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はじめに:外国人労働者受入れ第1章 少子高齢化と日本経済第1節 人口の推移第2節 人口減少が経済・社会に及ぼす影響

第2章 日本の外国人受入れ政策の沿革と現状第1節 日本での外国人労働者の受入れ政策の沿革第2節 日本で就労する外国人と留学生の現状

第3章 高度外国人材の受入れに伴うコスト第1節 高度人材受入れの経済影響第2節 高度人材受入れの財政影響

第4章 諸外国における外国人労働者の受入れ第1節 欧州第2節 アジア第3節 諸外国の受入れ制度のまとめ

第5章 高度外国人材を受入れるための施策第1節 高度外国人材の受入れと活用第2節 外国人労働者問題への対応

目次

2013年度 卒業論文外国人労働者受入れのあり方

「日本の社会問題の改善とグローバル化への対応」

甲南大学マネジメント創造学部学籍番号:10981047

金城ウイリアン

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外国人労働者の受入れ

は じ め に : 日本をとりまく国内外の環境は大きく変化し、そのなかで、日本の活力ある経済を維持・形成するには解決すべき課題は多い。経済のグローバル化が進み、国境を越えた商品や資本などの「モノの移動」にとどまらず、

「人の移動」も劇的に進行している。この動向は今後一層盛んになることは明らかであり、日本にもこの流れは確実に押し寄せている。国際的な競争が激化する市場環境のなかで、日本経済の高度化をはかり、競争力を

強化することが求められている。しかし、国内に目を向けると、人口減少と少子高齢化を背景にして、労働力人口が本格的に減少する時代に突入し、経済社会システムの脆弱化などの経済的、社会的問題へと発展する事

態が推測できる。このような変化の中で、日本が活力ある経済を維持・形成していくためには、あらゆる方策を検討する必要がある。経済を荷うのは人であるため、今後日本の企業にとって、必要な人材をいかに確保す

るかが、最大のキーポイントとなることは間違いない。そこで、本稿では、人口減少の緩和政策の一つとして、考えられる外国人労働者の受け入れを検討する。

 第1章「少子高齢化に直面する日本」では、人口の推移、人口減少の観点から、日本国内にどんな経済的及び、社会的影響があるのかを記述する。第2章「日本における外国人受入れ政策の沿革と外国人労働者の現

状」では、外国人労働者の受入れ政策の沿革、日本で就労する外国人労働者の割合や産業について述べる。また、留学生にも着目して、現状についてとりあげる。第3章「高度人材の受入れに伴うコスト」では、今後の

高度人材の受入れについて調べ、高度人材を受入れたさいに伴うコストなど分析し提示する。第4章「諸外国における外国人労働者の受入れ」では、アジアと欧州の諸外国の事例をもとに、各国の外国人労働者を受入れ

てきた沿革と現状を考察し、参考にするべき点をみつけていく。第5章「高度外国人を受入れるための施策」では、高度人材受入れる際に各団体が取り組むべき点を提言し、外国人労働者が抱える問題についてとりあげ

る。

第 1 章   少 子 高 齢 化 に 直 面 す る 日 本 この章では小子高齢化及び、人口減少がもたらす、経済的・社会的問題等を分析し記述する。

第1節 人口の推移

 総人口は、2005 年に戦後初めて前年を下回り、国内の人口が減少する時代に突入した。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来人口推計2006年」では、図1で示されているように、今後50年間に総人口は、現

在よりも30% 近く減少し、8,993 万人(2055 年) になると見込まれている。また、総人口の減少以上に、日本の経済社会に深刻な影響を与えるのは、生産年齢人口(15 〜64歳人口) の縮小である。図2 で示されているように、生産年齢人口はすでに1995年にピークをつけており、今後50年間に年平均で1.2%程度のペースで減少し続け、2055年には4,595 万人と、現在の半分の水準になると見込まれている。さらに、日本での高齢化の状況

をみると、図3 で示されているように、2005年時点で平均年齢は43.3 歳、65歳以上の高齢者人口2 は2,576 万人であり、総人口に占める高齢者人口の割合は20.2% となっている。これは、高齢者 1 人を現役世代3.3 人

で支えるという状況である。 今後、人口に占める高齢者の割合は上昇を続ける一方で、少子化により生産年齢人口の割合は大きく低下し

ていく。2055年には、日本の平均年齢は55.0 歳と現在よりも10歳以上高まる上に、高齢者人口は1.4 倍の3,646 万人となり、総人口に占める割合が40.5% という、超高齢社会を迎えることとなる。その結果、高齢者

1 人に対して、支え手である労働年齢人口はわずか1.3 人という極めて厳しい状況になると見込まれる。1

1 「人口減少に対応した経済社会のあり方」2008年 10 月 14日(社)日本経済団体連合会

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外国人労働者の受入れ

図 1  総人口の推移

出 典 : 総 務 省 「 国 勢 調 査 報 告 」 、 「 人 口 推 計 年 報 」 、 国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所 「 日 本 の し ょ う ら い 推 計

人 口 」 2006 年

図 2  労働力人口の推移

出 典 : 総 務 省 「 国 勢 調 査 報 告 」 、 「 人 口 推 計 年 報 」 、 国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所 「 日 本 の し ょ う ら い 推 計

人 口 」 2006 年

図 3  高齢者人口の推移と生産年齢人口との比較

出 典 : 総 務 省 「 国 勢 調 査 報 告 」 、 「 人 口 推 計 年 報 」 、 国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所 「 日 本 の し ょ う ら い 推 計

人 口 」 2006 年

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外国人労働者の受入れ

第2節 人口減少が経済・社会に及ぼす影響 急速な人口減少、高齢化は、日本経済の視点から、労働力の減少を通じた経済成長への影響に加え、国・地

方の財政や年金制度、あるいは、国民生活を支える経済社会システム全体に対し、広い範囲で深刻な影響を及ぼすと考えられる。具体的には下記で述べる。

⑴ 経済成長への影響 日本は、今後、図4で示されているように、生産年齢人口の急速な減少が見込まれる中、労働力の減少は不

可避と考えられる。しかし、若年者、女性、高齢者等国民各層の労働市場参加率によっては、その影響は大きく異なってくる。例えば、厚生労働省の試算では、今後、国民各層において労働市場への参加が進まず、2006年実績と同水準で労働力率2 が推移した場合には、今後25年程度で、労働力人口は約1,073 万人減少することとなる。一方、仕事と生活の調和を進め、若年者、女性、高齢者の雇用機会が高まれば、その減少幅は約480万人に半減すると見込まれている。しかし、2055年時点で、2030年と同水準の労働市場への参加率を維持できたとしても、労働力人口はさらに約1,820 万人減少し、その規模は現在の3 分の2 程度まで縮小してしまう。

このような労働力人口の縮小は、経済成長に影響し続けると考えられる3 。それに伴い、日本国内の財政・年金制度の危機増すことになる。現在、国・地方を合わせた長期債務残高(24年度の国債発行計画によると、国

と地方の長期債務残高は約960兆円4 )、公的年金給付は、高齢化が進むにつれ、支え手である人々の数は急速に減少(2050年には、国民の4 割が高齢者、高齢1 人を1.2 人で支える5 )、その持続可能性が問われる

状況となっている。高齢化が本格化し、支え手が大幅に減少していく中において、債務は名目額で固定されていることから、国民一人当たり、また就業者一人当たりの債務負担額はますます重くなっていく。また、医

療・介護、教育、エネルギー・水道、交通等といった日々の国民生活を支える経済社会システムを維持するためには、相応の人手や労力が不可欠である。人口減少は、このような経済社会システムにも多大な影響を及ぼ

す。国民生活の安心を直接支える医療や介護サービスへの需要は、高齢化の進展に伴い、大幅に増加することが予想される。

図 4  労働力人口の将来推計

2労働力率=労働力人口/生産年齢人口3「平成 20年度経済財政白書」(内閣府)では、人口減少の効果だけを取り出した場合、2030年頃には、日本の潜在 GDP成長率を 0.5%程度押し下げる可能性があると試算

4 財務所「我が国の財政事情」2012年 5 月 10日5「社会保障・税一体改革大綱について」2012年 2 月 17日

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外国人労働者の受入れ

出 典 : 国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所 「 日 本 の し ょ う ら い 推 計 人 口 」 2006 年

第 2 章   日 本 に お け る 外 国 人 受 入 れ 政 策 の 沿 革 と 現 状 第1章では日本の人口減少と世界で類を見ない高齢化の急速な進展という、これまでに経験したことのない事態が到来することが分かった。また、経済社会の活力低下や社会保障制度の持続可能性への危機も確認する

ことができた。今後、持続的な経済成長を実現し、また、安心・安全で活力ある経済社会システムを維持していくためには、女性、若年者、高齢者を含む国民各層の労働力率のさらなる引上げ等の対策が求められる。し

かし、冒頭で述べた様に、人口減少に対する日本の取り組みを「外国人労働者の受入」という視点から、分析を行い、取り組むべきことを提案していきたい。

 この章では、日本がこれまでに外国人を受入れてきた沿革や政策について記述する。また、国内に就労する外国人の現状についても分析する。

第1節 日本での外国人労働者の受入、政策の推移

⑴ 1950〜1990年の外国人労働者の受入れ 日本での外国人労働者受入の歴史は、今から約60年前までさかのぼることができる。1950年、外務省に入国

管理庁が設置され、1951年、「出入国管理令6 」の公布、1952年には外国人登録法が公布・施行された。当時の外国人労働者受入政策は、在日韓国人・朝鮮人、在日中国人への対応が中心だった。1960年代半ばになると、

人手不足を背景に産業界から「単純労働者7 」の受け入れが要請された。これに対して、「第一次雇用対策基本計画8 」(1967 年) では外国人労働者を受け入れないことが口頭了解された。この方針が「第二次雇用対策

基本計画」(1973 年) 、「第三次雇用対策基本計画」(1976 年) においても実行された。下の図は各産業の就業者数の推移をしめしていて、戦後には製造業やサービス業の労働需要が高く、多くの外国人労働者が流入し、

言語を必要としない単純労働に着手した。図 5

出 典 : 三 宅 忠 和 「 90 年 代 の 産 業 構 造 と 産 業 組 織 の 変 化 」

 1970年代後半には、インドシナ難民、東南アジアからの女性外国人労働者、中国帰国の二世・三世、欧米か

ら商用目的で来日する外国人が増加した。さらに、1985年のプラザ合意9 以降、円高が進行し、東南アジアを中心に日本企業の海外進出が相次いだ。その反動で日本国内では「産業の空洞化」が話題となった。ちょうど

そのころ、就労目的で南米から日系人やアジア諸国から外国人労働者が増加した。このような外国人労働者の

6日本に出入国するすべての人の公正な管理を行うことを目的とした政令。1951年公布。1982年日本が「難民の地位に関する条約」「難民の地位に関する議定書」を締

結したのに伴い、「出入国管理及び難民認定法(通称、入国管理法)」に改正・改称。7

特別な技能や経験を必要としない、だれでもできる簡単な作業をする労働者。8目的は、国が、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進すること。また、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、国民経済の均衡ある発展・完全雇用の達成に資すること。9 ドル高の是正を目的としてG5で会議が開催された名称。

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外国人労働者の受入れ

増加を受けて、「第六次雇用対策基本計画」(1988 年) では外国人労働者が「専門的・技術的労働者」と「単

純労働者」とに分けられた。このうち、専門的・技術的労働者は可能な限り受け入れるが、単純労働者については、慎重に対応する方針が示された。この方針に沿って1989年に「出入国管理及び難民認定法」が改正され、

1990年に施行された。 1993年4 月1 日から、先進国としての日本が発展途上国展途上国へ技能または知識の移転を図り、経済発展

を担う人づくりに協力する研修制度が実施された。外国人を受け入れて技術研修を行うというニーズが発生したのは、日本の経済が国際化し、多くの企業が海外に進出するようになった昭和40年代頃からである。海外進

出した日系企業が、現地法人や取引関係にある企業の社員を日本に呼び、関連する技術・技能・知識を我が国の会社の中で修得させた後、その社員が現地の会社に戻り、修得した技術等を活かして活躍することを期待し

て行ったものが始まりであるとされている。発展途上国などから来日する外国人が、技術・技能などの職種について、一定期間の研修を受けることとなった。その後、技能について所定の評価を得た者は、研修を受けた

機関( 企業など) と同一の機関で雇用関係の下での実習( 在留資格「特定活動」) を認められ、日本人と同等の待遇を受けつつ、帰国後は本人の就業及び母国の経済社会の発展に役立つ技能を修得することを目指した。

滞在期間は研修期間を合わせて3 年以内に限定。10  しかし、近年、この制度を悪用して外国人を不正に働かせるケースが増えている。国際協力や国際貢献とい

う概念で、実際には単純反復作業が中心で、単純労働者、安価な労働力の受入手段となり、人権問題に発展する問題が多数あった。研修生は、労働者に該当しないため、労働法の適用外となり、研修生に過酷な長時間労

働を強制させたり、法定の最低賃金以下で技能実習生を働かせるケースが多数みられ、制度の改革が迫られた。このような状況をふまえ、連合として入管法の快晴を求める取り組みを展開し、連合の要求がほぼ実現する内

容で、2010年7月に出入国管理及び難民認定法(入管法)が快晴され、外国人研修・技能実習制度について改正が加われた。しかし、法改正後もいぜんとして違反事例が多く、状況はほとんど変化がない。労働新聞によ

ると、監督実施54事業場の内78%にあたる42件の労働時間違反、賃金支払違反、割増賃金違反などがあった。

表 1  「外国人研修・技能実習制度」を巡る各案の立場

出典:日本経済新聞 2007年 6 月 30日朝刊「岐路に立つ外国人研修制度」

⑵ 外国人労働者に対する2000年以降の議論

 バブル崩壊と「失われた10年」という日本経済の低迷により、外国人問題も政策課題から後退したが、平成11年2 月、経済戦略会議の答申「日本経済再生への戦略」 11 で改めて再登場した。それには「少子化への対

応」として、「女性や高齢者の雇用を促進する他、外国人労働者の受け入れを拡充するために、技能実習制度の在留期間の延長等、必要な法制度を見直す」一方、「外国人移民の受け入れ拡充と国籍法のあり方について

検討する」とされた。 平成11年の7 月、経済審議会は第9 次雇用対策基本計画が策定され、翌年には第2 次出入国管理基本計画が

策定された。同基本計画では、「これからの出入国管理行政は、社会の安全と秩序を維持しながら、人権尊重の理念の下で、社会のニーズに応える外国人の受け入れを推進することにより、社会のあるべき姿の実現に貢

10 kotobank.jp/word 外国人研修・技能実習制度11「外国人政策の変遷と各種提言」清水隆雄、2005年

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外国人労働者の受入れ

献し、また日本人と外国人が心地よく共生する社会の実現を目指して行くものである」と述べられていた。な

お、平成17年に策定された第三次出入国管理基本計画の中では、「現在では、専門的、技術的分野に該当するとは評価されていない分野における外国人労働者の受け入れについて着実に検討していく」と述べられた。一

方で、厚生労働省は外国人雇用問題研究会を設置し、平成14年7 月にその報告書12 を公表した。同報告書では、外国人を受け入れる目的として、経済社会の活性化を目指した高度人材の獲得と労働力不足への対応という整

理の仕方がり、国内労働市場への影響等への対処を前提とした上で、①労働市場テスト、②受入れ上限の設定、③金銭的負担等を課す受入れ、④協定方式等による受入れ、が主張された。一方、人口減少対策として、いわ

ゆる「移民」の受入れについても検討するとされた。さらに、平成16年7 月には、外国人労働者の雇用管理のあり方に関する研究会が、日本の外国人労働者の雇用管理の現状と課題についての報告書を取りまとめて公表

した13 。同報告では、平成元年の出入国管理及び法難民認定法改正以降、日系人、留学生アルバイト、技能実習生等の就労外国人の数が増えた現実を踏まえ、外国人労働者の雇用管理に係る課題を、労働関係法令に関す

る事業主の認識不足、主に日系人を対象とする業務請負や労働者派遣において、外国人労働者を適正に雇用管理すること、短期間で入離職を繰返す外国人側の様々な問題点、一部外国人の社会保険未加入問題に整理した。

また外国人労働者の適正な管理のための支援策としては、①入管法上の在留資格、外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針、請負・労働者派遣における企業責任、制度の本旨に沿った技能実習制度の運営、行政の外

国人雇用サービスのなどの周知徹底、②外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針の改正、③外国人雇用管理アドバイザー制度の活用など事業主への雇用管理手法の提供、④情報提供等外国人労働者への支援、などを

挙げた。平成17年になると、外国人問題は規制改革・民間開放推進会議でも取り上げられようになる。 これを踏まえて、平成18年、同年9 月に開催された厚生労働省の第23回労働政策審議会職業安定分科会「雇

用対策基本問題部会」には、「雇用対策法等の見直しに係る検討課題について」14 という資料が示された。その中では、単純労働者は受け入れないという基本方針を維持しつつも、技能実習生や日系人等が我が国労働市

場で無視できなくなりつつある現状から、外国人労働者の雇用管理のあり方を定めるとともに、上記の閣議決定を踏まえ、外国人雇用状況報告の内容の拡充と義務化を考える、とされた。さらに、同年12月の同部会では

「人口減少下における雇用対策について」15 が示され、外国人労働者の適正な雇用管理の推進等が挙げられ、外国人雇用状況報告が義務化された。

第2節 日本で就労する外国人と留学生の現状

⑴ 在留資格ごとの国籍と労働者数 日本で就労している外国人の総数とカテゴリーをみると、2011年現在で約68.6 万人が働いている。それらは

4つのグループに分けることができる。1つ目は就労目的の滞在が認められている人が約12.1 万人(基本的に専門的・技術的分野で働く人々)。2 つ目が、身分に基づいて在留している人が約32万人(就労に関する制限

が無く、定住者、永住者、日系人、日本人と結婚されている人々)。3 つ目が、特定活動等という、特に認められて就労している人々で約13.6 万人(技能実習、二国間の協定で受入れている看護師や介護福祉士候補者)。

4 つ目の資格外活動が約11万人(留学生の資格で在留し、例外的に1 週間28時間の限度でアルバイトをする人々)。

12「外国人政策の変遷と各種提言」清水隆雄、2005年

13「外国人労働者の雇用管理のあり方に関する 2004年 7 月 20日研究会報告書」http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/07/h0720-1.html

14 「人口減少下における雇用対策について」15 「人口減少下における雇用対策について」

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外国人労働者の受入れ

図 6 国籍別外国人労働者の割合2011年  図7 在留資格別外国人労働者の割合2011年

            出 典 : 厚 生 労 働 省 「 外 国 人 雇 用 状 況 報 告 」 2011 年 6 月                               出 典 : 厚 生

労 働 省 「 外 国 人 雇 用 状 況 報 告 」 2011 年 6 月

 国籍別・在留資格別にみると、中国については、「技能実習」が33.8% 、「資格外活動( 留学) 」が

23.8% 、「身分に基づく在留資格」が19.6% となっている。ブラジル及びペルーについては「身分に基づく在留資格」がそれぞれ99.4% 、99.2% を占めている。なお、「永住者」については、ブラジル国籍者の40.1% 、

ペルー国籍者の55.0% を占めている。中国と比べてブラジルやペルーは1990年の難民法改正により、身分に基づく在留資格者が多く流入したことから永住者が増えた。

⑵ 外国人雇用状況報告による労働者数の分析 外国人労働者は年々増加傾向にある。厚生労働省職業安定局の推計(2008)によれば、2006年の外国人労働者数は合法的就労者数が約75.5 万人、多数が不法就労を行っていると考えられる不法残留者数約17万人を加えると92.5 万人である。この推計では10年前の1996年には合法的就労者数が約37万人、不法残留者数が約28万人

と合わせて外国人労働者数は約65万人だったとされている。16 厚生労働省の外国人雇用状況によると2011年10月末の外国人労働者数は68.6 万人と前年同期比(平成22年10月末)5.6 %増となっている。2011年は東日本大

震災後、減少したが、その後、自動車産業の増産などで労働者数が回復したと見られる。図 8  外国人労働者数の推移

出 典 : 厚 生 労 働 省 「 外 国 人 雇 用 状 況 報 告 」 2011 年 6 月

 産業別に、労働者派遣・請負事業を行っている事業所に就労している外国人労働者の傾向をみると、「製造業」では、同産業の外国人労働者全体の24.9% にあたる66,143 人、労働者派遣業を含む「サービス業」では、

同73.8% にあたる66,025 人。「製造業」の中でも、「電気機械器具製造業」と「輸送用機械器具製造業」において労働者派遣・請負事業を行っている事業所に就労している外国人労働者の割合が高く、それぞれ 44.7% (9,972 人) 、39.5%(22,225 人) となっている。

16 厚生労働省「外国人雇用状況報告」2011年 6 月に基づいて作成。

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外国人労働者の受入れ

図 9  産業別外国人労働者数     図 10 労働者派遣・請負事業所を行う

                     事業所に就労の外国人労働者の産業別状況

  

        出 典 : 厚 生 労 働 省 「 外 国 人 雇 用 状 況 報 告 」 2011 年 6 月                                 出 典 : 厚 生

労 働 省 「 外 国 人 雇 用 状 況 報 告 」 2011 年 6 月

図 11産業別外国人労働者数(1996年)

        出 典 : 厚 生 労 働 省 「 外 国 人 雇 用 状 況 報 告 」 1996 年 6 月

 在留資格別・産業別にみると、「専門的・技術的分野の在留資格」については、「情報通信業」が17.3% 、「教育、学習支援業」が16.1% 「製造業」が15.8% 。「技能実習」については、「製造業」が73.8% 。「身分

に基づく在留資格」については、「製造業」が 43.9% 、「サービス業( 他に分類されないもの) 」が21.7%となっている。

 国籍別・産業別にみると、ブラジル、ペルー、フィリピン、中国については「製造業」がそれぞれ56.7% 、52.6% 、47.5% 、36.8% と最も高い割合を占める。G8 等の国籍を持つ者については、「教育、学習

支援業」が5.4%と最も高い割合を占めている。国籍別に派遣・請負の構成比をみると、ブラジルとペルーで派遣・請負の構成比が高く、それぞれ58.9% 、49.6% と労働者の多数を占めている。17 図12は1994〜2006年まで、生産工程作業員の雇用者が増加したことを現している。これは、日系人の増加と派遣労働者の増加と比例している。つまり、多くの外国人労働者(主に日系人)は長年、単純労働(生産工程作業)で就労していることを

示していると理解することができる。

17 厚生労働省「外国人雇用状況報告」2011年 6 月

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外国人労働者の受入れ

図 12 外国人雇用者数の推移(職業別)

出 典 : 厚 生 労 働 省 「 外 国 人 雇 用 状 況 報 告 」 2006 年 6 月

 外国人労働者の雇用状況は、出身国、在留資格、職種、事業所規模などにより差異が見られ、 一律のとら

え方ができるわけではない。しかし、大まかな傾向としてみれば、入管法上は専門・技術的な職種につき外国人の入国・滞在を認める方針をとっているものの、実際には、職種に制限のない日系人や技能実習生などが生

産工程作業員 などとして就労していることが多く見られる。また、外国人労働者は非正社員の比率が高いことや、上記のような日系人を中心に、間接雇用で働く外国人が増加していることが指摘できる。

⑶ 留学生総数と卒業後の就労① 留学生総数

 日本の大学等で学ぶ留学生は、平成23年5 月現在138,075 人で、平成22年に比べ3,699 人(2.6%) 減少した。 これを出身地域別に見ると、日本の地理的、文化的状況もあり、アジア地域からの留学生が全体の約9 割を占

めている。また、日本の日本語教育機関で学ぶ学生は平成21年7 月現在42,651 人で、平成20年に比べ7,714 人(22.1%)増加した。出身地域では、中国、韓国及び台湾からの学生が全体の約8 割以上を占めている。 

図 13 大学・専門学校等の在籍者数

出典:「平成 23年における留学生の日本企業等への就職状況について」2012 月 7 月

② 留学生の日本企業等への就職状況について(平成23年)

 留学生が日本企業へ就職する際には、在留資格を変更することとなっているが、その変更許可後の在留資格

で見ると「人文・国際」が70.0% と最も多く、次いで、「技術」の 19.5% 、「教授」の4.9%となっており、

出身国や母国語と関わる仕事に就く留学生が多い。また、職務の内容としては、「翻訳・通訳」が29.6% 、次

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外国人労働者の受入れ

いで「販売・営業」が22.9% 、「情報処理」が6.9%となっており、語学力を活かした職業に就く学生が多い。

職種別の在留資格変更許可人員をみると、約73%が非製造業となっており、製造業よりも約3 倍の数となって

いる。多くの留学生は、日本に留学をする目的として就職に必要な進んだ技術や知識を身につけることを目的

としている。一方、留学生の卒業後の進路については、修了する教育課程が高くなるに伴い、出身国( 地域)

に戻る傾向がある。在学中の留学生の約 60%が日本における就職を希望しており、その半数が、貿易業務や

海外業務を希望していることより、卒業後も日本で学んだ技術や知識を用い出身国( 地域) と日本との橋渡し

となる仕事に就きたいと考えている留学生が多いと考えられる。

図 14 変更許可後の在留資格構成比         図 15 変更許可後の在留資格構成比

          

出典:「平成 23年における留学生の日本企業等への就職状況について」2012 月 7 月

第 3 章   高 度 外 国 人 材 の 受 入 れ に 伴 う コ ス ト 外国人労働者の受け入れ問題に関しては、積極派と消極派に分かれる。積極派の見解としては、①人口減少の解決策として外国人を受け入れる。②特定分野での労働力不足の解決策となる。③外国人の本国への送金に

より国際貢献ができる。④外国人が日本企業で働くことにより、技術移転が可能となると指摘している。その一方で、消極派の論拠は、①外国人労働者が入ってくると、国内に定着して失業率の上昇を生じさせ、雇用条

件の悪化を導く。②人手不足を雇用条件の改善策に生かすべきである。③製品を購入するわけではないので、送り出し国の発展に繫がらない。④定住化を招き、人種の対立を生じさせる可能性があるなどの論拠を挙げて

いる。 それらの議論がある中で、日本経済団体連合会は「少子高齢化、人口減少、持続的な経済成長を確保してい

くために、移民先進国である米国を強く意識しながら、移民政策ならびに関連する制度の改善・見直しに努めている」 としている。また、欧州先進諸国の例も参考にしつつ、高度人材に加え一定の資格や技能を有する

人材を中心とする幅広い層の労働者を受入れ、さらにはその定住化を図っていくという観点から、関係省庁が一体となって施策に取り組む体制を整えるとともに、関連分野の法制面の整備などを含めた、総合的な「日本

型移民政策」を本格的に検討していく必要があるとしている18 。また、表2 で示されているように、2010年6

18 日本経済団体連合会「人口減少に対応した経済社会のあり方」2008年 10 月 14日(社) 11

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外国人労働者の受入れ

月に閣議決定された新成長戦略や規制・制度改革に係る対処方針の中では、高度人材の受入れの促進が重要施

策として位置づけられている。高度人材の定義として、「経済財政改革の基本方針2008」では、就労が可能な在留資格のうち、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知

識・国際業務、投資・経営、企業内転勤、技能をさしている。 また、産業構造審議会産業競争力部会報告書「産業構造ビジョン2010」においても、高度人材の必要性を述

べ、さらに高度人材受入れ促進のための一方策として、高度人材の在留の安定化を図るための優遇措置や入国の円滑化のための措置を速やかに組み立てることが重要であると指摘している。19

表2  2020年における高度人材の産業別、年齢別分布の想定

出典: 株式会社日本総合研究所「高度人材受入れの経済的効果及び外国人の社会生活環境に関する調査」2011年2月

 日本は2020年までに、2009年度の2 倍にあたる高度外国人材をうけいれ、高度外国人材になりうる質の高い外国人学生は1.5 倍の数を受入れることを目指している。これらから、政府、政党、経済界、労働界が外国人

の受入に対して、肯定的立場を示していること読み取ってとれる。しかし、それらの労働者を受入れることで、日本の経済や財政にどのような効果を及ぼすのか理解する必要がある。

 経済産業省は日本総合研究所に、高度人材受入れの経済的効果及び外国人の社会生活環境に関する調査を委託した。

第1節 高度人材受入れの経済影響20

 高度人材の受入れは、人口減少、少子高齢社会の中でも、日本が活力ある経済を維持していくために必要な施策として位置づけられている。その際に、高度人材の受入れによる正の効果は、①高度人材の能力を活用し

た新たな成長産業の創出。②生産性向上による高い付加価値の創造であると指摘されている。それらにより、国全体の生産額や付加価値額が持続的に増加していくことと期待されている。一方で、高度人材を受入れ、そ

の活力を十分に引き出すためには、彼らが長期に安定的に滞在できる社会的な仕組みが必要であり、その環境整備に必要となる社会的コストを負担していく必要性も生じる。この前提に基づいて、高度人材の受入れによ

り期待される、経済の財政面における効果と受入れに必要な社会的コストについての推計を行った。その報告書によると高度人材が与える影響について以下のことが分かった。

 表3 でみるように現在、日本国内で生活する「高度人材」の生産活動による経済波及効果( 生産影響・付加価値影響) は生産額で7.2 兆円から9.5 兆円、付加価値額では3.7 兆円から4.9 兆円と推計された。これは日

本全国の生産額及び付加価値額の約0.7%〜1.0%となり、高度人材の人数(全従業者の「0.3%」)からすれば、高い経済効果となっている。また、今後10年間に高度人材の受入れを現状の2 倍とした場合、全国の付加価値

額の約1.5%〜1.9%程度の経済効果が想定される。さらに、表4 でみるように雇用効果の視点からも、現状から「約20万人から最大約27万人」の雇用創出効果があるものと想定される。

19 株式会社日本総合研究所「高度人材受入れの経済的効果及び外国人の社会生活環境に関する調査」2011年2月20 株式会社日本総合研究所「高度人材受入れの経済的効果及び外国人の社会生活環境に関する調査」2011年2月

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外国人労働者の受入れ

表3 「高度人材」による生産影響額・付加価値影響額(2020 年)

出 典 : 株 式 会 社 日 本 総 合 研 究 所 「 高 度 人 材 受 入 れ の 経 済 的 効 果 及 び 外 国 人 の 社 会 生 活 環 境 に 関 す る 調 査 」

表 4  「高度人材」による雇用影響(2020年)

出 典 : 株 式 会 社 日 本 総 合 研 究 所 「 高 度 人 材 受 入 れ の 経 済 的 効 果 及 び 外 国 人 の 社 会 生 活 環 境 に 関 す る 調 査 」

第2節 高度人材受入れの財政影響

 高度人材受入れによる所得、消費の増加にともなう、財政収入の増加効果は、税収(所得税、住民税、消費税)、および社会保険料収入( 年金保険料、健康保険料、雇用保険料) の増加分である。その推計効果による

と、現状の高度人材の受入れによる財政収入の増加効果は、税収額が1,297 億円から 1,992 億円、社会保険料収入額が2,687 億円から3,457 億円と推計された。将来、高度人材の受入れを拡大した場合には、高度人材

の人口増加率と同様に財政収入の増加効果も倍増することになる想定されている。 一方で高度人材の受入れにともなう、財政支出は、外国人が一市民として生活していく上で必要となるコストと外国人として生活しい

くにあたり特別に必要となるコストである。推計効果によると、現状の高度人材の受入れによる行政コストは、1,536 億円と推計された。将来、高度人材、の受入れを拡大した場合には、高度人材の人口増加率と同様に、

行政コストも倍増することになると想定されている。 図16でみるように、財政収入と支出の推計を比較すると、現状の高度人材の受入れによる財政収入の増分は

2,724 億円であり、財政支出の増分は1,536 億円であったため、1,188 億円のプラスと推計された。そのため、将来、高度人材の受入れを拡大した場合には、高度人材の人口増加率と同様に、財政収支のプラス効果も倍増

することになると想定される。

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外国人労働者の受入れ

図16「高度人材」の受入れにともなう財政収支(2009 年)

出 典 : 株 式 会 社 日 本 総 合 研 究 所 「 高 度 人 材 受 入 れ の 経 済 的 効 果 及 び 外 国 人 の 社 会 生 活 環 境 に 関 す る 調 査 」

 上記の分析結果から外国人労働者の受入は日本にとってメリットをもたらす見解が得られた。同時に、各団

体の取り組と提言から、日本は長期に渡って外国人労働者を受入れ、定着に育むことを目指していることが分かる。客観的にこの指標が正しかった場合、日本のおかれている立場からすれば、外国人を受入れるメリット

はおおいにあると考えることができる。ちなみに、外国人労働者及び、移民の受入れが経済成長にプラスの影響を与えることは、各国のほぼ共通の見解である。図17でみるように、欧州委員会の調査・分析結果によると、

2000年から2005年までのEU15 ヵ国の実質GDP成長率2% のうち、0.4%が移民(外国人労働者)の純流入による成長であるとされている。つまり、GDP成長率の約20%が移民の寄与分となる計算である。

図 17 EU15 ヵ国における経済成長の寄与度分解(2000 〜2005年)

出 典 : 欧 州 委 員 会 資 料 「 The impact of migration on economic growth 」 2006 年  

第 4 章   諸 外 国 に お け る 外 国 人 労 働 者 の 受 入 れ 本章では、日本の外国人労働政策を考えるために、各国の外国人労働政策ないし移民政策を考察する。

 図18、19は欧米と日本を高度人材労働者及び、外国人労働力率で比較したデータである。日本国内の外国人労働者率は1 %前後を記録しているのに対して、G5 でもっとも低い英国でさえ6 %近い比率となっている。

また、日本は外国人労働者にしめる高度人材労働者率は0.1 %であり、最も低い比率をしめている英国と比較すると3.9 %の違いがある。もちろん、日本を除く国々は昔から多くの移民を受入れたり、植民地であった国

からたくさんの労働者を雇ってきた。そのため、G 5内で比較するのは理にかなっていないかもしれない。しかし、ここで重要なのは、日本が他国にどれだけ突き放されているかを理解することである。同時に、それら

の国がどういった受入れの政策を実施してきたのかが比較することで、日本独自の政策をつくるための参考材料にすることができる。

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外国人労働者の受入れ

図 18 高度人材労働者         図 19 外国人労働力率の国際比較

                           に占める外国人比率    (%)

    出典:OECD, Science, Technology and Industry Scoreboard 2005独立行政法人労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較 2007」第一生命経済研究所作成

第1節 欧州諸国

 ドイツ、フランス、オランダでは、1960年代の労働力不足対策としての外国人労働者受け入れ政策から、1970年代の石油危機を境に、就労目的の外国人受け入れを停止し、帰国促進政策へ転換した。しかし、帰国政

策は成功せず、外国人労働者達の家族呼び寄せが進み、定住化に至った。結果として、各国政府が意図した外国人労働者の削減にはならなかった。一方、イタリアでは、労働者を供給する送り出し国から、70年代後半に

はいると、受け入れ国の政策が受け入れ停止に転換したため、送り出し国から受け入れ国に転換。そのため、外国人移民が増加した。現在のEU 主要国の政策は表3にまとめることができる。21

表 5  EU 主要国の労働者移動制限への対応

出 典 : 日 本 経 済 新 聞 、 2007 年 1 月 6 日 、 朝 刊

 しかし、欧州連合の中でも「旧加盟国」15カ国は、高度熟練労働者の不足が深刻化している。また、EU 域内での人の移動が少ないことを指摘している。EU 加盟国の国民で、自国以外のEU 加盟国で実際に働くEU市民は全体の2% 以下である。こうした、域内の移動の低い水準の理由として、他の加盟国で就労する場合、異なる言語や教育、社会保障および年金制度などに適応しなくてはならない苦労があるからである。22

 欧州連合域内の現在の人口に占める移民の割合は6% 前後に達していて、最も多いのはルクセンブルクで、人口の約3 分の1 が外国人で占めている。比較的古い移民受入国であるフランス、ドイツ、英国などの国は、

人口に占める移民の割合が10% 前後だが、第2 世代も含めると、多くの国で20% 近くを上回る。南欧では、人口に占める移民の割合は5% を超える国はない( ギリシャを除く) とのことである。 EU25 カ国の労働力人口は、2030年までに現在の3 億300 万人から2 億8,000 万人にまで減少する一方、65歳以上の高齢者人口は、2000年の7,100 万人が、2030年までには1 億 1,000 万人に急増し、高齢依存率23%から40%へと倍増するとEU は推計している。このため、EU は20世紀後半までの「ゼロ移民政策」から、「共通のフレームワークによる秩序ある流入管理」へと政策転換を図っている。移民の受け入れ及び統合を、

21労働政策研究・研修機構「欧州における外国人労働者受入れ制度と社会統合を展望する」 (2006)

22 Entzinger (2007)“The Social Integration of Immigrants in the European Union”, JILPT International Symposium ‘Migration Policy and Society in Europe’-Social Integration for Migrant Worker-Tokyo,17, January2007.

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外国人労働者の受入れ

多面的なアプローチ( 入国管理、統合政策、差別の除去、不法移民対策、加盟国民及び第三国民の雇用ギャッ

プの削減) で取り組んでいる。23

⑴ドイツ

 1973年に導入された外国人労働者募集停止規定を維持しているため、外国人労働者の就労目的の入国と滞在は、特定の労働や資格に対してのみ許可されている。就労許可は、連邦雇用エージェンシーが労働市場への影

響や、ドイツ国民、欧州連合(EU)市民を優先するなどの要件を考慮して行っている。高度な技能24 を持つ外国人労働者は、連邦雇用エージェンシーの許可なしに、無期限の定住許可が与えられる。また、3 年以上の職業

教育を必要とする技能労働への外国人の就労は、就労法令、就労手続法令に規定されている場合に認められる。2004年に EU に新規加盟した中東欧諸国の国民は、ある一定の職に適したドイツ人または同等の資格を持つ

候補者がいない場合のみ、その職に就くことが許可される。ただし、EU 新規加盟国の国民は、非EU 加盟国の国民より優先される。25

 就労法令により就労は、次の4 つに区分される。第1 は、「許可を必要としない就労」で、労働市場における優先や労働条件に関するチェックが免除されている。第2 は、「許可を必要とする就労」で、「職業教育を

前提としない就労」( 季節労働, 家事手伝いなど) 「3 年以上の職業教育を前提とする就労」( 外国語教師,IT 技術者, 管理職, 専門職など) に分けられる。第3 は、「その他の就労」で、連邦雇用エージェンシー

が労働条件についてはチェックするが、労働市場における優先チェックが免除される。第4 は、「2 国間協定に基づく就労」である。26

 ドイツでは、移民や移民の2 世、3 世の失業率が著しく高く、外国人子弟の教育水準の低下が深刻な問題となっている。こうした問題に対処するために、新移民法には, 合法的移民のドイツ社会への統合化を促進する

ための統合コースに関する規定が盛り込まれた。統合コースは、原則として、ドイツ語の話せない新規移民に対して義務化されている。また、過去に入国した移民も統合コースを受講する権利を有している。その統合

コースの内容は、600 時間のドイツ語教育コースと、30時間のドイツの歴史・文化・法律等を扱うオリエンテーションコースで構成されている。

⑵イギリス イギリス政府は2005年以降欧州経済地域外からの移民の受け入れに対する規制を強める方向に政策転換した。

07年に新受け入れ制度を開始し、入国を希望する移民を5 段階に構造化し、受け入れの審査には年齢、職歴、学歴などを点数化し、その合計点数に応じて可否を決定するポイント制が導入されている。国際間の流出入は、

05年は入国件数56万人、出国件数38万人で約18万人の入国を許している。就労目的の入国許可の発給件数約40万件のうち, 約7 万件が労働許可に基づくものである。

 新制度は移民を5 層に分類している。第1 層は、従来受け入れてきた高度な技能を有する労働者( 医師や金融専門家など) である。この資格で入国した場合、一定の期間イギリス国内に滞在すれば永住権取得の機会が

与えられる。第2 層は、従来労働許可の枠組みで受け入れに相当する。この資格で入国した場合、5 年間の就労ののちに語学試験と市民資格試験に合格すれば家族とともに英国に定住することが認められる。第3 層は、低熟練労働者にあたる。国内での人材不足が著しい特定職種に限り、数量を限定かつ短期間受け入れる。この資格で入国した場合、期間終了の段階で出国しなくてはならず、滞在する道はない。第4 層は、学生で、第5層は、短期非定住者: 商用、文化交流事業などで入国する者( ワーキングホリデー) となっている。不法滞在者対策の強化が強く打ち出されており、第2 層から第5 層の移民を受け入れる企業および教育機関に制度運用

の監視者としての責任を求めると同時に、不法入国労働者を雇用した場合は2,000 ポンドの罰金を科す規定が

23 労働政策研究・研修機構(2004)「外国人労働者問題の現状把握と今後の対応に関する研究」労働政策研究報告書24 特別な専門知識をもつ学者、卓越した地位にある教授や科学者、公的疾病金庫保険に加入できる上限額の 2 倍以上の所得がある特別な職務経験を有する専門家や幹部職員。25 労働政策研究・研修機構(2004)「外国人労働者問題の現状把握と今後の対応に関する研究」労働政策研究報告書26 労働政策研究・研修機構(2004)「外国人労働者問題の現状把握と今後の対応に関する研究」労働政策研究報告書

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外国人労働者の受入れ

盛り込まれている。27

第2節 アジア

⑴台湾 台湾は国内労働力不足の解消のため、1989年以降外国人労働者の受け入れを行っている。タイ、フィリピン、

インドネシア、マレーシア、モンゴルと言った国々と2 国間協定に基づいて、単純労働者を受け入れている。就労期間は最長3 年間である。外国人を受け入れる場合、国内の雇用確保を前提とした労働市場テストが行わ

れる。加えて、各企業に外国人労働者の構成割合に上限を設ける雇用上限率を設定している。 製造業は行政院経済部で雇用申請を行う。看護・介護は、医師による審査に通った案件のみ外国人労働者の

雇用申請できる。各種審査後、募集ポストの職が国内労働市場では充足できなかったことを証明( 労働市場テスト) した後、行政労工委員会による外国人労働者雇用許可の発給がなされる。

⑵韓国 1991年11月に「産業技術訓練生プログラム」を導入した。しかし、日本の「研修制度」と同様に、この職業

訓練生プログラムに参加している外国人は、公式には「従業員」ではなく「訓練生」と分類されるため、韓国の労働法に基づく保護を受ける権利を満たしていないとの批判を受けて、2007年1 月に廃止された。

 外国人労働者の半分程度が不法就労者である。こうした状況の中、2003年8 月「移民労働者に対する労働許可に関する法律」を制定し、その結果、未熟練労働者を「訓練生」としてでなはく、「従業員」として雇用す

ることができるようになった。この制度では、製造業、建設業、農牧業、およびサービス業の6 分野( 飲食業、ビジネス支援業、社会福祉、清掃、介護、家事) に属する従業員300 人未満の雇用主は、国内で労働者が見つ

からない場合、労働部から許可を得た上で外国人労働者を雇用できる。雇用契約期間は原則1 年間であるが、3 年間の延長が可能である。受け入れ可能な外国人労働者の人数は、外国人労働者政策委員会によって決定さ

れる。また、韓国政府は、先端技術の分野における有資格の高技術労働者の受け入れを積極的に行っている。28

⑶シンガポール 自国民に対する教育訓練・職業訓練を推進する一方で、外国人就労を受け入れるオープンドア政策を常に採

り入れている。特に高度な技能や資格を持つ労働者はシンガポール経済の競争力と活力を維持するうえで、不可欠であるとの認識に立ち、積極的な受け入れが行われて来た。就労を希望する外国人は、雇用許可あるいは

労働許可を取得しなければならない。雇用許可は、企業や投資、熟練労働者などの技能を有する労働者を対象としているのに対して、労働許可は、一定職種における単純労働を行う労働者に対して発給される。雇用許可

および就労許可を得て入国する外国人労働者には就労パスが発給される。このうち人材省雇用許可局が発行する雇用パスは、業種と月給額によって3 種類に区別されている。雇用パスは、初回の申請に対して最長2 年間の発行が可能である申請者は合法的に雇用を継続されている場合、各回、3 年間の更新を継続できる。雇用パスの保有者は、雇用期間の上限がないため、退職年齢までシンガポールで働くことが可能である。29

第3節 諸外国の受入れ制度のまとめ

 グローバル化の進展で、世界市場での激しい競争を勝ち抜くために、国境を越えた人材の確保が必要であると同時に、国を担う為の人材の重要性の高まりも高度外国人材の取り合いを加速させている。上で述べたよう

に、先進国では、日本同様、少子高齢化の進行による国内労働力の不足への危機感もあり、近年、「選択的な外国人受入れ政策」が潮流となっており、特に高度な技術や知識を持つ外国人労働者を積極的に招き寄せるた

めに様々な制度が運用されている。欧州各国においては、高度な技術や知識を有し、各国の経済や科学に寄与

27「人口減少と外国人労働政策」東海大学政治経済学部紀要第 40号(2008)、小 敏男﨑

28 ユー(2006)「韓国:雇用許可制度を導入」http://www.jil.go.jp/foreign/labour_sys-tem/2006_3/korea_01.htm.29 「人口減少と外国人労働政策」東海大学政治経済学部紀要第 40号(2008)、小 敏男﨑

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外国人労働者の受入れ

する人材に対して永住権付与の可能性等のインセンティブを与え、受入れの促進を図っている。また、欧米諸

国だけでなく、アジア諸国間でも競争が激化しており、特に韓国とシンガポールが国を挙げて高度人材を積極的に受け入れている。さらに、インドなど人材を供給する側であった国も経済成長を経て、高度人材の流失に

阻止し、高度人材の競争が増している。こうした中で欧米の企業は早くから、中国やインドの高度人材に注目してきた。人材獲得の波は大学にまで及んでおり、欧米企業は、現地の大学に入り込み、優秀な学生を在学中

に確保し、社員予備軍として自ら育てるという取組みを行っている。表 6  各国における外国人就労許可方法

出 典 : 経 済 産 業 省 「 諸 外 国 に お け る 労 働 受 入 れ 政 策 」 2009 年

第 5 章   高 度 外 国 人 材 を 受 入 れ る た め の 施 策 第3 章では、日本が今後実施する政策を確認したと同時に、日本経済にとって高度人材の受入れは日本にメリットをもたらすことが分かった。4 章では、欧州とアジア諸国の事例を紹介し、それぞれが自国に適した政

策を実施しながら、試行錯誤を繰り返して取り組んでいる実態を探ることができた。しかし、日本の目指す受入れは計画通りに進むのだろうか。外国人を迎え入れる準備ができているか不透明である。第5 章では、日本の高度人材受入れが成功するために取り組むべき点と問題をとりあげる。 第2 章でみたように日本に住む外国人労働者を取り巻く環境は厳しく、不安定雇用、終身派遣・請負、社会

保障の未加入、不十分な日本語教育、差別などの壁が立ちはだかる。現状として、日本が受入れたい高度人材の労働者は現時点(2011年度末)で、約18%人しかいない。それに対し、国内で働く単純労働(技能実習生を

含む)は約65%に及ぶ。外国人の受入れが良い悪いはともかく、日本は高度外国人材を受入れる前に、2つの課題に取り組む必要があると感じた。1つは、これから受入れる高度外国人材を効率的に活用し、定着しても

らうための明確なシステム作り。2つ目は、これまでに受入れた外国人労働者の問題改善。双方は互いに密接した関係であることは間違いない。なぜならば、現在、国内の外国人労働者問題は今後受入れる高度外国人材

の問題に転じる可能性がある。この観点から、この章では、①高度外国人材の受入れと活用するために取り組むべきこと。②国内で抱える外国人労働者問題への対応について記述する。

第1節 高度外国人材の受入れと活用

 高度外国人材は積極的かつ継続的を受け入れていくことが重要である。高度人材を積極的に受け入れるためには、在留資格制度の法的緩和などの柔軟な対応を進めていくべきである。また、将来の高度人材の卵である

留学生の受入れる数を大幅に拡大していくことが不可欠である。政府は、既に2020年を目途とする「留学生30万人計画」を公表し、優秀な留学生を戦略的に獲得し、その定着につなげていくこととしている。また、日本

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外国人労働者の受入れ

での就業を希望する外国人留学生が、引き続き日本国内で就職し、また定着していけるような環境整備に努め

る必要がある。ドイツ等の欧州先進諸国では、自国で学んだ留学生が北米等に流出し、結果として競争力の低下につながった経験を反省し、外国人留学生を国内に留めるべく、就業活動のための滞在許可の延長等、制度

面での改革を推進している。日本においても、留学生の就職支援、就職活動のための在留期間の見直しなどを進めていくことが重要である。

表 7  近年の日本企業の高度外国人材の受入れ事例

出 典 : 「 外 国 人 労 働 者 問 題 : 日 韓 比 較 」 独 立 行 政 法 人 労 働 政 策 研 究 ・ 研 修 機 構   JILPT 海 外 労 働 情 報   2012 年 9

⑴ 受入れた外国人材の活用と定着に向けた施策  既に就労している外国人材や、今後、受け入れていく外国人材の定着を目指していく観点からは、外国人と

日本人が共に、双方の文化・生活習慣の違いを理解しつつ、同じ地域社会の中で支障なく生活をしていくことが可能となるような環境づくりを進めていく必要がある。また、外国人は日本語能力が十分でないことから生

じる地域社会との摩擦、また、義務教育年限の外国人の子供の不就学、不安定な雇用等の問題がある。生活者としての外国人を支援するとともに、こうした問題を回避するために、民間企業、地方団体、教育機関等が連

携して、外国人のための住宅の確保や、外国人向けの情報提供の充実や生活相談、また外国人自身やその子供に対する日本語教育の強化等、地域における受入れ体制の整備をさらに進めていくことが求められる。また、

受け入れた外国人が安心して生活・就労できるようにするために、医療、年金等の社会保障制度を改善など、政府・自治体による積極的な支援措置が必要である。さらに、就職先となる企業においても、日本社会への定

住を希望する者に対しては、教育、雇用、社会福祉などの社会統合政策を通じて、日本の文化や社会への理解を深め、日本語能力の向上を図った上で、永住権の積極的な付与など、法的地位を安定化していくことが求め

られる。① 企業が取り組むべきこと

a.  高度外国人材に期待する役割を明確化 高度外国人材に対して期待する役割を明確化することは、企業の採用において的確な外国人材を選定す

ることに役立つだけでなく、活用においても働く外国人のモチベーションを高め、企業にとっても優秀な人材の確保につながり、お互いにメリットをもたらす関係を築ける。もちろん、業種や企業に規模によっ

て採用や役割が異なるため、高度外国人材の活用を一律に決めることはできないが、それぞれの企業の置かれた状況に応じた最適なあり方を模索することが重要である。

b. 要求する日本語能力の期待の多様化 「企業における高度外国人材活用促進事業報告書」によると、日本語能力の問題は高度外国人材の活用

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外国人労働者の受入れ

における最大の問題点と指摘している。メーカーの技術職では、テクノロジーという共通言語のもとで、

高度な日本語能力を必要としない企業もあるが、国内の取引先を中心とした営業職の場合、日本人と同等の日本語能力レベルがないと活用しにくいという事情もあり、職種により求められる日本語能力は異なる。

高度外国人材の活用が進んでいる企業では、職種により異なる日本語能力の水準を設定して、採用、活用を行なっており、職種に即した活用促進策の好事例もある(ファーストリテイリング、楽天)。しかし、

日本企業で働くためには、日本語能力は重要な要件であることには変わりないため、職場における高度外国人材への日本語研修を継続的して行うことも必要である。日本語ができない高度外国人材でも、毎日研

修を行うことや、半年から1 年程度の間、数時間程度、研修を行うことで、ビジネスで困らない程度の日本語会話能力を育成することが出来ているケースが存在する。受け入れる側の日本人材が、コミュニケー

ションをとり、日本語能力を身につけてもらうように、細かい対応をしていくことも必要である。図 20 採用時の日本語能力の重視度

出 典 : 株 式 会 社 富 士 通 総 研 「 企 業 に お け る 高 度 外 国 人 材 活 用 促 進 事 業 報 告 書 」 平 成 23 年 3 月

c.  日本人社員のグローバル化の推進と組織の国際化を進める 受け入れ企業の組織が、外国人や異文化に対する受け入れる体制が備わっていれば高度外国人材の活用

がうまくいくと思われる。例えば、言語面でいえば、国際的に通用する英語でのコミュニケーションをとるこができる組織であること。日本文化に染みついている「以心伝心によるコミュニケーション」にもと

づく組織ではなく、直接的な表現をしなければ、相手から内容を理解してもらえない、価値観が異なる多様な人材をマネジメントできる組織であることも重要。英語でのコミュニケーションや、価値観が異なる

多様な人材のマネジメントは、すぐにできるものではないが、高度外国人材の活用に先進的な企業(ファーストリテイリング、楽天など)では社内の公用語を英語にしたり、外国人が一人でもいると会議

を英語にするなどの取組や、就業規則や、重要文書を多言語化することが組織の国際化に繋がる。② 行政が取り組むべきこと

 日本において高度外国人材が活躍するためには、企業における採用、活用、維持などの制度や社会的な環境整備が必要である。外国人材が安心して働くことができるため、託児所の整備などの子育て支援や、外国人材

の子供が日本の学校になじめるような支援など、行政による支援が必要である。特に、高度外国人材が地域で安定した生活を行うためには、自治体レベルでの、より生活に密着したサポートを強化することが必要である。

現在でも先進的な自治体で実施されているような、年金に関する情報を外国語で提供することや、役所内に外国人生活支援のための外国人生活相談コーナーを設置することなどが必要である。また、学校においても、外

国人子供向けに日本語の補習授業を行ったり、英語や中国語、ポルトガル語などでの授業を用意したりする支援策も、高度外国人材の日本での生活の不安をなくすものとして必要である。国レベルでは、外国人の活用に

対して否定的な企業は、高度外国人材活用において障壁を克服した事例集や高度外国人材の採用・受け入れなどに関してのマニュアルの提供などが必要である。また、日本の高度な技術国のアピールや、日本における高

度外国人材活用の施策を広く国外や留学生に発信することも必要である。③ 大学等が取り組むべきこと

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 留学生が日本で就労し、国内に定着してもらうためには大学等の取り組みが第一である。留学生を対象とし

た就職説明会の開催やインターンシップの受け入れ等を実施し、高度外国人材を雇用している企業の中でさえ、留学生を採用している企業は20% 前後であり、まだまだ少数である。企業側は大学等に、企業の一般的な紹介

だけではなく、業種ごとの違いや、企業ごとの文化を踏まえて留学生にアドバイスを提供すべきであるという意見がある。30 企業によっては、大学等と緊密に連携して、求める外国人材の能力やスキル等を大学等と企業

側で共有することでマッチングの成果を挙げている事例もあり31 、今後は更に大学等と企業が連携を深めて、高度外国人材になりうる留学生の、就職を促進できる体制を構築することが重要になると考えられる。そのた

めには、大学等は留学生の支援策として、学習支援や生活支援に加え、就職支援を重点的に取りくべきである。また、企業で国際経験があり、企業とはどのようなものであるかを知っている人材を留学生の指導者とするこ

とも有効である。留学生の就職を支援するために、大学側からも積極的に企業と情報交換を行い、日本企業が求める人材像や要件などについて、きめ細かく留学生に情報提供することや、大学として、インターンシップ

先を開拓するなど積極的に留学生支援を行うことが必要である。

⑵ 高度外国人材を育てる 外国人高度人材は2つの方法によって生み出すことができる。1つは海外から高度人材を受入れる方法。2

つ目は、国内にいる外国人児童を育てること。前方は、言語や文化の違いから生じる摩擦と国の政策によって左右される。また、彼らを日本の企業でどうやって活かすかが最も重要な事実であることは間違いない。その

為、日本の企業及び社会がどういった準備や対応ができるかで、分岐点になる。後方は、具体的に説明すると、国内にいる日系や他国のルーツを持つ外国人児童生徒を育てること指している。現在、日本では外国人児童生

徒は毎年増え続けており、教育制度をはじめ、社会的に彼らをサポートすることができれば、将来、日本が必要としている高度外国人材に育て上げることが可能となる。下記では、外国人児童生徒の在籍状況と、日本

(学校)が彼らに対して取り組むべきことを記述する。①在籍状況

 1990年の「出入国管理及び難民認定法」の改正以来、日本の学校に外国人児童生徒が急速に増加した。両親の就業や留学、その他の理由により来日、あるいは帰国した外国人児童生徒にとっては、日本学校の日本語は

初めて学ぶものであり、学校生活そのものに困難を招く。このように、日本語で日常会話が十分にできない児童生徒や日常会話ができても、学習するための言語能力が不足し、学習活動への参加に支障が生じている外国

人児童生徒数は多く存在する。図21でみるように現在、公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒は、28,511 人(2010年)。児童生徒の在籍は、現

在のところ、小・中学校が中心で、全体の92.5% に達する。また、日本語指導が必要な児童生徒の母語別の集計によると、全体では、ポルトガル語、中国語、スペイン語を母語とする児童生徒が7 割以上を占めている。

これにフィリピノ語、韓国・朝鮮語、ベトナム語、英語を母語とする児童生徒を加えると、この7 言語で全体の9 割以上を占める。

30 株式会社日本総合研究所「高度人材受入れの経済的効果及び外国人の社会生活環境に関する調査」2011年2月

31 株式会社日本総合研究所「高度人材受入れの経済的効果及び外国人の社会生活環境に関する調査」2011年2月

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図 21日本語指導が必要な外国人児童生徒数の推移

出 典 : 文 部 科 学 省 「 日 本 語 指 導 が 必 要 な 外 国 人 児 童 生 徒 の 受 入 れ 状 況 等 に 関 す る 調 査 」 2011 年

②外国人児童生徒を受入れる学校の課題

 日系ブラジル人として高校1 年生から7 年間の生活と、外国人児童生徒に日本語を教えるサポート団体の経験へて、外国人児童生徒を受入れる学校が抱える3 つ課題を認識することができた。

a.  学校全体の児童生徒の指導 まず、外国人児童生徒が、所属する学級での学習活動に参加できるようにするためには多くの支援が必

要である。学びの場は、在籍学級にあるため、そこで児童生徒が安心して学び、生活できることは非常に重要である。外国人児童生徒が学級で受け入れられるためには、まずもって、先生方の異文化理解、国際

理解、人権の尊重などの教育が必要である。サポート団体にくる児童の多くが学校内の先生に「母国の文化をバカにされた」という話は珍しくない。

b. 学校の受入れ体制づくり あらかじめ、所属する学校に外国人児童生徒がいれば、ある程度の学校側も指導や通訳等の対応はでき

るが、初めて外国人児童生徒を受入れる場合、教育の指導が大幅に遅れることがよくある。学校に外国人児童生徒が一人でも在籍していれば、日本語指導をはじめ特別な指導が必要となる。しかし、学校の受入

れる体制は地域や都道府県によって格差が大きいため、受入れが整っていない学校では外国人児童生徒の未就学に繋がる。サポート団体にくる児童の中に、半年日本学校に通っても、カタカナ1つ読めなかった

りする現状もある。そのため、学校はいつでも児童を受入れる体制を構築する必要がある。また、学校の体制構築には、近隣の学校や市区町村の学校との連携を図ることで、その効果を効率的に上げることでき

る。PTAにおいても、異文化理解講座や異文化間交流の機会が設けられることで、様々な教育環境を築くことに役立つ。

c.  外部からの支援の活用 外国人児童生徒を受け入れるための校内体制を整備するには、教職員の努力は不可欠であるが、学校外

での教育の環境づくりについても取り組むべきである。学校内の様々な教育活動において、学校外部の指導協力者や講師などを招き、外国人児童生徒への効果的な指導に当たることが重要である。実際に双方の

言語が話せる、指導協力者が児童生徒に対して母国語で補講をすると、他児童よりも日本語の習得が早いという分析もある。同時に、母国語も勉強することにより、バイリンガルに育つ児童生徒が育つ傾向があ

る。 それらの支援を行うためにも、近隣の大学や公的な機関など( 教育委員会、公民館、国際交流協会、

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NGO) からの人材の派遣・紹介を活用することも有効である。その際、児童達の教育に責任を持つ学校の

教員が、外部人材の方と密な関係をつくり、良好な教育環境を構築することが求められる。第3 節 外国人労働者問題への対応 この節では、調査したことと平行して、自身が日系ブラジル人としての体験談に基づき、客観的に直面している問題点について取り上げる。

⑴ 就労問題 第2章で述べた国内の外国人単純労働者は、不安定な雇用状態を余儀なくされている。日系人は、入国や就

労に際しブローカーを利用する割合が高く、派遣・請負などの形態による間接雇用が多い。また、外国人単純労働者は、直接雇用される場合でも期間を定めた有期雇用が中心で、いずれにしても常勤の正社員雇用からは

排除され、雇用調整が容易で安価な労働力として利用されている。80年代後半から流入してきた南米系労働者は15〜20年近くたった現時点でも派遣・請負労働者として働いている。また、日系人に限らず外国人労働者全

体で見ると、製造業で働く比率は71.8% となっているが、間接雇用者では91.4% が製造業となっている。流入開始時から現在に至まで、終身派遣ともいうべき固定かした状態がつづいている。不安定な雇用状態は、リー

マンショック後の日系人の失業率をみれば理解することができる。日本全体の失業率が5.6%だったのに対して、日系人の失業率は40〜47% 近く記録し、比較出来ないくらい桁違いの数字である。これは、日系人労働者のみ

ならずその家族にも大きなリスクを抱え込ませてしまっている。長期的な展望の開けない不安定な雇用が、親世代の関心を子供世代の将来の基礎となる教育よりも、今を生きることに向けさせてしまうため、子供世代に

は親世代以上の矛盾が発生する。このように不安定な雇用関係が様々な問題を生む原因になっている。この問題を解決するには、南米系労働者が出稼ぎ労働市場だけで就労することは許されるべきことではなく、そこか

ら脱出する道をつくることが重要である。表 8  リーマンショック以後の日系ブラジル人失業率調査

出 典 : 「 外 国 人 労 働 者 問 題 : 日 韓 比 較 」 独 立 行 政 法 人 労 働 政 策 研 究 ・ 研 修 機 構   JILPT 海 外 労 働 情 報   2012 年 9

⑵ 社会保障問題

 1990年6 月に施行された改正入管法による不法就労対策の強化を背景に、不法滞在者や定住外国人に対する社会保障の制限がうち出された。不法滞在者は、社会保障制度のうち、国民年金、国民健康、介護、雇用( 失業) などの保険加入が認められず、生活保護の支給も受けられない。また、健康保険については不法滞在者を含めた外国人労働者の加入が認められているものの、雇用主や外国人自身が保険料負担を嫌い、加入を避ける

ケースも多い。外国人の医療保険への加入率は、日本人従業員に比べて低く、格差が大きい。このため、未払い医療費の発生を恐れて診療拒否を受けるケースなど、深刻な問題が発生している。浜松市内に在住する18歳

以上の南米日系人を対象に健康保険への加入状況を調べた結果、国民健康保険は18.1% 、社会保険被用者保険は16.5% と加入率は低かった。入っていないが50.9% と過半数を占めていた。また、健康保険に加入していな

い理由としては「会社が加入させてくれない」が47.8% だった。32

32 「外国人の生活意識実態調査」静岡県浜松市、2000年

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 その一方で、就労問題の不安定な雇用状態は生活保護を受給する外国人の増加にも繋がっている。実線が示

すように、平成21年度の外国人被保護世帯数は約3 万5 千世帯で、20年度に比べて約4 千世帯増加している。 被保護世帯総数も増加しているため、外国人被保護世帯が被保護世帯全体に占める割合は3 % 弱で推移してい

る。世帯類型由別寄与度をみると、近年は「その他」の寄与度が大きい。「その他」には失業などが含まれている。また、図21で世帯主の国籍別の寄与度を計算すると近年は各国籍とも寄与度が大きくなっている。

図 22 被保護世帯数と世帯類型由別寄与度

出 典 : 厚 生 労 働 省 「 被 保 護 者 全 国 一 斉 調 査 基 礎 調 査 」 2000 年

 健康保険や社会保険の未加入問題に関しては、外国人を雇用している企業を厳しく規制する必要がある。第

4 章で述べた、シンガポールの事例を参考にするべきである。それは、外国人を雇用する企業を厳しく取り締まる仕組みである。日本もシンガポールと同様に外国人労働者を雇用するに伴い「雇用税」を支払う体制をつ

くるべき。雇用する外国人労働者一人につき、一定額の雇用税を雇用主が政府に支払う制度を行うべきである。そうすれば、外国人労働者の雇用状況を把握すると同時に、社会保障などの取り締まりも規制するシステムを

打ち立てることができる。要するに、雇う方が全面的に責任を負う形であり、制度等に従っていない場合は、地方団体や政府は企業から罰金、及び業務停止などの処分を与えるようにする。

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