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脳梗塞ガイドライン2013 Part 1:閉塞血管の再開通療法 慈恵ICU勉強会 2013423齋藤慎二郎

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脳梗塞ガイドライン2013  Part  1:閉塞血管の再開通療法

慈恵ICU勉強会  2013年4月23日  

齋藤慎二郎

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Acute  Ischemic  Strokeとは

Harrison’s  principles  of  internal  medicine  17edi<on  

脳血流量   組織100gあたりの血流量が1分間に  ・ゼロ →4〜10分で脳組織は壊死  ・16-­‐18ml未満→1時間以内に壊死  ・20ml未満        →数時間から数日で壊死        多くの脳細胞死がおこる前に脳虚血が回復すれば患者は一過性の症状だけですむ(一過性脳虚血発作:TIA)    

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脳梗塞の2つの局所病態    (1)細胞のエネルギー不足により急速に細胞骨格の崩壊をきたす壊死性経路      →1時間以内    (2)細胞がプログラム化された死を遂げるアポトーシスの経路      →数時間から数日  

Harrison’s  principles  of  internal  medicine  17edi<on  

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動脈閉塞

虚血

エネルギー枯渇

Ca2+/Na+流入

タンパク融解

細胞膜と骨格の破壊

細胞死

炎症反応

アラキドン酸産生

フリーラジカル

ミトコンドリア障害

アポトーシス

グルタミン酸放出

グルタミン酸受容体

ペナンブラ(数時間から数日)

脳虚血カスケードの主な段階

数分から数時間

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ペナンブラ(Penumbra)とは

・脳梗塞には至らない可逆性の虚血領域を虚血性ペナンブラと呼ぶ。  ・便宜上MRI上のDWIと灌流画像(perfusion  weighted  imaging:PWI)のミスマッチとして検討される  

ペナンブラを救う事が急性期治療の最大目標

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急性期脳梗塞治療戦略の基本概念

閉塞している血管の再開通

ペナンブラ領域を救済

予後が改善

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目的:2010年までに脳卒中、冠動脈疾患のリスクを25%減らす。    10年前にAHA/ASAが対策委員会を設立。  2009年にそれまでアメリカで死亡の原因第3位だった脳卒中が4位に後退した。    対象:救急隊員、救命救急科の医師と看護師、脳卒中治療

チーム、病棟看護師、コメディカル    構成:診断、受け入れ態勢、内科的or外科的治療、2次予防、

合併症管理  

Guidelines  for  the  Early  Management  of  Pa;ents  With  Acute  Ischemic  Stroke  2007

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1.一般市民への知識の普及    2.病院に到着するまでの管理と現場での治療  3.脳卒中センターの設立  4.急性脳梗塞の緊急評価と診断  5.早期診断  6.全身の支持療法と急性期合併症の治療  7.経静脈的血栓溶解療法   8.血管内治療      9.抗凝固療法  10.抗血小板療法  11.輸液負荷、血管拡張薬、昇圧について  12.脳神経保護薬  13.外科的血行再建  14.入院後の全身管理  15.急性脳神経合併症の治療  

Guidelines  for  the  Early  Management  of  Pa;ents  With  Acute  Ischemic  Stroke  2013

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©  2013  American  Heart  Associa<on,  Inc.    Published  by  American  Heart  Associa<on.   2  

Table  1  .  Applying  Classifica<on  of  Recommenda<ons  and  Level  of  Evidence  

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急性期脳梗塞治療戦略の基本概念

閉塞している血管の再開通

ペナンブラ領域を救済

予後が改善

A.  経静脈的血栓溶解療法  (Intravenous    Fibrinolysis)  B.  血管内治療  (Endovascular  Interven<ons)  ①血管内血栓溶解療法  (Intra-­‐Arterial  Thrombolysis)  ②血栓回収療法 (Mechanical  Embolectomy)    ③ステント留置療法 C.外科的血行再建     

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Intravenous  rTPA    組換え型組織プラスミノーゲンアクチベータ(rTPA)の投与がNINDS  rTPA  Stroke  trial  の結果に基づき、アメリカFDAに承認された。

2007年のガイドライン  経静脈的血栓溶解療法  Intravenous  Fibrinolysis

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The  Na<onal  Ins<tute  of  Neurological  Disordersand  Stroke(NINDS)    rt-­‐PA  Stroke  Study  Group.  Tissue  plasminogen  ac<vator  for  acute  ischemic  stroke.  

 N  Engl  J  Med.  1995;333:1581–1587.

対象:発症後 3  時間以内の脳梗塞患者624人    方法:t−PA(アルテプラーゼ 0.9 mg/kg)かプラセボを点滴静注しその効果を検討した。患者は発症時間の明らかな症例のみとし,CTで脳出血の認められた症例,収縮期血圧が 185 mmHg  以上, 拡張期血圧が 110 mmHg  以上の症例,症状が急速に回復している症例や症状が軽微のものは除外した。  

NINDS  rTPA  Stroke  trial   2007年のガイドライン

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 結果:3  ヵ月後の機能予後(Barthel  index,modified  Rankin  scale,Glasgow  outcome  scale, NIH  stroke  scale(NIHSS))がt−PA  群で有意に改善し,後遺症が軽度かまったくない予後良好例が t−PA  群ではプラセボより少なくとも 30%多かった。

2007年のガイドライン

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治療後の重篤な合併症である脳出血(symptoma<c  brain  hemorrhage)の発生  rTPA  vs  placebo(6.4  vs  0.6)であるが3ヶ月後、1年後の死亡率に差はなかった。

2007年のガイドライン

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the  European  Coopera<ve  Acute  Stroke  Study  (ECASS  I  and  ECASS  II)  

と    the  Alteplase  Thrombolysis  for  Acute  

Noninterven<onal  Therapy  in  Ischemic  Stroke  (ATLANTIS  A  and  ATLANTIS  B)

と  NINDS  

 の結果のPooled  analysis  

Associa;on  of  outcome  with  early  stroke  treatment:  pooled  analysis  of  ATLANTIS,  ECASS,  and  NINDS  rt-­‐PA  stroke  trials    

Lancet  2004;  363:  768–74

2007年のガイドライン

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発症3時間以内のrTPAの患者ではNINDSと同じような結果になった。

2007年のガイドライン

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Recommenda<onのまとめ    発症3時間以内の患者に対して、以下の一定の基準を満たせば以下のレジメに従った経静脈的血栓溶解療法を推奨。

2007年のガイドライン  経静脈的血栓溶解療法  Intravenous  Fibrinolysis

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適応基準

レジメ

2007年のガイドライン

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2007年のガイドライン  血管内治療  

Endovascular  Interven<ons

①血管内血栓溶解療法        Intra-­‐Arterial  Thrombolysis  ②血栓回収療法  ③ステント留置療法

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なぜ血管内治療か?    

・内頸動脈や中大脳動脈起始部などの主幹部閉塞では、rTPA静注療法による再開通率や改善効果が低いことが示されている。内頸動脈14%、中大脳動脈55%。    ・出血性合併症の危険性から、rTPA静注療法の適応となる症例は限られている。    ・脳主幹動脈の急性閉塞によって生じたペナンブラ領域が非可逆的な梗塞に至る前に閉塞血管の再開通が得られれば、神経細胞死を回避し、神経症上の改善が期待できる。  

2007年のガイドライン

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 Intra-­‐arterial  prourokinase  for  acute  ischemic  stroke:  the  PROACT  II  study:  a  randomized  controlled  trial:  Prolyse  in  Acute  Cerebral  Thromboembolism.  

 JAMA.  1999;282:2003–2011.

The  PROACT  II  study  

・phase  III  randomized  controlled,  mul<center,  open  label.  アメリカ、カナダ  ・MCAの閉塞した、発症6時間以内の患者180人  ・Intra-­‐arterial  prourokinase群  vs  control群  ・primary  outcome90日後のmRS  0-­‐2の患者  

①血管内血栓溶解療法intra-­‐arterial  fibrinolysis

2007年のガイドライン

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2007年のガイドライン

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・primary  outcome  40%  vs  25%  (p=0.04)  ・死亡率には差がなかった。

2007年のガイドライン

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急性期脳梗塞治療戦略の基本概念

閉塞している血管の再開通

ペナンブラ領域を救済

予後が改善

The  PROACT  II  studyはこの基本概念を証明

ここから血管内治療の戦略は新しいデバイスの開発へとシフトしていった。  

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2007年のガイドライン  血管内治療  

①血管内血栓溶解療法    

Recommenda<onのまとめ    ・血管内血栓溶解療法はrTPAの適応のないMCA領域の広範囲の虚血が認められる症例で6時間以内に可能である。(Class  I;  Level  of  Evidence  B)      ・この治療は、素早く脳血管にアクセスできる、経験ある施設と術者が必要。(Class  I;  Level  of  Evidence  B)        

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2007年のガイドライン  血管内治療  

②血栓回収療法

Safety  and  Efficacy  of  Mechanical  Embolectomy  in  Acute  Ischemic  Stroke:Results  of  the  MERCI  Trial  

Stroke.  2005;36:1432-­‐1440.  

MERCI  Trial

・前向き、single-­‐arm、多施設 、25  United  States  centers.  ・発症から3〜8時間かTPAの適応外の患者  ・椎骨動脈、脳底動脈、内頸動脈、中大脳動脈の閉塞がある患者  ・MERCI  system  で血栓除去を行った。再開通できなかったときはさらに血管内血栓溶解療法を追加も。  

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2007年のガイドライン

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結果:PROACT  Ⅱの再開通率と同等であった。再開通に成功した症例の方が予後が良かった。

2007年のガイドライン

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Recommenda<onのまとめ    ・MERCIは特定の患者には理想的な方法だが、その効果は不明である。(Class  Ⅱb;  Level  of  Evidence  B)    

2007年のガイドライン  血管内治療  

②血栓回収療法

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2007年のガイドライン  血管内治療  

③ステント留置療法

Recommenda<on  無い

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2007年のガイドライン  外科的血行再建

Recommenda<on  無い    

安全性と有効性を示すデータがない

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3時間以上たっても有効か?        

 ・NINDS    study  で3ヶ月後のfavorable  outcome  90分以内(OR  2.1) > 90-­‐180分(OR  1.6)    

2013年のガイドライン  経静脈的血栓溶解療法  Intravenous  Fibrinolysis

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Treatment  Time-­‐Specific  Number  Needed  to  Treat  Es<mates  for  Tissue  Plasminogen  Ac<vator  Therapy  in  Acute  Stroke  Based  on  Shins  Over  the  En<re  Range  of  the  Modified  Rankin  Scale  

Stroke.  2009;40:2079-­‐2084.    

・NINDS、ECASS、ATLANTISに含まれた1847人のpool  data  analysis  ・発症から治療開始までの90分ごとThe  number  needed  to  treat  (NNT)  を検討

3時間以上たってもrTPAは有効か?  

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3時間以上たってもrTPAは有効か?  

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発症から治療開始までの時間が4.5時間までは治療の有益性が有害性を上回る

3時間以上たってもrTPAは有効か?  

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Thrombolysis  with  alteplase  3  to  4.5  hours  aner  acute  ischemic  stroke.    N  Engl  J  Med.  2008;359:1317–1329.

ECASS  Ⅲ trial

・ヨーロッパ、double  blind  RCT、多施設  ・発症後3-­‐4.5時間にrTPAを受けた群(n=418)  vs  placebo群(n=403)  ・rTPA  0.9mg/kg  ・primary  outcome  90日後のmRS  (0-­‐1)    追加の除外基準  ・80歳<、NIHSS  >25、抗凝固薬内服中、過去の脳梗塞と糖尿病の既往    

3時間以上たってもrTPAは有効か?  

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結果:・rTPAを受けた群で予後が改善した。                                  rTPA>placebo(52.4%>45.2%  P=0.04)      ・脳出血は多かったが死亡率に差はなかった。  

3時間以上たってもrTPAは有効か?  

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追加の基準を満たせば3-­‐4.5時間のintravenous  rTPAは有効である。    

3時間以上たってもrTPAは有効か?  

相対的禁忌:80歳<、NIHSS  >25、抗凝固薬内服中、過去の脳梗塞と糖尿病の既往  

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80歳以上の患者の適応は?

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The  benefits  and  harms  of  intravenous  thrombolysis  with  recombinant  <ssue  plasminogen  ac<vator  within  6  h  of  acute  ischaemic  stroke  (the  Third  Interna<onal  Stroke  Trial  [IST-­‐3].  

 Lancet.  2012;379:2352–2363.  

・欧州を中心に12カ国、156施設、国際大規模ランダム化オープン比較試験。  ・対象は、虚血性脳卒中発症から6時間以内の患者で、3035人。明らかにrt-­‐PA投与の適応となる患者と、適応とならない患者は除外。治療効果が期待できるものの、適応基準を明確には満たさない患者を対象とした。  ・primary  outcome  6ヶ月後のOxford  Handicap  Score(OHS)で0~2点  

IST-­‐3  

80歳以上は適応は?

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Primary  outcomeであるOHS  0-­‐2点は両群で差はなかったが・・・・

80歳以上は適応は?

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OHSの6ヶ月の序数分析をすると治療を受けた群(OR  1.27,P=0.001)で有意に転機が良好であった。  また、死亡率については7日以内の死亡率は治療群で有意に高かったが、6ヶ月では両群に差はなかった。    同時期にこのSandercockらは、12個のRCT(7012人)のメタ解析ですべての年齢でrTPAを受けるベネフィットがあると発表している。  

2013年のガイドライン 80歳以上は適応は?

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ほとんどの症状はNIHSS  4以上であるが、一部、NIHSS  がちょうど2になる症状や軽い症状について議論になっている。  gait  disturbance(歩行)、isolated  aphasia(失語)、 isolated  hemianopia(半盲)    いくつかのstudyでは来院時に症状が軽かったり、すぐに回復したためにrTPAを受けなかった患者の1/3が最終的に重度の脳梗塞になっているとの報告がある。この観点から症状が軽かったりすぐに良くなったからといってrTPAを保留する事については疑問視されている。さらに研究が必要である。  

Pa1ents  With  Minor  and  Isolated  or  Rapidly  Improving  Neurological  Signs

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Dabigatran(direct  thrombin  inhibitor:プラザキサ)  内服から2-­‐3時間で血中濃度がピークに達し、半減期は12-­‐17時間である。腎障害では20-­‐30時間に延長する。  効果はINRやaPTTでは判定できない。  TTやECTがノーマルであれば血中濃度が最小である事が推測できる。しかし救急外来ではルーチンに測定しておらず、結果に数時間かかる事もある。      注意深い問診が重要。中等度抗凝固効果が残っていると予測される場合はrTPAの大きなリスクとなるため適応ではない。  

新しい経口抗凝固薬に対するrTPAの適応の判断  

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Rivaroxaban(direct  factor  Xa  inhibitors:イグサレルト)  半減期5-­‐9時間、腎、肝臓、糞便から排泄される。効果はDirect  factor  Xa  ac<vety  assayで判定できるが上記薬剤と同様、利用に制限がある。  

新しい経口抗凝固薬に対するrTPAの適応の判断  

Recommenda<on      ・direct  thrombin  inhibitors  or  direct  factor  Xa  inhibitors  を内服している場合は、信頼できる検査でその効果がノーマルである、あるいは内服から2日間たっていると断定できるまではrTPAは推奨しない。    

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Other  Fibrinoly;c  Agents  Tenecteplase  とDesmoteplaseのphaseⅡb  trialとphaseⅢ  trialが進行中である。   Defibrogena;ng  Enzymes  Ancrod:蛇の毒から抽出した成分。フィブリンよりもフィブリノーゲンを分解し、血液の粘度を下げる。PhaseⅢtrialが有意さが認められず中断された。  Transcranial  Ultrasound  Fibrinolysis  Augmenta;on  Intravenous  rTPAとの併用で効果が期待される。CLOTBUST  trial.  N  Engl  J  Med.  2004;351:  2170–2178.    現在臨床試験中である。

2013年のガイドライン  経静脈的血栓溶解療法  

その他

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2013年のガイドライン  血管内治療  

Endovascular  Interven<ons

①血管内血栓溶解療法        Intra-­‐Arterial  Thrombolysis  ①+経静脈的血栓溶解療法    ②血栓回収療法   Merci、Penumbra、Soritaire、Trevo  ③ステント留置療法

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Efficacy  of  Intra-­‐Arterial  Fibrinolysis  for  Acute  Ischemic  Stroke  Meta-­‐Analysis  of  Randomized  Controlled  Trials  

Stroke.  2010;41:932-­‐937.  

PROACT  Ⅱと同様な結果。脳出血は多いが、死亡率は有意差なし。

①血管内血栓溶解療法            

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血管内血栓溶解療法に対する次の期待  ・より長いTime  windowの適応  ・経皮的血栓溶解療法で出血のリスクの高い患者への適応   (最近の手術の術後患者など)      現在多くの研究結果が集まりつつある。今後に期待。  

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IMS  Ⅱ  Study The  Interven<onal  Management  of  Stroke  (IMS)  II  Study  

Stroke.  2007;38:2127-­‐2135.  

・13施設、open-­‐labeled、single-­‐arm  study.   ・81人、3時間以内のrTPAに引き続き、経静脈的血栓溶解療法(rTPA+ECOS)  ・3ヶ月後のmRS,NIHSSをNINDSの結果と比較。

血管内+経静脈的血栓溶解の併用療法  

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・NINDS placebo群に比較してよい結果。  ・この結果に基づき900人を対象にpheseⅢ  IMS  III  trialが行われた。    

詳細は後で説明  

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FDAの承認  2004年  The  Merci  Retrieval  System      2007年    The  Penumbra  System    2012年  The  Solitaire  Flow  Restora<on  Device           The  Trevo  Retriever        

The  Merci  Retrieval  System    先端の形状記憶された螺旋のループとポリプロピレンフィラメントで血栓を補足して回収

③血栓回収療法  

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・pivotal  single-­‐  arm,  prospec<ve,  mul<center  trial    ・発症8時間以内の患者、151人と164人  ・rTPA静注療法の禁忌例、または静注療法で再開通が得られない中等度以上の主幹血管の閉塞に対して施行。    結果  ・それぞれ48%と57%の再開通率  ・90日後のGood  clinical  outcome  (mRS  score  0–2)は再開通に成功した群で39%、失敗した群で3%。再開通が予後を改善する重大な因子であった。  ・90日後のGood  clinical  outcomeは39.9%に認められ、PROACTⅡの成績と同等であった。  

MERCI  trial  と  mul<  MERCI  trial  

Stroke.  2005;36:1432–1438.    Stroke.  2008;39:1205–1212

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The  Penumbra  System  

カテーテルから血栓を吸引して回収する。セパレーターと呼ばれるガイドワイヤーで血栓をカテーテル内へ掻き入れる。

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The  Solitaire  Flow  Restora<on  Device  

新しいデバイス Solitaire  と  Trevo  MerciやPenumbraと違うステントを使った血栓回収システムの登場  

日本では未承認

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The  Trevo  Retriever  

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・SolitaireとMerci  Retrieval  System  を比較したrandomized  prospec<ve  trial  ・rTPAの適応がなかった、あるいはrTPAに反応しなかった患者112人  ・治療開始まで8時間以内  

Solitaire  flow  restora<on  device  versus  the  Merci  Retriever  in  pa<ents  with  acute  ischaemic  stroke  (SWIFT):  a  randomised,parallel-­‐group,  non-­‐inferiority  trial  

Lancet.  2012;380:1241–1249.    

The  SWIFT  study  (Solitaire  FR  With  the  Inten<on  for  Thrombectomy)

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・高い成功率  ・90日後のgood  clinical  outcome  rates  (mRS  score  0–2)  58%  vs  33%(p<0.0001)  ・90日後の死亡率 17%  vs  38%(p=0.001)  

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・TrevoとMerci  Retrieval  System  を比較したrandomized  prospec<ve  trial  ・対象はSWIFT試験と同様。患者数は178人  

Trevo  versus  Merci  retrievers  for  thrombectomy  revascularisa<on  of  large  vessel  occlusions  in  acute  ischaemic  stroke  (TREVO  2):  a  randomised  trial  

Lancet.  2012;380:1231–1240.

The  TREVO  2  study    (Thrombectomy  REvasculariza<on  of  large  Vessel  Occlusions)  

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結果  ・90日後のgood  clinical  outcome  rates  (mRS  score  0–2)  40%  vs  22%(p=0.01)  ・90日後の死亡率 33%  vs  24%(p=0.12)  

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安全性にも有意差はなかった。  

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この2つスタディの結果はSolitaireとTrevoという新しい2つのデバイスがMerciやPenumbraよりも治療効果が高い事を支持している。    この研究が発表されMerciやPenumbraは第1世代、  SolitaireとTrevoは第2世代のデバイスと呼ばれるようになった。  

The  SWIFT  study  (Solitaire  FR  With  the  Inten<on  for Thrombectomy)

The  TREVO  2  study    (Thrombectomy  REvasculariza<on  of  large  Vessel  Occlusions)  

 この2つstudyのまとめ  

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First  Food  and  Drug  Administra;on-­‐Approved  Prospec;ve  Trial  of  Primary  Intracranial  Sten;ng  for  Acute  Stroke  SARIS  (Stent-­‐Assisted  Recanaliza;on  in  Acute  Ischemic  Stroke)  

Stroke.  2009;40:3552–3556.

④緊急ステント療法  SARIS  Study

・The  nonrandomized,  single-­‐  center  ・rTPAの適応のなかった20人で頭蓋内の血管が責任病変の患者  ・直接ステントを留置した。  結果  ・全員血流が再開通した。  ・func<onal  outcomes  (mRS  score  0–3)  at  1  month    60%.  ・脳出血は5%  ・このstudyは現在患者を増やして進行中。  

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頭蓋骨外の動脈への緊急ステントの有効性

・元々は脳梗塞予防のため、緊急で行うシチュエーションは限られている。  ・第一は、内頸動脈や椎骨動脈の重度の動脈硬化や解離によって血流が遮断されている場合。  ・第二は、頭蓋骨外の血管の狭窄が強く、頭蓋内の責任血管へのアプローチが困難な場合。    ・今のところ完全な前向き研究の報告はく、少数の小規模の後ろ向きが報告されているのみ。  ・合併症の率が少なく、高い再開通率が報告されている。良好な臨床的予後も報告されている。 Stroke.  2005;36:2426–2430.

J  Endovasc  Ther.  2007;14:279–288. AJNR  Am  J  Neuroradiol.  2005;26:1249–1258.

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急性期脳梗塞治療戦略の基本概念

閉塞している血管の再開通

ペナンブラ領域を救済

予後が改善

 この基本概念に基づき血管内治療の有用性を証明するための鍵となる大規模な多施設RCTが始まった。

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どの報告も、IV  rTPAに対する血管内治療の有効性を示せなかった。    急性期脳梗塞治療戦略の基本概念に反する結果が示された。

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Endovascular  Therapy  aner  Intravenous  t-­‐PA  versus  t-­‐PA  Alone  for  Stroke  

N  Engl  J  Med  2013;  368:893-­‐903  ・前向き、オープンラベルRCT  ・アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、カナダ、58施設  ・3時間以内にrTPA治療を受けた900人(予定)  ・rTPA単独群  vs  rTPA後血管内治療追加群に割り付け  ・血管内治療:血管内血栓溶解療  or  血栓回収療法      

 IMS  III  trial IV  rTPA    vs    IV  rTPA+Endovascular  Interven<ons

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患者背景:冠動脈疾患以外は有意差なし  

・90日後の結果(mRS  0,1or2)、有意差なし  ・重症度によるサブグループでも有意差なし  

↓  ・当初の予定より少ない656人でこの研究は中止された。    

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あらかじめ設定されたサブグループ解析においても結果に有意差があるものはなかった。    24時間後のCTで血管内治療群で高い再開通率が得られた。

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血管内治療は有効ではないのか?    血管内治療群で高い再開通率を得たにもかかわらずなぜ予後が変わらなかったのか?    1つの答え    再還流が遅すぎたのかもしれない。すでに組織が不可逆的変化を起こしていた。    より早い介入が予後を改善するかもしれない可能性は残っている。    

 IMS  III  trial

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Endovascular  Treatment  for  Acute  Ischemic  Stroke  N  Engl  J  Med  2013;368:904-­‐13.  

 ・多施設、前向き、オープンラベルRCT  ・4.5時間以内  ・rTPA群 vs  血管内治療群に割り付け  ・血管内治療:血管内血栓溶解療  or  血栓回収療法      

SYNTHESIS  Expansion  trial

IV  rTPA    vs    Endovascular  Interven<ons

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 ・あらかじめ設定されたサブグループ解析においても結果に有意差があるものはなかった。

・患者背景では血管内治療群で心房細動が少なかった、解離が原因として多かった、以外は同じ。    ・3ヶ月後のmRS  0-­‐2に有意な差がなかった。  

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やはり血管内治療は有効ではないのか?    血管内治療群の治療開始時間は経静脈的血栓溶解療法よりも1時間遅かった。    脳梗塞の急性期においては再還流の程度の要素よりも時間の要素が大きいかもしれない。    

SYNTHESIS  Expansion  trial

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A  Trial  of  Imaging  Selec<on  and  Endovascular  Treatment  for  Ischemic  Stroke  

N  Engl  J  Med  2013;  368:904-­‐913  

・22施設、アメリカ、オープンラベルRCT。  ・rTPA後再開通の認められなかった患者127人。  ・8時間以内に血管内治療群  vs  標準治療群に割付け。  ・ペナンブラの有無で層化。  ・血管内治療:血栓回収療法 Merci  or  Penumbra  。    

画像診断で血管内治療が有効な患者を同定できるか?

MR  RESCUE  trial

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画像評価

ペナンブラ   あり        なし        あり         なし

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・治療法による予後の変化はなかった。           ↓  ・血管内治療の有効性は示せなかった。  

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・ペナンブラパターンによる予後の変化はなかった。                 ↓  ・画像評価によって血管内治療が有効な患者を同定できなかった。  

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血管内治療は有効ではないのか?    ・このStudyはペナンブラの評価を行うために作られたもので、血管内治療の有効性を評価するにはサンプルサイズが小さい。  ・血管内治療に使われたデバイスが第一世代のMerci。現在は進化したデバイスが多数登場している。    サンプルを大きくし、新しい血栓回収療法を使うことで結果は異なるかもしれない。

MR  RESCUE  trial

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New  recommenda<onのまとめ  

ClassⅠ  ・Intravenous  rTPAと同様に、治療の遅れを最小限にする努力が不可欠  ・mechanical  thrombectomy  ではSolitaire  と Trevoの方がMerciよりも好ましい。  Class  Ⅱb  ・Intravenous  rTPAに反応しない比較的大きな血管の閉塞の再開通の目的で行われるのが合理的である。  ・頭蓋内血管に対する緊急血行再建、ステント留置の有用性は今のところ確立されていない。臨床試験でののみ使用。  ・頭蓋外血管に対する緊急血行再建、ステント留置は、限られた状況で考慮されうる。  

2013年のガイドライン  血管内治療

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外科的治療

急性期CEAへの関心の高まり  理由  ・CEA待機患者の脳梗塞再発リスクが高い。  ・血栓の原因(柔らかい、不安定プラーク)を取り除く  ・ペナンブラへの還流圧を正常にもどす    急激な血流の再開は、次のリスクを伴う可能性  ・血栓性の梗塞を出血性梗塞に転換させる  ・浮腫を増大させる  ・過還流症候群を起こす。    

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Early  caro<d  endarterectomy  aner  ischemic  stroke:the  result  of  a  prospec<ve  mul<center  Italian  study    

Eur  J  Vasc  Endovasc  surg.  2006;32:229-­‐235

・single-­‐arm  mul<center  trial  ・  NIHSS  score  >22やMCA領域の2/3以上の虚血がある患者を除外  ・96人の発症からCEAまでの時間の平均値は1.5日  結果   ・30日の死亡・重傷合併症は7%、85人は有意な改善がみられた。  ・出血は一人もいなかった。  

急性期CEAの安全性を示すデータ

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危険性を示すデータ

Huber  らとWelsh  らの報告した2つのcase  series  ・死亡率は16%と21%  ・どちらも患者の重症度が高く、頸動脈の完全閉塞患者も含まれていた。

Patyらの報告では梗塞巣のサイズが直径1cm増えるとCEA後の症状悪化のリスクが1.7%増大すると報告している。  

J  vascSurg.2004;29:148-­‐154

Eur  J  Vasc  Endovasc  surg.  2003;25:60-­‐67  Cerebrovasc  Dis.2004;18:200-­‐2005

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Systema<c  Review  of  the  Opera<ve  Risks  of  Caro<d  Endarterectomy  for  Recently  Symptoma<c  Stenosis  in  Rela<on  to  the  Timing  of  Surgery  

Stroke.  2009;40:e564–e572.

急性期CEAの危険性?  

発症からCEAまでの時間の影響に関するsystema<c  review

症状の進行する脳梗塞と回数の増えていくTIAに対するurgent  CEA  47個のstudy    発症から症状の安定している患者に対するearly  CEAのstudy    

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unstable Stable  

症状の進行する不安定な患者ではemergency  CEA  のリスクは高い。  

症状の安定している患者ではdelayed  surgery  にくらべてリスクの増大はなかった。  

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症状の進行する脳梗塞と回数の増えていくTIAに対するurgent  CEA    ・死亡率はそれぞれ20.2%と  11.2%であった。  ・症状の進行する不安定な患者ではemergency  CEA  のリスクは高い。  ・そのような患者には内科的治療で症状を安定させる事が出来るかもしれない。  

発症から症状の安定している患者に対するearly  CEA  ・delayed  surgery  にくらべてリスクの増大はなかった  ・梗塞やTIAの再発は早期が多いので、症状の安定している患者ではearly  CEAの利益が大きいかもしれない。  

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Recommenda<onのまとめ ・emergent、urgent  CEAの有用性  梗塞巣が小さくペナンブラが大きい場合  頸動脈の狭窄が強く血流が不十分な場合  CEA術後で術部位の血栓が急激な症状の進行する原因と疑われる場合    ・症状の進行する脳梗塞と回数の増えていくTIAに対するurgent  CEA  の効果    いずれもも有用性は確立されていない。(Class  IIb;  Level  of  Evidence  B)    

2013年のガイドライン  外科的治療  急性期CEA

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慈恵医大tPAマニュアル

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本日のまとめ    

・現時点ではrTPAより優先される治療法はない。    ・rTPAの適応は広がりつつある。    ・血管内治療のデバイスが急速に進歩している。    ・血管内治療には時間、重症度、閉塞血管部位、画像による患者選択など数多くの課題が残っている