4 状態空間モデルの構造推定につ いて ARIMAX ·...

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- 52 - 35)式のような自己回帰,移動平均型の入出力定 差方程式(以下,これを ARIMAXモデルと 呼ぶ)と等価であることを示したが,このこと は,次節で述べる状態空間モデルの構造推定と 深い関係をもっている。 § 4状態空間モデルの構造推定につ いて A.構造推定の意味 ここで,われわれが「状態空間モデルの構造 推定」と呼ぶものは,オリジナルな状態空間モ デル( 11)および12))の構造パラメータ, Abおよびcの推定のことである。 状態空間モデルの状態はシステム内部の状態 であるから,通常観測不可能で,われわれが構 造推定のために得られるデータは入出力( , t u t t y x , )に関するもののみである。それ故,われ われは状態空間モデル11)および12)の構造を直接 推定することはできない。エコノメトリックス 流にいうならば,われわれが推定するのは「構 造方程式」ではなく「誘導形方程式」であると いうことになる。 まず,状態空間モデルの構造の推定が可能で あるためにはオリジナルな状態空間モデルが可 観測でなければならない。これは可観測性の定 義から自明のことである。すなわち,出力から 何らかの形で状態が観測あるいは推定できない 限り,11)の状態方程式の構造パラメータの同定 は不可能である。 前節で,可観測な状態空間モデルは常に可観 測正準型およびARIMAXモデルに等価変換で きることを示したが,このことは逆にいえば, 可観測正準型あるいは ARIMAX モデルと等 価な可観測な状態空間モデルが無数に存在する ことを意味している。そして,現実の入出力デ ータから同定できる構造パラメータは A b よび c であって, b A, およびcではない。すな わち,現実のデータから同定できるのは可観測 正準型のパラメータあるいはARIMAXモデル のパラメータにすぎず,可観測正準型からオリ ジナルな状態空間モデルにもどるための変換マ トリックスTに関する情報は入出力データには 含まれていない。ここで,可観測正準型あるい ARIMAXモデルはエコノメトリックスでい わゆる「誘導形方程式」にあたり,オリジナル な状態方程式が「構造方程式」にあたることに 留意すれば,両者の間の関係がより明らかにな ろう。以上の関係を図示すれば図3のようになる。 ここで留意したいのは,入出力データから同

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35)式のような自己回帰,移動平均型の入出力定

差方程式(以下,これをARIMAXモデルと呼ぶ)と等価であることを示したが,このこと

は,次節で述べる状態空間モデルの構造推定と

深い関係をもっている。

§ 4.状態空間モデルの構造推定につ いて

A.構造推定の意味 ここで,われわれが「状態空間モデルの構造

推定」と呼ぶものは,オリジナルな状態空間モ

デル( 11)および12)式 )の構造パラメータ,A,bおよびcの推定のことである。 状態空間モデルの状態はシステム内部の状態

であるから,通常観測不可能で,われわれが構

造推定のために得られるデータは入出力( ,tu

tt yx , )に関するもののみである。それ故,われ

われは状態空間モデル11)および12)の構造を直接推定することはできない。エコノメトリックス

流にいうならば,われわれが推定するのは「構

造方程式」ではなく「誘導形方程式」であると

いうことになる。 まず,状態空間モデルの構造の推定が可能で

あるためにはオリジナルな状態空間モデルが可

観測でなければならない。これは可観測性の定

義から自明のことである。すなわち,出力から

何らかの形で状態が観測あるいは推定できない

限り,11)の状態方程式の構造パラメータの同定は不可能である。 前節で,可観測な状態空間モデルは常に可観

測正準型およびARIMAXモデルに等価変換できることを示したが,このことは逆にいえば,

可観測正準型あるいはARIMAXモデルと等価な可観測な状態空間モデルが無数に存在する

ことを意味している。そして,現実の入出力デ

ータから同定できる構造パラメータは A,b および cであって, bA, およびcではない。すなわち,現実のデータから同定できるのは可観測

正準型のパラメータあるいはARIMAXモデルのパラメータにすぎず,可観測正準型からオリ

ジナルな状態空間モデルにもどるための変換マ

トリックスTに関する情報は入出力データには含まれていない。ここで,可観測正準型あるい

はARIMAXモデルはエコノメトリックスでいわゆる「誘導形方程式」にあたり,オリジナル

な状態方程式が「構造方程式」にあたることに

留意すれば,両者の間の関係がより明らかにな

ろう。以上の関係を図示すれば図3のようになる。 ここで留意したいのは,入出力データから同

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補論I 状態空間モデルと構造推定-基本的考え方-

定,あるいは検証できる構造はたかだか,可観

測正準型あるいはARIMAXモデルのそれであり,無数に存在する正準型と等価な可観測な状

態空間モデルのそれではないということである。

可観測正準型からオリジナルな可観測モデルに

もどるためには変換マトリックスTが必要であり,これはアプリオリに設定するしかない。

エコノメトリックスにおける「identifiabi- lity」の議論では,この「誘導型」から「構造方程式」への変換のためのアプリオリな制約が

identifiability conditionという型で定式化されているが,この純技術的かつデータとは関係

のない条件が論理的に何を意味するかは定かで

はない。このことは,現実のデータと斉合的な

理論が実は無数に存在し,しかも,それを論理

的,実証的に有効に識別する方法が存在しない

ことを意味しているようである。このことは,

例えば,社会科学における理論とは一体何なの

かという,より根本的かつ哲学的問題と密接に

関連していると考えられるが,この問題につい

ては,ここではこれ以上立入らない。 さて,われわれが状態空間モデルの構造推定

を入出力データだけによってするとすれば,図3からも明らかなように,2つのアプローチが可能である。第1の方法は,可観測正準型を入出力データから推定するものであり,ここでは

その典型としてAoki-Yueのアルゴリズムを示す。第2の方法は,ARIMAXモデルの推定である。これについては,Kashyap-Wallのアルゴリズムによってその概要を明らかにする。尚,両

アルゴリズムに共通するのは最尤法による推定

なので,最尤法の基礎についてまず簡単に述べ

てみよう。 B.構造推定のアルゴリズム (i) 最尤法の基礎 最尤法の原理は誠に素朴な発想に基づいてい

る。いま,われわれは現実のシステムに入った

入力データと出て来た出力データを持っている

とする。この入出力データの関係をモデル化す

るわけであるが,そのモデルの構造パラメータ

の値は先見的に知る術がない。よってまず最初

に思いつくこととは,勝手にそのパラメータに

値を入れ,どれだけわれわれの持っている出力

データに近くなるかチェックをすれば,いつか

は出力データに極めて近い構造パラメータの組

が出て来るのではないかということである。こ

の場合,厳密にはモデル化の誤差,入出力デー

タの確率性など,考慮しなければならない点が

多いが,上の発想は最尤法のベーシックな考え

方を理解する上では直観的で且つわかりやす

い。 たとえば,ある入出力関係を,

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),( βxfy = ····································· 40) で構造推定しようとしたとする。ここで, xy, ,β はそれぞれ出力(被説明変数)ベクトル,入力(説明変数)ベクトル,パラメータ・ベクト

ルである。もし,関数型 f が xについて線形の関数であれば,40)式はよく知られている線形回帰モデルとなる。さて,実際に観測された出力

データを並べたベクトルを ay とすれば, ay のyとの差は,当然 β,x の関数である。いま,

xを所与とすれば, ay と yの差は β だけの

関数となる。そこで β を色々変化させ,この差を見るのであるが, yが ay に近いという判断基準についてはいろいろ考えられる。 例えば,最小二乗法では yと ay の差をとり,その差のベクトルの長さが最小となるよう

に判断基準を定める。又,主成分分析と呼ばれ

る推定方法は, yの各要素から回帰直線(あるいは平面)へ至る距離の和が最小となるような

判断基準を定めている。いずれにしても,この

判断基準は β の関数となるが,この関数の型が40)式の f によって色々異る。一番便利な関数型は図4のような放物線(2次曲線)である。何故ならその最小点は唯一簡単に求められるからで

ある。例えば,40)が線形回帰式 βxy = ·········································· 41) の場合,判断基準Sは yから ay への長さの2乗(長さは常に正でありその2乗をとっても判断基準としては変りがないので) 2∥∥ ayyS −= ··································· 42) をとっている。ここで∥ ∥はュークリッド空

間における2つのベクトル点間の距離(ノルムという)を示す記号である。42)式の右辺は,41)式を代入すれば具体的に

βββββ

x'x'y'xy'y)xy()'xy(S

aaa +−=−−=

2 ·················· 43)

となる。ここで43)式は明らかにβ に関して2次関数(放物線)であることを示している。よって,

その最小値を与える β な容易に求めること

ができる(ただし,行列の演算ということに気

をつけなければならないが)。ここで注意する

べきことは,43)式の β 変数の係数 xxyx a ','  

や切片項 aa yy ' は現在得られている入出力デ

ータを示しているが,新たに観測されたデータ

が入って来れば,当然変化するので放物線の形

はその時々の時点で変化して行くという点であ

る。よって,前に求めた最小値を与える β (つまり最適なパラメータ推定値 Aβ̂ )は,Aが 'Aへ変化したのに従って Aβ̂ へ修正されて行かねばならない。データがどんどん多くなっても,放

物線の形が余り変化しなければ,推定パラメー

タの修正はほとんど必要なくなり,われわれは

自信をもってこのパラメータを構造パラメータ

と見なすことができる。ここで放物線が変化す

るたびにいちいち最小値を与える β を計算するのは面倒であり,且つコストもかかるので,前

の値に,たとえば Aβ̂ を用いて,それに少しだけ工夫をこらして新しい最適パラメータ Aβ̂ を計算しようとする考えがある。 この考えは,変化を表わす最小の情報量だけ

を使おうという,極めて合理的な思想に根ざし

ており,非線形最適化法でいう勾配法や, β を状態とみなす時の状態推定法,つまりカルマン

フィルターの考えと軌を一にしている。しかし

この点に関しては主題ともはずれるのでここで

は余り深く立ち入らないことにする。 さて明示的に判断基準が放物線となる場合は

事態は簡単である。しかも40)式の f が複雑で,Sが図Bのように放物線でない場合は一体どう処理したらよいのであろうか。その一つの解決

策は,いささか強引ではあるが,どこか最小点

ののありそうな付近を勝手に決め,その付近の

曲線を放物線に近似させてしまおうという考え

方である。一回の近似で間違うこともあろうか

ら,丁度AからA′へ変化した時と同じように,次々に近似を変え,最もうまく行った時の β(図では Bβ̂ )を最適パラメータとすればよい。非線形最適化法でいう,Newton-Raphson法はこのような考え方に基づく極値問題の解法 である。又,最も良く使われている,Davidon-

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補論I 状態空間モデルと構造推定-基本的考え方-

Fletcher-Powell法は,Newton-Raphson法で用いるHessian逆行列(例えば,43)式の一階の偏微分をとってできる行列をJacobian行列,二階のそれをHessian行列という)を,単位行列を初期値として,逐次的に求めて行くところが異

るだけの極値決定法である1)。 以上までの議論は,判断基準と最適パラメー

タ決定について一般的に述べたまでである。最

尤法を理解するには判断基準についてもう少し

吟味し,確率分布の概念を導入して来なければ

ならない。このことについて,先の直線(平面)

回帰モデルを用いて簡単に議論してみよう。 まず,41)式を修正して,単なる構造推定のモデルではなく,実際に観測された出力データ,

aNaa yy,y L21 (Nはサンプル数)を作り出すモ デルを作ってみる。これを,例えば, iii exy += β ···································· 44) としよう。ここで, ie はある確率分布に従って変化するノイズである。上式は線形方程式であ

るから, iy は ie の確率分布と同じ確率分布を持つ確率変数であり,われわれの出力データ

Naaa yyy 2 1 ,,,, L は確率変数 iy がたまたまそ のようになった例に過ぎないと考える。さて,

ie の確率分布は平均ゼロの正規分布であり,且

つ ie と je( ji ≠ )は全く関係ないと仮定しよう。

ie の独立性より, iy( Ni L2 1,= )の実現値

として )2 1( Niy ia L,, = が得られる確率 ) ( 21 Naaa yyyp ,,,, L は,個々の iay , が出る確率の積である。つまり,

)() ( 1

21 ia

N

iNaaa yPyyyp ,,,,, Π

==L ······· 45)

この45)式が成立するのは確率論の初歩的定理に基づいている。ところで,正規分布は,平均と

分散の2つの変数によって決定される関数(確率密度関数という)であり,その関数型は

[ )(21

)(21 exp

分散分散 ・π・−

]2)( 確率変数-平均 ·············· 46)

なる形をしている。つまり,45)式の )( ,iayp 一

つ一つが46)式の正規分布関数形をしているのである。ここで平均は期待値のことであり,44)式より両辺の期待値をとれば,

ββ

i )()()(

xeExEyE iii

=+=

   

である。ここで,44)式の意味より, ix と β は所与なる定数と見なしている。 これを46)式に代入し,さらにそれを45)式に代入すれば =) ( 2 1 Naaa yyyp ,,,, LL

[[ )(21

)(21

1exp

分散・分散π・−Π

=

N

i

] ]2)( βii,a xy − ························· 47) となる。47)式のうち,分散は共通な固定分散,

ix を所与, iay ,は既に観測されてしまってい

るので確定的な値,と見なせば,確率 ,,1(ap )yy N,a,a L2 は, β の値によってのみ変化する

と考えられる。ところで,もともと44)式を提案したのは,真にこのモデルによって観測出力が出ると確信しているからであり,したがって,最適パラメータはこの確率を最大にする β であるはずである。ところが,47)式は β の判断関数とするには冗長な部分を含んでいるので,もっと簡単にすべきである。その為,47)式の右辺の自然対数をとり,分散とか, π2 などを全部無視すれば,結局

を最小47)式のexpの中にマイナス符号がでているので)にすればpは最大確率になることが保証される。この48)式であらわされる推定すべき未知パラメータの関数を普通尤度関数と呼 _________________________________________ 注)1)判断基準(正確には後述する尤度関数)の

極値を求めるには,この様な非線形最適化法

を用いるのが普通である。これについては,

D. M. Himmelblau〔45〕,あるいは,もっと当を得た解説としては,G. R. Walsh〔93〕,Chapter4を参照されたい。

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んでいる。又こうして求められたパラメータの

推定値を最尤推定値と呼ぶ。 ( ii) Aoki-Yueの方法 1) このアプローチを一言でいうなら,§3のDで述べた可観測正準形に等価変換した時の状態の

初期値と,パラメータ行列・ベクトル b, Α を,

回帰方程式の形になおして,最尤法を用い推定

する方法である。この時後述するように,

Toeplitz行列と呼ばれるものを用いる。 では,このアプローチを以下に簡単に説明し

てみよう。前節Dで議論したように,オリジナルな状態空間モデルが可観測であれば,変換行

列27)式により,可観測正準形に等価変換出来その場合の誘導形は,35)式のような,簡単な自己回帰(antoregressive),移動平均(moving average)型になる2)。35)式にそのまま最小自乗法なりを適用することは出来ない。何故なら,最

小自乗法においては,右辺の説明変数とノイズ

項が統計学的に独立であるという仮定が必要で

あるからである。つまり,このまま最小自乗法

を適用すると推定されたパラメータに所謂バイ

アスが入る(統計検定の言葉でいえば不偏推定

値にならないということ)。従って,通常の回

帰推定法的にいえば,何らかの手段を用いて,

被説明変数を全て左辺に持って来る必要がある。 そのために,まず,下のようなToeplitz行列と呼ばれるものを定義する。

⎥⎥⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢⎢⎢

0 1 0

1

1

0 0 0 0

MMOMOMMLLLLLLMLL

 

ΔS

この行列は,正方行列であり,その部分(余因

子と呼ばれる)に一次元少い単位行列を持つも

のである。Toeplitz行列の特徴は,これをべき乗すれば部分としての単位行列が,一次元ずつ

そのべき乗の数に従って小さくなって行くこと

にある。これは実際に計算してみればただちに

解る。ここで,出力系列と入力系列を NN uy ,

と定義すれば,

⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢

=

−2

10

0

N

N

y

yy

SyM

⎥⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢⎢

=

−3

12

N

N

y

yySM

00

⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢

=

−2

10

0

N

N

u

uu

SuM

⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢

=

−3

12

00

N

N

u

uuSM

となることは明らかである。このことより,35)式の入出力系列を 1−= N,t L0 ならべたN個の式の束

⎪⎪⎭

⎪⎪⎬

+=++

+=+++=++

−−−−

−−

−−−−

KN

NKNKNN

KKKK

KKKK

buubyayay

ububyayayububyayay

11211

10110111110

LLM

LLLL

        

1

49)

は,Toeplitz行列を用いて,ベクトル的に簡単に下のような書き表わすことができる。

ただし,

11

11121112211111

−−

−−−−−−

−−−−

+−=

+−−=++−−=

ubya

ububyayaububyaya

KKK

KKKK

KKKK

λ

λλ

MLL

LL

である。ここでこれら, K, λλλ L21 は一体どの ような意味をもっているのであろうか。49)式の 注)1)M. Aoki and P. C. Yue〔4〕pp.239-

256.本研究ではこの方法を用いなかったが,応用例には,宮武信春,茅陽一〔65〕がある。

2)自己回帰移動平均モデル(簡単にARMAモデルと呼ぶことがある)については,G. E. P. Box and G. M. Jenkins〔13〕を参照されたい。ただし, Box-Jenkinsは移動平均の項はノイズとみなしているが,ノイズも外生入力とみれば35)式は彼らのいうARMAモデルと考える事が出来る。

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補論I 状態空間モデルと構造推定-基本的考え方-

先頭の式により,まず, 01 y=λ は明らかであ

る。又,34)式より, 0y は 1,0x であるから, 1λは初期状態ベクトルの第1要素であることがわかる。次に, 2λ は,49)式から

201011 λ=−+ ubyay

のことである。34)式より, 1,001,11 xy;xy == で

あるから上の式は 2111,011,1 λ=−+ ubxax ························ 51)

となる。さて,33)式の先頭の式より 012,01,011,1 ubxxax ++−=

が成立し,文字を統一するため, 1b を 1b とし

2,0x の式にまとめると, 011,011,12,0 ubxaxx −+=

となる。この式と51)式を比較すれば, 2,02 x=λ

となることは明らかである。以下同様の計算を

すれば, K, λλλ L21 は実は可観測正準形になお

した時の初期状態べクトルのそれぞれの要素で

あることがわかる。従って,50)式はこの初期状態べクトル 0x を用い,且つ新たに,下のような

NNN BAE ,, なる行列を定義して K

⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢

Δ

0 0

0

0 0

1 0

0 1

1

LLLMOMMMMOM

LLLLLLLL

OO

       

   

    

NE

次のようにまとめることができる。

0xEUBYA NNNNN •+= ····················· 52)

52)式に, NA の逆行列を左からかければ,結局 0xEAUBAY NNNNNN

11 −− += ·············· 53)

となり,すっきりした回帰方程式の形を得るこ

とができる。この53)式において, 0x は単に切片項のように,推定すべき未知パラメータとみ

なせばよい。53)式のパラメータ行列を実際に推定するには,

1−NA のためパラメータの非線形

性が出て来るので,非線形最小自乗法1)を用い

るか,直接(i)で議論したような最尤法を用いなければならない。最尤法の場合の尤度関数の

求め方については,前に述べたAoki-Yueの論文に詳しく解説されているのでここで改めて議論

しない。 (iii)Kashyap-Wall等の方法2) 本節Aで述べたように,入出力データから状

態空間モデルの構造推定を行う場合,状態空間

モデルは可観測正準形でなければ構造パラメー

タはユニークに求められない。この可観測正準

形状態空間モデルを推定する場合,初期状態も

明示的に未知パラメータの一部として取り扱う

のが前に述べたAoki-Yueの方法である。ところが§3のDで議論したように,35)式の入出力定差方程式を直接推定することも考え得る。この場

合,初期状態はAoki-Yueの方法のように明示的に推定の対象とならないが,出力値の中に当然

初期状態と過去の入力の寄与が含まれている。

従って,この定差方程式を効率よく推定出来れ

ば可観測正準形の状態空間モデルの構造を推定

出来たことになる。ここでいうKashyap -Wallの方法は一般的な入出力定差方程式,即ち入出力伝達関数の構造推定に関する汎用性の _________________________________________ 注)1)これについては,先のBox-Jenkins〔13〕

pp.231-234あるいは,C. R. Nelson〔67〕pp.96-97を参照されたい。

2)この手法は,厳密に誰れの方法というものではなく,制御工学の分野でさまざまな人々

がとり組んだ方法である。これについては,

R. L. Kashyap〔52〕pp.25-34,K. D. Wall,〔92〕を参照されたい。特に本分析では後者のアルゴリズムを用いた。

K

N-K

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高い手法である。われわれはこれを可観測正準

形の状態空間モデルの構造推定に利用した。 まず,入出力定差方程式を35)式に従って,次のように表現しよう。ここで議論を簡単にする

ため,単一入出力モデルを提起することにす

る。

54)式は,

tt uLLy

)()(

1

2φφ

= ··································· 55)

と,伝達関数表示をしてもよい。ここで )(1 Lφ )(2 Lφ はラグ演算子の多項式である。55)式のよ

うな形を普通Polynomial Lag Structure(多項式型ラグ構造)伝達関数と呼ぶ。 ところで,われわれの得る出力データは観測

ノイズで汚されている。

ttt yz η+= ····································· 56) なるものがわれわれの観測する出力である。こ

こで tη は前の直線回帰の最尤法の te と同じ

ように,平均0,固定分散をもつ正規分布と仮定する。56)式を54)式に代入すると,

となる。 ここで,57)式についてもう少し吟味してみよう。もし,状態方程式に,入力の他にシステム・

ノイズと呼ばれる外生ノイズ tv が入って来れば,入出力誘導型の中に

の項が入っ来るはずである。ここで ic は状態方程式のパラメータと出力方程式のパラメータ

の積が合成されたものをまとめてあらわしたも

のである。又入力変数を確定数として扱わず,

一般性を持たせるため,ノイズ tw で汚されているとすれば,やはり入出力誘導型の中に,

なる項が入って来る。57)式のノイズ部分

と58)式,59)式のノイズ部分は,ノイズが確率変数で測定しようのないものであるから,互いに峻

別するわけには行かず,一つの正規ノイズで表

わした方が合理的である。そしてこのノイズは

58)式,59)式60)式の線形結合とみなし, te とすれば,

57)式は,

となる。61)式と57)式と違いは,ラグ付誤差の係数が iα から iγ に変ったことにある。ここで, teは, tt wv , の確率特性より,44)式の te と同じ確率特性を持つと仮定してもかまわないことが,

Kashyap等の研究であきらかになっている。 では, te とは一体どのような意味を持つものであろうか。先の回帰分析モデル44)式の 2e は推定誤差であった。61)式の te もそれと同様に一種の推定誤差には違いない。しかし,54)式より,

ty はその過去の系列と入力の過去の系列より生成されるというプロセスを示している。つ

まり,このプロセスにノイズが全くないとなれ

ば,現在の出力 ty は過去のデータから完璧に予測することができるはずである。ところが,

もし何らかのノイズがあれば,その予測には誤

差が生じて来る。従って, te とはそれ即ち予測誤差に他ならない。これを式で表わせば,

1−−= tttt zze ································· 62) となる。ただし, 1−ttz は 1−t 期までの過去

のデータを用いて tz を予測した場合の予測値

をあらわす。つまり, tz の条件付期待値 { }111 −−− = ttttt U,,ZzEz θ ·················· 63)

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補論I 状態空間モデルと構造推定-基本的考え方-

のことである。ただし, 1−NZ は 121 −Nzz,z L が

作るベクトル,θは ) 1( Kiiii L,,, =γβα 全部

が要素として入るパラメータ・ベクトル, 1−NUは過去の入力系列 121 −Nuuu L, が作るベクトル

である。61)式で注意すべきことはこのような過去の予測誤差が累積し tz の決定に影響を与えているという点である。 さて,先の(i)で議論したように,最尤法でパラメータ・ベクトルθを推定するには,尤度

関数のもとになる tz が生成される条件付確率をまず定めなければならない。61)式より tz は過去の入出力と構造パラメータθによって決って

来るので,出力データ系列 Nz の生起確率は ) ( 11 −− NNN UZzp ,,θ ······················· 64)

とあらわされる。 )( jiee ji ≠, の独立が仮定されていると,64)式の結

合確率は個々の確率の積となり,

)() ( 11111 −−=

−− Π= ttt

N

tNNN U,,ZzpUZzp θθ,,

····································· 65) のように逐次的な予測確率の積に分解できる。 さて, te の正規性と61)式の線形性より,65)式の条件付平均値(期待値)と条件付分散がわかれ

ば尤度関数が求められる。ここで tz の条件付期待値は,63)式の予測値であり,又条件付分散は,

{ }'ZZZZER NNNNNNN ))( 11 −− −−Δ ······ 66)

となる。 ただし, 1−NNZ は, 1231201 −NNzzzz L,, を

要素とする行べクトルである。ここで 1−− ttt zz は62)式より予測誤差 te のことであるから,これを要素にもつ(t=1,2…N)行ベクトルをENと

定義すれば,67)式は )( 'EEER NNN ・= ··························· 67)

と書きかえられる。又このRNは,極限定理より

サンプル数Nが大きくなると当然ある一定値R RN→R ········································· 68)

に収束する。

従って47)式の正規分布関数に62)式と68)式を代入すれば,65)式の右辺は,

⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡ Σ−⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡Π

==

211 2

1exp2

1t

N

t

N

ie

RR ・・π··········· 69)

となる。これの自然対数をとったものに負符号

をつけたものを尤度関数Lと定義すれば,Lは

212

1ln2

ln22 t

N

te

RRNNL

=Σ−−−=

・π

····································· 70) となる。 70)式は,予測誤差の分散および予測誤差の累積の関数となっている。予測誤差は,62)式と63)式よりパラメータ・ベクトルθによって変動する。

よって尤度関数70)式は,実はRとθの関数である。従って70)式の最小化は,それぞれRとθに関して2段階に行う必要がある。 まず,第1段階として,Lを最小にするR,つまりRの最尤推定値を求めておく。これはLをRで偏微分してゼロとおくことより求められる。

即ち,

02

112

212 =Σ+−=

∂∂

=t

N

te

RRN

RL

・・

よって,両辺に2R2をかけ,Rの最尤推定値RMLEは

21

1t

N

tMLE eN

R=Σ= ······························· 71)

である。 70)式のRをこれでおきかえたものを新たに尤度関数と決めれば,この尤度関数は te ,つまりθ

だけの関数となる。その具体的形は,

1ln2

)ln2(12

12

1

1ln2

ln22

21

212

1

21

⎟⎠

⎞⎜⎝

⎛ Σ−+−=

ΣΣ

⎟⎠

⎞⎜⎝

⎛ Σ−−=

=

=

=

=

t

N

t

t

N

tt

N

t

t

N

t

eN

NN

ee

N

eN

NNL

π

π

 

  

である。最小値を求めるのに第1項と第2項の

Page 9: 4 状態空間モデルの構造推定につ いて ARIMAX · わち,現実のデータから同定できるのは可観測 正準型のパラメータあるいはarimaxモデル

- 60 -

2Nは無関係であるから,結局,θ推定のための

最終的尤度関数は,極めて簡単になり,

となる。ここで,改めてことわる必要もない

が, te は62)式より予測誤差のことである。 以上の議論から,明らかのように,72)式導出のプロセスは,(i)で述べた回帰方程式に基づく最尤法のプロセスとほとんど同じである。 さて,実際に72)式をもとにパラメータ推定を行うには,θの値を変化させて尤度値がどのよ

うに変るか見なければならない。つまり,予測

誤差をどのように計算するかのアルゴリズムを

作る必要がある。まず,57)式の条件付期待値をとると,

を得る。何故なら,

{ } itttitt/it zU,,Z/zz −−−−−− =ΕΔ 111 θ  …74)

ただし, 1,2=i ……

{ } itttittit uU,,z/u/u −−−−−− =ΕΔ 111 θ …75)

ただし, 1,2=i …… { }111 −−−−− ΕΔ ttittit U,,Z/e/e θ

⎩⎨⎧

===

− 1,2 0

iei

it ただし  ただし0 ……………76)

が成立するからである。 74)式75)式は,条件付期待値が将来の生起を予測するのに対し,過去の生起を予測することな

く,それは過去の生起そのもの以外の何物でも

ないというロジックから来ている。又76)式のゼロの部分は te の正規性の仮定による。そして, ite −

については,74)式と75)式と同じロジックを用いればよい。 62)式を73)式に代入すれば,以下のような予測誤差の逐次計算式を得る。

つまり,尤度計算のプロセスとしては,まず

iii ,, γβα を任意に定める(妥当性の高いものが

もとより望しい)。次に,これ又任意の予測誤

差 ite − を定め,77)式に従って次々に te を計算して72)式の尤度を計算する。ここで逐次計算のための,予測誤差の初期値に関しては事前情報が何

もないことに注意すべきである。これを初期値

問題と呼ぶが, te の正規性の仮定よりゼロを入れるのが普通である。さて,このようにして,

尤度関数の極値を与えるθを求めるのであるが,

θを少しずつ変え,システマティックに行うに

は,(i)でふれた非線形最適化法を用いればよい。 注)1)ゼロ(unconditional expectotion)初期値

を主張するのはAstrom/Bohlinのやり方と工学ではいわれている。先の,Box/Jenkins達は,backward forecast法という進み演算子を用いて te の初期値を過去にさかのぼって計算する方法を主張した。このようなアプローチの

ちがいは,工学では一般にdata数が多くて余関数の影響を無視出来る経験的事実dataと数が少い社会科学の応用に於いて,すべての情報を

効率よく用いなければならない事実との差から

出る。

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- 61 -

補論II 道路事業制度の概要 A.道路投資策定の構造 日本における道路投資が現在のような形で行

われるようになったのは,おおむね戦後の復興

過程を通じてである。当初産業基盤の育成を目

的としていた道路投資も,その過程を経て,現

在の巨大なモータリゼーションの中で生活基盤

の整備・生活環境の改善をも目的とする方向に

ある。以下,道路投資が具体的にどのような制

度的枠組の中で行われているか概観する。 1.道路の現況 (1)道路輸送の状況

i)国内貨物輸送 国内貨物輸送量は,昭和30年度から昭和50年度までの20年間で,輸送トンキロで852億トンキロから3,609億トンキロで4.2倍に,輸送トン数で8.3億トンから50.3億トンで6.1倍に増大した。しかし,48年の石油ショック後,その伸びは停滞している。 この中で,自動車輸送は,40年代初めに鉄道を上回り,50年度で30年度に比べ輸送トンキロで14倍,シェアで11.1%から35.9%と3倍に増大している。(表IV-1参照) ii) 国内旅客輸送 国内旅客輸送量は,昭和30年度から昭和50年度までで,輸送人キロ1,658億人キロから7,104億人キロで4.3倍,輸送人数で141億人から462億人で4.3倍と増加している。 中でも,乗用車輸送は,43年度にバス,民鉄を,46年度には国鉄を上回るに至った。50年度実績を30年度と比べると,輸送人キロで60倍,輸送人数で25倍と大幅に拡大している。(表IV-1参照)

iii)自動車保有台数 昭和30年代は,貨物車の普及が著しく,40年度までの10年間で乗用車増加量の2倍の400万台増加した。昭和40年代は乗用車の増加が著しく,45年度末には貨物車保有台数を上回るに至った。最近数年間は,貨物車の増加の鈍

化が影響して,全体として横ばいの状況であ

る。(表IV-2参照) (2)道路種類別状況 道路は大別して,自動車輸送の機能を効率的

に増進する目的で造られた高速道路とその他の

一般道路とに分けられる。一般道路の現況は昭

和53年3月末の実延長の総計で106.6万km,内訳は一般国道3.9万km,都道府県12.6万km,市町村道90.2万kmで市町村道が85%を占めている。高速道路は総計2,419km,このらち都市高速道路が224kmである。一般道路の整備状況は,混雑度を考慮した整備率でみると一般国道で60%,市町村道で22%という状況である。

i)一般国道 一般国道路線は,高速自動車国道と共に全

国的幹線道路網を構成するものであり,指定

は道路法5条に依っている。主に都道府県庁所在地,政治・経済・文化的に重要な都市,お

よび,人口10万以上の市等を日本全国に渡って連絡する道路であり,主として建設大臣の

管理下に有る。 昭和53年3月未で,342路線38,540kmあり,整備状況は昭和27年度末の改良率30.1%舗装率13.3%から各々87.7%,93.7%と極めて向上している。 ii)都道府県道・市町村道 イ 都道府県道

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- 62 -

地方の幹線道路網を構成するもので,認定

は道路法7条に依っている。主に市および人口5千以上の町等を連絡する道路であり,都道府県知事の管理下に有る。都道府県道は更に,

道路法56条によって建設大臣により指定され,国より1/2の新改築費補助のでる主要地方道と,それ以外の一般都道府県道とに分けられ

る。 昭和53年3月末で,主要地方道43,225km,一般都道府県道82,550km,計125,775kmあり,一般国道の約3倍である。整備状況は,主要地方道で改良率73.1%,舗装率85.0%,一般都道府県道で各々52.7%,73.1%と比較的整備は進んでいる。 ロ 市町村道 市町村区域内にあって,市町村長が認定し

た道路である。昭和53年3月末で,901,713

kmあり,全道路延長の約85%を占めている。整備状況は改良率で23.9%,舗装率で32.1%とまだ極めて低い状況にある。 iii)高速道路 イ 高速自動車国道 全国的自動車交通網の枢要部分を構成する

もので,高速自動車国道法4条に依って,内閣を経て運輸大臣・建設大臣によって決定され

た路線である。 昭和38年に名神高速道路の一部開通に始まり,昭和53年3月末で2,195kmにおよび,日本の重要地域を連絡している。 ロ 都市高速道路 首都高速道路,阪神高速道路が有り,各都

市地域の都市機能の増進を目的とする自動車

専用道路である。道路法上地方道に属してい

るが,都市計画への依拠・料金の徴収・公共

表IV-1 貨物輸送トンキロ及び旅客輸送人キロ

年度 30 35 40 45 50

トンキロ

貨物輸送

総 量 (億トンキロ)

うちトラック (億トンキロ)

(同分担率,%)

852

95

(11.1)

1,369

208

(15.1)

1,864

484

(25.9)

3,502

1,359

(38.8)

3,609

1,297

(35.9)

旅客輸送人キロ

総 量 (億 人 キ ロ)

う ち バ ス (億 人 キ ロ)

(同分担率,%)

乗 用 車 (億 人 キ ロ)

(同分担率,%)

1,658

233

(14.1)

42

(2.5)

2,433

440

(18.1)

115

(4.7)

3,821

801

(21.0)

406

(10.6)

5,872

1,029

(17.6)

1,813

(30.9)

7,104

1,101

(15.5)

2,508

(35.3)

(陸運統計要覧より)

表IV-2 自動車保有台数

(千台)

年度末 30 35 40 45 50

自動車保有台数 総計 1,502 3,404 8,123 18,919 29,142

うち 貨 物 車

(同シェア,%)

バ ス

(同シェア,%)

乗 用 車

(同シェア,%)

特殊車・二輪車等

(同シェア,%)

693

(46.1)

35

(2.3)

158

(10.5)

616

(41.0)

1,673

(49.1)

58

(1.7)

473

(13.9)

1,179

(34.6)

4,680

(57.6)

105

(1.3)

2,290

(28.2)

1,048

(12.9)

8,519

(45.0)

190

(1.0)

9,105

(48.1)

1,105

(5.8)

10,172

(34.9)

220

(0.8)

17,377

(59.6)

1,373

(4.7)

(陸運統計要覧より)

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- 63 -

補論II 道路事業制度の概要

表IV-3 道路整備状况(昭和53年3月末見込み)

(単位:km,%)

改 良 済 舗 装 済 整 備 済 道 路 種 別 実 延 長

延 長 率 延 長 率 延 長 率

高 速 自 動 車 国 道

都 市 高 速 道 路

首 都 高 速 道 路

阪 神 高 速 道 路

2,195

224

132

92

2,195

224

132

92

100

100

100

100

2,195

224

132

92

100

100

100

100

一 般 国 道

都 道 府 県 道

主 要 地 方 道

一般都道府県道

市 町 村 道

合 計

38,540

125,775

43,225

82,550

901,713

1,066,028

33,795

75,105

31,590

43,515

215,474

324,374

87.7

59.7

73.1

52.7

23.9

30.4

36,098

97,128

36,750

60,378

289,465

422,691

93.7

77.2

85.0

73.1

32.1

39.7

23,235

61,738

25,978

35,760

201,474

286,447

60.3

49.1

60.1

43.3

22.3

26.9

(道路行政より)

法人による事業実施の諸点で他と異ってい

る。

首都高速道路は,昭和35年4月より首都高速道路公団(昭和34年設立)により着手され,昭和53年3月末で132kmを供用している。阪神高速道路は,昭和37年10月より阪神高速道路公団(昭和37年設立)により着手され,92kmを供用中である。尚,名古屋都市高速道路・福岡

北九州都市高速道路が各々昭和45年・46年よ

り着手されている。 ハ 一般有料道路 高速自動車国道,都市高速道路を除く有料

道路であり,通行による顕著な利益享受と他

の通行方法の存在が要件となっている。 昭和53年3月末で,日本道路公団に係るものが52路線721km,地方道路公社に係るもの58路線632km,地方公共団体に係るもの68路線818kmがある。

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(参考)道路投資に関する主要法制度 i)道路法(昭和27年制定) 道路に関する基本法であり,道路の種別,指

定認定手続,管理体系,占用・保全規定,費用

負担区分等を定めている。 ii)高速自動車国道法(昭和32年制定) 高速自動車国道に関する基本法である。

iii)国土開発幹線自動車道建設法(昭和32年制定) 全国的な高速自動車交通網の新たな形成を目

的として制定された法律である。 iv)道路整備特別措置法(昭和31年制定) 有料道路に関する基本法である。

v)道路整備緊急措置法(昭和33年制定) 道路整備5ヵ年計画,そのための道路整備費

財源・国の負担金割合の特例等の根拠法であ

る。 vi)道路整備特別会計法(昭和33年制定)

道路整備5ヵ年計画中の道路事業費を経理するために特別会計を設置する事を定めたものであ

る。 vii)諸特定財源に関する個別法

揮発油税法,石油ガス税法,地方税法等。 2. 道路整備計画 (1) 道路整備長期計画の策定 道路整備事業費のらち,国に関するものはお

おむね建設省の管掌であり,他の歳出同様,毎

年度の予算の成立によって支出は可能となる。

しかし,道路投資の長期的性格に鑑み包括的計

画に基づいて執行されることが必要である。こ

の観点より,昭和28年に「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」が制定されたのを機に,

昭和29年度初年度の第1次道路整備5ヵ年計画が発足した。その後,昭和33年に道路整備緊急措置法が制定され,現行の道路5ヵ年計画の制度が確立した。毎年度の道路事業費は原則的にこの

計画の執行の一部として為され,有料道路 ・地方単独事業についても策定されるので,道

路5ヵ年計画の意思決定過程がその後の単年度の道路事業投資の意思決定を包摂すると考える

ことができよら。 i)道路5ヵ年計画の機能 建設大臣が道路整備緊急措置法第2条に基づいて作成し,閣議決定される実行計画であ

る。機能としては,道路の体系化による整合

性の確保,および長期に渡る効果的,経済的

遂行にある。 ii)道路5ヵ年計画の策定 以下のような手順により成立し実行機能を

有する計画として執行される。イ)計画上考慮

すべき経済フレーム等の検討,ロ)道路整備目

標の明確化,ハ)交通需要の推計,ニ)投資規模

原案作成と財源措置の検討,ホ)具体的事業内

容の原案作成,へ)関係機関との調整,ト)閣議

了解,チ)閣議決定 (2) 道路整備5ヵ年計画の推移 道路整備5ヵ年計画は昭和29年度に第1次計画が発足して以後,経済情勢・交通需要の変化等

に対処するために,第1次計画4ヵ年,以後第6次計画まで各3ヵ年で改訂が行われ,現在昭和53年度を初年度とする第8次計画が実施されている。第8次計画は総額で第2次計画の29倍,一般道路事業で第1次計画の52倍,第2次計画の22倍となっている。進捗率は過去おおむね50~60%である。各計画の詳細は,表IV-4のような推移を示しているが,殆んどが国の経済計画と斉合

的に策定されている。 B.道路財源調達の構造 1.道路財政の仕組 (1)道路財源と事業主体

i)道路事業の施行主体別分類 イ)一般道路事業 直轄事業……国が直接実施 補助事業……地方公共団体が国から補助を

受けて実施。 ル)有料道路事業……国・地方公共団体から

の出資金,財政投融資等から

の借入金をもとにして,公団 ・公社が実施。

ハ)地方単独事業……地方公共団体が独自に

実施。 ii)道路事業の財源別分類 イ)国費 国庫の負担に係る分で,特定財源と一般財

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- 65 -

補論II 道路事業制度の概要

源より成る。支出の対象としては,一般道路

の直轄事業負担金・補助事業補助金,有料道

路の出資金(四公団)・利子補給金(日本道

路公団)・無利子貸付金(地方公共団体,地

方道路公社)がある。

イ 特定財源……道路整備費に充当すること

を法定されている財源で,揮発油税全額

と石油ガス税の1/2の合計である(道路整備緊急措置法3条)。

ロ 一般財源……一般税収等から成る一般会 表IV-4 道路五ヵ年計画の推移

第 1 次 (29~33年度)

第 2 次 (33~37年度)

第 3 次 (36~40年度)

第 4 次 (39~43年度)

対応経済 計 画

新長期経済計画 所得倍増計画 中期経済計画

策定目的

等 28.7「道路財源措置法」 ・5ヵ年計画法定化 ・揮発油税特定財源化 ・補助率,負担率を高く する。

・神武景気による交通需

要増 ・ワトキンス道路調査団

報告 ・経済計画の公共投資計

画-斉合化 ・33年「道路整備緊急措置法」

「〃特別会計法」

・前計画 GNP 見通し6.5%33~35実績9.5%→新計画10年平均7.2% ・東京オリピックの準

備 ・35年「国土開発縦貫道法」 「東海道幹線道法」

・輸送需要の計画以上の

増 ・自動車専用道の建設 ・地域開発 ・舖装・安全対策

策定方法 ・揮発油税収集を勘案す

ることにより総額決定 ・個別積上 自動車道路綱調査によ

り将来の交通量予測方

式により試算して必要

事業量を積上げる (この方法は以後同様)

・道路原単位 =道路資産額 /台数 (31年66.4万円 /台 )

→投資額 = (原単位±10%) ×自動車台数増分

→6,600~9,500億円

・同左 (34年価格31年原単位

77万円/台)

・同左 (37年原単位64.7万円/台)

第 5 次

(42~46年度) 第 6 次

(45~49年度) 第 7 次

(48~52年度) 第 8 次

(53~57年度) 対応経済

計 画 経済社会発展計画 新経済社会発展計画 経済社会基本計画 (50年代前期経済計画)

策定目的

等 ・需要の計画以上の増 ・41年幹線自動車網決定 ・本四,関門,万博の新

規着手 ・人口動態による分配 ・流通の合理化

・44「新全国総合開発」(60年を目標とした長期計画)

・43「都市計画法」 ・新財源政策導入

民間資金の導入 負担原則確立

・「新国土長期構想」 ・過密・過疎の解消 ・生活環境の改善

・安全対策(地震対策等)・生活基盤(バス路線等)・生活環境(騒音,街路)・発展基盤(高速,本四)・維持の充実

策定方法 「道路ビジョン」の一環

(60年目標の長期計画) ・先進国における 1人当台数/1人当GNPの相関から →60FYの台数,交通量 →整備必要延長 ×単価=投資

・同左 (60年目標長期計画経済水準見通し等) →自動車台数,走行数 → 地域別貨物量

目的別旅客数 →整備必要道路延長 ×単位=投資

65年目標 中期計画 75 〃 長期計画 ・上記5点の施策別投資の長期見通し

・同左

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- 66 -

表IV-4(続)

○道路5ヵ年計画事業費内訳 (百万円)

事業費区分 第 1 次 第 2 次 第 3 次 第 4 次 第 5 次 第 6 次 第 7 次 第 8 次一般道路事業 国 道 地 方 道 そ の 他(1)

有料道路事業 日本道路公団 首都高速公団 阪神高速公団 本四連絡橋公団 そ の 他(2)

地方単独事業 予 備 費

260,214133,340121,078

5,796

260,124

610,000 322,674 255,753

31,573 200,000 140,762

59,238

190,000

1,000,000

1,300,000703,422549,578

47,000450,000331,100118,900

350,000

2,100,000

2,200,0001,143,078

982,69674.316

1,100,000740,000225,000135,000

800,000

4,100,000

3,500,0001,549,2001,783,200

217,6001,800,0001,260,000

290,000230,000

20,0001,100,000

150,0006,600,000

5,200,000 2,305,300 2,543,900

350,800 2,500,000 1,630,000

360,000 290,000

45,000 175,000

2,550,000 100,000

10,350,000

9,340,000 3,757,300 4,951,400

631,300 4,960,000 3,200,000

460,000 340,000 300,000 660,000

4,700,000 500,000

19,500,000

13,500,0005,247,9006,970,6001,281,5006,800,0004,530,000

650,000440,000470,000710,000

7,500,000700,000

28,500,000

(注) (1)の“その他”は,特定交通安全施設等事業,雪寒事業,調査,機械整備の計である。

(2)の“その他”は,有料道路助成(指定都市高速道路,一般有料道路)である。 (各道路整備5ヵ年計画資料より)

計から充当される財源 ロ) 地方費

都道府県・市町村等地方公共団体の負担に

係るもので,特定財源と一般財源より成る。

支出対象としては,国の直轄事業・補助事業

の地方負担金,有料道路事業の出資金・交付

金,更に地方単独事業への支出が有る。 イ 特定財源……国税として徴収された地方

に譲与される譲与税(地方路譲与税・石

油ガス譲与税・自動車重量譲与税)と地

方税(軽油引取税・自動車取得税)より

成る。 ロ 一般財源……地方の一般税収と国からの

地方交付税交付金等から充当される財源

である。又道路事業に対する地方債の起

債は原則的に認められていないが,昭和51~53年度において臨時地方道路整備事業債が許可された。

ハ) 借入金 現在まで,専ら有料道路事業の主要財源と

なっている。 イ 道路四公団の借入金 (a)財投資金による借入金……全額が公団債であり,政府引受債と政府保証債より成

る。(b)縁故債……道路四公団の信用のみによる純粋な私債券で,ほとんど地元金融機

関によって消化される。 ロ 地方公共団体,地方道路公社の借入金 (a)地方債……地方公共団体自身が有料道路事業のために発行する債券である。(b)特別転貸債……指定都市高速道路公社が地方

公共団体を通じて間接的に国の財投資金を借

入れるための債券である。(c)縁故債……地方道路公社が独自の信用によって発行す

る私債券である。 iii)道路整備特別会計 道路整備特別会計は昭和33年制定の道路整

備特別会計法に依り,昭和33年度より国の特別会計の一つとして設置された。この特別会

計によって道路整備5ヵ年計画事業は総て経理されることとなり,国の特定財源の集中経

理,直轄事業地方分担金相当額の借入金によ

る処理,および一般的借入も可能となり,道

路整備を実施してゆくため財源面の強い裏打

ちが出来上がった。

*同特別会計の歳出入構造は表 IV-5のようにな

る。

Page 16: 4 状態空間モデルの構造推定につ いて ARIMAX · わち,現実のデータから同定できるのは可観測 正準型のパラメータあるいはarimaxモデル

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補論II 道路事業制度の概要

表IV-5

歳 入 歳 出 ・一般会計からの受入 (特定財源分全額,一

般財源受入) ・その他収入 (地方公共団体負担金

収入,付帯工事負担金

収入等)

・道路整備事業支出 (道路,街路事業費,公

団への出資金,地方公共

団体への貸付金等) ・その他支出 (付帯工事費,予備費等)

iv)国の負担および補助制度 原則的に,当該道路の道路管理者が費用を

負担することになっている(道路法49条)。しかし,原則を一率に用いるのは必ずしも適切

ではないので,個別に負担割合は法定されて

いる(道路法50条他)。一般国道に関する負担割合はおおむね表IV-6のようになる。

表IV-6

一 般 国 道 国 地方

国の直轄 新 改 築 費

都道府県が実施 指定区間内

維持・修繕・管理費 指定区間外

2/3 1/2 1/2 (1/3以内可)

1/3 1/2 1/2

(2)道路財源の推移 i)道路投資の推移 昭和29年度において611億円であった道路投資は,昭和53年度当初予算では47,199億円となり実に77倍となっている。これは,この期間の国民総生産の伸びの27倍程度と比べて極めて急激に増大してきたことが窺われる。 また,国民総生産に対する道路投資(最終

予算)の比率をみてみても,昭和29年度0.78 %であったものが,昭和38~45年度でほぼ2 %~2.3%程度に至り,昭和46,47年度は2.5 %を上回るに至った。しかし,その後石油シ

ョック後の需要抑制により低下し,昭和53年度当初で2.2%程度である。 道路投資の伸びは,昭和29~38年度で平均

29%,昭和39~53年度で平均10%程度であり,国の一般会計の各々12%,8%を上回る伸びである(図IV-3,図IV-4参照)。

このような大幅な道路投資の背景として

は,国民経済の拡大に伴う大幅な自動車交通

への需要があるが,更に特定財源・財投資金

等道路財源の拡充は特記されよう。 ii) 道路財源の推移 国費は昭和29年度221億円から昭和53年度当初で16,586億円で75倍,地方債は同じく369億円から15,315億円で42倍と大幅に増大している。国費と地方費と借入金の構成比を見てみ

ると,昭和42年度までほぼ国費が42~51%で他を上回っていたが,昭和43年度以後国費34~39%に対し地方債が40~47%で財源の中心にとって代わった。しかし,ここ2年間ほ国費が地方費と逆転している。 借入金の動きは顕著であり,昭和29年度の

4%から昭和53年度当初の33%に至るまでほば一貫して拡大を続け,昭和51年度以後国費 ・地方費に比肩するに及んでいる(図IV-5参照)。 特定財源の動きについてみると,国費にお

いてその割合は昭和45年度までおおむね90%近くを占めていたが,昭和46~49年度には60数%に低下した。そこで,昭和49,51年度と財源対策が採られ,昭和53年度当初では78%を占めている(図IV-6参照)。地方費中の特定財源は昭和49年度まで40%前後で推移してきたが,国費と同様の財源対策により昭和53年度当初で57%に及んでいる。(図IV-7参照)尚,国費・地方費とも過去道路5ヶ年計画策定時に特定財源の手当(自動車関係税の新設,増

税等)が為されてきている。 2.各種財源の仕組 (1)特定財源 特定財源制度の推移をみると以下のようにな

る。 昭和28年 揮発油税特定財源化(「道路整備

費財源等に関する臨時措置法」) 29年 揮発油譲与税措置 30年 揮発油譲与税を地方道路譲与税に組替

31年 地方税法中に軽油引取税設置