3. 糸状菌の未利用遺伝子発現による天然物創出 大 …...3. 糸状菌の未利用遺伝子発現による天然物創出 大島 吉輝 Key words:糸状菌,二次代謝物,未利用遺伝子,
糸状菌におけるゲノム情報を活用 した有用物質生産...
Transcript of 糸状菌におけるゲノム情報を活用 した有用物質生産...
背景:ゲノム解析の進展
• Aspergillus属でゲノム解析が終了し、 7種についてデータが公開されている • 現在、比較ゲノム解析が活発に行われている
h-p://www.broadins7tute.org/annota7on/genome/aspergillus_group/Mul7Home.html 麹菌(Aspergillus oryzae) 2
ゲノム情報を活用した生産性向上
生産に関与する遺伝子の特定 生産条件 vs 非生産条件の遺伝子発現の比較
DNAマイクロアレイ解析を利用
特定された遺伝子の高発現株の作製
遺伝子組換え技術の利用
有用産物の生産量の向上
4
従来技術の問題点
生産条件 vs 非生産条件の遺伝子発現の比較
(DNAマイクロアレイ解析)
培養条件が違いすぎるとデータ比較が難しい
特定された遺伝子の高発現株の作製
必ずしも遺伝子が高発現しない
生産条件
非生産条件 非生産条件
生産条件
理想 現実
遺伝子発現量が 変動している遺伝子が多く、どの遺伝子が生産に関与
するのか特定が難しい
5
新技術の特徴:データの共通化
各々の生産条件でDNAマイクロアレイ解析では費用がかかる 培養時間・pH条件など基本的な条件を変えた アレイ解析データを蓄積する
今までの知見(アレイデータ)に基づいて 生産に関与する遺伝子のリストアップ
リアルタイムPCR解析で該当する遺伝子の 生産・非生産条件下での発現量の比較を行う
6
新技術の特徴:遺伝子破壊株による解析
• 遺伝子破壊株作製では高発現のための プロモーター選択が不必要
• 遺伝子(ORF)予測が間違っていても問題ない
遺伝子破壊断片の作製
形質転換(∆ligD)
遺伝子破壊の確認
マーカー遺伝子
Fusion PCR
形質転換
1.2 kbp
~2 kbp LeK Right
ligD:非相同組換えに関与する遺伝子でこの遺伝子を破壊することで相同組み換え効率を上昇させる。
7
コウジ酸(kojic acid: 5-hydroxy-2-hydroxymethyl-γ-pyrone) MW=142.11
O
C
O
OH
CH2
OH
• 麹から発見されたのでこの名が付いた
• 限られた生物(Aspergillus, Penicillium等)のみが生産する二次代謝産物(抗生物質)である
• 起源は杜氏の手が綺麗だった何か効能が
• 現在では、抗菌作用、メラニン色素形成の抑制作用 (化粧品の美白成分として添加されている)のほか、食品の劣化を招く酵素の阻害作用、酸化を促進する重金属イオンの封鎖作用が知られている
コウジ酸とは
9
コウジ酸の働きは
コウジ酸は、味噌・醤油の製造に使われる麹菌を培養して得られる天然成分です。味噌を製造する工場の女性の手が白くきれいで、シミひとつないことなどから、1988年に厚生労働省により美白成分として認可されました。
シミの原因酵素 (紫外線・ストレスなどで生成)
人間の体細胞のアミノ酸
系物質
シミの原因酵素 (紫外線・ストレスなどで生成)
コウジ酸がチシロナーゼ の働きを阻害する
シミ!
10
麹菌のDNAマイクロアレイとは
Gene number: 12,000 Probes: 60 mer oligonucleotide Design algorithm: most Tms <= ±1℃ *non-specific hybridization excluded taking genome sequence into consideration.
Array row 1 Array column 8 Row 7 Column 17
麹菌全遺伝子(約12,000個) がのっている
Addressing
11
26,760,000bp 26,770,000bp 26,780,000bp 26,790,000bp 26,800,000bp 0.51 0.51
0.47 0.47 0.49 0.49
GC content
FAD dependent oxidoreductase
Transporter Transcrip7onal factor
transporter
mitochondrial tricarboxylate/dicarboxylate carrier proteins
B12-‐dependent dehydratases, beta subunit
predicted protein
136
137 138 139
140
141 142
non-‐syntenic block (132-‐145)
13
コウジ酸生産の確認
138 transporter
136 oxidoreductase
RIB40 Host (niaD-‐, ΔligD)
コウジ酸合成遺伝子が特定 コウジ酸生産の向上が可能となる
14
遺伝子組み換え体のコウジ酸生産量
0
40
80
120
160 コ
ウジ
酸生
産量
(mM
) 136遺伝子高発現株
元株
136遺伝子破壊株
培養日数
1 2 3 4 5 136遺伝子のみを高生産させるとコウジ酸生産量が約4倍上昇した
15
硝酸ナトリウム取り込みについて
0"
20"
40"
60"
80"
100"
120"
140"
160"
180"
NH4" NaNO3"
Rela0ve"gene
"expressions�
AOnrtA�nrtA: MFS transporter, NNP family, nitrate/nitrite transporter 硝酸ナトリウム取り込みに関わる トランスポータである。
(DBの検索結果では) A. nidulansにはnrtA,Bが存在するが A. oryzaeにはnrtAのみ存在 前培養: YPD培地 30℃, 24時間
本培養: CD培地 30℃, 6時間 N源 (NH4)2SO4 or NaNO3
1 155
nrtA遺伝子はNaNO3により誘導される
nrtA遺伝子破壊株を作製しコウジ酸生産への影響を確認 16
∆nrtA株のコウジ酸生産状況
pyrG+ ∆nrtA-‐5 ∆nrtA-‐6
コウジ酸非生産培地で 30℃,5日間培養
コウジ酸非生産培地
30℃,5日間培養
0"
0.2"
0.4"
0.6"
0.8"
1"
1.2"
1.4"
PyrG+" ΔnrtA"
nrtA遺伝子を破壊するとコウジ酸生産培地に硝酸ナトリウムに添加(コウジ酸非生産培地)してもコウジ酸を生産する。
一般的な培地でもコウジ酸生産が可能となる
17
実用化に向けた課題
• 成功例が少ない ⇒ 解析数を増やしていく • この実験スキームでは生産性の向上に 直ぐには結びつかない ⇒ 遺伝子が特定できれば生産性の向上 • 食品等では遺伝子組換え体の利用が・・・・ ⇒ 食品以外の分野で利用を
18
お問い合わせ先
金沢工業大学
産学連携機構事務局 研究支援部
東京分室 : 新川 実、 杉田 享子
TEL : 03-5777-2243
FAX : 03-5777-2226
e-mail : [email protected]