統合失調症患者の薬物療法に関する 処方実態調...

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統合失調症患者の薬物療法に関する 処方実態調査(2013年) ~ 全国調査から ~ その2 医療法人へいあん 平安病院 髙田 憲一 精神科臨床薬学(PCP)研究会 宇野 準二、髙橋 結花、志田 雅彦、加藤 剛、黒沢 雅広、 谷藤 弘淳、長谷川 毅、中川 将人、本多 智子、宮原 佳希、 梅田 賢太、北川 航平、三輪 高市、柴田 木綿、天正 雅美、 野田 幸裕、吉尾 隆 第110回日本精神神経学会学術総会 平成26年6月26日(木)

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統合失調症患者の薬物療法に関する

処方実態調査(2013年)

~ 全国調査から ~ その2

○医療法人へいあん 平安病院 髙田 憲一精神科臨床薬学(PCP)研究会宇野 準二、髙橋 結花、志田 雅彦、加藤 剛、黒沢 雅広、谷藤 弘淳、長谷川 毅、中川 将人、本多 智子、宮原 佳希、梅田 賢太、北川 航平、三輪 高市、柴田 木綿、天正 雅美、野田 幸裕、吉尾 隆

第110回日本精神神経学会学術総会 平成26年6月26日(木)

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倫理的配慮

本調査や解析では個人情報を慎重に取扱い、十分に倫理的配慮を行った。

日本精神神経学会

利益相反(COI)開示

筆頭発表者名:髙田 憲一

演題発表に関連し、開示すべきCOI関係にある

企業などはありません。

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目 的

精神科臨床薬学研究会(以下PCP研究会)会員の所属する施設に入院中の統合失調症患者について処方調査を行い、「抗精神病薬」、「抗パーキンソン薬」、「抗不安・睡眠薬」、「気分安定薬」の投与量、投与剤数など、薬物療法の実態を把握することを目的とする。

本報告:その2では、全体をまとめた処方実態調査:その1をさらに詳細に解析し、第2世代抗精神病薬の併用処方動向について報告する。

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方 法対象

PCP研究会会員の所属する全国135施設に

入院中の統合失調症患者

調査日

2013年10月31日

調査項目

年齢、性別、身長、体重、罹病期間、1日当りの服薬回数、服薬指導(実施・未実施)の有無、抗精神病薬(含デポ剤)、抗パーキンソン薬、抗不安・睡眠薬、気分安定薬の投与剤数と投与量、心電図異常の有無

抗精神病薬投与量(chlorpromazine換算:CP換算)

抗パーキンソン薬投与量( biperiden換算:BP換算)

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0

10

20

30

40

0剤 1剤 2剤 3剤 4剤 5剤 6剤 7剤 8剤 9剤 10剤 11剤

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

併用率

抗精神病薬「処方剤数」の年次推移(%)

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抗精神病薬の処方率の年次推移

70.8

75.5

68.6

76.2

63.8

80.6

62.4

81.4

58.2

83.9

57.1

84.7

55.5

85.0

54.2

85.4

0

20

40

60

80

100

FGA SGA

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

FGA=第一世代抗精神病薬 SGA=第二世代抗精神病薬

処方率

(%)

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38.3%

16.4%

61.7%

83.6%

抗精神病薬の単剤処方率(2013)

(n=18,456)

(n=1,160)

(n=5,904)

多剤併用

単剤率

SGA

FGA

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第2世代抗精神病薬の処方率(2013)

85.4

13.1

36.3 29.0

16.6

4.4 9.6

1.3 7.2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

全体 APZ RIS OLZ QTP PER BNS CLZ PAR

処方率

(n=5,904)

(%)

(n=788)(n=1,727)(n=1,687)(n=666)(n=214)(n=316)(n=215)(n=291)

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85.4

13.1

36.3 29.0

16.6

4.4 9.6

1.3 7.2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

全体 APZ RIS OLZ QTP PER BNS CLZ PAR

リスペリドン製剤

第2世代抗精神病薬の処方率(2013)

処方率

(n=5,904)

(%)

(n=788)(n=1,727)(n=1,687)(n=666)(n=214)(n=316)(n=215)(n=291)

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第2世代抗精神病薬の単剤処方率(2013)

32.0 32.6 25.8

31.5 21.8

26.1 17.9

87.8

21.8

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

全体 APZ RIS OLZ QTP PER BNS CLZ PAR

単剤処方率

(n=5,904)

(%)

(n=788)(n=1,727)(n=1,687)(n=666)(n=214)(n=316)(n=215)(n=291)

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第2世代抗精神病薬の単剤処方率(2013)

32.0 32.6 25.8

31.5 21.8

26.1 17.9

87.8

21.8

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

全体 APZ RIS OLZ QTP PER BNS CLZ PAR

クロザピン

単剤処方率

(n=5,904)

(%)

(n=788)(n=1,727)(n=1,687)(n=666)(n=214)(n=316)(n=215)(n=291)

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第2世代抗精神病薬の単剤処方率(2013)

32.0 32.6 25.8

31.5 21.8

26.1 17.9

87.8

21.8

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

全体 APZ RIS OLZ QTP PER BNS CLZ PAR

アリピプラゾール

クロザピン

単剤処方率

(n=5,904)

(%)

(n=788)(n=1,727)(n=1,687)(n=666)(n=214)(n=316)(n=215)(n=291)

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第2世代抗精神病薬の単剤処方率(2013)

32.0 32.6 25.8

31.5 21.8

26.1 17.9

87.8

21.8

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

全体 APZ RIS OLZ QTP PER BNS CLZ PAR

リスペリドン製剤

単剤処方率

(n=5,904)

(%)

(n=788)(n=1,727)(n=1,687)(n=666)(n=214)(n=316)(n=215)(n=291)

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第2世代抗精神病薬の投与上限を超えた処方数(2013)

抗精神病薬 処方上限(mg) 上限を超えた件数

アリピプラゾール 30 5

リスペリドン 12 29

オランザピン 20 99

クエチアピン 750 24

ペロスピロン 48 0

ブロナンセリン 24 8

クロザピン 600 0

パリペリドン 12 3

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抗精神病薬と他薬との併用率(2013)

全体(%) 第1世代(%) 第2世代(%)

抗パーキンソン薬 51.9 72.2 30.4*

抗不安・睡眠薬 74.0 70.8 66.8*

気分安定薬 35.5 34.2 29.3*

* P<0.05 対 第1世代, χ2 検定

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抗精神病薬と抗パーキンソン薬との併用(2013)

抗精神病薬 抗パーキンソン薬投与剤数BIP換算量(mg)

全体 0.64 1.59

第1世代 0.91 2.39

第2世代 0.34* 0.84†

* P<0.05 対 第2世代(χ2 検定)、 † P<0.05 対 第2世代(t検定)

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世代別使用における投与量と抗パ剤併用率

44.0

62.7

75.2

67.5

76.3

89.0 85.4 87.9 85.6

94.9 92.5 86.7 87.0

97.1 93.8

90.0

17.8 22.6

30.6 26.7

31.1 31.7 36.0

27.5

37.7 36.2 35.0 38.8 38.8 39.8

47.0 47.4 43.3

38.5

59.2 61.5 63.2 68.9

65.5 69.0

60.2

70.6 72.5 70.9 72.7 76.4 74.7

78.0

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

100.0

第1世代薬のみ 第2世代薬のみ 第1+第2世代薬

(mg)

(n=18,456)

(%)

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ま と め1. 抗精神病薬の単剤処方率は29.4%(2006年)から38.3%(2013年)

まで増加したが、依然併用処方は約60%存在した。

2. 第2世代抗精神病薬の処方率が経時的に増加している事に伴い、抗精神病薬の処方剤数も減少してきている。

3. 第2世代抗精神病薬の単剤処方率は全体中の83.6%であった。

4. 第2世代抗精神病薬の中でもっとも処方率の高かったのはリスペリドン製剤で36.3%だったが、一方で単剤処方率は25.8%と全体平均より低かった。

5. 第2世代抗精神病薬の単剤処方率は、クロザピンに続きアリピプラゾール製剤が高かった。

6. 第2世代抗精神病薬の抗パーキンソン薬との併用率は第1世代抗精神病薬と比べて低かった。

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考 察 今回の調査において、抗精神病薬の投与量(CP換算)の減少、単剤化の

推進は確認された。しかし、中野1)らの調査においても、わが国は他の東アジア諸国と比べ、投与量、投与剤数とも多いことが示されており、また、上限を超えた処方も散見されるため、今後も処方内容の検討は必要であると考えられる。

第1世代抗精神病薬と、第2世代抗精神病薬と他薬との併用状況については、抗パーキンソン薬との併用において、第2世代抗精神病薬では第1世代抗精神病薬と比べ、 有意に低くなっていたが、抗不安薬・睡眠薬、気分安定薬については、抗精神病薬の世代間で大きな差が確認されなかった。特にベンゾジアゼピン系薬剤を含む向精神薬の多剤処方に関して、先の診療報酬改定において条件付きではあるが「減算」となることが決定したことは、今後の検討課題となる。

1)中野和歌子ら:統合失調症入院患者に対する抗精神病薬処方の最近10年の変化.臨床精神薬理 14:1397-1411,2011