を利用すれば、分散の推定に

おける誤差を考慮した形に修正することが可能であり、

以下のように導出される。

 (13)

ここで、 は式 (11) の 統計量であり、n は系列の

観測値の数、d は階差の数、k は検定されたグループの

回帰変数の数であり、この検定統計量は Fk,n-d-k の分布

に従う。regression スペックの variables で固定的季節性

を指定した上で、check スペックの中で savelog = sft と

すれば実行できる。Lytras, Feldpausch and Bell (2007) で

は、シミュレーションにより、 統計量が従来の診断

(出力ファイル D8 にある季節性の安定性に関する F 検

定やカナダ統計局 X-11-ARIMA の M 検定統計量の M7

など)よりも推奨されるものであることが示されている。

3.国民経済計算の四半期系列における

X-13ARIMA-SEATS の利用

以上のように、X-13A-S では X-12-ARIMA の機能が

いくつか拡張されている。何度も述べるように、新たに

加わった SEATS には X-12-ARIMA に対し明らかな優位

性があるわけではない。また、SEATS は安定した推計

を行うためにできるだけ長い時系列を必要とする。国民

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経済計算で利用する場合は四半期データへの適用となり、

データが長くなるほど構造が変化する可能性も高くなり、

月次に比べ不安定になるリスクもある。結果的にある程

度短い系列に X-12-ARIMA を適用するという選択が多

くなることが予想される。SEATS の導入は高度な統計

的な手法を多く含むパラメトリック・アプローチの導入

の第一歩であり、長い目で見た四半期季節調整系列の精

度向上に向けた発展と見るべきかもしれない。

SEATS を使わなければ、X-13A-S の基本は X-12-

ARIMA であり、これまでの調整法が一変してしまうと

いうことはない。とはいえ、regARIMA における新たな

回帰変数における一時的レベルシフトなどは制度変更な

どが一定期間経済に影響を与えてしまう場合の処理を簡

単にしてくれるものであるし、新たな検定方法でのユー

ザー定義の回帰変数のグループ検定などはリーマン・シ

ョックを含め経済に対する様々なショックの影響を取り

除く処理の判定をこれまで以上に細かにできるようにし

てくれている。ときに季節性が存在しないと考えられる

系列もあり、安定した季節性の存在に関するモデルベー

ス F 検定はそうした判定の精度を高めてくれる。また、

X12A-ver0.3 での変更点にはなるが、集計季節調整法の

改善は、GDP の構成要素となる個別の項目を対象とし

て季節調整をおこなってそれを合計するのか、それとも

その和である GDP 全体に季節調整を直接おこなうのか、

どちらが良いのかを考えるのに非常に有用である。この

ような新たな機能が上手に活用されることになれば、

X-13A-S は国民経済計算四半期系列の改善に資する可能

性があるのではないだろうか。

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17

1 (Trend Constant) const

2 (FixedSeasonal)18

seasonal

10

10

3 (FixedSeasonal) sincos[ ]

⁄4 (Trading Day)

( )tdnolpyear, td19

⋯ ,5

(One Coefficient Trading Day) ( )td1nolpyear, td1coef20

526 (Length-of-Month)

( )lom

7(Length-of-Quarter) ( )loq

8 (Leap Year) ( )lpyear

0.750

9 (StockTrading Day) ( )tdstock[w]

00

31tdstock[31]

参考図表 1: X-13ARIMA-SEATS に組み込まれている回帰変数

          17 制約がある場合には括弧に記した。regression スペックでの引数 variables において、それぞれの項目に回帰変数として用いられる変数

名が与えられている(regression { variables=XXX })。18 ここでは月次系列に対する変数が示されている。他の季節周期に対しても利用可能である。19 td は、これらの 6 つの変数に加えて、変換のない系列に対して回帰変数 lpyear を含み、変換される原系列に対しては 2 月の数値 Yt を

( =28.25、2 月の平均日数)に調整する。四半期も同様である。20 td1coef は、この変数に加え、変換のない系列に対して回帰変数 lpyear を含み、変換される原系列に対しては 2 月の数値 Yt を

( =28.25、2 月の平均日数)に調整する。四半期も同様である。

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10(One Coecient Stock

Trading Day)21

( )tdstock1coef [w]

35 15 15 359

31 tdstock1coef [31]

11 (Easter Holiday)22

( )easter[w]

1 ( 2 3 4 1 2 0 2

> 22 )

12(End-of-Month

Stock Easter)23

( )easterstock[w]

easter[w]

0( 2 3 1 0 2 > 22

)

13(Statistics Canada Easter) ( )sceaster[ w ]

w 3

340( 0 )

14 (Labor Day) ( )labor[w]

1 w( 0 )

15 (Thanksgiving) ( )thank[w]

w 12 24( 11 12 0)

16(Additive Outlier) ao

17 (Level

Shift)ls

18(Temporary Change) tc

0.7 12 0.7 4

          21 この回帰変数の導出の詳細は Findley and Monsell (2009) を参照。22 月次のイースター効果で実際に用いられる変数は である。 は の長期月次平均であり、グレゴリオ暦 1600

年 -2099 年の 500 年で計算されている。これはイースターの日付における長期間のサイクルのから計算される平均の近似である。詳し

くは Montes (2001) を参照。これらは2月、3月、4月のみゼロではない。同様の変数がレイバー・デー変数、感謝祭変数、四半期イ

ースター変数に使われる。23 ここでは月次ストック系列に対する変数が示されている。同じ変数が四半期ストック系列に利用可能であり、Findley(2009) の 4.2 節に

公式が示されている。

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19 (Seasonal Outlier) so

20 Ramp ()

rp -

21(Temporary Level Shift) ( )t1 -

(注)網掛けのものは X-13A-S で新たに加わった回帰変数。

(出所)Census (2012)、国友 (2004)

参考図表 2: スペックの比較

X-12-ARIMA Version 0.3 X-13ARIMA-SEATS Version 0.11 ARIMA 1 ARIMA2 AUTOMDL 2 AUTOMDL3 CHECK 3 CHECK4 COMPOSITE 4 COMPOSITE5 ESTIMATE 5 ESTIMATE6 FORCE 6 FORCE7 FORECAST 7 FORECAST8 HISTORY 8 HISTORY9 METADATA 9 METADATA10 IDENTIFY 10 IDENTIFY11 OUTLIER 11 OUTLIER12 PICKMDL 12 PICKMDL13 REGRESSION 13 REGRESSION

14 SEATS

14 SERIES 15 SERIES15 SLIDINGSPANS 16 SLIDINGSPANS

17 SPECTRUM

16 TRANSFORM 18 TRANSFORM17 X11 19 X1118 X11REGRESSION 20 X11REGRESSION

(出所)Census (2011)、Census (2012)

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