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平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (観光サービス産業の国際競争力強化に関する調査) 2018年3月 株式会社 JTB総合研究所

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平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備

(観光サービス産業の国際競争力強化に関する調査)

2018年3月

株式会社 JTB総合研究所

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I.業務概要

II.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

III.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

目次

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I.業務概要

– 1.業務の目的

– 2.業務フロー

II.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

III.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

目次

2

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I.業務概要

– 1.業務の目的

– 2.業務フロー

II.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

III.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

目次

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観光サービス産業は、裾野の広い総合産業であり、地域への波及効果の高い重要な基幹産業である。本調査では、観光立国の実現に向け、長期的に制度設計を考えるべき論点として、(1)グローバル競争を見据えて国内ホテル事業者の経営力の強化を図ること、(2)高次元で持続的な観光振興施策を実行していくため観光施策に充てる安定的な財源の確保の2点について、諸外国の制度と比較・分析しながら調査を行い、今後の施策の方向性について検討する際の一助となる基礎資料を作成する。

業務の背景と目的

4

訪日外国人旅行者数と旅行消費額の政府目標2020年:4000万人、観光収入8兆円2030年:6000万人、観光収入15兆円 『明日の日本を支える観光ビジョン』(平成29年3月策定)

業務の背景

1) 訪日需要を国富の増加につなげ、経済効果を国内に還元するためには、国内のサービス・観光産業の充実・成長が不可欠

2) ゴールデン・スポーツイヤーズ(2019~21年)を控え、世界最高水準の安心・安全を備えた観光客受入環境整備、国際競争力のある魅力的な観光地づくりの実現が必要

外資系高級ホテルチェーンの日本進出が相次ぐなか、ハイエンド層マーケットにおいて、競争力のある日本発のグローバル・ホテルチェーン構築を振興する産業施策は重要

前年度調査*1結果を踏まえ、国際競争力を有するホテルブランドのあり方、日本発のグローバル・ホテルチェーンの 実現に向けたビジネスモデル等の初期的な考察を行う

業務の目的(1)

テロ等の脅威を未然に防ぎ、入国審査の迅速化や受入環境整備の諸施策の計画的な展開が求められている。一方で財源は逼迫しており、高次元で持続的な観光振興施策を実行していくための財源確保が重要

国内及び他の観光先進国が実施している観光振興財源の確保に関する制度や取組の事例を調査し、今後の施策の参考とする

業務の目的(2)業務の目的

*1 平成28年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤

整備事業(観光サ-ビス産業の国際競争力強化に関する調査)

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I.業務概要

– 1.業務の目的

– 2.業務フロー

II.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

III.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

目次

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(1)日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討、(2)観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討について、文献調査、ヒアリング調査、海外現地調査を行い、検討結果を報告書にとりまとめた。

業務フロー

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(1)日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

(2)観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

文献調査 検討・とりまとめ

ヒアリング調査

1. 東京マーケット、関西マーケットにおける競合ホテルの事例収集

2. 海外富裕層(東アジア・東南アジア)が訪日旅行に求めるサービスの傾向

3. 目指すべきホテル事業のあり方の検討

4. 付帯ビジネス分野に関する検討

5. 事業推進体制の考察1) 事業内容2) 経営体制 等

6. 事業シナリオ想定1) フラグシップホテル2) バジェットホテル

文献調査

1. 日本と諸外国の観光振興予算の現状把握・整理

2. 日本の観光財源フレームの整理

3. 国内外の観光財源創出の事例収集

海外現地調査

4. 米国の観光振興予算、観光財源創出に関する現地ヒアリング調査

検討・とりまとめ

自治体ヒアリング調査

5. 観光振興予算に関する現状と課題の把握

7. 観光財源の導入にあたっての論点と課題

8. 今後求められる観光施策と財源観光振興予算の現状

有識者ヒアリング調査

6. 観光振興予算の課題、投資すべき事業(使途)、財源創出のあり方 等

報告書作成

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I.業務概要

II.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

– 1.調査方針

– 2.事業の考察

– 3.事業のアウトライン

– 4.シナリオ

III.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

目次

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I.業務概要

II.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

– 1.調査方針

– 2.事業の考察

– 3.事業のアウトライン

– 4.シナリオ

III.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

目次

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前年度調査の結果を踏まえ、「日本発グローバル・ホテルチェーン持株会社」の設立準備を念頭に置きながら、国際競争力を有するホテルブランドのあり方、ビジネスライン、経営体制などの初期的な考察を行う。

調査の方針

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出典:経済産業省「平成28年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備事業(観光サ-ビス産業の国際競争力強化に関する調査」

「『グローバル・ホテルチェーン戦略会議』における主な議論」より抜粋

前年度 調査結果

官民連携の推進体制:民が主導し、官が資金面をサポート

《グローバル・ホテルチェーン推進体制(イメージ)》 日本型IR(統合型リゾート)の土台としてホテルチェーンを位置づけ、大きな産業政策へと発展

《事業領域・事業構造》

ホテルチェーン、高級レストラン、ショッピングモール、 地域開発/金融(DMC)、医療・介護、スタジアム・ アリーナ、エンターテイメント等

《事業内容(コンテンツ)》

「日本らしさ」という価値観をキラーファクターとして競争力のあるホテル・チェーンを構築

《ブランディング》

《事業候補地》

東京、大阪で先行的に事業展開

◇前年度調査の結果を踏まえ、国際競争力のあるホテルブランド

のあり方を検討する

◇「日本発グローバル・ホテルチェーン持株会社」の設立準備を

念頭に置く

◇対象はハイエンド層マーケット

本調査における検討の前提

◆グローバル・ホテル・チェーン事業の初期的考察〇 対象マーケット〇 ホテルのブランドイメージ〇 ビジネスライン(事業分野)〇 PLプロジェクション〇 経営体制

本調査のアウトプット

平成28年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備事業(観光サ-ビス産業の国際競争力強化に関する調査

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調査対象 調査項目

文献調査

本調査で検討するグローバル・ホテルチェーンとの競合が想定される国内のブランドホテル、特色あるバジェットホテル

客室規模が偏らないよう留意して選出

① 東京マーケット 59ホテル

② 関西マーケット 40ホテル

1) 各ホテルのデータ収集• 経営主体:会社名、本社所在地、代表者、ホテル数、ホテル立地国数• 客室:客室数、広さ、正規料金• 会議室/宴会場:会場数、特徴(機器 等)• レストラン:店舗数、特徴(星の有無、認知度 等)• 施設・サービスの有無:ラウンジ、バー、ルームサービス、ジム、プール、ジャグジー、スパ、大浴場、サウナ、チャペル、神前式場、ビジネスセンター

2) 各ホテルのSWOT分析• 各ホテルの強み、弱み、機会、脅威を考察

ヒアリング調査

訪日リピーターの海外富裕層について、日本での旅行行動をよく知る関係者。全員が外国人

訪日旅行者数が多い東アジア、東南アジアの富裕層を対象とする

①東京の外資系ホテルコンシェルジュ②東京の外資系ホテルオーナー(在シンガポール)③日本のホテルへの投資家(在シンガホール)④台湾ベースのホスピタリティプライベートエクイティファンド*1の幹部

⑤インドネシアの大手旅行会社役員⑥台湾の大手旅行代理店役員⑦香港のメディア関係者

1) 訪日リピーターの海外富裕層の旅行行動• 現在、人気のある滞在コンテンツ• 今後、ニーズが高まると予想される滞在コンテンツ• 海外の旅行会社が感じる日本の課題、弱み• その他、突出した富裕層の旅行行動

2) 日本のホスピタリティビジネスへの投資ニーズ• 訪日富裕層向け宿泊施設への投資ニーズ• 訪日富裕層向け宿泊施設の開発動向

文献調査は、検討するグローバル・ホテルチェーンとの競合が想定される国内のブランドホテル、特色あるバジェットホテルについて、客室規模が偏らないように調査対象施設を選び、公開資料からデータを収集した。また、各ホテルのSWOT分析を行った。

ヒアリング調査は、訪日リピーターの富裕層の旅行行動をよく知る関係者を対象に、日本での旅行行動、日本のホスピタリティビジネスへの投資ニーズについて意見を聴取した。なお、訪日旅行者数が多い東アジア、東南アジアからの富裕層を対象とした。

文献調査・ヒアリング調査の概要

10*1 プライベートエクイティファンド:未上場企業の株式の取得・引受を行う投資。成長・成熟期の企業に対し比較的大規模な資金を提供する、または株主に売却機会を提供する投資手法

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I.業務概要

II.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

– 1.調査方針

– 2.事業の考察

– 3.事業のアウトライン

– 4.シナリオ

III.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

目次

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文献調査の結果から、外資系のハイエンドブランドホテル、国内資本の「御三家」ホテル、バジェットホテル別に、東京マーケットの競合ホテルの特徴を把握した。

東京マーケットにおける競合ホテルの特徴

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*1 ラックレート(正規客室料金)*2 グランドハイアット東京、ザ・リッツカールトン東京。なお、アマン東京は10万円台から*3 マンダリンオリエンタル東京、パークハイアット東京、グランドハイアット東京など*4 マンダリンオリエンタル東京

*5 アマン東京、ザ・ペニンシュラ東京、コンラッド東京、シャングリ・ラ・ホテル東京、ヒルトン東京など*6 帝国ホテル、ホテルオークラ東京、ホテルニューオータニ*7 ホテルオークラは2019年再開予定の本館550室との合計*8 ホテルや航空会社で単位あたりの収益を最大化する販売戦略

➊外資系 ハイエンドブランドホテル ➋国内資本 「御三家」ホテル*6 ➌バジェットホテル

客室規模 • 160~300室の中規模ホテルが中心 • 900室以上の大規模ホテル*7 • 大規模ホテルから小規模(旅館)まで多様

客室面積 • スタンダードタイプで40~60㎡ • スタンダードタイプで25~40㎡ • スタンダードタイプで15~25㎡

客室単価• 5万円~7万円がボリュームゾーン*1• 外資ブランド内で最高級と位置づけられるホテルは最低価格が8万円台*2

• 4万円~5万円がボリュームゾーン*1 • 1万円~2万円がボリュームゾーン*1• 実勢価格ではイールドマネジメント*8

レストラン

•客室数に対してレストラン数が多いホテルと少ないホテルに分離• レストラン数が多いホテル*3では、ミシュラン1つ星3軒を含む8軒を擁する例*4も有り• レストラン数が少ないホテル*5は、近年増え、「館内レストランで食事」スタイルから「都心の有名店で食事」へと変化か

•外資系ホテルと比較して、客室数に対するレストラン数は充実(ニューオータニ29軒、帝国ホテル13軒、ホテルオークラ(別館のみ)5軒)

•利益率向上のため客室販売を重視する傾向か•飲食は地域の店舗利用を薦める地域連携型、カフェ・バー・居酒屋の併設型など

日本らしさの演出

• ブランド力に加えて「和モダン」の演出に取組み、訪日外国人旅行者の富裕層顧客を獲得

•ホテルの歴史的な経緯から「日本らしさ」を演出する取組みは目立たず

•外国人旅行者に向けた「分かりやすい日本」の表現•建築家、アーティストの作品性を前面に出したブティックホテルが出現

その他

•海外顧客に対する顧客ロイヤリティプログラムの展開力不足

• カプセルホテルの進化(ブティック化、女性・外国人対応)•オフィスビル、旅館からのリノベーション増加• キャッシュレス、AI活用等オペレーションの簡素化•特徴を強調する戦略(book&bed、ロボット)

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超小規模ハイエンドホテル(旅館)がマーケットニッチ

59施設の客室規模と価格を比較すると、東京(都心部)におけるホテルの潜在市場は、①中・大規模ハイエンドホテル、②超小規模ハイエンドホテル(旅館)、③中規模バジェットホテルであると考えられる。

競合ホテル分布図(東京)

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中・大規模ハイエンドホテルがマーケットニッチ

中規模バジェットホテルがマーケットニッチ

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文献調査の結果から、大阪と京都のマーケットにおける競合ホテルの特徴を把握した。

関西マーケットにおける競合ホテルの特徴

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*1 ラックレート(正規客室料金)*2 APAホテルなど*3 スタンダードクラス・2名1室・税込で、帝国ホテル東京は53,400円、大阪は22,600円同様に、リッツカールトン東京は63,250円、大阪は47,150円

《参考》•神戸マーケットには、ハイエンドのラグジュアリーホテルは見当たらない。バジェットホテルとの中間に位置するホテル(客室単価1.5万円~4万円)が多い。

➊大阪 ➋京都

ハイエンドホテル バジェットホテル ハイエンドホテル・旅館 バジェットホテル

客室規模• 160~300室の中規模ホテルが中心

• 大規模ホテルから小規模(旅館)まで多様

• 100~200室の小規模ホテル• 50室以下の極小規模ホテル、旅館

• 100室前後の小規模ホテル• 50室以下の極小規模ホテル、旅館

客室面積 • スタンダードタイプで40~50㎡ • スタンダードタイプで15~25㎡ • ホテルはスタンダードタイプで40~60㎡

• ホテルはスタンダードタイプで15~35㎡

客室単価• 2.5万円~5万円がボリュームゾーン*1

• 1万円~2万円がボリュームゾーン*1

• 7万円~12万円がボリュームゾーン*1

• バジェット志向の訪日外国人旅行者は、民泊施設を多用している可能性がある*4

他地域との比較

• 150室以上で客室単価5万円以上のハイエンドホテルは大阪には見当たらず、デッドマーケットになっている• バジェットホテルは大型ビジネスホテルチェーンが台頭*2•同ブランドのホテルでも、東京に比べて客室の価格が低い*3

•京都市建築基準条例により、ホテルの大型化は難しい。また、景観条例により、建築コストが高くなる•東京や大阪では見られない、極小規模で高単価のホテルや旅館が散見される•小規模なハイエンドラグジュアリーホテルの新規開業及び計画がある*5

デザインの特徴

• 「和モダン」デザインが多くのホテルで採用されている•小規模なブティックホテルがみられる*6

*4 京都市内のAirbnb登録数は5,269施設。東京都新宿区は3,865施設(2017年4月現在)*5 パークハイアット(70室)、アマン(25室)など*6 欧米のホテル用語で、小規模で個性的かつ高級なホテル。大規模なホテルチェーンとの差別化を意図して使われる。その多くは現代的でスタイリッシュなデザイン

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デッドマーケット

中規模以上のハイエンドホテルは関西には見当たらず

40施設の客室規模と価格を比較すると、関西(大阪市、京都市、神戸市)におけるホテルの潜在市場は、大規模ミドルホテル、大規模バジェットホテルであると考えられる。また、中・大規模ハイエンドホテルがデッドマーケットになっている。

競合ホテル分布図(関西)

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大規模ミドルホテル、大規模バジェットホテルがマーケットニッチ

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ヒアリング調査で聴取した意見を、項目別に整理した。

外国人富裕層(台湾、香港、シンガポール、インドネシア)が感じている日本滞在の魅力は「食」であるとの意見が多い。

ヒアリング調査結果 代表的な意見

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E インドネシアの大手旅行会社役員F 台湾の大手旅行代理店役員G 香港のメディア関係者

A 東京の外資系ホテルコンシェルジュB 東京の外資系ホテルオーナー(在シンガポール)C 日本のホテルへの投資家(在シンガホール)D 台湾ベースのホスピタリティプライベートエクイティファンドの幹部

富裕層に人気のある滞在コンテンツ

① 全体の傾向

• (東京の外資系ハイエンドホテルの)チーフコンシェルジュの顧客は、ほぼ外国人富裕層であり、香港、中国、韓国、台湾、シンガポール、東南アジアが中心。顧客のニーズは、①食事、②ストーリーがある観光、③温泉、④エクスクルーシブ(特別/専用)な体験 / A

•外国人富裕層に日本の人気が高い理由は、①食事、②自然、③安全、④コストが比較的安価、⑤近い、⑥アジア人同士の価値観の類似性、⑦サービスが良い、など枚挙に暇がない / D

•最近のトレンドは、やはり食(美味しい食事であれば、星付きからB級まで関心は広い)と温泉旅館。富裕な外国人は味覚にもうるさく、費用対効果がないと感じれば再訪の可能性は低い / D

② 有名な飲食店

•次頁に別途とりまとめ

③ 今後、ニーズが高まると予想される滞在コンテンツ

•当ホテルでは、国内の著名なホテルや温泉と提携し、外国人富裕層向けに、非常にエクスクルーシブな体験型宿泊の手配を準備中 / A

外国人富裕層の観光行動

•日本には年に数回訪日し、プライベートの際は、家族や友人とテーマや目的地を決めて楽しむ(台湾) / D

•個人的には年4回、家族や友人とプライベートで訪日する。ミシュラン星付きレストランの予約をいくつか取る(香港) / G

•訪日時の滞在地はもっぱら東京である。有名なレストランが集中しており、ホテルへ移動する交通手段が楽なのがよい / G

•既に何十回も訪日しているので、フライトからホテル、レストランまで自分で手配することが多い/ G•情報収集は日本好きの友人の口コミが大半。香港滞在日本人からもアドバイスをもらう。日本に関するネット情報も多く、情報収集は簡単に出来る/ G

• ごく一部の顧客はプライベートジェットで訪日する。平均で年に2回、家族で訪日し、日本での消費額は1回あたり最低でも数千万円である / E

訪日旅行の動向

• インドネシアでは、過去に華僑の富裕層が出張で頻繁に訪日しており、次第に観光目的の訪日旅行へと拡大していった / E

• インドネシアで訪日観光ニーズは高い。華僑ビジネスマンが家族を同伴するケース、一般消費者がLCCを使うケースが増えており、今後も増えると想定している / E

•台湾の訪日ニーズは、富裕層から一般旅行者まで高い。この人気は今後も継続すると考えている / F

•香港の富裕層の訪日旅行はかなり以前から盛んに行われており、特に最近の動向ではない / G

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ミシュラン星付きレストランなどの有名飲食店は、外国人富裕層(台湾、香港、シンガポール、インドネシア)の大きな訪日動機になっている。

ヒアリング調査結果 代表的な意見(続き)

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E インドネシアの大手旅行会社役員F 台湾の大手旅行代理店役員G 香港のメディア関係者

A 東京の外資系ホテルコンシェルジュB 東京の外資系ホテルオーナー(在シンガポール)C 日本のホテルへの投資家(在シンガホール)D 台湾ベースのホスピタリティプライベートエクイティファンドの幹部

有名な飲食店について

① 有名レストランでの食事は、大きな訪日動機

• レストランの予約が取れた日に合わせて訪日する常連の宿泊客がいる /A

•日本食はジャカルタで人気が高く、ビジネスマンが有名店の予約が取れた日に合わせて訪日するケースも多々ある / E

•新しいレストランであれば、ホテルのコンシェルジュを使うことが多い。自分が訪問した際に、レストランで次の予約を取ることも良くある / G

② レストラン予約方法は、ホテル経由、訪問時、専用サイト

•以前は宿泊客からの依頼でミシュラン星付きレストラン等の予約を取る業務が多かった。最近は、宿泊客がレストランを訪問した際に、次の予約を入れる傾向がある。ホテル経由のほか、複数の高級レストラン予約サイトを通じて予約を入れる宿泊客も増えている / A

• ホテル経由で予約する場合、最近はクレジットカード情報を求められる。外国人の予約は直前のキャンセルやノーショーが多いためである / A

•ハイエンドホテルのコンシェルジュは、同業のネットワークを利用して、取りにくいレストランの予約を融通しあうこともある / A

ヘルスケアについて

ヘルスケアは訪日動機になりにくい

•日本でヘルスケアをするニーズは高くない。他に興味深いコンテンツが数多くあり、価格も高い / E, F

•美容や人間ドックの質の高さは理解できる。アジアの富裕層の一部は受診しているようだが、わざわざ日本で受ける必要はない。サービスや内容の差別化がどこまで可能かにもよるが / E, F

•ヘルスケア分野で事業可能性を追及できそうなコンテンツは、デトックス系を中心としたサービスや施術ではないか(はり、きゅう、断食等) / G

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日本には富裕層に対応できる施設が相対的に少ないと考えられており、ホスピタリティビジネスへの投資の関心は高い。 特に、京都は、ハイエンドなラグジュアリーホテルの不足が指摘されている。また、京都の町家を活用したホテルや宿舎(民泊を含む)が増えるなかで、金融商品の対象として販売が行われていることがうかがえる。

ヒアリング調査結果 代表的な意見(続き)

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日本のホスピタリティビジネスへの投資ニーズ

① 京都に対する投資ニーズ、関心は高い

•外国人富裕層の訪日ニーズは今後も高いと考える。ハイエンドなラグジュアリーホテルが圧倒的に不足している京都や、アジアからのスキー需要が衰えないニセコに、ホテル、コンドミニアムなどの開発・建設を予定している / B

•京都からアマネム(アマン伊勢志摩)に宿泊しようとする顧客は多いが、現在はアマンレベルのホテルが京都に存在しない / B

•京都を中心にホテル、町家、民泊を多数保有している。どの施設も順調に滞在客が利用しており、利回りも高い。昨年は地場のホテルチェーン買収を通じて、ブランドと宿泊施設を増やした / C

•日本で特別な体験を提供できる施設を検討している。例えば京都で広い敷地に日本家屋を建築し、外国人に提供するイメージ。京都ならば食のレベルが高く、様々な日本文化に触れることもでき、東京や大阪の滞在とは違う体験が可能となる。価格帯は最低で1泊数十万円を想定 / C

② その他の地域、事業分野

•訪日する外国人富裕層の市場は明るい。富裕層に対応できる施設が日本には相対的に少なく、この分野で強気に攻める準備を進めている / B

•日本を含むアジア全体のホスピタリティビジネス、ライフスタイルビジネスに投資している。日本市場に対する投資ニーズと関心は強い / D

•日本人シェフのレベルは高いので、台湾に来てもらい出店したり、日本の飲食店に投資することも最近は増えている / D

• まれなケースであるが、インドネシア人がミシュラン星付きレストランのシェフの独立をサポートし、銀座に寿司屋を出させた例がある / E

海外の旅行会社が感じる日本の課題、弱み

① 受入対応人材の不足

•外国人富裕層に対応できるコンシェルジュが圧倒的に少ない。育成ニーズとともに、育成ビジネスの可能性もあるのではないか。来日頻度が高い富裕層にきめ細かいサービスを安定的に提供する必要がある / A

② 特別な体験型コンテンツの不足

• ホテルや交通手段の手配は問題なく提供できている。課題は①有名飲食店の予約、②特別な体験型の企画である。①は、予約取りだけでなく、顧客の好みを反映してくれる店、訪日リピーターを飽きさせない店をリストアップして、フライトや日本国内の交通手段まで網羅的な提供を目指している / F

•②の特別な体験型の企画とは、目的地を問わず、特別な人だけが体験できる経験が求められる。高価な価格でも問題はなく、特別な満足感を得られればよいと考えられている / F

E インドネシアの大手旅行会社役員F 台湾の大手旅行代理店役員G 香港のメディア関係者

A 東京の外資系ホテルコンシェルジュB 東京の外資系ホテルオーナー(在シンガポール)C 日本のホテルへの投資家(在シンガホール)D 台湾ベースのホスピタリティプライベートエクイティファンドの幹部

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文献調査、ヒアリング調査から、グローバル・ホテルチェーンが取り組む事業の方向性を導出した。

事業の方向性

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1. 事業の候補地

文献調査、ヒアリング調査の結果

●東京、大阪、京都では立地する競合ホテルの種類が異なり、潜在的な市場にも顕著な差が見られる

●大阪にはハイエンドホテルの事例が見当たらず、同ブランドのホテルでも東京に比べて客室の価格が低い

●京都はハイエンドホテルの潜在的需要が高いが、建築規制もあって、小規模なケースの新規開業・計画が進む

●東京には、外国人富裕層が重視する滞在コンテンツである有名な飲食店が集中している

外国人富裕層をマーケットとし、中規模以上のハイエンドホテル事業を検討する場合は、東京での着手が適切と考えられる

2. ビジネスライン

(事業分野)

●東京におけるホテルの潜在市場は、①中・大規模ハイエンドホテル、②超小規模ハイエンドホテル(旅館)、③中規模バジェットホテル

●食事は朝食を除いてホテル外の有名レストランで会食する傾向が強い。例外は、ホテル内にミシュラン星付きレストランがある場合

●客室数に対しレストラン数が多いホテルと少ないホテルに分離の傾向

●有名レストランでの食事は、外国人富裕層の大きな訪日動機であり、リピーターを引き付ける魅力

●ヘルスケア分野は訪日動機になりにくい。事業可能性を追及できそうなコンテンツはデトックス系か

グローバル・ホテルチェーン事業の方向性

ビジネスラインはホテル事業に特化①中規模ハイエンドホテル②中規模バジェットホテル

自前の飲食事業は取りやめ、有名な飲食店の招聘を目指す

ヘルスケア事業は来訪動機として期待できず、飲食事業と同様に優秀な人材確保が必要なため、当初段階では導入しない

3. ホテルのコンセプト ●外資系ハイエンドホテルは、ブランド力に加えて「和モダン」の演出に取組み、訪日外国人旅行者の富裕層顧客を獲得

●建築家、アーティストの作品性を前面に出したブティックホテルが出現

●オフィスビル、マンション等からのリノベーション物件が増えている

日本資本のハイエンドホテルが取り入れていない「和」のイメージを、ホテルコンセプトの中心に置く

バジェットホテルにおいても、高いデザイン性が求められる

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文献調査の対象とした東京マーケット59施設、関西マーケット40施設は下表のとおりである。

調査結果の詳細は、別紙「参考資料」参照。

調査対象ホテル_東京

20

施設名 所在地 客室数 立地 特色 開館年

① ブランドホテル、ラグジュアリーホテル

ホテルニューオータニ 千代田区 1479 迎賓館日本の高層ビル時代を拓いた歴史的建築物。ブランド店舗を館内に擁したプラザ型ホテルのコンセプトで知られる

1964

帝国ホテル東京 千代田区 931 皇居 訪日する様々な賓客を迎えてきた歴史と伝統あるホテル 1894

ザ・ペニンシュラ東京 千代田区 314 皇居香港3資本の一つ。2017年に「トラベル+レジャー」の読者が選ぶ「東京のベストホテル」受賞

2007

パレスホテル東京 千代田区 290 皇居 2015年に国内ホテル最高の平均客室単価を記録 Re2012

ザ・キャピトルホテル東急 千代田区 251 赤坂東急ホテルズのフラグシップホテル。東京ヒルトンホテルを引き継ぎ2006年まで営業後に改装

2010

ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町ラグジュアリーコレクションホテル

千代田区 250 赤坂赤坂プリンスホテル跡地に開業。スターウッドの高級ブランド「ラグジュアリーコレクション」に加盟する国内2軒の一つ

2016

シャングリ・ラ・ホテル東京 千代田区 200 東京駅香港3資本の一つ。最上階は専用コンシェルジュを配した「ホライゾンクラブ」専用空間

2009

東京ステーションホテル 千代田区 150 東京駅ホテルを含む東京駅赤レンガ駅舎は重要文化財。保存復元工事を経て2012年に再開

Re2012

アスコット丸の内東京 千代田区 130 大手町駅直結アスコット社の最上級ブランド。ほぼ全ての客室にキッチンを備えた滞在向けホテル

2017

オークウッドプレミア東京 千代田区 123 東京駅 東京・丸の内初のサービスアパートメント。1泊からも利用可能 2016

アマン東京 千代田区 84 大手町・東京駅 スモールラグジュアリーホテルの代名詞。「究極の隠れ家」と称される 2014

フォーシーズンズホテル丸の内東京 千代田区 57 東京駅57室のスモールホテル。東京駅と地下で直結し、プラットフォームまで迎えサービスあり

2002

山の上ホテル 千代田区 35 御茶ノ水 文人の宿として知られる歴史あるホテル 1954

ロイヤルパークホテル ザ 汐留 港区 490 汐留 特別フロアには様々なブランドやデザイナーのコンセプトルームを設置 2003

グランドハイアット東京 港区 387 六本木ヒルズ ハイアットの「プレミアム」クラスのブランド。オールインワンの最高級ホテル 2003

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調査対象ホテル_東京 (続き)

21

施設名 所在地 客室数 立地 特色 開館年

① ブランドホテル、ラグジュアリーホテル(続き)

ホテルオークラ東京 港区 381 虎ノ門海外7カ国に展開、レストラン専門子会社を持つなど多角的な経営。※2019年本館再開予定(550室予定)。現在は別館のみで営業

1962

ホテルインターコンチネンタル東京ベイ 港区 330 竹芝 2012~2014年にラウンジ、客室を全面改装しレギュラーフロアを導入 1995

コンラッド東京 港区 290 浜離宮・銀座 ヒルトングループの最上級ブランド 2005

ザ・リッツカールトン東京 港区 248六本木ミッドタウン

独自の人材採用・教育プログラムが最高級のサービス力を作り上げている 2007

ストリングスホテル東京インターコンチネンタル 港区 206 品川駅 品川駅直結の立地。lHGとANAの業務提携により設立された合同会社が運営する 2003

アンダーズ東京 港区 164 虎ノ門ヒルズハイアットの「ライフスタイル」クラスの日本1号店。和紙や自然素材を使い、日本の建築文化の反映が見られる

2014

ホテルアラマンダ青山 港区 30 外苑前 宮古島「シギラリゾート」で最上級のホテル「アラマンダ」ブランドの2号店 2016

ミレニアム三井ガーデンホテル東京 中央区 329 銀座 銀座4丁目交差点や歌舞伎座まで徒歩3分のロケーション 2014

マンダリンオリエンタル東京 中央区 179 東京駅 香港3資本の一つ。レストランはミシュラン1つ星3軒を含む8軒を擁する 2005

コートヤード・バイ・マリオット東京ステーション

中央区 150 東京駅 マリオットブランドの中では比較的カジュアルな分類のブランド 2014

ホテル ザ セレスティン銀座 中央区 104 新橋・銀座 三井ガーデンホテルよりもワンランク上のブランド 2017

ヒルトン東京 新宿区 821 新宿 日本初の完全外資ホテル。国内の認知度は高い 1984

ハイアットリージェンシー東京 新宿区 746 新宿日本初のハイアットホテルとして開業。10年間ミシュラン2つ星を維持するレストランあり

1980

パークハイアット東京 新宿区 177 新宿 ハイアットグループの最上級ブランド。最上階のレストランは知名度が高い 1994

ウェスティンホテル東京 目黒区 438恵比寿ガーデンプレイス

90年代「新御三家」の一つ。ヨーロピアンスタイルのデザインが特徴的 1994

ホテル雅叙園東京 目黒区 60 目黒雅叙園2017年にワタベウェディングが完全子会社化しリブランド。会社全客室70㎡以上のスモールラグジュアリーホテル

Re2017

ホテル椿山荘東京 文京区 267 庭園2012年にフォーシーズンズとの提携解消。庭園に恵まれ10年連続でミシュラン・ガイドの最高評価。3棟で33もの宴会場を備える

1992

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調査対象ホテル_東京 (続き)

22

施設名 所在地 客室数 立地 特色 開館年

② アート、デザイン、地域交流をテーマとするホテル

庭のホテル 千代田区 238 水道橋 中庭を擁し、モダンな和の趣を持つ隠れ家的ホテル 2009

シタディーンセントラル新宿東京 新宿区 206 歌舞伎町 2015年にベストウェスタンからリブランド。デザイン性豊かな客室 Re2015

One@Tokyo 墨田区 142 スカイツリー 建築家・隈研吾氏がデザイン監修。ホテルそのものが美術展示のよう 2017

センチュリオンホテルグランド赤坂 港区 83 赤坂「日本美の粋を集めた都会の離宮」をコンセプトに、全フロア異なるデザイン。サウナ付き大浴場(男性専用)あり

2013

ホテルリズベリオ赤坂 港区 71 赤坂館名の「目覚め」をテーマとする多くのアートが描かれたデザイン性の高いホテル

2015

WlRED HOTEL ASAKUSA 台東区 30 浅草ペントハウスとホステルが同居する珍しさ。「LOCAL COMMUNlTY HOTEL」を標榜し、アメニティ等も浅草周辺の職人による作品を導入

2017

CLASKA 目黒区 20 目黒ホテル、ギャラリー、貸しスタジオを持つ文化複合施設。20部屋すべて異なるデザイン

Re2008

BnA Hotel Koenji 杉並区 2 高円寺「街中にアートルームを散りばめて高円寺全体をホテルにする」試み。ホテルの機能・部屋を街に分散させ拡張予定

2016

③ ホステル、ゲストハウス、旅館、カプセル

ファーストキャビン京橋 中央区 238 東京駅カプセルホテルから進化した新しいスタイル。既存建物を最小限の投資でリノベし店舗展開

2009

lRORl Hostel and Kitchen 中央区 71 馬喰横山築40年の事務所兼倉庫ビルを改装した大型ゲストハウス。1階には、地域の人と交流できる囲炉裏を設置。大きな業務用キッチンあり

2015

御茶ノ水ホテル昇龍館 千代田区 42 御茶ノ水旅館として創業し67年。2009年にリニューアル。畳の和室にもサータ社のベッドを導入。大浴場あり

Re2009

カオサンワールド浅草旅館&ホステル 台東区 35 浅草 浅草のラブホテルを改装し開業した旅館とホステルの複合宿泊施設 2013

LYURO 東京清澄 THE SHARE HOTEL S 江東区 28 隅田川隅田川沿いの築28年のオフィスビルを改装したホステル。2階「かわてらす」は一般にも開放。

2017

Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE 台東区 26 蔵前下谷の古民家ゲストハウスtoco.を手がけた会社の2号店。宿泊客以外も利用可能なカフェバー併設。個室もあり。

2012

RYOKAN&SPA雫 足立区 22 五反野 ラブホテルを改装し開業。全室総ヒノキ風呂仕様、畳部屋。 2016

澤の屋旅館 台東区 12 谷中・根津89カ国・延べ17万人の外国人を受け入れてきた旅館。トリップアドバイザーではエクセレンス認証殿堂入り、「関東地方のホテル/旅館」3,858軒中1位。

1949

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調査対象ホテル_東京 (続き)

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施設名 所在地 客室数 立地 特色 開館年

④ その他の特色あるホテル

ホテルグレイスリー新宿 新宿区 970 歌舞伎町新宿東宝ビル内に立地。「ゴジラヘッド」が見えるテラスや「ゴジラルーム」を設置

2015

リッチモンドホテルプレミア東京押上 墨田区 260 スカイツリー 東京スカイツリーが至近。トリップアドバイザートップ20の常連 2015

カンデオホテルズ東京六本木 港区 149 六本木ビジネスホテルとシティホテルの中間領域。独自分析に基づきニッチマーケットに連続出店

2017

ホテル ココ・グラン高崎群馬県高崎市

119 高崎駅「日本一のビジネスホテル」としてTV番組で紹介。製菓会社がオーナーで、自社商品のアウトレット施設を併設。高崎駅直結

2012

変なホテル舞浜東京ベイ千葉県浦安市

100 TDL 徹底したコスト削減。ロボットが働くホテルという珍しさ 2017

大江戸温泉物語 宿泊「伊勢屋」 江東区 92 お台場 温泉テーマパークに付随した宿泊施設 2003

ホテル・ザ・エム インソムニア赤坂 港区 66 赤坂 「眠らないホテル」を掲げ、併設カフェは24時間営業。マンションを改装 2016

アグネス ホテル アンド アパートメンツ 東京 新宿区 56 神楽坂 長期滞在型のサービスアパートメンツ機能を併せ持つ 2000

ホテルアマネク銀座イースト 中央区 35 築地・銀座天然木をしつらえた隠れ家的ホテル。地方で旅館再生を手がける会社の23区内初の物件

2016

TRUNK(HOTEL) 渋谷区 15 渋谷 ブライダル施設に付随したホテル 2017

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調査対象ホテル_関西

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施設名 所在地 客室数 特色 開館年

① ブランドホテル、ラグジュアリーホテル

ハイアットリージェンシー京都 京都市 187ハイアットの「プレミアム」クラスブランド。ビジネス・観光ともに便利な立地。MlCEを担える宴会場キャパシティ

2006

ザ・リッツカールトン京都 京都市 134鴨川と東山三十六峰が借景。2017年トリップアドバイザー「外国人に人気の日本のホテル」1位。一部客室は畳部屋、月見台のある部屋も

2014

ホテルハ―ヴェスト京都鷹峯 京都市 133 会員制リゾートホテル。高台から京都市街を見渡す本館と、竹林や庭園を望む南館の2棟 2014

フォーシーズンズホテル京都 京都市 123平家物語にも記された名園「積翠園」を継承。京都最大級のスパとフィットネスジム、ミシュラン1つ星の鮨店、夜はバーになる茶室などを備える

2016

翠嵐ラグジュアリーコレクションホテル京都 京都市 39スターウッドの高級ブランド「ラグジュアリーコレクション」に加盟する国内2軒の一つ。客室の半数に専用露天風呂。嵐山を一望できるカフェ、日本庭園を備える

2015

柊屋旅館 京都市 28 数寄屋造りの本館と2006年完成の新館。旅館はミシュラン最高評価、料理は1つ星を獲得 1818

天橋立離宮 星音京都府宮津市

7 全室オーシャンビュー、各部屋は異なる内装で専用プールと露天風呂を備える 2017

長楽館 京都市 6 豪商の迎賓館として建築された京都市有形文化財「長楽館」に増築 2008

料理旅館 白梅 京都市 5元は数寄屋建築の粋が凝縮されたお茶屋。2017年トリップアドバイザー「近畿地方のホテル・旅館」部門1位

Re1949

リーガロイヤルホテル 大阪市 984歴史が長く関西での知名度は高い。客室数、宴会場数は大阪市内随一の規模。2018年3月に1,042室へ増室予定

1935

シェラトン都ホテル大阪 大阪市 5792007年にリブランド。各空港への直通バスが発着する近鉄上本町駅に直結。3,000名収容の大宴会場、25m6コースの温水プールを備える

1985

帝国ホテル大阪 大阪市 381大川沿いの「桜之宮公園」に隣接。緑豊かな環境と東京で培われたホスピタリティがトリップアドバイザーでも上位。メインダイニングは東京と同店舗、他に東京の有名飲食店支店もあり

1996

大阪マリオット都ホテル 大阪市 360 「あべのハルカス」と同時に開業。ホテル施設としては横浜ロイヤルパークに次ぐ高所に位置する 2014

コートヤード・バイ・マリオット新大阪ステーション

大阪市 332マリオットの中規模・中価格ブランド。新大阪駅から徒歩1分。世界のビジネス客に向けた機能的でモダンなデザインの設備

2015

ウェスティンホテル大阪 大阪市 303「ウェスティンホテル&リゾート」日本第1号店。2016年にエグゼクティブフロアをリニューアルし「安土桃山時代と西洋の融合」をより強調。中国料理店はミシュラン1つ星

1993

ザ・リッツカールトン大阪 大阪市 291リッツ・カールトン日本第1号店。サービス力の高さから同業の見学等が後を絶たない。フレンチレストランはミシュラン1つ星

1997

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調査対象ホテル_関西(続き)

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施設名 所在地 客室数 特色 開館年

① ブランドホテル、ラグジュアリーホテル

インターコンチネンタルホテル大阪 大阪市 272インターコンチネンタルブランドの関西初進出店。大阪梅田駅「グランフロント」に入居。約50㎡と広めの客室でレジデンスルームも備える。ミシュラン1つ星レストランを擁する

2013

なんばオリエンタルホテル 大阪市 2582006年に現会社が継承。大阪ミナミの中心地に立地。ファミリーやグループ向けにトリプルルームを多数設定

1996

コンラッド大阪 大阪市 164「次世代型スマート・ラグジュアリーホテル」と位置付けられるコンラッドの日本2号店。全客室で開放的なパノラマビューが楽しめる

2017

セントレジスホテル大阪 大阪市 160マリオットの最高級ブランド。バトラー・サービスを提供。ミシュラン最高評価を大阪で唯一3年連続獲得。米国「トラベル+レジャー」誌の「世界のベストホテル」に日本唯一ランクイン

2010

神戸ポートピアホテル 神戸市 745神戸最大の客室数。国際会議場をはじめ大小36の会議室と宴会場を備える。「ウェルカムベビーのお宿」認定客室もあり多様な客層を受け入れる

1981

神戸メリケンパークオリエンタルホテル 神戸市 319全室に付いたバルコニーから海と神戸市街の景観を見渡せる。様々なタイプのスイートルームを備える

1995

神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ 神戸市 2702011年にニューアワジが買収後、客室改装、温浴施設オープン、クラブラウンジ改装など積極的に投資。USJのアソシエイトホテル

1992

ORlENTAL HOTEL 神戸市 116初代は1870年開業、国内最古級の西洋式ホテル。4代目が阪神淡路大震災で被災・解体され、2010年に再オープン。名門ホテルの再現を目指す内装やレストランメニュー

Re2010

神戸北野ホテル 神戸市 30阪神淡路大震災後に閉館していた伝統的英国様式のホテルが2000年に再開。ベルナール・ロワゾ―氏の「世界一の朝食」を公式に贈られ、提供を許された唯一のホテル

Re2000

ヴィラ楽園 洲本市 27ホテルニューアワジ端にオープンした特別客室。全室が専有露天風呂付き、スイート仕様、オーシャンビュー

2010

奈良ホテル 奈良市 127国賓・皇族の宿泊施設として歴史を重ねた「西の迎賓館」。名勝・旧大乗院庭園を擁し、周囲の観光地に徒歩でアクセスできる

1909

登大路ホテル奈良 奈良市 14奈良エリアのミシュラン開始以降、6年連続で最高評価を受けるスモール・ラグジュアリーホテル。客室はクラシック家具「ドレクセル」で統一。森精機社の保養施設をリノベーション

2008

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調査対象ホテル_関西(続き)

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施設名 所在地 客室数 特色 開館年

② アート、デザイン、地域交流をテーマとするホテル

モクシ―大阪本町 大阪市 155マリオットのデザイナーズホテルブランド。東京と大阪に同時オープン。共有スペース「ライブラリー」、24時間営業のデリ、ジムも備える

2017

ホテル カンラ京都 京都市 68京都の伝統技術と技法を用いて自然素材を取り入れたモダンな「京マチヤスタイル」は、グッドデザイン賞ほか、海外でも建築分野で受賞多数

Re2016

ホテル ザ グランデ心斎橋 大阪市 452016年にリノベーション。プラントハンターや書道家が客室をプロデュースし、壁面が緑に覆われた客室も

2016

ART MON ZEN KYOTO 京都市 15老舗古美術商がプロデュース。数寄屋造り職人による和と洋の調和が美しい建物。客室は全室、天井高が3mあり、美術品が楽しめる

2017

THE SCREEN 京都市 13日本初セレクタブルホテル。全室を異なるデザイナーがプロデュース。トリップアドバイザーでは「人気の小規模ホテルトップ25日本」に選出

ホテル ムメ 京都市 7祇園白川沿いのデザインホテル。欧州や上海のアンティーク家具を配置した異国情緒漂う4種類の客室

2009

泊まれる図書館「暁」 佐賀市 1築110年の古民家を改装。昼は図書館カフェ、夜は一組限定の宿泊施設。風呂は無く、徒歩1分の日帰り温泉を利用する。低投資により実現(クラウドファンディング160万円)

2016

③ ホステル、ゲストハウス、旅館、カプセル

ホテルアンテルーム京都 京都市 127築23年の学生寮をアーティストを起用してリノベーション。長期滞在型ホテルとギャラリーを併設。2006年に和の要素を加え増床

2011

④ その他の特色あるホテル

アパホテル 大阪市 850 地下鉄肥後橋駅に直結。地上30階、850客室は同社の西日本最大級 2007

プレミアホテルCABlN大阪 大阪市 240JR大阪天満宮駅に直結。日本一長い「天神橋筋商店街」に徒歩1分。東京の人気カフェが1階に出店。経営会社はシェラトン、ハイアット、ヒルトンを含む約30店を展開

2017

WlTH THE STYLE FUKUOKA 福岡市 16ブライダル主眼であるが、全室スイート、充実したラウンジ、屋上のジャグジーなど非日常性で人気を集める。DJイベント、母子のレストランイベントなど多数のイベントを開催

Re2004

HOTEL Allmanda 奈良市 13 コンセプトの異なる3種類の客室。1階の全室に露天ジャグジーを備える

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I.業務概要

II.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

– 1.調査方針

– 2.事業の考察

– 3.事業のアウトライン

– 4.シナリオ

III.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

目次

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前章で導出した方向性をもとに、グローバル・ホテルチェーン(表内ではGHCと表記する)の事業のアウトラインを検討した。

グローバル・ホテルチェーンが手がける事業分野は、収益の安定性と効率、様々な旅行需要への対応を目指して、富裕層(及び将来の富裕層)を確保するラグジュアリーなブティックホテルと、インバウンド中間層をマーケットとするバジェットホテルの組み合わせが妥当であると考えられる。

グローバル・ホテルチェーンの事業のアウトライン

28

●対象マーケットは海外富裕層を中心に想定し、安定収益の確保に有効な市場も視野に入れる

●ハイエンドホテルの収益が安定するまで数年を要する。バジェットホテルの初期投資回収は短いサイクルで回すことが可能

●既存ビジネスホテルの一部を新しいブランドに転換し、バジェットホテルとして運営。早期の投資回収、グループの人材育成などを早いペースで進められる

●有名な飲食店の出店により、ホテル側はレストランブランドの確保と安定的な家賃収入が確保できる

ハイエンドホテル

バジェットホテル

コンセプト

「和」を前面にホテルと日本旅館を融合させたコンセプト

羽田空港や新幹線停車駅からアクセスがよい場所

飲食事業は外注とし、有名飲食店の出店を目指す。ホテルのプレステージを高め、優先的な予約手配を宿泊客に提供

ハイエンドホテルと同様に日本らしさがコンセプト

JR山手線駅から至近距離にある既存ホテルの全面改装を想定

リノベーションで費用対効果を最大化

コモンスペースの確保、デザイン性の高い内装、サービスの充実

ロケーション 特徴

➊早期に収益の安定を確保するために

➋2種類のホテル事業を組み合わせて

➌鉄道会社との連携が理想

●土地と建物を、鉄道駅の至近に保有する強みを持つ大手鉄道会社との連携により、立地のアドバンテージを獲得する

●ディベロッパーと連合でプロジェクトを組成するのが理想的である

●JR山手線内に多数のビジネスホテルを有している企業と連携し、リノベーションによるバジェットホテルの提供を促進する

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グローバル・ホテルチェーン(表内ではGHCと表記する)の運営組織体制を想定する。

グローバル・ホテルチェーンホールディングの株主構成は複数の外部民間出資者を前提としている。また、適切なガバナンス体制を構築するために、主要株主からの出向受け入れを検討する。

グローバル・ホテルチェーングループ組織図

29

《株主》●GHCホールディングの株主構成は複数の外部民間出資者を前提としている

●適切なガバナンス体制を構築する上で、主要株主からの出向受け入れも検討する

《業務》●ホールディング会社付けの各部門担当副社長は、現場責任者及び部門責任者へ戦術面の指示を行う

●ホールディング会社から各ホテルの運営子会社へ総支配人及びホテルマネジャー(バジェットホテル運営責任者)が出向する

●ホテル責任者以外のホテルスタッフは、原則として各運営子会社が雇用する

●ホテルの管理会計業務に関しては、ホールディング会社で集約して行う

CEO・President最高経営責任者兼代表取締役社長

本社・財務会計スタッフ

ビジネスデベロップメント担当副社長

テクニカルサービス担当副社長

IT担当副社長

本社・財務会計スタッフ

本社・財務会計スタッフ

ホテル・総支配人

ホテル・総支配人

ホテル・総支配人

COO最高運営責任者

CFO最高財務責任者

企業ビジョンを示し、企業価値向上のための戦略発案

各ホテルの総支配人を統括し運営戦術の指示

営業及びマーケティングの統括及び戦略執行

本社付けの財務及び経理担当者の統括を行い、取引銀行との折衝

本社及び各ホテルのlT環境構築統括。loT戦略等の発案、構築、実行

各ホテルの施設管理、改修の統括。開業時、開発時の施主担当

GHCホールディング

GHCブティックホテル運営会社

ホールディングより総支配人が出向

GHCバジェットホテル運営会社①

ホールディングよりホテルマネージャーが出向

GHCバジェットホテル運営会社②

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I.業務概要

II.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

– 1.調査方針

– 2.事業の考察

– 3.事業のアウトライン

– 4.シナリオ

III.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

目次

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グローバル・ホテルチェーンのフラッグシップホテルとなるラグジュアリーなブティックホテルについて、事業シナリオを設定し、売上と費用を試算した。

フラッグシップホテルの事業シナリオ設定

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■コンセプト

「四季を感じ、日本を知る和モダン」・季節を表現したコンセプトルームを用意・日本庭園の設置、館内にアート作品・一部客室に、襖や檜風呂 等

■レストランの充実都内ホテルに無いミシュラン三つ星レストラン、最高峰の日本料理店や寿司店を擁し、宿泊者以外の利用も促進。

■フルスペックホテルとしての設備の充実特に会議室の評価に留意。プールやジムは必須

■アクセス良好な立地空港、新幹線、都内へのアクセスが良好な立地として東京・品川を想定。将来は、リニア新幹線の始発駅としても期待

客室数:350 スタンダードツイン料金:50,000円~ 開業目標:2019年6月

売上

運営経費

1年目 ・ADR(平均客室単価)45,450円・プレオープニング期間を3ヶ月とし、OCC(客室稼働率)は62%・客室サービス料は売上の10%

2年目 ・五輪イヤーを想定。ADRは前年比40%強、OCCは同30%強の上昇3年目以降 ・五輪特需を差引きOCCは1~2%ほど減少、80%台で平準化

・ADRは1%程の緩やかな上昇へ。5年目は65,000円弱をキープ

・給与は年俸+福利厚生費30%。・一般管理職は、総支配人、秘書、経理部長、経理職員、人事マネージャー、人事職員・営業マーケティング職は、営業部長、営業職員・施設管理維持職は、施設管理責任者、ITマネージャー、施設管理職員

・マネジメントフィーは総売上の2%・施設管理維持費は施設管理経費と外注費・水道高熱費は1年目を総売上の10%、その後は7%

ホテルのコンセプト想定 PLプロジェクションの条件設定

配布不能経費

・人件費は年俸+福利厚生費30%。2年目に総額10%上昇、その後は年3%上昇・職種は宿泊部ディレクター、フロントオフィスマネジャー、ホテルアシスタントマネジャー、フロントデスクレセプショ二スト、チーフコンセルジュ、コンセルジュ、ゲストサービスマネジャー、ドアマン、ベルマン・その他に、清掃費、客室アメニティーとリネン代、事務経費

客室

売店

料飲施設

宿泊部

売店

・人件費は年俸+福利厚生費30%・商品原価60%・その他に、包装費、事務経費

※大手鉄道会社が保有する土地に、国内ディベロッパーの協力を得て、フルスペックホテルを建設する案※コンセプトの参考グランドハイアット東京、庭のホテル、ART MON ZEN KYOTO

・稼働客室数X40%X商品単価7,000円。2年目のみ稼働客室数50%・料飲施設はアウトソース。7店舗の固定賃料(ペイストリーカフェ、イタリアン、和食、鉄板焼、鮨、オールデイダ゙イニング、バー)

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フラッグシップホテルの計画5年目の試算結果を下表に示す。客室稼働率80.2%、平均単価64,687円のもと、売上高79億8100万円、売上総利益59億7900万円、営業総利益42億800万円を目指す。なお、総人件費は14億1300万円となる。

フラッグシップホテルのPLプロジェクション

32

単位 : 100万円

*1 : RevPAR=客室稼働率(OCC)×客室平均単価(ADR)

部屋数  350 Projected Year 1 Projected Year 2 Projected Year 3 Projected Year 4 Projected Year 5日数 365 % 365 % 365 % 365 % 365 %

販売可能客室数 127,750 127,750 127,750 127,750 127,750稼働客室数 79,844 106,192 104,068 103,028 102,513客室稼働率 62.5% 83.1% 81.5% 80.6% 80.2%客室平均単価 (ADR) 45,450 63,539 64,174 64,816 64,687販売可能客室数単価 (RevPar) 28,406 52,817 52,278 52,273 51,908

売上客室 3,629 90.9% 6,747 90.9% 6,679 90.9% 6,678 90.9% 6,631 90.9%サービス料 363 9.1% 675 9.1% 668 9.1% 668 9.1% 663 9.1%客室売上合計 3,992 86.5% 7,422 90.6% 7,346 91.4% 7,346 91.4% 7,294 91.4%売店売上 224 4.8% 372 4.5% 291 3.6% 288 3.6% 287 3.6%その他売上 400 8.7% 400 4.9% 400 5.0% 400 5.0% 400 5.0%

売上高合計 4,615 100.0% 8,193 100.0% 8,037 100.0% 8,034 100.0% 7,981 100.0%運営経費宿泊部人件費 721 18.1% 793 10.7% 817 11.1% 841 11.5% 866 11.9%宿泊部その他経費 591 14.8% 928 12.5% 933 12.7% 940 12.8% 934 12.8%宿泊部経費合計 1,312 32.9% 1,721 23.2% 1,750 23.8% 1,781 24.3% 1,800 24.7%売店人件費 19 8.4% 21 5.6% 21 7.2% 21 7.3% 21 7.4%売店原価 134 60.0% 223 60.0% 175 60.0% 173 60.0% 172 60.0%売店その他 6 2.9% 11 2.9% 8 2.9% 8 2.9% 8 2.9%売店経費合計 159 71.3% 254 68.4% 204 70.1% 202 70.2% 202 70.3%

売上総利益 3,144 68.1% 6,218 75.9% 6,084 75.7% 6,050 75.3% 5,979 74.9%

配賦不能費一般管理給与 226 4.9% 249 3.0% 251 3.1% 254 3.2% 256 3.2%一般管理費 51 1.1% 123 1.5% 121 1.5% 121 1.5% 112 1.4%マネジメント料 92 2.0% 164 2.0% 161 2.0% 161 2.0% 160 2.0%フランチャイズ料 - 0.0% - 0.0% - 0.0% - 0.0% - 0.0%営業マーケティング給与 218 4.7% 240 2.9% 247 3.1% 254 3.2% 262 3.3%営業マーケティング費 217 4.7% 239 2.9% 241 3.0% 243 3.0% 246 3.1%施設管理維持給与 55 1.2% 56 0.7% 56 0.7% 57 0.7% 58 0.7%施設管理維持費 115 2.5% 123 1.5% 121 1.5% 121 1.5% 120 1.5%水道光熱費 461 10.0% 574 7.0% 563 7.0% 562 7.0% 559 7.0%配賦不能費用合計 1,436 31.1% 1,766 21.6% 1,760 21.9% 1,772 22.1% 1,771 22.2%

営業総利益 1,708 37.0% 4,452 54.3% 4,324 53.8% 4,277 53.2% 4,208 52.7%

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インバウンド中間層をマーケットとするバジェットホテルについて、事業シナリオを設定し、売上と費用を試算した。

バジェットホテルの事業シナリオ設定

33

■コンセプト

「地域と交流できる、和のバッグパッカーホテル」・外観、フロントも「和」のデザインで統一・一部客室に、畳や檜風呂・屋上に本格的な日本庭園・ホステルのようなコモンスペース設置 等

■宿泊客と地域住民の交流空間コモンスペースにはキッチンを備え、地域住民の利用も可能。宿泊客との交流の場として開放する。地域のディープな情報を住民から提供し、ガイドブックでは知り得ない日本文化に触れる機会をつくる。屋上の日本庭園は、夜間のバースペースとして開放

■アクセス良好な立地JR山手線の駅に至近の立地を想定

客室数:152 スタンダードツイン料金:20,000円~ 開業目標:2019年6月

売上

運営経費

1年目 ・ADR(平均客室単価)12,500円・プレオープニング期間を3ヶ月とし、OCC(客室稼働率)は70%・客室サービス料は売上の10%

2年目 ・五輪イヤーを想定。ADRは前年比30%、OCCは同30%の上昇3年目以降 ・五輪特需を差引きOCCは1~2%ほど減少、88~89%で平準化

・ADRは1%程の緩やかな上昇へ。5年目は16,500円弱をキープ

・給与は年俸+福利厚生費30%。・一般管理職は、ホテルマネジャー・営業マーケティング職は、ホテルマネジャーが営業兼任とし設定なし・施設管理維持職は、ホテルマネジャーが責任者兼務

・マネジメントフィーは総売上の3%・営業マーケティング費は広告宣伝費用(広告、DM作成郵送費等)を設定・施設管理維持費は外注・水道高熱費は1年目を総売上の12%、その後は7%

ホテルのコンセプト想定 PLプロジェクションの条件設定

配布不能経費

・人件費は年俸+福利厚生費30%。2年目に総額10%上昇、その後は年3%上昇・職種はリミテッドサービスと言う観点からフロントスタッフのみで設定・その他に、清掃費、客室アメニティーとリネン代、事務経費

客室

宿泊部

※大手鉄道会社グループが運営するホテルを改装する案※コンセプトの参考庭のホテル、ホテルカンラ京都、WIRED HOTEL ASAKUSA

・料飲施設はアウトソース。3店舗の固定賃料(オールデイダ゙イニング、カフェ、コンビニ)売店

料飲施設

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計画5年目の試算結果を下表に示す。客室稼働率88.5%、平均単価16,518円のもと、売上高9億5200万円、売上総利益 7億8100万円、営業総利益5億8600万円を目指す。なお、総人件費は6800万円となる。

バジェットホテルのPLプロジェクション

34

単位 : 100万円

*1 : RevPAR=客室稼働率(OCC)×客室平均単価(ADR)

部屋数  152 Projected Year 1 Projected Year 2 Projected Year 3 Projected Year 4 Projected Year 5日数 365 % 365 % 365 % 365 % 365 %

販売可能客室数 55,480 55,480 55,480 55,480 55,480稼働客室数 39,113 50,847 49,830 49,332 49,086客室稼働率 70.5% 91.7% 89.8% 88.9% 88.5%客室平均単価(ADR) 12,500 16,225 16,387 16,551 16,518販売可能客室数単価(RevPar) 8,813 14,870 14,719 14,717 14,614

売上客室 489 90.9% 825 90.9% 817 90.9% 817 90.9% 811 90.9%サービス料 49 9.1% 82 9.1% 82 9.1% 82 9.1% 81 9.1%客室売上合計 538 90.0% 907 93.8% 898 93.7% 898 93.7% 892 93.7%その他売上 60 10.0% 60 6.2% 60 6.3% 60 6.3% 60 6.3%

売上高合計 598 100.0% 967 100.0% 958 100.0% 958 100.0% 952 100.0%運営経費宿泊部人件費 47 8.7% 51 5.7% 53 5.9% 55 6.1% 56 6.3%宿泊部その他経費 80 14.8% 113 12.5% 114 12.7% 115 12.8% 114 12.8%宿泊部経費合計 126 23.5% 165 18.2% 167 18.6% 170 18.9% 170 19.1%

売上総利益 471 78.9% 803 83.0% 791 82.6% 789 82.3% 781 82.1%

配賦不能費一般管理給与 11 1.8% 12 1.2% 12 1.2% 12 1.3% 12 1.3%一般管理費 7 1.1% 15 1.5% 14 1.5% 14 1.5% 13 1.4%マネジメント料 18 3.0% 29 3.0% 29 3.0% 29 3.0% 29 3.0%フランチャイズ料 - 0.0% - 0.0% - 0.0% - 0.0% - 0.0%営業マーケティング給与 - 0.0% - 0.0% - 0.0% - 0.0% - 0.0%営業マーケティング費 28 4.7% 31 3.2% 31 3.3% 32 3.3% 32 3.3%施設管理維持給与 - 0.0% - 0.0% - 0.0% - 0.0% - 0.0%施設管理維持費 45 7.5% 44 4.5% 43 4.5% 43 4.5% 43 4.5%水道光熱費 72 12.0% 68 7.0% 67 7.0% 67 7.0% 67 7.0%配賦不能費用合計 180 30.1% 198 20.4% 196 20.5% 197 20.6% 195 20.5%

営業総利益 291 48.8% 605 62.5% 595 62.1% 592 61.8% 586 61.6%

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I.業務概要

II.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

III.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

35

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I.業務概要

II.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

III.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

36

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「観光立国」の実現、ひいては地方創生実現に向け、観光施策に充てる安定的な財源の確保は、国及び地方自治体、DMO等において喫緊の課題。

今後の高次元で持続的な観光振興施策の実行に向け、国内及び諸外国の取組(宿泊税、入国税、電子渡航認証システム(ESTA)等)を整理・分析し、安定的な財源確保を踏まえた施策の方向性を検討することが重要。

調査方針

37

■訪日外国人旅行者数と旅行消費額の政府目標2020年:4000万人、観光収入8兆円2030年:6000万人、観光収入15兆円『明日の日本を支える観光ビジョン』(平成29年3月策定)

調査方針業務の背景・目的

テロ等の脅威を未然に防ぎ、入国審査の迅速化や受入環境整備の諸施策の計画的な展開が必要

観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度・財源を踏まえた高次元で持続的な観光振興施策の方向性

■「観光立国」の実現、ひいては地方創生実現のために、観光財源確保の議論が国及び地方自治体で活発化している(観光庁による国際観光旅客税、東京都、大阪府、京都市、北海道等における宿泊税等)。

■経済産業省においても、観光産業の高度化及び諸産業の観光事業振興の観点から、諸外国及び国内事例を参考にしつつ、観光財源の議論フレームやその使途について検討し、高次元で持続的な観光振興施策を実行していくための安定的な財源確保について検討し、今後の施策の方向性を検討する際の一助とする。

観光振興予算の現状(観光財源の必要性)1

観光財源のフレーム整理(財源創設の在り方)2

観光財源の導入にあたっての論点と課題4

日本と諸外国の観光振興予算の現状比較、課題の分析《予算配分、使途、事業効果、課題・ニーズ等》

観光財源創出の具体例(財源創設の在り方)3

今後求められる観光施策と財源5

国、地方自治体の歳入構造の現状比較、課題の分析《歳入項目、法定税、法定外税、手数料、分担金等》

国内:国際観光旅客税、宿泊税(東京都、大阪府、京都市等)等海外:米国:オーランド観光開発税、ESTA等

観光産業の高度化及び諸産業の観光事業振興の観点に資する安定的な財源確保手法と今後の施策の方向性等

導入意志(目的、使途)、受益者と負担者の整合性、実現可能な徴収方法、管理・運営手法、効果測定等

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本調査は、全体像と現状の把握として、観光振興予算や使途(施策)、既存の制度等における観光財源創出のフレームや具体例等を整理する。

上記を踏まえ、観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度や、財源を踏まえた高次元で持続的な観光振興施策の方向性について検討する。

観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討における業務フローと各調査項目・アプローチ

38

ⅳ)観光財源創出の具体例

ⅰ)調査方針

ⅲ)観光財源のフレーム整理

ⅴ)観光財源の導入にあたっての論点と課題

ⅵ)今後求められる観光施策と財源

ⅱ)観光振興予算の現状

業務フロー

• 下記の調査項目を書きの業務フローで実施した。

各調査項目・アプローチ

• 各調査項目は、それぞれ、文献調査、現地関係者・外部有識者へのヒアリング調査を織り交ぜながら実施した。

調査手法

文献調査

ヒアリング

現地関係者

外部有識者

i)調査方針

1) 調査方針2) 業務フロー

N/A

ii)観光振興予算の現状

1) 日本と諸外国の観光振興予算2) 地方自治体における観光振興予

算の現状● ● ●

Iii)観光財源のフレーム整理

1) 国の歳入構造2) 国の財源創出フレーム3) 地方自治体の歳入構造4) 地方自治体の財源創出フレーム

● ● ●

iv)観光財源創出の具体例

1) 国際観光旅客税2) 宿泊税3) 入湯税4) 海外の諸制度5) 電子渡航認証システム(米国:

ESTA等)

● ● ●

v)観光財源の導入にあたっての論点と課題

1) 財源創出の議論フレーム2) 財源を創出する仕組み・制度3) 徴収者、負担者への理解促進

● ●

vi)今後求められる観光施策と財源 ● ● ●

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I.業務概要

II.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

III.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

39

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観光振興予算の調査は下記のフレームで調査を実施した。

‒ なお、調査を進める上でデータのアベイラビリティから各国の項目が横並びに揃っていない項目も存在する。

観光振興予算調査のフレーム

40

概要

•今回の調査における範囲と比較が可能な項目の調査・検討。‒ 観光予算の範囲と主要国のデータのアベイラビリティを調査。

•上記のアベイラビリティに鑑み、国のレベルでの観光予算を調査。

•日本の都道府県、および地方分権の進むアメリカのDMOの観光予算を調査

•上記のまとめ

調査対象の考え方

国レベルの予算

地方自治体レベルの予算

まとめ

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下図は日本と諸外国の観光振興予算を視点1「国際観光客数は多いか(国外からの観光客数)」、視点2「国際観光客の支出は多いか(国外からの観光客による支出)」の二つの視点からマッピングしたものである。本調査では、地域毎のバランスを見るために、北米、西欧、アジア、豪州を比較対象として調査を実施した。

• 対象とした予算の範囲は、観光を所管する省庁以外の観光に係る予算の把握が難く、外客誘致を目的とする機関である政府観光局に係る予算とした。

諸外国との観光振興予算の比較の考え方(国際観光客数と支出の関係)(2015年)

41(World BankよりJTB総合研究所分析)

0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000

25,000

15,000

60,000

45,000

0

5,000

10,000

40,000

30,000

20,000

35,000

50,000

250,000

55,000

115,000

245,000

China

FranceThailandGermany

Hong Kong SAR, China

Macao SAR, ChinaAustralia

Switzerland

Netherlands Austria

Spain

Malaysia

Turkey

Greece

JapanSingapore

CanadaPortugalRussian Federation

BelgiumQatar

Italy

Poland

Mexico

United Kingdom

国際観光客数(単位:千人)

Korea, Rep.

国際観光客の観光支出(単位:百万USD)

India

United States

Indonesia

視点1:国際観光客数は多いか?

視点2:国際観光客の支出が多いか?

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)報告書」

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日本の政府観光局であるl独立行政法人国際観光振興機構(以下、JNTOと省略)予算は約133億円。‒ その支出の約8割は「国際観光振興事業」に使われ、そのうち「海外宣伝事業」」に95%が用いられている。

JNTOの経常費用(2016年度)の構成比

42

国際観光

振興事業,

82.2%

一般管理

費, 17.4%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

JNTO(経常費用)

95%

0%

0%

0%

1%

2%

0%

1%

1%

0%

100%

海外宣伝事業費

受入対策費

調査研究費

事業指導監督費

観光情報提供事業費

通訳案内士試験事業費

共同事業費

受託業務費

事業パートナー連携経費

消費税等

合計

(JNTOよりJTB総合研究所分析)

133億円

交付金事業費

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)報告書」

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日本の観光振興予算の使途としては、インバウンド関連予算(Visit Japanキャンペーン、JNTOへの補助金)と観光客受入環境整備に使われている。

観光庁の予算の推移(単位:百万円)

43

3,300

9,100

6,1004,900 5,500 6,100

1,300 1,200

2,000

1,900

2,0001,900

1,8001,900

6,500 7,000600

600

500

300400

5002,000

6,400

400

1,100

1,6003,200 2,500 1,900

600

9,900

6,300

12,700

10,200 10,300 10,200 10,400 10,400

24,500

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

Visit Japanキャンペーン JNTOへの補助金 観光客受入環境整備 その他

(JNTOよりJTB総合研究所分析)

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)報告書」

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アメリカ全体のプロモーションを担うBrand USAの予算は約1.6億アメリカドル。その使途は協賛企業との共同プロモーション(Partnership Services)がおよそ半分を占める。

• なお、収入元はESTAからの財源だけでなく、協賛企業からの拠出も増加している。

Brand USAの予算の使途と収入元(単位:百万USD)

44

• Brand USA の収入は設立から数年で大幅に増加。ESTAからの収入だけでなく、近年パートナー企業からの拠出が増加している。

(Brand USAよりJTB総合研究所作成)

100 92.8 102

20 40

575

7

6

125

140

164

2014年度 2015年度 2016年度

ESTA パートナーシップ スポンサー

53 6085

3534

3719

36

16

12

1416

3

67

125

153162

2014年度 2015年度 2016年度

パートナーシップサービス インタラクティブマーケティング

グローバルパートナーシップ オペレーション

コミュニケーション リサーチ

Brand USAの予算の使途別推移 Brand USAの収入元別収入額の推移

• Brand USA の予算は年々増加しており、使途としては、Partnership Services が大幅に増加。

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)報告書」

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オーストラリアに目を転じると、オーストラリア政府観光局の予算は概ね157億円程度となっており、その予算の使途は産業振興と需要の拡大に振り分けられている。

オーストラリア政府観光局の予算(単位:単位:百万AUD)

45

*2013年から2016年は実績。2017年は予算、18以降は概算の計画値。**2017年9月28日午前のレート1AUD=88.5円を適用

• 有望市場を特定、ターゲット化、オーストラリアへ旅行するように需要を喚起するとともに、オーストラリア全土での消費活動を促すことを目的とした使途

概要

• オーストラリア政府観光局の予算は下記の目標に対して、需要の拡大と産業振興の二つのコンポーネントに分けて予算を区分している。

【目標】• 対象市場に対して、産業と共同でマーケティング活動を行うことで、需要を創出し、競争力かる持続的な観光産業へと成長させること

• 対象市場のニーズに応えうる競争と持続性のある観光産業へと成長させることを目的とした使途

計画

136 137154 154

143 140 140150

25 22

22 27

24 24 2526

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

産業振興

需要の拡大

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)報告書」

(オーストラリア政府よりJTB総合研究所作成)

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405

2,117 1,8962,8042,902 2,444

1,4792,453

2,0251,381 1,166

650

978

1,072

961793

1,344

762473

225

32141

5,2445,032

5,591

6,1226,514

2011 2012 2013 2014 2015

タイ政府観光庁の予算は徐々に増加しており、2015年度には65.1億タイバーツ(229億円)に達している。

‒ 海外市場向けの観光プロモーションのほか、観光収益創出促進のためのプログラムへの拠出が増加している。

タイ政府観光庁の予算の推移(単位:百万バーツ)

46出典:タイ政府観光庁アニュアルレポートよりJTB総合研究所作成

海外市場向け観光プロモーション

国内市場向け観光プロモーション

マーケティング活動の推進とサポート

その他

観光収益創出促進のためのプログラム(国内・海外市場)

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諸外国の国全体の誘客プロモーションを担う政府観光局の予算を比較したものが下表である。‒ JNTOの予算はタイ、豪州、アメリカよりも少ない133億円程度であり、観光局予算のみに絞ると、日本の予算は圧倒的に少ないわけではないが、日本よりも外客数で勝るタイ、アメリカは投入している予算が多い。つまり、外客誘致機関の予算だけでは、他の国に劣っているという訳ではない。

各国の政府観光局の予算比較

47

日本 アメリカ フランス イギリス オーストラリア タイ

外客誘致機関(政府観光局)

JNTO Brand USA Atout FranceVisit Britain(除くVisitEngland)

Tourism Australia

Thailand Tourism Authority

予算

現地通貨

133億円(2017年度)

1.6億米ドル(2016年度)

7,000万ユーロ(2017年度)

4,140万ポンド(2017年度)

1.8億豪州ドル(2017年度)

65.1億バーツ(2015年度)

円建て* 173億円 93億円 64億円 157億円 229億円

(各外客誘致機関、ホームページ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングよりJTB総合研究所作成)出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)報告書」

*三菱UFJリサーチ&コンサルティング「2018年2月末日および月中平均」より月中平均TTSを適用

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都道府県の観光予算に目を転じると、47都道府県で727億円程度が観光の予算額とされている。尚、下記の予算に職員給与費は含まれていない。

平成29年度都道府県観光当初予算額(単位:百万円)

48

H27 H28 H29 H27 H28 H29

1 東京都 28,622 15,291 16,403 25 長野県 553 775 805

2 沖縄県 8,506 16,144 7,374 26 兵庫県 179 690 791

3 鹿児島県 2,208 3,890 4,515 27 大阪府 260 366 747

4 高知県 1,341 1,760 3,697 28 福岡県 294 454 692

5 宮城県 1,603 1,582 3,232 29 山口県 240 373 685

6 北海道 595 1,486 2,050 30 京都府 481 537 673

7 鳥取県 1,370 1,291 2,015 31 愛知県 453 604 668

8 静岡県 1,664 1,689 1,966 32 和歌山県 583 434 658

9 徳島県 81 100 1,879 33 山梨県 916 803 640

10 新潟県 1,623 1,664 1,861 34 岡山県 557 569 545

11 福島県 2,248 1,510 1,849 35 広島県 156 670 545

12 長崎県 418 609 1,363 36 熊本県 313 182 526

13 秋田県 1,373 1,165 1,273 37 三重県 636 448 502

14 奈良県 929 1,308 1,189 38 群馬県 177 281 494

15 山形県 446 375 1,110 39 茨城県 456 297 488

16 島根県 865 698 1,099 40 愛媛県 457 503 482

17 佐賀県 636 774 1,031 41 滋賀県 276 311 456

18 青森県 462 641 1,005 42 大分県 558 552 452

19 富山県 767 731 966 43 宮崎県 408 431 431

20 香川県 638 650 927 44 神奈川県 128 162 386

21 千葉県 851 1,003 924 45 栃木県 365 312 383

22 福井県 1,112 980 902 46 埼玉県 158 150 241

23 石川県 1,579 1,445 861 47 岩手県 353 517 52

24 岐阜県 572 879 843 合計 69,466 68,086 72,676

出典:観光庁「平成29年度都道府県・政令指定都市における観光予算等調査」*注:観光担当部署での計上予算額を記載(職員給与費を除く)。財源として国等からの補助金等を充てた事業の予算額を含めて記載。石川県のH28当初予算には別途観光ファンドへの貸付金150億円が計上

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全国知事会におけるアンケート調査では、観光施策に関する予算額(職員給与費含む)は854億円程度存在。予算計上されていないものの、仮に財源が確保できることとなった場合に取り組みたい(または拡充したい)観光施策に係る事業の経費を集計した「潜在的事業費」は約462億円存在する。

‒ 「潜在的事業費」として挙げられた事業としては、ソフト事業としては受入環境整備、プロモーション等、ハード事業では施設整備等が挙げられている。

平成29年度観光施策に関する予算額および潜在的事業費(単位:百万円)

49

*潜在的事業費は、現在、予算計上されていないものの、仮に財源が確保できることとなった場合に取り組みたい(または拡充したい)観光施策に係る事業の経費を概数で集計したもの**「その他」は訪日外国人、国内旅行者それぞれに該当しない経費。出典:全国知事会「第1回地方税財政常任委員会(H29年6月28日)」より

36,506

12,399

131,595

85,397

36,492

46,198 +46,198

合計潜在的事業費予算総額その他国内旅行者関連事業費

訪日外国人旅行者関連事業費

観光施策に関する潜在的事業の例

ソフト事業

ハード事業

1. 観光受入に向けた環境整備• 外国人観光客受入事業• 地域二次交通支援事業• 外国クルーズ船誘致による地方創生事業• 日本版DMO形成促進事業

2. 戦略的な観光プロモーション・PR• 閑散期観光推進事業• データを活用した情報発信事業• 現地における効果的なPR• 教育旅行・MICE等誘致事業

3. 地域の多様な魅力を活用した観光促進• 宿泊施設の魅力向上事業• 土産物開発支援事業

1. 観光関連施設の整備• 観光施設等の整備・改修事業• loT環境整備事業• 景観を意識した施設整備

2. 地域資源の活用及び情報発信• 観光誘客施設の整備• 首都圏以外におけるPR事業(アンテナショップの整備)• 文化施設における環境整備

3. 訪日外国人受入に向けた環境整備• インバウンド対策事業(多言語化)• 外国人観光客に向けたPR事業(ガイドブック作成)

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地方分権が進んでいる北米のDMOの予算に目を転じると、ラスベガスコンベンションアンドビジタービューローが2.82億アメリカドル(およそ300億円程度)、ビジットフロリダが2.12億アメリカドル(212億円程度)と、200-300億円を超える予算を有する地域のDMOが存在する。

‒ 観光産業を主とする地域のDMOの予算の方が全米のプロモーションを担うBrand USAの予算(概ね170億円)を上回る状況となっている。

2015年度の北米のDMOの予算(単位:百万アメリカドル)

50

282212

4844

4036363433333331303030

2826

232120

0 50 100 150 200 250 300

Las Vegas Convention & Visitors AuthorityVISIT FLORIDA

Los Angeles Tourism & Convention BoardVisit St. Petersburg/Clearwater Area Convention & Visitors Bureau

San Francisco Travel AssociationVisit Myrtle Beach

Reno-Sparks Convention & Visitors AuthorityNYC & Company

San Diego Tourism AuthorityTourism Toronto

The Beaches of Fort Myers & Sanibel - Lee County Visitor & Convention BureauDallas Convention & Visitors Bureau

Greater Miami Convention & Visitors BureauAtlanta Convention & Visitors Bureau

Choose ChicagoLouisiana Office of TourismBermuda Tourism Authority

VISIT DENVERNew Orleans Metropolitan Convention & Visitors Bureau Incorporated

San Antonio Convention & Visitors Bureau

(Destination Management Association lnternationalよりJTB総合研究所分析)

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)報告書」

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北米のDMOの予算は、公共からの収入のほかに、民間からの収入も含まれている。地域によって、その構成比は異なるが、ビジットフロリダのように65%が民間からの拠出というようなDMOも存在する。

• なお、民間からの収入には、航空会社からの航空座席等の現物のサービスや物品を金額換算したものも含まれる。

2015年度の北米のDMOの予算構成比(公共・民間別)

51

82%35%

91%99%

61%80%

78%50%

71%92%

100%94%

84%68%

86%100%100%

86%87%

97%

18%65%

9%1%

39%20%

22%50%

29%8%

0%6%

16%32%

14%0%0%

14%13%

3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

Las Vegas Convention & Visitors AuthorityVISIT FLORIDA

Los Angeles Tourism & Convention BoardVisit St. Petersburg/Clearwater Area Convention & Visitors Bureau

San Francisco Travel AssociationVisit Myrtle Beach

Reno-Sparks Convention & Visitors AuthorityNYC & Company

San Diego Tourism AuthorityTourism Toronto

The Beaches of Fort Myers & Sanibel - Lee County Visitor & Convention BureauDallas Convention & Visitors Bureau

Greater Miami Convention & Visitors BureauAtlanta Convention & Visitors Bureau

Choose ChicagoLouisiana Office of TourismBermuda Tourism Authority

VISIT DENVERNew Orleans Metropolitan Convention & Visitors Bureau Incorporated

San Antonio Convention & Visitors Bureau

Public Private

(Destination Management Association lnternationalよりJTB総合研究所分析)

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)報告書」

*Private(民間)からの拠出は、ln_kind contribution(現物支給)が含まれる

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諸外国の観光振興予算と我が国・地域の観光振興予算を比べると、国レベルの政府観光局の予算額では必ずしも他国よりも低いわけではない。

地方レベルでは、観光振興に係る予算が足りていない状況も伺える。ラスベガスやフロリダといった国際的な観光デスティネーションでは、多額の予算を計上しているが、公的な拠出だけでなく民間とのパートナーシップを組み、官民一体となってプロモーションを実施している。

観光振興予算の現状のサマリー

52

国レベル

地方レベル

• 政府観光局の予算では、我が国は必ずしも他国よりも予算額が低いわけではない。

• 地方においては、観光振興に係る予算が足りていない状況もうかがえる。‒ 都道府県の観光施策に関する予算額(職員給与費含む)は854億円程度存在。予算計上されていないものの、仮に財源が確保できることとなった場合に取り組みたい(または拡充したい)観光施策に係る事業の経費を集計した「潜在的事業費」は約462億円存在。

‧ アメリカのDMOでは、予算額200-300億円程度を持つDMOも存在。公共からの拠出だけでなく、民間とのパートナーシップも進んでいる。(P50:2015年度の北米のDMOの予算、P51:2015年度の北米のDMOの予算構成比(公共・民間別)を参照)

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

• (1)国の歳入構造

• (2)国の財源創出フレーム

• (3)地方自治体の歳入構造

• (4)地方自治体の財源創出フレーム

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

53

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

• (1)国の歳入構造

• (2)国の財源創出フレーム

• (3)地方自治体の歳入構造

• (4)地方自治体の財源創出フレーム

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

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我が国の平成29年度一般会計予算は約97.5兆円。歳入の約6割、約57.7兆円が税収となっている。観光振興財源の確保について、新税等を想定した場合には、その他の税収(10.2兆円、10%)に該当することとなる。

その他の税収の内訳は、揮発油税(いわゆるガソリン税)が23.4%(2.4兆円)と最も大きい。平成31年1月より導入が決定した「国際観光旅客税」は400億円規模であるが、航空機燃料税の0.5%(520億円)と同程度の財源となる。

国の収入構造とその他の税収の内訳、並びに「国際観光旅客税の規模の比較(単位:兆円)

55

租税及び印紙

収入, 57.7

所得税, 17.9

法人税, 12.4

消費税, 17.1

その他, 10.2

その他の収入,

5.4

公債金, 34.4

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

一般会計予算 うち租税及び印紙収入詳細

2.39

2.12

1.31

1.09

0.95

0.93

0.69

0.37

0.31

0.05

0.01

0.01

0.04

揮発油税(ガソリン税)

相続税

酒税

印紙収入

関税

たばこ税

石油石炭税

自動車重量税

電源開発促進税

航空機燃料税

とん税(外国貿易船入港に対する…

石油ガス税

(国際観光旅客税(H31,1~))

その他の税収の内訳(平成29年度)及び「国際観光旅客税」の規模の比較

(単位:兆円)

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業) 地域高度化計画実行のための財源等確保に係る海外事例等調査」

97.5兆円 57.7兆円

国際観光旅客税は平成31年1月より導入のため、平成29年度歳入には含まない。

一般会計予算とその他の収入の内訳(平成29年度)(単位:兆円)

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目的税の場合、特定会計を設置するケースもあるが、その設置には、①特定の事業を行う場合、②特定の資金を保有してその運用を行う場合、③その他特定の歳入をもって特定の歳入に宛て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限られる。

特定財源についての留意点は、受益者や原因者に「直接負担を求める」ことに合理性がある、一方で、弊害としては「財政が硬直化する」ことがあげられる。

目的税の例(エネルギー対策特別会計)

56

意義 弊害

特定財源(目的税)についての留意点

• 受益者や原因者に

直接負担を求める

ことに合理性がある

• 一定の歳出につき

安定的な財源を確

保できるなど

• 財政が硬直化する

おそれがある

• 歳入超過の場合に

資源が浪費された

り余剰が生じたりす

るおそれがあるなど

電気使用者 電気事業者 一般会計 特別会計

H18まで

H19以降

電気料

電源開発促進対策特別会計

エネルギー対策特別会計

(電源開発促進勘定)

直接特別会計に繰り入れ

必要額を特別会計に繰り入れ

• オイルショックを背景に石油に代わる代替エネルギーを模索し、原子力発電所、水力発電所、地熱発電所等の設置を促進を目的に1974年創設。

• 原子力発電施設、水力発電施設、地熱発電施設等の設置の促進及び運転の円滑化を図る等のための財政上の措置並びにこれらの発電施設の利用の促進及び安全の確保並びにこれらの発電施設による電気の供給の円滑化を図る等のための措置に要する費用に充てる(電源開発促進税法第一条)。

エネルギー対策特別会計(例)

国が下記3点に限って特別会計の設置を認めている(財政法第 13 条第 2 項)。

①特定の事業を行う場合

②特定の資金を保有してその運用を行う場合

③その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合

特別会計設置要件 特別会計具体例

• 特定会計の具体例としては、昭和33年揮発油税(ガソリン税)等を財源とした「道路特定財源」 の設置が顕著。しかし、特別会計の設置は抑制的であり、昭和50年代以降は、下記3例にとどまる。

‒ 昭和59年度特許特別会計‒ 昭和60年度登記特別会計‒ 平成24年度東日本大震災復興特別会計

‧ 「特別会計に関する法律等の一部を改正する等の法律」(平成25年)では「租税収入が特別会計の歳出の財源とされる場合においても、当該租税収入が一般会計の歳入とされた上で当該特別会計が必要とする金額が一般会計から繰り入れられることにより、国全体の財政状況を一般会計において総覧することが可能とされること」と規定している。

納税電気料

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

• (1)国の歳入構造

• (2)国の財源創出フレーム

• (3)地方自治体の歳入構造

• (4)地方自治体の財源創出フレーム

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

57

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• 観光財源の使途の適正性を確保する観点から、受益と負担の関係が不明確な国家公務員の人件費や国際機関分担金などの経費には充てないこととする。観光財源を充当する3つの分野については、観光庁所管の法律を改正し、法文上使途として明記する。また、予算書においても観光財源を充当する予算を明確化する。

• 無駄遣いを防止し、使途の透明性を確保する仕組みとして、行政事業レビューを最大限活用し、第三者の視点から適切なPDCAサイクルの循環を図る。

• 平成 31 年度予算編成に向けた対応方針として、平成 31 年度予算以降は、硬直的な予算配分とならず、毎年度洗い替えが行えるよう、観光戦略実行推進タスクフォースにおいて、民間有識者の意見も踏まえつつ検討を行い、予算を編成する。

「国際観光旅客税」においては「使途に関する基本方針」を法的に定め、使途を①ストレスフリーで快適に旅行できる環境整備、②我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化、③地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験の3分野に充当する旨が規定されている。

国際観光旅客税の使途等の規定

58出典:観光庁資料

• 観光立国推進閣僚会議決定(平成29年12月)等を踏まえ、国際観光旅客税の税収を、以下の3分野に充当する旨を規定

• 外国人観光旅客の旅行の容易化等の促進による国際観光の振興に関する法律第二章第三条基本方針

• 観光財源を充当する施策は、既存施策の財源の単なる穴埋めをするのではなく、以下の考え方を基本とする

基本理念

受益と負担の関係から負担者の納得が得られること

地方創生をはじめとする我が国が直面する重要な政策課題に合致する

国際観光旅客税収の使途

ストレスフリーで快適に旅行できる環境整備

地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域で

の体験

国際観光旅客税収の使途 基本理念

先進性が高く費用対効果が高い取り組みであること

我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化

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他国では空港使用料や電子渡航認証システム(ESTA)申請料等の「手数料・使用料」が観光財源の一部となっているが、我が国では、自動車安全特別会計において「空港整備勘定」を設け、航空運送事業者等からの空港使用料収入や一般会計からの繰入金等を財源として、空港等の維持運営や空港整備事業等を実施している。「空港整備勘定」では、空港整備特別会計法により、歳入歳出を規定管理している。

空港整備勘定の概要

59

空港使用者 航空事業者等 空港管理主体空港整備勘定

空港使用料の徴収フロー

航空料(含む空港使用料等) 空港使用料等

空港使用料等

空港整備事業等

空港サービス向上

• 空港使用料は、財産価格、償却資産、維持管理経費等を総合的に勘案してコスト設定を行い、当該コスト回収のため、使用形態に応じ「着陸料、停留料、保安料」の類別により設定する。(空港管理規則第 11 条の規定に基づき、使用料の額及び支払方法を定める)。

空港整備勘定の歳入(平成28年度) 単位:億円

空港整備勘定の歳出(平成28年度) 単位:億円

2,104

83483

834

1,473

1,452

929

3,854

3,945空港使用料収入

一般会計より受入

地方公共団体工事費負担金収入

空港使用料収入

着陸料、航行援助施設利用料等の収入

空港整備事業に要する経費の財源に充てるための一般会計からの受入

国管理空港の空港整備に必要な経費のうち、地方公共団体の負担金の受入

償還金収入、配当金収入 空港等財産処分収入、 空港用地の売払いによる収入、雑収入(空港用地等の貸付料収入)、前年度剰余金

空港等維持運営費

空港整備事業費

その他

国管理空港等における滑走路・誘導路・エプロン等の空港関係施設の維持運営、地方管理空港も含めた空港・航空路に係る航空管制の維持運営、ハイジャック・テロ対策等に係る人件費・事務費等

羽田空港整備、一般空港整備、空港周辺環境対策(住宅防音工事、移転補償等)等

レーダー・通信施設等の整備等、地域公共交通維持・活性化推進費、離島航空路線の運航を確保するため使用する航空機等の購入に要する経費の一部補助等

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

• (1)国の歳入構造

• (2)国の財源創出フレーム

• (3)地方自治体の歳入構造

• (4)地方自治体の財源創出フレーム

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

60

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目的税:入湯税

地方自治体の平成29年度歳入見込総額は86.7兆円。そのうち、地方税による歳入は45%の39,1兆円。‒ 地方税の内訳は、都道府県では都道府県民税、事業税、地方消費税で全体の8割以上、市町村では市町村税と固定資産税で全体の9割弱。

‒ 観光振興財源としては、入湯税(かさ上げ等)といった目的税、宿泊税等の法定外目的税での検討が該当することとなる。

地方自治体の収入構造(単位:兆円)

61

地方自治体の収入構造

(平成29年度歳入見込総額)

都道府県地方税の収入構造

(平成29年度歳入見込総額)

市町村地方税の収入構造

(平成29年度歳入見込総額)

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)地域高度化計画実行のための財源等確保に係る海外事例等調査」より作成

地方税, 39.1

地方交付

税, 16.3

国庫支出

金, 13.5

地方債, 9.2

4.2

2.5

1.6

0.1

雑収入

地方譲与税

使用料及び手数料

地方特別交付金鉱区税

目的税:狩猟税

固定資産税(特例分等)

ゴルフ場利用税

自動車取得税

道府県たばこ税

不動産取得税

軽油引取り税

特別土地保有税

鉱産税

軽自動車税

目的税:事業所税

市町村たばこ税

市町村民

税, 93.1

固定資産

税, 89.8

目的税:都

市計画税, 12.6

9.2

3.7

2.5

0.2

0.02

0.02

道府県民

税, 58.4

地方消費

税, 46.0

事業税, 43.4

自動車

税, 15.2

9.3

4.1

1.5

1.3

0.4

0.031

0.008

0.003

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

• (1)国の歳入構造

• (2)国の財源創出フレーム

• (3)地方自治体の歳入構造

• (4)地方自治体の財源創出フレーム

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

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地方公共団体は、課税自主権のもと、地方税の税目や税率設定などについて自主的に決定し、課税することができる。また法定外税として、地方税法に定める税目以外で、地方団体の条例に基づき課することができる(平成12年に法定外目的税創設)。

法定外普通税は一般会計、法定外目的税は特定目的の財源となる。

観光に関連する財源としての税目としては、法定外普通税、法定税としての入湯税、法定外目的税が該当する。

地方税法の税目概要

63

地方税法の税目

普通税

目的税

法定税

法定外税

法定税

法定任意税

法定外税

• 道府県民税、事業税 、地方消費税、不動産取得税、道府県たばこ税、ゴルフ場利用税 自動車取得税、軽油引取税、自動車税 鉱区税

• 市町村民税、固定資産税、軽自動車税、市町村たばこ税、鉱産税、特別土地保有税

• 道府県• 法定外普通税

• 市町村• 法定外普通税

• 狩猟税

• 入湯税• 事業所税

• 水利地益税

• 都市計画税、水利地益税、共同施設税• 宅地開発税、国民健康保険税

• 法定外目的税(H12)

道府県税

市町村税

道府県税

市町村税

道府県税

市町村税

道府県税

市町村税

道府県税

市町村税

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法定外目的税として定められた、また導入が決定している観光関連の税は9件。平成27年度決算額21.3億(大阪府、京都市の宿泊税、座間味村の美ら島税は含まない)。宿泊税は、平成14年の東京都の導入以降、平成29年に大阪府が導入。平成30年10月から京都市が導入(市区町村初)。

北海道、金沢市、福岡市、倶知安町等、宿泊税導入に向けた議論を進める自治体は増加している。

観光に関連する法定外目的税は、宿泊税以外にも、乗鞍環境保全税、環境協力税、遊漁税等がある。

法定外普通税の中でも、別荘等所有税、歴史と文化の環境税は、使途の制限は設けていないが観光財源にも充当されている。

観光財源に特化した法定外目的税等の概要

64

観光財源に関連した法定外税

法定外普通税

法定外目的税

別荘等所有税

歴史と文化の環境税

宿泊税

環境協力税

遊漁税

市町村

都道府県

市町村

都道府県

市町村

市町村

市町村

静岡県熱海市 5億円(H27年度)

東京都 21億円(H27年度)大阪府 7.6億円(H29年度)

京都市 45.6億円(H31年度見込)*H30年秋から導入。同年度は19億円見込

岐阜県 (乗鞍環境保全) 0.1億円(H27年度)

(沖縄県)伊是名村 0.05億円伊平屋村 0.03億円

渡嘉敷村 0.12億円(H27年度)座間味村(美ら島税) 0.1億円(H30年度見込)

福岡市太宰府市 0.8億円(H27年度)

山梨県富士河口湖町 0.1億円(H27年度)

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入湯税は976市区町村において目的税として設けられており、227億円(平成27年度決算)の税収(地方税収の0.3%)。

入湯税の使途は、観光施設及び観光の振興を目的とした歳出が139.6億円。入湯税収の64.0%にあたる。

入湯税の概況

65

課税主体鉱泉浴場所在の市町村(平成 27 年度課税団体数:976 団体)

課税客体 鉱泉浴場における入湯行為

納税義務者 鉱泉浴場における入湯客

税率 1人1日 150 円を標準とする。

使途

環境衛生施設鉱泉源の保護管理施設消防施設その他消防活動に必要な施設の整備観光の振興(観光施設の整備を含む。)

徴収方法 特別徴収

税収 227 億円(平成 27 年度決算額)

入湯税の概要 入湯税の充当状況(単位:百万円)

※基金に積み立てている団体があるため、収入額と充当実績額は異なる。

9,849 9,308 9,500 10,038 10,065 10,472

4,633 4,214 4,449

4,365 4,385 4,518

3,525

3,033 3,552 3,398 3,518

3,483

2,868

2,891 2,891 2,864 3,019 2,779

822 791

803 740 727 719 21,697

20,237 21,195 21,405 21,714 21,971

平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度

観光の振興 環境衛生施設 観光施設 消防施設等 鉱泉源保護管理

100円以下,7.7%

120円, 0.2%

130円, 0.3% 150円

(標準), 91.5%200円以上,

0.3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

入湯税の税率採用状況

出典:総務省 入湯税の概要 出典:総務省 市町村が活用可能な地方税制について

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他国では空港使用料や電子渡航認証システム(ESTA)申請料等の「手数料・使用料」が観光財源の一部となっている。

我が国では、空港使用料や、地方自治体歳入の2%を占める「手数料・使用料」による収入として確立されているが、 料金の定め方(算出根拠)や使途(受益者負担)が法令等によって定められており、他国と比べ柔軟な運用が困難な面がある。

地方自治体の手数料・使用料の概要

66出典:東京市町村自治調査会 「市区町村における「手数料」とは」

地方自治法が定める収入

地方税(45%)

分担金(不定期)、使用料・手数料(2%)

地方債(10%)

※地方自治体の収入の残り43%は交付金等

• 「手数料」は、調定手続きを経て徴収される歳入(収入)の一種(左図)。

• 自治法第227条「普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体の事務で特定の者のためにするものにつき、手数料を徴収することができる」が法的根拠。

• 市区町村が行政サービスを提供する際の費用の大部分を税金で負担(公費負担)。しかし、サービスを利用しない人の税金も含まれているため、不公平が発生。市区町村は、この受益者負担と公費負担を適切に組み合わせた上で「手数料」の金額を設定し、受益と負担の公平性を保った上で行政サービスを提供。

• 原価算定の基本ルールを明確化し、統一的な方法で料金額算定。

1人当たりの人件費

処理時間(分) 物件費 年間処理件数 手数料

計算式

(( × ) )÷ =

職員給与、職員手当等 消耗品費や印刷製本費等、事務執行に必要な費用

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分担金(負担金)による観光振興財源については、地方創生の財源として、エリアマネジメント(地域の魅力的な空間と機能づくり)の財源として、経済産業省をはじめ内閣府で検討され、平成30年2月に「地域再生エリアマネジメント負担金制度の創設」が閣議決定。

欧米等の「BID(ビジネス活性化地区)」制度の日本版として、政府は2023年までに全国で100地区の導入を目標としている。

分担金の概況

67

分担金法定外税

根拠

地方自治法(昭和22年法律第67号)(抄)(分担金)第224条• 普通地方公共団体は、政令で定める場合を除くほか、数人又は普通地方公共団体の一部に対し利益のある事件に関し、その必要な費用に充てるため、当該事件により特に利益を受ける者から、その受益の限度において、分担金を徴収することができる。

地方自治法第223条• 普通地方公共団体は、法律の定めるところにより、地方税を賦課徴収することができる。地方税法第3条• 地方団体は、その地方税の税目、課税客体、課税標準、税率その他賦課徴収について定をするには、当該地方団体の条例によらなければならない。

受益負担関係

より直接的な関係性の説明が必要

関係性の説明が必要

想定される負担者

地権者事業者

利用者事業者

税の3原則「公平・中立・簡素」

満足する必要あり -

法定外税と分担金の比較 地域再生エリアマネジメント負担金制度の概要

国(内閣総理大臣)

市町村

エリアマネジメント団体(法人)

受益者(事業者)(小売業者、サービス業者、不動産賃貸業者 等)

地域再生計画

地域来訪者等利便増進活動計画(5年以内)

負担金条例交付金

受益者負担金

①申請 ②認定

③申請(※3分の2以上の同意が必要)

④認定(※市町村議会の決議を経る必要)

⑤制定

一定の地域

⑦交付⑥徴収

⑧エリアマネジメント活動

区域、活動内容、効果、受益者、資金計画等を記載

※3分の1超の事業者の同意に基づく計画期間中の計画の取消等についても、併せて記載

出典:経済産業省「平成27年度地域経済産業活性化対策調査報告書(地域の魅力的な空間と機能づくりに関する調査)まち・ひと・しごと創生本部「地域再生エリアマネジメント負担金制度の創設」より

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例• (1)「国際観光旅客税」• (2)宿泊税(東京都、大阪府、京都市)• (3)入湯税(釧路市)• (4)海外の諸制度• (5)電子渡航認証システム(米国:ESTA等)

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例

• (1)「国際観光旅客税」

• (2)宿泊税(東京都、大阪府、京都市)• (3)入湯税(釧路市)• (4)海外の諸制度• (5)電子渡航認証システム(米国:ESTA等)

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

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平成29年9月より観光庁を中心に議論が開始された「国際観光旅客税」は「平成29年12月14日与党税制改正大綱」にて、平成30年度税制改正として決定。全8回の検討会が催され、「使途」も決定された。

‒ 平成31年1月より開始され、平成30年度は年間60億円(3か月の税収見込み)、平成31年度以降410億円規模の税収が見込まれる。

「国際観光旅客税」の検討フレーム

70

「明日の日本を支える観光ビジョン」「未来投資戦略2017」

「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」

平成30年度税制改正「次世代の観光立国実現に向けた観光促進のための国際観光旅客税(仮)の創設」

「国際観光旅客税(仮)の使途に関する基本方針等について」

「外国人観光旅客の旅行の容易化等の促進による国際観光の振興に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定

• 今後さらに増加する観光需要

に対して高次元で観光施策を

実行するために必要となる国

の財源の確保策について検討

を行うことを明記。

‒ 全7回開催【委員】• 大学教授 3名• コンサルタント 2名• 金融関係会社 2名• 経済団体 1名• 民間企業 1名

【事務局:観光庁観光戦略課】【開催スケジュール】• 第1回 平成29年9月15日 ~• 第7回(最終回) 平成29年11月9日

平成29年12月14日

【納税義務者】• 日本より出国する旅客(訪日及び日本人出国の双方)• 税率:出国1回につき1,000円• 徴収・納付:国際運送事業を営む者による特別徴収等• 制度開始時期:平成31年1月

平成29年12月22日

• 観光立国推進閣僚会議(主宰内

閣総理大臣)第8回会合で決定

平成30年2月2日【国際観光旅客税の使途を規定】① ストレスフリーで快適に旅行できる環境の

整備② 我が国の多様な魅力に関する情報の入手の

容易化③ 地域固有の文化、自然等を活用した観光資

源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上

【その他】観光庁への所掌事務の追加• (独)国際観光振興機構が同税を財源として行う事業に係る区分経理勘定の整備に伴う(独)国際観光振興機構法の改正

– OECD が諸外国の代表事例と整理した「出入国行為」、「航空旅行」、「宿泊」の各類型について、我が国への導入を検討する場合の具体的な課題について検討する方向。

航空、旅行、宿泊、旅客船業界ヒアリング– 訪日需要の影響を懸念しつつ一定の理解。観光

財源の必要性について一定の理解 一部反対もあり

– 負担者(内外無差別の観点)、需要への影響提言、負担額、使途、徴収方法について議論。

– 租税もしくは負担金・手数料を比較検討。

– 必要性についての認識共有。諸外国の事例を踏まえ「出入国」が比較的理解を得やすい。

– 徴収に関し航空については既存「オンチケット方式」を基本とすべき。– 税方式としつつ、使途と受益と負担の関係についてさらに議論。– 負担額は一律とするのが妥当。– 地方からの要望(地方譲与税への充当)については新たな財源に基づく

歳出により国において適切に対応すべきではないか– 使途については、具体的に記載すべき。一方、将来的な観光施策の変化や

技術革新に対応できるよう幅を持たせるべき。

中間とりまとめ

第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回

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国際観光旅客税の概要(平成31年1月7日より)

71

なぜ必要か

• 当面の目標である2020 年 4,000 万人の達成に向けては、更に高次元での取組み(※1)が必要である。

• このような施策を通じて訪日旅客の急増に伴う様々な観光需要に迅速かつ的確に対応するには、一定規模の安定的な財政支出も必要となるが、現在の財政状況下では財源の捻出には限界があることから、「観光ビジョン」や本年6月の「未来投資戦略2017」においては、観光施策に充てる財源の確保を目指すとされている。

どうやって運営するか

(3)使途の適正性の確保• 観光財源の使途の適正性を確保する観点から、受益と負担の

関係が不明確な国家公務員の人件費や国際機関分担金などの経費には充てないこととする。

• 観光財源を充当する3つの分野は、観光庁所管の法律を改正し、法文上使途として明記する。また、予算書においても観光財源を充当する予算を明確化する。

(4)第三者によるチェック• 無駄遣いを防止し、使途の透明性を確保する仕組みとして、

行政事業レビューを最大限活用し、第三者の視点から適切なPDCA サイクルの循環を図る。

3.平成 31 年度予算編成に向けた対応方針• 国際観光旅客税(仮称)の税収が満年度化する平成 31 年度

予算以降は、硬直的な予算配分とならず、観光財源を充当する具体的な施策・事業が、(1)(2)の考え方に沿うべく、毎年度洗い替えが行えるよう、観光戦略実行推進タスクフォースにおいて、民間有識者の意見も踏まえ検討を行い予算を編成する。

• 受益と負担の関係を明確化し、予算の総合性の確保等を図る観点から、観光財源を充当する具体的な施策・事業について、観光庁に一括計上した上で、関係省庁に移し替えて執行する。

誰が負担し、受益するのか

①訪日外国人旅行者• 様々な観光施策により直接的な受益を実感しやすい。

②日本人• 新たな財源を活用した「持続可能な質の高い観光立国の実

現」とは、国民一人一人がその受益を実感できる国を目指すことに他ならない。必要となる施策の財源について最終的な受益者である国民への負担を一部求める。

• 訪日外国人旅行者の増加は草の根レベルで外交や安全保障を支える礎となる。我が国のブランドイメージの向上等につながり、日本人に対しても外国旅行時の観光やビジネスをはじめ様々な局面で恩恵をもたらす。

• 出入国環境の円滑化・利便性向上、国際航空・海運ネットワークの維持・拡大にも資することから、「出入国」という行為に着目し、広く薄く負担を求める。(受益との関連でも一定の合理性がある)。

どうやって徴収するか

•税率:出国1回につき1000円•実施時期:2019年1月7日以後の出国に適用•納税義務者:日本から出国する観光客など

(船舶や航空機の乗務員は除く)•課税対象:国際船舶または航空機•非課税対象者:(1)航空機により入国後24時間以内に出国する乗り継ぎ旅客者(2)天候その他の理由により日本から寄港した国際船舶に乗船

していた旅客(3)2歳未満の者。• 納税地:

国内運送業者による特別徴収の場合、その住所の所在地、国外運送業者による場合は出国する港の所在地とする。

•その他:外国人旅行者向けの消費税免税制度の利便性向上に関する手続きの電子化やペーパーレス化の推進のほか、免税販売対象となる下限額の判定基準を見直し、一定条件下では一般物品と消耗品の合算を認める。

何に使うのか

1.国際観光旅客税(仮称)の使途に関する基本方針(1)訪日外国人旅行者 2020 年 4,000 万人等の目標達成に向

けて、① ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備②我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化③地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上

(2)観光財源を充当する施策は、既存施策の財源の単なる穴埋めをするのではなく、以下の考え方を基本とする。①受益と負担の関係から負担者の納得が得られること②先進性が高く費用対効果が高い取り組みであること③地方創生をはじめとする我が国が直面する重要な政策課題に合致すること

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例

• (1)「国際観光旅客税」

• (2)宿泊税(東京都、大阪府、京都市)

• (3)入湯税(釧路市)

• (4)海外の諸制度

• (5)電子渡航認証システム(米国:ESTA等)

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

72

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東京都は日本で初めての宿泊税を平成14年より実施。産業界の要望もあり、宿泊税の使途を明確にし、戦略的な活用を図るために「東京都観光産業振興プラン」を策定。

平成29年度は観光産業振興費164億円のうち、15%にあたる24億円が宿泊税による税収。(東京都おもてなし・観光基金創設前の平成26年度においては60%)※次頁参照

宿泊税・東京都

73出典:平成29年度東京都税制調査会 第3回小委員会「宿泊税に関する資料」

• 東京都税制調査会の答申においてホテル税(現宿泊税)をはじめとした法定外目的税が提言。

• 石原都知事が記者会見にてホテル税導入案発表

• 都議会定例会議において「東京都宿泊税条例」案が提出され、同条例が可決・成立。

• 総務大臣との協議開始

• 総務大臣同意

• 公布

• 施行

(H12)2000年

(H13)2001年

(H14)2002年

11月

12月

11月

3月

4月

10月1日

• 産業界より使途の不透明さ等の議論が起こる。

• 平成13年「東京都観光産業振興プラン」を初めて策定。宿泊

税の使途を明確にした。

• 東京の魅力を高めるための施策を高めるための施策を強力に

展開する一方で、旅行者等に行政サービスに対する応分の負

担を求め、それを東京の魅力を高めるための施策に振り向け

るという好循環を形成していくことに意義があるとした(都

税制調査会答申)。

導入経緯 主な論点

概要

税率• 宿泊料金1人1泊

• 1万円以上1万5千円未満(100円)• 1万5千円以上(200円)

課税免除 宿泊料金1人1泊 1万円未満の宿泊者

徴収方法 ホテル又は旅館による特別徴収

税収使途

国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用<平成29年度実施予定事業の例>• Wi-Fiやデジタルサイネージなどの利用環境の整備• 観光事業者に対するインバウンド対応力の向上• 新たな観光案内所の整備・機能強化• 富裕な旅行者層に対する観光プロモーション• 宿泊施設のバリアフリー化• MICE誘致活動の展開

税収 2,412百万円(平成29年度実績)

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税創設以降、税収は安定的に推移。

平成27年度に、東京都を訪れる国内外の旅行者に対する受入環境の充実及びその他観光都市としての東京の発展に資する事業に要する資金を充てるため、「東京都おもてなし・観光基金」を創設

東京都における観光産業振興費と宿泊税の推移(単位:百万円)

74出典:平成29年度東京都税制調査会 第3回小委員会「宿泊税に関する資料」

東京都おもてなし・観光基金

観光産業振興費

宿泊税

7,584

9,691 9,903

20,000

5,600 6,500

1,933 1,912 1,583 1,498 1,543 1,700 1,905 1,904 1,538 2,501 2,016 2,055

2,897

27,584

15,291 16,403

496 1,154 1,163 1,193 1,291 1,410 1,316 1,010 1,037 820 1,070 1,315 1,624 2,076 2,292 2,412

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29

東京都おもてなし・観光基金観光産業振興費

宿泊税

(百万円)

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大阪府は急増する観光客への受入環境の整備に関する行政需要増大に対する財源として宿泊税を導入。

変動の大きい宿泊単価の把握・予測の困難さ等の要因から初年度の税収は当初想の7割にとどまった。

今後、宿泊税対象者を5000円以上に拡大することを検討。

宿泊税・大阪府

75出典:平成29年度東京都税制調査会 第3回小委員会「宿泊税に関する資料」

導入経緯

• 観光客受入環境整備の推進に関する調査検討会議の設置に伴う附属機関条例の一部改正及び予算を提案、可決

• 観光客受入環境整備の推進に関する調査検討会議の開催(全7回)

• 「観光客受入環境整備の推進に関する調査検討中間とりまとめ」についてパブリックコメントの実施

• 大阪府戦略本部会議にて「宿泊税」の創設を決定

• 大阪府宿泊税条例が可決

• 総務大臣の同意

• 条例施行

(H27)2015年

(H28)2016年

(H29)2017年

2月̃3月

1月

9月̃10月

1月

5月̃12月

12月

3月

6月

7月

• 観光客受入環境整備の推進に関する調査検討会議より「大阪府の観光客受入環境整備の推進に関する調査検討最終報告」の提言を受理

• 条例公布

主な論点

• 「担税力(税を負担する経済的能力)」について、宿泊客を課税対象者とすることは、課税対象者が広く、消費能力(担税力)、課税客体の把握が可能であると考えられ、公平・適正な課税処分を確保するという観点からも、宿泊客を課税対象者とする。

• 宿泊客以外に観光客の増加により,大きな利益を得ている百貨店、家電量販店等の事業者に対して税金を課したらどうかという意見については、事業者が大きな利益を得ているということは、当然に相応の法人税や所得税が課されており、同時に住民税も負担していることを鑑みる必要がある。

• 百貨店、家電量販店等事業者を対象にした新たな税制度を創設は、事業者に税負担を求める正当性や、根拠、目的、課税客体の把握、消費能力(担税力)などの観点から、現実的には制度構築はかなり困難。日本人旅行者と外国人旅行者を区別することについては、等しい負担能力のある人には等しい負担を求めるという水平的公平の観点から、区別することは適当ではない。

概要

税率

• 宿泊料金1人1泊• 1万円以上1万5千円未満(100円)• 1万5千円以上2万円未満(200円)• 2万円以上の宿泊(300円)

課税免除 宿泊料金1人1泊 1万円未満の宿泊者

徴収方法ホテル、旅館、簡易宿所及び国家戦略特別区域法に規定する認定事業に係る施設(特区民泊)の経営者による特別徴収

税収使途

「大阪都市魅力創造戦略2020」で策定した重点取組を中心に取り組む。<平成29年度実施予定事業の例>• 観光客と地域住民相互の目線に立った受入環境整備の推進(事業費4.5億円、宿泊

税充当額4.5)• 魅力づくり及び戦略的なプロモーションの推進(事業費7.7億円、宿泊税充当額

5.4億円)• 徴税コスト(宿泊税充当額1億円)

税収 1,000百万円(年間見込額)

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京都市は、東京都よりも多い宿泊税収45.6億円を見込む。

目的を「観光と市民生活との調和を図る」「住む人にも訪れる人にも京都の品格や魅力を実感できる取組の推進」等としており、住んでよし、訪れてよしのまちづくりに資する事業への活用を打ち出している。

宿泊税・京都市

76出典:平成29年度東京都税制調査会 第3回小委員会「宿泊税に関する資料」

• 「はばたけ未来へ!京プラン」実施計画第2ステージにおいて、「入洛客への新たな負担のあり方や超過課税等の課税自主権の活用」についての検討を明記。

• 「京都市住みたい・訪れたいまちづくりに係る財源の在り方に関する検討委員会」設置

• 検討委員会から京都市に答申

• 総務大臣の同意

• 京都市宿泊税条例を公布

• 宿泊税の課税を開始

(H28)2016年

(H29)2017年

(H30)2018年

3月

2月

8月

• 税の公平性、公正性を担保するため、急増する民泊をはじめ違法営業の宿泊施設へ、宿泊税を徴収すること。

• 宿泊税収入については、住んでよし、訪れてよしのまちづくりに資する事業に活用し,市民はもとより、納税者である宿泊者、さらには特別徴収義務者となる宿泊施設の運営事業者に、宿泊税の効果を実感いただけるよう取り組むとともに、決算及び使途が明確になるよう、透明性を確保し、議会及び市民への情報公開を行う。

• 日本国内はもとより、世界に向けて、宿泊税の主旨及び徴収内容について広報し、宿泊事業者へ負担となることのないよう努めること。

• 条例施行後の状況を早急に把握し、必要がある場合は適切に対応するため、条例の施行の1年6箇月後に、条例の施行の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、宿泊税に係る制度について検討を加え、必要があるときは、早急にその結果に基づいて所要の措置を講じること。

8月

9月

3月

10月1日

• 市会において、京都市宿泊税条例案を提案(同年11月2日議決)。

導入経緯 主な論点(京都市宿泊税条例案付帯決議より抜粋)

概要

税率

• 宿泊料金1人1泊• 2万円未満の宿泊( 200円)• 2万円以上5万円未満の宿泊(500円)• 5万円以上の宿泊(1,000円)

課税免除学校が主催する修学旅行その他学校行事の参加者・その引率者

徴収方法 旅館業又は住宅宿泊事業を営む方

税収使途

「市民、観光客、観光関係事業者が30年度に宿泊税の導入効果を実感できる」「現下の観光課題を早急に解消し、市民生活との調和を図る取組」に優先して充当。①混雑対策(充当額5億円)②民泊対策(1.5億円)③宿泊事業者支援(0.5億円)④受入環境整備(4億円)⑤京都ならではの文化振興・美しい景観の保全(6億円)⑥徴税コスト(システム改修等)(2億円)

税収 初年度1,900百万円 平年度4,560百万円(見込額)

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例

• (1)「国際観光旅客税」

• (2)宿泊税(東京都、大阪府、京都市)

• (3)入湯税(釧路市)

• (4)海外の諸制度

• (5)電子渡航認証システム(米国:ESTA等)

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

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釧路市阿寒湖温泉では観光まちづくりにおける財源を平成14年から議論。10年以上を経て実現。

顧客目線で影響の少ない税率を、宿泊者アンケートデータなどを基に、地元行政と連携して客観的に議論・設定。

入湯税の引き上げ分のみを基金化(釧路市観光振興臨時基金)。実際の使途と支出額を明確にしている。

入湯税・釧路市

78出典:平成29年度東京都税制調査会 第3回小委員会「宿泊税に関する資料」

• 新しい地方税のあり方研究会発足(旧阿寒町職員10名と学識者等)

※地元合意が不調

• 新釧路市誕生

• 行政における入湯税の検討(企画、財政、観光等)、制度設計

• 釧路市税条例の改正案を提案

• 入湯税の税率が一部変更

(H14)2002年

(H17)2005年

(H25)2012年

5̃11月

11月

• 税の公平性、公正性を担保するため、急増する民泊をはじめ違法に営業している宿泊施設への宿泊を確実に捕捉し、宿泊税を徴収すること。

• 宿泊税収入については、住んでよし、訪れてよしのまちづくりに資する事業に活用し,市民はもとより、納税者である宿泊者、さらには特別徴収義務者となる宿泊施設の運営事業者に、宿泊税の効果を実感いただけるよう取り組むとともに、決算及び使途が明確になるよう、透明性を確保し、議会及び市民への情報公開を行う。

• 日本国内はもとより、世界に向けて、宿泊税の主旨及び徴収内容について広報し、宿泊事業者へ負担となることのないよう努めること。

• 条例施行後の状況を早急に把握し、必要がある場合は適切に対応するため、条例の施行の1年6箇月後に、条例の施行の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、宿泊税に係る制度について検討を加え、必要があるときは、早急にその結果に基づいて所要の措置を講じること。

12̃9月

12月

4月

• 「独自財源研究会」より市に要望書の提出

(H26)2013年

(H27)2014年

• 入湯税嵩上げ議論の再論• 1月:NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構より市に

要望• 5月 「独自財源研究会の立ち上げ(NPO法人阿寒観光協

会まちづくり推進機構、学識者・有識者、行政はオブザーバー参加)

• 宿泊客アンケート調査、課税案、使途・概算事業費等検討。

導入経緯 主な論点

概要

税率

• 一般の宿泊客 250円• 国際観光ホテル整備法上の登録ホテル・登録旅館以外の一般の宿泊客 150円• 一般の日帰り客 90円• 修学旅行の学生生徒10人以上の団体 70円• 修学旅行の学生生徒10人以上の団体日帰り客 40円

課税免除小中学生及び就学前である者共同浴場、一般公衆浴場、類する浴場に入湯する者

徴収方法鉱泉浴場の経営者などが、前月中の入湯客から徴収した税を翌月15日までに申告し納める。

税収使途

国際観光地環境整備事業・阿寒湖温泉の玄関口エリアの駐車場、園地、観光情報発信施設整備・まちなか活性化事業として、案内板、Wi-Fi整備、散策路、アイヌアート整備、景観整備、空き店舗対策、花いっぱい事業、コミュニティビジネス推進等おもてなし事業• まりも家族手形推進(商店街スタンプ制サービス事業)• 温泉街循環バス事業

税収 1,080百万円(平成25年度実績)

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既に導入されている東京都、大阪府や今後導入される京都市、近年入湯税を導入した釧路市では、納税義務者、税率等に大きな違いはない。

京都市は中長期的な使途を念頭に宿泊税を位置づけている。

宿泊税・入湯税(検討中のものを含む)の概要の比較

79

東京都 大阪府 京都市 釧路市

宿泊税 入湯税

目的等

国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用に充てるため、ホテル又は旅館の宿泊者に一定の負担を求める法定外目的税として創設

大阪が世界有数の国際都市としての発展を目指し、都市の魅力を高める。観光の振興を図る施策に充当

国際文化観光都市としての魅力を高め、及び観光の振興を図る施策に要する費用に充てる

1.住む人、訪れる人に京都の品格や魅力伝える取組の推進• 文化財保護や歴史的景観の保全、快適な歩行空間の創出,観光や文化の担い手の育成

2.入洛客の増加など、観光を取り巻く情勢の変化に対する受入環境の整備• 入洛客の安心安全の確保,観光案内標識の整備,観光地ト

イレの拡充3.京都の魅力の国内外への情報発信の強化

環境衛生施設、鉱泉源の保護管理施設、観光施設及び消防施設などの整備や観光の振興のための費用に充てる入湯税の税率改定による増収分(引上げ後の税率250円のうち100円に相当する分)については、「釧路市観光振興臨時基金」に積み立て、250円の税率が適用される宿泊施設が所在する地域の観光振興事業に役立てる

納税義務者 都内のホテル又は旅館の宿泊者府内のホテル、旅館、簡易宿所及び国家戦略特別区域法に規定する認定事業に係る施設(特区民泊)における宿泊者

ホテル、旅館、簡易宿所等のほか、いわゆる違法民泊等への宿泊者も含めたすべての宿泊者

鉱泉浴場の入湯者

税率• 宿泊料金1人1泊

• 1万円以上1万5千円未満(100円)• 1万5千円以上(200円)

• 宿泊料金1人1泊• 1万円以上1万5千円未満(100円)• 1万5千円以上2万円未満(200円)• 2万円以上の宿泊(300円)

• 宿泊料金1人1泊• 2万円未満の宿泊( 200円)• 2万円以上5万円未満の宿泊(500円)• 5万円以上の宿泊(1,000円)

• 1人1泊• 一般の宿泊客 250円• 国際観光ホテル整備法上の登録ホテル・登録旅館以外の一般の宿泊客 150円

• 一般の日帰り客 90円• 修学旅行の学生生徒10人以上の団体 70円• 修学旅行の学生生徒10人以上の団体日帰り客 40円

課税免除 宿泊料金1人1泊 1万円未満の宿泊者 宿泊料金1人1泊 1万円未満の宿泊者学校が主催する修学旅行その他学校行事の参加者・その引率者

小中学生及び就学前である者共同浴場、一般公衆浴場、類する浴場に入湯する者

徴収方法 ホテル又は旅館による特別徴収ホテル、旅館、簡易宿所及び国家戦略特別区域法に規定する認定事業に係る施設(特区民泊)の経営者による特別徴収

旅館業又は住宅宿泊事業を営む方鉱泉浴場の経営者などが、前月中の入湯客から徴収した税を翌月15日までに申告し納める。

税収使途

国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用<平成29年度実施予定事業の例>• Wi-Fiやデジタルサイネージなどの利用環境の整

備• 観光事業者に対するインバウンド対応力の向上• 新たな観光案内所の整備・機能強化• 富裕な旅行者層に対する観光プロモーション• 宿泊施設のバリアフリー化• MICE誘致活動の展開

「大阪都市魅力創造戦略2020」で策定した重点取組を中心に取り組む。<平成29年度実施予定事業の例>• 観光客と地域住民相互の目線に立った

受入環境整備の推進(事業費4.5億円、宿泊税充当額4.5)

• 魅力づくり及び戦略的なプロモーションの推進(事業費7.7億円、宿泊税充当額5.4億円)

• 徴税コスト(宿泊税充当額1億円)

「市民、観光客、観光関係事業者が30年度に宿泊税の導入効果を実感できる」「現下の観光課題を早急に解消し、市民生活との調和を図る取組」に優先して充当。①混雑対策(充当額5億円)②民泊対策(1.5億円)③宿泊事業者支援(0.5億円)④受入環境整備(4億円)⑤京都ならではの文化振興・美しい景観の保全(6億円)⑥徴税コスト(システム改修等)(2億円)

国際観光地環境整備事業・阿寒湖温泉の玄関口エリアの駐車場、園地、観光情報発信施設整備・まちなか活性化事業として、案内板、Wi-Fi整備、散策路、アイヌアート整備、景観整備、空き店舗対策、花いっぱい事業、コミュニティビジネス推進等おもてなし事業• まりも家族手形推進(商店街スタンプ制サービス事業)

• 温泉街循環バス事業

税収 2,412百万円(平成29年度実績) 1,000百万円(年間見込額) 初年度1,900百万円 平年度4,560百万円(見込額) 1,080百万円(平成25年度実績)

出所:各所HP及び報道資料よりJTB総合研究所作成

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例

• (1)「国際観光旅客税」

• (2)宿泊税(東京都、大阪府、京都市)

• (3)入湯税(釧路市)

• (4)海外の諸制度

• (5)電子渡航認証システム(米国:ESTA等)

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

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ビジットフロリダの州政府からの供出にあたる予算の使途は、Destination Marketing Organizationという組織であることから、マーケティング活動に対する支出が多い。人財育成等については規定はされているが予算としての配分は小さい。

VlSlT FLORlDA州政府拠出分の予算の使途の内訳(単位:百万USD,%)

81

76TTL

lnnovation & Thought Leadership 0

North America 39(51%)

lnternational 11(14%)

VF Equity Program 4(5%)

Fixed Marketing Programs 14(18%)

Veterans for Florida 1(1%)

Core Operational Costs_G&A 7 (10%)

• Visit Floridaの一般管理費1

• 法律で規定されている退役軍人に対する支出2

• 固定的なマーケティング活動に対する支出‒ lndustry Relations, Promotions, Research, Grants, Corporate Meetings & Events, Analytics, Agencies, Websites etc.

3

• 地域分散等のマーケティング活動に対する支出• Rural Areas of Opportunity, Share a Little Sunshine Advocacy & Strategic Partners

4

• 国外市場に対するマーケティング活動に対する支出5

• 北米市場(アメリカ国内及びカナダ)に対するマーケティング活動に対する支出6

• 上記1-6の活動資金の余剰を組織発展のための〝投資〝として活用(人財育成等)‒ このカテゴリーはほとんど活用されていない。

7

出典:Visit FloridaヒアリングよりJTB総合研究所作成

1

2

3

4

5

6

7

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オレンジ郡の観光開発税は27からなる優先順位づけされた使途が設定されている。

オレンジ郡観光税の概要

82

導入までの流れ

• 1971年にウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートがフロリダに開園。フロリダへのレジャー客の観光需要に応えるべく、ホテル等の設備投資が進む。ファミリー層が主な客層であり、夏休みの時期にピークが偏り、季節変動が問題に。

• 閑散期に来訪可能性のある新たなセグメント誘客のために、ビジネスセグメントの旅行者を誘客のためにコンベンションセンターの設立が決まる。

• その開発資金として、オレンジ郡は地方債を発行。開発に係る費用を銀行借り入れでなく、観光開発税での税収を担保にした地方債の発行で開発資金を調達したことが特徴的。

住民理解

• 観光開発税の場合、税金を支払うのは観光客であり、その税金は観光客のため、引いてはホスピタリティ産業のために活用されるものであることから理解が進んでいる。

• フロリダ州は観光客によってもたらされる消費税が多いこともあり、所得税が課税されていないといったことも、住民が観光産業に対して好意的な理由の一つでもある。

使途

• 観光開発税の使途は、27からなる優先順位づけされた使途が設定されており、事業費については、総額からその比率で振り分けられる形式をとっている。

• コンベンションセンターの運営、維持、プロモーション活動、

• オーランドアリーナの建設• 観光関連プロモーション 等

$148

$176 $175 $187

$201

$226 $240

FY2010 FY2011 FY2012 FY2013 FY2014 FY2015 FY2016

フロリダオレンジ郡観光開発税(宿泊税)の概要 フロリダオレンジ郡観光開発税(宿泊税)の推移(単位:百万USD)

出所:Orange County Comptroller、セントラルフロリダ原先生ヒアリング、Orange Countyホームページ等よりJTB総合研究所作成

税率• 観光開発税(宿泊税)は6%

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Visit Floridaの活動資金は、公的資金と民間企業からの拠出からなる。州政府からの拠出分に関しては、使途が明確に規定されている。

Visit Florida

83

州政府やBrand USA、地域のDMOとの関係性

• 地域のDMOとの関係は「We hook them and they cook them(Visit Floridaが観光客を連れてくるので、域内での消費を促すのは地域の仕事)」と言ったスタンス

• 地域については、地域DMOの方がレストランやアトラクションについては詳しく観光客に詳細を説明できるため州レベルのDMOは誘客活動に従事。

サマリー

Visit Floridaの収入源(公的拠出と民間からの拠出)

• Visit Floridaの予算は1.77億アメリカドルであり、そのうち0.77億アメリカドルは州政府からの拠出であり、残りの1億アメリカドルは民間企業からの拠出である。

• 民間企業からの1億アメリカドルの中で1,000万ドルは「現金」で残りは、FAMトリップで海外のエージェント等を招く際の航空券やゲストが宿泊するホテルといった民間企業からの「現物支給」である。

• 州政府からの拠出である0.77億アメリカドルを得るためには、民間企業からの貢献である「マッチングファンド」を示さなくてはならない。民間からの「マッチングファンド」は日々計算し、記録している。なお、政府からの拠出は民間からの「マッチングファンド」が多くても、0.77億ドルを超えることは無い。

予算の使途、計画策定(ステークホルダーとの関係性)、事業に対するKPl

• 公的資金利用分の使途は詳細に規定されている。• マーケティングに対する費用対効果は詳細に調べ公表している。

• 外部機関のOxford Economicsに調査委託をし、観光客のもたらす経済波及効果等を算出している。• 以前はプロモーションと言えば、メディアインプレッションといったように業界用語を用いて、誰にでもわかるような表現はしていなかったが、昨今はステークホルダー側のマーケティング用語に対する理解が進んできており、観光のもたらす効果等の説明は年々高度化している。

出典:Visit FloridaヒアリングよりJTB総合研究所作成

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出国納付金とカジノライセンス税は、韓国の文化体育観光部が管理する6種類の基金の一つ「観光振興基金」の主な財源として設けられた。同基金の運用は、文化体育観光部に設置された専門の管理部署が行い、ハード、ソフトの観光施策に活用される。

出国納付金は、韓国から出国する旅客を対象に、空路の場合は1万ウォンを徴収。カジノライセンス税は、カジノの運営事業者を対象に、年間の総売上高の10%相当額を納付するよう義務付けている。

出国納付金、カジノライセンス税の概要

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出国納付金カジノライセンス税

(正しくは税ではなく、特別会計への納付金)

国・地域 ・韓国

導入目的 ・文化体育観光部が管理する6種類の基金の一つ「観光振興基金」の主な財源

関連法 ・1972年 / 観光振興開発基金法(1996年改正時) ・1972年 / 観光振興開発基金法(2007年改正時)

所管 ・文化体育観光部 (Ministry of Culture, Sports and Tourism:MCST)

導入時期 ・1997年 ・2007年

対象者 ・韓国から出国する個人(座席を使用しない幼児等を除く)

・カジノの運営事業者(なお、カジノには外国人のみ入場可(一部施設を除く))

税額 ・1万ウォン(航空旅客)、1千ウォン(船舶旅客) ・総売上高の10 %相当額

徴収方法 ・韓国から出国する際の航空券などに料金が上乗せされ、航空会社などを経由して徴収

・カジノの運営事業者が観光振興開発基金に納付

収入規模 ・出国納付金とカジノライセンス税の合計額として3,149億ウォン(2016年度)6,183億ウォン(2017年度)

・(備考)カジノ業界の総売上額は1兆2,817 億ウォン(2016年)

使途 ・観光振興開発基金に全額充当し、ハード、ソフトの観光施策に使われる。・観光振興開発基金の運用は、文化体育観光部に設置された専門の管理部署が担当。民間出身の基金運営の専門家10名により組織され、融資申請の受領、融資先の選定、融資許可を行う。

(文化体育観光部資料、Korea legislation research institute,“Tourism Promotion and Development Fund Act“”Tourism Promotion Act“よりJTB総合研究所作成)

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)報告書」

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例• (1)「国際観光旅客税」

• (2)宿泊税(東京都、大阪府、京都市)

• (3)入湯税(釧路市)

• (4)海外の諸制度

• (5)電子渡航認証システム(米国:ESTA等)

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

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ESTA(Electronic System for Travel Authorization)は、米国に渡航しようとするVWP*1対象国の国籍保有者を対象とする事前審 査システム。2009年に義務化、2010年から有料化された。

手数料14ドルのうち10ドルは Travel Promotion Fundに入り、 Brand USAの通称で外客誘致事業を推進する官民連携の非営利団体 Corporation for Travel Promotion(以下、Brand USAと記載)の財源となる。2016年の収入規模は2億640万ドル。

ESTAの概要

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国・地域 ・米国

導入目的 ・VWPで渡米する適格性の確認・安全保障の強化・インバウンド振興財源の確保

関連法 ・導入:2008年/lmplementing Recommendations of the 9/11 Commission Act of 2007(9.11法)

・有料化:2010年/Travel Promotion Act of 2009(2009年旅行促進法)

所管 ・Department of Homeland Security(国土安全保障省) ・U.S. Customs and Border Protection (税関・国境警備局)

導入時期 ・2008年8月

義務化 ・2009年1月

有料化 ・2010年9月(8日申請分より)

対象国対象者

・VWP対象国(日本を含む38か国)・短期滞在の観光や商用、トランジット

有効期間 ・2年間

申請方法 ・公式ホームページから申請・代行業者からの申請可

申請期限 ・搭乗前まで可能(渡航72時間前を推奨)

収集するデータ

・約40項目申請者情報、パスポート情報、勤務先、渡航情報(トランジット、米国での連絡先)、緊急時連絡先、支払口座、クレジット番号 等

申請料金 ・14ドル

徴収方法 ・クレジットカード、(ペイパル)

申請料金の使途、内訳

・申請・登録処理:4ドル・観光振興:10ドルをTravel Promotion Fundに充当し、年間1億ドルを上限に、Corporation for Travel Promotion(Brand USA)の財源として活用

対象国における情報提供

・公式ホームページ(23言語)で記入方法の案内有り

収入規模 ・2億640万ドル(2016年)

初期コスト ・3600万ドル(2008-2010年の開発及び運営)

特記事項 ・政権により、使途変更の可能性有り

*1 Visa Waver Program (ビザ免除プログラム)

(税関・国境警備局 ESTA公式ホームページ、国土安全保障省資料、Brand USA資料よりJTB総合研究所作成)

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)報告書」

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eTA (Electronic Travel Authorization) は、カナダに空路で入国または乗り継ぎするビザ免除国の国籍所有者を対象に事前審査を行うシステム。車、バス、鉄道、船(クルーズを含む)でカナダに渡航する場合は対象外。2016年から義務化された。

手数料は7カナダドル。一般財源に充当され、全額が審査システムの管理に使われており、観光振興財源としての活用は無い。

eTA (Electronic Travel Authorization)

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国・地域 ・カナダ

導入目的 ・安全保障の強化・空路入国者の事前審査に関する米国との共通の方法構築

関連法 ・カナダ・米国国境管理行動計画

所管 ・lmmigration, Refugees and Citizenship Canada(lRCC) (カナダ移民・難民・市民権省)

導入時期 ・2016年3月

義務化 ・2016年11月10日

有料化 ・2016年11月10日

対象国対象者

・ビザ免除国(米国籍、カナダ永住権を持つ者除く)・空路で渡航する場合のみ対象・短期滞在の観光や商用、トランジット

有効期間 ・5年間

申請方法 ・公式ホームページから申請・代行業者からの申請可

(eTA公式lホームページ、lmmigration and Refugee Protection Act / Regulations Amending the lmmigration and Refugee Protection Regulations, 2015よりJTB総合研究所作成)

申請期限 ・渡航72時間前を推奨

収集するデータ

・約40項目申請者情報、パスポート情報、勤務先、渡航情報(トランジット、カナダでの連絡先)、緊急時連絡先、感染関連 等

申請料金 ・7カナダドル

徴収方法 ・クレジットカード、デビットカード

申請料金の使途、内訳

・システム利用料(System Processing Fee)・一般財源(Consolidated Revenue Fund)に充当

対象国における情報提供

・公式ホームページ(18言語)で記入方法の案内有り

収入規模 ※導入前の推計では、2015年9300万ドル、2019年1億7700万ドル、2024年1億4500万ドルが見込まれている(カナダドル)

初期コスト ・3280万カナダドル(2015年計画)

特記事項 ・陸路、海路は申請不要

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)報告書」

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ETlAS (European Travel lnformation and Authorization System)は、シェンゲンビザ地域に渡航しようとする第三国のビザ免除渡航者を対象に、事前審査を行うシステム。導入は2020年初頭の予定。

手数料は5ユーロで、システム維持管理等に使われる予定であり、観光振興財源としての活用は計画書等に見られない。

ETlAS (European Travel lnformation and Authorization System)

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国・地域 ・EU

導入目的 ・安全保障の強化・入出国の簡易化や空港セキュリティの強化・移民・難民流入リスク対策

関連法 ・Schengen Borders Code(シェンゲン協定加盟国出入国規定)

所管 ・EU Migration and Home Affairs(欧州委員会 移民・内務総局)

導入時期 ・決定:2016年11月・開始:2020年(予定)

義務化 ・実施日から

有料化 ・実施日から

対象国対象者

・シェンゲン協定参加国(26か国)の第三国(59か国)・短期滞在の観光や商用、トランジット・18歳未満は免除の予定

有効期間 ・5年間

申請方法 ・公式ホームページ、専用モバイルアプリから申請

申請期限 ・渡航72時間前を推奨

収集するデータ

・約22項目申請者情報、パスポート情報、連絡先、入国予定の加盟国、職業など経歴に関する質問 等

申請料金 ・5ユーロ

徴収方法 ・クレジットカード

申請料金の使途

・システム維持費、EU予算、EU加盟国負担金の削減

対象国における情報提供

・導入決定後、対象国の言語で情報提供を行う公式ホームページを運営中

初期コスト ・開発:2億2470.5万ユーロ(計画)・システム運営:7932.2万ユーロ/年(計画)

特記事項 ・各種データベース*1とクロスチェックが行われ、情報が一致した場合はマニュアル審査を受ける

*1 シェンゲン情報システム(SlS)、ビザ情報システム(VlS)、ユーロポール(欧州刑事警察機構)データ、パスポート盗難及び紛失管理データベース(SLTD)、欧州指紋照合データベース(EURODAC)、欧州犯罪記録情報システム(ECRlS)など

出典:経済産業省「平成28年度 観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(計画策定地域等におけるサービス産業生産性向上に係るサプライサイド調査事業)報告書」

(ETlAS公式ホームページ、European Commission “Feasibility Study for a European Travel lnformation and Authorisation System (ETlAS) Final Report“2016よりJTB総合研究所作成)

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これまでの調査まとめると、観光に関わる財源確保手段としては、出国税、宿泊税や観光商品・サービス税、カジノ税等の税に加えて、観光資源となる自然や文化遺産を保全するためのコストを賄うことを目的に徴収する入場料、民間が主導となって、特定のエリアでの特定の目的のために課税をする観光改善地区、入国時の審査手数料等がある。

海外における観光に関わる財源確保手段例

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徴税主体 概要 導入例

出国税(Departure tax)

国• 国から出国する際に課される税• 一律の税額を課税するケースもあれば、航空座席のクラスによって税額を変更するケースもある

イギリス、オーストラリア,アイルランド

宿泊税(Bed Taxes)

地方行政(州、都道府県、都市等)(マレーシアでは国)

• 主に、住民の税から拠出されて作られたり、維持・管理されているインフラ等を利用することで得られる観光客の便益と同等の額を課税することが目的とする税。

イタリア、フランス、ドイツ、アメリカ、カナダ等

観光商品・サービス税(Tourism Goods and Services Tax)

国(ただしモルディブのみ)• リゾート、ホテル、ダイビング、旅行会社の観光客向け施設で販売される商品やサービスに課される税。

モルディブ

入場料(Admission fees and permits)

都市、特定のエリア

• 国立公園等の観光客の集中するエリアにおいて強制的に徴収する入場料。‒ 観光客が環境保護のコストや関連する施設の維持・運営コストを入場料から賄うことが目的

クイーンズランドウェスタンオーストラリア

観光改善地区(Tourism lmprovement Districts)

都市、街区単位

• 特定のエリアを設定し、そのエリア内に立地するホテルの宿泊売上額等に課税。徴収された財源はそのエリアのプロモーション活動等の共通の目的のための資金として活用される。‒ エリア内の事業者のTlDへの参画は強制なものから、強制でないもの等様々。

サンフランシスコ、バンクーバー、南アフリカ等

カジノ税 国• カジノの運営事業者を対象に、年間の総売上高の10%相当額を納付するよう義務付けている。

韓国

入国審査手数料 国

• 渡航しようとするビザ免除国籍保有者を対象とする事前審査手数料として徴収。

• 観光財源に充当される場合(アメリカ)、審査システムの維持管理等にのみ充当(カナダ、EU)がある。

アメリカ、カナダ、EU

出典:「Sustainable funding models for Queensland tourism, Revie of alternative funding models」よりJTB総合研究所作成

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源

目次

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財源創出の議論フレームは大きく「観光政策と財源の議論」と「新しい財源の仕組みづくりの議論」に大別できる。

論点となるのは「観光振興の目的と財源の使途が国・当該地域の将来像や課題解決に資するものとなっているか」、「納税者、徴税義務者、住民の理解を得られるものになっているか」が主となっている。

財源創出議論のフレームの全体像

91

財源創出議論のフレームの全体像

観光振興の目的

新たな財源の必要性

財源の使途

新たな財源制度の

具体的な検討

新たな財源制度の

組み立て

ステークホルダーの

理解促進

効果測定評価

観光振興の背景 • 観光振興に関する社会情勢等の地域等を取り巻く環境

• 観光振興する意義。‒ 国や当該地域の将来像、観光振興における短期的、中長期的な課題等

観光政策と財源の議論新しい財源の仕組みづくりの議論

1

2

3

45

6

7

8

• 財源が必要となった背景やその必要性(国や当該地域の財政状況、既存税制との状況

• 誘客プロモーション、受け入れ態勢強化、住んで良し・訪れて良しの観光地づくり、観光産業の活性化、人材育成等

• 歳入状況、使途への充当状況、効果・評価等

• 納税者、徴収義務者、住民、等の理解促進

• 課税対象範囲、納税義務者、徴収義務者、課税額等

• 出国税(国)、宿泊税(地方自治体)、入湯税(温泉地等)、その他法定外目的税、分担金等

論点となるのは「観光振興の目的と財源の使途が国・当該地域の将来像や課題解決に資するものとなっているか」「納税者、徴税義務者、住民の理解を得られるものになっているか」

本調査で明らかになった論点

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国際観光旅客税、ESTA,オーランドの観光開発税を比べてみると、日本では一般的に受益者負担の考えを重視する一方で、海外では受益者と負担者が一致しないケースも存在。

導入の目的では、国際観光旅客税とESTAが「観光振興が主目的」である一方、オーランドは「観光産業振興が主目的」となっており、産業の競争力強化に力点が置かれている。

国際観光旅客税、ESTA、観光開発税における導入の背景・目的・必要性の比較

92

国際観光旅客税(日本)

ESTA(米国)

観光開発税(オーランド)

導入の背景

• 観光を我が国の基幹産業へと成長させ、「観光先進国」の実現を図る• 訪日外国人旅行者 2020 年 4,000 万人等の目標達成

• 安全な国境を確保するためのより正確で効率的な審査• テロによる観光業への損害• 安全保障と観光振興の並行推進の必要性

• オイルショックによる既存観光形態の衰退• シーズナリティの少ない安定的な観光需要創出の必要性

目的

• 観光資源の魅力を極め、地方創生の柱にする• 観光産業を革新し、国際競争力を高める• すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境を構築する‒ ※上記を指して「高次元での観光施策」としている

• もてなしと安全の均衡を保ち、外国人旅行者の訪米を容易に(入国審査の迅速さ・親切さ・効率化)• 国を挙げたマーケティングプログラムと、外国人旅行者誘致活動の実施• 旅行・観光の価値を実証(世界市場における競争力向上と旅行・観光促進への投資効果の評価)

• シーズナリティ解消のために「MlCE」を対象とした施設等の建設と運営(新たな観光産業の創出)。• 施設開発に係る費用を銀行借り入れでなく、観光開発税での税収を担保にした地方債の発行で開発資金を調達。

新しい財源の必要性

• 経済再生と財政健全化を両立させる観点から、国の追加的な財源の確保策を検討• 観光立国の受益者の負担による方法による追加的財源確保

• 電子渡航認証システム導入による原因者負担• ESTA申請・登録の有料化と外客誘致事業の財源としての位置づけ(2009年旅行促進法)

• 産業界からの観光開発税創設の要請(行政が要する大規模投資予算等に対する産業界からの財源創出の要請)

観光振興が主目的

観光産業振興が主目的

• 我が国では一般的に受

益者負担の考えを重視。

• 一方、海外では受益者と

負担者が必ずしも一致し

ない場合がある。

• これは「公平性」「中立

性」「簡素さ」等の税の原

則がトレードオフの関係に

あること*、自治と税に対

する考え方の相違に起

因するものと考えられる。

*税の3原則「公平」の原則とは、様々な状況にある人々が、それぞれの負担能力(担税力)に応じて分かち合うこと、「中立」の原則とは、税制ができるだけ個人や企業の経済活動における選択を歪めることがないようにすること、「簡素」の原則とは税制の仕組みをできるだけ簡素なものとし、納税者が理解しやすい、徴税コストのかからないものとするということ。この3者は常にすべてが同時に満たされるものではなく、一つの原則を重視すれば他の原則をある程度損なうことにならざるを得ない(トレードオフの関係) 出典: 「わが国税制の現状と課題-21世紀に向けた国民の参加と選択-」(平成12年7月税制調査会)、有識者ヒアリング、JTB総合研究所作成

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導入時の論点を比べると、国際観光旅客税は「受益者と負担者の関係性・納得性」を重視したことが特徴的である。一方、ESTAは「資金調達方法を創出のほか、使途(事業)と推進組織を創設し、受益者たる観光産業の資金負担をフレームに組み込むことで、使途に対する責任を持たせている」。オーランドでは、「負担者である観光客に対する直接的なベネフィットでなく、観光産業が競争力を持つことで、より良い商品・サービスを提供できる」枠組みを提供。いわば、「攻め」の姿勢の論理展開。

国際観光旅客税、ESTA、観光開発税における導入時の論点

93

財源制度における論点

• 出国税における受益者と負担者の関係性・納得性を重視‒ ①訪日外国人旅行者• 様々な観光施策により直接的な受益を実感しやすい。

‒ ②日本人• 新たな財源を活用した「持続可能な質の高い観光立国の実現」とは、国民一人一人がその受益を実感できる。最終的な受益者である国民への負担を一部求める。

• 訪日外国人旅行者の増加は日本人に対しても外国旅行時の観光やビジネスをはじめ様々な局面で恩恵をもたらす。

• 出入国環境の円滑化・利便性向上、国際航空・海運ネットワークの維持・拡大にも資することから、「出入国」という行為に着目し、広く薄く負担を求める。(受益との関連でも一定の合理性がある)。

国際観光旅客税(日本)

• 継続的な資金調達方法の創出を目的に、使途(事業)とその推進組織を創設。受益者たる観光関連産業による資金負担をフレームに組み込む。‒ 使途を絞り、負担と受益の論理が構築された• (負担者(一部を負う):観光関連産業、受益者:観光関連産業)

ESTA(米国)

• 負担者である観光客に対する直接的なベネフィットでなく、「観光客にベネフィットをもたらすこと」を前提に、観光客による負担が地域の観光産業振興するような支援であれば良いとの考え方。‒ ホスピタリティ産業のために活用されるものであるが、税金を支払うのは観光客(宿泊客)であり、その税金は観光客のために使用される。• 観光客によってもたらされる消費税等も多く、住民には所得税が課税されていない(観光客の増加は住民の利益にもつながる)。

観光開発税(オーランド)

• 日本は受益者と負担者の関係性だけでなく、「納得性」を重視している。

• 一方で、アメリカのESTAやオーランドの事例では、「観光産業」を巻き込むことで、引いては負担者の観光客にとってもメリットが波及するといったロジック。

• 産業を巻き込むことで使途に対する責任を持たせる。そして観光地としての「競争力」を向上させ、負担者である観光客により良い商品・サービスを提供できるといった「攻め」の姿勢の論理展開であると考えられる。

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大阪府や京都市のように近年宿泊税の導入を検討した地域が議論に至った背景は、近年の外国人観光客を中心とする観光客増加による行政コストの増加が主な理由。京都ではまちづくりと連動した中長期的な使途が含まれるが、東京や大阪は短期的な使途となっている。

日本国内の宿泊税導入(議論)の背景と使途

94

導入の背景 使途

東京都

• 旅行者等に行政サービスに対する応分の負担を求め、それを施策に振り向けるという好循環を形成する必要性

• 受け入れ体制整備(インバウンド、MlCEなど)• 観光プロモーション等• MlCE誘致活動の展開(MlCE受入施設の環境整備等)

大阪府

• 大阪府への国内外からの旅行者が増加したことにより、受入環境整備に係る行政需要が増大。‒ 観光客の受入環境の推進に年間16億円程度の事業費を要する。

‒ 府の政状況は非常に厳しい状況が続く財政収支見通し。

• 「大阪都市魅力創造戦略2020」で策定した重点取組(観光客受け入れ体制整備)、プロモーション、および徴税に係るコスト

京都市

• 入洛客の増加による受け入れ環境体制や交通渋滞対策などが問題に。‒ 市民生活にまで悪影響が及ぶ• 京都市の財政は極めて厳しい状況。‒ 入洛客も行政サービスの受益者である一方、入洛客は負担していない。

• 「受益と負担」の関係が直接的に対応していない。

• 住む人にも訪れる人にも京都の品格や魅力を実感できる取組の推進‒ 例:文化財保護や歴史的景観の保全,快適な歩行空間の創出,観光や文化の担い手の育成

• 入洛客の増加など,観光を取り巻く情勢の変化に対する受入環境の整備‒ 例:入洛客の安心安全の確保,観光案内標識の整備,観光地トイレの拡充

• 京都の魅力の国内外への情報発信の強化

近年の観光関連財源導入の背景には、外国人観光客等の増加による行政コスト増が主。

東京、大阪は使途について(明確ではないが)概念は同様。一方で、京都はまちづくり的な要素を加味し、中長期的な使途(取組)もカバー。

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我が国における観光に関わる財源確保は、国税としては国際観光旅客税、地方税としては宿泊税、入湯税がある。今後、いっそうの観光振興を図る上では、使途の議論をもとに一般財源からの充当も含めた観光振興予算の効果的な運用をはかることが重要。

一方で、海外には付加価値の高い観光コンテンツからの徴収(入場料等)、観光施策の受益者が明確な場合の徴収(TlD等)等の例もあり、我が国での導入について、検討の余地がある。

主な観光に関わる財源確保手段と我が国での導入例①

95出典:有識者ヒアリングよりJTB総合研究所作成

徴収主体 (概要

我が国での導入例

出国税 国

• 国から出国する際に課される税

• 一律の税額を課税するケースもあれば、航空座席のクラスによっ

て税額を変更するケースもある

■国際観光旅客税

(日本でも電子渡航認証システムが導入された場合、ClQ等の充当部分

が他の使途に充当できる。また観光産業振興等への積極的な活用等その

使途について検討の余地がある)

宿泊税地方自治体

• 主に、住民の税から拠出されて作られたり、維持・管理されている

インフラ等を利用することで得られる観光客の便益と同等の額を課

税することが目的とする税。

■東京都、大阪府

(プロモーションや基盤整備を中心に充当)

■京都市

(住んで良し、訪れて良しの観点からプロモーションや基盤整備ととも

に、市民、観光客、徴税義務者である観光関係事業者のための施策に充

当)

法定外普通税地方自治体

• 課税自主権のもと、地方公共団体が自主的に設ける税。

• 使途の制限は設けていないが観光に関連する税の場合、観光財源に

も充当されている。

■別荘等所有税(静岡県熱海市)

■歴史と文化の環境税(福岡県太宰府市)

宿泊税以外の法定外目的税

地方自治体

• 課税自主権のもと、地方公共団体が自主的に設ける税。

• 法定外目的税は特定目的の財源となる。

■環境協力税

(岐阜県、沖縄県伊是名村、伊平屋村、渡嘉敷村、座間味村)

入湯税地方自治体

• 日本独自の税。法的目的税として環境衛生施設、鉱泉源の保護管理

施設、消防施設その他消防活動に必要な施設の整備、観光の振興

(観光施設の整備を含む)に充当される。

■鉱泉浴場所在の市町村 (976 団体)

■釧路市

(入湯税の増税を国際観光地環境整備事業、おもてなし事業に充当)

観光商品・サービス税

国内事例なし(海外事例では国)

• リゾート、ホテル、ダイビング、旅行会社の観光客向け施設で販売

される商品やサービスに課される税。

※大阪府宿泊税議論内で検討

(百貨店、家電量販店等事業者を対象の新たな税制度創設は、既に法人

税や所得税が課されており、さらなる税負担を求める正当性や、根拠、

目的などの観点から、制度構築はかなり困難とされる。)

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海外には付加価値の高い観光コンテンツからの徴収(入場料等)、観光施策の受益者が明確な場合の徴収(TlD等)等の例もあり、我が国での導入について、検討の余地がある。

主な観光に関わる財源確保手段と我が国での導入例②

96出典:有識者ヒアリングよりJTB総合研究所作成

徴収主体

概要 我が国での導入例

入場料国内事例なし(海外事例では地方自治体)

• 国立公園等の観光客の集中するエリアにおいて強制的に徴収

する入場料。

‒ 観光客が環境保護のコストや関連する施設の維持・運営コ

ストを入場料から賄うことが目的

□検討の余地あり

(今後、スーパーメガリージョン化等を含め大きく変化する我が国の観

光開発において、lRや付加価値の高いエンターティンメント産業等を含

め、海外事例を参考に検討の余地がある)

観光改善地区国内事例なし(海外事例では地方自治体)

• 特定のエリアを設定し、そのエリア内に立地するホテルの宿

泊売上額等に課税。徴収された財源はそのエリアのプロモー

ション活動等の共通の目的のための資金として活用される。

‒ エリア内の事業者のTlDへの参画は強制なものから、強制

でないもの等様々。

□検討の余地あり

(今後、BlD制度の広域版として検討の余地がある。)

カジノ税国内事例なし

(海外事例では国)• カジノの運営事業者を対象に、年間の総売上高の10%相当額

を納付するよう義務付けている。

□検討の余地あり

(今後、スーパーメガリージョン化等を含め大きく変化する我が国の観

光開発において、lRや付加価値の高いエンターティンメント産業等を含

め、海外事例を参考に検討の余地がある)

入国審査手数料国内事例なし

(海外事例では国)

• 渡航しようとするビザ免除国籍保有者を対象とする事前審査

手数料として徴収。

• 観光財源に充当される場合(アメリカ)、審査システムの維

持管理等にのみ充当(カナダ、EU)がある。

□検討の余地あり

(ただし、入国審査システム等への充当が一般的な手数料の考え方。受

益者と負担者の関係性を含め、観光財源への充当には慎重な議論が必

要)

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現在日本で議論されている国際観光旅客税や京都市、大阪府、東京都の宿泊税の使途を、①産業の競争力への貢献、②使途のもたらす効果の時間軸の2つの視点で整理。

オーランドのように「産業」や「エリア」の競争力そのものを高めるような「発展」の領域の使途が弱いこと、および自然災害の際の産業活動を支える「不足の事態への対応」の用途が弱いことから、こうした施策・制度の創出について、重点的に検討すべきである。

使途から見た財源議論の課題の整理

97

産業の競争力への貢献

時間軸

ハードや新たなソフトサービス等の開発等

• オーランドの観光開発税のように新たな産業創出、付加価値創出を行うような使途も検討すべき。

文化資源、自然環境の保全受入体制環境整備

• 国際観光旅客税• 東京都、大阪府、京都市

プロモーション• 国際観光旅客税

• 東京都、大阪府、京都市• ESTA、観光開発税

日本の財源議論の使途においては、観光産業の競争力、エリアの競争力を高めるような「発展」の領域の

使途が弱い。

観光産業に対して、自然災害が生じた際等の「保険」となるような施策・制度が弱い。

不測の事態への対応 持続性・継続性 発展

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本調査の目的である、観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度・財源の議論、高次元で持続的な観光振興施策の方向性について、前項までの調査結果と有識者及び観光財源の導入を検討している方自治体等へのヒアリング結果を含めた考察として、以下の3点に整理する。

98

観光政策と財源の議論を重視すべき

• 観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度・財源についての議論では、新しい財源の仕組みづくりの議論が先行しがちである。

• しかし、高次元で持続的な観光振興施策議論無くして、財源の確保に向けた諸制度・財源の設計は不可能である。

財源の使途としての「産業振興政策」を重視すべき

• 現在の観光施策と財源の議論においては、国・行政としての使途、あるいは税等の負担者に対する受益の観点から、観光インフラ整備や情報発信等の使途が重視される傾向が見られる。京都市や海外事例にみられるように、最終的に観光客の受益につなげる観光政策として、観光産業、観光に関連する産業・事業の安定化、高度化等についても、早急に財源を充当すべきである。

地方における「新規事業創出と持続的な事業運営の基盤創出(人材)」を重視すべき

• 地域の観光産業を支える中小企業は経営基盤が脆弱な場合が多く、新規事業への初期投資の段階で断念せざるを得ないような例も少なくない。資金調達に関係するノウハウを有する人材も限られる。地方における新規事業創出策や事業運営の基盤創出(人材)を重視すべき。- 観光分野が地方創生の柱として着目され、今やあらゆる産業分野が観光客に対するサービスや商品提供に挑戦して

いる。特に地方においては観光事業に意欲的に取り組む事業者には、DMOをはじめとする観光推進機関や中小・零細企業といった経営基盤が脆弱な場合が多く、新規事業への初期投資の段階で断念せざる得ない例も少なくない。また、投資・融資を得るための事業計画を構築するノウハウを有する人材も限られている。

- 税等によって財源を創出するためには一定の観光客数が見込めることが前提であり、多くの地方では実現は難しい。国等の観光財源の使途として、地方における「新規事業創出と持続的な事業運営の基盤創出(人材)」に取り組むことは、持続的な観光振興施策、それによる地方創生の実現に大きく貢献する施策であると考えられる。

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参考:有識者ヒアリングにおける、今後求められる観光振興施策

99出典:自治体・DMOヒアリングよりJTB総合研究所作成

有識者コメント 施策イメージ

観光産業支援・安定化

• 観光産業は魅力の強化とともに、民間業者の力の安定化が必要。観光産業は金融支援があれば強くなる。中小企業政策として持ち味のある支援政策を確立すべき。

• 幅広い産業を観光産業として捉え、地域・エリアとして観光経済圏として面的に捉えることが必要。

• 産業支援としては、融資よりも出資、事業支援、経営をサポートする政策が必要。• 旅館・ホテル業は中小企業が大半を占めるにも関わらず、財政的な支援措置のス

キームが無い。災害などで困難な時期に支えてくるスキームが必要。

観光振興金融公庫のような産業政策・制度 中小企業政策の支援政策 リターンを求める投資政策 地域の中小企業の後継者問題、経営問題に対して、財源を充当できるような仕組み。

事業創出支援

• 実験(ファムトリップ)から事業創出に使える事業が必要。• 現状では県や市が予算や施策の決定権を持っており、DMOは実施レベルの判断し

かできない。攻めのプロモーションを行うにはDMOの直接財源を生み出す制度が必要。

• スーパー・メガリージョン構想等日本の変化、アジアの急速な個人化等の変化を的確にとらえた産業創出の議論が必要。

実験(ファムトリップ)→事業創出- (事業創出スタート資金提供)

DMOの独自財源(権限のある予算)

プロフェショナル人材の雇用

• 特に経営面でリーダーシップが取れる人材の問題が大きい。しかし、地方でそうした人材育成をしていくことは難しい。

• 資格制度等によってある程度の賃金水準を設ける。• 地方創生交付金等の保持事業が一定水準の人材の雇用資金に使えれば良い。

財源と人材をセットで改善する必要がある。特に人材についてはプロフェッショナルとしての給与体系を整える必要がある。

DMOのプロフェッショナル人材の雇用に充当できる制度

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参考:観光財源の導入を検討している方自治体の抱える課題

100

ニセコ町 倶知安町 下呂市 広島県

検討している財源確保手段

宿泊税 入湯税 Tourism lmprovement District

現状の観光関連予算の使途

• 町の観光振興に係る予算は、パンフレット等の作成・配布、施設管理(綺羅乃湯、道の駅、観光インフォメーションセンター)、協会への支援程度‒ プロモーション等はニセコリゾート観光協会が株式会社化しており、観光案内や施設管理、マーケティング活動等を実施している。

• 大きな事業は無く、インバウンドプロモーション等は参入している外資系企業が独自に実施している。

• 月1回の誘客宣伝会議での入込客数状況に応じたプロモーション等

• •県の観光課予算としては、プロモーションと観光資源(コンテンツ)に対する支援がほとんど

財源確保手段を検討した背景

• インバウンド客増加により、町の財源だけでは住民サービスや社会インフラの維持が困難になってきていること

• 国際的な競争力を維持し、年間200万人泊の観光客の満足度を上げるには財源が持続的な財源が必要と考えたこと

• インバウンド観光客の増加による外資系企業の参入によって、固定資産税や法人税等、町への税もここ10年で2-3億円増加。しかし、町の予算全体を考えると、増加した2-3億円分の地方交付税が減額されていることから以前と総額が変わらない。

• インバウンド観光客増加による費用負の増加をどう補っていくか?という問題意識から

• 東日本大震災時において、それまで行政、観光協会、商工会等が個別に持っていた観光予算、観光施策を一つにまとめ、下呂市の人材、費用を一本化し、危機を乗り越えようとしたことがきっかけ。

• せとうちDMOは7県からなる広域エリアの観光地経営をするDMOでありそれぞれの県が一般財源から拠出しているのが現状。安定的に活動ができるように持続的な財源の確保が必要と考えた。‒ 現在のDMOの議論の中では、DMOの資金調達の手法が論じられておらず、海外のDMOを参考に財源確保策としてTourism lmprovement Districtを導入しようと考えた。

財源を確保した場合の使途(現状の検討)

• ホテルが集中しているスキー場がある山の道路の維持・メンテナンス、ごみの処理、安全対策等。

• 駐車場の整備等をすることによる観光客の利便性と渋滞の緩和‒宿泊税を徴収するからには、税の負担者がベネフィットを享受できることが必要。一方、町民も納得する形でなくてはならないため行政でないとできない対応(使途)が必要であると考える。

• 新たな財源については検討していない。

• せとうちDMOの安定財源

出典:自治体・DMOヒアリングよりJTB総合研究所作成

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源• (1)「産業振興政策」について

• (2)「新規事業創出」に向けた施策の方向性

• (3)「持続的な事業運営の基盤創出(人材)」に向けた施策の方向性

目次

101

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本項では、特に「産業振興政策」「新規事業創出」「持続的な事業運営の基盤創出(人材)」の3点に着目し、今後の施策の方向性について事例を含めて提示する。

提示する今後の施策の方向性

102

「産業振興政策」の強化・拡充• 株式会社日本政策金融公庫

「新規事業創出」• オーストラリア 「Tourism lndustry Regional Development Fund(TlRDF)」

「持続的な事業運営の基盤創出(人材)」• 産業競争力強化に向けた高度専門人材獲得促進事業(厚生労働省・石川県)• 滋賀県発の産業・雇用創造推進プロジェクト「高度専門人材確保支援事業」• (企業提案型人材力育成確保事業)

今後の施策の方向性

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源• (1)「産業振興政策」について

• (2)「新規事業創出」に向けた施策の方向性

• (3)「持続的な事業運営の基盤創出(人材)」に向けた施策の方向性

目次

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日本政策金融公庫の事例

104

株式会社日本政策金融公庫は財務省所管の特殊法人

であり、中小企業者及び農林水産業者の資金調達を支

援するための金融の機能を担うとともに、大規模な災

害、テロリズム若しくは感染症等による被害に対処するた

めに必要な金融を行っている。さらに、銀行その他の金

融機関により迅速かつ円滑に融資や経営支援を提供し

ている。

農林漁業分野や食品産業については「天候などの影響

を受けやすく収益が不安定」「投資回収に長期間を要す

る」等の特性を踏まえ、長期の資金を供給等の支援を

制度化している。

中小企業事業として、多様な支援や融資メニューも用

意されているが、サービス産業への支援割合は10%程

度にすぎない。

9.7%

10.5%

12.0%

12.1%

12.1%

10.6%

10.6%

10.5%

10.5%

10.6%

9.2%

9.1%

9.1%

9.2%

9.5%

17.0%

17.1%

16.6%

16.7%

16.2%

5.0%

4.8%

4.8%

4.6%

4.6%

48.5%

47.9%

47.0%

46.9%

47.1%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成

24年

平成

25年

平成

26年

平成

27年

平成

28年

その他 サービス業 運輸・情報通信業

物品販売業 建設業 製造業

出典:株式会社日本金融公庫資料より

業種別の融資残高(平成28年度末)

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日本政策金融公庫においては、農業及び中小企業支援の融資制度として、以下の制度を設けている。

105

•農業経営基盤強化資金

•農業改良資金(エコファーマー、6次産業化・地産地消法の認定を受けた方など)

•農林漁業施設資金

•青年等就農資金

•経営体育成強化資金

•農林漁業施設資金等

•農林漁業セーフティネット資金

•農林漁業施設資金(災害復旧)

• (新技術の導入、経営のシステム化、地域ブランドの確立な どのための)

•農産物の生産施設や機械の取得

•農産物の加工販売施設の整備

•試験研究施設の整備 ◦施設の稼働に関連する経費

農業融資

効率的かつ安定的な農業経営を目指す担い手の経営改善

新たな農業経営の開始

事業再生による農業者の再生・整理承継

環境保全への取組み、生産基盤の整備や地域振興

セーフティネット機能

ベンチャーなど新規事業育成

中小企業融資

新企業育成貸付

企業活力強化貸付

環境・エネルギー対策貸付

セーフティネット貸付

企業再生貸付

【参考】 株式会社日本政策金融公庫の主な融資事業

•新事業育成資金

•再チャレンジ支援融資

•新事業活動促進資金

•中小企業経営力強化資金等

•企業活力強化資金

• lT活用促進資金

•海外展開・事業再編資金

•地域活性化・雇用促進資金

•観光産業等生産性向上資金

•事業承継・集約・活性化支援資金

•環境・エネルギー対策資金

•社会環境対応施設整備資金

•経営環境変化対応資金

•金融環境変化対応資金

•取引企業倒産対応資金

•事業再生支援資金

•企業再建資金

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出典:株式会社日本金融公庫資料より

観光産業等生産性向上資金の概要

対象

• 小売業、飲食サービス業またはサービス業の事業で、おもてなし規格認証を取得した事業者(紫、紺または金認証を取得した方に限る)

• 訪日外国人旅行者の消費需要の取り込みを図る事業者

資金の使途

• 合理化、生産および販売能力の拡大のために必要な設備資金及び長期運転資金の融資

• 訪日外国人旅行者対応のために必要な設備資金及び長期運転資金の融資

融資限度額

• 直接貸付 7億2千万円(うち運転資金2億5千万円)

返済期間• 設備資金 20年以内(うち据置期間2年以内)• 運転資金 7年以内(うち据置期間2年以内)

利率(年) • 0.5~1.45%

出典:有識者ヒアリング、観光財源の導入を検討している自治体ヒアリングを基にJTB総合研究所作成

対象

• 小売業、飲食サービス業またはサービス業に加え、農林漁業、製造業、伝統工芸、文化施設、運輸業等を含めた、地域において観光エリア、観光ルートの一部を担う事業者

• 訪日外国人旅行者に限定しない

資金の使途

• 老朽化した施設、設備のリニューアル、改善• 経営計画に基づく投資、新たな事業展開における新規投資

• 地域レベルの災害や環境の変化等における資金繰り支援

• 合理化、生産および販売能力の拡大のために必要な設備資金及び長期運転資金の融資(再掲)

• 訪日外国人旅行者対応のために必要な設備資金及び長期運転資金の融資(再掲)

融資等 • 融資から投資が望ましい

返済期間

(スーパーW資金(農林漁業施設資金)の例)• 設備資金:25年以内(うち据置期間5年以内)• 関連費用:10年以内(うち据置期間3年以内

利率(年)

(スーパーW資金(農林漁業施設資金)の例)• 0.2~0.3%

観光産業の強化・安定化に向けた制度イメージ

観光産業の支援については「観光産業等生産性向上資金」がある。これは合理化、生産および販売能力の拡大や訪日外国人旅行者対応のために必要な設備資金及び長期運転資金の融資制度となっている。

観光産業の強化・安定化に向け、特に地方の観光産業の特性を踏まえ、 「観光産業等生産性向上資金」等の既存制度の活用状況や成果・課題を把握し、さらなる強化・拡充、活用促進を図ることが求められる。

106

強化・拡充の検討

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源• (1)「産業振興政策」について

• (2)「新規事業創出」に向けた施策の方向性

• (3)「持続的な事業運営の基盤創出(人材)」に向けた施策の方向性

目次

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オーストラリアで実施しされている地域観光産業支援策「Tourism lndustry Regional Development Fund(TlRDF)」の事例

108

Tourism Industry Regional Development Fund(TIRDF)

• 資源・エネルギー・観光省が2012年6月に導入をした250,000豪ドルを上限に、観光産業に関わりのある地域の宿泊施設、インフラ、体験プログラム、関連施設に対する投資に対して補助金を付与するもの。

• 2013年5月には65のプロジェクトへの補助が決定。オーストラリア政府としては、1,310万豪ドルが補助金として供出されたが、民間の拠出を合わせた投資価値は1億4,100万豪ドルに上る。

• プロジェクトベースで民間から申請を受け付けており、主に下記二つの基準から審査を実施している。

• 既存観光資源の改修や質等の向上

• 核心的な観光商品の開発

• シドニー、メルボルン、ブリスベン(都市部の観光地)以外ですでにビジネス展開をしている観光事業者のみを対象としている。

• この補助金の要件としては、

• 資源・エネルギー・観光省の長期目標であるTourism 2020に合致していること

• 該当する地域にとって戦略的、公民の共同的なプロジェクトであること

• イノベーションや改善が期待されること

• 同意した時間軸内でプロジェクトを実施できるキャパシティがあること

• 今後、地域の宿泊施設の質にフォーカスすることを予定しているほか、オーストラリア政府観光客とも連携している。

プロジェクト名 概要 補助額

Little Darling Hotel

common area

enhancements

• キャンベラにあるLittle Darling

Hotel の共有スペースをラグ

ジュアリー向けにリノベーション。

• ラグジュアリー市場向けに競

争力のある商品として、キャン

ベラを訪れる観光客の宿泊の

選択肢を増やす。

250,000 AUD

Crown Plaza Hunter

Valley-new conference

centre

• ビジネス観光客向けのカンファ

レンスセンターを1,200名を収

容できるキャパシティへと拡大。

250,000 AUD

TIRDF制度により補助金が付与された例

• ホテルやカンファレンスセンター等、対象となる地域に対して新たなセグメントへと訴求できるような商品開発等に対して、民間単独だけでは二の足を踏んでしまうような案件に補助金を付与いる。

我が国においては、観光産業の事業創出として、ファムトリップを含めた実証事業による支援が行われているが、次のステップである起業・事業創出における支援政策は存在しないため、実証事業等で得られたノウハウが継続しづらい状況にある。

オーストラリアでは、観光客が少なく投資も集まりずらい地域に対して、宿泊施設やインフラ、体験プログラムに対する改修や質等の向上に資するプロジェクトに対する補助施策が存在しており、我が国においても実証事業支援から事業創出支援をパッケージ化する等、地域事業創出を強力に支援する制度を検討すべきである。

出典:Tourism lndustry Regional Development Fund

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日本版「Tourism lndustry Regional Development Fund(TlRDF)」の施策イメージ

109

我が国において 「Tourism lndustry Regional Development Fund(TlRDF)」を参考にした施策イメージは以下のとおりである。

観光客が少なく投資も集まりずらい地域を支援対象とし、該当地域での地元組織(官、DMO、民間企業等)や地元と外部企業の連携体等による事業創出を支援する。

支援内容は、実証実験を含めた事業検証と経営人材育成をも視野に入れた事業計画作成(STEP1)と、事業計画に基づく事業創出(STEP2)の2段階とする。

審査や事業期間中の支援は地元金融機関や経営コンサルタントとし、評価の高い事業は継続的な支援につながり得る枠組みとする。

出典:有識者ヒアリング、観光財源の導入を検討している自治体ヒアリングを基にJTB総合研究所作成

国観光予算の一部(国際観光旅客税等)

都道府県

支援地域の選定

• 本事業の対象地域の要件を設定する。

− 観光客が少なく投資も集まりずらい地域であること

− 国、都道府県の戦略的な位置づけがあること

実証事業公募

• 継続的な運営を想定した現実的な事業のアイディアを公募

− 該当する地域にとって戦略的、公的なプロジェクトであること

− 地元組織(官、DMO、民間企業等)や地元組織と外部企業の連携プロジェクトであること

− 地域の観光事業のイノベーションや改善が期待されること

− 数年内でプロジェクトが実現し、成果をあげる見込みがあること

− 特定産業(戦略産業等)へのフォーカスも可

STEP_1実証事業

×事業計画策定支援

• 宿泊施設やインフラ、体験プログラムに対する改修や質等の向上に対する補助事業も含め、ファムトリップやモニターツアーによる事業性検証

− 実証事業に必要な設備・機材はこの段階ではレンタル(STEP2では購入も可能とする)

− アウトプットとして継続・自走可能な事業計画を策定する

• 事業創出に必要な投資予算を含めて支援

• 期間内に一定の事業成果を出し、事業計画の検証を含めた事業性を評価

• 事業成果が得られない場合は事業計画を見直し

• 事業成果を得られない場合にも、あらたな事業計画によってはネクストチャレンジも可能とする

STEP_3継続運営

審査

地元組織(官、DMO、民間企業等)・

地元組織と外部企業の連携体等が応募

審査

最終評価

地元金融機関や経営コンサルタント等が事業性の観点から評価

地元金融機関や経営コンサルタント等が事業性を評価する

最終評価が高い事業は地元金融機関等の経営支援もあり得る(経営指導・投資・融資等)

STEP_2事業計画に基づく事業創出・事業成果

(投資予算を含めた支援)

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l.業務概要

ll.日本発グローバル・ホテル・チェーン事業に関する検討

lll.観光施策に充てる安定的な財源の確保に向けた諸制度の検討

– 1.調査方針

– 2.観光振興予算の現状

– 3.観光財源のフレームの整理

– 4.観光財源創出の具体例

– 5.観光財源の導入にあたっての論点と課題

– 6.今後求められる観光施策と財源• (1)「産業振興政策」について

• (2)「新規事業創出」に向けた施策の方向性

• (3)「持続的な事業運営の基盤創出(人材)」に向けた施策の方向性

目次

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Page 112: 平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (観光サービス産業の国際競争力強化に関する調査)

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厚生労働省が平成28年度より実施してる地域活性化雇用創造プロジェクトは、地域の雇用の安定、能力開発を推進し、地域における生産性の向上や経済的基盤の強化を図るため、産業政策と一体となった安定的な正社員雇用の創出の取組を、年間10億円を上限に最大3年間、実施する費用の8割を補助する制度。

本制度では製造業においては雇用創出一人あたり250万円以内(地域産業活性化コース)、観光産業を含む全産業においては雇用創出一人あたり150万円以内(地域雇用活性化コース)となっている。また、製造業にのみ新規創業、新分野への進出、研究開発等による事業の拡大など地域の雇用機会の拡大を図る支援が設けられる等、製造業支援の傾向が強いが、観光産業における人材確保支援施策として、参考となる制度。

産業競争力強化に向けた高度専門人材獲得促進事業(厚生労働省)

111出典:厚生労働省資料

地域活性化雇用創造プロジェクトの概要

事業概要

• 各都道府県の提案する事業から、コンテスト方式により、安定的な正社員雇用の創造効果が高い事業を選定。プランを選定された都道府県は、地域の関係者(自治体、経済団体、金融機関、教育・研究機関等)で構成する協議会を設置した上で事業を実施(既存の協議会の活用等も可能)

• 各都道府県で戦略的産業分野として位置づけられる業種を指定の上、実施• 実施期間は最大3年間。国は、都道府県に対し、費用の8割(エは10割)を補助(雇用創造効果に応じて年間上限10億円)• <補助対象> 全都道府県

コース区分• 地域産業活性化コース (対象産業 製造業等、費用対効果の上限額:雇用創出一人あたり250万円以内 )• 地域雇用活性化コース(対象産業 全産業、費用対効果の上限額 雇用創出一人あたり150万円以内)

事業内容

ア.事業推進・基盤整備メニュー• 協議会の運営、事業の企画、事業所・求職者等への情報発信、地域の人材ニーズ等の調査研究、協力人員の確保などの事業運営、体制整備。

イ.事業主向け雇用創造メニュー• 有識者等の派遣による雇用管理改善の指導や研修・セミナー等を実施イ.事業主向け雇用拡大支援メニュー(地域産業活性化コースのみ)• 新規創業、新分野への進出、研究開発等による事業の拡大など地域の雇用機会の拡大を図る取組の支援等ウ.求職者向け就職支援・人材育成メニュー• 合同面接会や企業が求める人材の首都圏等からの確保、地域求職者に対する人材育成、職場体験等の研修等の取組を実施エ.指定事業主雇用助成メニュー• 指定する企業が施設整備と併せて雇入れを行った場合に、地域雇用開発奨励金に上乗せする形で助成する取組を実施

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厚生労働省の戦略産業雇用創造プロジェクトを活用し、滋賀県では滋賀県発の産業・雇用創造推進プロジェクト「高度専門人材確保支援事業」(企業提案型人材力育成確保事業)を制度化している。

本事業も製造業の雇用支援等を主眼とした制度であるが、高度専門人材の新規雇用に要する人件費を支援する制度設計となっている。

観光産業において、DMOを含めマーケティング人材、マネジメント人材の不足とともに、地域側での育成の限界が指摘されており、本事業を参考に、高度専門人材の雇用を支援する制度の創出を検討すべきである。

滋賀県発の産業・雇用創造推進プロジェクト「高度専門人材確保支援事業」(企業提案型人材力育成確保事業)

112出典:公益財団法人滋賀県産業支援プラザ資料

滋賀県発の産業・雇用創造推進プロジェクト

「高度専門人材確保支援事業」(企業提案型人材力育成確保事業)の概要

事業概要

• 「高度モノづくり・環境」分野と「食料品」分野の対象業種の販路開拓や新事業展開のために、高度な技術・知識・経験等を有する人材を新たに雇用することを支援。

• 本事業の利用により販路開拓や新事業展開が実現した事業において、新たな雇用の創出を行うこと。• 支援を受けるためには、事前に高度専門人材の雇用にかかる計画の提案により事業採択を受けることが必要。

対象経費• 高度専門人材の新規雇用に要する人件費 (給与・諸手当・社会保険料等の事業主負担分)• 新たに雇い入れる者1人当たり200万円以内• ただし、1社当たり1人まで

補助率 • 10/10

事業内容

• 高度専門人材とは、コンサルティング会社、総合商社、モノづくり企業等の専門技術者をはじめ、博士課程を修了した若手研究者等、高度かつ専門的な技術や技能、知識、ノウハウ、実務経験、指導経験を有する人材。

• 支援対象業種の業を営む事業主自らが、支援対象業種の事業の販路拡大や新規事業展開に必要な高度専門人材を県内事業所において直接雇用することにより、自社の事業拡大、新規事業の創造を図り、本事業終了後に、高度専門人材の継続雇用等により正規雇用者を創出する。

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観光版 高度専門人材獲得促進事業イメージ

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高度専門人材獲得推進事業を参考にした観光分野における施策イメージは以下のとおりである。

支援内容は、単なる雇用支援にとどまらず、高度専門人材を効果的に活用するための募集側の態勢構築や、初期段階における研修等による観光関連事業に関する知識や経営幹部に求められる技術習得、就職後のモニタリング等をセットし、事業成果を確実なものとする。

出典:有識者ヒアリング、観光財源の導入を検討している自治体ヒアリングを基にJTB総合研究所作成

事業内容

• 高度専門人材とは、旅行、運輸、宿泊、飲食・物販、広告、メディアといったサービス・ホスピタリティ関連事業経験者、農林水産業、コンサルティング会社、総合商社等の専門技術者をはじめ、経営学等の若手研究者、起業・事業創出、海外での業務経験等、高度かつ専門的な技術や技能、知識、ノウハウ、実務経験、指導経験を有する人材。

• 支援対象業種の業を営む事業主自らが、支援対象業種の事業の販路拡大や新規事業展開に必要な高度専門人材を当該地域事業所において直接雇用することにより、自社の事業拡大、新規事業の創造を図り、本事業終了後に、高度専門人材の継続雇用等により正規雇用者を創出する。

事業概要

• 地域の観光経済に関係が深い企業・組織を対象とする(DMO等の地域観光推進組織、宿泊業、観光関係事業を行う運輸業、飲食・物販業、ガイド事業、農林水産業、伝統工芸業、観光・文化施設等)

• 販路開拓や新事業展開のために、高度な技術・知識・経験等を有する人材を新たに雇用することを支援。• 本事業の利用により販路開拓や新事業展開が実現した事業において、新たな雇用の創出を行うこと。• 支援を受けるためには、事前に高度専門人材の新規及び継続的な雇用にかかる計画の提案により事業採択を受けることが必要。• 高度専門人材の役割(役職、権限、担務、部署等)、実施する事業内容や期待する成果、事業実施のための予算・計画が明確であることが必要。

支援事業

• DMOや地域振興等への転職仲介企業(株式会社日本人材機構等)、地域おこし協力隊やJlCA等の既存人材バンクと、地域の企業・組織の人材募集支援

• 人材を募集する企業・組織に対する受入態勢フォロー(効果を高めるための組織内ポジション、権限付与、予算付与等に関するセミナー等による支援)

• 試雇期間中の研修(リーダーシップ、コーチング、コミュニケーション、事業構想・事業計画等の経営幹部研修)• 就職者との定期ミーティング等による就職後のフォロー

対象経費• 高度専門人材の新規雇用に要する人件費 (給与・諸手当・社会保険料等の事業主負担分)• 新たに雇い入れる者1人当たり200万円以内• ただし、1社当たり1人まで

補助率 • 10/10