― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書...

34
法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成 23 年 3 月 社団法人岩手県建設業協会

Transcript of ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書...

Page 1: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

法令遵守及び建設業界改革のための報告書

― 建設業界の再生を目指して ―

平成 23 年 3 月

社団法人岩手県建設業協会

Page 2: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

昨年 3 月、公正取引委員会から、多数の県内建設業者に対し排除措置命令を主な内容とす

る審決が出されました。このような事態に至ったことについて、当該建設業者の多くを会員

として擁する(社)岩手県建設業協会としては、重く受け止めております。

申し上げるまでもなく、建設産業は地域の基幹産業として、技術の研鑽による良質な社会

資本の整備のほか、雇用の場の確保、地域経済の活性化や災害対策などの重要な役割を担う

ことが期待されているところであります。このような重要な役割を期待されているにもかか

わらず、今般、このような事態に至ったことは、多くの県民と県ご当局並びに関係機関の皆

様に不信と疑念を抱かせる極めて重大な不祥事であると存じ、深く反省しお詫び申し上げる

次第であります。 この報告書は、昨年 5 月に県へ提出した改善計画書に基づき、(社)岩手県建設業協会及び

会員が今後取り組むべき事項について、協会内部の議論を踏まえ、有識者の方々のご意見も

頂きながら、まとめたものです。報告書は 6 章からなり、業界の再生、健全な業界を実現す

るために業界、会員企業が取り組んでいかなければならない事項をまとめております。

まさに、業界、会員企業にとっての道しるべともいえるものであり、同時に県民の皆様や

県等公共事業発注者の皆様に対する約束でもあります。

業界といたしましては、健全な建設業を目指し、法令遵守・コンプライアンス精神の向上

のほか、良質な社会資本整備、災害対応という大きな社会的な役割を担っていくため、渾身

の力を振り絞って取り組んで参る所存であります。 さて、ご案内のとおり、建設産業は長引く不況や公共事業の削減とダンピング入札の横行

等により、収益が低迷し、企業倒産が相次ぐなど疲弊の極みにあります。このような状況が

続きますと、本来建設産業が担うべき役割と責任を果たすことが難しくなり、県民生活や産

業の基盤など社会資本整備にも支障が出てくるおそれがあります。

私ども建設業が、健全な産業として、期待される役割と責任をしっかりと果たしていける

ようにしていくためには、第 1 に法令遵守・コンプライアンス精神の向上と、企業の社会的

責任をしっかりと果たしていくこと、第 2 に良質な社会資本整備をきちんと成し遂げられる

体力を回復させることが重要であると考えております。本報告書ではこのような考えに沿っ

て、第 1 章から第 6 章まで、具体的な取り組み方等について記載しております。

業界の改革・再生は一朝一夕に成し得ることではありませんが、業界の総力を挙げて取り

組んで参ります。県民の皆様のご理解とご支援を切に念願する次第であります。 最後になりますが、ご多用中にもかかわらず本報告書作成に当たって懇切丁寧なご助言を

賜りました有識者会議委員の皆様に厚く御礼申し上げます。

平成 23 年 3 月 29 日

(社)岩手県建設業協会

会長 宇 部 貞 宏

は じ め に

Page 3: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

はじめに

第1章 談合問題の背景と基本的認識

第 1 節 これまでの事件について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

1 独禁法違反事件

2 山田町発注工事における刑法上の談合事件

第 2 節 談合問題の背景等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

1 歴史的・社会的背景等

2 談合の仕組み

第 3 節 談合に対する岩手県建設業協会の基本的認識 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

1 談合は犯罪行為である

2 談合をしないことが会社を守る

第 4 節 第 1 章のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 第2章 談合の再発防止策と企業倫理の確立

第 1 節 基本的な取組方針 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

第 2 節 経営者等の意識改革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

1 再発防止の決意

2 業界体質の改善

第 3 節 具体的な取組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

1 建設業協会の取組み

2 会員企業における取組み

3 今後の取組み

第 4 節 企業倫理の確立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

第 5 節 第 2 章のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

第3章 建設業の現状と課題

第 1 節 建設業の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

1 建設産業のシェア

2 建設業者数・建設投資の状況

3 経営状況

4 落札率の状況

5 建設業の諸課題

第 2 節 これからの建設業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

1 業界のあるべき姿

2 これからの建設業

3 地域社会や行政との連携

第 3 節 第 3 章のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ―

目 次

Page 4: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

第4章 業界の構造改善・経営改善

第 1 節 技術と経営に優れた企業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

1 技術向上(人材の確保・育成)

2 経営改善(経営基盤の強化)

第 2 節 企業(業界)再編 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

1 企業合併・連携等

2 新分野進出・新事業への取組み

第 3 節 第 4 章のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 第5章 地域社会との連携について

第 1 節 地域活動等の在り方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

第 2 節 これまでの取組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

1 地域活動

2 災害対応

第 3 節 これからの取組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

1 地域貢献事業

2 災害対応能力の向上

第 4 節 情報公開・情報発信 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

第 5 節 県民・発注者の信頼回復、イメージアップ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

第 6 節 第 5 章のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

第6章 行政との連携について

第 1 節 行政とのパートナーシップ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23

1 行政との連携強化

2 意思疎通の充実

3 公共工事における協業

4 業界の構造改善、災害対応等における連携・協働

第 2 節 入札制度について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

1 入札制度の概要

2 入札制度に関わる新しい動き

3 新しい入札制度の在り方

4 第三者を交えた、発注者と受注者の話し合いの場の必要性

第 3 節 第 6 章のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

■ 今後の法令遵守・業界改革に向けた(社)岩手県建設業協会の取組み ・・・・・・・・・・・ 29

■ 有識者会議・ワーキンググループ会議の開催状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

■ 有識者会議構成員等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

■ 引用資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

Page 5: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 1 -

第 1 節 これまでの事件について

岩手県内における談合事件は、この 10 年だけでも、大船渡地方振興局発注工事(平成

12 年)、花巻市(旧東和町)発注工事(平成 16 年)、大槌町発注工事(平成 19 年)及び

山田町発注工事(平成 22 年)に係る刑法上の談合事件並びに県営建築工事に係る独禁法

違反事件と、合せて 5 件発生している。

ここでは、県営工事に係る事件として独禁法違反事件、市町村工事に係る事件として山

田町の事件を対象に考えてみることにする。

独禁法違反事件については、形式としては業界側だけで完結している問題であるが、山

田町の事件では発注者である行政も絡んでいるもの(官製談合)である。

1 独禁法違反事件

本県の独禁法違反事件は、平成 22 年 3 月に審決が出された独禁法違反事件(資料 1「独

禁法違反事件審決の概要」)が最初であり、多くの県民に大きな衝撃と建設業界に対する不

信の念を抱かせることとなった。

岩手県建設業協会としては、この事件の重大性を踏まえ、法令遵守・再発防止や業界改

革並びに県民や発注者の信頼回復のため、平成 22 年 5 月県に対して改善計画書を提出し

た。

対象企業のうち、ほとんどの企業(72 社)は公正取引委員会からの排除措置命令に基づ

く必要な措置(受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめ

ている旨を確認することを取締役会等の業務執行の決定機関において決議すること等)を

講じている。なお、倒産企業を除く 6 社が審決の取り消しを求めて東京高等裁判所に訴訟

を提起している。

審決に伴う県の指名停止処分については、平成 22 年 9 月に終了したが当初懸念されて

いた、対象企業の倒産や従業員の大量解雇等の事態は何とか回避できたものである。

2 山田町発注工事における刑法上の談合事件

平成 22 年 8 月、山田町発注の土木工事に係る競売入札妨害(談合)の疑いで、町の元

課長と町内 7 建設業者の幹部ら計 8 人が県警に逮捕され、9 月には起訴された。7 業者の

うち 4 業者が建設業協会の会員である。

起訴状についての報道によれば、事件の内容は次のとおりである。

元課長は平成 21 年 9 月、町発注工事の設計価格を把握し、建設業者専務に価格を教え

た。同専務は他の 6 社に自社の予定入札価格を上回る価格で入札するよう依頼して、業者

7 社が談合した、というものである。また、他の報道では、元課長には予定価格を教える

見返りとして報酬が支払われていたという。

山田町内に限られた事件ではあるが、建設業協会としては改善計画書に基づき法令遵

守・再発防止のために種々取り組んでいる最中のことであり、大きな衝撃を受けた。談合

第1章 談合問題の背景と基本的認識

Page 6: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 2 -

問題の根の深さ、法令遵守・再発防止の困難性を思い知らされたところである。

当協会は、このような状況を受け、9 月理事会を開催し、会員の 4 業者に対し約 11 か月

の会員資格停止処分を行った。今後一層法令遵守・再発防止のための取組みを強化し、県

民や発注者の信頼回復に向けて努力していく必要がある。

第 2 節 談合問題の背景等

1 歴史的・社会的背景等

かつて農村社会(むら)で行われてきた結い(ゆい)の制度にも似た、共存・協調・競

争しないということが美徳とされたこともあった。現在においても協会会員の中には談合

を必要悪、ないしは商売をして生きていくためにはなくてはならない仕組みであると考え

ている事業者がまだまだいると思われる。実際、居直りではなく、談合の何が悪いのかが

理解できていない事業者もいる。また、協会が談合根絶に取り組むことに対し、半信半疑

の会員もいる。

このような談合に対する意識は歴史的・社会的な背景の中で根付いてきたものであり、

桐蔭横浜大学コンプライアンス研究センターの談合構造解消対策研究報告書(以下「大学

レポート」と略す)では、談合について次のようにまとめられている。(資料 2「談合の背

景・再発防止」)

(1) 談合構造の要因

① 入札・契約制度がこれまで、大きな問題が生じることがなかったのは、制度と実態

とのギャップを「非公式システム」としての談合システムが埋めていたからである。

② 談合システムの下、受注予定者決定の話し合いを通して、工事の質の管理が機能し

てきた。現行の入札制度では調達の質が落札に反映されないので、ダンピング受注を

行なって粗悪な工事を行なう業者が出てくる危険性が大きい。これを防止する上で、

業者間の話し合いによる悪質不良業者の排除機能は非常に大きな効果をもっていた。

③ 高度経済成長期とその後の社会資本整備の活発化の中で膨大な量の公共工事発注を、

過不足のない予算執行、工事の年度内完工、会計検査への無難な対応といった「無謬

性」を維持しつつ行なう必要があった。このため、契約後の設計図書変更を竣工時に

一括して行なったり、施工の監理形態を敢えて不確定なものとしたりすることで、各

場面への柔軟な対応を可能にする契約実務が、それなりに合理的だと考えられていた。

④ 建設労働市場に存在してきた労働賃金の不確定性、受注量確保の要請と相俟って発

生していた受注者側にとっての経営上のリスク、そして発注者側にとっても不良工事

発生というリスクが、最低限に抑えられていた。

(2) 談合構造の弊害(公共事業の非効率性)

談合を、単純に受注価格を引き上げて業者側に利益をもたらすものと見るのは誤りで

あるが、少なくとも受注者間で競争が機能していないことによって、公共事業の非効率

性が温存されていることは否定し難い。現在の国及び地方公共団体の財政状況に照らし

Page 7: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 3 -

ても、「談合システム」を解消し公正な競争を機能させることによって、関連業界の大幅

な効率化を実現する必要がある。

(3) 談合の根絶

談合は、旧来の日本経済社会全体、そして公共調達をめぐる制度的枠組みの中で生じ

た一つの「構造」と見ることができる。談合をなくすためには、入札制度の見直し、補

完的制度の実現、法律上の制裁・処罰の適切な運用が必要である。戦後の経済復興・高

度成長という時代においては、談合は形式的には違法であったが、実質的な違法性は限

りなく無に等しかった。

2 談合の仕組み

(1) 過当競争

最近の談合の背景には、公共事業の受注における過当競争が加わり、建設事業者は生

き残りをかけて談合を繰り返してきたという側面がある。

県内の建設需要全体及び国・県・市町村等の公共事業はピーク時の半分以下に減少し

ており、うち県の公共事業は 26%までに落ち込んでいる。一方建設事業者は 9 割と約 1

割の減少にとどまっており、建設需要と業者数が極端にアンバランス(過剰供給構造)

な状態になっている。

また、過当競争は、行き過ぎた低入札の常態化をもたらしているが、その根底には、

「資金繰りに困って」、「受注実績が欲しくて」、「仕事がなく、従業員を遊ばせておけな

いから」等の切実な原因がある。

(2) 談合の態様

談合の態様は様々であるが、独禁法違反事件の審決その他を見ると、概ね次のように

まとめることができる。

①受注価格の低落防止と、②仕事の分け合い(ワークシェアもしくは受注機会の均等

化)を目的として、関係者間で競争を回避する合意の下に、受注予定者と受注価格を決

定し、受注予定者が受注できるように協力すること(受注調整行為)である。

談合が違法とされながら、長く続けてきたのは、「談合の社会的構造」(大学レポート)

にもよるが、業界サイドにおいては、『競争や経営努力をしなくて済む』という安易な惰

性にも似た思惑、さらには「ローリスクハイリターン」(同上)という仕組みの中に「う

まみ」を享受してきたから、続けてきたというのが実態であると考えられる。

また、企業が単独でこの談合システムから抜ける場合に予定される制裁を恐れて留ま

ってきたともいえる。さらに、談合をしないことにより、悪質な業者や資金繰りに困っ

た業者がダンピング入札をするのではないかという警戒感からシステムを破棄できない

ままでいたとも考えられる。

第 3 節 談合に対する岩手県建設業協会の基本的認識

Page 8: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 4 -

1 談合は犯罪行為である

公正な競争により適正な市場価格が決定されるという原則に立つ現代社会において談合

は悪とされ、独占禁止法に違反する場合は犯罪行為となることを認識すべきである。決し

て必要悪などではない。このため業界を挙げて談合をなくすための最大限の努力が求めら

れている。

外国の企業の参入や国・地方の財政悪化により、公共事業の在り方や国民の意識が大き

く変わってきた。これまでの護送船団方式ではやっていかれないことを認識すべきであり、

この新しい時代に合った生き方をしていかなくてはならない。

独禁法違反事件について、当事件は審決対象事業者の問題であって自分達には関係ない

と思っている事業者も多い。当事件に限らず、これまでの談合事件等を業界全体の問題、

全ての企業に共通する問題として、真摯に反省し、談合の根絶・再発防止の決意をする必

要がある。

2 談合をしないことが会社を守る

政府や地方行政機関の財政逼迫が国民の生活やその安定を阻害し、国民の税金の無駄遣

いに対する反発はますます強まっている。独禁法の違反に対する罰則は年々厳しくなって

おり、この趨勢は変わらないものと考えられる。法令違反によって入札参加資格制限、多

額の罰金・賠償金・課徴金が課せられ会社倒産のリスクを負うことを強く認識しなければ

ならない。法令を遵守し、談合をしない、させないということは、会社と業界を守ること

である。

第 4 節 第 1 章のまとめ

戦後の経済復興・高度成長の時代においては、業者間の話し合いは業者の受注量の確保

と相まって不適格業者の排除機能や不良工事発生のリスクの軽減という効果を有していた。

談合が、社会的構造の中で生み出されてきたとしても、時代は大きく変わってきており、

これまで本県建設業が談合事件に関わってきたということが正当化されるわけではない。

公正な競争により適正な市場価格が決められる現在のシステムにおいて、談合は根絶す

べき「悪」であり、再発防止に取り組んでいかなければならない。

Page 9: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 5 -

第 1 節 基本的な取組方針

談合問題について、当協会としては、まず自らの襟を正し、改善計画書に基づいて、で

きるところから着実に再発防止策を講じていくこととする。談合問題は、歴史的社会的背

景を持っており、個々の企業を超えた問題であるとの考えも根強いが、業界を構成する個々

の企業の取組みがコンプライアンス向上の基本となるべきである。関係法令の遵守・企業

倫理の高揚に努めるとともに、企業・業界の在り方を抜本的に改め、県民の信頼回復に向

けて、渾身の努力を重ねていくこととする。

建設業界は、公共事業の削減や利益率の低下による、どん底の疲弊状態にあり、加えて

談合事件により、県民から不審の眼を向けられるなど未曽有の危機的状況にある。このた

め、全ての企業、業界をあげて、一致団結してこの難局に立ち向かい、乗り越えていかな

ければならない。

第 2 節 経営者等の意識改革

1 再発防止の決意

談合を根絶させるためには、反省や再発防止の決意や意志を一過性のものではなく継続

的なものとすることが必要である。また、業界の商慣習・仕組み・考え方(体質・意識)

を変えていく必要がある。これをどのようにして、普及・定着させていくか、が大きな課

題であるが、これについての特効薬はなく、談合をしにくくする仕組みづくりや、研修・

講習、さらには日々の業務等の遂行の中で地道に取り組んでいくしかないと考えられる。

また、平成 17 年の公正取引委員会勧告の後において、協会として再発防止策を講じて

きたにもかかわらず、大槌町や今回の山田町のような談合事件を防止できなかったことを

重く受け止める必要がある。これらのことは、協会の反省や再発防止策だけでなく、会員

一人ひとりが反省し、談合をしないという強い決意をしない限り、根絶させることは難し

い、ということを示しているものと考えられる。このためにも全会員が再発防止策の樹立、

遂行のために積極的に議論・討議に参加し、真摯な議論を通じて意識を変えていくべきで

ある。

談合についての議論は、一般県民の眼も意識しながら行うべきである。業界が考えてい

る以上に、県民の目は厳しい。業界としての甘えはないか、厳しく自問しながら議論すべ

きである。

談合のない業界にしていくためには、ただ単に「法令違反をしない」というだけでは不

十分であり、個々の企業の業務の進め方を変えていく必要がある。また、どうやって守る

のか、どうすれば守れるのかが日常のシステムとして決まっていて、それを実践している

ことが企業の内部ばかりでなく、外から見えるようになっていることが必要である。

2 業界体質の改善

閉鎖的、古い体質と言われる業界の土壌が、談合を生む素地となっていると言われる。

第2章 談合の再発防止策と企業倫理の確立

Page 10: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 6 -

また、入札参加資格者の等級区分ごとに公共工事の発注標準金額が定められているなど

建設業は他産業に比べ競争の機会が少なく、また等級区分の中で「守られている」状況に

置かれてきた。こうした状況の中で、経営者もコスト管理など近代的な経営センスを身に

つけていく機会に恵まれてこなかった。このような業界の体質を変えていくためには、協

会及び会員が情報公開を積極的に行うとともに、会員企業の経営者自らが、近代的な経営、

マネジメントの手法を身につけることによって、業界全体として、適正な競争のもとで仕

事を受注していける仕組み・ルールを築いていくことが必要である。極めて困難な命題で

あるが、一歩一歩着実に取り組んでいく必要がある。

第 3 節 具体的な取組み

1 建設業協会の取組み

(1) 協会の指導体制の確立

協会内組織として設置している「建設業倫理向上対策特別委員会」を活用し継続的に

法令遵守・再発防止のための企画立案や会員への指導を行っていくこととする。

この特別委員会は、平成 17 年に公正取引委員会から排除勧告が出された際に、再発

防止対応等のために設置されたものであるが、今後は独禁法違反に限らず、業界全体の

談合根絶のための組織として機能させることとする。

再発防止・業界改革の取組みに関し、協会の本部・支部の役員は率先して取り組み、

会員に対して範を示すものとする。

(2) 行動憲章の改訂

会員事業者や社員の行動指針として、業界の目指すべき方向性を明らかにし、普段の

業務遂行に役立たせていくこととする。

(3) ポスター等の作成

法令遵守のためのポスターを新たに作成し、全ての社員の目に触れ法令遵守の意識が

末端まで浸透するよう、本社・現場事務所に掲示することとする。また、ワッペンやシ

ールなどの活用も検討するものとする。

(4) 三法遵守必携の作成(改訂)

現行法令に沿った最新の内容とするとともに、経営トップのほか営業・事務・施工現

場の社員にとって、より使い勝手の良いものにしていく。

(5) 研修会・講習会の実施

昨年 6 月から、建設業協会及び岩手県建設産業団体連合会として、本部、各地区等に

おいて法令遵守のための研修会を開催しているほか、支部単位でも研修会・講習会を開

催している。

今後も、毎年継続的に研修会・講習会を開催し、コンプライアンスの向上に努めてい

Page 11: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 7 -

くものとする

(6) 組織内の討議

談合問題については、理事会、常任理事会、建設業倫理向上対策特別委員会で議論検

討しているほか、各支部等においても討議を行った。

全ての会員企業の問題として談合問題を認識し再発防止に取り組むため、昨年 8 月か

ら、各支部、青年部及び女性マネジングスタッフ協議会において、法令遵守・再発防止

のための討議を行っており、少しずつではあるが浸透しつつある。

(7) 会員への周知

改善計画書に定める取組みについては、協会ホームページに専用のページを設けて掲

載するなどにより、会員企業への周知・情報共有を図り、法令遵守の意識の浸透を図る。

掲載内容は、①有識者会議・ワーキンググループ会議の開催状況、②倫理向上対策特

別委員会の開催状況、③法令遵守等研修会の開催状況、④県等の指導通知などとする。

(8) 有識者会議・ワーキンググループ会議の開催

2 会員企業における取組み

(1) コンプライアンスマニュアルの作成・委員会の設置等

コンプライアンスマニュアルの作成やコンプライアンス委員会及び相談・通報窓口の

設置のほか法令遵守等研修会の受講や企業内における研修会の開催などにより、法令遵

守・再発防止に努めていくこととする。

マニュアル作成に当たっては、県の県土整備部建設技術振興課から示されている「平

成 23・24 年度県営建設工事競争入札参加資格審査におけるコンプライアンスの取組み

に係る加点評価について」に十分留意するものとする。

(2) 普段からの法令遵守の徹底

各企業においては行動憲章に基づき、協会が作成するポスター、三法遵守必携などを

活用して日常の業務の中で法令遵守について社員に徹底する。

(3) コンプライアンスの取組みに関する留意事項

① 社長の意識・発言が重要であり、先頭に立って取り組む姿勢を示す。

② コンプライアンスを担当する部署を設置し、会社のトップが直接、情報を把握する

体制とする。

③ 社内でできるところから行う。

3 今後の取組み

建設大手の大林組においては、度重なる刑法・独禁法上の談合事件を受けて、法令遵守・

Page 12: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 8 -

コンプライアンスの確立に向けて、独禁法遵守プログラムなど具体的な取組みを行い、ホ

ームページ上に公開している。

県内企業とは会社規模が異なり、そのまま当てはめるのは難しいが、プログラムは徹底

した取組みになっており、当業界としても参考とすべき点が多々ある。(資料 3「独占禁止

法遵守プログラム」(株)大林組)

また、内部通報機能を協会が担うこと及びコンプライアンス確立のための取組みを実効

あらしめるための PDCA サイクルの実施等について、今後十分に検討していく必要がある。

第 4 節 企業倫理の確立

法令遵守を実践するには、遵法精神だけでは不十分であり、三法(独禁法、刑法、建設

業法)を含め、労基法や労働安全衛生法など全ての関係法令を守ることで社会をよくする、

地域の役に立つ、あるいは住民福祉の向上に寄与するという意識が求められる。

また、改めて言及するまでもないが、本来の仕事を誠実に遂行することによって、顧客

を満足させ、顧客から感謝され信頼されるとともに、技術を磨き、品質を高め、コストを

下げ、期限を守る、環境への配慮、社員の労働条件・安全確保等環境の整備などの課題に

対応するように日々の努力を重ねることが大切である。

企業は、株主ばかりでなく顧客、従業員、取引相手、地域住民といった利害関係者の利

益を実現することが求められ、経営者は企業をこうした社会的存在として運営していく責

任(経営者の社会的責任)を負っている。

様々な社会のニーズを価値創造に結び付け、企業と社会の相乗的発展を図ることにより、

企業の社会的責任(CSR)を果たしていく必要がある。

第 5 節 第 2 章のまとめ

協会としては、県民の信頼を回復するため法令遵守・企業倫理の高揚に努めるとともに、

企業・業界の在り方を抜本的に改めていくこととする。

コンプライアンス確立には、業界の全てを挙げて取り組むこととするが、基本的には経

営者の意識改革と各企業の取組みが中心になるものである。

協会は、会員企業の取組みの浸透・定着を図るため、リーダーシップをとって各種の取

組みを進める。

今後の課題として、会員企業の取組みを支援し、業界全体のレベルアップをを図るため、

協会が内部通報機能を担うことや、PDCA サイクルによる推進を行っていくことについて

検討していく。

Page 13: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 9 -

第 1 節 建設業の現状

ここ数年、建設投資額の激減、低入札の恒常化により、企業の利益率が大幅に低下(マ

イナス)しており、企業倒産が相次ぐなど、厳しい経営状況が続いている。

1 建設産業のシェア

県産業に占めるシェアは低下傾向にあるが、就業者で 9.6%、生産額で 6.0%を占める。

○ 就業者(平成 19 年度就業構造基本調査)

67,700 人 県全体 702,700 人の 9.6%

○ 生産額(平成 20 年度県民経済計算(速報))

2,599 億円 県全体 4 兆 3,642 億円の 6.0%

2 建設業者数・建設投資の状況

平成21年度の建設業許可業者数は、ピークであった平成12年度(5,112事業者)の89.6%

の 4,580 事業者となっている。また、県営建設工事競争入札参加資格業者のうち、県内の

主要 2 業種「土木」、「建築一式」は 1,417 社となっている。

一方、平成 20 年度の公共事業等県内建設投資額は、ピークであった平成 8 年度の 1 兆

863 億円の 49.7%、5,403 億円に激減している。建設投資額の減少に比べ事業者数の減少

が緩やかで、事業者数の過剰傾向が過当競争を生む一因となっている。建設需要と業者数

の極端なアンバランス(過剰供給構造)を解消するなど、産業構造の改革(企業再編)を

進めていく必要がある。

全国的に業界は過剰供給構造となっているが、東北 6 県の建設業許可業者数、県営建設

工事入札参加資格者数、県営建設工事発注工事数・工事額を比較してみると、本県におい

ては、許可業者数は最も少なく、資格者 1 者当たりの土木・建築併せての発注件数・額が

最も多くなっている。

このことから東北 6 県の中では、本県業界が相対的には業者数が少なく、「受注競争が

激しくなっているわけでもないのに本節 4 に後述するように落札率が最も低くなってい

る」ということが分かる。(資料 4「東北 6 県建設業許可業者数等の状況」)

3 経営状況

企業の過半が赤字経営で、業界全体の疲弊が進んでいる。

各企業は賃金の切り下げ、機械等資産の売却など経費の節減・合理化、新規分野への進

出などに努めているものの、成功している例は少ない。ほとんどマイナス方向の我慢比べ

の状況になっている。企業の技術力の低下、技術革新への取組意欲の消失など、取り返し

のきかない悪化の一途を辿っている。

東日本建設業保証(株)の調査(東日本 23 都県対象)によると、本県建設業の総資本経常

利益率・売上高経常利益率ともマイナスで、最下位グループに属しており、この傾向はこ

第3章 建設業の現状と課題

Page 14: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 10 -

こ数年変わっていない。23 都県の総資本経常利益率や売上高経常利益率の平均はマイナス

となっており、特にも東北地方の収益性が悪化している。利益率と公共事業落札率はほぼ

相関関係にある。

一方、東京都や神奈川県のように落札率がさほど高くないにもかかわらず、利益率がプ

ラスもしくはマイナス幅が小さいところもある。これは大都市地域の民間建設規模が巨大

で、公共事業への依存度が低いことによるものと考えられる。逆に本県のような民間建設

需要の小さな地域では、公共事業落札率の低さは建設業経営に重大な影響を与えるものと

考えられる。(資料 5「都県別売上高経常利益率及び落札率」)

4 落札率の状況

(1) 落札率の状況

全国 47 都道府県工事の落札率を見ると、平成 21 年度の本県の落札率は 82.4%で、45

位となっている。全国平均は 89.4%で 25 道県が 90%を上回っている。

全国の落札率の推移をみると、これまで一貫して低下を続けてきたものが平成 19・20

年度を底にして上昇に転じている。これは各県が制度改正により落札率を引き上げ始め

たことによるものと考えられる。平成 22 年度における本県の状況は、落札率の低下に

歯止めがかかっていないとみられることから、年度全体でも昨年度を下回り、3 年連続

で東北最下位となる公算が強い。(参考資料 7「県発注工事の落札率の推移」)

県内の市町村においても発注者が標準的な価格として定めた予定価格を大幅に下回る

低入札が恒常化している。その結果、予定価格に近い価格での落札が不自然な入札価格

とみなされ、公正な価格=低入札の価格、公正でない価格=予定価格に近い価格、とい

う誤った風潮が一部に醸成されている。

(2) 建設工事コストの状況

当協会が平成 21 年度に行った「岩手県建設工事コスト調査」によると、調査対象の

県発注工事 126 件の平均落札率は 83.4%であるが、黒字工事が 36 件(28%)、赤字工

事が 90 件(72%)となっており、大半の工事が赤字となっている。

工事の採算ライン(損益分岐点)は、平均で 90.3%となっているが、実際の落札率は

これを大きく下回っている。

(3) 公共工事における適正な価格

公共事業は貴重な税金で賄われていることから、できるだけ安価な価格で実施するこ

とが要請されるものである。建設業においても、経営の効率化を図りコスト削減をして

いく必要があるが、建設工事は受注生産であること、天候や工事場所の地形・地質・周

辺の地理的状況に大きく影響を受けることなど、物品調達などと同じようには論じられ

ない面がある。また、公共工事は国民の生命等にも関わる社会基盤を対象としているこ

とから、完成時ばかりでなく、安全性や耐久性等将来にわたる維持管理等も含めて総合

的に良質・安価であることが求められる。

Page 15: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 11 -

全国の落札率の状況やコスト調査結果などを勘案すると、適正な利益が確保できる落

札率の最低ラインは 90%前後にあるものと考えられる。

5 建設業の諸問題

(1) 人材の確保・育成、技術・技能承継の困難化

企業が持続的な発展をしていくためには投資が必要であるが、現在のマイナスの利益

率の下では、投資ができない。

投資の最たるものが人的投資であり、多くの企業が若い職員を採用・育成することが

できないでいることから、職員の高齢化が進み、団塊世代がリタイヤしつつある中で、

技術や技能の継承ができないでいる。

現在の経営は資産や人材の使い切り状態になっている。

(2) 技術力・工事品質低下の懸念

激しい低価格競争のもと、企業は如何にして低価格で工事を完成させるかに意を注ぎ

がちであり、工事そのものの品質低下が懸念される。

また、このような状態が続くことにより、技術革新や品質向上への取組意欲を喪失す

ることにより、技術力等が衰退していくおそれも出てくる。

今後、県内の道路や橋など社会資本の老朽化が進み、複雑で高度な技術・技能を要す

る維持修繕の工事が増えてくることが予想される。地域建設業の疲弊は、建設業の存続

の問題に止まらず、地域の社会資本整備体制の根幹にかかわる問題となってくることが

懸念される。

(3) 災害・除雪対応等の困難化

経営の逼迫化によって、災害や除雪対応の資機材を売却したり、機材の専門オペレー

ターの雇用を維持できなくなってきており、一部の地域においては災害や除雪への対応

が困難になるおそれが出てきている。

(4) その他の影響

① 下請・資材等関連業者への波及・しわ寄せ

② 地域経済が疲弊する悪循環

③ 地域雇用の不安定化・縮小化、優秀な人材の県外流出

④ 安全対策の劣悪化の懸念

第 2 節 これからの建設業

1 業界のあるべき姿

業界・企業が究極的に目指す姿は、県民に対して胸の張れるようなレベルの高いものと

すべきである。

岩手県建設業界のあるべき姿としてのイメージは次のとおりである。

Page 16: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 12 -

(1) コンプライアンスの優れた業界

独禁法・刑法・建設業法ばかりでなく、労基法・労働安全衛生法など法令遵守の模範

的な産業になっている。談合は根絶されている。

(2) 健全な経営、適正な競争が行われている業界

真面目で誠意のある企業は、経営者のリーダーシップの下、役職員が一丸となって高

品質の工事を効率的に行うため努力を積み重ねている。総合評価方式をはじめ各種の取

組み等によって、企業の努力・業績が評価され、ダンピング入札はなく、適正な利益が

確保されている。しっかりとしたコスト管理と生産性の向上が図られ、盤石な財務体質

が確保されている。

(3) 人材育成・技術力の向上がなされている業界

人材の確保・育成がなされ、技術・技能の継承や、新技術・新工法の研究・導入も熱

心に行われている。

(4) 適正な元請下請関係が維持されている業界

元請業者と下請業者における契約締結及び代金支払が適正になされ、企業間の連携が

円滑に行われている。

(5) 環境への配慮がなされている業界

工事に伴って発生する建設廃材等の産業廃棄物について、処理に関する体制が整備さ

れ、環境に配慮した業務遂行が行われている。

(6) 全ての産業の中でも安全な業界

死亡事故はもちろん、負傷事故もわずかで、全ての産業の中でも安全な産業であると

広く評価されている。

(7) 県民の尊敬・信頼を得ている業界

県民の安心・安全・快適のための社会資本整備の担い手として、県民の絶大な尊敬と

信頼を得ている。

(8) 誇りと生きがいの持てる魅力的な業界

適正な利益が上がり、労働者の賃金・福利厚生等労働条件が確保されており、若い人

が従事したいと願う産業になっている。

(9) 地域になくてはならない業界

災害対応や除雪のほか、ソフト・ハードの地域づくりの代表的一員として、社会貢献

がなされ、地域になくてはならない産業・企業になっている。

Page 17: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 13 -

2 これからの建設業

(1) 建設業の役割

建設業は、地域の住民生活や産業活動を支える、社会基盤の整備・維持管理を担う基

幹産業であり、災害に当たっては、被害情報の収集や応急・復旧対策の最前線に立って

地域住民の生命と財産を守るという重要な任務を担っている。また、冬期においては除

雪によって、住民の足の確保を行っている。

このように、建設業とその業務は地域の生活や産業を支える、地域密着性の強いもの

であり、地域においてリアルタイムで活動することが不可欠である。また、建設業は産

業として、地域雇用の確保や安定に貢献することが期待されている。

(2) これからの建設業

建設業界は長引く不況や公共事業の削減等により疲弊しており、期待される役割をこ

れまでのように果たしていくことが困難となりつつある。建設業が今後、その役割を十

分果たしていくためには、その活動に必要な体力・活力を回復させていくことが重要で

ある。

① 建設産業の構造改善

企業合併、異業種への進出等を促進することにより、業者数を削減し供給過剰とな

っている産業構造を改善し、持続的に発展していくことが求められている。また、今

後の建設産業を担っていくにふさわしい企業として、技術と経営に優れた企業が成長

して行くことが期待される。

一方では、建設業法等の法令違反や、ダンピング入札を繰り返したりする企業は淘

汰されていくこともやむを得ないものと考えられる。また、技術と経営に優れた企業

やそれを目指して努力する企業が成長して行くために、入札参加資格や入札契約制度

などの環境が整備されていくべきである。

② 経営改善

建設企業は、技術と経営における競争を生き抜き、成長していくために自ら相当の

経営努力をしていかなければならない。公共工事への依存度合を低減させていくとと

もに、コスト管理、施工管理、情報管理など近代的経営により、適正な利益を確保し

ていく必要がある。

③ 地域建設業の維持

道路・河川等の維持管理には、災害時等における緊急の応急・復旧対応など、対応

に際しては、地域の地理的・社会的特性への十分な配慮とともに、迅速性・スピード

が求められるものである。広大な面積を有する本県においては特に、地域ごとに整備・

維持に当たる事業者が存在していることが必要である。

このためには、地域事情に精通した地域建設業が地域の建設工事を担い、経営を維

持できるような環境を整備していく必要がある。

④ 魅力ある産業への脱皮

県民の信頼を回復し、従業員が仕事に誇りと生きがいを持って働ける産業にしてい

Page 18: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 14 -

くために、建設産業を魅力あるものへと変革していく必要がある。

このためには、法令遵守とコンプライアンスの確立を図り、若い従業員の確保育成

を通じて技術とノウハウの継承を進めていくとともに、地域の基幹産業としてこれま

で以上に社会貢献など企業の社会的責任を果たしていく必要がある。

3 地域社会や行政との連携

建設業が地域や行政から期待される役割を十分に果たしていくためには、地域や行政と

の意思疎通を密にし、業界の実情や地域活動の状況を理解してもらうとともに、業界とし

ても地域や行政のニーズを的確に把握し、より効果のある取組みとしていく必要がある。

今後地域との連携を強化することにより、地域活動としての社会貢献や地域づくりにお

いて、地域と行政との橋渡しの役割を担うことや、地域住民の地域づくりへの参加意欲の

増進につなげていくことなどが期待される。また、行政との関係においては、社会資本整

備における品質向上に向けた、建設生産システムの円滑な運用や、災害時の迅速・的確な

対応などに大きな効果が期待できるものと考えられる。

第 3 節 第 3 章のまとめ

建設業は、社会資本整備など大きな役割を担う、地域にとってなくてはならない産業で

あるが、公共投資の急激な削減のため、経営が悪化し本来の役割を果たしていくことが困

難になる恐れがある。経営の悪化や業界の疲弊の背景には、業界の過剰供給構造による過

当競争と、低入札の恒常化による収益性の低下がある。

社会資本整備等をしっかりと担っていくためには、技術と経営に優れた企業が成長し、

業界全体の活力を回復していくことが求められる。

今後は、構造改善や経営改善など業界の自助努力とともに、地域社会との連携や行政と

のパートナーシップの強化を図っていく。

Page 19: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 15 -

第 1 節 技術と経営に優れた企業

1 技術向上(人材の確保・育成)

建設生産は、屋外・単品・受注生産であり、事業ごとに異なる施工条件・施工内容等の

中で、優れた技術者・技能者がその技術力や技能をいかに発揮できるかによって、生産の

成否が大きく左右される。このように建設産業は「人」で成り立つ産業であり、建設産業

を支える優秀な人材の確保・育成は、建設産業が継続的に発展し、魅力ある産業になって

いく上で不可欠なものである。

人口減少・少子高齢化が今後進行していく中、若年就業者の確保のほか、今後大量に退

職期を迎える団塊の世代の再雇用や女性の建設産業への進出の促進などに取り組む必要が

ある。また、IT 化の進展や技術開発の促進に資する標準化等の取組みを通じ、生産性の向

上を図っていくことが必要である。

① 人材の確保・育成、処遇の改善

技術者・技能者の処遇の改善、技術や技能の向上・承継、専門高校等と連携した将

来の人材の育成強化等

② IT 等の技術開発の推進

電子化によるネットワーク力の向上、新技術活用システムによる新技術情報の収集

と共有化

2 経営改善(経営基盤の強化)

(1) 経営改善の趣旨

近代的経営に基づき経営基盤の強化を図るとともに適正な競争を生き抜き、業界全体

の構造改善に資していくこととする。

経営改善は、本来談合問題とは別の問題であるが、経営がしっかりしていなければ、

談合やその他の違法行為の誘惑に負けやすくなるという意味で、談合防止のためにも必

要なものである。協会としては、これまで以上に積極的に会員企業の経営改善への取組

みを支援していくこととする。

(2) 経営管理

経営改善において取り組む項目は、「経営管理」、「財務管理」、「職場管理」、「受注管理」、

「施工管理」、「法務管理」、「情報管理」、「経営戦略」など多岐にわたるが、経営改善の

ツールを、(財)建設業振興基金の「建設業経営確認チェックリスト」によって整理する

と、次のとおりである。(資料 7「経営改善のポイント」)

協会としては、これに基づき、会員企業の支援をしていく。

① 経営事項審査への対策

評点アップ方法、ランク維持対策、経営戦略とリンクしたランク変更対策

評点シミュレーション・他社比較のための個別コンサルティング

第4章 業界の構造改善・経営改善

Page 20: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 16 -

② 総合評価制度への対応強化

総合評価方式対応の講習会、エリア単位での地域企業の競争力を強化するための個

別企業対策

③ 企業の原価管理の講習会等

現場管理者の原価管理講習の強化、工事のコストダウン対策(施工計画、資材調達

管理、外注管理、工期短縮、管理者の処遇改善など)

経営コスト削減(人員の適正化、人件費コスト削減、資金調達の円滑化など)

財務改善(固定費削減、借入金圧縮、キャッシュフロー改善(在庫・債権管理)、増

資の検討など)

第 2 節 企業(業界)再編

過剰供給構造の改善を進めるには、技術と経営における適正な競争とともに、企業合併、

異分野進出などの促進が必要である。

異分野進出、合併の促進に当たっては、協会が専門家を活用しこれまで以上に積極的に

取り組んでいく。合併等の促進には、制度上のインセンティブ(動機付け)なども必要で

あり、今後は、行政との連携を一層強化し、行政と業界が共通認識を持ちつつ、中長期的

視点に立って政策遂行に当たる必要がある。

1 企業合併・連携等

(1) 現状

企業合併・連携については、これまでも協会として経常 JV への奨励金などの措置、

協会経営支援センターが主催する経営革新講座等で本テーマを取り上げたが、企業合併

等に至るケースは少なかった。想定する企業再編の形態が画一的で、それへの支援メニ

ューも限定的であったこと、合併そのものの実態が明らかでなかったことなどが原因で

あると考えられる。

しかし、近年建設業を取り巻く事業環境が一層厳しくなる中で企業としての生き残り

や円滑な事業縮小・撤退を図るため、他社との合併はもとより企業グループ内での事業

の分離結合を含む多様な形態の事業再編の可能性を検討する企業が増えてきているもの

とみられる。

(2) 支援方法

以上の状況を踏まえ、合併・連携の形態と方法を再整理するとともに、合併・連携に

係る主要課題である、①資産(負債)の処理、②再編後の組織形態、③インセンティブ

(動機づけ)としての、合併・連携企業に係る経営事項審査の運用等の改善などを検討

し、改めて本県業界の実態にマッチした企業合併・連携の支援策・促進策の導入を図る

必要がある。

このほか合併機運の醸成と合併促進を図るため次のような対策を講じることとする。

① 具体的な成功事例や多様な合併・連携のあり方などをテーマとした、研修会の開催

Page 21: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 17 -

② 金融機関と連携した検討の場の設定

③ 合併・連携の可能性の高い企業グループの発掘、専門家を起用した個別(秘密)調

査の実施

④ モデルケースとなる合併・連携事例に対する、弁護士・企業再編ファンドなどの専

門家によるマッチング・フォロー及びこれらへの費用支援(負債処理の担保検討を含

む)

(3) 企業連携事例の調査研究

企業連携を促進するため、道路等の維持修繕・除雪などへの対応について、先進地の

事例を学びながら、協同組合の活用、協会支部の関わり方について調査研究を進める。

2 新分野進出・新事業への取組み

(1) 現状

本県建設業の新分野・新事業への取組みを見ると、事例は相当数に上っているものの、

本業を補填するだけのまとまった事業規模(売上規模)を確保している例はほとんどな

い状況である。

これは、地方における新分野の市場規模が小さく、本業の売上減を補填できる規模の

事業を見つけることが困難であること、リスク防止(回避)のために適正規模を守ると

小規模事業の組み合わせにならざるを得ないことなどの理由によるとみられる。

ただし、新分野・新事業を広義の経営革新の一分野として、本業強化を核とした企業

戦略の中に位置付けた上で、厳しい事業環境に対応した適正な資本分割、経営多角化と

して取り組んでいる事例は少なくない。

(2) 新分野進出等の位置づけ

本県における新分野・新事業の位置づけとしては次のとおりとすることが適当である

と考えられる。

① 本業の経営革新への取組みを大前提として、経営革新のための選択肢の一つとして

新分野・新事業への取組みを促進する。

② これまで本業によって蓄積してきた経営資源を新しい事業環境の中で最も可能性の

高い分野に適正に再配分(投入)するための事業戦略として、新分野・新事業を位置

づける。

③ 建設企業がこれまで果たしてきた経済活性化や雇用確保の役割を維持するため、住

民ニーズに応えることができる新しい事業分野への進出を図る。

(3) 新分野進出等のポイント

新分野・新事業の形態は、案件によって全く事情が異なるため、一般的に規定するこ

とは難しいが、本県の市場環境を考慮すれば、新分野進出や新事業の取組みに当たって

の重要なポイントとしては、次のようなことが挙げられる。

Page 22: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 18 -

① 新分野・新事業の、経営全体の事業戦略への位置づけ

② 売上規模と収支バランスのチェックによる適正投資

③ 段階的な事業実施(パイロット事業→本格参入→拡大・共同化等の追求)

④ 出口(=販路)の先行的な確保

(4) 対象分野・進出形態

① 兼業農家が多く一定の事業基盤がある農林水産分野

農業のほか、今後地球環境対策として進展が期待されている林業との路網整備等に

おける協働

② 既存建物・施設・店舗等の再生工事を伴う運営・管理

環境対策・高齢者対策としてのリフォームなど

③ 農林水産物等の付加価値化や流通の分野など

④ 専門技術・資本力・ネットワークを生かした公共的セクターとの民間共同事業

指定管理者を含む施設整備など

⑤ 従業員・地域コミュニティの事業化への参画・支援など

高齢者等への食材・弁当の宅配等のコミュニティビジネス、ニュービジネスなど

第 3 節 第 4 章のまとめ

過剰供給構造の改善を進め過当競争を是正するためには、各企業の経営改善努力や、技

術と経営における適正な競争とともに、企業合併、異分野進出など業界全体の構造改善の

推進が必要である。

異分野進出、合併の促進に当たっては、協会がリーダーシップを発揮して積極的に取り

組んでいくが、合併等の促進には、制度上のインセンティブ(動機づけ)なども必要であ

り、今後は、行政との連携を一層強化して行く。

Page 23: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 19 -

第 1 節 地域活動等の在り方

建設業は、産業の特性上、地域社会や行政と密接な関係にあり、その役割を十分に果た

し、地域づくりのパートナーとして信頼を得ていくためには、これまで以上に連携を強化

し、地域活動等を充実していく必要がある。

このためには、これまでの地域活動などを、協働、交流など、より相互交流的なものへ

進化させることや、社会教育や地域福祉(児童・高齢者等)、さらには防災の観点等から、

地域の声として行政に働きかけるなどして、活動の幅をより広くしていくことが期待され

る。また、近年注目されている「新たな公」としての役割を担うべく、限定された個別の

活動にとどまることなく、新しい地域づくりの核として地域と住民をまとめ、地域の運動

を盛り上げていくことなども検討すべき課題である。

第 2 節 これまでの取組み

協会の社会貢献活動については、これまで支部や青年部等が中心となって行ってきた。

ふれあい事業・子ども 110 番や道の日クリーン作戦などの活動は地域に定着してきており、

一定の成果を上げてきたものと考えられる。

1 地域活動

(1) 建設業ふれあい事業

子どもたちとの体験学習、勤労奉仕などを通して「建設業にふれあう」機会を設ける

ことにより、建設業に対する理解と関心を深めてもらうことを目的としている。平成 2

年から、学校環境整備等(グランド・テニスコート整備、砂場づくり、校庭内樹木剪定

等)、小中学校児童生徒の体験学習(建設機械乗車、測量、CAD、木工作等)などを行

ってきた。

(2) 子ども 110 番事業(安全・安心まちづくり促進活動)

岩手県警察本部と「地域の子ども達を犯罪等から守る防犯活動」に関する覚書を締結

している。子どもをはじめとする社会的弱者を狙った犯罪が多発している状況から、地

域の安全に関する活動の推進により、犯罪等の未然防止に努め、県民が安全で安心して

暮らせる地域づくりの実現を目指すことを目的に、平成 18 年から、のぼりやステッカ

ーを活用しながら防犯パトロールなどを行ってきた。

(3) 道の日クリーン作戦

各支部が振興局等と連携し、「道路ふれあい月間」事業の一環として、道路を利用して

いる国民に改めて道路とふれあい、道路の役割及び重要性を再認識してもらい、さらに

は道路をいつくしむという道路愛護活動の推進及び道路の正しい利用の啓発を図り、道

路を常に広く、美しく、安全に利用する機運を高めることを目的に、道路清掃を行って

第5章 地域社会との連携について

Page 24: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 20 -

きた。

2 災害対応

(1) 行政との災害協定の締結

当協会が岩手県と、また当協会が属する東北建設業協会連合会が国土交通省東北地方

整備局との間で災害時における応急対策業務に関する協定を締結し、被災情報の収集及

び連絡、障害物除去用の重機・資機材等の調達、応急復旧工事の実施について、協力す

ることとしている。

(2) 災害等への対応

地域建設業は、災害のたびにいち早く現地に赴き、災害情報の収集、応急・復旧対策

などに対応してきた。

平成 20 年 6 月に発生した岩手宮城内陸地震においては、協会一関支部は地震発生直

後から、道路・河川のパトロールを実施して被害状況を把握し、国道 342 号線の土砂・

倒木等の撤去作業を実施したほか、応急復旧作業に不可欠な重機搬入路の整備に率先し

て取り組み、土石流による二次災害を未然に防ぐことができた。

第 3 節 これからの取組み

1 地域貢献事業

これまでの取組みを、一層進化させながら、引き続き推進する。今後は、地域に根差し

た産業の特性を生かして、地域振興・地域おこしの観点から、社会資本整備にとどまらず、

地域コミュニティの活性化や高齢者サポートなどソフト面での地域づくりに参加していく

べきである。

また、地域づくりや地域おこしに取り組む地域住民のために、社会資本整備・都市計画

事業の担い手としての経験を活かしたアドバイスなどを積極的に行うなど、地域と行政の

橋渡しの役割を担っていくことが期待される。

以上の活動を推進するに当たっては、平成 20 年に国土形成計画で提案され、近年注目

されている、地域住民、NPO、企業等の多様な主体(「新たな公」)が担う、新しい公共的

価値を含む各種サービスの領域(「新しい公共」)の考え方や動向等にも十分留意しながら

進めるものとする。

2 災害対応能力の向上

将来、発生が確実に予想される宮城県沖地震や、異常気象に伴う土砂災害等に迅速・的

確に対応するため、業界としての災害対応能力を向上させていく必要がある。

(1) 緊急時の事業継続計画(BCP)の策定・普及

災害に対する建設業の役割として、地域住民の生命と財産を守り、安全で快適な社会

の創造に寄与することはもとより、災害が発生した場合には、いち早く現場に駆けつけ、

Page 25: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 21 -

迅速に応急復旧を行うことやライフライン等の復旧を通じ住民生活を取り戻す働きが求

められている。

こうした災害時における建設業の社会的使命を果たすためには、建設企業自らが継続

して事業活動ができる体制になければならない。そのためには、平常時から行うべき対

策と災害時に取るべき手段・方法を計画として定め、これを積極的に実践・見直しを行

っていくことが必要となる。

建設企業にとって「災害時事業継続計画」は、企業の被害を最小限に抑えるとともに、

事業の中断期間をできる限り短縮するために必要となるだけではなく、地域社会から求

められる応急復旧や二次災害の防止などの活動を迅速に行うためにも重要なものである。

災害時事業継続計画を策定し、マネジメントサイクルとして企業に定着することは一

朝一夕にできることではないが、企業の課題を冷静に分析・検討し、地道に改善を繰り

返しながら一歩一歩前進していく必要がある。

協会としては、以上の考え方に基づき、最終的には BCP を協会本部・支部、全会員

企業が作成することを目指し、現在 13 支部の代表企業(14 企業)によるモデル的 BCP

の作成を進めているところである。

(2) 防災資源の情報共有・広域体制の構築検討

災害への迅速・的確な対応のためには、地域における災害対応資源の円滑な活用が不

可欠であるが、地域全体で企業個々が保有する災害対応資源を一元的に把握している地

域が少ない。

このため、会員企業の災害対応資源を把握し、情報の一元化及び行政との情報共有を

図るため、支部単位で災害対応資源のデータベースを整備し、活用マネジメントの構築

を進めるとともに、データベースの定期的な更新を行う。

これにより、各支部での災害対策支援活動をより迅速・効果的なものとしていく。

(3) 新たな危機への対応について

自然災害ばかりでなく、平成 22 年 6 月宮崎県内で起きた口蹄疫問題、平成 23 年 1 月

の鳥インフルエンザ問題などへの備えも早急に取り組むべき課題である。

第 4 節 情報公開・情報発信

当協会の情報公開・情報発信のツールとしては、ホームページ、イントラネット、ブロ

グのほか、毎月の機関誌(建設時報)の発行等がなされ、東北他県の協会その他の類似団

体と同等かそれ以上のメニューが揃っている。今後ツイッターなどの導入の可能性につい

ても検討していくこととする。

財務諸表・事業計画・事業報告などの、情報公開すべき対象範囲を「公益法人の設立許

可及び指導監督基準(平成 8 年閣議決定)」に基づき拡大・充実していくことや、協会の

考え方をアピールする方法の工夫、情報の鮮度の保持なども課題である。

また、会議の公開についても検討を進めるとともに、各会員企業においても協会の例に

Page 26: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 22 -

倣い情報公開・情報発信に取り組むことを促進する。

第 5 節 県民・発注者の信頼回復、イメージアップ

建設業は、社会資本整備や災害対応等に努めているが、建設業に対する一般県民の評価

は決して高くない。

建設業や建設業の仕事に関する、建設業者と一般県民の意識には大きなギャップがある。

これは、近年とみに高まっている「公共事業批判」だけによるものではないと考えられる。

建設業界は、ここ 10 年間に、談合事件等法令違反を繰り返してきており、これらの事

件によって、業界が遵法精神に欠け、不当な利益を上げてきたというイメージが定着し、

業界に対する評価を低下させているのではないかと思われる。

県民・発注者の信頼回復には、事件に対する反省や再発防止策、業界改革の姿勢のほか、

社会資本整備や地域活動の状況などについてより一層情報公開・情報発信を行い、業界の

真の姿を見てもらい、より深く理解してもらうことが必要である。

(社)全国建設業協会においても、今年度、建設産業の取組みや役割について国民・社会

から正しく理解され、建設業・公共事業に対する正しい理解を得るため、新たな広報活動

のあり方等について調査研究を行うとともに、ホームページ等を活用し建設業のイメージ

アップ活動に積極的に取り組むこととしている。この動向も注視しながら当協会の広報活

動等のレベルアップに取り組んでいくこととする。

情報発信として、これまでの機関紙の発行に加え、手軽に読める一般向けのパンフレッ

トの作成や、テレビコマーシャルなども含めた新しい広報活動のあり方について検討して

いくこととする。

情報の発信は、協会本部ばかりでなく、各支部単位でも地域の特性を踏まえながら積極

的に行っていくこととする。

第 6 節 第 5 章のまとめ

建設業が地域における役割を十分に果たし、地域づくりのパートナーとして信頼を得て

いくためには、これまで以上に地域との連携を強化し、地域活動や災害対応などを充実し

ていく必要がある。

建設業に対するマイナスのイメージを払拭し、一般県民に建設業の実態をより深く理解

していただくため、情報公開や情報発信に努めていくこととする。

Page 27: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 23 -

第 1 節 行政とのパートナーシップ

1 行政との連携強化

社会資本整備を担う行政と建設業界とはもともとパートナーとして建設生産システムを

円滑に機能させるため密接に連携する必要があるが、十分な意思疎通が図られていない面

があったことは残念なことである。このことの背景には談合事件があると考えられ、業界

としても十分反省する必要がある。

このたび独禁法違反事件の審決が出て、県の指名停止処分がなされ、業界としても改善

計画書に基づき総力を挙げて再発防止、業界改革に取り組むこととしていることなどから、

今一度原点に立ち返り、行政との連携の在り方、連携強化の方法を探っていく時期にある

ものと考えられる。

2 意思疎通の充実

意思疎通などを図るため、種々の取組みがなされているが、事務レベルも含め随時の意

見交換等の場の設定など、より一層連携を強化していく必要があるものと考えられる。

(1) 地域懇談会

毎年、県内 13 地区(協会支部単位)で地域懇談会が開催され、県側・業界側から県

施策や業界の取組みについて情報提供がなされ、種々の意見交換がなされている。懇談

会には、県側から業界指導及び入札担当の部局、業界側から支部役員、青年部及び女性

マネジングスタッフ連絡協議会役員が出席している。貴重な機会であり、業界としても

より一層効果の上がる形にするため、この懇談会の持ち方について、建設的な提言をし

ていく必要がある。

(2) 建設業対策中期戦略プランの見直し

平成 18 年から 22 年までの 5 カ年計画の戦略プランの見直しのため、県・有識者・業

界が一同に会し、見直しに関して討議を行っている。業界の実情が的確に反映されるよ

う、十分な意見交換がなされることが期待される。

3 公共工事における協業

建設生産(公共工事)は、企画・設計・施工・維持管理の各過程から構成されており、

その生産物は発注者・設計者・建設業者・資材業者等による協業により作られている。こ

のように、建設生産物は多くの主体の参画によって生産されるものであり、その各主体が

情報を共有し、摺り合わせを行っていくことにより、最高の価値を最終利用者(公共工事

にあっては県民)に提供することが可能となるものである。

近年、関係者間の役割・責任分担の明確化により、建設生産システムの川上から川下ま

でに存在する片務性を是正し、各当事者が対等な関係に立ち、新しいパートナーシップに

第6章 行政との連携について

Page 28: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 24 -

基礎を置いた合理的な建設生産システムを構築していくことが求められている。

4 業界の構造改善、災害対応等における連携・協働

(1) 業界の構造改善

業界の構造改善、特にも企業合併、異分野進出などを促進する上で、入札参加資格や

融資など制度上のインセンティブ(動機づけ)の付与が効果的であり、この面での連携

を図る必要がある。

(2) 災害対応

岩手宮城内陸地震における地域建設業の活動のほか、平成 22 年 4 月宮崎県内で起こ

った口蹄疫問題においては、地域建設業が殺処分された約 30 万頭に及ぶ家畜の埋却作

業を行い、被害の拡大を最小限に止めることができた。作業は、感染防止のため移動が

制限されることから、当該地域の建設業者だけで行なったものであり、地域建設業の存

在なくしては成しえなかったことである。

改めて地域建設業の役割が再認識されたものである。

災害時における初動、災害対策本部等の運営に際して、平常時から防災訓練等におい

て行政との意思疎通を密にし、有事の際に行き違い等の無いよう努める必要がある。ま

た、行政からの要請に十二分に応えられるよう、協会支部の防災資源等に関する情報共

有や体制の整備に関し、行政との情報共有に万全を期す必要がある。

(3) 除雪対応

冬期における除雪を効率的・効果的に行うため、国・県・市町村と連携を密にし、支

部単位等で効率的な除雪方法などを提言していく必要がある。

第 2 節 入札制度について

1 入札制度の概要

全国的には、平成 17 年から 18 年にかけて、知事等トップが絡む談合問題が起こり、大

きな政治・社会問題となった。平成 18 年 12 月全国知事会は「官製談合等公共調達に係る

不正の根絶宣言」、及び公共調達に関するプロジェクトチームによる「都道府県の公共調達

改革に関する指針(緊急報告)」を発表した。これ以降、堰を切ったように全国的に「公正

性」、「競争性」、「透明性」に基づく入札制度改革が行われ、指名競争入札から条件付一般

競争入札へ移行した。

本県でも、これまで、大船渡地方振興局発注工事、花巻市(旧東和町)発注工事、県営

建築工事における独禁法違反事件、大槌町発注工事、山田町発注工事の談合事件が起きて

おり、そのつど県・市町村において入札制度等の改革が行われてきた。

本県入札契約制度は、メニュー全体としては概ね国・他県と同様のものになっており、

一部メニュー(総合評価方式・入札ボンド制)にあっては全国的にも先進的な取組みとな

っている。一方ではほとんどの県で導入している最低制限価格制度がないこと、その代わ

Page 29: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 25 -

りあまり例のない失格基準価格制度を有していることが大きな特色となっている。

本県の入札制度に関わる以下の 3 点について述べる。

(1) 最低制限価格制度

最低制限価格制度は全国の 41 県(87.2%)で導入しており、岩手県を含む 6 県だけ

が導入していない。これを東北 6 県で見ても本県と宮城県以外の 4 県は最低制限価格制

度を有しており、平均落札率も本県と宮城県が他の 4 県に比べ低くなっている。(資料 8

「東北各県の入札制度」)

国においては各都道府県に対し、適正な最低制限価格を設定するなどの要請を行って

いる。(国土交通省 平成 21 年 5 月)

最低制限価格制度は、それ以下の価格を一律に失格にさせるため、ダンピング対策と

して効果は直接的でかつ強力であるという点にメリットがある。低入札価格調査との比

較では、受発注者双方への事務負担も軽い。しかし、入札価格が最低制限価格ラインに

張り付き、籤(くじ)運だけに依存すること、最低制限価格を予測するだけの競争にな

るなど競争の歪みが生ずること、といったデメリットもある。(資料 9「入札諸制度のメ

リット・デメリット」)

(2) 失格基準価格制度

本制度は、他県の最低制限価格制度に相当するものであり、失格となる価格が入札者

の札の状況により、そのつど変動することから、発注者も含めて事前に推測することが

難しく、官製談合等を防止するうえでは大きなメリットがある。

しかし、過当競争が常態化し、低入札傾向が続いている状況下では、落札価格の下落

傾向に歯止めをかけることについてはほとんど効果がなく、むしろ低価格の入札を助長

しかねない性質をもっている。

(3) 予定価格の事前公表

本県では平成 16 年 11 月から設計額 1 億円以上の条件付一般競争入札の予定価格を試

行として、平成 17 年 9 月からは本格施行として全ての工事について事前公表している。

予定価格の事前公表はもともと、全国各地で入札情報漏えい事件が相次ぎ入札業務の

公正性への信頼が損なわれたことを踏まえ、入札の透明性の確保とともに予定価格情報

の漏えいに関わるリスクを解消(発注者側への不正な働きかけを排除)するために行わ

れているものである。

これまで、全国的に予定価格の事前公表を行っている県が圧倒的に多かったが、最近

の調査(平成 22 年 6 月)によると、事前公表のみを行っている県が 21 団体(平成 20

年 9 月時点は 32 団体)、事後公表のみを行っている県が 12 団体(同 8 団体)、事前と事

後の併用(試行を含む)を行っている団体が 14 団体(同 7 団体)となっており、何ら

かの形で事後公表を行っている県の数が 26 団体と、半数を超えるに至っている。

すでに全国の流れは、事後公表に移りつつあるものと考えられる。

Page 30: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 26 -

本来、工事入札への応札は、入念な現地確認なども行って、十分な積算に基づいて行

うべきものである。予定価格の事前公表により、一部の積算能力を持ち合わせない業者

が採算を度外視した低価格での応札を繰り返し、他の業者まで低入札競争に巻き込んで

いる状況となっている。なお、予定価格の事前公表については、国(総務省、国土交通

省 平成 20 年 12 月、平成 21 年 4 月)からも、取りやめ等について各県知事あて要請

されている。

2 入札制度に関わる新しい動き

入札制度に関し、ここ数年の間にいくつかの自治体において、これまでにない新しい動

きが出てきており、制度の検討に当たっては、このような動きにも十分配慮する必要があ

るものと考えられる。新しい動きの根底には、行き過ぎた低入札が建設業ばかりでなく地

域の経済社会全体に深刻な影響をもたらしていることについて、重大な危機感とともに、

これを断固阻止・排除するとの強い決意や姿勢がみられる。

(1) 山形県

平成 20 年 7 月、山形県は公共調達に関し、山形県公共調達基本条例を制定し、公共

工事を担う健全な建設業者の育成は県民経済の発展に重要であることを踏まえ、入札契

約制度は、建設業者等の技術のほか、その法令遵守状況、建設工事に従事する者の安全

衛生及び福利厚生に対する取組み並びに地域における社会貢献活動についても、適切に

評価し、当該評価を入札及び契約の過程において適切に反映するように配慮したもので

なければならない、旨の基本理念を掲げた。

(2) 千葉県野田市

平成 21 年 9 月、千葉県野田市は、地方公共団体の入札が低入札価格の問題によって、

下請の事業者や業務に従事する労働者にしわ寄せされ、労働者の賃金の低下を招く状況

になってきていることに鑑み、野田市公契約条例を制定し、受注者等は労働者に対し市

長が定める賃金を支払わなければならない旨の規定を定めた。

3 新しい入札制度の在り方

現在の入札制度は、その目的が談合などの不正の防止にあることはこれまでの制度の改

善の経過を見れば明らかであるが、一方で安定した社会基盤整備が行われ、地域づくりが

着実に持続していくためには、技術と経営に優れた地域の企業の育成が不可欠であり、価

格のみによらない総合的な入札制度の充実が望まれる。

低入札を繰り返す企業や技術力・経営に不安のある企業は不適格とするような的確な企

業評価や過度な低入札を阻止するための制度的な歯止めを検討する必要性が存在する。現

在の入札制度は、立っている基盤が談合など不正の防止にあり、この点では成功している

ものと考えられる。実際のところ、平成 19 年以降は原則として一般競争入札によること

とされたことから、低入札が恒常化しており、談合が入り込む余地はほとんどなくなった

Page 31: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 27 -

ものと考えられる。

一方では、建設業界の疲弊は極限状態にあり、地域経済も破綻の瀬戸際まで来ている。

単に市場に任せるだけでは、地域が必要とする建設企業の存続を図ることが困難となって

いると考えられる。入札制度を不正防止の観点ばかりでなく、産業育成、地域の維持発展

という観点も踏まえ見直す時期にあるものと考えられる。

4 第三者を交えた、発注者と受注者の話し合いの場の必要性

入札制度を単に買い手と売り手の関係から論ずる立場もあるが、住民の生活基盤である

社会資本整備を消耗品や備品を購入するような観点で論ずるのはいささか狭小な見方であ

り適当ではない。これからの社会資本整備の在り方、建設産業の社会的役割を考えると、

買い手と売り手という対立的な関係ではなく、むしろ連携・協調ということが必要になっ

てくるものと考えられる。

現在においても、地域懇談会において県が業界の話を聞く機会はつくられているが、地

域単位に限定され、どちらかというと双方からの一方通行的な話になりがちであり、より

建設的な話にしていくためには、中立的な立場の有識者を交え、双方向の話し合いがなさ

れるような場を作る必要があると考えられる。

第 3 節 第 6 章のまとめ

社会資本整備を担う行政と建設業界とは、パートナーとして建設生産システムを円滑に

機能させるため密接に連携する必要がある。災害・除雪対応や、業界の過剰供給構造の是

正について一層連携を強化し、県民の安心・安全の確保や過当競争の解消に努めていく必

要がある。

入札制度についても、より良いものにしていくため、全国の動向等を踏まえ、第三者を

交えた行政と業界の話し合いの場を設ける必要がある。

(完)

Page 32: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 28 -

Page 33: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 29 -

(社)岩手県建設業協会は、今後法令遵守・建設業界改革に向けた取組みを、本報告書に基

づき以下のとおり行って参ります。

1 報告書の徹底・普及

報告書を各支部や関連の建設産業界に通知し徹底するほか、県に報告するとともに協会

ホームページに掲載します。

報告書の普及版として概要(要約)のパンフレットを作成・配布し、業界の取組みを内

外に情報発信します。

2 法令遵守・コンプライアンス精神の向上(第 2 章関係)

協会は、リーダーシップを発揮して、県民の信頼を回復するため法令遵守・企業倫理の

向上に努めるとともに、企業・業界の在り方を抜本的に改めていきます。

(1) 指導体制の確立

本部・支部役員のリーダーシップ・率先垂範

(2) 行動憲章・三法遵守必携の改訂及びポスター等の作成並びに活用

(3) 研修会・講習会の実施

(4) 周知・情報共有

(5) 内部通報機能の設置

業界内外からの談合等不正行為に係る通報・相談窓口の設置

(6) PDCA サイクルによる取組みの推進

年間計画の策定及び取組状況の点検・検証

(7) 会員の取組み支援

職員研修、コンプライアンスマニュアルの作成、従業員の相談・通報窓口の設置など

への取組み支援

3 業界の構造改善・経営改善(第 4 章関係)

過剰供給構造の改善を進め、過当競争を是正していくためには、会員企業の経営改善努

力のほか、技術と経営における適正な競争や、企業合併、異分野進出など業界全体の構造

改善が必要であり、協会は積極的にこれを推進して参ります。

(1) 経営の近代化支援

業界の構造改善・企業の経営改善についての、具体的な取組み方法・支援方法の検討

及び経営支援センター事業の充実

(社)中小企業診断協会岩手県支部との提携による経営改善支援

企業連携の具体的な在り方としての協同組合方式に係る全国先進事例の研究

(2) 企業合併・連携支援

(3) 新分野進出・新事業支援

■ 今後の法令遵守・業界改革に向けた(社)岩手県建設業協会の取組み

Page 34: ― 建設業界の再生を目指して...法令遵守及び建設業界改革のための報告書 ― 建設業界の再生を目指して ― 平成23年3月 社団法人岩手県建設業協会

- 30 -

4 地域社会との連携強化(第 5 章関係)

協会は、建設業が地域における役割を十分に果たし、地域づくりのパートナーとして信

頼を回復していくため、地域との連携を強化し地域活動を充実していくとともに、情報公

開や情報発信に努めていきます。

(1) 地域活動の先進事例研究

(2) 緊急時の事業継続計画(BCP)の策定支援・普及

(3) 防災資源の情報共有・広域体制の構築

(4) 新たな危機への対応研究

(5) 情報公開・情報発信・イメージアップ

情報公開・広報の在り方検討

5 行政との連携強化(第 6 章関係)

社会資本整備を担う行政と建設業界は、パートナーとして建設生産システムを円滑に機

能させるため密接に連携する必要があり、業界としては、これまでの談合事件を反省・総

括し、原点に立ち返って連携強化の方策を探って参ります。

(1) 意思疎通の充実

(2) 合理的な建設生産システムの構築

(3) 業界構造改善へのインセンティブの検討

(4) 災害対応の連携強化

(5) 第三者を交えた、発注者と受注者の話し合い

入札制度の抜本的な見直しに向けた、県との意見交換の場の設定

6 有識者会議、ワーキンググループについて

有識者会議、ワーキンググループを平成 23 年度も継続設置し、有識者会議には法令遵

守・業界改革に関する取組状況を報告し、アドバイスをいただきます。

ワーキンググループには、今後の法令遵守・業界改革についての具体的な進め方や進捗

状況について検討していただきます。