石油開発の腐食・防食における 最近の課題 - …...(3)...

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73 石油・天然ガスレビュー アナリシス 石油開発の腐食・防食における 最近の課題 1950年以降、世界の石油消費量が急激に増加し、主要エネルギーが石炭から石油に移行した。その後、 20世紀後半の人類の経済活動の肥大化により、2000年の時点でエネルギー消費量が1940年の約7倍 に増大し、さらに増加傾向が継続している *1 2000年以降は、石油から「より環境に優しい」天然ガスへの依存度の高まりが特徴的である。今後し ばらくは天然ガスの割合が上昇し、石油が減少する分を重質油やオイルサンドなどの非在来型の炭化水 素が補うものと予想される。 以上のように、この 21 世紀、特にその前半においては、世界のエネルギー供給の主力は石油・天然 ガスであり、とりわけ、天然ガスに対する依存度が高まるものと予想されている。しかし、開発対象と なる最近の天然ガス貯留層は高深度化しており、そういった生産施設の腐食に影響を与える因子として は、従来から知られている二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)のほか、各種有機酸類が挙げられる。 本報告では、主として天然ガス生産における腐食とその対策に関する最近の課題について報告する。 なお、対象は生産井から集ガスラインまでで、プラント以降における腐食と対策は含まない。 NACE Internationalによると、湿潤ガス中にH2Sが 345 Pa(0.05 psi)以上含有されるとサワー(ガス)と定 義されるが *2 、1950年代初頭からの事故例で知られて いるように *3、*4 、高強度鋼に硫化物応力割れ(Sulfide Stress Cracking:SSC)と呼ばれる脆 ぜい せい 破壊がもたらさ れる(写1*5 。一方、夾 きょう ざつ する酸性ガスが CO2 のみの場 合にはスイート(ガス)と呼ばれる *6 。CO2 による鋼の典 型的腐食形態は、虫食い状の重量減タイプの損傷で 写2)、1940年代前半のガス・コンデンセート井の腐 食事例により初めて認知された *7 (1) 油 ・ ガス井における CO2 腐食の認識と現象論的調査 このように、CO2 による激しい腐食、その結果として の経済的操業に対する多大な影響が認識されたため、 1944 年 に 後 の NGAA Corrosion Research Project Committee として知られる、高圧ガス・コンデンセー ト井の腐食に関する小委員会がアメリカ天然ガソリン協 会(NGAA)に設立され、CO2 腐食に関する共同研究が推 1.スイート環境 ・ サワー環境における局部腐食について 巴 保義 本田 博志 国際石油開発帝石株式会社 技術本部 技術研究所 腐食防食グループ マネージャー 国際石油開発帝石株式会社 技術本部 技術研究所 腐食防食グループ コーディネーター 高強度鋼の SSC 事例 写1 出所:筆者撮影

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73 石油・天然ガスレビュー

JOGMEC

アナリシス

石油開発の腐食・防食における最近の課題

緒言

 1950年以降、世界の石油消費量が急激に増加し、主要エネルギーが石炭から石油に移行した。その後、20世紀後半の人類の経済活動の肥大化により、2000年の時点でエネルギー消費量が1940年の約7倍に増大し、さらに増加傾向が継続している*1。 2000年以降は、石油から「より環境に優しい」天然ガスへの依存度の高まりが特徴的である。今後しばらくは天然ガスの割合が上昇し、石油が減少する分を重質油やオイルサンドなどの非在来型の炭化水素が補うものと予想される。 以上のように、この21世紀、特にその前半においては、世界のエネルギー供給の主力は石油・天然ガスであり、とりわけ、天然ガスに対する依存度が高まるものと予想されている。しかし、開発対象となる最近の天然ガス貯留層は高深度化しており、そういった生産施設の腐食に影響を与える因子としては、従来から知られている二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)のほか、各種有機酸類が挙げられる。 本報告では、主として天然ガス生産における腐食とその対策に関する最近の課題について報告する。なお、対象は生産井から集ガスラインまでで、プラント以降における腐食と対策は含まない。

 NACE Internationalによると、湿潤ガス中にH2Sが345 Pa(0.05 psi)以上含有されるとサワー(ガス)と定義されるが*2、1950年代初頭からの事故例で知られているように*3、*4、高強度鋼に硫化物応力割れ(Sulfide Stress Cracking:SSC)と呼ばれる脆

ぜい

性せい

破壊がもたらされる(写1)*5。一方、夾

きょう

雑ざつ

する酸性ガスがCO2のみの場合にはスイート(ガス)と呼ばれる*6。CO2による鋼の典型的腐食形態は、虫食い状の重量減タイプの損傷で

(写2)、1940年代前半のガス・コンデンセート井の腐食事例により初めて認知された*7。

(1)�油・ガス井におけるCO2腐食の認識と現象論的調査

 このように、CO2による激しい腐食、その結果としての経済的操業に対する多大な影響が認識されたため、1944 年 に 後 の NGAA Corrosion Research Project Committee として知られる、高圧ガス・コンデンセート井の腐食に関する小委員会がアメリカ天然ガソリン協会(NGAA)に設立され、CO2腐食に関する共同研究が推

1.�スイート環境・サワー環境における局部腐食について

巴 保義 本田 博志国際石油開発帝石株式会社

技術本部 技術研究所腐食防食グループ マネージャー

国際石油開発帝石株式会社 技術本部 技術研究所

腐食防食グループ コーディネーター

高強度鋼のSSC事例写1

出所: 筆者撮影

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アナリシス砂場 敏行国際石油開発帝石株式会社

技術本部 技術研究所腐食防食グループ コーディネーター

進された。この頃NACE(米国腐食技術者協会)が設立され、この共同研究の一翼を担うこととなった。 1946年のNGAA年会で明確になった事柄は以下のとおりである*7。

a) 深さ1,524m(5,000 ft)以上、坑底温度71℃(160 °F)以上、坑底圧力10.6 MPa(1,500 psi)以上、CO2濃度0.2mol%以上のガス・コンデンセート井において、腐食問題が発生する。

b) 低級脂肪酸も腐食に関与する。H2Sも腐食に関与する可能性がある。

c) 坑井の圧力と温度の上昇は、腐食速度を高める。d) 腐食生成物が腐食を抑制する場合がある。e) インヒビターやアルカリ注入により防食可能な坑井

がある。f) 腐食によるケーシングの破坑は坑井の破壊を招くた

め、ケーシングを生産のために使用してはならない。g) 炭素鋼と合金を同時に使用する場合には、異種金属

の接触により発生するガルバニック腐食に対する注意が必要である。

 CO2 腐食のメカニズムに関する研究成果には至らず、現象論的な調査結果の整理と、この範囲内で研究者間にほぼ共通の認識が得られたことが主たる成果であった。 1970年代初頭以降、深部ガス田の開発が促進され、CO2 腐食問題が再度注目された。この頃から1980年代を通じて行われた腐食メカニズムを中心とした系統的な研究により、湿潤CO2 による腐食現象の理解が前進した*8、*9。これらの研究成果の一つの現れが13% Cr

鋼をはじめとする各種耐食性油井管材料の開発で、池田氏によると*10、「耐食性の限界を探りながら」実用に供されるようになった。これら耐食性材料の使用は、坑井温度と圧力の上昇により、競合する防食技術であるインヒビターや有機コーテイングの、性能限界を超えるようになったことと無関係ではないと考えられる。

(2)�CO2腐食に影響を与える主要因子

 1983年にCO2 腐食に関する国際会議が開催され*11、CO2 腐食に関する認識に大いなる前進が見られた*12。主要な点は次のとおりである。

① 平均腐食速度 CO2による腐食速度を正確に予測することは、装置材料の設計、保全などエンジニアリング的に非常に重要である。常温から約60℃にかけての低温領域においては、研究者間に大きな相違は認められない。De.Waardらが提出した【1】式が現在でも参考にされる*8。

【1】  Log V = 0.67(log pCO2) + CV;腐食速度pCO2;CO2分圧C;定数

 この式を導くための実験中に、彼らは60 ℃以上の高温下で炭素鋼電極が時として黒い腐食生成物で覆われ、格段に低い腐食速度となることを経験した。しかし、60℃より低い温度領域における腐食速度の再現性が良いことから、【1】式が提出された。

② スイート環境における炭素鋼の局部腐食(温度と腐食生成物の影響)

 約60℃以上の高温下での腐食生成物の形成と腐食速度の低下がCO2腐食の一つの特徴で、その腐食生成物の主成分が炭酸鉄(FeCO3)であることが確認された。炭酸鉄の溶解度が高温ほど低いことが一因である。この分野に関しては、日本の鉄鋼会社が主導的な研究を行っている。池田氏らは、熱力学的な考察に基づいてFe-CO2-H2O系のプルベーダイヤグラム(電位-pH図表)を提出し

(図1)、約120 ~ 130 ℃以上の高温下では炭酸鉄以外に四三酸化鉄(Fe3O4)も安定的であることを示した*13。 約60 ~ 120℃にかけての遷移領域では、炭酸鉄の保護性が十分ではなく、流れの壁面剪

せん

断だん

応力により炭酸鉄が部分的に破壊され、虫食い状の局部腐食に至る。しかし、炭酸鉄には電気伝導性がないため、炭酸鉄と

湿潤CO2による虫食い状の腐食事例写2

出所:筆者撮影

10cm10cm

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裸の鋼表面との間でガルバニック効果は作用しないものと考えられる。

③ 合金添加元素の効果 炭素鋼のCO2 腐食抑制に対するCr添加の有効性が認められている(図2)*11、*13。 9% Cr鋼が100 ℃以下で優れた耐食性を示すこと*13、

*14、13%Cr鋼は150℃以上で孔食を受けるとともに*13、

*15、CO2 分圧が6.5MPa以上でその耐食性が低化することが報告されている*16。また、22Cr、25Cr二相ステンレス鋼や高Niオーステナイト系ステンレス鋼は、250℃以上の塩化物イオン濃度の高い環境においても優れた耐食性を有することが明らかにされている*15、*16。

(3)�サワー環境における炭素鋼の局部腐食

 CO2腐食環境にH2Sが共存すると、一般的に硫化鉄の生成により減肉タイプの腐食が抑制される。サワー環境では高強度鋼のSSCが問題とされるが、炭素鋼の局部腐食も最近注目されている。 (2)-②で述べたように、CO2 環境の場合には高流速下で局部腐食が発生しやすいが、サワー環境では高流速および滞留した環境の双方において局部腐食が発生すると報告されている*17。その両環境における局部腐食発生のメカニズムが同一か否か、現時点では不明であり、

早期に解明が求められている。 また、CO2腐食において鋼表面に生成する腐食生成物は炭酸鉄であり、2価の鉄イオンと炭酸イオン(CO3

-)のモル比は1:1である。しかし、硫化鉄の場合には、その一部を下に示したように多岐にわたっている。

・ Pyrrhotite;Fe1-XS・ Troilite;FeS・ Mackinawite;Fe1+XS・ Pylite;FeS2

 当然ながら、各鉱物の物理的、化学的性質には相違が存在するものと考えられる。一般的に硫化鉄は半導体的性質を有することから、鋼表面の硫化鉄の一部が剥

はく

離り

すると、大きなカソード(硫化鉄で覆われた鋼表面)と小さなアノード(裸の鋼表面)の組み合わせにより、ガルバニック作用が効果的に機能し、その局部腐食の浸食速度は非常に高くなるものと推測される。 さらに、サワー環境に酸素(O2)が混入すると、H2Sが酸化を受け元素硫黄が析出することにより、局部腐食が

CO2 腐食に対するCr添加の効果図2

C-steel2Cr5Cr9Cr - lMo13Cr25Cr - 6Ni - 3Mo

Temperature (°F)

070

60

50

40

30

20

10

0

100 200 300 400 500 600

0 100 200 300Temperature (°C)

Cor

rosi

on ra

te (m

m/y

)

1.0

0.5

0

-0.5

-1.0

-1.5

0 5

pH

10

Fe

Fe2+

Fe3+

FeCO3HFeO2-

Fe3O4

Fe2O3

273323

373423

473

100kPaCO2

Pot

entia

l vs.

EH

2(V)

Temperature(K)

Fe2+,10-6 mol/dm3; Pco2, 100kPa.

Fe-CO2-H2O系のプルベーダイヤグラム図1

出所: A. Ikeda, M. Ueda, S. Mukai, CO2 Corrosion Behavior and Mechanism of Carbon Steel and Alloy Steel, “Advances in CO2 Corrosion”, P.39, NACE, 1984

出所: A. Ikeda, M. Ueda, S. Mukai, CO2 Corrosion Behavior and Mechanism of Carbon Steel and Alloy Steel, “Advances in CO2 Corrosion”, P.39, NACE, 1984

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アナリシス

加速されることが知られている。 以上のように、CO2腐食環境と比べサワー腐食環境は複雑であるとともに、いったん局部腐食が発生すると、その進行速度は速く、流体の毒性が非常に高いことからも、局部腐食の効果的抑制法が強く求められている。

(4)��スイート環境およびサワー環境における局部腐食

に関する最近の研究動向

 当該環境における炭素鋼の局部腐食に対して、流動挙動が大きな影響を与えるため、規模の大きなループテスターを使用してのJoint Industry Project (JIP) が推進されている。そのなかで、Prof. P. Jepsonが開始し、Prof. S. Nesicが継承しているオハイオ大学のJIPとDr. R.

Nyborgが率いるIFE(Institute For Energy、ノルウェー)のJIPが著名であり、双方ともメジャー系石油会社、大手インヒビター会社など20前後の会社が加入している。 IFEは20年ほどのCO2 腐食研究、また5年ほどのH2S腐食研究の歴史を有し、最近の主要研究課題はサワー環境における炭素鋼の局部腐食としている。また、オハイオ大学もCO2環境中の炭素鋼の全面(平均)腐食速度に関するPrediction Modelを完成し、現在ではCO2環境中の炭素鋼の局部腐食速度、それに対する微量H2Sおよび有機酸の影響が主要研究課題となっている。

2.�南長岡ガス田における13%Cr鋼チュービングの腐食状況

 1984年(昭和59年)より生産が開始された新潟県の南長岡ガス・コンデンセート田では、高温・CO2腐食対策として一部の坑井に13% Cr鋼チュービングが採用された。 南長岡ガス田の典型的な坑井条件を表1に示す。坑井は、微量H2Sを含有する高温・高圧のスイート腐食環境であり、このような厳しい腐食環境の坑井開発は初めての経験であったことから、開発当初にメジャー系石油会社に調査団を派遣し調査を行った。1970年代後半当時には、メジャー系石油会社においてさえ、チュービングの腐食対策としては炭素鋼+腐食インヒビター

の間欠処理が一般的とのことであった。しかし、アジア地域の高温CO2 腐食による炭素鋼の腐食事例や高温におけるインヒビター効果の不確実性を考慮し、主として経済的な理由から13% Cr鋼をチュービング材として試験的に採用した。 チュービングに用いたL80グレードの13% Cr鋼は、Crを13%含有する耐CO2 腐食用油井管材料で、マルテンサイト組織で高強度とするために炭素含有量が多い特徴を有する。しかし、13% Cr鋼といえども180℃の高温となる坑底部での腐食が懸念された。そこで、3坑井の改修作業の際に回収された13% Cr鋼チュービングの内面の腐食状況を調査した。当該3坑井の生産状況を表2に、腐食状況の模式図を図3に、また腐食部の写真を写3に示す。 主な特徴は以下のとおりであった。a) 深度100 ~ 1,600mにかけて、チュービング内面に

坑井 深度 4,605 m

ガス層

深度 4,356 ~ 4,560 m

温度 180 ℃

圧力密閉 535 KSCG

生産 480 KSCG

坑口温度 95 ~ 110 ℃

圧力 370 ~ 395 KSCG

生産流体含有

炭酸ガス 約 6.0 %

硫化水素 2 ~ 5 ppm

塩化物イオン 100 ~ 200 ppm

酢酸 150 ~ 250 ppm

GWR 30,000 Nm3/kl

GOR 6,100 Nm3/kl

南長岡ガス田の坑井条件表1

各坑井の生産状況表2

出所:筆者作成 出所:筆者作成

No. TBG 径 (inch)

生産状況キャリパー

ワイヤーライン生産

年数停止年数

合計年数

1 3-½ 3.6 年 0.1 年 3.7 年 3 回 5 回2 2-3/8 4 年 0 年 4 年 3 回 6 回3 3-½ 2.8 年 3.7 年 6.5 年 3 回 4 回

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石油開発の腐食・防食における最近の課題

局部腐食が発生していた。また3,000m以深にはネジ面に軽微な腐食が見られた。

b) 浅部の局部腐食は、主としてワイヤーライン作業の疵き ず

の上に見られ、疵のない部分の孔食より径も深さも大きな傾向を示していた。

c) 浅部の局部腐食はネジ部で顕著で、特にピン側の損傷がボックス側と比較して大きかった。

d) 当初懸念されていた坑底部での腐食は軽微であった。

 また、3坑井の生産状況の比較では、チュービング径や生産年数およびキャリパーやワイヤーラインの回数に大きな違いは認められないものの、生産停止年数が長いNo.3坑井において最も深い局部腐食が発生している。これらから、ワイヤーライン作業による疵が起点となり、皮膜が破壊された部分に保護性の皮膜が再生されなかったことにより、腐食が局部的に進行したものと推察され

る。13% Cr鋼表面の皮膜の再生が阻害されたり不安定になる主原因として、pHの低下が考えられる。そこで、凝縮水の分析を行ったところ種々の有機酸の随伴が判明し、酢酸では約200ppmという濃度で含有されていることが確認された。高圧CO2環境中ではこれら有機酸の影響により、坑井の生産停止時の温度低下によりpHが3前後まで低下するものと推定される。また、酢酸の沸点が118 ℃と水より高いため、坑井浅部の温度が100 ~120 ℃となる付近で酢酸の凝縮により厳しい腐食環境となった可能性が考えられる。 図4に炭素鋼(L-80)、13% Cr鋼(13Cr)および22Cr二相ステンレス鋼(22Cr)のアノード分極曲線を示す。本測定は金属の電位と電流の関係からその環境における耐食性を評価する方法であり、縦軸の電流密度は腐食速度に対応する。酢酸が600ppm添加されることにより、溶液pHが3.8から3.1に低下する。この酢酸の影響により13% Cr鋼の電流密度の大幅な増加が示されており、酢酸は弱酸であるものの溶液pHの低下により、13% Cr鋼表面の保護皮膜の形成を阻害する効果が発現し、厳しい腐食環境となったものと推察される。 南長岡ガス田における13% Cr鋼チュービングの腐食事例解析から、酢酸による局部腐食発生に関する知見が得られた。今後の新規油・ガス井開発に際して、有機酸の有無の情報は、適性材料選定など腐食と防食の検討に対する大きな要素となるものと考えられる。 現在、南長岡ガス田ではチュービング材料として22Cr二相鋼を採用しており、それ以降チュービングの腐食に関する問題は発生していない。

pH3.8

pH3.1

104

103

102

101

100

10-1

10-2

-900

L80 L80. A

13Cr. A

13Cr

22Cr 22Cr. A

-700 -500 -300 -100

Current density (µA/ cm2)

E ( mV v.s. SCE )

アノード分極曲線、3%NaCl,�CO2�1atm,�20℃ ,Acetic�acid;�0,600ppm図4

出所:巴 保義、清水 誠、石技誌、70、4、P. 328、2005

坑井の腐食状況の模式図図3

13%Cr鋼チュービング腐食部写3

出所: T.Sunaba, H. Honda, T. Watanabe, Y. Tomoe, CORROSION/2009, Paper No. 09568 (原文は英語)

出所: T.Sunaba, H. Honda, T. Watanabe, Y. Tomoe, CORROSION/2009, Paper No. 09568

4,000m

No.1坑井チュービング

3,000m

2,000m

1,000m

0m

180℃

全面腐食+

局部腐食(Max3.3㎜)

腐食なし

腐食なし

軽微な孔食

軽微な全面腐食

No.2坑井チュービング

全面腐食+

局部腐食(Max2㎜)

腐食なし

腐食なし

軽微な全面腐食

No.3坑井チュービング

局部腐食(Max5.3㎜)

腐食なし

腐食なし

軽微な局部腐食

ネジ部に軽微な腐食

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3.�坑井水中の有機酸濃度

 蟻ぎ

酸や酢酸をはじめとする有機酸は弱酸であるが、有機酸が腐食環境中に存在するとpH低下による局部腐食の促進、SSC(Sulfide Stress Cracking)やSCC(Stress Corrosion Cracking)発生の原因となる。 これらの有機酸は、日本をはじめインドネシア、オーストラリアの坑井から産出される原油、天然ガスに随伴する。有機酸が他の地域と比較して東南アジア地域の地層より高濃度で随伴される理由として、一説には地層が若いためとも言われている。 有機酸は有機化合物の酸の総称であり、ほとんどの有機酸はカルボキシル基 (-COOH)を有する。また、スルホン酸は比較的強い有機酸で、スルホン基 (-SO3H)を有する。表3に各有機酸の名称と化学式を示す。 強酸性の無機酸(鉱酸)が水中で高い割合で解離するの

に対し、一般に有機酸は弱酸であり水中ではごく一部しか解離しない。蟻酸や酢酸のような分子量の小さい有機酸の水溶性は高いが、エナント酸のような分子量の大きい分子の溶解度は低い。一方、ほとんどの有機酸は有機溶媒に対して高い溶解性を示す。 酢酸は凝縮水や生産水中で以下のように解離する。

   CH2COOH=H++CH3COO-

 25 ℃における酢酸濃度とpHの関係を図5に示す。CO2 分圧が高い場合には、酢酸によりpHが3を下回る環境になることもあり得る。また、酢酸には浸透性があるため金属表面の保護皮膜を破壊する効果を有するとの報告もある。このように、酢酸が含まれる環境では耐食

出所:筆者作成

出所:筆者作成

出所:筆者作成

名称 Common name 化学式 溶解度

蟻酸 Formic acid HCOOH 大

酢酸 Acetic acid CH3COOH

プロピオン酸 Propionic acid CH3CH2COOH

酪酸 Butyric acid CH3(CH2)2COOH

吉草酸 Valeric acid CH3(CH2)3COOH

カプロン酸 Caproic acid CH3(CH2)4COOH

エナント酸 Enanthic acid CH3(CH2)5COOH 小

各有機酸の名称と化学式表3

酢酸濃度とpHの関係図5各有機酸濃度の変化図6

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

Jan-0

7

Apr-07

Aug-07

Nov-07

Feb-08

Jun-0

8

Sep-08

Dec-08

Mar-09

Concentration / ppm

蟻酸 酢酸 プロピオン酸 酪酸 吉草酸

3.0

3.2

3.4

3.6

3.8

4.0

4.2

4.4

0 500 1,000 1,500 2,000(CH3COOH) [mg dm-3]

pH

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石油開発の腐食・防食における最近の課題

4.�高温、湿潤CO2腐食環境に対する各種耐食合金鋼(CRAs)の耐食性評価

 近年、大深度、大水深という厳しい環境のなかで油・ガス田開発が盛んに行われており、多くの場合、その坑 井 機 器 に は 高 価 な 耐 食 性 合 金 材 料(Corrosion Resistant Alloys:CRAs)が必要とされる。一方、中国やインドの台頭や発展途上国による鉱物資源に対する旺盛な需要から、原油をはじめ、坑井機器、パイプラインなどの原材料である鉄鉱石、およびニッケルやクロムなど合金元素となる鉱物資源の価格高騰が続くと考えられる。それら材料価格の上昇は油・ガス田開発にとって大きな負担となる。 これを受け、油井管材料として22Cr二相ステンレス鋼と13% Cr鋼の間を埋める中間鋼種(15Cr、スーパー13Cr系等)が、国内の鉄鋼会社により90年代より開発、商品化されている。それら中間鋼種の新潟の高温・腐食性ガス田、および類似の坑井環境を有する海外の海洋ガス坑井への適用性に関して、JOGMECと国際石油開発帝石(株)と共同でスーパー 13% Cr鋼を中心に評価試験を行った。表4に坑井条件の例を示す。 当該4フィールドのガス(コンデンセート)田の坑内腐

食環境(表4)は類似していると言える。すなわち、基本的には高温・湿潤・CO2 腐食環境であるが、それら生産流体中にはサワーの範

はん

疇ちゅう

に入るか否か程度の微量H2S、さらに比較的高濃度の有機酸が含有される。

(1)坑井開発における腐食検討

 腐食検討における重要因子として、予想(予定)される坑井寿命と腐食環境の2点が挙げられる。その坑井がどのくらいの期間生産に供されるのか、たとえば30年か40年かで大きく異なる。また、坑井の温度、圧力、酸性ガス成分、その他の腐食因子も当然のことながら大きな要素となる。たとえば、表4の坑井のような高温・湿潤・CO2 腐食環境におけるチュービング・ケーシング材としては、現在では、炭素鋼+腐食インヒビターの基本的組み合わせによる計画は稀

まれ

となっている。比較的高温下で使用可能なインヒビターが存在するものの、100℃以上の高温環境ではインヒビター成分の劣化や吸着が困難になることにより、防食効果に対する信頼性が低下することが大きな理由である。 そのため、表4のような環境ではCRAの使用が一般的になりつつある。現在では鉄鋼会社からさまざまな特徴を持つCRAが開発されている。そのなかから耐食性とコストの観点から最適な材料を選定することが、安全かつ経済的な操業の上から重要なファクターとなる。 腐食検討においてCRAの選定には2種類の坑井腐食環境を考慮する必要がある。一つは、坑井開発初期の凝縮水環境、もう一つは生産後期の地層水が産出される環境である。坑井開発初期には地層水が産出されないため、生産される天然ガスの温度の低下により生成する凝縮水中のCl-濃度は低いものの、pH緩衝性を有するHCO3

-(重

合金の表面皮膜が不安定となり、局部腐食発生の原因となるとともに、H2Sの存在する環境では鋼中への水素の浸入を促進し、SSCの発生を助長するものと考えられる。 EFC(European Federation of Corrosion)の報告書

(EFC17)においては、各有機酸の含有量をモル濃度で酢酸に換算して実験を行うように規定されている。しかし、各有機酸の化学的性質の相違による腐食への影響に関してはまだ不明な点も多く、今後の研究課題となっている。

 図6は国内のあるガス田のセパレーター内生産水中の有機酸濃度の測定結果である。酢酸が160 ~ 180ppmと最も多く含まれ、次にプロピオン酸が多く含まれる。これらの傾向はフィールドによって異なるが、蟻酸に関しては含有量が少ない場合が多いようである。

CO2

(atm)H2S

(atm)BH Temp.

(℃)Depth (m)

Field 1 40 0.002 150 4,000

Field 2 35 0.002 180 4,600

Field 3 40 0.010 150 4,000

Field 4 80 0.005 180 4,500

Comparison�of�bottom�hole�conditions�of�some�gas�wells表4

出所:筆者作成

General definition of sour;H2S ≧ 0.05 psi(0.0034 atm)

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802009.7�Vol.43�No.4

JOGMEC

アナリシス

炭酸イオン)が含有されないため、CO2と有機酸の溶解度が高くなる温度の低い部分で、pH低下(約3程度)による腐食の発生が懸念される。 これに対し、生産後期には一般に海水と同程度の塩化物イオン濃度の地層水が産出される。地層水には種々のイオンが溶け込んでいること、特にHCO3

-によりpH低下が抑制されるものの、高温・高Cl-環境下の局部腐食、応力腐食割れ(SCC)の発生が懸念される。 また、H2S含有環境では低温環境における水素誘起割れ(Hydrogen induced crack:HIC)および硫化水素割れ

(Sulfide stress cracking:SSC)についての検討が必要となる。 現在、新潟のガス田では22Cr二相ステンレス鋼をチュービング材として使用している。しかし、当該環境ではより廉価なスーパー 13% Cr(S13Cr)鋼系材料が適性材である可能性が考えられるため、これら鋼種の耐食性を13% Cr鋼、および22Cr二相ステンレス鋼の耐食性と比較した。 なお、インドネシアとオーストラリア1の坑底温度は約150℃、一方、新潟とオーストラリア2の坑底温度は約180℃であり、この温度差の影響にも着目した。

① 耐食性評価法 主として動的環境下で耐全面腐食性の比較を行った。

Shell CanadaのループテスターとINPEX技研所有のオートクレイブ中のRotating Cageを使用して、評価試験を行った(図7、写4)。H2Sの影響については、ループテスターを使用して評価した。

② 各種耐食性材料の高温耐食性  耐 食 性 評 価 試 験 結 果 を 図 8 に 示 す。120 ℃ で は13 % Cr鋼から22Cr二相鋼まで供試材のすべてが高い

Schematic�drawing�of�loop�tester図7

Influence�of�Cl-�Concentration�on�Corrosion�Rate;150℃,Acetic�acid�600ppm,�168hr,�CO2�1MPa

図8

Schematic�drawing�of�rotating�cage写4

出所: T.Sunaba, H. Honda, T. Watanabe, Y. Tomoe, CORROSION/2009, Paper No. 09568

出所: T.Sunaba, H. Honda, T. Watanabe, Y. Tomoe, CORROSION/2009, Paper No. 09568

出所:筆者作成

FlowMeter

Stripcoupons

Pump Shaft

Autoclave5L

Heater

Gas out

Flow loop coupons

Press.Gauge 13%Cr

S13Cr22Cr

H2S GAS

CO2 GAS Specimen

Rotating Cage

Vortex

Image of inside of autoclave

0

0.1

0.2

0.3

0.4

100 120 140 160 180 200Temp. (°C)

Corrosion rate (mm/y)

13%CrS13Cr-1S13Cr-2S13Cr-315Cr22Cr

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81 石油・天然ガスレビュー

JOGMEC

石油開発の腐食・防食における最近の課題

耐食性を示す。しかし、150℃では13% Cr鋼の耐食性が低下するものの、S13Cr鋼以上の鋼種は高い耐食性を示す。180℃では耐食性は三つのレベルに分かれる。すなわち、1 3 % Cr 鋼、モリブデン 1 %含有 S1 3Cr-1およびモリブデン 2 %含有 S13Cr-2 の 2 鋼種、さらにS13Cr-3 のS13Cr鋼、15Cr鋼、22Cr二相鋼の3鋼種である。どの温度領域においても22Cr二相鋼が最も高い耐食性を示す。 また、S13Cr鋼系材料にとっては、それらの耐食性の観点から、150℃と180℃の腐食環境には大きな相違があると言える。

③ 各種耐食性材料表面の保護皮膜の安定性〔1〕 Cl-の影響(150℃、180℃) Cl-は鋼表面の酸化膜の保護性に影響を与える。すなわち、それらの酸化膜を破壊するとともに、その自己補修性を低下させる。そこで、Cl-濃度を100ppmから3 万 ppmまで変化させるとともに、温度を 150 ℃と180 ℃として13 % Cr鋼、S13Cr鋼、および22Cr二相鋼の保護皮膜の安定性を評価した。150℃、180℃における結果をそれぞれ図9、図10に示す。

150℃ 13% Cr鋼では、100 ~ 1,000ppmにかけてCl-イオン濃度の増加につれて腐食速度が緩やかに上昇し、1,000ppm以上ではCl-濃度の増加につれて急激に上昇する。これに対し、S13Cr鋼および22Cr二相鋼はCl-濃度の影響を受けない。

180℃Cl-濃度を200ppm ~ 2万ppmとした。3鋼種ともCl-

濃度の影響を受けるが、その大きさの程度は、22Cr二相鋼<S13Cr鋼<13% Cr鋼の順である。150℃の実験と同様にCl-イオン濃度1,000ppm以上では腐食速度が高くなる傾向が現れるとともに22Cr二相鋼においても減肉傾向が示される。S13Cr鋼の腐食速度は、Cl-濃度1,000ppmでは0.05mm/yと高い耐食性を示すが、2万ppmでは0.2mm/yで許容範囲(一般的に0.1mm/y)を上回る。

地層水産出の影響 13% Cr鋼では、150℃においても地層水の産出によりその耐食性が低下する傾向を示す。S13Cr鋼については、150℃では地層水産出による耐食性の低下傾向は認められないものの、180℃では低下傾向が認められる。22Cr二相鋼も180℃では耐食性の低下傾向が認められるが、その程度はS13Cr鋼より明らかに小さい。

〔2〕H2Sの影響 3鋼種の高温・CO2腐食速度に対する微量H2S濃度の影響を図11に示す*18。 13% Cr鋼ではH2Sがない場合には低い腐食速度であるが、H2S分圧の増加に伴いいったん腐食速度が増大するが、さらにH2S分圧が増加すると腐食速度が低下する。これは、H2S分圧がある程度以上であれば鋼表面にFeSが生成し、腐食が抑制されるものの、H2S分圧が低い場合にはFeSが均一に生成せず、13% Cr鋼表面とFeSと

Influence�of�Cl-�Concentration�on�Corrosion�Rate;180℃,Acetic�acid�600ppm,�168hr,�CO2�1MPa

図10Influence�of�Cl-�Concentration�on�Corrosion�Rate;150℃,Acetic�acid�600ppm,�168hr,�CO2�1MPa

図9

出所:筆者作成出所: T.Sunaba, H. Honda, T. Watanabe, Y. Tomoe, CORROSION/2009, Paper No. 09568

0

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

10 100 1,000 10,000 100,000Cl- concentration / ppm

Corrosion rate (mm/yr)

13%CrS-13Cr22Cr

10 100 1,000 10,000 100,000Cl- concentration / ppm

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9Corrosion rate (mm/yr)

13%CrS-13Cr22Cr

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822009.7�Vol.43�No.4

JOGMEC

アナリシス

の間で一種のガルバニック作用が生じ、腐食速度が増大したものと推測される。 S13Cr鋼の場合には、H2S分圧の増加に伴い腐食速度が低下する。これは鋼表面にMoSおよびNiSが生成し、腐食が効果的に抑制されたものと考えられる。FeSと比べMoS、NiSの溶解度が小さいため、極微量のH2Sの存在により保護性の高い硫化物皮膜が形成されたものと推察される。なお、Crは硫化物を生成しにくい。 22Cr二相鋼はこの範囲の分圧のH2Sの影響を受けず、ほとんど腐食速度は算出されない。

〔3〕酢酸の影響 酢酸を600ppm添加し、図11-①に示したと同様な実験を行った。結果を図11-②に示す。 13% Cr鋼では、図11-①に見られた腐食の極大値が低下した以外、総体的に腐食速度が高まる。S13Cr鋼では図11-①に見られたH2S分圧の増加に伴う腐食速度の低下が認められず、H2S分圧の増加に伴い腐食速度が高まる。しかし、その程度は緩慢なものである。これらの結果から、酢酸にはS13Crや22Cr鋼の表面に生成する二硫化モリブデン(MoS2)や硫化ニッケル(NiS)の保護性を阻害する効果があるものと推測される。 なお、22Cr二相鋼は酢酸の存在により腐食速度が算出されるが低いレベルである*19。

〔4〕浸漬時間の影響 一般的に耐食鋼表面の酸化膜は、新たな環境に浸

しん

漬し

されるとその性質が変化し、耐食性が増大する現象が観測される。そこで、3鋼種の腐食環境への浸漬時間を

変化させ、静的環境中の腐食速度の経時変化を調べた。結果を図12に示す。 3鋼種とも浸漬期間の増加により平均腐食速度が低下するが、特に 13 % Cr鋼で顕著である。これに対し、S13Cr鋼、22Cr二相鋼ではその傾向が明らかに小さい。すなわち、この環境に対し、13% Cr鋼表面の保護膜は不安定で、安定するまでに長い時間を要するが、S13Cr鋼、22Cr二相鋼表面の保護皮膜は安定的で、浸漬直後から高い耐食性を示す。

(2)各種耐食性材料の化学組成からの考察

 (1)に示した各鋼種間の腐食挙動の相違、保護皮膜の安定性の相違は、それら鋼種の化学組成を反映したものと推測される。今回の一連の実験に供した耐食材料

Influence�of�immersion�period�on�corrosion�rate図12

Inference�of�small�amount�of�H2S�on�corrosion�rate�under�the�high�temperature�sweet�environments;180�℃ ,�Cl-�1,000�ppm,�CO2�6�MPa,�5m/sec

図11

出所:筆者作成

出所: T.Sunaba, H. Honda, T. Watanabe, Y. Tomoe, CORROSION/2009, Paper No. 09568

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0 0.005 0.01 0.015 0.02H2S partial pressure (bar)

0 0.005 0.01 0.015 0.02H2S partial pressure (bar)

Corrosion rate (mm/y) Corrosion rate (mm/y)

0

0.1

0.2

0.3

0.4

① None Acetic Acid environments ② With Acetic Acid 600ppm

13%CrS-13Cr22Cr

13%CrS-13Cr22Cr

150C, Cl-1,000ppm, Acetic Acid 600ppm

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

0 10 20 30 40Tested time / days

Corrosion rate (mm/y)

13%CrS-13Cr22Cr

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83 石油・天然ガスレビュー

JOGMEC

石油開発の腐食・防食における最近の課題

の 化 学 組 成 を 表 5 に 示 す と と も に、22Cr、S13Cr、13 % Cr鋼の組織を写5に示す。13 % Cr鋼とS13Cr系の鋼種はマルテンサイト構造(体心立方)の金属組織である。一方、22Cr二相ステンレス鋼は、オーステナイトとフェライトの2相組織から成る、高強度で耐食性の優れたステンレス鋼種である。しかし、耐応力腐食割れ性、耐孔食性、耐粒界腐食性に優れるものの、冷間加工(冷却後の高強度化工程)を必要とするため、一般的にコストが高く納期まで時間がかかる。 13 % Cr鋼とS13Cr鋼ではCr含有濃度は変わらないものの、NiおよびMo濃度に有意差が存在する。Crはその酸化物が薄く緻

ちみ

密つ

な皮膜(不動態)を作り、内部までの酸化の進行を抑制する性質を有しており、CO2腐食に対する耐性を高める。これに対しNiは、H2S含有環境中で保護性の硫化物を生成する。また、Moは保護性の硫化物を生成するのみならず、保護皮膜の破壊の阻止と自己補修に大きく寄与する。 今回の一連の評価試験においてS13Cr鋼が13% Cr鋼と比べ、格段に高い耐食性を示したのは、これらNiおよびMo添加によるものと考えられる。22Cr二相鋼は

高いCr濃度およびS13Cr鋼より高いMo濃度により、今回の評価試験において最も優れた耐食性を示したものと考えられる。

(3)30年間の減肉量の推定

 図12に示したように、長期にわたる平均腐食速度は短期間の平均腐食速度より低い値となる。そこで、安全サイドとして7日間の浸漬試験結果を採用し、その平均腐食速度から各鋼種の30年間の平均累積減肉量を計算した。結果を表6に示す。 プロダクションチュービングは生産初期には内圧による破壊に耐え、後期には外圧による崩壊に耐えなければ

Microstructure�of�tested�materials写5

Calculated�total�metal�loss�of�CRA�tubing�in�30�years�(mm)表6

出所:T.Sunaba, H. Honda, T. Watanabe, Y. Tomoe, CORROSION/2009, Paper No. 09568

出所:筆者作成

Temp. 13% Cr S13Cr-1 S13Cr-2 S13Cr-3 15Cr 22Cr

150℃ 3.27 0.96 0.84 0.42 0.18 0.09

180℃ 11.0 4.92 4.07 1.62 0.81 0.09

Chemical�composition�of�specimen�tested�(mass%)表5

出所:筆者作成

Ally C Cr Ni Mo Cu Mn Si P S Remarks

13% Cr 0.19 12.5 0.11 0.01 0.007 0.42 0.27 0.008 0.005 ー

S13Cr-1 0.02 12.8 4.33 0.91 ー 0.37 0.18 0.015 0.001

S13Cr-2 0.02 12.9 5.38 2.16 ー 0.40 0.21 0.010 0.001

S13Cr-3 0.01 12.1 5.51 1.94 0.071 0.50 0.19 0.015 0.006 ー

15Cr 0.03 14.5 6.23 1.97 0.96 0.29 0.23 0.014 0.001 Nb

22Cr 0.02 21.8 4.95 1.87 0.080 1.15 0.42 0.019 0.005 Cold-work

22Cr S13Cr

10µm10µm

13%Cr

10µm10µm 10µm10µm

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842009.7�Vol.43�No.4

JOGMEC

アナリシス

5.�Top�of�Line�Corrosion(TLC);トップ・オブ・ラインコロージョン

 有機酸がパイプラインの内面腐食に大きな影響を与え、最近関心を集めている問題にTLCがある。

(1)Top�of�Line�Corrosion�(TLC)とは

 湿潤ガスをパイプラインで輸送する際に、流れのパターンが層流*20 であれば緩衝性の低い凝縮水がパイプの上面(11時~ 1時の部分)に水滴を形成し、その中に酸性ガスが溶解して激しい全面腐食および局部腐食がもたらされる。インヒビターを注入してもパイプの上面を保護することができない。この腐食損傷はTop of Line Corrosion(TLC)と呼ばれる。パイプ内面のTLCのイメージを写6に示す。最近、海洋ガス田(特に東南アジア)において、TLCが多く発生し問題となっている。

(2)TLCに及ぼす環境因子の影響

① 流動パターンの影響 このように、TLCはパイプライン中の流体の流動パターンに依存する。流れのパターンが層流であれば、注入されたインヒビターはパイプの上面に防食皮膜を形成

することができず、TOCの発生、進行は抑制されない。

② 凝縮水の影響 流れのパターンが層流、あるいはWavyであると、河川水、海水または冷たい空気による外部冷却のため、パイプライン内面の11時~ 1時の位置にガス中の水分が凝縮し、その水滴中に酸性ガスが溶解することによってpH が低下し、腐食性が高まる。生産流体中に有機酸が存在すると、pHをさらに低下させ、腐食環境を悪化させる。pHが4以下になると、最高10mm/年の非常に高い局部浸食速度が引き起こされる。TLCの腐食速度は水の凝縮速度(water condensation rate)に依存する。凝縮速度が高ければTLCはより深刻な問題となる。

③ 鉄イオン濃度の影響 保護性を有する腐食生成物膜が形成されるためには鉄イオンの存在が必要である。鉄イオンが一定の濃度以下になると、保護性の腐食生成物膜が形成されにくく、腐食は抑制されなくなる。この鉄イオン濃度が低く、腐食性の高い水は“Hungry water”と呼ばれる。例えば海洋において集ガスラインに炭素鋼と耐食性合金(CRA)の双方を使用する場合(高温部:CRA、低温部:炭素鋼)CRAの部分での鉄の溶出が抑制され、CRAの下流の炭素鋼パイプの部分の鉄イオン濃度が低くなる。その結果、炭素鋼パイプに保護性の腐食生成物膜が形成されず、腐食の進行が抑制されない。

④ 酸性ガスの影響 酸性ガスとしてはCO2 とH2Sが代表的である。CO2 の場合には保護性の炭酸鉄が生成し、H2Sの場合にも保護性の硫化鉄が生成する。CO2 の場合、TLCが問題となる臨界凝縮速度(Critical Water Condensation Rate:CWCR)は0.15 ~ 0.25ml/(m2.s)と推測される。一方、

ならない。すなわち、生産期間中、チュービングはそれらに耐える得る肉厚を有しなくてはならない。 生産期間を30年、許容される減肉量が1.7 mmとすると、坑底温度が150 ℃であればS13Cr鋼系材料、特にS13Cr-3鋼が適性チュービング材と考えられる.180℃となると、Cl-濃度が高い地層水が産出される条件を考

慮すると、S13Cr鋼では力不足で、15Cr鋼か22Cr二相鋼が候補材となる。  以上は、耐全面腐食性の評価試験結果から導かれた結論であるが、実坑井への適用に際しては隙間腐食、SCC等の局部腐食に関する評価試験法等も考慮しなければならない。

ガスラインパイプのTLCの例*21写6

出所: T. E. Pou, “Global corrosion inhibitors development”, Symposium on TLC Corrosion, Sep. 19-21st, 2006

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85 石油・天然ガスレビュー

JOGMEC

石油開発の腐食・防食における最近の課題

結語

本報告では油・ガス井環境において最近注目されている腐食問題について概説した。すなわち、スイート環境およびサワー環境における局部腐食、13% Cr鋼のCO2 腐食に対する酢酸の影響、高温CO2腐食用CRAsの耐食性評価、トップオブライン腐食などである。 オハイオ大学で大規模なループテスターを使用してCO2腐食の研究を推進したProf. P. Jepsonは、「CO2腐食には100万の因子があるので、自分の研究は終わらない」という趣旨の発言をしていたが、現在、本邦石油開発会社が海外で遭遇する腐食環境にはH2Sが含有される例が多くなっており、硫化鉄が複雑多岐にわたっていること

から、腐食に影響を与える因子は、CO2腐食よりはるかに多いものと考えられる。 現在、サワー環境の腐食と対策の研究を実施できる研究機関は、メジャー系石油会社、大手鉄鋼会社、および特殊な腐食エンジニアリング会社に限られている。当該分野に関する有力なJIP(Joint Industry Project)に加入し、最新の知見を収集することは重要である。さらに、日本国内においても鉄鋼会社のみならず、鋼管およびインヒビターのユーザーの視点から、サワー環境における腐食と対策の研究を実施できる研究機関の必要性を痛感している。

H2Sの場合にはより小さな凝縮速度でも要注意との見解が示されている。

⑤ 有機酸の影響 ガス中に存在する酢酸または他の気化性有機酸は水とともに凝縮し、凝縮水のpHを低下させる。その結果、凝縮水中の鉄の溶解量を増大し、腐食を促進する。提案されたモデルを用いた計算では、生産水中に400mg/lの酢酸が存在すると、鉄の溶解度は酢酸がない場合に比べ約2倍になる。 これまでの研究によると、生産流体中の有機酸は以下のようなメカニズムでTLCに影響を与えるものと推測される。

・ pHの低下・ 不動態皮膜の局部的破壊・ 保護性の腐食生成物皮膜に対する悪影響

 仏Total社はフィールド試験を行い、TLCの腐食速度は有機酸の濃度に強く依存することを示した。1例として、生産水中に3,000ppmの酢酸が存在すれば、約3 mm/y の高いTLCの腐食速度に至ることを挙げている*22。

(3)TLCシミュレーションモデル

 1990年以降、TLC問題に関する報告は年々増加している。今までに多くのシミュレーションモデルが提案されている*23、*24。最近開発されたモデルでは環境因子の影響を含め、その信頼性が高まっている。そのうち、

最近よく使用されているのがIFEモデルである。そのモデルによりTLC速度を推定する式が、最近のNACE Internationalにより紹介されている*24。

   CR = 0.004*Rcond*CFe*(12.5-0.09*T)CR;Top of Line Corrosion速度(mm/y)Rcond;水の凝縮速度(g/m2s)CFe;鉄の溶解度(ppm wt)T;温度(℃)

(4)TLC�対策

 TLCは、主として高温の海底パイプラインで経験されている。海底や河川横断部の高温パイプラインに対しては、断熱効果に優れる塗覆装の採用、あるいは埋設が水の凝縮速度の低下に有効である。 操業上の対策としてはインヒビターの連続注入に加え、間欠処理の併用が有効である。しかしその際には、インヒビター溶液をビグとピグの間に保持する方法や、インヒビター溶液を後方に噴射する特殊なピグの採用などの検討が必要となる。また、定期的にクリーニングピグ処理を行い、ライン内面の11時~ 1時の位置に凝縮した水を除去することも効果的である。 TLCの発生が予想される場合には(例えば予測された水凝縮速度が臨界凝縮速度より大きい場合)、パイプラインの材料としてCRAを使うこと、またはCRAを炭素鋼内面にクラッドした材料も有効な対策と考えられる。

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862009.7�Vol.43�No.4

JOGMEC

アナリシス

<注・解説>*1: 佐々木詔雄、「石油・天然ガス資源の未来を拓く」の刊行にあたって、「石油・天燃ガス資源の未来を拓く」、石油

技術協会、2004*2:NACE Specification MR-01-75, NACE International, 2001*3:L. W. Vollmer, CORROSION, 8, 10, P.326, 1952*4: A Report of Technical Practices Committee 1-G, “Field Experience with Cracking of High Strength Steels in Sour

Gas and Oil Wells”, NACE, 1952*5: R. S. Treseder, Oil Industry Experience with Hydrogen Embrittlement and Stress Corrosion Cracking, “Stress

Corrosion Cracking and Hydrogen Embrittlement of Iron Base Alloys”, P.147, NACE, 1977*6:NACE Group Committee T-1,”Corrosion Control in Petroleum Production”, P.9, NACE, 1979*7:N. F. Lowe, “Condensate Well Corrosion”, NGAA, P.1, 1953*8:C. De. Waard, D. E. Milliams, CORROSION, 31, 5, P.177, 1975*9: G. Schmitt, B. Rothmann, Studies on the Corrosion Mechanism of Unalloyed Steel in Oxygen-Free Carbon Dioxide

Solutions, “CO2 Corrosion in Oil and Gas Production”, P.154, NACE, 1984*10:池田昭夫、住友金属、47、2、P.5、1995*11: A. Ikeda, M. Ueda, S. Mukai, CO2 Behavior of Carbon and Cr Steels, H. P. Hausler, editors, “Advances in CO2

Corrosion”, P.39, NACE, 1984*12: P. A. Burke, Synopsis:Recent Progress in the Understanding of CO2 Corrosion, “Advances in CO2 Corrosion”, P.3,

1984 *13: A. Ikeda, M. Ueda, S. Mukai, CO2 Corrosion Behavior and Mechanism of Carbon Steel and Alloy Steel, “Advances

in CO2 Corrosion”, P.39, NACE, 1984*14: A. K. Dunlop, H. L. Hassell, Fundamental Considerations in Sweet Gas Well Corrosion, “Advances in CO2

Corrosion”, P.52, NACE, 1984*15:G. Schmitt, Fundamental Aspects of CO2 Corrosion, “Advances in CO2 Corrosion”, P.10, NACE, 1984*16: K. Masamura, S. Hashizume, K. Nunomura, J. Sakai, I. Matsushima, Corrosion of Carbon and High-Alloy Steels in

Aqueous CO2 Environment, “Advances in CO2 Corrosion”, P.143, NACE, 1984*17: M. Bonis, Weight Loss Corrosion with H2S:From Facts to Leading Parameters and Mechanisms, #09564

CORROSION/2009, NACE, 2009*18: T. Sunaba, H. Honda, T. Watanabe, Y.Tomoe, “Corrosion experience of 13 % Cr steel tubing and laboratory

evaluation of Super 13Cr steel in sweet environments containing acetic acid and trace amounts of H2S”,Paper No.09568, CORROSION/2009

*19: D.Paisley, N. Barrett and O. Wilson, “Pipeline Failure: The Roles Played by Corrosion, Flow and Metallurgy”, Paper No.18, CORROSION/99

*20: 層流とは、レイノルズ数(NRe)なる無次元数が2,300 ~ 2,400より小さい場合の流れの状態。それ以上は乱流状態と呼ぶ。

*21: “Global corrosion inhibitors development”, Tong Eak.POU, PhD, Symposium on TLC Corrosion, Sept 19-21st, 2006.

*22: Y.M. Gunaltun and D. Larrey, “Correlation of cases of Top of Line Corrosion with calculated Water Condensation Rates”, Paper No.00071, CORROSION/2000

*23: B.F.M.Pots and E. L. J. A Hendriksen,“CO2 Corrosion under Scaling Condition–The Special case of Top-of-Line Corrosion in Wet gas Pipelines”, Paper No.00031, CORROSION/2000

*24: R. Nyborg and A. Dugstad, “Top of Line Corrosion and water Condensation rates in Wet gas Pipelines”,Paper No.07555, CORROSION/2007

Page 15: 石油開発の腐食・防食における 最近の課題 - …...(3) サワー環境における炭素鋼の局部腐食 CO2腐食環境にH2Sが共存すると、一般的に硫化鉄の

87 石油・天然ガスレビュー

JOGMEC

石油開発の腐食・防食における最近の課題

執筆者紹介

巴 保義(ともえ やすよし)1976年、慶応義塾大学工学部応用化学科卒業、博士(工学)。帝国石油㈱入社、現在、国際石油開発帝石㈱勤務。JOGMEC R&D推進部、石油工学研究課兼務。NACE International 東京・日本セクションのチェアマン。趣味は旅行、ドライブ。卓球、テニスなど径の小さな球技全般。最近の悩みは、腰痛対策と、妻とのこれからの上手な付き合い方に頭を悩ませています。

本田 博志(ほんだ ひろし)1993年、早稲田大学卒業、博士(工学)。日本金属(株)技術研究所研究員、オハイオ大学多相流腐食研究所Assistant Director等を経て2008年よりINPEX技術研究所腐食グループに所属。趣味はテニス、卓球、音楽、読書。最近の悩みは、痛風になり、ビールが飲めなくなったこと。

砂場 敏行 (すなば としゆき)2002年、横浜国立大学卒業。東伸工業で高温高圧用電気化学測定電極の開発研究に従事した後、2008年より帝国石油技術研究所腐食研究室においてスウィート環境におけるCRAの耐食性評価、および坑井開発プロジェクトの腐食スタディーを行っている。趣味は自動車。大学時代よりFiat X1/9を3台乗り継ぎ、現在は1974年式の初期型を所有。最近の悩みは、家族が増えたため2人乗りのFiatにはほとんど乗ることができないことでちょっとストレスが・・・