Benkyokai shosato 20130219
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近代日本の出版流通と「読書国民」の誕生
「図書館史を勉強したい」answer編
佐藤翔(@min2fly)
2013.2.20 図書館系勉強
1

俺たちは登りはじめたばかりだ・・・この長い図書館史坂を
2
8 months ago…

• なぜ図書館史を学ぶかがわからない
• 相互の関係・全体の流れを教科書は欠く
• 「資料(情報)、場所、人の変遷とその
相互関係、通底するものを事例を検証し
つつ論じる」・・・的なものができない
か?
3
もともとの問題意識

シラバス作ってみた!
*配布資料参照
4

そのうちの1回で
話す内容も考えてみた
5

近代日本の出版流通と「読書国民」の誕生
「図書館史を勉強したい」answer編
佐藤翔(@min2fly)
2013.2.20 図書館系勉強
6

• 近世⇒近代日本の出版流通の変化
• 近代出版流通体制の成立
• 確立したシステムは何を実現したか?
• 図書館との関係は?
7
概要

近世⇒近代の変化
8

• 雑誌の不在
• 木版印刷
• 出版・流通(取次)・小売は未分化
• 地域ごとの商圏(交流はあり)
• 主たる読者は町人
9
近世の出版流通

• 雑誌と書籍が同ルートで流通
• 活版印刷
• 出版・流通(取次)・小売の分業
• 東京・大阪による中央集権
• 読者の拡大
10
近代の出版流通

変化の要因は?
どうやって現在の状態に?
11

近代出版流通
システムの確立
12

1.産業革命
13

• 活字は桃山時代に既に渡来⇒廃れた
– 当時の活版印刷技術 < 木版印刷(in 日本)
• 産業革命期の印刷能力向上
– 1798年:片面250枚/h
– 1891年:24ページの新聞を24,000部/h
• 明治維新後、新聞でいち早く導入
• 図書で活版が主流になるのは1877~1887年
14
活版印刷の採用

• 活字は桃山時代に既に渡来⇒廃れた
– 当時の活版印刷技術 < 木版印刷(in 日本)
• 産業革命期の印刷能力向上
– 1798年:片面250枚/h
– 1891年:24ページの新聞を24,000部/h
• 明治維新後、新聞でいち早く導入
• 図書で活版が主流になるのは1877~1887年
15
活版印刷の採用
大量印刷の
下地ができる

• 明治初期:東京⇒北陸の輸送は7日かかる
• 鉄道網の整備:明治20~40年
– 即日/翌日の配送が実現!
• まずは新聞・雑誌が全国網を整備
– 新聞捌売業⇒雑誌取次へ
– 日清・日露戦争を機に拡大
16
鉄道網の発達

• 新聞・雑誌は鉄道輸送費が優遇される
– 一定量以上でさらに割引あり
• もともと出版(製造)・書店(小売)に
比べ数が少ない
– 大手は4社くらい
• 後に新聞は直売に・・・雑誌取次の独立
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雑誌取次の成立

• 新聞・雑誌は鉄道輸送費が優遇される
– 一定量以上でさらに割引あり
• もともと出版(製造)・書店(小売)に
比べ数が少ない
– 大手は4社くらい
• 後に新聞は直売に・・・雑誌取次の独立
18
雑誌取次の成立
東京発・
全国発送網実現

• 国定教科書のための販売網は成立したが…
• この時点では近世以来の延長=多様な流通
– 出版者⇒書店
– 出版者⇒取次⇒書店
– 出版者⇒地方仲卸⇒書店
– 出版者⇒取次⇒地方仲卸⇒書店
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一方図書は・・・?

• 新聞・雑誌読書の普及
• 小説の流行:中央メディアの地方浸透
• 図書はそこまで普及していない?
– 軽い読み物がない
– 流通網の不完全さ
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読者の傾向

2.関東大震災と
円本ブーム
21

• 図書流通網の機能停止・雑誌は機能
• 講談社が『大正大震災大火災』を震災1
か月後に雑誌ルートで販売
– 大ベストセラーに!
– 雑誌小売ルートに載ったことの効果
• 雑誌ルートでの書籍流通常態化へ
22
関東大震災

• 円本:大正末~昭和初頭に流行した廉価な全
集モノ
• 1冊1円(くらい):今の5,000円前後?
– この当時『中央公論』が80銭
• 予約購読性/毎月配本
– 雑誌に似た特性・・・雑誌ルートで販売
– 毎月の全国流通が必要に
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円本とは?

• 「日本出版市場最大の事件」
• 全国で売れまくる
– 読むものの標準化
– 大衆への「文学」普及
– ブーム後はさらに安価で販売
– 雑誌と異なり人々の書棚に残り続ける
24
円本ブーム

• 円本ブーム直前に創刊
• 日本初の「100万部」達成雑誌
• 国民のあらゆる層に浸透
• 「国民雑誌」「大衆の国民化」
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『キング』の時代
図書も含んで
大衆に読書が普及

3.総動員体制と
出版システムの完成
26

• 物資がない・・・経済統制の必要
• 出版流通一元化
– 日本出版配給株式会社(日配)の成立
– 流通一元化・正味等の標準化
• 戦後、日配分割
– 現在に至る2大取次体制へ
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太平洋戦争と総動員体制

「読書国民」の誕生
28

• 中央メディアの全国流通体制
• 出版部数の増大と読書の普及
– 近代文語文/普通語の普及=標準語
– 地域を離れた「国民性」=国レベルの関心
– 「誌友交際」:中央-地方だけでなく地方-地方も
• 「想像の共同体」=読書国民
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近代出版流通が生んだもの

• 「読書」の有効性への政府の認識
– 新聞読書による啓蒙
– 青年再教育
– 地方改良運動・・・
• 「読書」は(使いようによっては)有用
なもの
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政府の「読書国民」認識

• 「読書国民」になれないものもいる
– 都市から離れた地方…流通の範囲外
– 貧困
– 読書能力の不足
• その補完システムが求められる
– 今でいうsocial inclusionの問題
31
「読書国民」と図書館

• 「読書国民」になれないものもいる
– 都市から離れた地方
– 貧困
– 読書能力の不足
• その補完システムが求められる
– 今でいうsocial inclusionの問題
32
「読書国民」と図書館
そんな時に使えるのは
…図書館だ!!

33
To be continued…

1. 柴野京子. 書棚と平台: 出版流通というメディア. 弘文堂, 2009, 236p.
2. 永嶺重敏. “読書国民”の誕生: 明治30年代の活字メディアと読書文化. 日本エディタース
クール出版部, 2004, 273p.
3. 永嶺重敏. モダン都市の読書空間. 日本エディタースクール出版部, 2001, 263p.
4. 永嶺重敏. 雑誌と読者の近代. 日本エディタースクール出版部, 1997, 281p.
5. 佐藤卓己. 『キング』の時代: 国民大衆雑誌の公共性. 岩波書店, 2002, 462p.
6. 佐藤卓己. 現代メディア史. 岩波書店, 1998, 259p.
7. 山梨あや. 近代日本における読書と社会教育. 法政大学出版局, 2011, 384p.
8. 長友千代治. 江戸時代の図書流通. 仏教大学通信教育部, 2002, 315p.
9. 宮下志朗. 本を読むデモクラシー: “読書大衆”の出現. 刀水書房, 2008, 151p.
10. 小黒浩司編. 図書及び図書館史. 日本図書館協会, 2010, 142p.
11. 長尾宗典. 「誌友交際」論序説: 高山樗牛・姉崎嘲風の高等中学校時代をめぐって. 近代
史料研究. 2012, no.12, p.42-59.
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参考文献