統合失調症の基礎知識 · 2015. 5. 29. · 本日、お話しする内容。...

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統合失調症の基礎知識 2015.5.26. 晴明病院 長谷川 進

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統合失調症の基礎知識

2015.5.26.

晴明病院 長谷川 進

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本日、お話しする内容。

1、はじめに。

(1)社会の変貌と、精神疾患の現状。

(2)精神疾患の中の、統合失調症。

その位置と課題。

(3)統合失調症の、正しい理解。

2、統合失調症の、具体的な説明。

(1)5つのタイプ。

(2)症状。

(3)原因。

(4)回復への道のり。

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3、統合失調症の治療。

(1)治療方法。

(2)知っておきたい薬の特徴と副作用。

(3)ご家族の方々に理解して頂きたいこと。

(4)社会資源の利用。

4、最後に・・・「かめちゃん」の言葉。

5、参考文献など。

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1、はじめに。

(1)社会の変貌と、精神疾患の現状。

①短期間に大きく変貌した、わが国の姿。

②家庭や地域社会の機能不全、会社組織の変化と

これらによる人間への影響。

・家庭・地域・・・核家族化。孤立化。

・会社組織・・・「グローバリゼーション」に象徴

される、常軌を逸した競争社会。

非正規雇用、リストラ、成果至上主義

etc.・・・

・その結果、「社員(友達)は、みな家族」

→「周りは、みなライバル(または敵!)」へ。

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③価値観の転換。変貌。堕落。

・「人間性」から、「競争社会の勝者」へ。

「お天道様が、ちゃんと見ていますよ」

(超自我による、自我の抑制)

→「周りを蹴落としてでも、勝ちなさい」へ。

(超自我の欠如と、自我の肥大化)

④その結果、著しく病んだ社会と、人々の心。

(次ページ参照)

⑤今、取り戻さないともはや手遅れになるもの。

= 人として、最も尊重されるべき価値観 。

= それは、勝利? 成功? 人間性?

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いわゆる「五大疾病」に、

「精神疾患」が

加えられました。

しかも、他の疾病は減少

または平行線の傾向にある

にもかかわらず「精神疾患」 だけは増加の一途を辿り、

自殺者も年間3万人超と

いう状況が続いています。

そして、「ストレス社会」の

蔓延と、その更なる進行、

その他様々な原因により、

今後も同じような傾向が

続くと思われます。

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(2)精神疾患の中の、統合失調症。その位置と課題。

①様々な精神疾患(大きく10分野に分けられる)

の中でも際立つ、やや独特の位置。

②一般に抱かれがちな、誤解。

(A)「健康な人には無縁の、特別な人だけがなる

病気」

(B)「幻覚や妄想といった、普通あり得ないような、

理解しがたい症状を持つ」

(C)自傷・他害行為や犯罪を犯す虞が

他の人より多い」

(D)「一生治らない、不治の病」

(E)「精神病院への、長期入院や隔離が必要」

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(3)統合失調症の、正しい理解。

・以上は、全て誤り。 正解は・・・

(A)古今東西を問わず、およそ100人に一人の

割合でかかる病気である。

(B)原因は未だ不明だが、幻覚・妄想は誰にでも、

他の心身の病気でも出現しうる症状である。

原因不明の病気、といえば、他の殆どの病気も

実は同じである (癌、生活習慣病、etc.)。

(C)自傷、他害、犯罪、いずれも他の精神疾患の人や

疾患の無い人より少ない。

むしろ、被害者になってしまうことの方が多い。

(D)完治しうるし、そうでなくとも、病とうまく付き合い、

健康的な生活を送ることが可能である。

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(E)退院は生活環境整備によりほぼ全ての人で可能。実際、イタリアでは精神科病院を全廃している。

日本が、世界一精神科病床が多い国であり続ける原因はまず100%、生活環境の不備、即ち国の怠慢更には我々ひとりひとりの無関心にある。

・~以上、なぜ統合失調症だけが、今尚、この様な

誤解をされたまま放置されているのでしょうか?

現実を直視しようとせず、無関心を決め込むこの国

そして我々自身の責任は?

*もはや「他人事」ではない心の病に対して

目を背けることは、自分自身や大切な人に対しても

目を背けることに継っていくのではないでしょうか?

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(注)同じ人物です。何が彼女を変えたのでしょう・・・?

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「幻覚や妄想がある時、そこにあるのは

単なる「疾患」ではなく、

そこから生まれる人間関係の亀裂、

失職、貧困、といった、人生の苦悩

であり、社会的な苦悩である。

だから、社会的な解決がなされなければ

ならないのである。」

(アレッツァ市精神保健センター長・ダルコ医師)

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2、統合失調症の、具体的な説明。

(1)5つのタイプ。

・この病気は、タイプによりかなり異なる症状や経過を持ちます。そのため、ひとつの病気と言うよりは「(統合失調)症候群」と言った方が実態に近い

かも知れません。

・主要な5つのタイプについて説明します。

(A)解体型:10~20代の若年者に発病し、

幻覚・妄想状態等を経て次第に

「陰性症状」が強くなり、慢性の

経過を辿る。人格水準や生活

能力の低下を来たしやすく、難治性。

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(B)緊張型:普段は異状が目立たず、比較的急速に

興奮状態や昏迷状態を呈する。

治療により改善しやすいが、

急激な再発もある。

(C)妄想型:10~20代で発症することが多いが、

中年層も少なくはない。5つのタイプ中で

頻度は最多。幻覚や妄想が主症状で、

治療により比較的改善しやすいが、

怠薬等による再発も多い。

人格変化等は少なく、症状と共存

しながら社会復帰できるケースも多い。

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(D)単純型:「陽性症状」が目立たず、当初より

風変わりな様子、孤立、無為、無関心、

等の「陰性症状」が主体。

治療による改善も悪化も殆ど無く、

そのまま慢性経過する場合が多い。

「解体型」の様な人格水準や生活能力

の著しい低下も無く、日常生活は(単純

で常同的ながら)比較的自立して営む

ことができる。頻度は少ない。

(E)残遺型:主に「妄想型」等で発症し治療にて

「陽性症状」は改善したものの、

「慢性症状」が残存、遷延したもの。

長期入院者に多い。

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(2)症状。

①陽性症状(俗称です)

②陰性症状(これも俗称)

③作業能力の障害

①陽性症状

:主に発病後間もない急性期や再発時に

見られるもので、幻覚、思考障害、作為体験、

興奮、等があります。

これら症状に対する、「病気の症状である」という

認識、即ち「病識」が欠如していることが

特徴的な点です。

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症状名 具体的な内容の例

幻覚 幻聴 幻視 幻臭 幻味 体感幻覚 電波体験

思考障害

:思路の障害 連合弛緩 滅裂思考 思考途絶 思考吹入

:思考内容の障害 被害念慮 関係念慮

被害妄想 関係妄想 被注察妄想 被追跡妄想

妄想知覚 妄想着想 思考伝播(さとられ体験)

作為体験

(させられ体験)

「~させられてしまう」

「~と考えさせられてしまう」

被刺激性亢進 僅かな刺激にも過敏に反応していまう。

(「フィルター機能」の低下)

興奮 拒絶 衝動行為 周囲からは理解してもらえない様々な行動。

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・作為体験とは、「させられ体験」とも言い、

自律的な思考や行動ができず、他の人や力によって

何かをさせられてしまう感覚です。

患者は自分自身の意思に相反して、他の何者かに「~をさせられてしまう」「~と考えさせられてしまう」ため、大変な苦痛と不安を感じてしまうのです。

・「妄想」が「念慮」と大きく異なるのは、誤った考えを

確信してしまっていることと、そのために訂正が不能

であることです。よって周囲の人が訂正しようとしても

苦痛を与えるだけになってしまいます。

*特に問題となるのは、実は症状そのものではなく、

これらが「病気の症状」であるという認識をなかなか

持てないこと、すなわち「病識の欠如」です。

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*仮に症状が少々活発であっても、

「病識」が保たれてさえいれば、主治医と相談して

うまく対処すること(認知・行動療法)や

規則的な服薬(薬物治療)により、

治療を継続することが容易になります。

それにより、気分の安定や健康的で落ち着いた

生活も維持できるのです。

北海道にある「べてるの家」では、「幻聴大会」等と称して、症状を隠すのではなく、逆に堂々と皆で

互いに告白し合い、共に支え合っていますが、

これこそが、あらゆる病気にも柔軟に対応できる

素晴らしい人智なのだと思います。

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(B)陰性症状

:発症した時点から見られることもありますが、

通常は急性期の後に長期間見られる症状です。

これらは「陽性症状」程は目立ちませんが、

治療が困難であり、長期に渡り持続する

ことが多いため、陽性症状以上に社会復帰

への大きな支障となりやすいものです。

認知障害(注意、集中、記憶、思考力の低下)

興味・関心の低下や喪失

意欲減退 無為 自閉

社会的引き篭り

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(C)作業能力の障害

:主に「陰性症状」を原因として生じる症状で、

病中はもとより病後も長期に渡り残りやすく、

やはり社会復帰への大きな壁となるものです。

「生活障害」とも言い、文字通り、これらにより

家庭での日常生活すらも困難となってしまいます。

*しかし、これらはあくまで「症状」なのであり、決して患者の怠けやサボり等ではないことを理解し、

サポートしていきたいものです。

記憶力の減退 了解の悪さ 融通性の低下

作業速度の遅さ

心身の極端な疲れやすさ

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(2)原因。

①まず、統合失調症の概念から・・・。

・この病気の存在は、古代エジプト文明の頃から

知られていました。人類の存在と共にある普遍的な病気だとも言えます。

・長期に渡り様々な誤解や偏見の対象となって

いましたが、19世紀にエミール・クレッペリンや

オイゲン・ブロイラーにより、脳の「病気」であることが発見され、以降ようやく「治療」の対象として

見られるようになり、様々な治療法や薬が進歩してきました。

これからも更なる進歩が期待されています。

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・統合失調症は、様々な刺激を伝え合う

神経のネットワークにトラブルが生じる、

脳の機能障害による病気です。

(腫瘍、奇形、等の様な、形態の障害ではありません)

・それにより、

現実を正確に判断する能力や思考力が低下する、感情や意欲のコントロールができなくなる、

適切な対人関係を保つことが困難になる、

外からの刺激に迅速かつ適切に対応できなくなる、等の困難が生じます。

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・様々な刺激を与え合う、神経のネットワーク

コミュニケーション能力

情報処理能力

感情 思考 意欲

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・この中で、「情報処理能力」のうち、

A.入力情報の「フィルター機能」が低下すると・・・

→知覚過敏。関係念慮(妄想)。集中力低下。

B.自己と外界とを隔てる壁、膜、境界(自我境界)が

失われてしまう(自我障害を呈する)と・・・

→a.自分の考えが外部に漏れてしまう、思考伝播。

b.自分が気にしていることや自分を責める気持ち

が、外部から聴こえてくる、思考化声(幻聴)。

c.自分で決めること、行うことを、外部によって

されてしまう、作為体験。

d.自分自身を見つめることを外部から

されてしま う、被注察妄想。

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(EX)知覚過敏、幻聴、及び妄想知覚、の例。

「私は確かに街を見ているのだし、

道路、 ビル、人々の足、それらを

ちゃんと見ているのだ。

人間の口が何か喋っている。

めくばせしている。叫んでいる。理解しあっている。協調している。反発している。すべて見えるのだ。

見えすぎるほど見えるのだ。」

(阿波根 宏夫 「涙・街」 構想社 より)

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・尚、この様な「精神病症状」は、統合失調症の他にも

重度のストレス負荷(遭難時、拘禁反応、PTSD、ICU症候群、など)、

気分障害(重度のうつ病など)、

物質使用障害(アルコール依存、薬物依存など)、

脳の器質性障害(脳炎、認知症など)

等においても、出現しうるものです。

*つまり、強いストレスや脳の怪我・病気(脳炎など)

等の際には、誰にでも経験しうる症状であり、

決して統合失調症だけに見られる

「特別な症状」ではないのです。

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*そもそも、生きている限り、人は必ず病気に

かかるものであり、「うまく付き合っていく」という

考え方が必要なのです。

「完治」する病気等というものは、実は僅かしか

ありません。

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②統合失調症の原因。

・原因はまだ未知なのですが、様々な要因が

絡み合っていると考えられています。

(後述の「ドーパミン仮説」も、

あくまで様々な「仮説」のうちの一つです。)

・決して遺伝や育て方、家庭環境だけが原因で発症するわけではありません。

*精神疾患に限らず、実は原因が明らかとなっている病気はごく僅か。殆どの病気は原因不明なのです。(例)癌、生活習慣病、心疾患、脳血管障害、etc.

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・様々な要因が絡み合っている、と考えられています。

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・これらのうち、脳のトラブル とは?

→ 脳内の神経伝達物質の異常のこと。

・神経伝達物質とは?

→脳神経細胞の間で情報を伝え合うホルモンです。

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・統合失調症の原因としての、「ドーパミン仮説」。

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③遺伝の影響について・・・

・この病気は「遺伝性疾患」ではありませんが、

遺伝の影響はまだ正確には判明していません。

両親がこの病気であった場合、子が同じ病気で

ある確率は約40%、一卵性双生児の場合でも

一方がこの病気の場合にもう一方が同じ病気

である確率は約50%と言われています。

真の「遺伝病」であれば100%になる筈です。

・一方で、精神疾患者が近親者に比較的多い

という現実もあり、やはり一定程度の遺伝性は

あるものと思われます (「ストレス脆弱性」等)。

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④生育環境の影響について・・・

(A)「High EE (家族)」という概念があります。

「High Expressed Emotion (family)」

・文字通り、感情表出が強すぎる家族のことで、

子の精神面に与える影響が

発症や再発の一因として想定されています。

具体的には過度の感情的巻き込まれ、

過干渉、敵意、等で、患者はこれらEEに

極めて敏感です。

正反対の、冷淡、無関心、愛情欠如、等の

態度も同様の結果をもたらしうるものです。

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(B)その他にも、「二重拘束説」、等があります。

「double bind theory」

・例えば、子供に対して「好きな事をしていていい

のよ」等と口では言いながら、子が自分の意に

そぐわない行動をとると不機嫌になる親、

といったものがそれにあたります。

このように言葉と態度で相反する2つの

メッセージが同時に出され、どう判断していいかが

分からない状況をダブルバインド(二重拘束)と

言い、心因説の一つとされています。

患者はこの様な状況に過敏で弱いのです。

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(4)回復への道のり。

①全て病気というものは、回復に時間を要するもの。

・良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ

回復していく、という印象の疾患です。よって、

数ヶ月~数年、という長い目で、ゆっくりと焦らずに見守っていくことが大切です。

②病気とうまく「付き合う」「共存する」という考え方。

*繰り返しになりますが、人は病気と無縁でいることはそもそも不可能なのです。

むしろ病気とうまく付き合い、共存しながら、

与えられた寿命を全うすることこそが、ささやか ですが幸せな人生のコツなのだと思います。

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③発症から回復への、4つの過程。

(A)前駆期:発症前には何らかの兆候が

見られることが多いです。

例 睡眠障害、感情の起伏、焦燥感、

身体的な 不定愁訴、神経症症状、等。

(B)急性期:幻覚、妄想、思考の混乱、興奮

等の激しい症状が見られます。

本人に病識(これらが病気の症状

である、との自覚)が無いのが特徴

です。早期治療を要します。

例 不安、緊迫感、幻覚、妄想、滅裂思考、

興奮、昏迷、奇異な言動、等。

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(C)回復期:急性期の精神状態が治療により

治まった後の、疲れきった心身を

回復させるための「充電期間」。

例 眠気、意欲低下、倦怠感、甘え、抑鬱等。

(D)慢性期:急性期の症状が治まった後も、

病的な症状が持続している時期。

精神機能全般に渡るエネルギーの低下

(「陰性症状」)が特徴です。

一方で、「陽性症状」が消失せず長く続く

こともあります。

例 活動性の低下、無為、周囲への無関心、

自閉、感情鈍麻、等。

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2.統合失調症の治療

(1)治療方法:①薬物治療( + 補完療法)

②精神療法

③精神科リハビリテーション

①薬物治療:

・急性期、慢性期を通じて治療の基本となるもの。 特に症状の激しい急性期には、効果を発揮する。

再発予防のためにも中~長期に渡り必要な治療。

・主な作用は中脳辺縁系におけるドパミン作用の遮断

だが、錐体外路のドパミンも遮断するため、パーキンソン症状等の副作用あり。最近はセロトニンの

遮断も兼ね、同症状を緩和する薬や、

ドパミンを適量に調整する薬、等もある。

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・補完療法(代替療法)として、ホメオパシー、薬草、

アロマセラピー、マクロバイオティクス、等がある。

例えば、ドイツではSJWが欝病の治療法として承認されており、「モーズレイ・ガイドライン」では2~3g

のEPAが統合失調症の有用な治療選択肢になる

と記載されている。

*多くの代替療法における最大の問題点は、効果を

示す臨床試験が殆ど無いこと。

副作用が無い(少ない)、というのも誤解である。

*嗜好品にも要注意! 例えばカフェインも、適量

ならリラックスを得られるが、一日当たり600mgを

超えると不眠や不安、興奮、時に精神病症状や

意識障害も!(患者は摂取量が多くなりがち)

②精神療法:

・治療者との面接を通して、精神状態の安定や、

自分の症状への理解(病識)の向上を図る。

coping skill , resilience の向上も目標とする。

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②精神療法:

・治療者との面接を通して、精神状態の安定や、

自分の症状への理解(病識)の向上を図る。

coping skill (問題対処能力)や

resilience (打たれ強さ、柔軟性)の向上も目標。

・主な技法は、

(A)支持的精神療法(「何でも聴くばい」療法)

(B)認知・行動療法(「見方ば変えてみんね」療法)

例 「喜びのゲーム」 または 「良かった探し」

by ポリアンナさん

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(A)支持的精神療法:

・最も基本となる治療。 患者の訴えを(原則的には)

一切否定することなく、そのままに受容、傾聴し、

安心感や信頼感の醸成と気分の安定を図る。

あれこれと助言をするのではなく、患者自身が自ら

「考えられる」「気付ける」よう導くことがポイント。

(B)認知・行動療法(CBT):

・「気分」を直接変えようとするのではなく、まず

「考え方(認知)」や「行動」を変えることにより、

その結果としての「気分」の変化(改善)を目指す。

患者自身の治療意欲や練習が大切。

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③精神科リハビリテーション:

・急性期を経た後に開始します。

作業療法(OT)や生活技能訓練(SST)により、

それぞれの方に合わせて社会復帰を目指します。

「作業能力の障害」を克服するため、そして

生活の張り合いや生きがいを見出すため、更には

未来の新しい人生にも継る、大変重要な治療です。

・作業療法や作業所への通所、デイケア、等が代表的なものですが、リハビリを兼ねた就労も可能です

(障害者雇用、等)。

ぜひ、主治医や精神保健福祉士(PSW)に相談してみてください。

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(2)知っておきたい薬の特徴と副作用

・統合失調症の治療に使われる薬剤(向精神薬)

としては、主に以下の様なものがあります。

①抗精神病薬(メジャー・トランキライザー):

・脳の神経細胞にある、神経伝達物質(ドパミン、 セロトニン等)の受容体に作用し、同物質の調整(減量)をします。

それにより、活発になりすぎた脳の働きを鎮め、

病的体験症状や不安、興奮、等を緩和します。

・ドパミンを抑えるため、独特な副作用があります。

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・主な副作用として、眠気、倦怠感、口渇、便秘、

パーキンソン症候群(前傾姿勢、小股歩行、流涎、手指振戦)、高血糖(糖尿病)、アレルギー反応、

肥満、乳汁分泌、無月経、等があります。

*特に危険な副作用に、悪性症候群という病態が

あり、40度以上の高熱、筋強剛(強い強張り)、

意識障害、等が特徴です。

*腸閉塞(イレウス)も大変危険な副作用です。

腹部緊満、便臭のする激しい嘔吐等が特徴です。

*最近の薬は副作用が少なくなっていますが、糖尿病や高血糖の方には使用できない薬もありますので、必ず主治医に伝えて下さい。

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②抗不安薬(マイナー・トランキライザー):

・主に「ベンゾジアゼピン系」という薬が使われ、

これは脳内で神経の抑制作用を有するGABAと

いう神経伝達物質の受容体の一部に結合し、

その働きを強めることにより効果を発揮すると

考えられています。

・それにより、不安、緊張、パニック発作、不眠、等の症状を改善します。

・主な副作用として、眠気、ふらつき(筋弛緩)、健忘、薬物依存、離脱症状、等があります。

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*特に注意を要するのは、以下の点です。

(A)高齢者における、認知機能低下(健忘等)、

意識障害(薬剤性譫妄:幻覚、妄想、興奮等)、

ふらつき、転倒、等。

不眠等に対し内科でもよく処方されますが、

これらの副作用がしばしば見られます!

(B)長期連用による薬物依存。

:耐性形成や、中止時の離脱症状(禁断症状)。

(C)大量服薬による幻覚や錯乱、意識障害、

稀に呼吸抑制および停止(死亡)も。

*そもそも、全ての向精神薬は「麻薬及び向精神薬

取締法」という法令の規制対象です。

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③睡眠導入剤:

・これも主に「ベンゾジアゼピン系」薬剤が使用されていますので、前述の副作用に注意が必要です

(特にA~C)。

・「ベンゾジアゼピン系」以外の薬剤も、

種類は少ないもののありますので、特に高齢者や若年者の方は主治医と相談してみて下さい。

・抗鬱薬の中には、その鎮静作用により

睡眠導入剤代わりとなり得るものもありますが、

統合失調症には保険適応がありません

(保険診療では使えません)。

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④抗パーキンソン薬:

・前述の、薬剤性パーキンソン症候群の治療薬です。予防目的でも使われます。

*主な副作用に、抗コリン症状(記憶障害や見当識

障害などの認知機能障害、尿閉等の排尿障害、

口渇、便秘、目のかすみ、眼圧亢進、等)があり、

特に高齢者には危険です。

*緑内障の方は、眼圧亢進による病状悪化の危険性が高いため、使用できません。

*理想的な治療は、この薬を必要としない、

必要最小限の薬物による治療です。

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(3)ご家族の方々に理解して頂きたいこと。

①急性期:先ずは少しでも早い治療開始が必要です。

・風邪の様に自然に治ることはまずありません。

治療が遅れることにより更に症状が悪化し、

社会復帰も困難となりかねません。

・どうか勇気を出して、医師に相談して下さい。

・幻覚や妄想等に対しても、決して即座に否定などはせず(容易な肯定もせず)、先ずは

「患者にとっては実際に体験されていることなのだ」(そもそも、妄想は訂正不能)との認識を忘れずに、

そのままに受け入れて(聴いて)頂きたい

と思います。

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②急性期後:緊急性こそ無いものの、

むしろ急性期以上に家族の理解と温かく根気強いサポートが必要となります。

*急性期を過ぎた患者は引き篭りや自宅臥床の生活となりがちですが、これらは怠けからくるものでは

ありません。

家族の方々には、根気強く「待つ」「見守る」という姿勢を持ち続けて頂きたいと思います。

*「寝てばかりいる」のは、回復へのプロセスです。

エネルギーをためているのです。

*無理な励ましは却って本人に過剰なストレスとなる 可能性がありますので、注意をお願いします。

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*患者の努力や頑張りだけで、「病気」を克服することはできません。

*時に甘えが強く出ることがあります。しかしそれは、辛く孤独な闘病生活を送る患者に、家族が手を

差し伸べることができる「チャンス」でもあるのです。うまく受け入れてあげて下さい。

ひと時の「甘え」を受け入れられることにより、患者は家族への信頼感や安心感を再確認し、再び闘病

生活に向かうエネルギーを得ることが

できるのです。

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・(参考)家族に対する患者の希望

「もっと気持ちをわかってほしい」 40.6%

「もっと冒険させてほしい」 13.1%

「あまり口やかましく指示しないでほしい」 31.7%

「そっとしておいてほしい」 20.4%

「もっと真剣に私のことを考えてほしい」 19.8%

「甘やかしすぎないでほしい」 17.6%

「もっとお金、その他の面で支援をしてほしい」 20.0%

「世間体を気にしないでほしい」 22.7%

「私を傷付けるような言動をしないでほしい」 30.1%

「もっと私を信頼してほしい」 23.0%

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「もっと人間として、大人として認めてほしい」 23.9%

「厳しくしすぎないでほしい」 16.7%

「どこまでも私の味方ということを示してほしい」 19.2%

「もっと甘えさせてほしい」 4.1%

「家族会などの活動をもっと熱心にしてほしい」 14.7%

「家族会などの活動は止めてほしい」 2.2%

「医師や専門家のことをもっと信用してほしい」 16.5%

「医師や専門家の言うことを鵜呑みにしないでほしい」

10.3%

(「家族のための統合失調症入門」 白石和巳 著

河出書房新社」 より)

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*これらの声からは、残念なことに世界の中で

一番理解してもらいたい筈の、その家族による

理解や支援が、(家族の意図に拘らず)

いかに不十分であるかが窺われます。

*特に、過剰な干渉、及び(それとは全く逆の)無関心とが、最も患者を苦しめる家族の対応であろうと

思われます。

*この様な悲劇を防ぐためにも、ご家族の方々には、普段よりこまめに主治医やケースワーカー等との連絡や相談の機会を持っておくよう、

お願いしたいと思います(報・連・相)。

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(4)社会資源の利用。 (参考)利用しうる福祉制度

名称 申請窓口 対象 主なサービス(*)

精神障害者保健福祉手帳 市区町村 病名・年齢の区別なく 公共施設利用料減免

精神科の病気があり 所得税・住民税等の控除

生活に一定の障害がある人 相続税の控除など

障害者自立支援法による 市区町村 精神疾患により 原則として通院医療費の

自立支援医療制度 外来通院する人 自己負担が10%

特別児童扶養手当 市区町村 20歳未満の精神障害を持つ 重度・中度別に支給される

児童の父母または養育者 (所得制限あり)

障害児福祉手当 市区町村 特別児童扶養手当受給者の内 手当の支給(所得制限あり)

常時介護を必要とする児童

特別障害者手当 市区町村 20歳以上の障害者の内 手当の支給(所得制限あり)

特別な介護を必要とする人

生活保護 市区町村 生活に困窮する人 生活扶助・医療扶助など

心身障害者 市区町村 将来自立生活が困難な心身 掛金を納めていた加入者が死亡した

扶養共済制度 障害者を扶養する65歳未満の 時、又は重度障害者となった時、

者が、保護者・加入者となる 障害者本人に支払われる

障害年金 市区町村 年金に加入し、一定の要件を 障害の程度により

社会保険事務所 満たした障害者 年金が受けられる

共済組合

(ヤンセンファーマHP参照・2010年3月現在 (*)都道府県によってサービス内容が異なる場合があります。

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4、最後に・・・「かめちゃん」の言葉。

(以下、夏苅郁子医師の論文「家族として、当事者として、そして精神科医として」 より抜粋)

・「かめちゃん」は大学在学中に発病し、ホームレス体験や離婚を経て、現在は生活保護を受け一人暮らしを

している50代の男性である。約2年前から彼と文通を続けている筆者は、彼から多くのことを学んだ。

「僕が願うのは、病を得たことのマイナスの力を失うまいということです。マイナスをプラスに変えようと必死になる必要は無いと思います。マイナスも抱えている

ことが、例え自分が今幸せであっても、他人の不幸せに共感し続けることができる元になると思います。」

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症状だけでなく、現実生活の困難・孤独と向き合いながらも、なおも他者の救済を考え続けることができる、

病を超えた「人間の存在の意味」を、

筆者は「かめちゃん」から教えられた。

「病を得ること」は不条理なことであるが、

当事者一人一人、家族一人一人の人生は

それぞれが懸命に生きてきた結果である。 (以上、抜粋終わり)

「病を得ることの意味」について、考えさせられたことばでした。

人は、この世に生を受けた以上、「生・老・病・死」から

逃れることはできません。

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だからこそ、これらをただ不幸だと嘆くのではなく、

病を超えた人間の存在の意味、そして尊さをも

見出すことにつながるのであれば、何よりも素晴らしい

ことだと思います。

苦しんだ人にしか、他者の苦しみは分かりません。

病を得た、或いは病者を支えたその経験は、将来必ず

他の苦しんでいる人を助ける力になると思います。

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5、参考文献など。

・家族のための ・統合失調症がやってきた

統合失調症入門 (ハウス加賀谷・松本キック、

(白石弘巳、河出書房新社) イーストプレス)

・精神病院を捨てたイタリア ・わが家の母はビョーキです

捨てない日本 (中村ユキ、サンマーク出版)

(大熊一夫、 岩波書店)

・こころのくすり最新事情

・精神神経学雑誌 (田島 治、 星和書店)

2015 VOL.117 NO.3

「家族として、当事者として、 ・ブラックジャックによろしく

そして精神科医として」 第9~13巻 (漫画) (夏苅 郁子) (佐藤 秀峰、 講談社)

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ご清聴、ありがとうございました。

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