3.3 逆川 - 静岡県公式ホームページ ふじの ......3...

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31 3.3 逆川 3.3.1 文献・ヒアリング調査 1)文献調査 文献調査は、表 3.3.1 に示す文献について整理を行った。 3.3.1 文献一覧 No 水域の概要 1 気象庁ホームページ http://www.jma.go.jp/jma/index.html 2 静岡県(2003)漁場計画の樹立.静岡県公報第 1504 . 3 静岡県交通基盤部河川砂防管理課(2011)静岡県河川指定調書. No 水質状況 1 静岡県県民部環境局生活環境室(2007)平成 18 年度 静岡県公共用水域及び地下水の水質測定結果. 2 静岡県県民部環境局生活環境室(2008)平成 19 年度 静岡県公共用水域及び地下水の水質測定結果. 3 静岡県県民部環境局生活環境室(2009)平成 20 年度 静岡県公共用水域及び地下水の水質測定結果. 4 静岡県くらし・環境部環境局生活環境課(2010)平成 21 年度 静岡県公共用水域及び地下水の水質測定結果. 5 静岡県くらし・環境部環境局生活環境課(2011)平成 22 年度 静岡県公共用水域及び地下水の水質測定結果. No 河床構造 1 静岡県自然環境調査委員会.県版レッドデータブック 調査票. No 横断工作物等 1 国土交通省国土地理院 地図閲覧サービス「ウオッちず」 http://watchizu.gsi.go.jp/ 2 二級河川 太田川水系逆川 平面図.静岡県袋井土木事務所提供資料. No 漁業権の設定状況等 1 静岡県(1964)静岡県内水面漁業調整規則. 2 静岡県(2003)漁場計画の樹立.静岡県公報第 1504 . 3 静岡県(2010)平成 23 年目標増殖量.静岡県公報第 2252 . 4 静岡県産業部水産業局水産資源室栽培養殖スタッフ(2008)遊漁のしおり(静岡県の漁場案内). No 産卵場所及び幼稚仔の生育状況 文献なし No 水生生物の生息状況 1 板井隆彦(1982)静岡県自然環境基本調査 淡水魚類調査報告書. 2 板井隆彦(1982)静岡県の淡水魚類. 3 板井隆彦・金川直幸(1989)静岡県の淡水魚類 追補 1.静岡女子大学研究紀要,第 21 4 板井隆彦・金川直幸・杉浦正義(1990)静岡県の淡水魚類 追補 2.静岡女子大学研究紀要,第 22 . 5 静岡県生活環境部自然保護課編(1985)静岡県の自然環境-静岡県自然環境基本調査の概要-. 6 静岡県自然環境調査委員会編(2004)まもりたい静岡県の野生生物-県版レッドデータブック-<動物編>. 7 静岡淡水魚研究会(1984)活動報告.ざこ,第 8 . (1) 水域の概要 逆川は二級河川太田川の支流で、掛川市東山合戸字貝戸地先を起点として太田川の東側を单西 に流れ、馬込沢川、垂木川、西山沢川、東山沢川、倉真川、神代地川、海老名川等の支流を集め て太田川の支流である原野谷川に合流する延長 23.18km の二級河川である(静岡県交通基盤部河 川砂防管理課,2011)。 流域の年平均気温は 15.817.1℃(気象庁 HP:アメダス,磐田 20012010 年)と温暖な気 候である。静岡県によって全域及び支流の倉真川の一部がアユ、アマゴ、ニジマスの漁場に指定 されており、対象魚については水産資源としての維持管理を行うこととなっている(静岡県, 2003)。

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    3.3 逆川

    3.3.1 文献・ヒアリング調査

    1)文献調査

    文献調査は、表 3.3.1 に示す文献について整理を行った。

    表 3.3.1 文献一覧 No 水域の概要

    1 気象庁ホームページ http://www.jma.go.jp/jma/index.html

    2 静岡県(2003)漁場計画の樹立.静岡県公報第 1504 号.

    3 静岡県交通基盤部河川砂防管理課(2011)静岡県河川指定調書.

    No 水質状況

    1 静岡県県民部環境局生活環境室(2007)平成 18 年度 静岡県公共用水域及び地下水の水質測定結果.

    2 静岡県県民部環境局生活環境室(2008)平成 19 年度 静岡県公共用水域及び地下水の水質測定結果.

    3 静岡県県民部環境局生活環境室(2009)平成 20 年度 静岡県公共用水域及び地下水の水質測定結果.

    4 静岡県くらし・環境部環境局生活環境課(2010)平成 21 年度 静岡県公共用水域及び地下水の水質測定結果.

    5 静岡県くらし・環境部環境局生活環境課(2011)平成 22 年度 静岡県公共用水域及び地下水の水質測定結果.

    No 河床構造

    1 静岡県自然環境調査委員会.県版レッドデータブック 調査票.

    No 横断工作物等

    1 国土交通省国土地理院 地図閲覧サービス「ウオッちず」 http://watchizu.gsi.go.jp/

    2 二級河川 太田川水系逆川 平面図.静岡県袋井土木事務所提供資料.

    No 漁業権の設定状況等

    1 静岡県(1964)静岡県内水面漁業調整規則.

    2 静岡県(2003)漁場計画の樹立.静岡県公報第 1504 号.

    3 静岡県(2010)平成 23 年目標増殖量.静岡県公報第 2252 号.

    4 静岡県産業部水産業局水産資源室栽培養殖スタッフ(2008)遊漁のしおり(静岡県の漁場案内).

    No 産卵場所及び幼稚仔の生育状況

    文献なし

    No 水生生物の生息状況

    1 板井隆彦(1982)静岡県自然環境基本調査 淡水魚類調査報告書.

    2 板井隆彦(1982)静岡県の淡水魚類.

    3 板井隆彦・金川直幸(1989)静岡県の淡水魚類 追補 1.静岡女子大学研究紀要,第 21 号

    4 板井隆彦・金川直幸・杉浦正義(1990)静岡県の淡水魚類 追補 2.静岡女子大学研究紀要,第 22 号.

    5 静岡県生活環境部自然保護課編(1985)静岡県の自然環境-静岡県自然環境基本調査の概要-.

    6 静岡県自然環境調査委員会編(2004)まもりたい静岡県の野生生物-県版レッドデータブック-<動物編>.

    7 静岡淡水魚研究会(1984)活動報告.ざこ,第 8 号.

    (1) 水域の概要

    逆川は二級河川太田川の支流で、掛川市東山合戸字貝戸地先を起点として太田川の東側を单西

    に流れ、馬込沢川、垂木川、西山沢川、東山沢川、倉真川、神代地川、海老名川等の支流を集め

    て太田川の支流である原野谷川に合流する延長 23.18km の二級河川である(静岡県交通基盤部河

    川砂防管理課,2011)。

    流域の年平均気温は 15.8~17.1℃(気象庁 HP:アメダス,磐田 2001~2010 年)と温暖な気

    候である。静岡県によって全域及び支流の倉真川の一部がアユ、アマゴ、ニジマスの漁場に指定

    されており、対象魚については水産資源としての維持管理を行うこととなっている(静岡県,

    2003)。

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    (2) 水質状況

    逆川の水域類型は鞍下橋より下流で河川 C、鞍下橋から上流で河川 A であり、毎年、静岡県に

    よって環境基準点の曙橋、鞍下橋、補助地点の逆川橋において水質等の測定が実施されている。

    環境基準類型は曙橋と逆川橋で C 類型、鞍下橋で A 類型である。過去 5 年間(平成 18~22 年度)

    の BOD、全亜鉛、水温の検出状況を以下に示す。

    ① BOD(生物化学的酸素要求量)

    平成 18~22 年度における各地点の BOD 値を表 3.3.2 に示す。

    年間の環境基準値の達成状況を評価する 75%水質値は、曙橋で 2.3~3.5mg/l、逆川橋で 2.7~

    4.9mg/l、鞍下橋で 1.0~1.5mg/l であり、最も上流の鞍下橋でやや低く、3 地点の中央に位置する

    逆川橋でやや高かった。各地点ともに河川における生活環境の保全に関する環境基準値(鞍下橋:

    2mg/l 以下、曙橋・逆川橋:5mg/l 以下)よりも低い値で推移した。

    表 3.3.2 逆川の環境基準点及び補助地点における BOD 値(mg/l)

    曙橋 調査年度 逆川橋 調査年度 鞍下橋 調査年度

    【環境基準点】 H.18 H.19 H.20 H.21 H.22 【補助地点】 H.18 H.19 H.20 H.21 H.22 【環境基準点】 H.18 H.19 H.20 H.21 H.22

    4月 1.2 4.1 3.0 3.7 2.3 4月 2.6 5.6 4.7 3.3 2.3 4月

  • 33

    0

    10

    20

    30

    4月 6月 8月 10月 12月 2月

    水温

    (℃

    鞍下橋

    H.18 H.19 H.20 H.21 H.22

    0

    10

    20

    30

    4月 6月 8月 10月 12月 2月

    水温

    (℃)

    逆川橋

    H.18 H.19 H.20 H.21 H.22

    0

    10

    20

    30

    4月 6月 8月 10月 12月 2月

    水温

    (℃

    曙橋

    H.18 H.19 H.20 H.21 H.22

    図 3.3.1 逆川の環境基準点における平均水温の推移

    ③ 全亜鉛の検出状況

    平成 18~22 年度における各地点の全亜鉛の検出状況を表 3.3.4 に示す。

    年間の環境基準値の達成状況を評価する年平均値は曙橋で 0.005~0.013mg/l、逆川橋で 0.005

    ~0.029mg/l、鞍下橋で 0.002~0.012mg/l であり、いずれも河川における生活環境の保全に関す

    る環境基準値(0.03mg/l 以下)よりも低い値で推移した。

    表 3.3.4 逆川の環境基準点における全亜鉛の検出状況(mg/l) 曙橋 調査年度 逆川橋 調査年度 鞍下橋 調査年度

    【環境基準点】 H.18 H.19 H.20 H.21 H.22 【補助地点】 H.18 H.19 H.20 H.21 H.22 【環境基準点】 H.18 H.19 H.20 H.21 H.22

    4月 0.009 0.012 0.014 0.002 0.005 4月 0.010 0.013 0.048 0.002 0.011 4月 0.004 0.002 0.011

  • 34

    (3) 河床構造

    文献調査において河床構造及び植生状況の記述が確認できたのは、神子地橋と葛巻橋の 2 地点

    であった(表 3.3.5)。

    逆川の河床材料は主に石と砂礫であり、植生としてはマコモ、ヨシ等が記載されている。

    表 3.3.5 逆川の河床構造及び植生状況

    河床材料

    地点・距離

    神子地橋 葛巻橋

    10.8km 20.7km

    岩盤またはコンクリート

    -

    石 (100mm 以上) ○

    礫 (2~100mm) ○

    砂 (0.074~2mm)

    泥 (0.074mm 以下)

    護岸の状況 二面コンクリート、蛇篭 二面護岸、一部自然

    植生の状況 クズ、マコモ、タデ類他 ヨシ

    凡例)-:不明(情報なし)

    (4) 横断工作物等

    原野谷川の合流点から起点までの区間には 22 基の横断工作物が確認され、床固工が多く設置さ

    れていた(表 3.3.6、図 3.3.2)。魚道の有無については不明であった。

    表 3.3.6 逆川に設置されている横断工作物

    No. 名称 距離(km) 種類 魚道の有無

    1 名称不明 2.1 不明 不明

    2 名称不明 2.6 床固工 不明

    3 名称不明 2.8 不明 不明

    4 名称不明 3.3 不明 不明

    5 名称不明 4.1 床固工 不明

    6 名称不明 5.9 不明 不明

    7 名称不明 6.8 床固工 不明

    8 名称不明 7.1 床固工 不明

    9 名称不明 7.4 床固工 不明

    10 名称不明 7.9 床固工 不明

    11 名称不明 8.8 床固工 不明

    12 名称不明 15.6 不明 不明

    13 名称不明 15.7 不明 不明

    14 名称不明 15.8 不明 不明

    15 名称不明 16.4 不明 不明

    16 名称不明 16.7 不明 不明

    17 名称不明 20.8 床固工 不明

    18 名称不明 21.1 不明 不明

    19 名称不明 21.2 不明 不明

    20 名称不明 21.7 不明 不明

    21 名称不明 22.5 床固工 不明

    22 逆川五号堰堤 23.0 堰 不明

  • 図3

    .3.2 逆川における横断工作物等の位置

    35

  • 36

    (5) 漁業権の設定状況

    ① 漁業権の設定状況等

    原野谷川水系において漁業権を有する団体は、原野谷川非出資漁業協同組合(以下、原野谷川

    漁協)であり、原谷川本流及び支流の逆川、倉真川、西之谷川において第 5 種共同漁業権が設定

    されている。

    逆川においては、掛川市大野地先の大野橋下流端(20.7km)から下流が設定区間であり、漁業

    権の対象魚種は、アユ、アマゴ、ニジマスである。原野谷川漁協の漁業権設定状況等の詳細を表

    3.3.7 に示す。

    表 3.3.7 原野谷川漁協及び漁業権設定状況の詳細

    頄目 内容

    共同組合名 原野谷川非出資漁業協同組合

    所在地 掛川市肴町 3-3

    免許番号 静岡県知事免許 内共第 24 号(第 5 種共同漁業権)

    設定区間 袋井市広岡 1286-1 地先の広愛大橋上流端から上流の原野谷川、及び支流逆川(掛川市大野 544-1 地先の大野橋下流端から下流の区域)、倉真川(掛川市倉真 7881-2地先の松葉白山 2 号橋下流端から下流の区域)、西之谷川の区域

    漁業権設定期間 平成 25 年 12 月 31 日まで

    遊漁期間 アユ アマゴ ニジマス

    :6 月 1 以降で組合が定め公示する日~12 月 31 日 :3 月 1 日から 10 月 31 日まで :周年

    対象魚種名及び 目標増殖量

    アユ アマゴ ニジマス

    :165kg :1,995 尾 :4,500 尾

    ② 主要魚介類の分布と放流状況

    平成 23 年度は、アユ、アマゴ、ニジマスが放流された(表 3.3.8)。逆川では日坂においてアユ

    が放流された。アユは天竜川河口産、県種苗センター産である。

    表 3.3.8 逆川における放流状況の詳細

    放流魚種 放流量 放流位置

    アユ 170kg 逆川:日坂、原野谷川:全域

    アマゴ 120kg 逆川:放流なし、原野谷川:居尻地区(ダム上流)

    ニジマス 200kg 逆川:放流なし、原野谷川:大和田地区(ダム下流)

    (6) 産卵場及所び幼稚仔の生育状況

    産卵場及び幼稚仔の生息状況に関する情報は得られなかったため、不明である。

  • 図3

    .3.3 逆川における魚類放流場所、漁業権の設定状況

    37

  • 38

    (7) 水生生物の生息状況

    ① 魚介類相

    文献調査において、魚類 3 目 4 科 13 種、甲殻類 1 目 1 科 1 種が確認された(表 3.3.9)。

    文献調査において場所が特定できた調査地点は 4 地点で

    あった。

    確認された魚介類の生活型についてみると、純淡水性の

    種が 93%と多く、回遊性の種は 7%、汽水・海水性の種は

    確認されなかった。確認地点別にみると純淡水性の種はす

    べての地点で確認されたが、回遊性の種(オオヨシノボリ)

    は上流域の葛巻橋だけで確認された。確認種数は、各地点

    で 3~7 種と少なかった。

    確認種のうち、重要種は魚類 2 種(カワムツ、スジシマ

    ドジョウ小型種東海型)が確認された。

    外来種は甲殻類 1 種(アメリカザリガニ)が確認された。

    本種は要注意外来生物に指定されている。

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    山口橋

    神子地橋

    葛巻橋

    久保貝戸

    魚類

    種数

    0

    2

    4

    山口橋

    神子地橋

    葛巻橋

    久保貝戸

    回遊 純淡水

    種数

    甲殻類

    図 3.3.5 地点別の魚介類確認状況

    純淡水

    93%

    回遊

    7%

    純淡水 回遊 図 3.3.4 確認種の生活型割合

  • 39

    表 3.3.9 魚介類確認種一覧(文献調査)

    No. 分類群 山口橋 神子地橋 葛巻橋 久保貝戸

    10.1 10.8 20.7 22

    1 コイ 純淡水 ● ● ●

    2 ギンブナ 純淡水 ● ●

    フナ属 純淡水 ●

    3 オイカワ 純淡水 ● ● ●

    4 カワムツ 純淡水 N-Ⅱ/★ ●

    5 タカハヤ 純淡水 ●

    6 モツゴ 純淡水 ● ●

    7 カマツカ 純淡水 ● ● ● ●

    8 ドジョウ 純淡水 ● ●

    9 シマドジョウ 純淡水 ● ● ●

    10 スジシマドジョウ小型種東海型 純淡水 EN EN ●

    11 ナマズ ナマズ ナマズ 純淡水 ●

    12 オオヨシノボリ 回遊 ●

    13 カワヨシノボリ 純淡水 ● ● ● ● ●

    3目 4科 1種 2種 0種 5種 6種 5種 3種 11種

    1 甲殻類 エビ アメリカザリガニ アメリカザリガニ 純淡水 要注意 ●

    1目 1科 1種 0種 0種 1種 0種 1種 0種 0種 0種

    1 6 1,6 1 2,3,4,5,7注) ・目名、科名、種名及び配列は主に国土交通省(2010)に従った。

    ・生活型について、魚類はリバーフロント整備センター(2006)及び川那部ほか編(2001)を参考に区分した。・外来種について、板井(1982)、日本生態学会編(2002)を参考に区分した。・○○属(科)の場合、他に同じ属(科)の種がリストアップされている場合には種数を計上せず、他に同じ属(科)の種がリストアップされていない場合には1種として計上する。

    凡例) 生活型 純淡水:淡水域に生息する種  回遊:海と河川を行き来する回遊性の種  汽水・海水:主に汽水・海水域に生息する種重要種 EN:絶滅危惧ⅠB類 N-Ⅱ:分布上注目種等  /★:天然分布区域への移入あり

    国:甲殻類は環境省自然環境局野生生物課(2006)、魚類は環境省自然環境局野生生物課(2007)から抽出した。県(西):静岡県(2007)静岡県版レッドリスト淡水魚別表(西部地域)から抽出した。

       外来種 要注意:要注意外来生物   文献番号 表3.3.1参照

    魚類

    文献No.

    13種

    生活型

    重要種

    外来種国 県(西) 不明

    種名

    コイ

    スズキ

    コイ

    ドジョウ

    ハゼ

    目名 科名

    ② 水域類型に対応する魚介類

    文献調査で確認された種について、水生生物保全環境基準(資料編 6)にあてはめるため、環

    境省類型生物及び静岡県類型生物に選定されている種を抽出した。なお、オオヨシノボリは静岡

    県類型生物では成魚は生物 A とされているが、文献に体サイズについての記述がないため、環境

    省類型生物により生物 B として扱った。

    その結果、生物 A は魚類 2 種、生物 B は魚類 6 種が抽出された(表 3.3.10)。生物 A の種のう

    ち、カワヨシノボリはすべての地点で確認されたが、タカハヤの確認地点は不明であった。

    生物 B の種は各地点で 1~3 種と少なく、上流・下流による相違は明確でなかった。

    表 3.3.10 水域類型に対応する魚介類の確認状況(文献調査)

    類型

    No. 分類群 山口橋 神子地橋 葛巻橋 久保貝戸 不明

    10.1 10.8 20.7 22

    1 タカハヤ 生物A ●

    2 カワヨシノボリ 生物A ● ● ● ● ●

    1種 1種 1種 1種 2種

    1 魚類 コイ 生物B ● ● ●

    2 ギンブナ 生物B ● ●

    フナ属 生物B ●

    3 オイカワ 生物B ● ● ●

    4 ドジョウ 生物B ● ●

    5 ナマズ 生物B ●

    6 オオヨシノボリ 生物B 生物A* ●

    2種 3種 3種 1種 4種

    1 6 1,6 1 2,3,4,5,7注) 種名及び配列は主に国土交通省(2010)に従った。

    凡例) 類型 生物A:イワナ、サケ・マス等比較的低温域を好む水生生物及びこれらの餌生物が生息する水域

    生物B:コイ・フナ等比較的高温域を好む水生生物及びこれらの餌生物が生息する水域

    環境省:中央環境審議会水環境部会水生生物保全環境基準類型指定専門委員会(2006)から抽出した。

    静岡県:静岡県環境審議会水質部会(2010)から抽出した。

    文献番号 表3.3.1参照

    *:オオヨシノボリの「生物A」は成魚についてのみ生物Aとして扱う。

    地点・距離

    環境省 静岡県

    魚類

    2種

    6種

    文献No.

    種名

  • 40

    2)ヒアリング調査

    表 3.3.11 に逆川の魚介類生息状況に関するヒアリング調査結果を示す。なお、各ヒアリング議

    事録は、資料編(ヒアリング調査議事録)に示した。

    表 3.3.11 逆川の魚介類生息状況に関するヒアリング調査結果

    ヒアリング頄目 対象者 内容

    魚介類の生息に関する情報

    板井隆彦氏 ・オイカワは上流まで生息しており、個体数も多い。 ・倉真川合流部付近でスジシマドジョウ小型種東海型が

    確認されたことがある。 ・上流域にはアカザが生息している可能性がある。

    放流に関する情報 松井房子氏 ・逆川ではアユを放流している。 ・他に原野谷川の全域でアユ、アマゴ、ニジマスを放流

    している。

    注) 板井隆彦氏 (静岡県自然史博物館ネットワーク理事) 松井房子氏(原野谷川漁協)

  • 41

    3.3.2 調査結果のとりまとめ

    1)魚介類相

    文献及びヒアリング調査の結果、魚類 4 目 5 科 14 種、甲殻類 1 目 1 科 1 種が確認された(表

    3.3.12)。

    場所が特定できた調査地点は 6 地点であった。

    確認された魚介類の生活型についてみると、純淡水性の種が 13 種と多く、回遊性の種は 2 種、

    汽水・海水性の種は確認されなかった。確認地点別にみると純淡水性の種は逆川全域で、回遊性

    の種は日坂(アユの放流の情報)及び葛巻橋で確認された。

    確認種のうち、重要種は魚類 2 種(カワムツ、スジシマドジョウ小型種東海型)が確認された。

    外来種は甲殻類 1 種(アメリカザリガニ)が確認された。本種は要注意外来生物に指定されて

    いる。

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    倉真川合流

    山口橋

    神子地橋

    日坂

    葛巻橋

    久保貝戸

    回遊 純淡水

    魚類

    種数

    0

    2

    4

    倉真川合流

    山口橋

    神子地橋

    日坂

    葛巻橋

    久保貝戸

    回遊 純淡水

    種数

    甲殻類

    図 3.3.6 地点ごとの確認状況(文献・ヒアリング調査)

    表 3.3.12 逆川における魚介類確認種一覧(文献・ヒアリング調査)

    倉真川合流 山口橋 神子地橋 日坂 葛巻橋 久保貝戸5.9 10.1 10.8 18 20.7 22

    1 コイ 純淡水 ● ● ●

    2 ギンブナ 純淡水 ● ●

    フナ属 純淡水 ●

    3 オイカワ 純淡水 ● ● ●

    4 カワムツ 純淡水 N-Ⅱ/★ ●

    5 タカハヤ 純淡水 ●

    6 モツゴ 純淡水 ● ●

    7 カマツカ 純淡水 ● ● ● ●

    8 ドジョウ 純淡水 ● ●

    9 シマドジョウ 純淡水 ● ● ●

    10 スジシマドジョウ小型種東海型 純淡水 EN EN ○ ●

    11 ナマズ ナマズ ナマズ 純淡水 ●

    12 サケ アユ アユ 回遊 ○

    13 オオヨシノボリ 回遊 ●

    14 カワヨシノボリ 純淡水 ● ● ● ● ●

    4目 5科 1種 2種 0種 1種 5種 6種 1種 5種 3種 11種

    1 甲殻類 エビ アメリカザリガニ アメリカザリガニ 純淡水 要注意 ●

    1目 1科 1種 0種 0種 1種 0種 0種 1種 0種 0種 0種 0種

    ヒア 1 6 ヒア 1,6 1 2,3,4,5,7注) ・目名、科名、種名及び配列は主に国土交通省(2010)に従った。

    ・生活型について、魚類はリバーフロント整備センター(2006)及び川那部ほか編(2001)を参考に区分した。・外来種について、板井(1982)、日本生態学会編(2002)を参考に区分した。・○○属(科)の場合、他に同じ属(科)の種がリストアップされている場合には種数を計上せず、他に同じ属(科)の種がリストアップされていない場合には1種として計上する。

    凡例) 生活型 純淡水:淡水域に生息する種  回遊:海と河川を行き来する回遊性の種重要種 EN:絶滅危惧ⅠB類  N-Ⅱ:分布上注目種等  /★:天然分布区域への移入あり

    国:甲殻類は環境省自然環境局野生生物課(2006)、魚類は環境省自然環境局野生生物課(2007)から抽出した。県(西):静岡県(2007)静岡県版レッドリスト淡水魚別表(西部地域)から抽出した。

       外来種 国内:国内移入(放流を含む)  国外:国外移入  要注意:要注意外来生物確認種 ●:文献   ○:ヒアリング

       文献番号 表3.3.1参照   ヒア:ヒアリング

    科名 種名

    地点・距離

    不明

    魚類 コイ

    スズキ

    コイ

    ドジョウ

    ハゼ

    文献No.

    14種

    生活型

    重要種

    外来種国 県(西)

    No. 分類群 目名

  • 42

    2)水域類型に対応する魚介類

    文献及びヒアリング調査の結果、逆川において水域類型に対応する魚介類は、生物 A は魚類 2

    種、生物 B は魚類 6 種、その他の類型の種は魚類 1 種であった(表 3.3.13)。

    生物 A の確認種のうち、確認地点が多かったのはカワヨシノボリ(4 地点)であり、タカハヤ

    は調査地点が不明であった。

    生物 B の種は、ほぼ全域で 1~3 種が確認された。このうち、オイカワについては学識者から

    上流まで生息し、個体数も多いとの情報を得た。その他の類型の種としてはアユが該当し、原野

    谷川漁協から日坂での放流の情報を得た。

    表 3.3.13 水域類型に対応する魚介類一覧(文献・ヒアリング調査)

    類型

    No. 分類群 倉真川合流 山口橋 神子地橋 日坂 葛巻橋 久保貝戸 不明

    5.9 10.1 10.8 18 20.7 22

    1 タカハヤ 生物A ●

    2 カワヨシノボリ 生物A ● ● ● ● ●

    0種 1種 1種 0種 1種 1種 2種

    1 魚類 コイ 生物B ● ● ●

    2 ギンブナ 生物B ● ●

    フナ属 生物B ●

    3 オイカワ 生物B ● ● ●

    4 ドジョウ 生物B ● ●

    5 ナマズ 生物B ●

    6 オオヨシノボリ 生物B 生物A* ●

    0種 2種 3種 0種 3種 1種 4種

    1 魚類 アユ その他 ○

    0種 0種 0種 1種 0種 0種 0種

    ヒア 1 6 ヒア 1,6 1 2,3,4,5,7注) 種名及び配列は主に国土交通省(2010)に従った。

    凡例) 類型 生物A:イワナ、サケ・マス等比較的低温域を好む水生生物及びこれらの餌生物が生息する水域

    生物B:コイ・フナ等比較的高温域を好む水生生物及びこれらの餌生物が生息する水域

    その他:生息状況について把握しておくことが必要な種

    環境省:中央環境審議会水環境部会水生生物保全環境基準類型指定専門委員会(2006)から抽出した。

    静岡県:静岡県環境審議会水質部会(2010)から抽出した。

    確認種 ●:文献 ○:ヒアリング

    文献番号 表3.3.1参照  ヒア:ヒアリング

    *:オオヨシノボリの「生物A」は成魚についてのみ生物Aとして扱う。

    地点・距離

    環境省 静岡県

    魚類

    2種

    6種

    1種

    文献No.

    種名

  • 43

    3.3.3 逆川における類型あてはめ案

    1)生息域の検討

    (1) 生物 A

    生物 A の種は魚類 2 種が確認されたが、環境省類型生物の生物 A の種は確認されなかった。ま

    た、タカハヤは確認位置が不明であった。

    水域類型の境界である鞍下橋より下流では、山口橋と神子地橋でカワヨシノボリが確認され、

    鞍下橋から上流の水域では、葛巻橋と久保貝戸でカワヨシノボリが確認された。

    逆川における BOD は環境基準(類型 A または C)を満たしており、鞍下橋(環境基準点)に

    おいては生物 A の生息に適するとされる基準(BOD2.0mg/l 以下)も下回っているが、曙橋(環

    境基準点)及び逆川橋(補助地点)においては生物 A の生息に適するとされる基準より高い。ま

    た、水温は上流の環境基準点である鞍下橋においても年最高水温が 23.3~27.2℃と高いことから、

    生物 A の種の生息に適した水域は少ないと推測される。

    (2) 生物B

    生物 B の種は、魚類 6 種が確認された。

    水域類型の境界である鞍下橋より下流ではコイ、ギンブナ(フナ属)、オイカワ、ナマズの 4 種

    が、鞍下橋から上流ではコイ、オイカワ、ドジョウ、オオヨシノボリの 4 種が確認された。

    以上から、逆川の全域において生物 B の種の生息に適していると考えられる。

    2)類型あてはめ案

    逆川の水生生物の保全に係る環境基準の類型あてはめは、環境省類型生物の生物 A の種が確認

    されていないこと、生物 B の種が全域で確認されていることから、鞍下橋より下流、鞍下橋から

    上流はいずれも生物 B とすることが適当であると考えられる(表 3.3.14、図 3.3.7)。

    表 3.3.14 逆川の類型あてはめ案

    頄目 鞍下橋より下流 鞍下橋から上流

    水域類型 河川 C 河川 A

    基準点等 曙橋【環境基準点】 逆川橋【補助地点】 鞍下橋【環境基準点】

    水質

    水温 年平均 17.7℃

    (年最高 28.3℃)

    年平均 16.8℃

    (年最高 27.7℃)

    年平均 16.0℃

    (年最高 27.2℃)

    BOD 環境基準類型 C 環境基準類型 C 環境基準類型 A

    全亜鉛 基準値以下 基準値以下 基準値以下

    水域類型に対応

    する魚介類 生物 A:1 種(国:0 種)、生物 B:5 種

    生物 A:1 種(国:0 種)

    生物 B:4 種

    放流状況 放流なし 放流なし

    類型あてはめ案 生物 B 生物 B

    凡例)水温 年平均値の 5 箇年平均及び 5 箇年の最高値 BOD 環境基準類型 A:2mg/l 以下 環境基準類型 C:5mg/l 以下 全亜鉛 基準値:0.03mg/l 以下(年間平均値)

    水域類型に対応する魚介類(生物 A だけ) 国:環境省が示す水域類型「生物 A」の種

  • 図3

    .3.7 逆川の類型あてはめ案

    44

  • 45

    表 3.3.15 逆川総括表

    垂木川 倉真川↓ ↓

    横断工作物

    ・ 原野谷川 2 2 3 2 :|主な流入河川

    距離(km) 延長49.94km 0 5 10 15 20

    調査地点曙橋

    倉真川合流

    逆川橋

    山口橋

    神子地橋

    鞍下橋

    日坂

    葛巻橋

    久保貝戸

    地点位置(km) 0.9 5.9 6.6 10.1 10.8 12.2 18.0 20.7 22.0

    文献調査 4地点 ● ● ● ●ヒアリング調査 2地点 ● ●

    横断工作物 22地点

    横断工作物

    横断工作物×2

    横断工作物

    横断工作物

    横断工作物

    横断工作物

    横断工作物×2

    横断工作物

    横断工作物

    横断工作物×3

    横断工作物

    横断工作物

    横断工作物

    横断工作物×2

    横断工作物

    横断工作物

    逆川五号堰堤

    水域類型 類型C 河川A

    環境基準点(●)、補助地点(○) ● ○ ●平均 (℃) 17.7 16.8 16.0

    最高 (℃) 28.3 27.7 27.2

    最低 (℃) 5.1 4.7 3.1BOD (75%値,mg/L) 2.8 3.7 1.2全亜鉛 (mg/L) 0.013 0.029 0.012

    環境基準類型 類型C 類型A

    岩盤またはコンクリート

    石 (100mm以上)礫 (2~100mm)砂 (0.074~2mm)泥 (0.074mm以下)

    タカハヤ

    サワガニ ● ● ● ●コイ ● ●ギンブナ ●フナ属 ●オイカワ ● ●ドジョウ ●ナマズ ●オオヨシノボリ ●アユ ○

    漁業権設定 ←  原野谷川非出資漁業協同組合 (アユ・アマゴ・ニジマス)  →

    生物B 生物B

    凡例)水質 水温:最近5年間の年平均水温の平均値,最高値,最低値  BOD(75%値):最近5年間のBOD年75%値の平均値  全亜鉛:最近5年間の全亜鉛の年平均値の最大値横断工作物 数字:横断工作物の数河床材料 ■:存在確認種 ●:文献調査で確認  ○:ヒアリング調査で確認注) タカハヤは確認位置が不明

    その他

    類型あてはめ案

    逆川

    五号

    堰堤

    水質

    水温

    河床材料

    生物A

    生物B