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712 活性炭吸着培養法によるB群 溶連菌保菌妊婦の検出 (レンサ球菌感染症研究会:会長 保科 清) 東京逓信病 院小児科 保科 小林 真澄 東京女子医大第二病院小児科 (平成5年11月12日 受付) (平成5年12月28日 受理) Key words: adsorbed charcoal culture, group B streptococci (GBS), GBS carrier, GBS infection 新 生 児 期 のB群 溶 連 菌(GBS)感 染 症 を 予 防 す る た め に は,妊 婦保菌者を検出しなければならない . 検 出 方 法 は,よ り簡 便 で 検 出 率 の 高 い 方 法 を 検 討 し て い た が,妊 婦 検 診 の 際 に 採 取 さ れ る 尿 を 用 い て, 尿 中 の 細 菌 を 活 性 炭 に 吸 着 さ せ る こ とを 考 え た.活 性 炭 に 吸 着 さ せ て 保 存 した 場 合,101CFU/mlの 菌量 が4℃ か ら42℃ の 温 度 設 定 で,7日 間 保 存 可 能 で あ った .実 際の臨床例で尿沈渣培養 との比較を行 った と こ ろ,活 性 炭 吸 着 培 養 で の 検 出 率 は26.2%,尿 沈 渣 培 養 で の 検 出 率 は20.1%で あった . 妊 婦 のGBS保 菌 者 検 出 に は,活 性 炭 吸 着 培 養 が 簡 便 で 検 出 率 も 高 く,有 用 で あ る こ と が わ か っ た. 新 生 児 期 の細 菌 感 染 症 の原 因 と し て,最 も頻度 が 高 い の はB群 溶 連 菌(GBS)に よ る感 染 症 で あ る.新 生 児GBS感 染症の発症要因 として,妊 婦が 産 道 にGBSを 保 菌 してい るか ど うかが 問題 に な る.妊 婦 産 道 にGBSの 保 菌 の有 無 を検 討 す る た め に は,一 般 的 に腟 培 養 が 実 施 され るが,部 位と して 腟 に 保 菌 し て い る こ と は少 な い こ と が 報 告1) され て い る.腟 培養では綿棒による擦過部位や擦 過 方 法 に よ り陽 性 率 に差 が あ り,保 菌 者 の 正 確 な 把 握 は 困 難 で あ る. 腟 培 養 に代 わ る方 法 と して,尿 沈 渣 の培 養 が 使 え る可 能 性 を報 告2)した.尿 沈 渣 の培 養 も,実 際 に 行 うときの検体輸送 などに問題があるため,保 妊婦の検出方法 として活性炭に尿中の菌を吸着 さ せ て か ら輸 送 す る方 法 を 検 討 した の で,基 礎的実 験結果 と臨床的な保菌者検出結果を報告す る. 材料 と方 法 1. 材料 基礎的検討のために,東 京女子医大母子総合医 療 セ ン タ ー,浜 田病 院,東 京女子医大第二病院, 東京逓信病院の産婦人科を受診 している妊婦につ い て,妊 娠週数を特定せずに,あ る1日 に来院 し た 妊 婦 総 数138例 の 一 般 尿 検 査 の 尿 を 検 体 と し て 収集 した. 臨 床 的検 討 のた め に,平 成4年4月 よ り平成5 年8.月12日 まで の 間 に,葛 飾赤十字産院を受診 し て い て検 査 を 希 望 し た 妊 娠26週 前 後 の 妊 婦700例 に つ い て,一 般 尿 検 査 時 の尿 を検 体 と して 使 っ た. 2. 培 養 の 基 礎 的検 討 基礎的検討を開始する前に,(1)尿 中の細菌を 実際に活性炭に吸着させ ることで,菌 を保存でき る か ど うか 検 討 した.(2)次 の 段 階 で,対 象 の基 礎的検討に記載 した検体について3種 の培養法に よ り比較 した. 別 刷 請 求 先:(〒102)東 京 都 千 代 田 区 富 士 見2 -14-23 東京逓信病院小児科 保科 感染症学雑誌 第68巻 第5号

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712

活性炭吸着培養法によるB群 溶連菌保菌妊婦の検出

(レンサ球菌感染症研究会:会 長 保科 清)

東京逓信病院小児科

保 科 清 小 林 真澄

東京女子医大第二病院小児科

鈴 木 葉 子

(平成5年11月12日受付)

(平成5年12月28日受理)

Key words: adsorbed charcoal culture, group B streptococci (GBS),

GBS carrier, GBS infection

要 旨

新 生児期 のB群 溶連菌(GBS)感 染 症 を予防 す るため に は,妊 婦 保菌 者 を検 出 しな ければ な らな い.

検 出方 法 は,よ り簡 便 で検 出率 の高 い方法 を検 討 して いたが,妊 婦 検診 の際 に採 取 され る尿 を用 いて,

尿 中 の細菌 を活 性炭 に 吸着 させ る こ とを考 えた.活 性炭 に吸着 させて保 存 した場 合,101CFU/mlの 菌量

が4℃ か ら42℃ の温 度設 定で,7日 間保 存可 能 であ った.実 際 の臨 床例 で尿 沈渣 培養 との比較 を行 った

ところ,活 性炭 吸着培 養 での検 出率 は26.2%,尿 沈渣 培養 で の検 出率 は20.1%で あ った.

妊婦 のGBS保 菌者 検 出に は,活 性炭 吸着培 養 が簡便 で検 出率 も高 く,有 用 で あ る ことがわ か った.

序 文

新生児期の細菌感染症の原因として,最 も頻度

が高いのはB群 溶連菌(GBS)に よる感染症であ

る.新 生児GBS感 染症の発症要因 として,妊 婦が

産道にGBSを 保菌 しているかど うかが問題 にな

る.妊 婦産道にGBSの 保菌の有無を検討するた

めには,一 般的に腟培養が実施 されるが,部 位 と

して腟に保菌 していることは少ないことが報告1)

されている.腟 培養では綿棒による擦過部位や擦

過方法により陽性率に差があ り,保 菌者の正確な

把握は困難である.

腟培養に代わ る方法 として,尿 沈渣の培養が使

える可能性を報告2)した.尿 沈渣の培養も,実 際に

行 うときの検体輸送 などに問題があるため,保 菌

妊婦の検出方法 として活性炭に尿中の菌を吸着 さ

せてか ら輸送する方法を検討 したので,基 礎的実

験結果 と臨床的な保菌者検出結果を報告す る.

材料 と方法

1. 材料

基礎的検討のために,東 京女子医大母子総合医

療センター,浜 田病院,東 京女子医大第二病院,

東京逓信病院の産婦人科を受診 している妊婦につ

いて,妊 娠週数を特定せずに,あ る1日 に来院 し

た妊婦総数138例 の一般尿検査の尿を検体 として

収集 した.

臨床的検討のために,平 成4年4月 より平成5

年8.月12日 までの間に,葛 飾赤十字産院を受診 し

ていて検査を希望 した妊娠26週 前後の妊婦700例

について,一般尿検査時の尿を検体 として使った.

2. 培養の基礎的検討

基礎的検討を開始する前に,(1)尿 中の細菌を

実際に活性炭に吸着させ ることで,菌 を保存でき

るかどうか検討 した.(2)次 の段階で,対 象の基

礎的検討に記載 した検体について3種 の培養法に

より比較 した.

別 刷 請 求 先:(〒102)東 京 都 千 代 田 区 富 士 見2-14-23

東京逓信病院小児科 保科 清

感染症学雑誌 第68巻 第5号

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活性炭吸着培養法に よるGBS検 出 713

(1) 活性炭吸着培養法(活 性炭培養 と略)

尿中の細菌を活性炭に吸着させ ることで,菌 を

保存できるか どうか検討した.

検査室で検査後 の10名 の尿を混合,オ ー トク

レープで滅菌 した尿3mlに,血 清型別でIa型 とIII

型のGBSを101, 102, 103CFU/mlと なるよ うに加

え,そ の尿中に3,4粒 の活性炭粒子を入れ,一 晩

放置後に尿を捨てた.菌 を吸着 した活性炭を種 々

の温度設定 と日数で保存 した.温 度設定は4,25,

37,42℃ の4段 階,保 存 日数は3,5,7日 とし

た.各 温度で保存 日数に達 した ところで,GBS選

択培地であるSEB培 地(日 水)を2ml添 加 して培

養後,羊 血液寒天培地で同定し,抗 血清(デ ソカ

生研)で 血清型別を確認 した.

(2) 培養法 による比較

実際の妊婦尿約10mlを 使い,次 の3種 の培養法

による比較検討を行 った.

1mlは 直接血液寒天培地に塗抹培養 した.2な

いし3mlは 活性炭培養に準 じ,ギ ヤマンチューブ

を改造 して,容器内に3,4粒 の活性炭粒子を入れ

てお き,そ の容器内に尿を吸い上げ,一 晩放置後

に中の尿を捨て,室 温にて7日 間保存後 にSEB

培地を入れて培養 した.残 りの約6mlは,3,000回

転10分 の遠沈後,沈 渣 にSEB培 地 を2ml添 加 し

て培養(尿 沈渣培養と略)後,同 定した.

いずれの培養方法でも,菌 が検 出されれば血清

型別を行った.

3. 培養の臨床的検討

臨床的検討のために,活 性炭培養では前出の改

造容器を使い妊婦検診時の尿約2m1を 吸い上げて

立てておき,一 晩放置後に中の尿を吹き出すよう

に捨てて,ノ ズルを折 り曲げ,プ ラスチック リン

グをかけて保存 した(Fig.1).

同一尿の約10mlを 使い尿沈渣培養 も並行して

行った.

しかし,今 回の検討では尿沈渣培養 と活性炭培

養を比較する目的 もあったが,尿 沈渣培養は郵送

できないことから,両 培養の検体を搬送 して検討

した.

GBSと 同定された菌株については,血 清型別も

行 った.

Fig. 1 Procedure of Charcoal Culture of Urine. 1)

Reconstructed plastic tube enclose charcoal. 2)

Folded nozzle and put on plastic ring.

Suck up 2 to 3m1 of urine in this plastic tube.

Bacterias in urine are adsorbed to charcoal. After

over night, urine are put off like gush. Nozzle is

folded and put on plastic ring.

成 績

1. 基 礎 的 検 討

(1) 尿 中 の細 菌 を活 性 炭 に 吸 着 させ た 場 合 に,

どの 程 度 保 存 で き る か検 討 した 結 果,101CFU/ml

の 菌 量 で 各 温 度7日 間 保 存 後 も検 出 可 能 で あ った

(Table 1).

(2) 同一 検 体 を3種 の 培 養 法 で検 討 した 結 果,

直 接 血 液 寒 天 培 地 に塗 抹 し て培 養 した 場 合 に 最 も

検 出率 が 悪 く12検 体8.7%の み 陽 性 で あ った が,尿

沈 渣 培 養 と活 性 炭 培 養 で は 共 に37検 体26.8%が 陽

性 で あ った.

2. 臨 床 的 検 討

妊 娠26週 前 後 の 妊 婦700例 の 内,活 性 炭 培 養 と尿

沈 渣 培 養 の 両 方 が 同 時 に 検 査 で き た の は676例

だ った.活 性 炭 培 養 と尿 沈 渣 培 養 が共 に 陽 性 だ っ

た の は86例12.7%,共 に 陰 性 だ っ た の は449例

66.4%で,一 致 率 は79.1%だ った.活 性 炭 培 養 の

み 陽 性 は91例13.5%,尿 沈 渣 培 養 の み 陽 性 は50例

7.4%と な り,全 体 的 な 活 性 炭 培 養 陽 性 は177例

26.2%,尿 沈 渣 培 養 陽 性 は136例20,1%と い う結 果

平成6年5月20日

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714 保科 清 他

Table 1 Detection of GBS Adsorbed to Charcoal

under Some Conditions of Preserved Tempera-

tures and Days

Table 2 Comparison between Charcoal Cuture

and Sediment Culture of Urine

Table 3 Serotype of GBS detected by Charcoal

Culture

u. t.: untypable

であった(Table 2).

活性炭培養 と尿沈渣培養の検出菌における血清

型別が相違していたのは19例 であった.

活性炭培養 と尿沈渣培養が同時に行われず,活

性炭培養のみを実施 してある例13例 も含めて690

例における活性炭培養陽性例の各血清型別例数

は,Table 3に 示した.

考 察

GBS感 染症の予後は,発 症例の約1/4に 死亡 な

いし後遺症を残す とされている3).GBS感 染症の

発症を予防す るためには,GBS保 菌妊婦の把握が

必要になる.各 施設で産道培養を実施して,検 査

室でGBSと 同定はできても,一 般的には血清型

別を手間 とコス トの問題があるために判定 してい

ないのが実状である.

産道培養 とい うと,産 婦人科の先生に とっては

腟培養,特 に腟円蓋部の培養 と理解 されてしまう.

GBS検 出のために行 う産道培養では,腟 円蓋部で

最 も陽性率が低 く,次 いで腟前庭部であ り,検 出

率の最も高い部位は尿道 口周辺 と肛門直腸培養 と

されている1).同 じ腟円蓋部の綿棒による擦過検

体でも,擦 過方法により陽性率が違って くる.培

養方法で陽性率に差が出るようではスクリーニン

グの方法 として適当ではない.さ らに,妊 娠36週

頃までは特に妊娠経過に問題がなければ内診 しな

い施設が多いことも,妊 娠26週 頃の産道培養の実

施を困難にしている.何 とかして内診せずに検出

率の高い培養方法で,一 定の施設に郵送 も可能 と

なる方法を探さなければならない.

なぜ一定の施設に検体を集める必要性があるの

か.一 定の施設に検体を集めれば,培 養 と共に血

清型別 も判定できるし,判 定 した血清型に対応す

る血清中の特異抗体 も測定で きる.

GBS保 菌者検出には,尿 沈渣培養で陽性率が高

いことは既に報告2)した.し かし,尿 沈渣培養を実

施するには,各 種の医療機関で遠沈器を常備使用

している施設が少なくなっていること,技 師や看

護婦の手を煩わす こと,尿 沈渣は郵送できないこ

と等か ら,ス クリーニングには適 さないことが判

明した.尿 沈渣培養に代わる方法 として,活 性炭

に尿中の菌を吸着させて郵送する手段を考案 し,

今回の検討を行った.

活性炭培養で郵送する手段を とるためには,菌

を吸着させた活性炭の保存条件について検討 しな

感染症学雑誌 第68巻 第5号

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活性炭 吸着培養法 によるGBS検 出 715

ければならない.Table 1に 示 した温度 と保存期

間で,101CFU/mlと い う菌量でも検出できること

がわかった.活 性炭に吸着させることと,郵 送に

使 う容器 を一つ にす るた め,偏 平 なギ ヤマ ン

チューブを改造して,中 に活性炭を入れて基礎的

検討を行 ったが,活 性炭に吸着 させ るための操作

も簡便であった.

活性炭には,尿 中の他の細菌も吸着 されている

が,培 養の際に選択培地を用いることにより,数

種の細菌に限定できていた.

同一検体を用いて,3種 類の培養方法について

検討 した基礎的検討の結果,尿 沈渣培養 と活性炭

培養で同じ陽性率を得た ことは,活 性炭培養が保

菌妊婦検出のための手段 として使える可能性を示

している.

臨床的検討で,尿 沈渣培養 と活性炭培養を同時

に検討できた例は676例 であったが,検査結果の一

致を見たのは79.1%と やや低値であった.し かし,

活性炭培養で陽性を示した例は,尿 沈渣培養陽性

例よりも多い結果を得た.

GBS感 染症発症予防のためのスクリーニング

という点から考えると,一 人でも多 くの保菌妊婦

を検出しなければならない.保 菌妊婦検出の段階

で検出率の低い培養方法であれば,偽 陰性による

発症例が多 くなる.検 出例数があまりに多 くなる

と,偽 陽性 も多 くな り,余 計な不安をいだ く妊婦

もそれだけ増加する事は否定で きない.し かし,

保菌者 と判明した ら,そ の菌に対す る抗体を持 っ

ているかどうか測定す る事により,抗 体低値な妊

婦は約1/3に 減少す る.この保菌 していて抗体低値

な妊婦は,そ の後も定期的に培養を続け,分 娩直

前 まで断続的ないし持続的に保菌 していた妊婦に

ついて,分 娩時に予防措置を実施す るとい う対策

であれば,実 際 に予防措置の対象 となる妊婦は

もっと少なくできる可能性がある.GBS感 染症に

罹患 した新生児の重症度から考えると,偽 陰性に

よる発症は防がなければならない.

妊娠中に妊婦に抗生物質を投与 して,-菌 を陰性

化 させようとす る試みも考えられるが,一 過性の

菌陰性化が認められ るだけとした報告4)もあ り,

抗生物質投与による妊婦の腸内細菌叢の変化 も問

題 となる.

活性炭培養 と尿沈渣培養が共に陽性で,血 清型

別の異なる結果を得た例が19例 に認められた.こ

れは複数の血清型菌が共存 しており,同 定の際に

血液寒天平板上の1コ ロニーだけを釣菌して血清

型別を実施 したため と思われ,今 後注意が必要で

ある.

活性炭培養で検出された菌の血清型別を多糖体

抗原のみで見ると,以 前は型別不能であったJM9

型 とNT6型 が最 も多 く各々45例 であるが,全 国的

な発症例の血清型別を見ると,こ の血清型による

発症はいまだ少数例である5).しかし,発 症例が見

られているということか ら,今 後の動向に注意す

る必要がある.

発症頻度が高いIII型とIa型 は,保 菌者でも比較

的多 く認められていた.や はりIa型 とIII型は病原

性が高いのであろう.

GBS感 染症 の発症予防のために必要 な産道保

菌妊婦の検出に,種 々の培養方法があるが,今 回

検討した活性炭培養は,よ り簡便で,検 出率 も高

く,郵 送 も可能であることがわかった.

稿を終わるに当たり,検体収集にご協力いただきました

諸先生方に厚く御礼申し上げます.ま た,本 検討にご協力

願いました東京都予防医学-協会微生物部の皆様に深謝致し

ます.

文 献

1) 門井 伸 暁, 保 科 清, 仁 志 田博 司: B群 溶血 連 鎖

球 菌 と母 児感 染. 小 児 医学, 25: 601-615, 1992-

2) 保 科 清, 鈴 木 葉 子, 小 林 真 澄, 他: B群 溶 連 菌

産 道 保 菌妊 婦 検 出 の ため の尿 沈渣 培 養 と腟培 養 の

比 較. 感 染症 誌, 65: 992-995, 1991.

3) 保 科 清, 鈴 木 葉 子, 都 も と子, 他: B群 溶 連 菌

感 染 症 の 現状; 第2田 全 国 ア ン ケー ト調 査結 果.

小 児 科 臨床, 42: 1251-1255, 1989.

4) Gardner, S. E., Yow, M. D., Leeds, L. J., et al.:Failure of penicillin to eradicate group B stre-

ptococcal colonization in the pregnant women.Am. J. Obstet. Gynecol., 135: 1062-1065, 1979.

5) 保 科 清, 鈴 木 葉 子, 門 井伸 暁, 他: B群 溶 連 菌

感 染 症 ア ン ケ ー ト調 査 結 果. 第29回 日本新 生 児 学

会 総 会 抄録 集, p.126, 1993.

平成6年5月20日

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716 保科 清 他

Detection of Carriers of Group B Streptococci in Pregnant Women with

Adsorbed Charcoal Culture

Streptococcal Diseases Study Group (Chief: Kiyoshi HOSHINA)Kiyoshi HOSHINA1), Masumi KOBAYASHI1) & Yoko SUZUKI2)

Department of Pediatrics, Tokyo Teishin Hospitall) and Tokyo Women's Medical College Daini Hospital2)

For prevention of group B streptococcal (GBS) infection in neonates, GBS carriers of pregnantwomen should be detected. Procedures for detection of carriers were needed to get higher positive rateand to be handled with easy. Urine samples were shown to detect higher rates than vaginal smearsamples in pregnant women.

GBS in the urine were adsorbed to charcoal granula for easier transporting. These adsorbedcharcoal were tested as to whether they could be preserved with different temperatures and days.Urine with 101 CFU/ml of GBS added could be detected after 7 days at emperatures of 4, 25, 37, 42C.The cultures of this procedure with the cultures of urine sediment of pregnant women were compared.Detecting rates of this procedure and urine sediment were 177 (26.2%) and 136 (20.1%) of 676 pregnantwomen, respectively.

These data suggested that adsorbed charcoal culture was useful with higher positive rates fordetection of the GBS carriers in pregnant women.

感染症学雑誌 第68巻 第5号