湯淺太一 - yuasa.kuis.kyoto-u.ac.jpyuasa/shokodo/ocw.pdf · 文字列の計算 アルファベット:言語を構成する文字の(有限)集合 文字列文字の並び
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
Ⅲ
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
【1】 名称類似に関するヒヤリ・ハット
はじめに
医薬品の販売名の中には、複数の医薬品の間で名称が類似しているものがあり、それらの間での薬剤
取違えの事例が報告されている。特に、薬効が異なる医薬品と取違えた場合や、ハイリスク薬を取
違えた場合は医療事故につながる可能性がある。そこで、平成21年年報(2009年)では、「名
称類似に関するヒヤリ・ハット」を分析テーマとして取り上げ、販売名の頭文字の2文字または3文
字以上が一致した販売名に関し分析を行い、その結果を公表した。しかし、その後も名称類似に関す
るヒヤリ・ハット事例は多く報告されていることから、平成22年~平成25年年報(2010年~
2013年)においても継続して集計・分析を行った。また、分析した内容の中から特に重要な情報
を一覧にまとめた薬局ヒヤリ・ハット分析表を作成し、ホームページに掲載して薬局に周知してきた。
名称類似に関する医療事故防止については、従来、様々な取り組みが行われてきた。当機構の医療
事故情報収集等事業では、平成18年年報(2006年) 1)、医療安全情報No. 4「薬剤の取り違え」 2)
及び No. 68「薬剤の取り違え(第2報)」 3)において、名称類似に関する医療事故情報の提供を行っ
た。また、その後も第21回報告書4)、第25回報告書5)、第29回報告書6)において「再発・類似
事例の発生状況」で「薬剤の取り違え」を取り上げるなど、情報提供を行っている。日本病院薬剤師
会では、会員に向けた通知「処方点検や調剤時、病棟への供給時に注意を要する医薬品について」 7)
(2003年11月12日付)において注意喚起を行い、さらに厚生労働省も、平成15年11月
27日付医政発第1127004号・薬食発第1127001号、厚生労働省医政局長・厚生労働省
医薬食品局長通知「医療機関における医療事故防止対策の強化について」 8)、及び医薬品・医療用具等
安全性情報No. 202 9)(平成16年6月厚生労働省医薬食品局)を発出し、情報提供している。また、
2008年3月には、名称類似性を客観的に評価するための「医薬品類似名称検索システム」10)が
公開された。これは、医薬品の名称類似に関し、医薬品の名称の視覚的、音韻的な類似性を数値化し
て表示するシステムであり、一般財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)が運営している。
その後も名称類似に関する医療事故防止のために、様々な注意喚起や取り組みが行われてきたが、
本事業には引き続き名称類似に関するヒヤリ・ハット事例が報告されている。そこで本事業の総合評
価部会において、名称類似に関するヒヤリ・ハット事例が継続して報告されていることの重要性や、
経年的な比較の重要性などが指摘され、本年報においても名称類似に関するヒヤリ・ハット事例につ
いて分析を行うこととなり、集計や前年との比較などを行った。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
1)名称類似の考え方
名称類似に関する事例を抽出するために、2014年1月1日から2014年12月31日まで
に報告されたヒヤリ・ハット事例のうち、事例収集項目の「調剤」に関する「事例の内容」の項目で
「薬剤取違え」が選択されていた事例817件について、取違えが生じた医薬品の組み合わせで、
名称が類似しているものについて分析を行った。
名称の類似性については、平成21年~平成24年年報(2009年~2012年)においては、
報告された事例の「処方された医薬品」と「間違えた医薬品」の頭文字の一致に着目した。そして、
異なる販売名の医薬品を適切に識別して入力するために、一般的に、販売名の頭文字の3文字が用い
られていることから、頭文字の文字としての一致を、2文字のみ、3文字以上、の2つに分けて集計、
分析した。なお、漢方製剤は販売名が製造販売業者名から始まっているため、当然に頭文字が一致し
ているが、そのような組み合わせも含めて集計した。
しかし、名称の類似性には、頭文字の複数の一致の他にも、音韻的な類似性、視覚的な類似性など
いくつかの着眼点がある。そこで、平成25年年報(2013年)においては、頭文字が2文字以上
一致している名称類似医薬品に関する事例以外で、報告された事例の背景・要因などの記述部分に、
販売名が類似していることにより取違えた、またはそのことが推測される内容が記載されている事例
についても「その他の販売名が類似している医薬品」として分析を行った。
本年報においても引き続き、頭文字が2文字以上一致している名称類似医薬品およびその他の名称
類似医薬品について分析を行った。なお、「薬剤取違え」の事例のうち、一般名処方に関する事例は
平成24年年報(2012年)以降、「一般名処方に関するヒヤリ・ハット」において取り扱ってい
ることから、本分析では取り扱わず、販売名同士の名称類似について分析している。一般名処方に関
する「薬剤取違え」の事例としては、一般名同士の名称類似性から薬剤取違えを生じた事例などが報
告されており、【2】後発変更等に関するヒヤリ・ハット(134頁)で分析を行い、取違えた医薬
品の組み合わせについても詳しく掲載しているので参照いただきたい。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
2)報告件数
(1)発生状況
図表1-1 名称類似に関する事例の報告件数
報告件数
2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年
「薬剤取違え」の事例 171 1372 871 1005 893 817
名称類似に関する事例 41 402 264注1 259 227注 2 246注 2
頭文字が2文字以上一致している医薬品の事例
41 402 264注1 259 208 215
頭文字2文字のみ一致 13 144 85 82 55 62
頭文字3文字以上一致 28 258 180 177 153 153
その他の名称類似医薬品の事例 ― ― ― ― 19 31
※ 2012年4月に開始された「一般名処方」に関する名称類似の事例は含まない。注 1 販売名の頭文字が2文字のみ一致している医薬品との取違えと、3文字以上一致している医薬品との取違えが両方報告されている事例
が1事例あるため、「名称類似医薬品と取違えた事例」の件数(264件)は、「頭文字2文字のみ一致」の件数(85件)と「頭文字3文字以上一致」の件数(180件)の合計と異なる。
注2 2013年以降「名称類似に関する事例」には頭文字が2文字以上一致する医薬品以外の「その他の名称類似医薬品の事例」を含む。
2014年は、「薬剤取違え」の事例817件のうち、名称類似に関する事例は246件
(30.1%)であった。そのうち、頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例は62件
(7.6%)、頭文字が3文字以上一致している医薬品の事例は153件(18.7%)、その他の名
称類似医薬品の事例は31件(3.8%)であり、頭文字が3文字以上一致している医薬品の事例
の割合が多かった。
2013年は、「薬剤取違え」の事例893件のうち、名称類似に関する事例は227件
(25.4%)であった。そのうち、頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例は55件
(6.2%)、頭文字が3文字以上一致している医薬品の事例は153件(17.1%)、その他の名
称類似医薬品の事例は19件(2.1%)であり、頭文字が3文字以上一致している名称類似医薬
品と取違えた事例の割合が多かった。
2014年は2013年と比較して、「薬剤取違え」の事例に占める名称類似に関する事例の割
合が増加した。また、その内訳は2013年と同様に頭文字が3文字以上一致している医薬品と取
違えた事例の割合が多かった。
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
(2)発生場面
2014年に報告された名称類似に関する事例について、発生場面別に集計を行ったところ、
頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例、頭文字が3文字以上一致している医薬品の事例、
その他の名称類似医薬品の事例は、いずれも「内服薬調剤」が多く、70%~80%を占めた。
次いで「外用薬調剤」、「その他の調剤に関する場面」がそれぞれ約10%~20%であった。
図表1-2 発生場面(単位:件)
発生場面頭文字が2文字以上一致している
医薬品の事例 その他の名称類似医薬品の事例
合計2文字のみ 3文字以上
内服薬調剤 50 110 22 182
外用薬調剤 5 20 6 31
注射薬調剤 2 0 0 2
その他の調剤に関する場面 5 23 3 31
合計 62 153 31 246
3)頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例の分析
(1)主な薬効の相違と実施の有無
頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例62件について、「処方された医薬品」と「間違
えた医薬品」の組み合わせで、主な薬効の相違、および患者に対する誤った医薬品の交付の有無を
表す実施の有無を集計し、図表1- 3に示す。なお、漢方製剤同士の組み合わせは、いずれも主な
薬効が「漢方製剤」であるが、実際にはそれぞれ効能、効果が異なるため、本分析では「その他」
として分類した。
62件の事例のうち、「処方された医薬品」と「間違えた医薬品」の主な薬効が同じ事例は55件
(88.7%)、主な薬効が異なる事例は5件(8.1%)、その他の事例は2件(3.2%)であり、
主な薬効が同じ事例が大部分を占めた。また、その他の事例2件は、いずれも頭文字が製造販売会社
名「本草」から始まる漢方製剤同士の組み合わせであった。
医薬品の取違えのうち、主な薬効の異なる医薬品を誤って調剤し、患者が服用した場合、患者の
健康に影響を及ぼす可能性があるため、特に注意を要すると考えられる。主な薬効の異なる医薬品
を調剤した事例5件は、いずれも「実施なし」であった。
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
図表1-3 主な薬効の相違と実施の有無(頭文字2文字一致)
(単位:件)
主な薬効の相違 実施の有無
合計実施あり 実施なし
主な薬効が同じ 17 38 55
主な薬効が異なる 0 5 5
その他 2 0 2
合計 19 43 62
※1主な薬効は、その医薬品が対応する個別医薬品コード先頭3桁の医薬品分類を示す。※2 漢方製剤同士の組み合わせはいずれも主な薬効が「漢方製剤」であるが、実際にはそれぞれ効能、効果が異
なるため「その他」に分類した。
(2)複数回報告された医薬品の組み合わせ
頭文字が2文字のみ一致している名称類似医薬品と取違えた事例62件について、「処方された
医薬品」と「間違えた医薬品」の組み合わせをブランド名別に集計し、複数回報告のあった組み合
わせを、成分の相違、主な薬効の相違、2013年における報告の有無も併せて図表1- 4に示す。
なお、本分析において、一般的名称に屋号が付されている後発医薬品については一般的名称ごとに
集計し、漢方製剤については販売名ごとに集計した。
複数回報告のあった組み合わせは9通りで、このうち6通りは2013年に引き続き2014年
においても報告されていた。9通りの組み合わせは全て主な薬効が同じであり、このうち4通りは
成分の異なる組み合わせ、残りの5通りは先発医薬品と後発医薬品の組み合わせなどのように成分
が同じ組み合わせであった。成分が異なる組み合わせではセフカペンピボキシル塩酸塩とセフジト
レンピボキシルの組み合わせが6回と多かった。また、ノボラピッドとノボリンの組み合わせはハ
イリスク薬同士であるため特に注意を要する。成分が同じ組み合わせではマグミットとマグラック
スの組み合わせが7回と多かった。
図表1-4 複数回報告された医薬品の組み合わせ(頭文字2文字一致)
医薬品名 医薬品名 主な薬効の相違 成分の相違 報告回数
2013年の報告
マグミット マグラックス 7 ○
セフカペンピボキシル塩酸塩
セフジトレンピボキシル ○ 6 ○
ムコダイン ムコトロン注 3
セフジニル セフゾン ○ 2 ○
トラネキサム酸 トランサミン 2
ノボラピッド(ハイリスク薬)
ノボリン(ハイリスク薬)
○ 2 ○
ビオスリー ビオフェルミン ○ 2 ○
ベザトール ベザフィブラート 2 ○
メチクール メチコバール 2
注 ムコトロンは販売名変更の経過措置期限が2014年9月30日に満了し、名称変更された。事例の発生年月はいずれも2014年9月以前である。
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
(3)注意を要する医薬品の組み合わせ
名称類似による薬剤の取違えの事例において、1)主な薬効が異なる医薬品の組み合わせや、
2)成分が異なるハイリスク薬(外用薬を除く)を含む医薬品の組み合わせは、患者に与える影響
が大きくなる可能性があるため、特に注意を要すると考えられる。頭文字が2文字のみ一致してい
る医薬品の事例62件について、「処方された医薬品」と「間違えた医薬品」の組み合わせをブラ
ンド名別に集計した。なお、本分析において、一般的名称に屋号が付されている後発医薬品同士の
組み合わせについては一般的名称ごとに集計することとし、屋号のみの違いを異なる組み合わせと
して取り扱わないこととした。また、漢方製剤についても同様に企業名ではなく販売名に着目し、
集計した。上記1)または2)に該当する組み合わせを抽出したところ、9通りの組み合わせがあっ
た。
注意を要する医薬品の組み合わせの事例について、主な薬効の相違、成分の相違、2013年に
おける報告の有無も併せて図表1- 5に示す。9通りの組み合わせのうち、ファムビルとファロム、
プロパジールとプロへパール、ムコダインとムコスタ、グルファストとグルベス、ノボリンとノボ
ラピッドの組み合わせは2013年に引き続き2014年にも報告があった。
図表1-5 注意を要する医薬品(主な薬効が異なる、成分が異なる)の組み合わせ
(頭文字2文字一致)
医薬品名 医薬品名 主な薬効の相違 成分の相違
2013年の報告
ファムビル ファロム ○ ○ ○
プロパジール プロヘパール ○ ○ ○
ベタセレミン(ハイリスク薬)
ベタヒスチンメシル酸塩 ○ ○
ペルジピン ペルサンチン ○ ○
ムコダイン ムコスタ ○ ○ ○
グリクラジド注
(ハイリスク薬)グリベンクラミド(ハイリスク薬)
○
グルファスト(ハイリスク薬)
グルベス(ハイリスク薬)
○ ○
ノボリン(ハイリスク薬)
ノボラピッド(ハイリスク薬)
○ ○
レボメプロマジン(ハイリスク薬)
レボトミン (ハイリスク薬)
○
注 グリミクロンが処方され、後発医薬品のグリクラジドに変更した事例である。
上記の注意を要する事例のうち、主な事例の内容等をそれぞれの医薬品の成分名、主な薬効ととも
に次に示す。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
注意を要する医薬品の組み合わせの事例(頭文字2文字一致)
医薬品名(成分名 /主な薬効) 事例の内容等
○処方された医薬品ファムビル錠250mg(ファムシクロビル /抗ウイルス剤)
○間違えた医薬品ファロム錠150mg(ファロペネムナトリウム/主としてグラム陽性・陰性菌に作用するもの)
(事例の内容)ファムビル錠と入力するところファロム錠で入力した。(背景・要因)業務終了間際で、混雑していた。頭文字の「ファ」で検索し、ファムビルで入力したつもりでいた。(改善策)混雑していても入力はゆっくりと確認しながら行う。「ファム」と3文字で検索する。
○処方された医薬品ペルジピンLAカプセル40mg(ニカルジピン塩酸塩/血圧降下剤)
○間違えた医薬品ペルサンチン-Lカプセル150mg(ジピリダモール/血管拡張剤)
(事例の内容)ペルジピンLAカプセル40mgの処方のところ、同じ引き出しにあったペルサンチン -Lカプセル150mgを調剤した。鑑査者が気付き調剤し直した。(背景・要因)ペルサンチン-Lカプセル150mgは最近採用され、パートの薬剤師が採用に気付いていなかった。(改善策)未記載
○処方された医薬品グルファスト錠5mg(ミチグリニドカルシウム水和物/糖尿病用剤)(ハイリスク薬)
○間違えた医薬品グルベス配合錠(ミチグリニドカルシウム水和物・ボグリボース/糖尿病用剤)(ハイリスク薬)
(事例の内容)グルファスト錠5mgの処方でグルベス配合錠を調剤した。翌日患者が服用前に気付き、薬局に電話があった。(背景・要因)当薬局ではグルベス配合錠の処方が多く、グルファスト錠5mgの処方はほとんどない。そのため、思い込みで調剤した。鑑査、服薬指導をした薬剤師も気付かなかった。(改善策)グルファストが出ている患者の電子薬歴に「グルファスト注意(グルベスと間違ったことがある)」と入力し、毎回ポップアップで表示されるようにした。
○処方された医薬品ノボリン30R注フレックスペン(ヒトインスリン(遺伝子組換え)/その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む。)(ハイリスク薬)
○間違えた医薬品ノボラピッド30ミックス注ペンフィル(インスリンアスパルト(遺伝子組換え)/その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む。)(ハイリスク薬)
(事例の内容)土曜日の昼頃の混雑している時間帯に手書きの処方せんを受け付けた。ノボリン30R注フレックスペンの処方だったがノボラピッド30ミックス注ペンフィルを調剤し、交付した。翌週、患者が気付き、使用せずに病院へ相談して取違えが分かった。手持ちの薬があり、使用することはなかった。(背景・要因)土曜日の一人薬剤師体制で混雑時であった。また、手書きの処方せんで薬品名が特に読みにくかった。ノボリン30Rとノボラピッド30ミックスの両規格の在庫があるため、確認が漏れ、患者と確認する際も忙しく発見できなかった。(改善策)土曜日の一人体制の時には、患者の前で処方せん、薬剤などを見合わせ、確認の機会を増やした。
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(4)複数の医薬品の組み合わせが報告された頭文字2文字のパターン
頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例62件について、頭文字2文字のパターン別に集計
した結果、複数の医薬品の組み合わせがあったものを図表1- 6に示す。
「セフ」から始まる医薬品の組み合わせが4通りと多く、その他は2通りずつ報告された。「セフ」
から始まる医薬品の組み合わせは、いずれも成分の異なるセフェム系抗生剤同士の組み合わせで
あった。
また、「プロ」「ムコ」はいずれも主な薬効の異なる医薬品の組み合わせを含むため、特に注意を
要する頭文字2文字のパターンであると考えられる。
図表1-6 複数の医薬品の組み合わせが報告された頭文字2文字のパターン
組み合わせの数
頭文字 医薬品名 医薬品名主な薬効の相違
成分の相違
4通り セフ
セフカペンピボキシル塩酸塩 セフジトレンピボキシル ○
セフカペンピボキシル塩酸塩 セフゾン ○
セフジニル セフゾン
セフスパン セフゾン ○
2通り ガスガスター ガスロンN ○
ガスター ガスリック
2通り トラトラネキサム酸 トランサミン
トラマール トラムセット ○
2通り パンパンテチン パントシン
パントシン パンピオチン
2通り プロプロテカジン プロマック ○
プロパジール プロヘパール ○ ○
2通り ベザベザトール ベザフィブラート
ベザトール ベザレックス
2通り ムコムコスタ ムコダイン ○ ○
ムコダイン ムコトロン
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4)頭文字が3文字以上一致している医薬品の事例の分析
(1)主な薬効の相違と実施の有無
2014年に報告された「薬剤取違え」に関する事例の中で、「処方された医薬品」と「間違え
た医薬品」の販売名の頭文字が3文字以上一致していた事例153件について、主な薬効の相違、
患者に対する誤った医薬品の交付の有無を表す実施の有無を集計した(図表1- 7)。なお、漢方製
剤同士の組み合わせは、いずれも主な薬効が「漢方製剤」同士であるが、実際にはそれぞれ効能、
効果が異なるため、本分析では「その他」とした。
153件の事例のうち、「処方された医薬品」と「間違えた医薬品」の主な薬効が同じ事例は
102件(66.7%)、主な薬効が異なる事例は17件(11.1%)、その他の事例は34件
(22.2%)であり、主な薬効が同じ事例が多かった。また、その他の事例は、頭文字が製造販売
会社名「ツムラ」から始まる漢方製剤同士の組み合わせが32件、「クラシエ」、「テイコク」から
始まる漢方製剤同士の組み合わせがそれぞれ1件であった。
図表1-7 主な薬効の相違と実施の有無(頭文字3文字一致)
(単位:件)
主な薬効の相違 実施の有無
合計実施あり 実施なし
主な薬効が同じ 38 64 102
主な薬効が異なる 8 9 17
その他 19 15 34
合計 65 88 153
※1主な薬効は、その医薬品が対応する個別医薬品コード先頭3桁の医薬品分類を示す。※2 漢方製剤同士の組み合わせはいずれも主な薬効が「漢方製剤」であるが、実際にはそれぞれ効能、効果が異
なるため「その他」に分類した。
また、医薬品の取違えのうち、主な薬効が異なる医薬品を誤って調剤し、患者が服用した場合、
患者の健康に影響を及ぼす可能性があるため、特に注意を要すると考えられる。主な薬効の異なる
医薬品を調剤した事例17件のうち、患者に対する誤った医薬品の交付の「実施あり」の事例は
8件であった。「実施あり」の事例で報告された医薬品の組み合わせをブランド名別に集計した
(図表1- 8)。主な薬効が異なる組み合わせについては、(3)注意を要する医薬品の組み合わせ
(112頁)において分析する。
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図表1-8 主な薬効が異なる医薬品を交付した事例(頭文字3文字以上一致)
医薬品名 主な薬効 医薬品名 主な薬効「実施あり」の事例の報告回数
ノイロトロピン 解熱鎮痛消炎剤 ノイロビタン混合ビタミン剤(ビタミンA・D 混合製剤を除く。)
2
ユベラ ビタミンE剤ユベラNカプセル100mg
その他の循環器官用薬 2
アスパラカリウム 無機質製剤 アスパラ-CA カルシウム剤 1
ザジテン点眼液注 眼科用剤 ザジテン点鼻液注 耳鼻科用剤 1
ゾビラックス眼軟膏注 眼科用剤 ゾビラックス軟膏注 抗ウイルス剤 1
フォリアミンビタミンB剤(ビタミンB1剤 を除く。)
フォリロミン 無機質製剤 1
注 剤形を区別するためにブランド名に剤形を付した
(2)複数回報告された組み合わせ
頭文字が3文字以上一致している名称類似医薬品と取違えた事例153件について、「処方され
た医薬品」と「間違えた医薬品」の組み合わせをブランド名別に集計し、複数回報告のあった組み
合わせを、成分の相違、主な薬効の相違、2013年における報告の有無も併せて図表1- 9に示す。
なお、本分析においては、一般的名称に屋号が付されている後発医薬品については一般的名称ごと
に集計し、漢方製剤については販売名ごとに集計した。
複数回報告のあった組み合わせは27通りであった。アムロジピンとアムロジンの組み合わせ
が15回、ロキソニンとロキソプロフェンナトリウム(またはNa)が12回、ビオフェルミンと
ビオフェルミンRが6回、プレドニゾロンとプレドニンが5回と多かった。これらの組み合わせは
2013年に引き続き2014年にも報告があった。
また、主な薬効について見ると、27通りの組み合わせのうち5通りは主な薬効が異なる組み合
わせであった。主な薬効の異なる組み合わせについては、(3)注意を要する医薬品の組み合わせ
(112頁)において分析する。
また、27通りの組み合わせのうち、8通りが成分の異なる組み合わせであり、19通りは先発
医薬品と後発医薬品の組み合わせなどのように成分が同じ組み合わせであった。
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図表1-9 複数回報告された医薬品の組み合わせ(頭文字3文字以上一致)
医薬品名 医薬品名主な薬効の相違
成分の相違報告回数
2013 年の報告
アムロジピン アムロジン 15 ○
ロキソニンロキソプロフェンナトリウム(またはNa)
12 ○
ビオフェルミン ビオフェルミンR ○ 6 ○
プレドニゾロン(ハイリスク薬)
プレドニン(ハイリスク薬)
5 ○
ノイロトロピン ノイロビタン ○ ○ 4 ○
リンデロン―V リンデロン―VG ○ 4 ○
エバスチン エバステル 3
グリメピリド(ハイリスク薬)
グリメピリド(ハイリスク薬)
3 ○
ユベラ ユベラN ○ ○ 3
アムロジピン アムロジピン 2 ○
アトルバスタチン アトルバスタチン 2
アルファカルシドール アルファロール 2
インタール点眼液注1 インタール点鼻液注1 ○ 2 ○
エチゾラム エチゾラム 2
オメプラゾール オメプラール 2
クラリスロマイシン クラリスロマイシン 2 ○
クラリス クラリスロマイシン 2 ○
ゲンタシン ゲンタマイシン 2 ○
ゾビラックス眼軟膏注1 ゾビラックス軟膏注1 ○ 2 ○
ツムラ加味逍遙散エキス顆粒(医療用)注2
ツムラ抑肝散エキス顆粒(医療用)注2 ○ 2
ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)注2
ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)注2 ○ 2 ○
ツムラ小青竜湯エキス顆粒(医療用)注2
ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用)注2 ○ 2 ○
ツムラ抑肝散エキス顆粒(医療用)注2
ツムラ抑肝散加陳皮半夏エキス顆粒(医療用)注2 ○ 2 ○
ボグリボース(ハイリスク薬)
ボグリボース(ハイリスク薬)
2 ○
ムコソルバン ムコソレート 2
リボスチン点眼液注1 リボスチン点鼻液注1 ○ 2
レバミピド レバミピド 2 ○注1 剤形を区別するためにブランド名に剤形を付した。注2 漢方製剤はいずれも主な薬効が「漢方製剤」であるが、実際の効能・効果は異なる。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
Ⅲ
【1】
【2】
【3】
【4】
【5】
【6】
【7】
【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
(3)注意を要する医薬品の組み合わせ
名称類似による薬剤の取違えの事例において、1)主な薬効が異なる医薬品の組み合わせや、
2)成分が異なるハイリスク薬(外用薬を除く)を含む医薬品の組み合わせは、患者に与える影響
が大きくなる可能性があるため、特に注意を要すると考えられる。頭文字が3文字以上一致してい
る医薬品の事例153件について、「処方された医薬品」と「間違えた医薬品」の組み合わせをブ
ランド名別に集計し、上記1)または2)に該当する組み合わせを抽出したところ、9通りの組み
合わせがあった。なお、本分析において、一般的名称に屋号が付されている後発医薬品同士の組み
合わせについては一般的名称ごとに集計し、漢方製剤については販売名ごとに集計した。
注意を要する医薬品の組み合わせの事例について、成分の相違、主な薬効の相違、2013年に
おける報告の有無も併せて図表1- 10に示す。成分の異なるハイリスク薬を含む医薬品の組み合
わせはなかったが、主な薬効が異なる医薬品の組み合わせが9通りあった。9通りの組み合わせの
うち、アスパラ-CAとアスパラカリウム、インタール点眼液とインタール点鼻液、ザジテン点鼻
液とザジテン点眼液、ゾビラックス眼軟膏とゾビラックス軟膏、ノイロビタンとノイロトロピンの
組み合わせは2013年に引き続き2014年にも報告があった。
図表1-10 注意を要する医薬品(主な薬効が異なる、成分が異なる)の組み合わせ
(頭文字3文字以上一致)
医薬品名 医薬品名主な薬効の相違
成分の相違2013年の報告
アスパラ-CA アスパラカリウム ○ ○ ○
インタール点眼液注 インタール点鼻液注 ○ ○ ○
クラリチン クラリス ○ ○
ザジテン点鼻液 ザジテン点眼液 ○ ○
ゾビラックス眼軟膏注 ゾビラックス軟膏注 ○ ○
ノイロビタン ノイロトロピン ○ ○ ○
フォリロミン フォリアミン ○ ○
ユベラ ユベラN ○ ○
リボスチン点鼻液注 リボスチン点眼液注 ○
注 剤形を区別するためにブランド名に剤形を付した。
また、上記の注意を要する事例のうち、主な事例の内容等をそれぞれの医薬品の成分名、主な薬
効とともに示す。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
Ⅲ
【1】
【2】
【3】
【4】
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
注意を要する医薬品の組み合わせの主な事例(頭文字3文字以上一致)
医薬品名(成分名/主な薬効) 事例の内容等
○処方された医薬品アスパラ-CA錠200(L- アスパラギン酸カルシウム水和物/カルシウム剤)
○間違えた医薬品アスパラカリウム錠300mg(L- アスパラギン酸カリウム/無機質製剤)
(事例の内容)アスパラ-CA錠のところ、間違えてアスパラカリウム錠を交付した。薬歴処理時に気付き連絡した。まだ服用していなかった。アスパラ-CA錠にして交換した。(背景・要因)自己鑑査で交付した。(改善策)調剤、鑑査のダブルチェックを徹底する。
○処方された医薬品クラリチン錠10mg(ロラタジン/その他のアレルギー用薬)
○間違えた医薬品クラリス錠50小児用(クラリスロマイシン/主としてグラム陽性菌,マイコプラズマに作用するもの)
(事例の内容)クラリチン錠10mgが処方されていたが、クラリス錠50mgで調剤されていた。交付時に発見した。(背景・要因)少し忙しく、在庫場所が隣りであり、間違えてピックアップした。(改善策)鑑査を徹底する。在庫場所を改善する。
○処方された医薬品ザジテン点鼻液0.05%(ケトチフェンフマル酸塩 /耳鼻科用剤)
○間違えた医薬品ザジテン点眼液0.05%(ケトチフェンフマル酸塩/眼科用剤)
(事例の内容)ザジテン点鼻処方のところ、ザジテン点眼を渡した。患者が次の来局時に「これと同じのがほしい」と申し出たところ、点眼を渡していたことがわかった。(背景・要因)薬剤情報提供文書はザジテン点鼻液で入力されていたが、調剤を間違えた。患者は高齢であったため、点眼の説明をしてもそのままだった。(改善策)他剤形などある医薬品の鑑査を徹底する。
○処方された医薬品ゾビラックス眼軟膏3%(アシクロビル/眼科用剤)
○間違えた医薬品ゾビラックス軟膏5%(アシクロビル/抗ウイルス剤)
(事例の内容)ゾビラックス眼軟膏3%が処方されたところ、ゾビラックス軟膏5%を調剤し、交付した。事務員が調剤録入力時に誤りに気付き、薬剤師に伝え、わかった。すぐに交換した。(背景・要因)デザイン、%などは異なるため、ゾビラックス眼軟膏と軟膏は同じ棚に保管していた。しかし不慣れな薬剤師が調剤、鑑査することで、チェックが疎かになった。(改善策)眼軟膏、軟膏の配置場所を別にする。調剤、鑑査を注意深く行う。
○処方された医薬品ノイロビタン配合錠(オクトチアミン・リボフラビン・ピリドキシン塩酸塩・シアノコバラミン/混合ビタミン剤(ビタミンA・D混合製剤を除く。))
○間違えた医薬品ノイロトロピン錠4単位(ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液/解熱鎮痛消炎剤)
(事例の内容)ノイロビタンが処方されていたが、ノイロトロピンを調剤した。鑑査、服薬指導時も気が付かず、交付した。(背景・要因)当薬局ではノイロトロピンの方が処方される機会が多いため、ノイロトロピンだと思い込んだ。(改善策)思い込みをなくすため、最後まで薬剤名を確認する。服薬指導時の確認の際に、薬剤情報提供文書の写真とも照らし合わせる。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
Ⅲ
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
医薬品名(成分名/主な薬効) 事例の内容等
○処方された医薬品フォリロミン錠50(クエン酸第一鉄ナトリウム/無機質製剤)
○間違えた医薬品フォリアミン錠(葉酸/ビタミンB剤(ビタミンB1剤を除く。))
(事例の内容)手書き処方せんで「フォリロミン錠50 1錠 就寝前 60日分」と記載されているところ、「フォリアミン錠 1錠 分1 就寝前 60日分」で入力、調剤、一包化した。2か月後、患者が来局した。前回と同じ処方内容で、印字の処方せんで、「フォリロミン錠50 鉄50mg 1錠 分 1就寝前 60日分」と記載されており、前回の薬剤取違えがわかった。医師に報告後、患者と家族に説明した。残薬10日分を作り直し、取り換えた。(背景・要因)フォリロミン錠に関する知識がなかった。(改善策)お薬手帳で内容を確認する。類似の名前がある薬の処方が来たという情報を、他店舗にも共有する。処方せんの内容を指差しまたは口頭で確認する。
(4)複数の医薬品の組み合わせが報告された頭文字のパターン
頭文字が3文字以上一致している医薬品の事例153件について、頭文字のパターン別に集計し
た結果、複数の医薬品の組み合わせが報告されたものを図表1- 11に示す。
本分析において頭文字が3文字以上一致しているパターンとは、一致する3文字以上の最小の文字
数を基準として集計した。例えば、アムロジピンの屋号違いの組み合わせは6文字が一致しており、
アムロジピンとアムロジンの組み合わせは4文字が一致している。それらを、一致する3文字以上
の最小の文字数を基準として、「アムロジ」の4文字が一致している同じパターンとして整理し、
集計した。なお、頭文字が製造販売会社「ツムラ」から始まる漢方製剤同士の組み合わせは本集計
には含めないこととした。
「クラリ」から始まる医薬品の組み合わせが4通りと多く、その他は2通りずつ報告された。
「クラリ」から始まる医薬品の組み合わせの内訳は、クラリスロマイシン製剤同士の組み合わせが
3通りと、主な薬効の異なるクラリチンとクラリスの組み合わせが1通り報告された。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
Ⅲ
【1】
【2】
【3】
【4】
【5】
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
図表1-11 複数の医薬品の組み合わせが報告された頭文字3文字以上のパターン
組み合わせ 頭文字 医薬品名 医薬品名主な薬効の相違
成分の相違
4通り クラリ
クラリシッド クラリス
クラリスロマイシン クラリスロマイシン
クラリス クラリスロマイシン
クラリチン クラリス ○ ○
2通り アムロジアムロジピン アムロジン
アムロジピン アムロジピン
2通り フェロフェロ・グラデュメット フェロミア
フェロチーム フェロミア
2通り ロキソロキソニン ロキソプロフェン
ロキソプロフェン ロキソプロフェン
5)その他の名称類似医薬品の事例の分析
(1)主な薬効の相違と実施の有無
2014年に報告された「薬剤取違え」に関する事例の中で、頭文字が2文字のみ、3文字以上
一致している医薬品の事例については、前述した通りである。本事業には、それらの事例の他にも、
名称の類似性に起因して取違えた可能性がある事例が報告されている。
薬剤取違えの事例817件から、頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例63件、頭文字
が3文字以上一致している医薬品の事例153件を除いた601件について、報告された事例の記
述部分に、販売名が類似していることにより薬剤を取違えた、またはそのことが推測される内容が
記載されており、かつ取違えが生じた名称類似医薬品の組み合わせが記載されている事例を抽出し
たところ、31件あった。それらの事例に記載されている名称類似医薬品の組み合わせについて、
主な薬効の相違、および患者に対する誤った医薬品の交付の有無を表す実施の有無を集計し、図表
1- 12に示す。なお、漢方製剤同士の組み合わせは、いずれも主な薬効が「漢方製剤」同士であるが、
実際にはそれぞれ効能、効果が異なるため、本分析では「その他」とした。
頭文字が2文字以上一致する組み合わせではないが、名称が類似している医薬品の事例31件の
うち、主な薬効が同じ医薬品の事例は16件(51.6%)、主な薬効が異なる医薬品の事例は14件
(45.2%)、その他の事例は1件(3.2%)であった。
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
図表1-12 主な薬効の相違と実施の有無
(単位:件)
主な薬効の相違 実施の有無
合計実施あり 実施なし
主な薬効が同じ 7 9 16
主な薬効が異なる 2 12 14
その他 0 1 1
合計 9 22 31
※1主な薬効は、その医薬品が対応する個別医薬品コード先頭3桁の医薬品分類を示す。※2 漢方製剤同士の組み合わせはいずれも主な薬効が「漢方製剤」であるが、実際にはそれぞれ効能、効果が異
なるため「その他」に分類した。
医薬品の取違えのうち、特に主な薬効の異なる医薬品を誤って調剤し、患者が服用した場合、患
者の健康に影響を及ぼす可能性がある。主な薬効が異なる医薬品を調剤した事例14件のうち、患
者に対する誤った医薬品の交付の「実施あり」の事例は2件であった。「実施あり」の事例で報告
された医薬品の組み合わせをブランド名別に集計し図表1- 13に示す。また、主な薬効の異なる
組み合わせについては、(3)注意を要する医薬品の組み合わせ(117頁)において詳しく分析
することとする。
図表1-13 主な薬効が異なる医薬品を交付した事例(その他の名称類似医薬品)
医薬品名 主な薬効 医薬品名 主な薬効「実施あり」の事例の報告回数
ニコランジル 血管拡張剤 ニセルゴリン その他の循環器官用薬 1
パスタロンソフト軟膏20%
皮ふ軟化剤(腐しょく剤を含む。)
ヒルドイドソフト軟膏0.3%注 血液凝固阻止剤 1
注 報告された事例より、剤形の類似も取違えに関係したためブランド名に剤形を付した
(2)複数回報告された組み合わせ
頭文字が2文字以上一致する組み合わせではないが、名称が類似している医薬品の事例31件に
ついて、名称類似医薬品の組み合わせをブランド名別に集計し、複数回報告のあった組み合わせを、
成分の相違、主な薬効の相違、2013年における報告の有無も併せて図表1- 14に示す。なお、
一般的名称に屋号が付されている後発医薬品については一般的名称ごとに集計し、漢方製剤につい
ては販売名ごとに集計した。
複数回報告のあった組み合わせは3通りであった。ミカムロとミコンビの組み合わせが4回と多
かった。ラニチジンとラフチジン、ロフラゼプ酸エチルとロラゼパムは各2回報告された。ミカムロ
とミコンビの組み合わせは2013年に引き続き報告された。
また、3通りの組み合わせはすべて成分の異なる組み合わせであったが、主な薬効は同じであった。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
Ⅲ
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
図表1-14 複数回報告された医薬品の組み合わせ(その他の名称類似医薬品)
医薬品名 医薬品名主な薬効の相違
成分の相違報告回数
2013年の報告
ミカムロ ミコンビ ○ 4 ○
ラニチジン ラフチジン ○ 2
ロフラゼプ酸エチル ロラゼパム ○ 2
(3)注意を要する医薬品の組み合わせ
名称類似による薬剤の取違えの事例において、1)主な薬効が異なる医薬品の組み合わせや、
2)成分の異なるハイリスク薬(外用薬を除く)を含む医薬品の組み合わせは、患者に与える影響
が大きくなる可能性があるため、特に注意を要すると考えられる。頭文字の2文字以上の一致はな
いが、名称が類似している医薬品の事例31件について、名称類似医薬品の組み合わせをブランド
名別に集計し、上記1)または2)に該当する組み合わせを抽出したところ、15通りの組み合わ
せがあった。なお、本分析においては、一般的名称に屋号が付されている後発医薬品同士の組み合
わせについては一般的名称ごとに集計し、漢方製剤については販売名ごとに集計した。
頭文字が2文字以上一致する組み合わせではないが、名称が類似している医薬品の事例のうち、
特に注意を要する医薬品の組み合わせについて、成分の相違、主な薬効の相違、2013年におけ
る報告の有無も併せて図表1- 15に示す。15通りの組み合わせのうち、アテレックとアレロッ
クの組み合わせのみ2013年に引き続き2014年にも報告された。
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Ⅲ
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
図表1-15 注意を要する医薬品(主な薬効が異なる、成分が異なる)の組み合わせ
(その他の名称類似医薬品)
医薬品名 医薬品名主な薬効の相違
成分の相違2013年の報告
アナフラニール(ハイリスク薬)
トフラニール(ハイリスク薬)
○
エクア(ハイリスク薬)
エックスフォージ ○ ○
メトグルコ(ハイリスク薬)
メチコバール ○ ○
アテレック アレロック ○ ○ ○
アレロック アムロジン ○ ○
ザンタック ザイロリック ○ ○
シルニジピン注1 ニフェジピン ○ ○
セスデン ゼスラン ○ ○
トミロン トロキシン ○ ○
ニセルゴリン ニコランジル ○ ○
パスタロンソフト軟膏20%注2
ヒルドイドソフト軟膏0.3%注2 ○ ○
プルスマリンA プランルカスト ○ ○
ペキロンクリーム注2 ベギンクリーム注2 ○ ○
ラシックス ラミシール ○ ○
リカバリン注3 リリカ ○ ○
注1 アテレックが処方され、後発医薬品のシルニジピンに変更した事例である。注2 報告された事例より、剤形の類似も取違えに関係したためブランド名に剤形を付した。注3 トランサミンが処方され、後発医薬品のリカバリンに変更した事例である。
また、上記の特に注意を要する事例のうち、主な事例の内容等をそれぞれの医薬品の成分名、主な
薬効とともに示す。
注意を要する医薬品の組み合わせの主な事例(その他の名称類似医薬品)
医薬品名(成分名/主な薬効) 事例の内容等
○処方された医薬品アナフラニール錠25mg(クロミプラミン塩酸塩/精神神経用剤)(ハイリスク薬)
○間違えた医薬品トフラニール錠25mg(イミプラミン塩酸塩/精神神経用剤)(ハイリスク薬)
(事例の内容)アナフラニール錠25mgとトフラニール25mgの取違えに気付かずに交付した。(背景・要因)医薬品名とシートデザインが類似していた上、規格も同じ25mgであったため、調剤間違いに気付かずに交付した。(改善策)アナフラニールとトフラニールの薬品棚、それぞれに取違え注意の印を付ける。処方頻度の少ないアナフラニールが処方されている患者の薬歴に、「トフラニールとの取違えに注意」とサマリーに注意喚起を入れる。
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
医薬品名(成分名/主な薬効) 事例の内容等
○処方された医薬品アテレック錠5(シルニジピン/血圧降下剤)
○間違えた医薬品アレロック錠5(オロパタジン塩酸塩/その他のアレルギー用薬)
(事例の内容)アテレック錠5を処方されていた患者の調剤で誤ってアレロック錠5を調剤した。鑑査時、別の薬剤師が発見し、わかった。(背景・要因)医薬品名と規格が類似していたために取違えた。(改善策)調剤後、鑑査前に、調剤を行った薬剤師が再度確認を行う。知識を増やすことにより、調剤時に効能、用法用量から疑問に思えるようにする。
○処方された医薬品アレロックOD錠5(オロパタジン塩酸塩/その他のアレルギー用薬)
○間違えた医薬品アムロジンOD錠5mg(アムロジピンベシル酸塩/血管拡張剤)
(事例の内容)アレロックOD錠5のところ、アムロジンOD錠5mgで調剤し、その後の鑑査でも見落とした。(背景・要因)調剤者は、似た医薬品名で、当薬局で良く出る薬と思い込んで調剤した。鑑査者は、FAX処方で、すぐ来局する患者のため、焦っていた。(改善策)調剤後、鑑査後、再度ダブルチェックを徹底する。
○処方された医薬品ザンタック錠75(ラニチジン塩酸塩/消化性潰瘍用剤)
○間違えた医薬品ザイロリック錠100(アロプリノール/痛風治療剤)
(事例の内容)ザンタック錠75を調剤するところザイロリック錠100mgをピッキングした。鑑査時に間違いに気付いた。(背景・要因)忙しい時間帯で確認を怠った。名称が類似していて間違いを起こしやすい薬の在庫があることの意識が低かった。(改善策)名称が類似している薬を再度確認し、忙しい時間帯でも名称、規格まで確認を怠らない。
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
医薬品名(成分名/主な薬効) 事例の内容等
○処方された医薬品プルスマリンAドライシロップ小児用1.5%(アンブロキソール塩酸塩/去たん剤)
○間違えた医薬品プランルカストDS10%「サワイ」(プランルカスト/その他のアレルギー用薬)
(事例の内容)プルスマリンAドライシロップが処方されたがプランルカストDSを調剤した。散剤鑑査システムのジャーナルを確認したが間違いに気付かなかった。(背景・要因)調剤時は混雑していた。この薬剤はどちらも小児用薬剤である。しかもどちらも後発医薬品である。後発医薬品は同じ棚に配置しているため、この2剤は名称が類似していることで間違えたと思われる。同じ間違いは今まで1件もなかった。(改善策)プランルカストDSの瓶の目の前の棚に、新たにプランルカストDSの空き箱の名称部分を切り取り貼り付けた。調剤時、目に入ることでインシデントを防ぐ。
○処方された医薬品ペキロンクリーム0.5%(アモロルフィン塩酸塩/寄生性皮ふ疾患用剤)
○間違えた医薬品ベギンクリーム10%(尿素/皮ふ軟化剤(腐しょく剤を含む。))
(事例の内容)ベギン軟膏が名称変更になり、ベギンクリームとなった。類似名称としてペキロンクリームがあり、注意喚起は薬剤師、登録販売者に行っていたが、4月の改定の忙しい時期ではあったが、同じ日に 2回、薬剤師が間違ってピッキングした。鑑査で発見した。(背景・要因)注意喚起は名称変更時に職員で共有したが、忙しくなると間違えやすい名称である。(改善策)配置は最初から変えていたが、今回、ペキロンクリームの保管場所にペギンクリームに注意と記載した。
○処方された医薬品ラシックス錠20mg(フロセミド/利尿剤)
○間違えた医薬品ラミシール錠125mg(テルビナフィン塩酸塩/その他の化学療法剤)
(事例の内容)ラシックス錠を調剤するところ近くの棚のラミシール錠を調剤した。(背景・要因)医薬品名とヒートの色も似ている。棚が近かった。当薬局ではどちらも汎用されている。(改善策)棚を離した。
6)患者に薬を交付する前に取違えに気付いた理由と主な事例
患者に誤った医薬品を交付しなかったことを示す「実施なし」が選択されていた事例の内容や背景・
要因の項目には、患者に医薬品を交付する前に間違いに気付いた理由が記載されている事例があり、
それを分析することは、名称類似に関する医療事故を防止するために有用な情報であると考えられる。
そこで、「実施なし」であった事例153件について、誤りに気付いた理由を分析した。
その結果、実際には事例の内容や背景・要因の項目に、誤りに気付いた理由が記載されていない事
例が多かったが、記載されていた少数の事例から理由をまとめると、鑑査時に間違いに気付いた事例
が大部分を占めた。他には、調剤者による自己鑑査時に気付いた事例、調剤・鑑査した薬剤師とは別
の薬剤師が交付前に気付いた事例、一包化予製の間違いを処方せん受付時に鑑査して気付いた事例、
交付時に気付いた事例などが報告されていた。
患者に薬を交付する前に取違えに気付いた事例のうち、主な事例を次に示す。
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
患者に薬を交付する前に取違えに気付いた事例
医薬品名(主な薬効) 事例の内容等
鑑査時に気付いた事例
○処方された医薬品ミコンビ配合錠AP(血圧降下剤)
○間違えた医薬品ミカムロ配合錠AP(血圧降下剤)
(事例の内容)ミコンビ配合錠APのところミカムロAPでピッキングした。鑑査時に取違えに気付いた。(背景・要因)薬品名が似ている薬で注意しないといけなかったが、午前中の忙しい時間帯で確認しなかった。(改善策)ピッキング時に再確認を行うことを注意喚起する。
調剤者による自己鑑査時に気付いた事例
○処方された医薬品ノイロビタン配合錠(混合ビタミン剤(ビタミンA・D混合製剤を除く。))
○間違えた医薬品ノイロトロピン錠4単位(解熱鎮痛消炎剤)
(事例の内容)ノイロビタンで調剤するところをノイロトロピンで調剤し、自己鑑査時に気付いた。(背景・要因)ノイロまで名称が似ているので間違えた。(改善策)薬の在庫位置を離した。
調剤・鑑査した薬剤師とは別の薬剤師が交付前に気付いた事例
○処方された医薬品ツムラ治打撲一方エキス顆粒(医療用)(漢方製剤)
○間違えた医薬品ツムラ治頭瘡一方エキス顆粒(医療用)(漢方製剤)
(事例の内容)ほとんど受け付けたことのない医療機関からの処方せんを受け付けた。当薬局には在庫のない「治打撲一方」の処方のため、数時間後に再度来局してもらうということで、一旦、患者は帰宅した。卸問屋に急いで注文することとなったが、「89番の治打撲一方」と注文するところを、調べる段階で「59番の治頭瘡一方」と見間違えてしまい、「59番の治打撲一方」と注文したが、その際に卸問屋からの再確認は無かった。実際に届いた薬は「治頭瘡一方」であり、間違いに気付かず調剤した。鑑査した薬剤師も間違いに気が付かず準備トレイに置いて準備した。患者に渡す前に別の薬剤師が間違いに気付き、患者には「治打撲一方」を渡すことができた。(背景・要因)急いでいたための見間違いと、治頭瘡一方という薬を知らなかったために今回のような間違いが起きた。また、双方の薬とも番号の末尾が9であり、包装がピンク色であった。(改善策)急いで注文する場合であっても、一呼吸置いてから注文を行う。特に漢方などは末尾の番号が同一の場合は見た目が非常に似ているため、鑑査においても慎重に行う。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
医薬品名(主な薬効) 事例の内容等
一包化予製の間違いを処方せん受付時に鑑査して気付いた事例
○処方された医薬品エクア錠50mg(糖尿病用剤)
○間違えた医薬品エックスフォージ配合錠(血圧降下剤)
(事例の内容)定期薬で変更がないものは、一包化の予製をしている。数日前に予製したものを処方せん受付時に鑑査していて、薬の入れ間違いに気付いた。(背景・要因)予製を作成した時の状況は覚えていないが、薬品名の類似と、棚が隣だったことで、取違えたと思われる。また、予製の作成は単調になりやすいので、注意力が落ちていたのかもしれない。(改善策)ピッキング時の他に、分包時に分包機のパソコン画面での薬の確認を徹底する。
交付時に気付いた事例
○処方された医薬品アムロジンOD錠5mg(血管拡張剤)
○間違えた医薬品アムロジピンOD錠5mg「サワイ」(血管拡張剤)
(事例の内容)一包化で内服薬を管理している患者が来局。一包化を行う際、誤った薬剤を分包した。一包化を行った薬剤師とは別の薬剤師が鑑査を行ったが誤りに気付かなかった。さらに別の薬剤師が患者に交付する際、薬を確かめつつ説明を行おうとしたところ、誤りに気付き、分包し直して交付した。(背景・要因)アムロジンOD錠5mgとアムロジピンOD錠5mgという、名称の似ている薬剤の取違えであった。(改善策)名称の似た薬剤の名称表記の部分に印をつけ、名称の似た薬剤があることを注意喚起した。
7)薬局から報告された主な改善策
(1)入力時
○ 医薬品名、剤形、規格と細かく分けて確認し入力する。
○ 入力後に再度確認をする。
○ 3文字で検索する。
(2)調剤時および鑑査時
①医薬品の確認について
○医薬品名、規格を一文字ずつ確認する。
○薬剤情報提供文書または薬袋に記載してある医薬品名や画像と照合する。
○ 漢方薬は名称が類似しているものが多いため、一文字ずつ確実に確認し、薬剤情報提供文
書の写真、番号も確認する。
○後発医薬品はメーカー名も確認する。
○指差し、声出し確認をする。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
Ⅲ
【1】
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
○分包時は、分包機のパソコン画面で医薬品名を確認する。
○医薬品の識別番号を確認する。
②調剤時、鑑査時の手順等について
ⅰ調剤時
○薬品名を読み上げてから棚から取り出す。
○ピッキング後に再度処方せんと照合し確認する。
○ 指差し、声出し、ダブルチェックを行い、調剤した薬が間違いない事を確認してから
鑑査へ回す。
ⅱ鑑査時
○処方内容と調剤された薬を照合し、処方せんにチェックする。
○ 声出し確認し、処方せんの規格に鉛筆でチェックを入れ、さらに薬剤情報提供文書を
チェックした上で薬袋に入れる。
(3)交付時
○患者または患者の代理に薬剤を見せ、薬剤情報提供文書の画像とも照らし合わて相互確認をする。
(4)電子薬歴、レセプトコンピュータの活用
○電子薬歴に取違え注意と入力し、入力時に毎回ポップアップで表示されるようにする。
(5)人員配置
○薬剤師が一人の時間帯がないように人員配置を見直す。
(6)調剤室の環境
①薬品棚の配置について
○名称類似医薬品の配置場所を離す。
○名称類似医薬品を同じ引き出しに入れ、前後で区切り、医薬品名を記したカバーをつける。
②薬品棚等への表示
○薬品棚の引き出しに、「名称類似医薬品あり」等のタグをつけ取違えないよう注意喚起する。
(7)知識の習得、情報の共有
○漢方薬には類似した名称があることをスタッフ全員で再認識する。
○名称類似医薬品の組み合わせを調べ、スタッフに周知する。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
Ⅲ
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
8)名称類似に関する薬局ヒヤリ・ハット分析表
本事業では、集計、分析の結果を年報に掲載するとともに、薬局における調剤などの業務の合間
でも見やすいように視認性に配慮し、また、短時間の研修にも使用しやすいように情報を絞り込んだ
「薬局ヒヤリ・ハット分析表」を作成し、その活用促進を図っている。「薬局ヒヤリ・ハット分析表」
は、年報の巻末に掲載するとともに、PDF形式でホームページに掲載している。平成25年年報
(2013年)に掲載した名称類似に関する薬局ヒヤリ・ハット分析表を図表1- 16に示す。本年報
における分析の結果から作成し、巻末に掲載している「薬局ヒヤリ・ハット分析表」と併せてご活用
いただきたい。
なお、「薬局ヒヤリ・ハット分析表」のURLは、次の通りである。
http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/contents/analysis_table/index.html
図表1-16 平成25年年報に掲載した名称類似に関する薬局ヒヤリ・ハット分析表
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
9)本事業のデータベース等の活用による注意喚起
本事業および医療事故情報収集等事業の事例データベース等を活用して、製薬企業から注意喚起が
行われている。これまでに、「マイスリーとマイスタン」、「セロクエルとセロクラール」「エクセグラン、
エクセミド、エクセラーゼ」などについて、名称類似医薬品同士の取違えについての注意喚起が行わ
れてきた。
「アルマールとアマリール」については、製薬企業より2009年1月に取違え事故防止対策の注
意喚起が行われた後、2012年1月に本事業の公開データ検索システムの事例を引用した注意喚起
が公表された。その後、アルマール錠はアロチノロール塩酸塩錠「DSP」に名称変更されている。
また、「ノルバスクとノルバデックス」については、製薬企業から2012年3月に本事業の成果を
引用した注意喚起が行われ、その後2012年9月、2013年4月にも注意喚起が行われた(図表
1- 17)。さらに、2014年7月には医療事故情報収集等事業の報告書から事例を引用し、医療機
関の処方オーダシステムにおける選択間違いに対する注意喚起も行われている。
図表 1-17 ノルバスクとノルバデックスの取り違えに関する注意喚起
医療事故情報収集等事業、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の公開データを活用
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
10)医療事故収集等事業において公表した名称類似に関連する情報
薬局では、誤って医薬品が交付された後の患者への影響を把握することが必ずしも出来るとは限ら
ないことから、医薬品の取違えによって患者に一定以上の影響を及ぼした事例が含まれる医療事故情
報収集等事業の分析結果や医療安全情報などを活用することは、薬局にとっても有用と考えられる。
そこで、医療事故情報収集等事業において公表した情報の中で、医薬品の名称類似に関連する情報
を紹介する。医療安全情報No. 4「薬剤の取り違え」(2007年3月公表)、医療安全情報No. 68
「薬剤の取り違え(第2報)」(2012年7月公表)を図表1- 18、図表1- 19に示す。
図表1-18 医療安全情報No. 4「薬剤の取り違え」
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
図表1-19 医療安全情報No. 68「薬剤の取り違え(第2報)」
また、医療事故情報収集等事業の報告書に掲載された名称類似医薬品の事例を紹介する。
「ノルバスクとノルバデックス」は頭文字3文字が一致している組み合わせで、主な薬効が異なり、
ハイリスク薬を含むことから、特に注意を要する事例である。事例1の背景・要因には、保険薬局で
おかしいと思ったが医療機関へ問い合わせていなかったことが挙げられており、処方間違いによる
医療事故を防止するためには適切な疑義照会が重要であることが示唆される。
事例1【内容】当院受診され、ノルバスク10mgの処方を希望された。海外の紹介状を担当医が読み、
ノルバスク10mgを処方するためにオーダリング画面を開いた。「ノルバ」と入力したところ、
ノルバスクに続いてノルバデックスが表示された。10mgを処方しようとして、10とあった
ノルバデックスを選択し処方した。保険薬局で3 ヶ月分の処方がされ内服された。内服薬が終了し、
次の処方を出してもらうため他院へ行ったところわかった。約2週間後に電話で問い合わせの連
絡があった。
【背景・要因】オーダリングシステムの不備がある。処方を担当医が出力した後、担当医がその内容を十分に
確認を行っていない。また、処方した内容について患者にわかりやすく処方内容や内服方法、副
作用等の説明を行っていない。保険薬局でおかしいと思ったとのことであったが、病院側へ問い
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
合わせていない。患者は処方された薬の説明書で、ノルバデックスについての説明を受けている
(悪い細胞を増えすぎるのを抑える薬です)が、誤りに気付いていない。※ 医療事故情報収集等事業第35回報告書11)(2013年12月)143頁「医療機関と薬局の連携に関連した医療事故」より
事例2【内容】外来を臨時に担当した医師Aは前医の紹介状に基づき降圧剤ノルバスク錠(5mg)1錠を処
方しようとしたが、誤ってノルバデックス錠(20mg)1錠を1週間分、臨時処方した。以後、
医師B(主治医)はノルバデックス錠が前医で追加処方されたものと思い込み、11ヵ月にわた
り誤処方を継続した。
【背景・要因】・ 医師Aが最初に誤処方した日は外来および病棟業務が多忙であり、医師Aはノルバデックス錠
がノルバスク錠の後発医薬品と思い込み、薬効および用量の確認を怠った。
・ 医師B(主治医)は、ノルバデックスが前医で追加処方されたものと勘違いし、前医の紹介状
を改めて確認することなく、誤処方を継続した。
・ 医事システムにおける処方薬剤の検索は3文字検索となっており、「ノルバ」と入力すると
ノルバデックスしか表示されず、抗腫瘍薬であることの警告表示はなかった。
・ 適用外の薬剤処方は、通常、診療報酬審査時に査定されるが、本件は指摘がなされなかった。
※ 医療事故情報収集等事業 第38回報告書(2014年9月)12)154頁「後発医薬品に関する誤認から適切な薬物療法がなされなかった事例」より
11)医薬品の名称類似性の客観的評価
名称類似性による医薬品の取違えを防ぐために、名称類似性を客観的に評価するための研究成果を
取りまとめた「厚生科学研究費補助金 特別研究事業 医療事故防止のための医薬品基本データベー
スの開発・運用 平成13年度 特別研究報告書」にしたがって、「医薬品類似名称検索システム」
(https://www.ruijimeisho.jp/)10)が開発された。現在、日本医薬情報センター(JAPIC)がそ
のシステムの運営を行っている。
このシステムを用いることで、以下に示す10の指標を用いて医薬品の名称類似性を数値化するこ
とが出来ることから、薬局における採用薬同士や採用薬と新規採用薬との名称類似性を比較すること
が出来る。これは名称類似の医療事故防止に有用であると考えられるので、ここに紹介する。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
図表1-20 指標の定義
指標 意味
edit置き換え、挿入、削除という編集の基本的な操作を何回行うことにより両者を一致させることが可能かを示す値
head 先頭からの文字の一致した文字数
dlen それぞれの語幹の文字長の差
cos1 1文字単位での構成文字の類似度係数
htco 先頭及び末尾2文字の類似度係数
cos2 2文字単位での構成文字の類似度係数
tail 末尾からの文字の一致した文字数
ehcos1 先頭の1文字を除いた1文字単位での構成文字の類似度係数
h3cos1 先頭3文字における1文字単位での構成文字の類似度係数
t3cos1 末尾3文字における1文字単位での構成文字の類似度係数
当該システムを用いて、ブランド名の「アロテック」と名称が類似するブランド名を検索した結果
を以下に示す。
例) 医薬品名:「アロテック」、第1キー:「edit」、第2キー:「head」、第3キー:「cos1」
として検索した結果
図表1-21 「アロテック」の検索結果
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
Ⅲ
【1】
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
検索の場合、「アロテック」と名称が類似する医薬品として、痛風治療剤である「アロック」や気管
支拡張剤である「ベロテック」、不整脈用剤である「アロテノ」などが検索された。例えば「アロック」
は「テ」の文字を1回挿入すると「アロテック」になるので、「edit」=「1」、頭文字は「アロ」
の2文字が共通しているので「head」=「2」といった要領で表示されている。
12)考察
(1)名称類似の考え方
○ 名称の類似性については、平成21年~平成24年年報(2009年~2012年)においては、
販売名の頭文字の一致に着目し、2文字のみ、3文字以上の2つに分けて集計、分析してきた。
しかし、名称の類似性には、頭文字の一致の他にも音韻的な類似性、視覚的な類似性などいく
つかの着眼点があると考えられる。そこで、平成25年年報(2013年)より、頭文字が
2文字以上一致している医薬品の組み合わせ以外で、事例の背景・要因などの記述部分に、販
売名が類似していることにより取違えた、またはそのことが推測される内容が記載されている
事例についても分析を行っており、本年報でも分析を行った。
(2)報告件数
○ 2014年に報告された「薬剤取違え」の事例817件のうち、名称類似に関する事例は
246件(30.1%)であった。そのうち、頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例
は62件(7.6%)、3文字以上一致している医薬品の事例は153件(18.7%)、その他
の名称類似医薬品の事例は31件(3.8%)であった。頭文字が3文字以上一致している医
薬品の事例の割合が最も多く、2013年と比較して同様の傾向を示していた。
(3)頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例の分析
○ 頭文字が2文字のみ一致している医薬品の事例62件のうち、「処方された医薬品」と
「間違えた医薬品」の主な薬効が異なる事例は5件(8.1%)、主な薬効が同じ事例は55件
(88.7%)、その他(漢方製剤同士の組み合わせ)が2件(3.2%)で、主な薬効が同じ事
例が大部分を占めていた。また、主な薬効が異なる事例は全て、患者に対する誤った医薬品の
交付は「実施なし」であった。
○ 複数回報告された組み合わせは9通りあり、全て主な薬効が同じであった。報告回数が多かっ
た組み合わせは、「マグミットとマグラックス」が7回、「セフカペンピボキシル塩酸塩と
セフジトレンピボキシル」が6回などであった。
○ 主な薬効が異なる医薬品の組み合わせとして、「ファムビルとファロム」、「プロパジールと
プロへパール」、「ベタセレミンとベタヒスチンメシル酸塩」、「ペルジピンとペルサンチン」、
「ムコダインとムコスタ」があった。また、成分の異なるハイリスク薬を含む医薬品の組み合
わせとして、「グリクラジドとグリベンクラミド」、「グルファストとグルベス」、「ノボリンと
ノボラピッド」、「レボメプロマジンとレボトミン」があった。これらの組み合わせは患者に与
える影響が大きくなる可能性があるため、特に注意が必要である。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
Ⅲ
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
○ 複数の医薬品の組み合わせが報告された頭文字2文字のパターンとしては、「セフ」が4通り
で最も多かった。また、「プロ」「「ムコ」はそれぞれ2通りあったが、いずれも主な薬効の異
なる組み合わせを含むため、注意を要するパターンであると考えられた。
(4)頭文字が3文字以上一致している医薬品の事例の分析
○ 頭文字が3文字以上一致している医薬品の事例153件のうち、「処方された医薬品」と「間違
えた医薬品」の主な薬効が同じ事例は102件(66.7%)、主な薬効が異なる事例は17件
(11.1%)、その他(漢方製剤同士の組み合わせ)が34件(22.2%)であった。主な薬
効が異なる事例17件のうち患者に対する誤った医薬品の交付の「実施あり」は8件であった。
○ 複数回報告された組み合わせは27通りあり、「アムロジピンとアムロジン」が15回、「ロキ
ソニンとロキソプロフェンナトリウム(またはNa)」が12回と多かった。
○ 主な薬効が異なる医薬品の組み合わせとして、「アスパラ-CAとアスパラカリウム」、「イン
タール点眼液とインタール点鼻液」、「ザジテン点鼻液とザジテン点眼液」、「ゾビラックス眼軟
膏とゾビラックス軟膏」、「ノイロビタンとノイロトロピン」が2013年に引き続き報告され
た。これらの組み合わせは患者に与える影響が大きくなる可能性があるため、特に注意が必要
である。
○ 複数の医薬品の組み合わせが報告された頭文字3文字以上のパターンとしては、「クラリ」が
4通りで最も多かった。また、「クラリ」は主な薬効の異なる組み合わせを含むため、注意を
要するパターンであると考えられた。
(5)その他の名称類似医薬品の事例の分析
○ 頭文字が2文字以上一致している医薬品以外の事例で、医薬品名が類似していることにより薬
剤を取違えた事例は31件あった。このうち、「処方された医薬品」と「間違えた医薬品」の
主な薬効が同じ事例は16件(51.6%)、主な薬効が異なる事例は14件(45.2%)、そ
の他(漢方製剤同士の組み合わせ)が1件(3.2%)であった。主な薬効が異なる事例14
件のうち患者に対する誤った医薬品の交付の「実施あり」は2件と少なかった。
○ 複数回報告された組み合わせは3通りあり、「ミカムロとミコンビ」が4回、「ラニチジンとラ
フチジン」、「ロフラゼプ酸エチルとロラゼパム」がそれぞれ2回報告された。
○ 主な薬効が異なる医薬品の組み合わせや成分の異なるハイリスク薬を含む医薬品の組み合わせ
は合わせて15通りあり、このうち「アテレックとアレロック」は2013年に引き続き報告
された。これらの組み合わせは患者に与える影響が大きくなる可能性があるため、特に注意が
必要である。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
(6)患者に薬を交付する前に取違えに気付いた理由と主な事例
○ 患者に医薬品を交付しなかったことを示す「実施なし」が選択されていた事例を分析すると、
鑑査で間違いに気付いた事例が多かった。
○ 鑑査以外の時点で間違いに気付いた事例としては、調剤者による自己鑑査時に気付いた事例、
調剤・鑑査した薬剤師とは別の薬剤師が交付前に気付いた事例、一包化予製の間違いを処方せ
ん受付時に鑑査して気付いた事例、交付時に気付いた事例などがあった。
○ 誤りを発見した理由が記載されている事例は、同種事例の防止に活用できる重要な報告であり、
今後もご報告いただければ幸いである。
(7)薬局から報告された主な改善策
○ 薬局から報告された改善策について、入力時、調剤時及び鑑査時、交付時などに整理して紹介
した。
○ 調剤時や鑑査時の確認に関することの他に、人員配置や調剤室の環境に関する改善策も報告さ
れていた。
○ いずれも、どのような薬局においても実施可能かつ有効な改善策であると思われるので、参考
にしていただきたい。
13)まとめ
本事業では、平成21年年報(2009年)から毎年継続して名称類似に関するヒヤリ・ハットの
集計、分析を行っている。本年報においても、頭文字が2文字のみ一致している組み合わせ、頭文字
が3文字以上一致している組み合わせ、その他の名称類似医薬品などについて分析を行った。また、
患者に交付する前に誤りに気付いた事例における誤りに気付いた理由や、具体的な改善策を紹介した。
また、関連情報として、医療事故情報収集等事業の報告事例や医療安全情報、名称の類似性を検索
できるWeb上のシステムなどを紹介した。
名称類似に関する事例は継続して報告されている。薬局や製薬企業においては、本年報で分析した
結果やその他の関連情報などを活用しながら、名称類似による医療事故の発生や再発を防止するため
の取り組みを続けることが重要である。
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Ⅲ 薬局ヒヤリ・ハット事例の分析薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年年報
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【8】名称類似に関するヒヤリ・ハット
参考資料
1) 公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業.平成 18 年年報.2007.
http://www.med-safe.jp/pdf/year_report_2006.pdf (参照 2015-6-12).
2) 公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業.医療安全情報 No.4「薬剤の取
り違え」.2007-3. http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_4.pdf(参照 2015-6-12).
3) 公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業.医療安全情報 No.68「薬剤の
取り違え(第2報)」.2012-7. http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_68.pdf(参照 2015-6-
12).
4) 公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業.第21回報告書.2010.
http://www.med-safe.jp/pdf/report_21.pdf(参照 2015-6-12).
5) 公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業.第25回報告書.2011.
http://www.med-safe.jp/pdf/report_25.pdf(参照 2015-6-12).
6) 公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業.第29回報告書.2012.
http://www.med-safe.jp/pdf/report_29.pdf(参照 2015-6-12).
7) 日本病院薬剤師会.“処方点検や調剤時、病棟への供給時に注意を要する医薬品について”.
2003-11-12. http://www.jshp.or.jp/cont//031112.pdf (参照 2015-6-12).
8) 厚生労働省医政局 , 厚生労働省医薬食品局.“医政発 第 1127004号 , 薬食発 第 1127001号「医
療機関における医療事故防止対策の強化について」”.厚生労働省.2003-11-27. http://www.
mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/1/torikumi/naiyou/bousikyouka/tuuchi.html (参照
2015-6-12).
9) 厚生労働省医薬食品局.“医薬品・医療用具等安全性情報202号”.厚生労働省.2004-6.
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/06/h0624-2/ (参照 2015-6-12).
10) 一般財団法人日本医薬情報センター.“医薬品類似名称検索システム”. https://www.
ruijimeisho.jp/(参照 2015-6-12).
11) 公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業.第35回報告書.2013.
http://www.med-safe.jp/pdf/report_35.pdf (参照 2015-6-12).
12) 公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業. 第38回報告書.2014.
http://www.med-safe.jp/pdf/report_38.pdf (参照 2015-6-12).