≪医療機関におけるマイナンバー制度について≫ · 2016-09-24 ·...
Transcript of ≪医療機関におけるマイナンバー制度について≫ · 2016-09-24 ·...
2015年 8月 10 日 0040号
発行:MMPG医療・福祉・介護経営研究所 病院経営研究室
発信者:㈱佐々木総研 福岡県北九州市八幡東区石坪町 10-13 TEL.093-651-5533
1/14
≪医療機関におけるマイナンバー制度について≫
2016(平成 28)年1月より、マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)が導入されます。制度
導入に伴い、医療機関などを含めた企業において、給与所得の源泉徴収票の作成や社会保険料の支
払い・事務手続きなどで、マイナンバー(個人番号)を取扱うこととなります。この個人番号は機
微性を有するため情報漏えいなどに対する厳しい規制が設けられており、実務上の対応については
十分留意する必要があることから、本紙では、マイナンバー制度の概要と個人番号の取扱いに留意
した医療機関など企業の対応準備を中心に解説します。
本紙の内容は、2015(平成 27)年 7 月 1 日現在の法令等に基づいています。法律改正等により、
内容が変更になることもございますので、予めご留意ください。
<Ⅰ.マイナンバー制度の概要>
1.マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)とは
マイナンバー制度とは、社会保障・税番号制度のことです。日本に住民票を有するすべての方
に1人1つのマイナンバー(12桁の個人番号)が付与され、本年 10月以降に市区町村から通知
されます。この個人番号は「社会保障・税・災害対策」の3分野に限定して利用される予定です。
国や地方公共団体が、個人番号を利用することで、効率的な情報管理や複数の機関で所有する個
人情報が同一人物の情報であることを確認等できるようになります。
これにより、①公平、公正な社会の実現(正確な所得の把握、社会保障の不正受給の防止な
ど)、②国民の利便性の向上(行政手続の簡素化、添付書類の省略など)、③行政事務の効率化
(様々な情報の名寄せなど)が実現できるとされています。
また、法人にも、1法人1つの番号が指定され、本年 10月以降、登記上の本店所在地に 13桁
の法人番号が国税庁より通知されます(法人の支店・事業所等や個人事業者は指定されません)。
マイナンバー(個人番号)と異なり、法人番号は広く公表され、官民問わず、自由に利用するこ
とが可能です。
HOSPITAL Review 2015年 8月 10 日 0040号
2/14
2.マイナンバーの通知
2015(平成 27)年 10月から順次、マイナンバーを通知するための「通知カード(詳細は下記
参照)」が配布されます。また、希望者が、各市区町村に申請すると 2016(平成 28)年1月以
降「個人番号カード(詳細は下記参照)」を取得出来ます。
◆通知カードとは
紙製のカードが予定されており、券面にマイナンバーと基本4情報(氏名、住所、性別、生年
月日)が記載されたものになります。これは簡易書留郵便で世帯ごとに送付されます。
◆個人番号カードとは
券面の裏面にはマイナンバーが、表面には基本4情報(氏名、住所、性別、生年月日)の記載
と顔写真が表示されます。本人確認のための身分証明書として利用できるほか、ICチップに搭
載された電子証明書を用いて、居住地の自治体の図書館利用証や印鑑登録証など条例で定めるサ
ービスにも使用出来ます。このICチップには券面記載情報のほか電子申請のための電子証明書
が記録されますが、所得情報や病歴などの機微な個人情報は記録されません。
なお、裏面の個人番号については、法律で認められた事務以外での収集等は禁止されています。
例えば、通常、身分証明書の写しとしてコピーを取っていいのは表面であり、法で定められた利
用目的に該当する場合を除き、個人番号カードの裏面をコピーすることはできませんので、注意
してください。
3.個人番号の利用範囲
マイナンバーは、社会保障・税・災害対策の手続きのために、国や地方公共団体、勤務先、金
融機関、年金・医療保険者などに提供するものです(マイナンバー法【P9①参照】)。そのため、
事務を担当する関係機関は、行政機関・自治体等が中心ですが、民間事業者が担う場合もありま
す。また、税分野についても税務当局だけでなく申告等をする民間事業者が担う場合があります。
法で定められた目的以外にむやみに他人にマイナンバーを提供出来ず、他人のマイナンバーを
不正に入手することもできません。他人のマイナンバーを取り扱っている者が、マイナンバーや
個人の秘密が記録された個人情報ファイルを他人に不正に提供すると、処罰の対象になります。
HOSPITAL Review 2015年 8月 10 日 0040号
3/14
出典:内閣官房社会保障改革担当室「マイナンバー 概要資料」
4.規制と罰則
マイナンバー法では、個人番号の不正使用を防止するという観点から、特定個人情報(P9⑥参
照)の盗用などについては、行政機関個人情報保護法などに比べて法定刑が重くなっています。
出典:内閣官房社会保障改革担当室「マイナンバー 概要資料」
HOSPITAL Review 2015年 8月 10 日 0040号
4/14
<Ⅱ.医療機関に与える影響(注意すべき点は?)>
1.院内で実施するマイナンバー関連業務
2016(平成 28)年1月からマイナンバー制度が開始されると、医療機関を含めた企業では行政
機関等へ提出する書類に記載するために、従業員のマイナンバー(個人番号)を収集し、保管す
ることになります。
医療機関が院内で実施する主なマイナンバー関連業務は、①従業員の社会保険関係の事務に関
するもの、②従業員の給与等事務に関するもの、③法定調書作成事務に関するものなどが想定さ
れます。
これらの業務でマイナンバーが必要となるため、医療機関や企業では 2016(平成 28)年の早
い時期に従業員やその被扶養者のマイナンバーを取得することが求められます(特例により個人
番号の事前収集は 2016(平成 28)年1月以前でも可)。
マイナンバーを取得する際は、個人情報と同様、利用目的を特定して明示する必要があります
(個人情報保護法第 18条)。例えば「源泉徴収票作成事務」「健康保険厚生年金保険届出事
務」など、源泉徴収や年金・医療保険・雇用保険など複数の目的で利用する場合は、まとめて目
的を示しても構いません。
マイナンバーの取得や本人確認、情報の保管については、特に注意して実施する必要がありま
すので、ここで詳しく説明します。
出典:特定個人情報保護委員会事務局「はじめてのマイナンバーガイドライン(事業者編)」
HOSPITAL Review 2015年 8月 10 日 0040号
5/14
(1)取得と本人確認
①取得
従業員のマイナンバーは、2016(平成 28)年1月以降に行政機関等の個人番号利用事務実
施者(P9②、④参照)へ提出する書類に記載すべき時までに取得します。必ずしも 2016(平
成 28)年1月の番号制度利用開始に合わせて取得する必要はありませんが、2016(平成 28)
年1月に支給する給与の源泉徴収を甲欄で行うためには、支給前までに 2016(平成 28)年分
の扶養控除等申告書の提出を受ける必要があります。また、支払調書の作成において、報酬
を支払っている税理士などや地代家賃の支払先等においてもマイナンバーの確認が必要とな
ります。
社会保険関係や給与等の事務は、医療機関内でも事務や総務等で担当する業務ですが、従
業員に加えてその家族のマイナンバーも取得する場合があります。
②本人確認
マイナンバーを取得する際は、正しい番号であることの確認(番号確認)と、手続きを行
っている者が番号の正しい持ち主であることの確認(身元確認)が必要になります。(マイ
ナンバー法第 16条)その確認の方法は、原則として①個人番号カード(番号確認と身元確
認)、②通知カード(番号確認)と運転免許証又はパスポートなど(身元確認)、③個人番
号の記載された住民票の写し(住民票記載事項証明書)など(番号確認)と運転免許証又は
パスポートなど(身元確認)などいずれかの方法で確認する必要があります。本人に相違な
いことが明らかに判断できると個人番号利用事務実施者が認めるときは、身元確認を不要と
することも可能ですが、番号確認は必ず必要です。
※身元確認書類等
個人番号カード・運転免許証・パスポート・身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手
帳・療育手帳・特別永住者証明書・在留カード・官公署発行の書類で写真表示があるもの
など
※雇用関係に基づく身元確認
従業員本人とは一般に雇用関係にあり、通常は入職時に身元確認を行うことが想定され
るため、従業員に対しては「身元確認」のための書類を省略することが可能です。しかし、
個人番号関係事務実施者(P9③、⑤参照)として税理士や社会保険労務士等に委託し、そ
れらの者が身元確認を行う場合は「身元確認」のための書類が必要となります。
出典:内閣官房・内閣府特定個人情報保護委員会「マイナンバー 民間事業者の対応」
HOSPITAL Review 2015年 8月 10 日 0040号
6/14
③従業員の扶養親族のマイナンバーの取得と本人確認
従業員の扶養親族のマイナンバーを取得するときは、その扶養親族のマイナンバーの提供
が誰に義務づけされているかにより異なります。健康保険の扶養家族の届出や所得税の扶養
親族の届出は、従業員が個人番号関係事務実施者として、その扶養親族の本人確認を行うこ
とになり、医療機関は扶養親族の本人確認を行う必要はありません。
④本人確認等のやり方の具体例
・例1(従業員 ⇒ 医療機関)
『医療機関が従業員本人から直接提供を受ける場合』
・例:扶養控除等申告書の従業員のマイナンバー
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届の従業員のマイナンバー
雇用保険被保険者資格取得届の従業員のマイナンバー 等
※上記②の本人確認の方法による確認が必要です。但し、入職時などに既に身元
確認を行っている場合は、身元確認のための書類を省略出来ます。
・例2(扶養親族 ⇒ 従業員 ⇒ 医療機関)
『従業員に提出義務がある書類に、従業員が扶養親族のマイナンバーを記載し医療
機関に提出する場合』
・例:扶養控除等申告書の扶養親族等のマイナンバー
健康保険被扶養者届の被扶養者のマイナンバー 等
※従業員のマイナンバーの取得については上記例1と同じです。
扶養親族のマイナンバーの取得については、従業員がその扶養親族の本人確認
を行い、医療機関での本人確認は不要です。
・例3(配偶者 ⇒ 従業員 ⇒ 医療機関)
『配偶者のマイナンバーを従業員を通じて提供を受ける場合』
・例:国民年金第3号被保険者関係届 等
※従業員は配偶者の代理人などとなるため、①委任状等、②従業員の運転免許証
又はパスポート等、③配偶者の個人番号カード又は個人番号通知カードかマイナ
ンバーの記載された住民票の写し、この①②③の書類全ての確認が必要になりま
す。
・例4(従業員 ⇒ 行政機関)
『従業員が直接行政機関に提出する場合』
・例:健康保険高額療養費支給申請書 等
※医療機関は原則として取り扱えません。したがって取り扱わないこととするか、
または医療機関が従業員等の代理人となる等の対応が必要になります。
⑤従業員に個人番号の提供を拒否された場合
書類にマイナンバーを記載することは、法令で定められた義務であることを周知し、提
供を求めることになりますが、それでも提供を拒否された場合は、書類の提出先の機関の
指示に従うことになります。
HOSPITAL Review 2015年 8月 10 日 0040号
7/14
(2)マイナンバーの安全管理
マイナンバー法では、特定個人情報について厳格な保護措置を定めており、これらを具体的
に運用していくための指針として、特定個人情報保護委員会からガイドラインが公表されてい
ます。安全管理の詳細は、同ガイドラインの「(別添)特定個人情報に関する安全管理措置(事
業者編)」(http://www.ppc.go.jp/legal/policy/)にまとめられています。
【安全管理措置の内容】
事業者は、特定個人情報等の取扱うにあたり、(1)事務の範囲、(2)情報の範囲、(3)担当
者の範囲――を明確化した上で、次の①~⑥の「安全管理措置」を講じていきます。
①基本方針の策定(任意)
事業者の名称、関係法令・ガイドライン等の遵守、安全管理措置に関する事項、質問及
び苦情処理の窓口などを定めます。
②取扱規程等の策定(義務)
取扱規程等は、次に掲げる管理段階(取得、利用、保存、提供、削除・廃棄)ごとに、
取扱方法、責任者・事務取扱担当者及びその任務等について定めます。
特例として、中小規模事業者(従業員 100人以下)には規程等の策定義務はなく、特定
個人情報等の取扱い等を明確化し、事務取扱担当者が変更となった場合に確実な引継ぎを
行い、責任ある立場の者が確認することとされています。
③組織的安全管理措置(義務)
a安全管理措置を講ずるための組織体制を整備し、b取扱規程等に基づく運用状況を確
認するため、システムログ又は利用実績を記録し、c特定個人情報ファイルの取扱状況を
確認するための手段を整備し、d情報漏えい等の事案に対する体制を整備し、e特定個人
情報等の取扱状況を把握し、安全管理措置の評価、見直し及び改善に取り組むこととされ
ています。
中小規模事業者は、a責任者と事務取扱担当者を区別し、b取扱状況の分かる記録を保
存し、c事故時の連絡体制の事前確認をし、d責任者が特定個人情報の取扱状況について
定期的な点検を行うこととされています。
④人的安全管理措置(義務)
事業者は、a事務取扱担当者の監督を行うとともに、b事務取扱担当者の教育を行うこ
ととされています。
具体的には、特定個人情報等の取扱いに関する留意事項等について、従業員に定期的な
研修を行うことや、特定個人情報等についての秘密保持に関する事項を就業規則等に盛り
込むことなどが考えられます。
中小規模事業者に対する軽減措置はありません。
⑤物理的安全管理措置(義務)
事業者は、a特定個人情報等を取り扱う区域の管理(入退室管理、間仕切り、座席配置
など)を行い、b機器及び電子媒体等の盗難等の防止(施錠できるキャビネット等への保
管、セキュリティーワイヤーなど)を行い、c電子媒体や特定個人情報が記載された書類
等を持ち出す場合の漏えい等の防止(データの暗号化、パスワードによる保護、封緘、目
隠しシールなど)を行い、d個人番号の削除、危機及び電子媒体等の廃棄(焼却等の復元
不可能な廃棄方法、保存期間経過後の削除・廃棄手続きなど)を行うことにされています。
HOSPITAL Review 2015年 8月 10 日 0040号
8/14
中小規模事業者は削除・廃棄したことを、責任ある立場の者が確認することとされてい
ます。
⑥技術的安全管理措置(義務)
事業者は、aアクセス制御を行い、bアクセス者の識別と認証(ID、パスワードな
ど)を行い、c外部からの不正アクセス等の防止(ファイアウォール等の設置、ウイルス
対策ソフトなど)を行い、d情報漏えい等の防止(通信経路の暗号化、データの暗号化な
ど)を行うことにされています。
中小規模事業者は機器を特定し、取扱担当者を限定し、標準装備されているユーザーア
カウント制御を行うこととなっています。
(3)ITシステム
給与計算システムや人事管理システムを導入している医療機関においては、システムの改修
(個人番号の入力機能など)が必要になる場合もあると考えられますので、注意が必要です。
(4)院内ルール
前述の通り、マイナンバー法には、特定個人情報に関する厳格な保護措置が定められていま
す(法令違反行為に対して罰則あり)。情報漏えい等を防止するための安全管理対策を講じる
ため、就業規則上にも懲戒処分の対象となる義務違反行為を服務規律に規定し、従業員へマイ
ナンバーの概要や不適切な取扱いをしないよう教育を実施することが賢明だと思われます。ま
た、従業員から本人や扶養親族のマイナンバーを収集する必要があることから、予め提示すべ
き利用目的を就業規則に明記することで、「通知または公表」する方法があります。
【就業規則の例】※あくまでも参考例となりますので、専門家にご相談の上ご検討ください。
(採用時の提出書類及び個人情報の利用目的)
第〇条 選考試験に合格し、採用された者は、初出社の日までに、次の書類を提出しなければ
ならない。ただし、選考に際し提出済みの書類については、この限りではない。
(1)~(7)(略)
(8)個人番号カードまたは個人番号通知カード(写し※)
※ただし、対面で本人確認を行う場合は原本提示
(9)その他当院が必要と認め、提出を求めた書類
2(略)
3 第1項第8号で取得する個人番号の利用目的は、次の各号の目的のために利用することが
できる。
(1) 給与所得・退職所得の源泉徴収事務
(2) 健康保険・厚生年金保険届出・申請事務
(3) 雇用保険届出・申請事務
(4) 雇用関連の助成金申請事務
(服務規律)
第〇条
…
…
HOSPITAL Review 2015年 8月 10 日 0040号
9/14
15 従業員は、当院及び患者等に関する情報の管理に十分注意を払うとともに、自らの業務
に関係のない特定個人情報並びに個人情報を不当に取得してはならない。
16 従業員は、職務上知り得た特定個人情報並びに個人情報を、職務の範囲を超えて、院内
外を問わず他人に、提示・利用・提供してはならない。
17 従業員は、行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用に関する法律・
個人情報保護法やその政令・省令・ガイドライン等で定められた規定に従い、厳粛に特定個人
情報及び個人情報を取り扱うものとする。
(解雇事由)
第〇条 従業員が次のいずれかに該当する時は、解雇することがある。
10 当院の管理する従業員等の特定個人情報(個人番号を含む個人情報)を故意に、または
重大な過失により漏えい・流出させたとき。
※用語の説明
①マイナンバー法…行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律
②個人番号利用事務…行政機関、地方公共団体等が、その保有する特定個人情報ファイル(下
記⑥のデータベース)において個人情報を効率的に検索、管理するために必要な限度で個人
番号を利用して処理する事務(例、健康保険組合の実施する事務等)
③個人番号関係事務…法令・条例の規定により、個人番号利用事務に関して行われる他人の個
人番号を必要な限度で利用して行う事務(例、給与所得の源泉徴収票等)
④個人番号利用事務実施者…マイナンバーを使って、マイナンバー法別表第一や条例で定める
行政事務を処理する国の行政機関、地方公共団体、独立行政法人などのこと(主に税務署・
年金事務所・健康保険組合・ハローワークなど)
⑤個人番号関係事務実施者…法令や条例に基づき、個人番号利用事務実施者にマイナンバーを
記載した書面の提出などを行う者のこと(主に民間企業・税理士・社会保険労務士など)
⑥特定個人情報…マイナンバーやマイナンバーに対応する符号をその内容に含む個人情報のこ
と。マイナンバーに対応する符号とは、マイナンバーに対応し、マイナンバーに代わって用
いられる番号や記号などのことで、住民票コード以外のものをいう。
…
…
HOSPITAL Review 2015年 8月 10 日 0040号
10/14
<Ⅲ.医療分野におけるマイナンバーの活用>
医療等分野の個人情報は、病歴や服薬の履歴、健診の結果など、本人にとって機微性の高い情
報であり、公になった場合、個人の社会生活に大きな影響を与える可能性も想定されることから、
特に保護の必要性が高い情報です。一方、医療機関や介護事業者等の連携においては、その情報
連携の仕組みが必要だとされています。こうした医療等分野の個人情報を第三者に提供する場合
は、現在の個人情報保護法及び主務大臣が定めるガイドラインでは、本人の同意を得るとともに
目的外で使用されないよう個人情報保護の措置を講じる必要があるとされており、その点につい
ては、今後検討がなされるものと思われます。
また、医療等分野の情報連携の在り方については、個人情報の特性を踏まえるとともに、厳し
い財政状況と国民負担を考慮し、国民の納得が得られるような合理的な仕組みとする必要があり
ます。医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会では、医療等分野の情報化を推進す
る観点から、まずは、医療保険のオンライン資格確認のできるだけ早期の導入(番号制度の情報
連携が稼働する 2017(平成 29)年7月以降)を目指し、検討されています。
同検討会の中間まとめでは、医療分野での番号による情報連携が想定される利用場面として
「いずれの利用場面も医療機関等ではマイナンバーは用いない」とした上で、活用法を以下のよ
うにまとめています。
HOSPITAL Review 2015年 8月 10 日 0040号
14/14
出典:医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会「中間まとめ:参考資料」
(医療分野におけるマイナンバー活用についての成長戦略改訂版での記載)
2015(平成 27)年 6月 30日に閣議決定された成長戦略改訂版 2015では、医療分野の番号制度
の導入について「セキュリティーの徹底的な確保を図りつつ、マイナンバー制度のインフラを活
用し、医療等分野における番号制度を導入する」と記載されています。引き続き政府や検討会等
の動向に注目し、どのような影響があるかを事前に把握して頂くことが重要です。
(参考:マイナンバー制度関連ホームページ)
【国税庁】http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/index.htm
【厚労省】http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000063273.html
MMPG医療・福祉・介護経営研究所 病院経営研究室 研修生
税理士法人TMS 副所長 野代英幸