CCD単結晶X線回折装置 VariMax with...

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8 The OCU Advance Research Institute for Natural Science and Technology OCARINA Communication 2 電子密度分布から直接分子の全体構造を決定する単結晶 X線構造解析は、有機化合物や有機金属錯体を扱う化学分 野から、薬剤候補化合物や結晶多形、共結晶を扱う薬学分 野まで幅広く利用されています。分子のほんのわずかな構 造の違いが物性や生理活性に決定的な影響を与えることも 多いため、信頼性の高い構造決定が可能なこの解析法は非 常に強力な分析手段です。今回導入される単結晶構造解析 装置は世界最高峰の高輝度X線と高感度の CCD カメラを組 み合わせ、さらにビーム径やカメラ長の変更を可能にし、 微小結晶や長い格子をもつ結晶に対応可能となったX線解 析装置です。 微小焦点高輝度X線発生装置(RA-Micro7HFM) 結晶回転対陰極方式で最大定格出力 1.2kW で、小分子で 多くの回折点を精度よく測定するのに用いられる Mo ター ゲットを採用。 Mo ターゲット用分解能可変X線集光ミラー (Conforcal Mirro “VariMax Mo”) 湾曲型人工多層膜ミラーを 2 枚用いた集光工学系で、2 枚の多層膜ミラーは直行配置し、立体的にX線の集光が行 える。世界最長のミラーは高輝度で単色性の高いX線を得 ることができる。 CCD 検出器(Saturn724) 格子定数の大きいサンプルでも高分解能のデータ収集が 可能となる大検出面積(72 × 72mm)でカメラ長を変更 することが可能、かつ幅広いダイナミックレンジ(22 bit/ pixel)をもち、さまざまなサンプルの測定に対応する。また、 高感度(180electron/pixel/photon)でかつスーパーローノ イズ(0.2electron/pixel/sec)を達成することにより、微小 結晶の弱い回折点を精度よく検出できる。 さらに試料観察および結晶外形吸収補正用の高倍率CC Dカメラに 1/4 χ型ゴニオメータ、試料吹き付け低温装置 を組み合わせることで、効率のよい高い精度での測定を可 能になります。 超電導や分子磁性、有機ELなどを実現する新たな機能 性物質の開発や、無機・有機触媒の開発、天然物の基本骨 格を含めたリード化合物に基づく創薬、天然の光合成系を 模倣した人工光合成システムの開発など、幅広い研究領域 のそれぞれの発展に今後役立っていく予定です。 CCD単結晶X線回折装置 VariMax with Saturn宮原郁子 施設紹介

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Page 1: CCD単結晶X線回折装置 VariMax with Saturndlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/contents/osakacu/kiyo/111F...8 The OCU Advance Research Institute for Natural Science and Technology OCARINA

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The OCU Advance Research Institute for Natural Science and Technology

OCARINA Communication 2

 電子密度分布から直接分子の全体構造を決定する単結晶X線構造解析は、有機化合物や有機金属錯体を扱う化学分野から、薬剤候補化合物や結晶多形、共結晶を扱う薬学分野まで幅広く利用されています。分子のほんのわずかな構造の違いが物性や生理活性に決定的な影響を与えることも多いため、信頼性の高い構造決定が可能なこの解析法は非常に強力な分析手段です。今回導入される単結晶構造解析装置は世界最高峰の高輝度X線と高感度の CCD カメラを組み合わせ、さらにビーム径やカメラ長の変更を可能にし、微小結晶や長い格子をもつ結晶に対応可能となったX線解析装置です。

微小焦点高輝度X線発生装置(RA-Micro7HFM) 結晶回転対陰極方式で最大定格出力 1.2kW で、小分子で多くの回折点を精度よく測定するのに用いられる Mo ターゲットを採用。

Mo ターゲット用分解能可変X線集光ミラー            (Conforcal Mirro “VariMax Mo”) 湾曲型人工多層膜ミラーを 2 枚用いた集光工学系で、2枚の多層膜ミラーは直行配置し、立体的にX線の集光が行える。世界最長のミラーは高輝度で単色性の高いX線を得ることができる。

CCD 検出器(Saturn724) 格子定数の大きいサンプルでも高分解能のデータ収集が可能となる大検出面積(72 × 72mm)でカメラ長を変更することが可能、かつ幅広いダイナミックレンジ(22 bit/pixel)をもち、さまざまなサンプルの測定に対応する。また、高感度(180electron/pixel/photon)でかつスーパーローノイズ(0.2electron/pixel/sec)を達成することにより、微小結晶の弱い回折点を精度よく検出できる。 さらに試料観察および結晶外形吸収補正用の高倍率CCDカメラに 1/4 χ型ゴニオメータ、試料吹き付け低温装置を組み合わせることで、効率のよい高い精度での測定を可能になります。 超電導や分子磁性、有機ELなどを実現する新たな機能性物質の開発や、無機・有機触媒の開発、天然物の基本骨格を含めたリード化合物に基づく創薬、天然の光合成系を模倣した人工光合成システムの開発など、幅広い研究領域のそれぞれの発展に今後役立っていく予定です。

CCD単結晶X線回折装置(VariMax with Saturn) 宮原郁子 

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