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生産性・イノベーション関係指標の国際比較 平成29年11月9日 財務総合政策研究所 酒巻哲朗 1
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生産性・イノベーション関係指標の国際比較
平成29年11月9日
財務総合政策研究所 酒巻哲朗
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報告内容
１．生産性上昇率（労働生産性、全要素生産性）
２．イノベーションの実現状況に関する指標
３．イノベーションを生み出す背景に関する指標（投資、情報の交流、制度・支援策等）
４．まとめ
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１．生産性指標
生産性指標の定義
＜労働生産性＞
労働生産性（国レベル）＝実質ＧＤＰ／総労働時間
＜全要素生産性の増減率＞
実質ＧＤＰ成長率のうち、労働投入、資本投入の伸びで説明できない残差として把握。
𝑙𝑛𝑀𝐹𝑃𝑡
𝑀𝐹𝑃𝑡−1= 𝑙𝑛
𝑄𝑡
𝑄𝑡−1− 𝑙𝑛
𝑋𝑡
𝑋𝑡−1
𝑙𝑛𝑋𝑡𝑋𝑡−1
=1
2𝑠𝐿𝑡 + 𝑠𝐿
𝑡−1 𝑙𝑛𝐿𝑡
𝐿𝑡−1+1
2𝑠𝐾𝑡 + 𝑠𝐾
𝑡−1 𝑙𝑛𝐾𝑡
𝐾𝑡−1
MFP:全要素生産性 Q：GDP L：労働投入の指数 K：資本投入の指数 ｓL ｓK はコストシェア
（備考）MFPの計算式はOECD Compendium of Productivity Indicatorsによる。
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１．生産性指標
生産性とイノベーション
○労働生産性は経済的な豊かさの源泉。資本投入の増加、労働者の技能や時間当たりの労働密度の向上、全要素生産性の上昇によって上昇する。
○全要素生産性はイノベーション、労働者の技能や時間当たりの労働密度の向上、生産性の高い分野への労働・資本のシフトなどによって上昇しうる。
イノベーションの４形態プロダクト・イノベーション ： 新しい製品の開発プロセス・イノベーション ： 新しい生産技術の開発マーケット・イノベーション ： 新しいマーケティング手法の開発組織イノベーション ： 新しい組織運営方法の導入
○ＡＩなど新技術が次々と登場する時代背景や、人口減少が進む日本経済の現状に鑑みると、今後はイノベーションの活性化（特にプロダクト・イノベーション）による新しい製品・市場の創造により生産性向上を図ることが重要。
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日本の労働生産性（労働時間当たり実質GDP）上昇率は、1990年代にはＯＥＣＤ平均をやや上回っていたが、2000年代以降の平均ではＯＥＣＤ平均をやや下回っている。
（備考）OECD Productivity Statistics Databaseにより作成。OECD26は対象とした年にデータが存在する26か国の値。
労働生産性（労働時間当たり実質GDP）の年平均伸び率
１．生産性指標
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1990-2000年平均（％）6.0%
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2000-2015年平均（％）
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日本の労働生産性（労働時間当たり実質GDP）上昇率の内訳をみると、他の先進国と異なり、総労働時間の減少が生産性を押し上げる形となっている。
（備考）OECD Productivity Statistics Databaseにより作成。OECD26は対象とした年にデータが存在する26か国の値。
労働生産性（労働時間当たり実質GDP）年平均伸び率の内訳
１．生産性指標
-3.0-2.0-1.00.01.02.03.04.05.06.0
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1990－2000年平均
実質GDP 総労働時間（逆符号） 生産性
（％）
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2000－2015年平均
実質GDP 総労働時間（逆符号） 生産性
（％）
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日本の1990年代以降の実質ＧＤＰ成長率は他の先進国と比較して低い。成長率への寄与を労働投入、資本投入、全要素生産性に分解すると、労働投入は減少しており、資本投入や全要素生産性の伸びはそれを補うほどには高くない。
（備考）OECD Productivity Statistics Databaseにより作成。
実質GDP成長率の寄与度分解
１．生産性指標
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1991 - 2000年
Total hours worked ICT capital
Non-ICT capital Multifactor productivity
GDP
（％）
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2001-2015年
Total hours worked ICT capital
Non-ICT capital Multifactor productivity
GDP
（％）
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イノベーションを実現した企業の比率は他の先進国と比較して低い。
（備考）OECD Innovation Indicators 2015等により作成。
イノベーションを実現した企業の比率（2010～2013年）
２．イノベーションの状況
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全てのイノベーション（％）
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プロダクト・イノベーション（％）
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プロセス・イノベーション（％）
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日本は論文数に比べて引用の多い論文数の比率は高くない。
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論文の総数・うち引用数の多い論文数（2003－2012年の合計）
引用数上位10％に入る論文数
その他の論文数
引用数上位10％に入る論文の比率（右目盛）
（％）（千件）
4,958 2,434
２．イノベーションの状況
（備考）OECD Science, Technology and Industry Scoreboard 2015により作成。引用数の順位は研究分野ごとに計算。
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２．イノベーションの状況
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2005 2015 2015（per GDP (billion USD、PPP換算、右目盛）
（大学数） （GDP10億USD当たりの大学数）
ARWUのトップ500位以内の大学数とGDP比
日本のARWU（Academic Ranking of World Universities ）のトップ500位以内の日本の大学数は、先進国の中では比較的多かったが、近年は減少している。
（備考）OECD Science Technology and Innovation Outlookにより作成。 ARWUは、 ShanghaiRanking Consultancyが、学術誌に掲載された論文数や論文引用数の多い研究者数などの客観指標に基づき、大学を順位付けしたもの。GDPはPPPベース。
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３．イノベーションを生み出す背景
○イノベーションへの投資（Ｒ＆Ｄ支出、研究者数など）
○イノベーションに関する情報の交流（研究に関する国際交流、企業間の研究協力など）
○イノベーションを支援する政策・社会環境（規制・制度、税・補助金など）
イノベーションの実現
イノベーションを生み出す背景
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日本のＲ＆Ｄ支出のＧＤＰ比は他の先進国と比較して高い水準。
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2000年
R&D（総額） R&D（企業部門）
（％）
３．イノベーションを生み出す背景
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2015年
R&D R&D（企業部門）
（％）
（備考）OECD Science and Technology Databaseにより作成。左グラフでDenmark、Norway、Swedenは2001年の数値。
Ｒ＆Ｄ支出のＧＤＰ比
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日本の研究者の就業者に占める比率は先進国の中で比較的高い。
（備考）OECD Science, Technology and Industry Outlook 2016 により作成。USA、Canada、OECDは2013年の値。
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就業者1000人当たりの研究者数
2001 2014
３．イノベーションを生み出す背景
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日本の研究論文に占める国際的な共同研究の比率は他の先進国と比較して低い。
（備考）OECD Science, Technology and Industry Scoreboard 2015により作成。
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研究論文に占める国際的な共同研究の比率
2003 2012
（％）
３．イノベーションを生み出す背景
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日本企業の国際的な研究協力はあまり活発でない。
（備考）OECD Innovation Indicators 2015により作成。
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イノベーションを実現した企業のうち、研究協力
を行っている企業の割合（2010～2013年）
外部との協力を行っている企業の割合
うち国際的な協力を行っている企業の割合
（％）
３．イノベーションを生み出す背景
（備考）１．財務省2017「企業の投資戦略に関する研究会－イノベーションに向けて－」報告書第7章より引用。
２．戸堂・柏木（2017）「グローバルな企業ネットワークから見た日本企業の現状」より転載。データはビューロ・バン・ダイク社のOrbis による。
特許共同所有相手の外国企業のシェア（％）
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日本の製品市場規制指標は先進国の中で平均的な水準。
（備考）OECD Indicators of Product Market Regulation により作成。
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ＯＥＣＤの製品市場規制指標
2013 1998
３．イノベーションを生み出す背景
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製品市場規制指標の内訳（2013年）
State control
Barriers to entrepreneurship
Barriers to trade and investment
Product market regulation
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日本の企業Ｒ＆Ｄに対する政府の支援は、先進国の中で平均的な水準。
（備考）OECD Main Science and Technology Indicatorsにより作成。
補助金・税による企業Ｒ＆Ｄへの支援（ＧＤＰ比、％）
３．イノベーションを生み出す背景
0.000.050.100.150.200.250.300.350.400.450.50
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補助金（2014年） 税（2014年） 2006年（合計値）
（％）
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まとめ（１）
（生産性指標）
• 日本の労働生産性の伸びはOECD平均をやや下回る程度。労働投入の減少が生産を押し上げている点で他の先進国と異なる動き。
• 1990年以降の日本の実質GDP成長率はOECD諸国の中でも低位にある。労働投入が減少する一方で、資本投入や全要素生産性の伸びはそれを補うほどには高くない。
（イノベーションの実現状況）
• イノベーションを実現した企業の比率は低い。論文数に比較して引用数の高い論文の比率は必ずしも高くない。論文引用数等による大学のランキングも近年低下している。
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まとめ（２）
（イノベーションを生み出す背景事情）
• Ｒ＆Ｄ支出の水準（ＧＤＰ比）は先進国の中で上位にあり、研究者数の割合も比較的高い。
• 研究に関する国際協力は他の先進国と比較して活発でない。
• 製品市場における規制や補助金・税などの公的支援は先進国の中で平均的な水準。
• 高水準のR&D投資などが実際のイノベーションの実現や経済成長などの成果に必ずしも結びついていないことが課題。
