糸状菌におけるゲノム情報を活用 した有用物質生産...

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糸状菌におけるゲノム情報を活用 した有用物質生産遺伝子の 特定と改良について 金沢工業大学 バイオ・化学部 応用バイオ学科 准教授 佐野元昭 1

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糸状菌におけるゲノム情報を活用した有用物質生産遺伝子の

特定と改良について  

金沢工業大学   バイオ・化学部 応用バイオ学科  

准教授 佐野元昭

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背景:ゲノム解析の進展

•  Aspergillus属でゲノム解析が終了し、        7種についてデータが公開されている  •  現在、比較ゲノム解析が活発に行われている  

h-p://www.broadins7tute.org/annota7on/genome/aspergillus_group/Mul7Home.html 麹菌(Aspergillus oryzae) 2

背景:ポストゲノム解析の進展

•  ゲノム情報を利用した解析手法のうち  我々は  DNAマイクロアレイ解析        プロテオーム解析 を主に進めてきた  

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ゲノム情報を活用した生産性向上

生産に関与する遺伝子の特定    生産条件 vs 非生産条件の遺伝子発現の比較

DNAマイクロアレイ解析を利用

特定された遺伝子の高発現株の作製

遺伝子組換え技術の利用

有用産物の生産量の向上

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従来技術の問題点

生産条件 vs 非生産条件の遺伝子発現の比較

(DNAマイクロアレイ解析)

 培養条件が違いすぎるとデータ比較が難しい

特定された遺伝子の高発現株の作製

   必ずしも遺伝子が高発現しない

 生産条件

非生産条件 非生産条件

生産条件

理想 現実

遺伝子発現量が  変動している遺伝子が多く、どの遺伝子が生産に関与

するのか特定が難しい

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新技術の特徴:データの共通化

各々の生産条件でDNAマイクロアレイ解析では費用がかかる      培養時間・pH条件など基本的な条件を変えた              アレイ解析データを蓄積する  

     今までの知見(アレイデータ)に基づいて            生産に関与する遺伝子のリストアップ                    

   リアルタイムPCR解析で該当する遺伝子の        生産・非生産条件下での発現量の比較を行う  

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新技術の特徴:遺伝子破壊株による解析

•  遺伝子破壊株作製では高発現のための            プロモーター選択が不必要

•  遺伝子(ORF)予測が間違っていても問題ない  

遺伝子破壊断片の作製

形質転換(∆ligD)

遺伝子破壊の確認

マーカー遺伝子  

Fusion  PCR  

形質転換  

1.2  kbp  

~2  kbp  LeK   Right  

ligD:非相同組換えに関与する遺伝子でこの遺伝子を破壊することで相同組み換え効率を上昇させる。

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実際の研究成果   コウジ酸生合成遺伝子の特定

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コウジ酸(kojic acid: 5-hydroxy-2-hydroxymethyl-γ-pyrone) MW=142.11

O

C

O

OH

CH2

OH

•  麹から発見されたのでこの名が付いた

•  限られた生物(Aspergillus, Penicillium等)のみが生産する二次代謝産物(抗生物質)である

•  起源は杜氏の手が綺麗だった何か効能が

•  現在では、抗菌作用、メラニン色素形成の抑制作用  (化粧品の美白成分として添加されている)のほか、食品の劣化を招く酵素の阻害作用、酸化を促進する重金属イオンの封鎖作用が知られている

コウジ酸とは

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コウジ酸の働きは

 コウジ酸は、味噌・醤油の製造に使われる麹菌を培養して得られる天然成分です。味噌を製造する工場の女性の手が白くきれいで、シミひとつないことなどから、1988年に厚生労働省により美白成分として認可されました。

シミの原因酵素 (紫外線・ストレスなどで生成)

人間の体細胞のアミノ酸

系物質

シミの原因酵素 (紫外線・ストレスなどで生成)

コウジ酸がチシロナーゼ の働きを阻害する

シミ!

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麹菌のDNAマイクロアレイとは

Gene number: 12,000 Probes: 60 mer oligonucleotide Design algorithm: most Tms <= ±1℃ *non-specific hybridization excluded taking genome sequence into consideration.

Array row 1 Array column 8 Row 7 Column 17

麹菌全遺伝子(約12,000個) がのっている

Addressing

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コウジ酸非生産条件  生産条件+NaNO3  

コウジ酸生産条件  コウジ酸生合成遺伝子  

が含まれていた

コウジ酸生産条件 vs 非生産条件

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26,760,000bp   26,770,000bp   26,780,000bp   26,790,000bp   26,800,000bp  0.51   0.51  

0.47   0.47  0.49   0.49  

GC  content  

FAD  dependent  oxidoreductase  

Transporter    Transcrip7onal  factor  

transporter  

mitochondrial  tricarboxylate/dicarboxylate  carrier  proteins    

B12-­‐dependent  dehydratases,  beta  subunit    

predicted  protein    

136  

137   138   139  

140  

141  142  

non-­‐syntenic  block  (132-­‐145)  

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コウジ酸生産の確認

138  transporter  

136  oxidoreductase  

RIB40   Host (niaD-­‐,  ΔligD)

コウジ酸合成遺伝子が特定 コウジ酸生産の向上が可能となる

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遺伝子組み換え体のコウジ酸生産量

0

40

80

120

160 コ

ウジ

酸生

産量

(mM

) 136遺伝子高発現株

元株

136遺伝子破壊株

培養日数

1 2 3 4 5 136遺伝子のみを高生産させるとコウジ酸生産量が約4倍上昇した

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硝酸ナトリウム取り込みについて

0"

20"

40"

60"

80"

100"

120"

140"

160"

180"

NH4" NaNO3"

Rela0ve"gene

"expressions�

AOnrtA�nrtA: MFS transporter, NNP family, nitrate/nitrite transporter 硝酸ナトリウム取り込みに関わる トランスポータである。

(DBの検索結果では) A. nidulansにはnrtA,Bが存在するが A.  oryzaeにはnrtAのみ存在 前培養: YPD培地  30℃,  24時間  

本培養: CD培地  30℃,  6時間   N源  (NH4)2SO4  or  NaNO3   

1 155

nrtA遺伝子はNaNO3により誘導される

nrtA遺伝子破壊株を作製しコウジ酸生産への影響を確認 16

∆nrtA株のコウジ酸生産状況

pyrG+ ∆nrtA-­‐5 ∆nrtA-­‐6

コウジ酸非生産培地で  30℃,5日間培養

コウジ酸非生産培地

30℃,5日間培養

0"

0.2"

0.4"

0.6"

0.8"

1"

1.2"

1.4"

PyrG+" ΔnrtA"

 nrtA遺伝子を破壊するとコウジ酸生産培地に硝酸ナトリウムに添加(コウジ酸非生産培地)してもコウジ酸を生産する。

一般的な培地でもコウジ酸生産が可能となる

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実用化に向けた課題  

•  成功例が少ない     ⇒ 解析数を増やしていく  •  この実験スキームでは生産性の向上に            直ぐには結びつかない     ⇒ 遺伝子が特定できれば生産性の向上  •  食品等では遺伝子組換え体の利用が・・・・     ⇒ 食品以外の分野で利用を 

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企業への期待

秘密保持契約を結ぶので        情報提供をお願いしたい  

 生産している会社での常識が

我々には大いに価値のある情報となります

 

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お問い合わせ先

   金沢工業大学

 産学連携機構事務局  研究支援部

 東京分室  :  新川  実、  杉田  享子

 TEL  :  03-5777-2243

 FAX  :  03-5777-2226

 e-mail  :  [email protected]