140927社会教育学会報告

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日本社会教育学会第61回大会(福井大学)の報告内容です。

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地域におけるインフォーマルな学習についての理論的検討

荻野亮吾(東京大学 高齢社会総合研究機構)

2014/09/27 (土) 13:25 〜 13:50

福井大学 教育系 1 号館 2 階 205 講

日本社会教育学会 第 61 回研究大会 第 5 室(学習文化活動)

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1. 報告の目的 本報告の目的:地域におけるインフォーマルな学習について理論的検討を行

うこと。

近年、社会教育行政の再編とコミュニティの変化についての研究が進められている。具体的には、コミュニティ・ガバナンスと、ソーシャル・キャピタルとの関連を問うといった研究視角が示されている(松田 2014;佐藤 2014等)。

ポイントは、社会教育行政の再編(ガバナンスの変容)が、社会関係資本の構成にどのような影響を及ぼすのかという点である。しかし、コミュニティの実態や変化を理論的・実証的に捉える点において、この研究の視角は、発展の途上にある。

特に問題なのは、社会関係資本の構造的要素と認知的要素のつながりが明らかでないこと(※)。具体的には社会関係資本の構築過程と、住民の学習との関係が明確でないこと。

本報告では、この点を探究するために、地域におけるインフォーマルな学習の位置を確認し、アプローチの方法について試論を提示する。

※ この研究に大きな示唆を与えるのが、集落公民館や、自治公民館、字公民館の研究である(小林・島袋編 2002;末本 2013 )。

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2. 「社会関係資本」論と社会教育研究の接点

社会教育を通じたコミュニティの構成や変化を考えるにあたっては、社会関係資本の議論を援用することが有用(松田 2014; 荻野 2014 )。 社会関係資本の議論は、人々がどのような相互関係の中に埋め込まれてい

るかという関係論的視点と、その関係自体がどのように構成されているかという構造的視点の双方を、その射程に含む。

パットナムの研究の重要な点 ( 1 )ガバナンスを規定する社会の条件を、社会関係資本として明確化し

たこと、( 2 )「社会関係」を一種の資本と見なすことによって実証的研究を容易にし、経年変化の測定や比較研究への展開が可能となったこと、( 3 )社会関係資本を構築する介入的研究への可能性が開かれた点で重要な意味を有する( Putnam 1993=2000; 2000=2006; Putnam and Feldstein 2003 )。

「社会関係資本」と「ガバナンス」の関連性 EU や OECD 等の国際的機関や各国政府は、両者の関連性に着目している

(荻野 2014 )。日本国内でも、社会関係資本の概念は、ガバナンス概念との関連づけで語られることが多い(坂本 2011 ;松田 2014 )。

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2. 「社会関係資本」論と社会教育研究の接点( 2 )

生涯学習・社会教育と社会関係資本に関する研究 「学習の成果研究センター」の研究:①学習が自己効力感や自信といった非

認知的能力に与える影響( Hammond 2004: 42-45 )、②フォーマルな学習が持つ、人種的寛容性や政治的関心、市民組織への参加への影響力( Bynner and Hammond 2004: 166-170 )、③社会的・経済的地位やジェンダーによって異なる社会関係資本の構造的・認知的側面への影響力( Preston 2004a, 2004b )を明らかにした。

フィールド( Field 2005=2011 )は、社会関係資本のタイプで影響力が異なることや、人的資本と社会関係資本の代替性や補完性について議論を展開。

総じて、社会関係資本と生涯学習に関する研究では、フォーマルな教育や講座といった教育の機会の効果に注目してきたが( Schuller et al., 2004; Field 2005=2011 )、社会関係資本がインフォーマルな学習に与える影響についての研究は少ない。

さらに、社会教育研究として重要なのは、社会関係資本を「個人財」ではなく、地域の「集合財」として捉える視点である。 「個人の生涯学習だけでなく、公民館という社会教育施設の中にソーシャル・

キャピタルが形成され、それがコミュニティにおけるソーシャル・キャピタルの醸成と深く関わっているという視点を持つ」ことが重要(松田 2012: 26 )。

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2. 「社会関係資本」論と社会教育研究の接点( 3 )

実証的研究へと展開する際に留意すべきポイント(荻野 2014 ) 構造的レベルの峻別:社会関係資本の研究を進めるにあたって、ミクロレベルの社会的ネットワーク、認知的価値観と、マクロレベルの社会関係資本のつながりを解明することが重要。

ネットワークと「関係基盤」への注目:認知的価値観を規定する社会的ネットワークと、その「文脈的規定要因」である「関係基盤」(三隅 2013 )に焦点を当てることは、ガバナンスとの接点を考える上で有用である。 「関係基盤」は、(1)計量分析と事例分析をつなぎ、(2)ネットワークの構

造的制約にも対応し、(3)行政からのアクセスポイントとなるという 3 つの点で、分析概念として重要な価値を有する。

これまで計量分析では、(1)マクロレベルの社会関係資本とアウトカムの関係(例:幸福度、経済発展、安全等)、(2)ミクロレベルの社会的ネットワークの規定要因とその効果に関する研究が中心だった。

事例研究では、(1)地域の社会的ネットワークが文脈的規定要因(関係基盤)の影響を受けどのように形成されていくのか、(2)社会教育行政はこの構造的部分にどのように介入できるかが主要な関心となる。

以上のレベルごとの概念の布置は、埴淵・中谷( 2013 )を参照し図 1 のように表せる。

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図 1 社会関係資本を捉える枠組み

社会関係資本の文脈的規定要因

【地域レベル】

社会関係資本の個人的規定要因

個人レベルの社会的ネットワー

個人レベルの認知的価値観

地域レベルの社会関係資本

地域レベルのアウトカム

個人レベルのアウトカム

【個人レベル】

集計社会教育行政の

介入

事例研究の対象とする範囲

6

計量分析(ミクロレベル)の対象とする範囲

計量分析(マクロレベル)の対象とする範囲

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3. 中間集団と社会関係資本の関係

中間集団への所属の効果 社会関係資本の構造的要素と認知的要素の関連に注目すると、地域の中間集団へ

の所属と、この中間集団の関係の中で形成される住民意識に焦点が当てられてきた。

政治学では、中間集団に所属することによる「政治的社会化」( Almond and Verba 1963=1974 ;蒲島 1988 )、あるいは「市民陶冶機能」(坂本 2010 )が注目されてきた。

パットナム( Putnam 1993=2001: @@ )も、ボランティア団体への所属は、「協同のスキルを涵養し、集合的な努力に対して共有された責任感を洒養する」ことを指摘する。

所属する集団によって、形成される価値観は異なる。 小林( 2000 )は、インフォーマルなグループへの所属により「社会的連帯」

が高まる可能性を指摘する。 平野( 2002 )や池田( 2002 )は加入団体の数、積極性、水平性・垂直性、閉鎖性・開放性等が、信頼や規範、有効感、政治参加に影響を与えることが明らかにしている。

「政治的社会化」の効果は、所属する集団の教育レベルによって異なり、異なる特徴を持つ集団に所属することの効果も存在するとされる( Stolle & Hooghe 2003 )。

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3. 地域における中間集団の布置と関連

中間集団の布置と関連:社会学では、地域に存在する「中間集団」が相互に結びつくことで、地域住民のネットワークを広げ参加を促すことが明らかにされてきた。 地域には、①包括的で自動加入が原則の「住民自治組織」、②行政協力組織や、③年齢や

性別の組織や、④職業・産業組織といった自動加入を前提とした限定的な目的を有する団体、⑤宗教団体や、⑥同郷団体、⑦余暇をめぐる集団、⑧運動組織、⑨階層別・階級別組織等の、個別の目的を有した任意組織など、様々な団体や組織が存在する(鰺坂 2006 )。

地域社会では、町内会・自治会や地縁団体が活動の基盤として重要な役割を果たしてきた。 ペッカネン( Pekkanen 2006=2008 )は、町内会・自治会への所属を主とする、日

本の市民社会構造を「政策提言なきメンバー達」であると表現している。アメリカの市民社会がここ数十年の間に「メンバーシップからマネージメント」( Skocpol 2003=2007 )へと移行してきたのに対し、日本では市民社会の各種組織の政策提言の機能は不十分でも、地域の小規模な集団の活動が活発であったことを示すものである。

似田貝( 1991 、 1997 )は、地縁団体やサークル・グループのつながりを明らかにしている。高野( 2011 )は地縁団体の垂直的なつながりの構造と、合併による変化を指摘。

中間集団の性質は固定的なものでなく、外的要因によって再編や転用のメカニズムが働くこともある( Putnam and Feldstein 2003: 286-291 ;荻野 2010 ) 。

そして、「社会関係資本の社会構成の問題」( Pekkanen 2006=2008: 159 )は、中間集団の布置と関連が、地域によって異なるということによって説明される。

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3. 中間集団を基盤にしたインフォーマルな学習

地域の「関係基盤」と相互の社会的ネットワークの中で生じる、住民の認知的価値観の変容をインフォーマルな学習として、研究の対象に据えることができる。 ここでは、中間集団への所属の「政治的社会化」の効果を取り上げてきたが、

集団への所属は社会的ネットワークを広げる効果も持つ。 つまり、中間集団への所属は、構造的、認知的な社会関係資本を育む基盤とな

る。 さらに、単なる所属の効果だけでなく、地域にどのような集団が存在し、集団同士がどのような関係にあるのかという点も、文脈的規定要因として重要となる。

「関係基盤」とそれに基づく社会的ネットワークという構造的要素の中で生じる住民の認知的価値観の変容をインフォーマルな学習として位置づけることができる。

地域の社会的ネットワークの基底に位置する中間集団がどのような関係にあるか、住民が各集団への所属を通じて地域活動にどのように関わるのかを把握し、この関係の中で、住民のインフォーマルな学習が生じ、コミュニティが構成されて行く過程と論理を捉えることが重要となる。この過程を捉えて初めて、社会教育行政が介入できるポイントも明らかになる。(図 2 )

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図 2 インフォーマルな学習を捉える枠組み

社会関係資本の文脈的規定要因

【地域レベル】

社会関係資本の個人的規定要因

個人レベルの社会的ネットワー

個人レベルの認知的価値観

地域レベルの社会関係資本

地域レベルのアウトカム

個人レベルのアウトカム

【個人レベル】

集計

インフォーマルな学習の研究の範囲

社会教育行政の介入

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4. インフォーマルな学習の先行研究( 1 )

インフォーマルな学習への注目 近年、インフォーマルな学習は、学習の「成果の認証」や「資格」との関

連で注目されている( OECD 2007 : 2010=2011 )。 OECD ( 2010=2011: 41 )は「仕事、家庭生活、余暇に関連した日常の活動の結果としての学習」とし、意図的ではない学習を指し、「経験による学習」と同値であるとされる。

インフォーマルな学習の定義( Werquin 2007: 3 の Figure1 より一部抜粋)フォーマル インフォーマル ノンフォーマルCoombs et al.,( 1973 )

フォーマルな教育:初期の教育訓練システムで行われるもの。

インフォーマルな教育:真の生涯学習の過程。日常的な経験。

ノンフォーマルな教育:公のセクター外で組織化されるもの。

EC ( 2000)

フォーマルな学習:教育訓練機関の中で、資格に結びつくもの。

インフォーマルな学習:日常的な状況において、必ずしも意図的に行われないもの。

ノンフォーマルな学習:主流の教育システムと共存するが、資格に結びつかないもの。

OECD ( 2007 )

フォーマルな学習:教育機関、成人教育機関、職場で生じるもの。

インフォーマルな学習:日々の活動、家族、余暇活動から生じるもの。非組織的・非構造的で、無意図的。

ノンフォーマルな学習:計画的だが評価さえず、資格に結びつかないもの。意図的。

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4. インフォーマルな学習の先行研究( 2 )

成人学習論からの示唆 成人学習における「経験」の重要性

経験学習論では、経験のふり返りを通じて意味づけがなされることが重視される( Kolb 1984 )。

経験の重要性は、リンデマンやノールズ以来指摘されているが、経験学習論では日常的な経験の持つ価値が大きいと考えられている。

「ふり返り」は、経験を意味づける上で重要な概念 変容学習とナラティヴ学習においては、学習者が、人生の経験に対して、その解釈

を通じて向き合っていく過程を扱う( Merriam et al., 2007 : 214-215 )。 さらに、経験やふり返りが生じる「文脈」を考慮する必要がある。

レイブらの「正統的周辺参加」の議論は、実践的な集団に人々が参加していく過程を学習と捉え直した点に特徴がある。ここでの学習は、実践的共同体に埋め込まれたインフォーマルな学習を指す。

経験学習論との違いは、人々が参加し、コミュニティや学習の文化に十全に関わること、その中でそのコミュニティの歴史や前提、文化的価値観やルールを学ぶという、「文脈」を重視する点にある( Hansman 2001: 46 )。

この考え方は、文脈の役割や社会的相互作用を重視する社会的構成主義の影響を受けている( Corte 2010=2013: 48-50 )。

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4. インフォーマルな学習の先行研究( 3 )

職場学習論からの示唆 近年の職場での学習論においては、コルブの経験学習論に依拠しつつ、他

者からの支援により経験学習のサイクルが適切に機能することに関する定性的研究(松尾 2011 )や、他者からの様々な支援が能力向上に資することを定性的・定量的に明らかにする研究(中原 2010 )が行われてきた。

さらに個人レベルだけでなく、職場の規範や信頼といったマクロレベルの影響も考慮した分析が行われている(中原 2012 )。

中原( 2012: 96-97 )が指摘するように、経験学習のモデルでは社会的要因の影響が考慮されていないため、「他者」からの支援によってふり返りが促されること、これを支えるための日常的なコミュニケーションや関係の質が問われている。概ね、個人 -職場(部署) - 組織( - 組織外)の 3層構造が描かれている。

中原( 2012: 187 )の職場学習の図を参照すれば、地域でのインフォーマルな学習の過程を見る際に、図3のような枠組みを想定できる。 個人レベルでの経験学習(集団や地域の活動を通じて学ぶ)、集団レベ

ルでの状況的学習、そして集団を超えた学習の 3 つのレベル。

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経験学習

集団での(インフォーマルな)学習

他のグループへの参加

経験

ふり返り

リーダー

メンバー

メンバー

図 3 地域でのインフォーマルな学習の構造

コミュニケーション

状況的学習

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5. インフォーマルな学習を研究するための方法( 1 )

(研究 1 )インフォーマルな学習の効果を明らかにするために:地域の「中間集団」(関係基盤)への所属と、集団の関係に注目した定量的な分析。 様々な中間集団への所属(町内会・自治会、地縁集団、市民活動団体、業界団体、趣味・スポーツ関係のグループ・サークル)の所属が、地域意識や、信頼に及ぼす効果を検証する。

同時に、地域レベルの集団の布置、関連も考慮に入れることが必要。 例えば、それぞれの集団が水平的にどれほど重なり合っているのか、あ

るいは重層的な構造になっているか否か(過去と現在の所属の重なり)等。

これらの構造的要素は、集団の持つ教育機能(関係的要素)を高めたり、低めたりすることが予測される。

さらに、マルチレベル分析では、地域の特性と、所属集団の(クロスレベルの)交互作用効果を分析することも可能。→地域特性に応じて、地域への介入のポイント(や効果)が異なる可能性。 (例)例えば、大崎・辻( 2014 )は、高齢化率(マクロレベル)と、所属集団

の種類(ミクロレベル)の交互作用効果を検証している。この結果、高齢化率が高い地域ほど、町内会・自治会に所属することが健康サービスの利用度を高める影響力が強いことが明らかにされた。

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5. インフォーマルな学習を研究するための方法( 2 )

(研究 2 )インフォーマルな学習の過程を明らかにするために:地域の集団に所属し、活動する中での意識の変容を追う定性的方法。 地域の集団や、活動と関わり合う中での段階的な意識の変容を描き出す。 この方法では、主観的な「意味世界」の変容がいつ、いかなる過程で生じ

たかを回顧的に振り返ることとなる。 (例)自分史やライフ・ストーリー、その他様々なナラティヴの手法も

有用な方法であると考えられる。 ロシター( Rossiter 1999 )らが提唱する「発達へのナラティヴ・

アプローチ」を、外生的な地域の環境と照合することによって深めて行くアプローチ。

(例)比較ナラティヴ分析(三隅 2014: 183-189 ):行為の時間的連鎖をグラフ化して比較分析する方法。( 1 )行為者を「関係基盤」によって類別し、( 2 )行為を行為フェイズ、資本投下フェイズ、資本回収フェイズに3分類する、( 3 )関係構築・維持、その差し控えや瓦解を「行為」に含める方法。 このような社会関係資本の蓄積の過程(友人関係、所属集団の変化)

と、パラレルに起こる意識の変容を捉えていく。

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5. インフォーマルな学習を研究するための方法( 3 )

(研究3)インフォーマルな学習のを促進するための働き掛けを明らかにする方法:社会教育行政(施設)の介入によって、インフォーマルな学習の基盤(関係基盤)がどのように築かれ、組み替えられているのかを追う事例研究。 現在の行政とコミュニティの関係において、社会教育行政の役割とは、住民の関

係の形成を通じてインフォーマルな学習を促し、住民が関係の中で集合的に社会化されることによって、コミュニティを内的に組み替えていくことにあると考えられる。

これまで、社会教育の役割は、意図的な働きかけ(学習機会の提供)を行い主体形成を援助することに求められてきた。さらに学習の幅を広く捉えると、住民同士のインフォーマルな学習が営まれる「関係基盤」の形成に社会教育の役割を拡張して考えることができる。

ここでは、インフォーマルな学習の基盤を築くために、社会教育行政(ないし施設)はどのような介入が可能なのか、が問題となる。 行政による地域課題の設定:例えば適切な地域課題を設定し、住民のグルー

プ化を促すという方法が考えられる。学級、講座からのグループ化はその 1つの方法。

ネットワークの「連結性」を高める:既存の「関係基盤」をつなぎ直し、この基盤上のネットワークの働きを活性化させることで、新たな中間集団を創るという方法。(例)「学校支援」というテーマ設定。 17

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図 4 インフォーマルな学習へのアプローチの方法

社会関係資本の文脈的規定要因

【地域レベル】

社会関係資本の個人的規定要因

個人レベルの社会的ネットワー

個人レベルの認知的価値観

地域レベルの社会関係資本

地域レベルのアウトカム

個人レベルのアウトカム

【個人レベル】

集計社会教育行政の介入

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研究 3 社会教育行政の再編と社会的ネットワークの再編

研究 2 インフォーマルな学習の過程に関する研究(定性的研究)

研究 1 インフォーマルな学習の効果に関する研究(定量的研究)

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引用文献( 1 ) 鰺坂 学 , 2006, 「地域住民組織と地域ガバナンス」岩崎信彦・矢澤澄子編『地域社

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Page 24: 140927社会教育学会報告

謝辞

本研究は、以下の助成を受けて行われたものです。記して感謝を申し上げます。

平成 25〜 26 年度 日本学術振興会 科学研究費補助金(若手研究 B )「生涯学習を通じたコミュニティ・エンパワメントモデルの開発」

平成 25 年度 日本公民館学会研究活動促進助成「地域社会の再編と公民館の役割に関する事例研究:公民館を基盤にした『社会的ネットワーク』形成の観点から 」

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