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2013.06.22 新人サポートセミナー -血液ガス分析- 愛知県臨床検査技師会 生物化学分析検査研究班 愛知医科大学病院 坂梨 大輔

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2013.06.22 新人サポートセミナー

-血液ガス分析-

愛知県臨床検査技師会 生物化学分析検査研究班

愛知医科大学病院

坂梨 大輔

Today’s Contents

Aichi Medical University Hospital Department of Infection Control and Prevention

•血液ガス分析の目的

•測定前後の注意

•結果解釈と報告時の注意[パニック値]

吸気(大気)と呼気

吸気(大気)

呼気

・大気にはN2,O2,アルゴン等が含まれており、

CO2はわずかしか存在しない。

・ヒトは大気中のO2を取り込み体内で消費しCO2

を産生、それを吸気として体外に排出している。

ガス交換

大気中のO2分圧 =(大気圧 - 37℃での飽和水蒸気圧)×O2濃度(%)

=(760 – 47)×0.2096 ≒ 150 torr

自発呼吸で血中PO2がこの値を上回ることはない

Aichi Medical University Hospital Department of Infection Control and Prevention

• 血液ガス分析の主な目的は、

呼吸(酸素化と換気)の状態および酸・塩基平衡を評価すること。

• 生物は生命活動に必要なエネルギーを得るために体内にO2を取り込み有機物を分解している。また、この過程でCO2や有機酸が生じるが、呼吸による排出や調節機構(腎)の働きにより体内環境は常にpH 7.4前後に保たれている。

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血液ガス - 測定の目的 -

血液ガス分析はこの機構を評価している。

血液ガス分析によって得られた測定値に異常

値が存在することは、生死に直結する一大事!!

Aichi Medical University Hospital Department of Infection Control and Prevention

血液ガス – 項目が多くてとっつきにくそうだが…-

pO2

pCO2 pH

BE

HCO3-

sO2

Anion GAP

ctO2

実測している項目はわずか3 (+ 1,Hb)項目!!

電解質

Glu,Lacなどを除く

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PCO2 PO2 pH

酸・塩基平衡の指標 ガス交換の指標

実測

項目

演算

項目 SO2 HCO3

- BE

PCO2はガス交換、酸・塩基平衡の

どちらの指標にとっても重要な項目

実測はPO2,PCO2,pHの3項目[+ Hb(分画)] のみ

血液ガス - 実測しているのは3 (+1,Hb)項目 -

(酸素化の状態) (肺胞換気の状態)

SO2とPO2の関係(酸素解離曲線)

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1

2

・PO2の高い領域ではHbはO2を放出しにくい。

・このため、HbはPO2の低い領域まで多くのO2を運搬できる。

・PO2が低い領域では、わずかな分圧の低下でも、HbはO2を放出する。

・このため、各組織の細胞に多くのO2を放出する。

PO2 60 Torr ≒ SO2 90 % を境に急激に低下する。

呼吸不全の診断基準!! 病棟のSpO2モニタのアラームも90%に設定されていることが多い。

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血液ガス – 肺胞換気の指標CO2もとても大事だ-

健常人の呼吸運動は血中CO2をもとに制御されている。

血中CO2↑で呼吸促進!!

しかし、換気能が低く慢性的に血中CO2が高い人(慢性Ⅱ型

呼吸不全;COPDなど)は、呼吸中枢の反応が鈍化し末梢から

のO2低下のシグナルで呼吸促進されるようになる。

このような人に高濃度の酸素を投与すると、「酸素がある」 と勘違いした中枢がさらに呼吸抑制をかけてしまう。

血中CO2↑↑↑、血中O2↓

生命が危機的な状態(CO2ナルコーシス)に!!

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血液ガス – 肺胞換気の指標CO2もとても大事だ-

リザバーマスクで

酸素投与10 L/min

先生!酸素投与により酸素化はOK

ですが、換気ができていません!!

換気の指標

挿管、人工呼吸導入(機械的に換気)

CO2ナルコーシス回避へ

こりゃいかん! 換気させよう。

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O2Hb 酸化ヘモグロビン 酸素と結合したHb

HHb 還元ヘモグロビン 酸素が解離しているHb

MetHb メトヘモグロビン ヘモグロビンの鉄が酸化され、酸素と結合できないHb

COHb カルボキシヘモグロビン 一酸化炭素と結合し、酸素と結合できないHb

COオキシメータによるHbの分画

血液ガス - 実測しているのは3 (+1,Hb)項目 -

血液ガス -Hb分画の測定が効果を発揮するとき-

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pH L 7.333 7.350-7.450

pCO2 42.9 35.0-45.0 torr

pO2 H 556.0 80.0-100.0 torr

HCO3 22.3 20.0-26.0 mmol/l

BE L -3.5 -3.0 - 3.0 mmol/l

SAT 98.9 94.0-99.0 %

tHb 15.1 13.9-16.0 g/dl

O2Hb 74.6 %

COHb 24.5 %

MetHb 0.1 %

HHb 0.8 %

Glu H 208 70-109 mg/dl

Lac H 52.20 4.00-16.00 mg/dl

人工呼吸

酸素分画

酸素流量 15.00

体温補正 37.0

ガスコメント

SO2 = O2Hb + HHb(還元ヘモグロビン)

O2Hb(酸化ヘモグロビン)

×100

SO2はCOHb,MetHbを反映しない

CO中毒やメトヘモグロビン血症での

SO2は正常値を示す。

COHbやMetHbの値で酸素化状態を判断する必要が生じる。

ERより提出 44歳 男性

Over Dose自動車内で自殺企図(練炭)

超重要な情報!!

酸・塩基平衡とは

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ヒトが生存可能なpHの範囲は 6.8 - 7.8 天秤を傾ける病態(アシドーシス、アルカローシス)と

水平(pH7.4)に保つために行われる酸と塩基の駆け引き。

アシドーシスとアルカローシス

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CO2 HCO3

CO2 HCO3

呼吸性

アシドーシス

代謝性

アシドーシス

呼吸性

アルカローシス

代謝性

アルカローシス

一次性変化

CO2ナルコーシス

呼吸不全 …etc

乳酸アシドーシス

腎不全、下痢 …etc

過換気(過呼吸) …etc

嘔吐、利尿薬 …etc

代償性変化

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CO2 HCO3

CO2 HCO3

呼吸性

アシドーシス

代謝性

アシドーシス

呼吸性

アルカローシス

代謝性

アルカローシス

一次性変化

代償性変化

CO2ナルコーシス

呼吸不全 …etc

乳酸アシドーシス

腎不全、下痢 …etc

過換気(過呼吸) …etc

嘔吐、利尿薬 …etc

血液ガス分析 測定前後の注意点

Aichi Medical University Hospital Department of Infection Control and Prevention

• 血液ガス分析は検体保存ができない。 密栓してても細胞代謝によりO2↓,CO2↑,pH↓となる。

• 血液ガス分析は再検査ができない。

開栓により大気圧に近づく。

• 気泡を除去し、しっかり攪拌して検体を均一化する。

気泡は検査値に直接的な影響を与える。

攪拌不足により検体全体を代表しない値となる。

• 検体が凝固していると検査できない。 測定器故障の一因となる。

血液ガス分析 –再検査不能!!-

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Min

Torr

Min

Torr

pO2 pCO2

速やかに

大気圧に近づく

初回測定後開栓状態で放置し、2、5、10分後に測定

血液ガス分析の基準値、パニック値

動脈血 静脈血 単位

pH 7.35 - 7.45 7.32 - 7.42 7.2↓ or 7.6↑

pCO2 35.0 - 45.0 41.0 - 51.0 20↓or 50↑(急性),70↑(慢性) torr

pO2 80.0 - 90.0 20.0 - 40.0 50↓(急性),40↓(慢性) torr

HCO3 22.0 - 26.0 24.0 - 28.0 15↓or 40↑ mmol/l

BE -2.0 - 2.0 mmol/l

SAT 95.0 - 98.0 %

臨床参考値(正常値)パニック値

換気能、酸・塩基平衡(つまり酸素化能以外)

の評価は静脈血でも可能

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患者状態を把握しよう

マスク 経鼻

-NASAL-

-カニューラ-

ネブライザー

-インスピロン- -OHIO-

ベンチュリマスク

高流量システム

低流量システム

人工呼吸の有無は?? 酸素投与の有無は?? 体温は??

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パニック値に遭遇した場合

pH L 6.697 7.350-7.450

pCO2 H 84.1 35.0-45.0 torr

pO2 L 63.8 80.0-100.0 torr

HCO3 L 10.6 20.0-26.0 mmol/l

BE L -27.0 -3.0 - 3.0 mmol/l

SAT L 72.6 94.0-99.0 %

tHb 12.3 13.9-16.0 g/dl

Na L 135 138-146 mmol/l

K H 6.1 3.6-4.9 mmol/l

Cl 108 99-109 mmol/l

ionCa L 4.00 4.50-5.30 mg/dl

AnGap H 22.8 10.0-18.0

Glu H 336 70-109 mg/dl

Lac H 129.20 4.00-16.00 mg/dl

人工呼吸

酸素分画

酸素流量 10.00

体温補正 34.5

ガスコメント

A

とんでもない値が出た!!

測定トラブルかな??

安心のためとりあえず再検しよう。

B

とんでもない値が出た!!

やばい状態だ、すぐに報告しよう。

Aichi Medical University Hospital Department of Infection Control and Prevention

パニック値に遭遇した場合

・心肺停止(CPA)などの患者については、Drもパニック値を予想して検査を出していることが多い。

・このような場合、蘇生の可能性を計ったり、治療方針を選定するために血液ガス分析の結果は1秒でも早く知りたい。

・CPA、高エネルギー外傷、重症熱傷などの処置には大変なマンパワーを要する。

→結果送信されたPC端末を見れないことも。場合によっては直接結果を伝えに行くなど確実に報告することが大事!!

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Today’s Contents

Aichi Medical University Hospital Department of Infection Control and Prevention

• 血液ガス分析の目的

呼吸(酸素化と換気)の状態および酸・塩基平衡を評価すること。

• 測定前後の注意

血液ガス検体は細胞代謝や大気の影響を強く受けるため、検体保存や再 検査をすることはできない。測定時は十分に攪拌し均一化することが必要。

• 結果解釈と報告時の注意[パニック値]

データの数値のみではなく、臨床から得られる患者情報を加味して考察 することが必要。一部の項目(特にO2やSO2)の結果のみにとらわれず、

包括的にみることが重要。異常値、パニック値が出た場合、測定手技上 のエラーを疑うことも大事だが、積極的に臨床に報告し患者状態と照らし 合わせていくことが望ましい(Drもパニック値が出ることを予想している場合が多く、結果を一刻も早く知りたいと思っている)。