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第3章 保存則とその応用 -...
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第3章 保存則とその応用
3.1 保存則とは何か
力学変数から作られた物理量の値が、時間が経っても変化しない場合、それを保存量または不変量と呼ぶ。そして、そのような保存量の存在を述べるのが保存則である。特に、力の具体的な性質に依らない保存量を見つけることができれば、変化する個々の物理量の間の関係を知ることができる。
電荷の保存則: これは実験的に最もよく検証された保存則である。
?+
+ -
+-
図 mb31-1
保存則の数学的表現:
物理量 Qが保存⇐⇒ dQ
dt= 0 (3.1)
3.1-1
3.2 運動量保存則
3.2.1 運動量の定義とその保存
Newtonの運動方程式を思い起こそう:
md~v
dt= ~F (3.2)
周知のように、力が働かない場合粒子は等速直線運動を行う。すなわち、速度ベクトル ~vは変化せず、保存量となる。これは
md~v
dt= 0 ⇒ ~v =一定
であるから明らかであろう。さて次に二つの質量の異なる粒子の系を考えよう。運動方程式は
m1d~v1
dt= ~F1(~x1, ~x2) , m2
d~v2
dt= ~F2(~x1, ~x2) (3.3)
であるから、辺々加え、全系にかかる力 ~F を ~F = ~F1 + ~F2と定義すれば
m1d~v1
dt+ m2
d~v2
dt= ~F (3.4)
となる。~F = 0の場合
m1d~v1
dt+ m2
d~v2
dt= 0
となるが、これから何らかのの速度が一定であるということは出てこない。特に、「全速度」~v = ~v1 + ~v2を考えることは無意味である。すなわち、2粒子以上の系に行くと、速度の保存則は成り立たないのである。しかしながら、この場合でも実は以下に定義する運動量と呼ばれる力学量に対しては非常に重要な保存則が導かれる。
運動量の定義: まず1粒子に対しては
運動量 ~p ≡ m~v (3.5)
と定義する。すると運動方程式は
3.2-1
d~p
dt= ~F (3.6)
⇔ dpi
dt= Fi (3.7)
という形に書ける。これより直ちに
Fi = 0 =⇒ pi = mvi =一定 (3.8)
すなわち、力が働かない方向の運動量の成分は保存する。これを運動量保存則という。
このことは二つ以上の粒子の系の場合でも成立する。
d~p1
dt= ~F1 ,
d~p2
dt= ~F2 (3.9)
辺々加えると
d
dt(~p1 + ~p2) = ~F1 + ~F2 = ~F (3.10)
ここで、全運動量 ~P を
~P = ~p1 + ~p2 (3.11)
と定義すると、1粒子系と同じ形の方程式が成立する:
d~P
dt= ~F (3.12)
従って、 Fi = 0なら Pi = p1,i + p2,iは保存する。このとき各 p1,iは変化しても良い。
2 例:2物体の衝突(1次元):
������������������
������������������
������������������
������������������
������������������
������������������
������������������
������������������
m M V’
Mm v -V
-v’
図 mb32-1
3.2-2
系全体に対しては外力は働いていないから、全運動量の保存より
mv + M(−V ) = m(−v′) + MV ′ (3.13)
が成り立つ。これだけでは v′, V ′は決まらないが、この式はひとつの重要な関係式を与える。後で説明するエネルギー保存則と合わせると、衝突後の速度は完全に決まる。
3.2.2 運動量の変化と撃力
上記のことを逆に言えば、運動量の変化には必ず力が関与していると言える。実際、Newtonの運動方程式を積分すれば
∫ tb
ta
d~p(t)
dtdt = ~p(tb)− ~p(ta) =
∫ tb
ta
~F (t)dt (3.14)
右辺の積分を、時刻 taから tbまでの力積という。特に、非常に短い時間に大きな力が働いて、運動量の有限な変化を引き起こすとき、それを撃力が働くという。短い時間 ∆tの間では力は一定であると見なしてよいから、このときには上式は
~p(ta + ∆t)− ~p(ta) = ~F (ta)∆t (3.15)
と書ける。
演習 3.1 30 gのゴルフボールを 10 Kg重 (力の単位: Kg × 9.8m/s2) の力で打ったところ、秒速 80 m で飛び出した。クラブと接触していた時間はいくらか。
3.2-3
3.3 仕事の概念とエネルギー保存則
3.3.1 仕事の概念
2 力が一定の場合:
仕事= 変位の方向の力の成分 × 変位
θ
x
F
図 mb33-1
図より
W = (F cos θ)x = ~F · ~x (3.16)
2 力が時間的に変化する場合:
x =x(t )
x =x(t )
F
Γdx
1 1
2 2
図 mb33-2
微小な時間を考えれば、力はその間一定と見なせるから、
dW = ~F · d~x (3.17)
3.3-1
時刻 t1から t2までの間になされた全仕事は、これらを加え合わせることによって得られる:
W12 =
∫
Γ
~Fd~x ≡∫ t2
t1
~F · d~x
dtdt (3.18)
従って
W12 =
∫ t2
t1
~F · ~vdt (3.19)
~F · ~v = 仕事率= 単位時間あたりの仕事
仕事は一般に始点と終点の位置だけでなく、その経路にも依る。上式では、経路の違いは ~x(t1) = ~x1, ~x(t2) = ~x2を満たす様々な ~x(t)の関数形の違いで表される。
演習 3.2 2次元の運動において、
~F = A
(−y
r2,
x
r2
), A = const (3.20)
なる力を考える。この力の元で、図のように、(r0, 0)から、(r0, π)((r, θ)
は、平面極座標を表すとする。)に至る二つの経路 Γa, Γbに沿ってなされる仕事を計算して見よう。
(r , )π (r , 0)0 0
Γa
Γb
図 mb33-3
(1) この力は常に円周の接線方向に働くことを示せ。(2) その大きさは一定であることを示せ。(3) 接線方向の長さの微小な成分は r0dθであることを用いて、二つの経路に沿った仕事を計算し、それが等しくないことを確かめよ。
3.3-2
2 仕事及び仕事率の次元と単位 :
定義より
[W ] = [F ] · L = N ·m ≡ J(oule) (3.21)[dW
dt
]=
J
s= W(att) (3.22)
演習 3.3 (1) 60 Kgの人間を静かに 1 mの高さまで持ち上げた。このとき行われた仕事はいくらか。(2) 持ち上げるのに 0.5秒かかったとすると、この間その仕事により、60
ワットの電球を約何個光らせることができるか。
3.3.2 運動エネルギー (kinetic energy)
実際に起こる運動は、Newtonの運動方程式に従うい ~F = md~v/dtを満たすから、これを仕事の定義式に代入すると
W12 =
∫ t2
t1
md~v
dt· ~vdt =
∫ t2
t1
d
dt
(1
2m~v2
)dt
=1
2mv2(t2)− 1
2mv2(t1) (3.23)
ここで、粒子の運動エネルギー (kinetic energy) T (t)を
T (t) ≡ 1
2mv2(t) (3.24)
と定義すると、
W12 = T2 − T1 (Ti ≡ T (ti))
または T2 = T1 + W12 (3.25)
を得る。即ち、仕事をされた分だけ運動エネルギーは増大する。
3.3-3
3.3.3 保存力
すでに見たように、一般の力による仕事はそれがなされた経路による。しかし実際は、多くの重要な力に対して(自然界の基本的な力はすべて)、仕事は始点と終点の位置にのみより経路に依らないことが知られている。そのような力は保存力 (conservative force)と呼ばれる。
注意: 保存力とは、力自体が保存されることではないことに注意!
2 例:
地表近くの重力は保存力である。実際
~F = −mgz
q qq W12 =
∫ ~x2
~x1
~F · d~x = −mg
∫ ~x2
~x1
dz
= −mg(z2 − z1) = mg(z1 − z2) = mg∆h (3.26)
これは明らかに位置にのみ依っている。
3.3.4 ポテンシャルエネルギー
保存力による仕事は経路に依らないから、始点 ~x0を固定して考えると、
~x = ~x(t) , ~x0 = ~x(t0)∫ ~x
~x0
~F (~x′) · d~x′ =
∫ t
t0
~F (~x′(t)) · d~x′
dtdt (3.27)
は、終点の位置(ベクトル)~xの関数と見なせる。この量にマイナスの符号を付けたもの
V (~x) ≡∫ ~x
~x0
(−~F (~x′)) · d~x′ (3.28)
は、ある基準点 ~x0から ~xまで力 ~F に逆らってなした仕事の量を表し、ポテンシャルエネルギーまたは位置のエネルギーと呼ばれる。
2 ポテンシャルエネルギーの不定性 :
3.3-4
ポテンシャルエネルギーには、それを定義する際の始点の取り方からくる定数分の不定性がある。すなわち、(3.28)はより正確には
V (~x) = V (~x0) +
∫ ~x
~x0
(−~F (~x′)) · d~x′ (3.29)
と書かれるべきである。しかしこの不定性はエネルギーをどこを基準にして測るかのひとつの選択を表しているだけであって、物理的には何の影響もない。実際、それを微分して得られる保存力はこの不定性にはよらない。
2 保存力とポテンシャルエネルギー :
(3.28)が位置 ~xによって定まる関数であるということが保存力であることを表しているのであるが、これをより簡明で有用な形に書き直すことができる。これを見るために、まずポテンシャルエネルギーの時間変化 V (t+∆t)−
V (t) = V (~x(t + ∆t))− V (~x(t))を考える。~x(t) = (x(t), y(t), z(t))の各成分が変化するから、∆~x の一次までテイラー展開して、
V (~x(t + ∆t)) = V (x(t) + x(t)∆t, y(t) + y(t)∆t, z(t) + z(t)∆t)
となる。ここで、さらに微小量∆x = x(t)∆t等に関して展開する。そのためにまず、変数が二つ以上ある場合の微分の概念である偏微分について説明しておこう。二変数関数 f(x, y)において、yは動かさずに x
のみを微小に変化させ、その時の f(x, y)の変化率を考えると、xに関する偏微分が得られる:
∂f(x, y)
∂x≡ lim
∆x→0
f(x + ∆x, y)− f(x, y)
∆x(3.30)
通常の記号 d/dxではなく ∂/∂xと書くことによって、他の変数を止めた微分であることを表す。同様に、xを止めて yについて微分すれば ∂f/∂y
が得られる。実際の計算は簡単であり、たとえば f(x, y) = xmynの場合には
∂
∂x(xmyn) = mxm−1yn ,
∂
∂y(xmyn) = nxmyn−1 (3.31)
のようになる。もう一つ準備として、多変数関数のテイラー展開について述べておこう。二変数関数 f(x, y)を例にとり、f(x + ∆x, y + ∆y)を微小量 (∆xおよび∆y)に関してその 1次まで展開してみよう。まず y + ∆y
の部分はそのままにしておいて、∆xについて展開すれば、
f(x + ∆x, y + ∆y) ' f(x, y + ∆y) + ∆x∂f
∂x(x, y + ∆y) (3.32)
3.3-5
右辺第二項はすでに 1次の微小量であることを考慮してさらに∆yについて展開すれば、容易に
f(x + ∆x, y + ∆y) ' f(x, y) + ∆x∂f
∂x(x, y) + ∆y
∂f
∂y(x, y) (3.33)
を得る。この公式を用いれば、
V (~x(t + ∆t)) = V (x(t), y(t), z(t)) + ∆t
(x∂V
∂x+ y
∂V
∂y+ z
∂V
∂z
)
となるから、
q qq V (~x(t + ∆t))− V (~x(t)) = ∆t
(x∂V
∂x+ y
∂V
∂y+ z
∂V
∂z
)(3.34)
この式を∆tで割って∆t → 0とすれば
−dV
dt= −
(dx
dt
∂V
∂x+
dy
dt
∂V
∂y+
dz
dt
∂V
∂z
)(3.35)
を得る。一方、
d
dt
∫ t
t0
~F (~x′(t)) · d~x′
dtdt
= ~F · d~x
dt=
dx
dtFx +
dy
dtFy +
dz
dtFz (3.36)
であるから、(3.35)と (3.36)を比べれば、~x(t)は任意であるから、
Fi = −∂V
∂xi
(3.37)
という簡明な関係式を得る。これをまとめてベクトルとして書くと
~F (~x) = −~∇V (~x) (3.38)
~∇ ≡(
∂
∂x,
∂
∂y,
∂
∂z
)= gradient(傾き) (3.39)
( ~∇はナブラ記号とも呼ばれる。) 即ち、保存力はポテンシャルエネルギーの gradientの符号を変えたものとして書ける。
3.3-6
3.3.5 エネルギー保存則
これまでに、(i) 仕事をされた分だけ系の運動エネルギーが増加すること、(ii) 一方保存力の場合には仕事はポテンシャルエネルギーの微分で書けること、を見た。この二つを組み合わせると、全エネルギーの保存則が得られる。仕事の定義式に (3.38)式を入れると、
W12 =
∫ ~x(t2)
~x(t1)
~F · d~x = −∫ t2
t1
~∇V (~x(t)) · d~x(t)
dtdt
右辺は (3.35)の形であるから、
W12 = −∫ t2
t1
dV
dtdt = V (~x(t1))− V (~x(t2))
=1
2mv2(t2)− 1
2mv2(t1)
q qq 1
2mv2(t1) + V (~x(t1)) =
1
2mv2(t2) + V (~x(t2)) (3.40)
すなわち、系の全エネルギー Eを
E ≡ 1
2mv2 + V (~x) (3.41)
と定義すると、これは時間に依らず一定の値をとる。これをエネルギー保存則という。
2 エネルギー保存則の別の証明 :
運動方程式 md~vdt
= ~F の両辺と ~vとの内積を取ると
左辺 = m~v · d~v
dt=
d
dt
(1
2m~v · ~v
)=
d
dt
(1
2mv2
)
右辺 = −~v · ~∇V (~x) =∑
i
dxi
dt
∂V
∂xi
= −dV
dt
q qq 0 =d
dt
(1
2mv2 + V (~x)
)(3.42)
3.3-7
演習3.4 (1)バネに働く力は F = −kxは保存力である。そのポテンシャルエネルギー V (x)を求めよ。(但し V (0) =とせよ。)(2) すでに第2章で述べたように、質量m′がmに及ぼす万有引力は
~F (~r) = GNm′m
|~r′ − ~r|3 (~r′ − ~r) (3.43)
|~r′ − ~r| =√
(x′ − x)2 + (y′ − y)2 + (z′ − z)2
で与えられる。mの持つポテンシャルエネルギーが
V (~r) = −GNm′m
|~r′ − ~r| (3.44)
で与えられることを示せ。(但し V (∞) = 0とする。)
m’ m
r’ r
図 mb33-4
3.3.6 エネルギー保存及び非保存の例
2 エネルギー保存の例::
(1) 自由落下: 高さ hからの自由落下を考える。運動方程式の解は
z(t) = −1
2gt2 + h
運動エネルギー及びポテンシャルエネルギーは
T =1
2mv2
z =1
2mg2t2
V = mgz = mg
(−1
2gt2 + h
)= −1
2mg2t2 + mgh
q qq E = T + V = mgh =一定 (3.45)
これは t = 0の時のポテンシャルエネルギーの値に等しい。
3.3-8
演習 3.5 (1) 地面に衝突するときの速度をエネルギー保存則を用いて求めよ。(2) エネルギー保存則自体を z(t)に関する微分方程式と考えて解き、z(t)
を求めよ。
例 (2) 微小振動: すでに述べたように、運動方程式及びその解は
mx + kx = 0
x = A sin(ωt + θ) , ω =
√k
m
q qq x = Aω cos(ωt + θ)
従ってエネルギーは
T =1
2mx2 =
1
2m(Aω)2 cos2(ωt + θ)
V =1
2kx2 =
1
2kA2 sin2(ωt + θ)
=1
2mω2A2 sin2(ωt + θ)
q qq E = T + V =1
2mω2A2 =
1
2kA2 (3.46)
これは伸びが最大になったときのポテンシャルエネルギーの値に等しい。
演習 3.6 地球からの脱出速度の問題。図のように質量 mのロケットを半径方向に速度 v0で打ち上げる。
M
R
m
v0
図 mb33-6
(1) 打ち上げ直後の全エネルギーの表式を書け。(2) 地上からの距離が hの地点での速度を求めよ。(3) 無限遠方でちょうど速度がゼロになるとするとき、v0はいくらか。この v0を脱出速度と言う。特に、地球からの脱出速度はいくらか。(R =
6400 km)。
3.3-9
2 例 (3) 流体力学におけるBernoulliの定理:
エネルギー保存則のひとつの応用として、慣性抵抗について述べたときに用いたBernoulliの定理を証明しよう。
完全流体と呼ばれる、粘性がなくしかも非圧縮性(密度 ρ =一定)流体の定常的な流れを考える。その一部の管状の領域を取り出してみると図mb33-5のようになっている。
図 mb33-5
流体がどこへも消えてしまわない条件は連続の方程式と呼ばれ、
ρSv =一定 (3.47)
と表される。ここで Svは単位時間に流体が通過する体積。短い時間∆t間のエネルギー保存を考えてみよう。運動エネルギーの変化∆K及び位置のエネルギーの変化 ∆V は
∆K =1
2ρSBvB∆t︸ ︷︷ ︸
MB
v2B −
1
2ρSAvA∆tv2
A (3.48)
∆V = (ρSBvB∆t)gzB − (ρSAvA∆t)gzA (3.49)
と表される。圧力によってなされた仕事は
∆W = pASA︸ ︷︷ ︸FA
vA∆t︸ ︷︷ ︸∆lA
−pBSBvB∆t (3.50)
従ってエネルギー保存則 ∆K + ∆V = ∆W 及び連続の式 vASA = vBSB
を用いると、容易に次の定理を得る:
p +1
2ρv2 + ρgz =一定 (3.51)
3.3-10
2 エネルギーが保存しない例::
一般に、摩擦のある場合、エネルギーの一部は熱エネルギーとなってしまい、力学的なエネルギーは保存しない。例として、抵抗のある場合の微小振動を考えよう。運動方程式は
mx + kx = −αx (3.52)
この右辺は速度に依存しており、ポテンシャルエネルギーの微分では書けない。振動子のエネルギーに注目する。上式に xを掛け、xx = 1
2ddt
(x2)、及び xx = 1
2ddt
x2を用いれば
mxx + kxx =d
dt
(1
2mx2 +
1
2kx2
)=
dE
dt= −αv2 < 0 (3.53)
従って振動子のエネルギーは時間と共に減少する。
演習 3.7 空気抵抗(粘性及び慣性抵抗)がある場合の自由落下における粒子の全エネルギーの保存について論ぜよ。
3.3-11
3.4 運動量保存則とエネルギー保存則の組み合わせ
運動量およびエネルギー保存則を併用することにより、多くの問題を解くことができる。以下その例を挙げよう。
3.4.1 粒子の弾性衝突(1次元の場合)
2粒子の1次元的な衝突を考えよう。衝突の過程で粒子の力学的エネルギーが保存するとき、これを弾性衝突と言う。図は一般の弾性衝突を表す。
������������������
������������������
������������������
������������������
������������������
������������������
������������������
������������������
m
v v
v’ v’
m m1
1
1
1 m22
2 2
図 mb34-1
後に見るように、粒子が合体してしまうような場合には、運動量は保存するが、エネルギーの一部は熱エネルギー等に変化してしまい、力学的エネルギーは保存しない。そのような場合は非弾性衝突と呼ばれる。
2 片方が静止している場合:
まず、最も簡単な場合、すなわち片方の粒子が静止している場合を考えよう。
������������������
������������������
����������������������������
����������������������������
m Mv
図 mb34-2
p保存及びE保存の式は
p保存 mv + 0 = mv′1 + Mv′2 (3.54)
E保存1
2mv2 =
1
2mv′1
2+
1
2Mv′2
2(3.55)
3.4-1
実はこの種の問題を扱うには、速度を用いずに、運動量で全てを表す方が簡単である。特に、運動エネルギーは
T =1
2mv2 =
p2
2m(3.56)
と書ける。この表式を用いると、
(∗1) p保存 p = p′1 + p′2 (3.57)
(∗2) E保存p2
2m=
p′12
2m+
p′22
2M(3.58)
となる。(∗1)より p′1 = p− p′2。これを (∗2)に代入すると
p2 = (p− p′2)2 +
m
Mp′2
2
= p2 − 2p′2p +(1 +
m
M
)p′2
2
q qq p′2[(
1 +m
M
)p′2 − 2p
]= 0 (3.59)
いま p′2 6= 0であるから、
p′2 =2p
mM
+ 1=⇒ v′2 =
p′2M
=2mv
m + M> 0 (3.60)
p′1 = p− p′2 =m−M
m + Mp =⇒ v′1 =
m−M
m + Mv (3.61)
従って、M は必ず正方向に動く。これに対してmの運動はmとM の相対的な大きさによる。
m > M → 正方向m < M →逆方向m = M → 静止
2 両方が動いている場合 :
次に両方の質点が動いている場合を取り扱おう。単純に p及びE保存の式を書き下すと複雑になるので工夫をする。二つの考え方がある。
3.4-2
������������������
������������������
��������������������������������
��������������������������������
m Mv -V
v>0, V>0図 mb34-3
M の静止系: 一つはMの静止系に変換して考えることである。すなわち、左に速度 V でM と共に動く観測者から見る。この観測者の見る速度は
v = v + V , V = V − V = 0
すると以前の結果が直ちに使えて
v′ =m−M
m + M(v + V )
V ′ =2m
m + M(v + V )
もとの系に戻ると
v′ = v − V =m−M
m + M(v + V )− V =
(m−M)v − 2MV
m + M(3.62)
V ′ = V − V =2m
m + M(v + V )− V =
2mv + (m−M)V
m + M(3.63)
特に、m = M の場合、v′ = −V, V ′ = v となり、ちょうど速度が逆転する。
重心系 (center of mass system (CMS)):
重心系= 全運動量がゼロになるような系。以下添え字 0を付けて表す。
������������������
������������������
��������������������������������
��������������������������������
m Mv+W -V+W
CM system
図 mb34-4
重心系に行くのに、左に速度W で動かなければならないとすると
v0 = v + W , V0 = −V + W
全運動量は
Ptot = p0 + P0 = mv0 + MV0 = m(v + W ) + M(−V + W )
= (mv −MV ) + (m + M)W (3.64)
3.4-3
これをゼロとおいてW を求めると
W = −mv + M(−V )
m + M= − p + P
m + M(3.65)
重心系の利点は、p保存の式が非常に簡単になることである。実際
p保存 p′0 + P ′0 = 0 ⇒ p′0 = −P ′
0 (3.66)
すなわち、衝突後も両方の粒子の運動量の大きさは等しい。E保存の式は
E保存p2
0
2m+
P 20
2M=
p′02
2m+
P ′02
2m=
(1
2m+
1
2M
)p′0
2(3.67)
q qq p20 = p′0
2 ⇒ p′0 = −p0 (3.68)
最後の式で、p′0 = +p0は素通りする解を表すので−符号の解のみ取ってある。従って、
p′0 = −p0 ⇒ v′0 = −v0
P ′0 = p0 ⇒ V ′
0 =m
Mv0
この結果をもとの系に戻す:
v′ = v′0 −W = −v0 −W = −(v + W )−W = −v − 2W
= · · · = (m−M)v − 2MV
m + M(3.69)
V ′ = V ′0 −W =
m
Mv0 −W =
m
M(v + W )−W
= · · · = 2mv + (m−M)V
m + M(3.70)
すなわち以前得た結果と一致する。
3.4.2 2粒子の完全非弾性衝突
今度は、衝突後2粒子が完全に合体する場合を考えよう。これは完全非弾性衝突と呼ばれる。この場合、運動量保存則しか成り立たないが、衝突後の速度が一つしかないので、解けてしまう。
3.4-4
������������������
������������������
��������������������������������
��������������������������������
������������������������������������������������������������������������������������
������������������������������������������������������������������������������������
m Mv -V
V’m+M
図 mb34-5
p保存より
mv + M(−V ) = (m + M)V ′
q qq V ′ =mv −MV
m + M(3.71)
演習 3.8 このときエネルギー保存則が成立しないことを確かめよ。
3.4.3 ビリヤードの力学 (2次元平面上の弾性衝突)
������������������
������������������
���������������������
���������������������
p’
p’
p=mv θ
θ
1
1’
2
2’
2
2
1
1
y
x
図 mb34-6
2次元の場合、~p保存から2式、E保存が1式、計3式が得られるが、未知量は ~p′1, ~p
′2の4成分であるので、一つの未知量が決まらずに残る。これ
は衝突の際の相互作用を指定して初めて定まる。
2 実験室系での取り扱い :
~p保存、E保存より
~p保存: x方向 p = mv = p′1 cos θ1 + p′2 cos θ2 (3.72)
y方向 p′1 sin θ1 = p′2 sin θ2 (3.73)
E保存:p2
2m=
p′12
2m+
p′22
2m
q qq p2 = p′12+ p′2
2(3.74)
3.4-5
θ1 = 0の場合は素通りを表す。また θ2 = 0の場合は、正面衝突して 1が止まる場合を表す。以下ではこれ以外、すなわち θi 6= 0の場合を考える。特に、sin θ1 6= 0であるから、(3.73)より
p′2 =sin θ1
sin θ2
p′1
(3.75)
これを (3.72)に代入すると、
p = p′1 cos θ1 +sin θ1 cos θ2
sin θ2
p′1
=1
sin θ2
(sin θ1 cos θ2 + sin θ2 cos θ1)p′1
=sin(θ1 + θ2)
sin θ2
p′1
q qq p′1 =sin θ2
sin(θ1 + θ2)p (3.76)
これより p′2は
p′2 =sin θ1
sin(θ1 + θ2)p (3.77)
これをE保存の式に代入すると、容易に
sin2(θ1 + θ2) = sin2 θ1 + sin2 θ2 (3.78)
を得る。右辺に三角関数の倍角の公式 sin2 φ = 12(1− cos 2φ)を用いると、
sin2(θ1 + θ2) = 1− 1
2(cos 2θ1 + cos 2θ2)
q qq cos2(θ1 + θ2) =1
2(cos 2θ1 + cos 2θ2) (3.79)
さらに、cos α + cos β = 2 cos 12(α + β) cos 1
2(α− β)を用いれば、
cos2(θ1 + θ2) = cos(θ1 + θ2) cos(θ1 − θ2) (3.80)
従って、
cos(θ1 + θ2)(cos(θ1 + θ2)− cos(θ1 − θ2)) = 0 (3.81)
しかるに、θi 6= 0より、
cos(θ1 + θ2)− cos(θ1 − θ2) = −2 sin θ1 sin θ2 6= 0
3.4-6
従って cos(θ1 + θ2) = 0が成り立たなければならないから、
θ1 + θ2 =π
2(3.82)
という簡単な関係を意味する。すなわち、衝突後二つの粒子は必ず互いに直角方向に運動する。これはビリヤードに使える知識である。
2 重心系での取り扱い :
右に v/2の速度で動く系から見ると、衝突は図のようになり、ちょうど重心系での取り扱いになる。
������������������
������������������
������������������
������������������
v -vv’
v’20
10
0 0
図 mb34-7
重心系では、~Ptot,0 = ~p10 + ~p20 = ~p′10 + ~p′20 = 0 であるから衝突前、衝突後ともに二つの粒子の運動量は大きさが等しく逆向きになる。また、衝突前の運動量の大きさは、 p0 = mv − 1
2mv = 1
2mv ≡ mv0。さらに、エ
ネルギー保存則より
2× p20
2m= 2× p′0
2
2m
が成り立つから、衝突前後で運動量の大きさ、及び速度の大きさは変わらない。これを元の系に戻すには、右向きのベクトル ~v0を加えればよいから、
図mb34-8のようになる。
3.4-7
θ
θv
v
v
v
v0
0
0
0
1
20
図 mb34-8
さらにこれを描き直すと、図mb34-9となる。
v0
p1p
2
θ1θ2
図 mb34-9
これより衝突後の2粒子が互いに直角に運動することが幾何学的に理解できる。
3.4-8
3.5 角運動量とその保存
運動量およびエネルギーとならんで重要な(しばしば保存する)力学量として「角運動量」がある。
3.5.1 角運動量とは何か
正確な定義は後回しにして、まず直観的な理解をしておこう。角運動量とは
ある点の周りの回転の「勢い」を表す力学量
である。
例 等速円運動
図 mb35-1
回転の「勢い」はm, v, rが増せば増すと考えられる。この場合の角運動量の大きさ lは
l = mvr = pr (3.83)
と定義される。
2 ベクトルとしての角運動量 :
回転運動は次の二つの量で特徴付けられる:
• 回転軸の方向 ⇔ それに垂直な回転面の指定
• 回転の勢いの大きさ
3.5-9
従って、角運動量はベクトル量として定義されるべきである。このベクトルは
• ~p = m~v
• ~x =回転の中心から測った位置ベクトル
から作られるのが自然である。一般の運動は曲線軌道をなし、純粋な回転運動は非常に特殊である。しかし、一般の運動に対しても、ある点から見たときには瞬間的に回転運動をしていると見なすことが出来る。このことを念頭において、次の図の状況を考えよう。
p
p=mv
m
θ
θ
O |x|sin
x
図 mb35-2
角運動量ベクトル ~lを次の要請から定義する:
• 方向: ~pと ~xの張る面に垂直
• 大きさ: 直線運動に対して時間と共に変わらない(保存量)。これを満たす定義は
|~l| = |~p||~x| sin θ (3.84)
実際、図より |~x| sin θは直線運動に対して不変であることは明瞭である。
3.5.2 ベクトルの外積と角運動量の定義
上記の方向と大きさを持ったベクトルを直接 ~pと ~xから作り出す演算をベクトルの外積と呼び、角運動量ベクトル ~lを次のように表す:
3.5-10
~l(t) = ~x(t)× ~p(t) = m~x(t)× ~v(t) (3.85)
2 ベクトルの外積の定義と性質 :
二つの3次元ベクトル ~uと ~vの外積 ~u× ~vは次のように定義される:
図 mb35-3
方向: ~uから ~vへ右ねじの法則で回転したときの親指の方向大きさ: |~u× ~v| = uv sin θ u = |~u|, v = |~v|
図 mb35-4
図より、|~u× ~v|は ~uと ~vで張られる平行四辺形の面積を表している。
正規直交系における成分表示
{e1e2, e3}を正規直交系(図参照)とする。
3.5-11
図 mb35-5
上記の定義より、
e1 × e2 = e3 = −e2 × e1
(i) e2 × e3 = e1 = −e3 × e2 (3.86)
e3 × e1 = e2 = −e1 × e3
(ii) e1 × e1 = e2 × e2 = e3 × e3 = 0 (3.87)
一般のベクトル ~u,~vの内積の成分表示は、これらのベクトルの成分表示から容易に得られる。
~u =∑
i
uiei , ~v =∑
j
vj ej
~u× ~v =∑i,j
uivj ei × ej
= (u2v3 − u3v2)e1 + (u3v1 − u1v3)e2 + (u1v2 − u2v1)e3
(3.88)
これをまとめると
(~u× ~v)1 = u2v3 − u3v2
(~u× ~v)2 = u3v1 − u1v3 (3.89)
(~u× ~v)3 = u1v2 − u2v1
特に
3.5-12
~u× ~v = −~v × ~u (3.90)
~u× ~u = 0 (3.91)
演習 3.9 ベクトル
~u = (1, 2, 3) , ~v = (−2, 0, 1) , ~w = (0,−1, 1)
に対して
(i) ~u× ~v , ~v × ~w , ~w × ~uを求めよ。(ii) (~u × ~v) × ~w及び ~u × (~v × ~w)を求め、それらが等しいかどうか調べよ。
演習 3.10 (i) (~u× ~v) · ~wを成分表示せよ。その表式から
(~u× ~v) · ~w = (~v × ~w) · ~u = (~w × ~u) · ~v
が成り立つことを示せ。
(ii) 有用な公式
~A× ( ~B × ~C) = ~B( ~A · ~C)− ~C( ~A · ~B)
を証明せよ。
3.5.3 角運動量保存則
角運動量 ~l(t) = ~x(t)× ~p(t)の時間変化を調べよう。
d~l
dt=
d~x
dt× ~p + ~x× d~p
dt
= ~v ×m~v︸ ︷︷ ︸=0
+~x× ~F ≡ ~N =トルク (3.92)
従って
3.5-13
d~l
dt= ~N = ~x× ~F (3.93)
即ち、角運動量の各成文は、対応するトルクの成分がゼロのとき保存する。
1体問題の場合、これが起こるのは
(i) ~x = 0 (粒子が回転軸上にある場合)
(ii) ~F = 0
(iii) ~F = c(~x)~x 即ち力が位置ベクトルの方向を向いている場合。このような力を中心力と呼ぶ。
演習 3.11 半径 aの一様な円運動をしている質点に働いている力は中心力であり、従って角運動量が保存することを示せ。また、 |~F | = mv2/a
であることを示せ。
2 応用例: フィギュアスケートにおけるスピン 1:
角運動量保存則の簡単な適用例として、フィギュアスケートでスケーターが体を縮める動作によってスピンを行う現象を考えよう。問題を簡単化するため、スケーターを質点と見なし、ひものついた質点が回転している系で近似する。(図参照)
図 mb35-6
1ゴルフのスイングの場合も大きなテークバックから脇を締めて腕を引き込みながら回転させることにより同様の効果を生み出している。
3.5-14
ひもを引っ張って半径を r1(< r0)に縮めると、角運動量保存より
l = mv0r0 = mv1r1
q qq v1 =r0
r1
v0 > v0
となり、速度が増加する。
運動エネルギーの増加 : このとき当然運動エネルギーも増加する。
T0 =1
2mv2
0
T1 =1
2mv2
1 =1
2m
(r0
r1
)2
v20 =
(r0
r1
)2
T0
∆T = T1 − T0 =
((r0
r1
)2
− 1
)T0 (3.94)
このエネルギーの増加は、ひもを引っ張ったことによる仕事に一致しているはずである。
仕事の計算 半径 r、速度 vのときの張力(中心力)は F = mv2
r。いま
角運動量保存より v = v0r0/rであるから、
F =m(v0r0)
2
r3(3.95)
この力に逆らって行う仕事は
W = −∫ r1
r0
F dr = −m(v0r0)2
∫ r1
r0
dr
r3
= −m(v0r0)2 1
−3 + 1
1
r2
∣∣∣∣r1
r0
=1
2mv2
0
(r20
r21
− 1
)
=
((r0
r1
)2
− 1
)T0 (3.96)
となり、ちょうど質点のエネルギーの増加分に一致する。スケーターは手足を縮めるのに筋肉を使うがこのエネルギーが回転のスピードアップをもたらすのである。
3.5-15
3.5.4 平面極座標系における運動の記述
回転運動を記述するにはしばしば平面極座標系が便利である(図):
図 mb35-7
x(t) = r(t) cos φ(t) , y(t) = r(t) sin φ(t)
r =√
x2 + y2 , tan φ =y
x(3.97)
2 運動エネルギーの極座標系における表式 :
速度を計算すればよい。φ(t)に対する微分も忘れないようにする。
x = r cos φ− rφ sin φ
y = r sin φ + rφ cos φ
v2 = x2 + y2 = (r cos φ− rφ sin φ)2 + (r sin φ + rφ cos φ)2
= r2(cos2 φ + sin2 φ) + r2φ2(sin2 φ + cos2 φ) = r2 + r2φ2
従って
T =1
2mv2 =
1
2m(r2 + r2φ2) (3.98)
3.5-16
この結果は次のような直交座標系を考えれば容易に理解できる。
r
dr
rdφ
φ
dφ
動径および接線方向の速度はそれぞれ vr = r, vφ = rφであるから T =12m(v2
r + v2φ)より上の結果が得られる。
複素座標を用いた計算: 上の計算は複素座標を用いて簡単に行うこともできる。(x, y)を複素数に組むと
z = x + iy = reiφ (3.99)
すると
v2 = |z|2 =∣∣∣reiφ + irφeiφ
∣∣∣2
= |r + irφ|2 = r2 + (rφ)2 (3.100)
2 平面運動における角運動量の極座標表示 :
x-y平面上の運動を考える。この場合 ~lは z方向成分のみを持つから、l3
を求めれば十分。
l3 = (~x× ~p)3 = x1p2 − x2p1 = xpy + ypx
= m(xy − yx) (3.101)
これに x, yの式を代入すれば、
m(xy − yx) = m(r cos φ(r sin φ + rφ cos φ)− r sin φ(r cos φ− rφ sin φ))
= mr2φ (3.102)
従って
l = l3 = mr2φ (3.103)
3.5-17
この結果は複素表示のテクニックを応用して得ることもできる。z = x +
iy, z = x− iy (zの複素共役)と置くと、
˙z = x− iy
z ˙z = xx + yy − i(xy − yx) (3.104)
となるから、l3はl3 = −=(mz ˙z)
と書ける。これを計算すると
z ˙z = reiφ(r − irφ)e−iφ = rr − ir2φ
この虚部をとれば l = l3 = mr2φを得る。
2 運動エネルギーの角運動量を用いた表式 :
角運動量の2乗を計算すると
l2 = m2r4φ2 = mr2 ×mr2φ2 (3.105)
これを運動エネルギーの式 (3.98)に代入すると
T =1
2mr2 + Vc(r) (3.106)
Vc(r) =l2
2mr2(3.107)
第1項は、r方向の運動エネルギーを表し、第2項Vc(r)は回転エネルギーを表す。これは遠心力に伴うポテンシャルエネルギーと見なせるので遠心ポテンシャルと呼ばれる。Vc(r)は rが小さくなると大きくなり、粒子が中心に近づかないようにする効果を表している。
2 rにのみ依存するポテンシャルと中心力 :
Vcは rのみに依存するが、一般に φに依らないポテンシャル V (r)によって生み出される力は中心力であり、従ってそのような力のみが働いている場合には角運動量が保存することを見よう。力の x成分を計算すると、
Fx = −∂V
∂x= −∂r
∂x
dV
dr(3.108)
3.5-18
ここで
∂r
∂x=
∂
∂x
√x2 + y2 + z2 =
x
r(3.109)
を用いれば、Fx = −(x/r)dV/drとなる。他の成分についても同様であるから、
~F = −~x
r
dV
dr∝ ~x (3.110)
となり、中心力であることが分かる。
2 角運動量が保存する場合の平面極座標系における運動方程式 :
lが保存する場合に、φ(t)と r(t)に対する運動方程式を求めよう。
φ(t)に対する方程式:
角運動量が保存する場合は、保存の式より
l = mr2φ =一定 ⇒ φ =l
mr2(3.111)
但し、rが tに依っているので、まず次に述べる r(t)の運動方程式を解き、それから φ(t)を求めることになる。
r(t)に対する方程式:
まず遠心ポテンシャルが生み出す動径方向の力、すなわち遠心力 Fc、を求めると、
Fc = −dVc
dr= − d
dr
(l2
2mr2
)=
l2
mr3(3.112)
一般にはこれ以外のポテンシャル V (r)があるので、それによる力を加えると、r(t)に対する運動方程式は、
mr =l2
mr3− dV
dr(3.113)
となる。
2 平面極座標系における一般の運動方程式と角運動量の保存則 :
次に、角運動量が必ずしも保存しないより一般的な場合を考察しよう。力が保存力、すなわち Fi = −(∂V/∂xi)で与えられる場合を考察する。デカルト座標系での運動方程式は
mx = Fx = −∂V
∂x(3.114)
my = Fy = −∂V
∂y(3.115)
3.5-19
これを平面極座標系に直すには、例によって複素座標表示を用いると簡単である。
z = x + iy = riφ
z = x + iy = (r + rφ)eiφ
z = x + iy =((r − rφ2) + i(2rφ + rφ)
)eiφ
(3.114)+i(3.115)を考えると、運動方程式は
mz = −(
∂V
∂x+ i
∂V
∂y
)(3.116)
と書ける。さて、ポテンシャルエネルギーを V (x, y) = V (r, φ)のように rと φの
関数と見なした表式に書き換えなければならない。微分のチェインルールを用いれば
∂V
∂r=
∂x
∂r
∂V
∂x+
∂y
∂r
∂V
∂y
= cos φ∂V
∂x+ sin φ
∂V
∂y∂V
∂φ=
∂x
∂φ
∂V
∂x+
∂y
∂φ
∂V
∂y
= −r sin φ∂V
∂x+ r cos φ
∂V
∂y
この2式を組み合わせると
∂V
∂r+ i
1
r
∂V
∂φ= e−iφ
(∂V
∂x+ i
∂V
∂y
)
q qq −(
∂V
∂x+ i
∂V
∂y
)= −eiφ
(∂V
∂r+ i
1
r
∂V
∂φ
)(3.117)
これを (3.116)に代入して両辺の実部と虚部を比較し、整理すると
mr = mrφ2 − ∂V
∂r(3.118)
dl
dt= −∂V
∂φ, l = mr2φ (3.119)
3.5-20
を得る。第2式より、∂V/∂φ = 0、すなわち V = V (r)のとき角運動量が保存することがわかる。これは実は力が中心力であることに他ならない。実際、このとき (3.117)より
Fx + iFy = −(
∂V
∂x+ i
∂V
∂y
)= −reiφ 1
r
∂V
∂r= −(x + iy)
1
r
∂V
∂r
q qq ~F = −~x
(1
r
∂V
∂r
)∝ ~x (3.120)
となり、中心力であることが示される。
演習3.12 単振り子に対して極座標系での運動方程式を求めよ。但し r =
一定であるので、φに関する方程式のみ意味がある2。
図 mb35-8
2rに関する部分も有効にするには、r方向に強いポテンシャルを入れなければならい。
3.5-21