ú¯ £ ; ß¿...\w ® w 6 þ¯x z ë çŵ« ç ¢ Ý Í£UA X Q w ú þq`o ¯`o M b{\O`h ú þxzx...

104
「生物」 教師用参考資料 2016 年 第1回試験(2015 年改訂) ディプロマプログラム(DP)

Transcript of ú¯ £ ; ß¿...\w ® w 6 þ¯x z ë çŵ« ç ¢ Ý Í£UA X Q w ú þq`o ¯`o M b{\O`h ú þxzx...

「生物」教師用参考資料

2016年 第1回試験(2015年改訂)

ディプロマプログラム(DP)

「生物」教師用参考資料

2016年 第1回試験(2015年改訂)

ディプロマプログラム(DP)

2014年8月に発行の英文原本 Biology teacher support material の日本語版

2014年11月発行(2015年改訂)

本資料の翻訳・刊行にあたり、

文部科学省より多大なご支援をいただいたことに感謝いたします。

注: 本資料に記載されている内容は、英文原本の発行時の情報に基づいています。なお、日

本語版「生物」教師用参考資料には、「個人研究」の採点例は含まれていません。

ディプロマプログラム(DP)

「生物」教師用参考資料

International Baccalaureate Organization15 Route des Morillons, 1218 Le Grand-Saconnex, Geneva, Switzerland

International Baccalaureate Organization (UK) LtdPeterson House, Malthouse Avenue, Cardiff Gate

Cardiff, Wales CF23 8GL, United Kingdom

www.ibo.org

© International Baccalaureate Organization 2014

www.ibo.org/copyrighthttp://store.ibo.org

[email protected]

International Baccalaureate Baccalauréat International Bachillerato InternacionalInternational Baccalaureate Organization

IBの使命IB mission statement

この「IBの学習者像」は、IBワールドスクール(IB認定校)が価値を置く人間性を10 の人物像として表しています。こうした人物像は、個人や集団が地域社会や国、そしてグローバルなコミュニティーの責任ある一員と

なることに資すると私たちは信じています。

3

探究する人私たちは、好奇心を育み、探究し研究するスキルを身につけます。ひとりで学んだり、他の人々と共に学んだりします。熱意をもって学び、学ぶ喜びを生涯を通じてもち続けます。

知識のある人私たちは、概念的な理解を深めて活用し、幅広い分野の知識を 探究します。地域社会やグローバル社会における重要な課題や 考えに取り組みます。

考える人私たちは、複雑な問題を分析し、責任ある行動をとるために、批判的かつ創造的に考えるスキルを活用します。率先して理性的で倫理的な判断を下します。

コミュニケーションができる人私たちは、複数の言語やさまざまな方法を用いて、自信をもって創造的に自分自身を表現します。他の人々や他の集団のものの見方に注意深く耳を傾け、効果的に協力し合います。

信念をもつ人私たちは、誠実かつ正直に、公正な考えと強い正義感をもって行動します。そして、あらゆる人々がもつ尊厳と権利を尊重して行動します。私たちは、自分自身の行動とそれに伴う結果に責任をもちます。

心を開く人私たちは、自己の文化と個人的な経験の真価を正しく受け止めると同時に、他の人々の価値観や伝統の真価もまた正しく受け止めます。多様な視点を求め、価値を見いだし、その経験を糧に成長しようと努めます。

思いやりのある人私たちは、思いやりと共感、そして尊重の精神を示します。人の役に立ち、他の人々の生活や私たちを取り巻く世界を良くするために行動します。

挑戦する人私たちは、不確実な事態に対し、熟慮と決断力をもって向き合います。ひとりで、または協力して新しい考えや方法を探究します。挑戦と変化に機知に富んだ方法で快活に取り組みます。

バランスのとれた人私たちは、自分自身や他の人々の幸福にとって、私たちの生を構成する知性、身体、心のバランスをとることが大切だと理解しています。また、私たちが他の人々や、私たちが住むこの世界と相互に依存していることを認識しています。

振り返りができる人私たちは、世界について、そして自分の考えや経験について、深く考察します。自分自身の学びと成長を促すため、自分の長所と短所を理解するよう努めます。

IBの学習

者像

IBの学習者像すべての IBプログラムは、国際的な視野をもつ人間の育成を目指しています。人類に共通する人間らしさと地球を共に守る責任を認識し、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する人間を育てます。

IBの学習者として、私たちは次の目標に向かって努力します。

「生物」教師用参考資料 ix

目次

はじめに 1教師用参考資料の目的 1

科学の本質(NOS) 2

国際的な視野 5

授業の構成 7授業計画 7

サブトピックの配当授業時間数 8

HLクラス授業計画 11

SLクラスの授業計画 13

SL・HL合同クラスの授業計画 15

サブトピックの学習活動の計画 17はじめに 17

サブトピックのページの指導案 19

学習活動1:学習のポイント 20

学習活動2:受動輸送 21

学習活動3:「認知学習言語運用能力」(CALP) 22

学習活動4:能動輸送 24

学習活動5:浸透圧の調査 25

学習活動6:腎臓透析 27

学習活動7:臓器提供 29

学習活動8:高分子の輸送 30

学習活動9:まとめのシート 31

認知学習言語運用能力(CALP) 32「認知学習言語運用能力」(CALP)活用のための枠組み 32

情報コミュニケーション技術 42はじめに 42

スマートフォンの使用 49

シミュレーションの使用に関する指針 56

実習 59はじめに 59

生物学におけるデータの提示 61

グループ4プロジェクト 65

IB認定校における動物の取り扱いに関するガイドライン 67

内部評価 71個人研究の実施 71

内部評価の評価規準 75

内部評価規準の使用に関する指針 80

付録 83シラバスの内容の変更点 83

日本語版「生物」教師用参考資料には、「個人研究」の採点例は含まれていません。採点

例については、英語版の教師用参考資料をご参照ください。

「生物」教師用参考資料 1

はじめに

教師用参考資料の目的

「『生物』教師用参考資料」(TSM:teacher support material)へようこそ。「『生物』指導

の手引き」(2016年第1回評価)では、「生物」のカリキュラムにいくつかの重要な改訂が

行われました。本資料は「生物」の指導経験がある教師や、これから「生物」の指導に乗

り出そうとする教師が、新しい「指導の手引き」に従って授業を構成したり、組み直した

りするのをサポートするためのものです。

この教師用参考資料は、以下の3点を目的としています。

•教員としての年数にかかわらず、担当教師が授業を組み立て、授業を行うことをサ

ポートする。

•教師が実習を計画することをサポートする。

•IBの教員研修を補完する。

この教師用参考資料では、新しい「指導の手引き」における「科学の本質」や「国際的

な視野」の取り扱いといった概要的な内容のほか、上級レベル(HL)と標準レベル(S

L)の別を問わず、ディプロマプログラム(DP)の「生物」の授業に特有の考慮事項な

どを取り上げています。また本資料には、サブトピックの内容をどのようにクラス内での

学習活動として取り入れるかについてのセクションがあり、個人研究の組み立てや評価に

関する全体的な概念や指導をサポートするほか、実習に関する役立つ情報も盛り込まれて

います。

本資料は、「生物」を担当する経験豊かな専門教員によって執筆されました。授業計画や

授業実践で教師をサポートすることを目的としていますが、IBの「生物」にまつわるあ

らゆる問題点を解決する処方箋、あるいは百科事典のようなものと位置づけられているわ

けではありません。

「生物」教師用参考資料2

はじめに

科学の本質(NOS)

「科学の本質」についての考え方新カリキュラムでは、「科学の本質」(NOS)という観点を明確に打ち出しています。

「科学の本質」では、さまざまな科学分野で科学者がどのように対象に取り組んでいるの

か、各科学分野では、それぞれに異なりながらも補完し合い、時に重複する科学的方法を

どのように用いているのか、また、すべての科学分野に共通する問題にはどのようなもの

があるかなどについて考察します。「指導の手引き」では、「科学の本質」の項でさまざま

な具体例を取り上げています。

新カリキュラムでは、「科学の本質についての考察が理科教育には不可欠であり、『科学

の本質』の学習を理科のカリキュラムに明確に組み込まない限り、科学の本質は十分に理

解されず、価値を置かれることがない」とする研究結果を踏まえ、「科学の本質」を導入し

ました。「科学の本質」の導入は、現在、IBの理科教師の間で「最善の試み」として受け

止められています。

新しい「指導の手引き」では、「科学の本質」を表面的な追加項目として扱うのではな

く、あくまでも新カリキュラムの全体に組み込むことを意図しています。「科学の本質」

は、通常の授業の一部として捉えられるべきものであり、当然のことながら試験問題の一

部として評価の対象となります。具体的には、試験問題の見本や、本資料の「サブトピッ

クの学習活動の計画」に関するセクションで挙げられている各学習活動で見ることができ

ます。

ただし、新カリキュラムにおいても、理科の各科目は、物理、化学、生物の知識と理解

を身につけることを主眼としていることには変わりありません。「科学の本質」は、指導

や学習の方法の中に統合的に組み込まれるものであることを念頭に置くようにしてくださ

い。「科学の本質」は、そのものを単独で教えたり、評価したりする性質の要素ではありま

せん(この点が、「科学の本質」に主眼を置き、いくつかの科学的トピックを単なる例とし

て取り上げる他の授業とは対照的なところです)。

「科学の本質」の説明「科学の本質」を考察することは、「生物」「化学」「物理」の各科目に共通するテーマで

す。そのため「生物」「化学」「物理」のいずれの「指導の手引き」にも「科学の本質」と

題したセクションが設けられています。「『科学の本質』とは何か」を教師が理解するため

の参考としてください。21世紀における「科学の本質」とは何かをについての包括的な説

はじめに

「生物」教師用参考資料 3

明は、「指導の手引き」の「科学の本質」の項を参照してください。本資料では、指導また

は評価に関して、上記3科目のテーマすべてを詳細に取り上げることはしていません。

「指導の手引き」では、「科学の本質」の各段落に 1.1、1.2 などの番号がつけられていま

す。シラバスには、「『科学の本質』(NOS)との関わり」の欄があり、関連する段落の番

号と要点が明記されています。

「科学の本質」とシラバス「指導の手引き」のシラバスにある「『科学の本質』(NOS)との関わり」の欄には、学

習内容の例が示されています。各サブトピックの上に記載された内容は、そのサブトピッ

クの中で行われる理解や知識・スキルの活用を通じて、1つあるいは複数の「科学の本

質」のテーマがどのように例証されることができるかを述べています。これは、「『科学の

本質』(NOS)との関わり」の欄の記載内容に関して詳述したものとお考えください。そ

れは、「指導の手引き」の「科学の本質」のセクションの具体例と直接関連づけられてお

り、教師が取り扱うべきテーマに対する理解を深める補助ツールとして使用することがで

きます。

「科学の本質」と評価「科学の本質」は、SLおよびHLの筆記試験の各試験問題(「試

ペ ー パ ー

験問題1」「試ペ ー パ ー

験問題

2」「試ペ ー パ ー

験問題3」)で評価されます。「科学の本質」が単独で試験問題として出題されるこ

とはありません。各科目の文脈の中に位置づけられて出題されます。出題例に関しては、

オンラインカリキュラムセンター(OCC)上の試験問題の見本を参照してください。

「科学の本質」と「知の理論」(TOK)「指導の手引き」の「科学の本質」は、「知の理論」(TOK)が取り扱う知識の領域のう

ち、「自然科学」と呼ばれる領域の対象となります。教師用参考資料での「科学の本質」と

TOKの関連は、TOKの担当教師が特定のTOKの授業で取り上げたり、理科教師がグ

ループ4の授業で取り上げたりすることが可能です。教科学習の領域の内外でTOKの指

導が行われることは、自然で望ましいことであり、理科教育と矛盾するものではありませ

ん。

「指導の手引き」における「科学の本質」とTOKの違いは以下の通りです。

•「物理」「化学」「生物」の「指導の手引き」では、「科学の本質」に関する記述(各

サブトピックの1行目)は、その背景となる科学的な例に言及しています。

•一方、TOKに関する記述(各サブトピックの右欄)は、科学的トピックに端を発

し、一般的なTOKの「知識に関する問い」へと展開されます。

はじめに

「生物」教師用参考資料4

TOKについては、「所定課題エッセイ」(TOKエッセイ)で評価が行われるため、理

科の各科目では「指導の手引き」で挙げられているTOKの項目についての評価は行われ

ません。

「科学の本質」と「ねらい8」「ねらい8」は、倫理面に関係した要素です。生徒は、グローバルな社会の一員として科

学技術を用いることの倫理的な影響を批クリティカル

判的に認識します。

特に「科学の人間的な側面」と「科学の知識と科学の一般的な理解」の項では、「ねらい

8」と「科学の本質」が明らかに重なり合っています。

役立つリンクカリフォルニア大学古生物学博物館によるウェブサイト「Understanding Science(科学を

理解する)」(http://undsci.berkeley.edu/)は、科学の本質に関して、教師や生徒に役立つ幅

広いリソースを提供しています。内容は、定期的にアップデートされています。「指導の手

引き」の「科学の本質」のセクションに図を転載していますので参照してください。

科学の本質の倫理面に関しては、以下のウェブサイトに指導や学習に役立つ多くのリ

ソースがあります。

生物と倫理教育プロジェクト(BEEP):www.beep.ac.uk/content/index.php

物理と倫理教育プロジェクト(PEEP):www.peep.ac.uk/content/index.php

科学と倫理一般に関するリンク

scienceonline.tki.org.nz/Nature-of-science/Nature-of-Science-Teaching-Activities

生徒は、理科の学習を通じて「科学の本質」を学び、その理解をより巧みに応用できる

ようになることが望まれています。「科学の本質」を深く理解することで、科学的主張に対

して知識のある判断を下し、科学技術の発展から生じ、自分たちに影響が及ぶ重要な社会

的問題を理解し判断することができるようになることを目指します。

「生物」教師用参考資料 5

はじめに

国際的な視野

「国際的な視野」は、すべてのIB科目における重要な要素です。IB教育では、教師

全員がそれぞれの科目の専門性を超えた役割と責任を有していることが特色となっていま

す。国際的な視野は、「IBの使命」に組み込まれているほか、「IBの学習者像」にも明

示されています。「IBの学習者像」では、「すべてのIBプログラムは、国際的な視野を

もつ人間の育成を目指しています。人類に共通する人間らしさと地球を共に守る責任を認

識し、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する人間を育てます」としています。

科学は常に国際的な試みであり続けてきました。現代におけるグローバルな規模の科学

は、何世紀にもわたり国境を越えて考えが交換されてきた結果です。科学の発展には、イ

ンドや中国、アラビアなどの多くの異なる文明による長い時間をかけての貢献が不可欠で

した。教師は、さまざまなトピックを教えるにあたり、この貢献をウェブサイトの年表な

どを利用して強調することが推奨されています。

•www2.gsu.edu/~mstnrhx/9870/science.htm

•trailblazing.royalsociety.org/

•www.physics.ohio-state.edu/~wilkins/science/sctmln.html

•en.wikipedia.org/wiki/Category:Science_timelines

「科学年表」と検索すると、より多くの年表が検索結果として表示されます。ウィキペ

ディアの「History of science(科学史)」の項も、この点において価値のあるリソースです。

理科の各科目の「指導の手引き」の「科学とその国際的側面」と題されたセクションで

は、科学における「国際的な視野」がより深く展開されています。理科のシラバスには、

必要に応じて、科学の国際的側面を例示するサブトピックの具体例が示されています。

最も広い意味での「科学的方法」とは、開かれた心と自由な思考に重点を置き、政治

的、宗教的な境界や、国境を越えるものです。これは「指導の手引き」の「科学の本質」

のセクションの 1.6、1.12、3.7、4.1 ~ 4.5、4.8、5.5 に示されています。教師は、新カ

リキュラムでの「科学の本質」の重点を踏まえつつ、授業を行う際に実際に用いられてい

る科学的方法を示すこともできます。理科の各科目の「指導の手引き」では、サブトピッ

クのレベルで具体例が示されています。

グローバルなレベルでは、現在、科学を推進するために多くの国際機関が存在していま

す。科学が重要な位置を占める国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連環境計画(U

NEP)、世界気象機関(WMO)などの国連機関がよく知られていますが、さらに分野別

に何百もの国際的な機関があり、そのほとんどすべての機関には独自のウェブサイトがあ

ります。

はじめに

「生物」教師用参考資料6

物理学で用いられる粒子加速器やヒトゲノム計画のような大規模な実験科学の施設は費

用がかかるため、多くの国々からの協力的財政支援が必要になります。そのような研究か

ら得られたデータは、全世界の科学者の間で共有されます。生徒は理科の学習を通じて、こ

うした国際的な科学機関の充実したウェブサイトにアクセスし、科学の国際的側面につい

ての認識を高めることが奨励されています。これらのウェブサイトは有益な教育的リソー

スであり、DPの理科の各科目を学ぶ生徒の学習に適した項目がある場合もあります。例

えば、欧州原子核研究機構(CERN)や欧州宇宙機関(ESA)のウェブサイトでは、

IBの「物理」で扱う題材が取り上げられています。

気候変動からエイズまで、多くの科学的問題は本来、国際的なものであり、多くの分野

で研究のための国際的な取り組みが行われています。「気候変動に関する政府間パネル」

(www.ipcc.ch)の報告は、この典型的な例です。こうした研究のための国際的な取り組み

の形態を、生徒が取り組む理科の共同研究である「グループ4プロジェクト」に取り入れ

ることも可能です。他の地域のIBワールドスクール(IB認定校)の生徒との共同研究

として取り組むのです。

「科学的知識には、社会を変革する大きな力があります。科学的知識には、多大な普遍的

利益を生み出す可能性もあれば、不平等を拡大し、人々と環境に害を引き起こす可能性も

あります」――「IBの使命」を踏まえ、生徒は理科の学習を通じて「科学者には、科学

の知識やデータをすべての国々で公平に利用できるようにする道徳的責任と、持続可能な

社会を発展させるよう知識やデータを用いることのできる科学的能力をもつ道徳的責任が

あること」を認識する必要があります。

参考文献Brian Arthur, W. 2009. The Nature of Technology. London, UK. Penguin Books.

Gerzon, M. 2010. Global Citizens: How our vision of the world is outdated, and what we can do

about it. London, UK. Rider Books.

Headrick, D. 2009. Technology: A World History. Oxford, UK. Oxford University Press.

Martin, J. 2006. The Meaning of the 21st Century: A vital blueprint for ensuring our future.

London, UK. Eden Project Books.

Roberts, B. 2009. Educating for Global Citizenship: A Practical Guide for Schools. Cardiff, UK.

International Baccalaureate Organization.

Winston, M and Edelbach, R. 2012. Society, Ethics, and Technology. (4th edition). Boston,

Massachusetts, USA. Wadsworth CENGAGE Learning.

教師は「Global Engage」ウェブサイト(globalengage.ibo.org)のリソースも活用すること

が可能です。

「生物」教師用参考資料 7

授業の構成

授業計画

各科目で取り扱う学習内容は、「指導の手引き」の「シラバスの概要」で一覧できるほ

か、「シラバスの内容」に詳述されています。教師は、利用できるリソースや地域の状況に

適した形で、教師の関心にも生徒の関心にも合った独自の授業計画を立てることが望まれ

ます。本資料では、そうした授業計画を立てるための一助となるよう「指導の手引き」を

補足していきます。

次の「サブトピックの配当授業時間数」では、各サブトピックに割りあてる授業時間の

目安が示されています。ここで示される授業時間数は、規定されたものではありません。

あくまでも、IBの授業に新たに取り組む教師のための参考として示されているものです。

「SL・HL合同クラス」「HLクラス」「SLクラス」の授業計画表では、それぞれの授

業を2年間にわたってどのように編成し得るかが示されています。ここで示されている編

成も、規定ではありません。あくまでも、さまざまな考え方に応じて学習内容を編成でき

ることを示すための例として挙げられているものです。

「生物」教師用参考資料8

授業の構成

サブトピックの配当授業時間数

SL・HL共通項目 95時間

トピック1——細胞生物学 時間数 15

1.1 細胞の概論 2

1.2 細胞の微細構造 3

1.3 膜構造 2

1.4 膜による輸送 3

1.5 細胞の起源 2

1.6 細胞分裂 3

トピック2——分子生物学 21

2.1 分子から代謝まで 1

2.2 水 2

2.3 炭水化物と脂質 2

2.4 タンパク質 3

2.5 酵素 2

2.6 DNAおよびRNAの構造 2

2.7 DNA複製、転写、および翻訳 3

2.8 細胞呼吸 3

2.9 光合成 3

トピック3——遺伝学 15

3.1 遺伝子 2

3.2 染色体 3

3.3 減数分裂 2

3.4 遺伝的形質 4

3.5 遺伝子組み換えとバイオテクノロジー 4

トピック4——生態学 12

4.1 種、群集、生態系 3

4.2 エネルギーの流れ 3

4.3 炭素循環 3

4.4 気候変動 3

トピック5——進化と生物多様性 12

5.1 進化の証拠 2

5.2 自然選択 3

授業の構成

「生物」教師用参考資料 9

5.3 生物多様性の分類 4

5.4 分岐分類学 3

トピック6——人間生理学 20

6.1 消化と吸収 3

6.2 血液系 4

6.3 感染症に対する防御 3

6.4 ガス交換 3

6.5 神経とシナプス 3

6.6 ホルモン、恒常性、生殖 4

HL発展項目(AHL) 60時間

トピック7——核酸 9

7.1 DNAの構造と複製 3

7.2 転写と遺伝子発現 3

7.3 翻訳 3

トピック8——代謝、細胞呼吸、光合成 14

8.1 代謝 4

8.2 細胞呼吸 5

8.3 光合成 5

トピック9——植物生物学 13

9.1 植物の木部における輸送 3

9.2 植物の師部における輸送 3

9.3 植物の生長 4

9.4 植物の繁殖 3

トピック10——進化と生物多様性 8

10.1 減数分裂 3

10.2 遺伝的形質 3

10.3 遺伝子プールと種分化 2

トピック11——動物生理学 16

11.1 抗体産生と予防接種 4

11.2 運動 4

11.3 腎臓と浸透圧調節 4

11.4 有性生殖 4

選択項目 15時間(SL)/ 25時間(HL)

A.神経生物学と行動

SL・HL共通項目のトピック

A.1 神経の発生 5

授業の構成

「生物」教師用参考資料10

A.2 ヒトの脳 5

A.3 刺激の知覚 5

HL発展項目のトピック

A.4 生得的行動と学習による行動 3

A.5 神経薬理学 4

A.6 行動学 3

B.バイオテクノロジーとバイオインフォマティクス

SL・HL共通項目のトピック

B.1 微生物学――生物の産業利用 5

B.2 農業分野のバイオテクノロジー 5

B.3 環境保護 5

HL発展項目のトピック

B.4 医学 5

B.5 バイオインフォマティクス 5

C.生態学と環境保全

SL・HL共通項目のトピック

C.1 種と群集 3

C.2 群集と生態系 4

C.3 生態系への人類の影響 4

C.4 生物多様性の保全 4

HL発展項目のトピック

C.5 個体群生態学 5

C.6 窒素とリンの循環 5

D.人間生理学

SL・HL共通項目のトピック

D.1 人間栄養学 4

D.2 消化 4

D.3 肝臓の機能 3

D.4 心臓 4

HL発展項目のトピック

D.5 ホルモンと代謝 5

D.6 呼吸ガス輸送 5

「生物」教師用参考資料 11

授業の構成

HLクラス授業計画

「指導の手引き」のトピックの記載順は、そのトピックの授業を行う順序を意味するもの

ではありません。教師は自由に独自の授業計画を立てることが推奨されています。下記の

表は、SLの生徒とは別に授業を受けるHLの生徒用のトピックの並べ方の一例です。

SL・HL共通項目 HL発展項目(AHL) 研究

第1年次

5.3生物多様性の分類

5.4分岐分類学

4.1種、群集、生態系

4.2エネルギーの流れ

持続可能性の実証を試みる

ために閉鎖系メソコスム(海

洋や湖沼の現場の生態系構

成要素を取り込んだ実験生

態系)を設置する。(実習5)

5.2自然選択

5.1進化の証拠

10.3遺伝子プールと種分化

1.1細胞の概論

1.2細胞の微細構造

1.5細胞の起源

光学顕微鏡を用いて、細胞お

よび組織の構造および超微

細構造を調べ、細胞をスケッ

チし、スケッチの拡大率と、

スケッチまたは顕微鏡写真

に見られる構造の実際のサ

イズを計算する。(実習1)

1.3膜構造

1.4膜による輸送

低張液や高張液にサンプル

を浸すことによって組織の

浸透圧を推定する。(実習2)

2.1分子から代謝まで

2.2水

2.3炭水化物と脂質

2.4タンパク質

2.5酵素

酵素活性に影響する要素の

実験的調査。(実習3)

2.8細胞呼吸 8.1代謝

8.2細胞呼吸

クロマトグラフで光合成色

素を分離する。(実習4)

授業の構成

「生物」教師用参考資料12

SL・HL共通項目 HL発展項目(AHL) 研究

6.1消化と吸収

6.2血液系

6.3感染症に対する防御

6.4ガス交換

6.5神経とシナプス

6.6ホルモン、恒常性、生殖

11.1抗体産生と予防接種

11.2運動

11.3腎臓と浸透圧調節

休息時と穏やかな運動後お

よび激しい運動後のヒトの

換気をモニタリングする。

(実習6)

「グループ4プロジェクト」

第2年次

2.9光合成 8.3光合成

9.2植物の師部における輸送

9.1植物の木部における輸送

9.3植物の生長

吸水計を用いて蒸散速度を

測定する。(実習7)

4.3炭素循環

4.4気候変動

選択項目 選択項目(発展)

内部評価・個人研究

1.6細胞分裂

3.3減数分裂

10.1減数分裂

9.4植物の繁殖

2.6DNAおよびRNAの

構造

2.7DNA複製、転写、およ

び翻訳

7.1DNAの構造と複製

7.2転写と遺伝子発現

7.3翻訳

3.1遺伝子

3.2染色体

11.4有性生殖

3.4遺伝的形質

3.5遺伝子組み換えとバイ

オテクノロジー

10.2遺伝的形質

復習・試験

「生物」教師用参考資料 13

授業の構成

SLクラスの授業計画

「指導の手引き」のトピックの記載順は、そのトピックの授業を行う順序を意味するもの

ではありません。教師は自由に独自の授業計画を立てることが推奨されています。下記の

表は、HLの生徒とは別に授業を受けるSLの生徒用のトピックの並べ方の一例です。

内容 研究

第1年次

5.3生物多様性の分類

5.4分岐分類学

4.1種、群集、生態系

4.2エネルギーの流れ

持続可能性の実証を試みるために閉鎖系メ

ソコスム(海洋や湖沼の現場の生態系構成要

素を取り込んだ実験生態系)を設置する。(実

習5)

5.2自然選択

5.1進化の証拠

1.1細胞の概論

1.2細胞の微細構造

1.5細胞の起源

光学顕微鏡を用いて、細胞および組織の構造

および超微細構造を調べ、細胞をスケッチ

し、スケッチの拡大率と、スケッチまたは顕

微鏡写真に見られる構造の実際のサイズを

計算する。(実習1)

1.3膜構造

1.4膜による輸送

低張液や高張液にサンプルを浸すことに

よって組織の浸透圧を推定する。(実習2)

2.1分子から代謝まで

2.2水

2.3炭水化物と脂質

2.4タンパク質

2.5酵素

酵素活性に影響する要素の実験的調査。(実

習3)

2.8細胞呼吸

2.9光合成

クロマトグラフで光合成色素を分離する。

(実習4)

6.1消化と吸収

6.2血液系

6.3感染症に対する防御

6.4ガス交換

6.5神経とシナプス

6.6ホルモン、恒常性、生殖

休息時と穏やかな運動後および激しい運動後

のヒトの換気をモニタリングする。(実習6)

「グループ4プロジェクト」

4.3炭素循環

4.4気候変動

授業の構成

「生物」教師用参考資料14

内容 研究

第2年次

選択項目

内部評価・個人研究

1.6細胞分裂

3.3減数分裂

2.6DNAおよびRNAの構造

2.7DNA複製、転写、および翻訳

3.1遺伝子

3.2染色体

3.4遺伝的形質

3.5遺伝子組み換えとバイオテクノロジー

復習・試験

「生物」教師用参考資料 15

授業の構成

SL・HL合同クラスの授業計画

「指導の手引き」のトピックの記載順は、そのトピックの授業を行う順序を意味するもの

ではありません。教師は自由に独自の授業計画を立てることが推奨されています。下記の

表は、またはSLの生徒がHLの生徒と合同で授業を受ける場合のトピックの並べ方の一

例です。

SL・HL共通項目 HL発展項目(AHL) 研究

第1年次

5.3生物多様性の分類

5.4分岐分類学

4.1種、群集、生態系

4.2エネルギーの流れ

持続可能性の実証を試みる

ために閉鎖系メソコスム(海

洋や湖沼の現場の生態系構

成要素を取り込んだ実験生

態系)を設置する。(実習5)

5.2自然選択

5.1進化の証拠

10.3遺伝子プールと種分化

1.1細胞の概論

1.2細胞の微細構造

1.5細胞の起源

9.1植物の木部における輸送 光学顕微鏡を用いて、細胞お

よび組織の構造および超微

細構造を調べ、細胞をスケッ

チし、スケッチの拡大率と、

スケッチまたは顕微鏡写真

に見られる構造の実際のサ

イズを計算する。(実習1)

1.3膜構造

1.4膜による輸送

2.2水

11.3腎臓と浸透圧調節 吸水計を用いて蒸散速度を

測定する。(実習7)

低張液や高張液にサンプル

を浸すことによって組織の

浸透圧を推定する。(実習2)

2.1分子から代謝まで

2.3炭水化物と脂質

2.4タンパク質

2.5酵素

9.2植物の師部における輸送

8.1代謝

酵素活性に影響する要素の

実験的調査。(実習3)

2.8細胞呼吸

2.9光合成

8.2細胞呼吸

8.3光合成

クロマトグラフで光合成色

素を分離する。(実習4)

授業の構成

「生物」教師用参考資料16

SL・HL共通項目 HL発展項目(AHL) 研究

4.3炭素循環

4.4気候変動

6.1消化と吸収

6.2血液系

6.3感染症に対する防御

6.4ガス交換

6.5神経とシナプス

6.6ホルモン、恒常性、生殖

11.1抗体産生と予防接種

11.2運動

休息時と穏やかな運動後お

よび激しい運動後のヒトの

換気をモニタリングする。

(実習6)

「グループ4プロジェクト」

第2年次

選択項目 選択項目のエクステンション

内部評価・個人研究

1.6細胞分裂

3.3減数分裂

10.1減数分裂

9.4植物の繁殖

9.3植物の生長

2.6DNAおよびRNAの

構造

2.7DNA複製、転写、およ

び翻訳

7.1DNAの構造と複製

7.2転写と遺伝子発現

7.3翻訳

3.1遺伝子

3.2染色体

11.4有性生殖

3.4遺伝的形質

3.5遺伝子組み換えとバイ

オテクノロジー

10.2遺伝的形質

復習・試験

「生物」教師用参考資料 17

サブトピックの学習活動の計画

はじめに

「指導の手引き」の内容は以下の3つに分かれています。

•SLとHLの生徒が共通して学習する「SL・HL共通項目」

•「HL発展項目」のトピック

•SLとHLの生徒が共通して学習する「SL・HL共通項目」のサブトピックとH

Lクラスの生徒のみが学ぶサブトピックのそれぞれに伴う「選択項目」

教師は、サブトピックを構成する各項目を活用して、教案を練ることが望まれます。そ

うすることで、科目に共通する基盤を失うことなく、生徒に合わせて個別に対応したり、

活用できるリソースや学校の立地、背景状況の差異に対応したりしながら教材を提示する

ことができるからです。

各サブトピックは、以下のようなレイアウトで構成されています。

【学習のポイント】サブトピックを学習する際のポイントを示します。

1.1 サブトピック

科学の本質(NOS)との関わりサブトピックを「科学の本質」(NOS)のテーマに関連づけます。

理解•各サブトピックで学習する内容を具体的

に示します。

知識・スキルの活用•生徒がどのように理解したことを活用す

るかを詳述します。例えば、数学の計算

や実用的なスキルを示すことなどが含ま

れます。

指導•「理解」や「知識・スキルの活用」に関して

の具体的な要件や制限事項を示します。

国際的な視野•教師が授業を行う際に簡単に組み込む

ことのできる考えを取り上げます。

「知の理論」(TOK)•TOKの「知識に関する問い」の例を

挙げます。

自然や人間生活との関わり•「指導の手引き」の中の他のトピックや

実社会でのさまざまな応用例および他

のDP科目との関連性を取り上げます。

ねらい•「理科」(グループ4)のねらいとの関

連性を示します。

「学習のポイント」は、サブトピックのテーマや焦点を表しています。

「科学の本質(NOS)との関わり」では、学習する科目の領域の中から、「科学の本質」

とサブトピックの内容に関連する例を取り上げます。

表のその下の部分は2つの欄に分けられており、左欄には、「理解」「知識・スキルの活

用」「指導」として、そのサブトピックで指導するべき内容を示しています。

サブトピックの学習活動の計画

「生物」教師用参考資料18

「理解」では、理論的解釈に関する内容を示します。この内容は、他のサブトピックと並

行して指導したり、他のサブトピックに組み入れて指導したりすることができます。

「知識・スキルの活用」では、理解したことをどのように文脈の中で活用するかを示しま

す。この項には、「実習学習」のための必修の領域などが指定されている場合もあります。

「指導」では、「理解」と「知識・スキルの活用」で要求される深さや内容に関する補足

事項を説明します。

右欄は、「国際的な視野」「『知の理論』(TOK)」「自然や人間生活との関わり」「ねら

い」で構成されています。これらの項は、サブトピックをより大きな文脈の中に位置づけ、

関心や多様性を高めることを目的としています。

「国際的な視野」では、国際的な取り組みを通じて理解を深めることができる領域、もし

くはそのような可能性がある領域に目を向けます。

「『知の理論』(TOK)」では、TOKの問いに関連する生物ならではの事例を取り上げま

す。TOKの問いをめぐるディスカッションは、生徒がTOKで取り扱う諸問題と生物との

関連性を見いだすのに役立ちます。また、ディスカッションは、生物の事例をTOKの授

業で活かすだけでなく、TOK的思考を「生物」の授業にもたらすことにもつながります。

「自然や人間生活との関わり」では、「生物」の中での関連するサブトピックを結びつける

だけでなく、同じような内容を別の角度や見方で捉えている他科目とも結びつけます。相

互に関連づけ、科目内や科目間、および外の世界の要素とサブトピックを結びつけること

で、DPというプログラム全体に、より全ホリスティック

人的なアプローチで取り組むことができます。

最後の「ねらい」では、サブトピックと「理科」(グループ4)のねらいとの関連性が示

されています。ねらいがサブトピック内の他の「知識やスキルの活用」に言及している場

合もありますが、これらはあくまでも提案であり、内容を深めるための発展的な機会とし

て捉えられるべきものです。

「生物」教師用参考資料 19

サブトピックの学習活動の計画

サブトピックのページの指導案

本章で紹介する活動は特定のサブトピックを教える際に使用できる例です。各活動は、

下の表の左欄の「学習のポイント」、「科学の本質(NOS)」、「理解」、「知識・スキルの活

用」から右欄の「国際的な視野」、「知の理論(TOK)」、「自然や人間生活との関わり」、

「ねらい」などの付加価値的なIBの要素まで複数のサブトピックの内容をカバーしてい

ます。このように、多くの要素を総合的かつホリスティックな方法で教えることが可能で

す。

【学習のポイント】膜は、能動輸送および受動輸送により細胞の組成をコントロールしている。[学習活動 1]

各サブトピックで上記すべての学習活動を実施することが求められているわけではありません。説明の便宜

上、1つのサブトピックを取り上げ、そのサブトピックの各要素ごとの学習活動を例示しています。

1.4膜による輸送

科学の本質(NOS)との関わり実験計画――浸透圧の実験では、正確な量的測定が不可欠である。(3.1)[学習活動 5]

理解• 粒子は、単純拡散、促進拡散、浸透圧、能動輸送

によって膜を通過する。

[学習活動 2][学習活動 3][学習活動 4]• 膜の流動性のおかげで、物質はエンドサイトーシ

スにより細胞に取り込まれ、エクソサイトーシス

により放出される。小胞は、細胞内で物質を輸送

する。[学習活動 8]知識・スキルの活用

• 知識の活用 : 能動輸送のためのナトリウム‐カリ

ウムポンプの構造と機能、軸索での促進拡散のた

めのカリウムチャンネル。[学習活動 4]• 知識の活用 : 医療処置で用いられる組織または器

官は、浸透を防ぐために細胞質と同じ浸透圧の溶

液中に浸されなければならない。

• スキルの活用 : 低張液および高張液にサンプルを

浸すことによって組織の浸透圧を推定する。( 実

習 2)[学習活動 5]指導

• 浸透圧の実験は、科学実験では正確な質量および

体積の測定が必要であることを強調する有効な機

会である。[学習活動 5]

自然や人間生活との関わり• 腎臓透析は、適切な膜と濃度勾配を用いて、ヒト

の腎臓の機能を人工的に模倣したものである。

[学習活動 6]《シラバスや他科目との関連性》

「生物」

トピック 6.5神経とシナプス[学習活動 4]ねらい

•  ねらい 8:臓器提供は、臓器提供の利他的な本質

や、ヒトの器官の販売に関する懸念など、いくつか

の興味深い倫理的問題を提起する。[学習活動 7]•  ねらい 6:透析チューブ実験は膜活動のモデルと

して機能し得る。ジャガイモ、ビートの根、また

は単細胞藻類を用いた実験を、実際の膜の研究に

用いることができる。[学習活動 5]

「生物」教師用参考資料20

サブトピックの学習活動の計画

学習活動1:学習のポイント

「学習活動1」は、「学習のポイント」について議論します。

「サブトピックのページの指導案」のセクションで例として挙げられたサブトピック「膜

による輸送」の背景知識として、生徒はすでに細胞膜の構造を学習しているものとします。

それを踏まえて、今度は、物質が細胞に出入りする方法を理解します。ここでの学習のポ

イントは、「細胞内外の物質の出入りの制御に膜が関与している」ということです。

議論では、細胞を出入りするものは何かについて、そして、この移動を制御する利点に

ついて取り上げます。

以下の点について考えるとよいでしょう。

•アデノシン三リン酸(ATP)産生

•その他の代謝過程に必要な物質

•代謝の老廃物

•(植物細胞の場合に)代謝過程で必要とするよりも多くの水を必要とする理由

また、トピックを発展させることで、生徒は、細胞に出入りする物質の移動が、一部で

は受動的で、濃度勾配の影響を受けており、一部では能動的で、濃度勾配に逆らった物質

移動がなされていることを理解します。膜の浸透性は、濃度勾配に加えて、どの物質が細

胞に出入りできるのかを決定する重要な要因です。

「生物」教師用参考資料 21

サブトピックの学習活動の計画

学習活動2:受動輸送

この学習活動では、問いを投げかけ、それに対する答えを考えることを通じて、浸透作

用および単純拡散のメカニズムを説明します。

•何が粒子の移動を引き起こすのか。

•粒子が移動する時に細胞膜を通り抜けるための別の方法とは何か。 

上記への答えから、生徒は、膜の浸透性を変化させることが、粒子の受動輸送を制御す

る唯一の方法であると気づきます。

参考用動画highered.mcgraw-hill.com/sites/0072495855/student_view0/chapter2/animation__how_osmosis_

works.html

www.wiley.com/college/boyer/0470003790/animations/membrane_transport/membrane_

transport.htm

「生物」教師用参考資料22

サブトピックの学習活動の計画

学習活動3:「認知学習言語運用能力」(CALP)

学習活動3は、言語習得のための活動です。ここでは、粒子が細胞膜を透過するメカニ

ズムに関連する語彙の習得を目指します。CALPの詳細については、本資料「「認知学

習言語運用能力」(CALP)活用のための枠組み」を参照してください。

Cognitive(認知)

Academic(学習)

Language(言語)

Proficiency(運用能力)

スキル

指導法

背景知識 スキャフォールディング(足場づくり)拡張されたCALP

背景知識の構

築と活性化

新たな理解

の導入(イン

プット)

新たな理解

の処理

新たな理解

の表現(アウ

トプット)

能力の発揮

と応用

聴解力 「輸送」に関す

る学習活動

発話力 「輸送」に関す

る学習活動

対話力 「輸送」に関す

る学習活動

読解力 「膜による輸

送」に関する

カード合わせ

記述力 定義を書く

思考力 カード合わせ

図1:CALPを発達させるための枠組み

サブトピックの学習活動の計画

「生物」教師用参考資料 23

CALPに関する学習活動――カード合わせ

浸透圧osmosis

半透膜

permeable membrane小胞

vesicles

単純拡散simplediffusion

濃度勾配

concentration gradient流動性を持つ細胞膜

fluid plasma membrane

促進拡散facilitateddiffusion

ATP

ATP粒子

particles

能動輸送activetransport

平衡

equilibrium水

water

エンドサイトーシスendocytosis

膜チャネル

membrane channelsトランスポーター・ポンプた

んぱく質 

transporter/pump proteins

エクソサイトーシスexocytosis

リン脂質二重層

phospholipid bilayer

上記のカードを切り離します。

左端の行のカード(背景に色がついているもの)から、1枚を生徒に渡します。

生徒は、渡されたカードに関連のあるすべてのカードを選び出します。例えば、色つき

のカードが「浸透圧」であった場合、生徒は浸透圧の説明をするために、「半透膜」、「濃度

勾配」、「平衡」、「リン脂質二重層」、「水」のカードを選びます。また、「物質移動」、「高濃

度」、「低濃度」など、カードにはない他の用語を加えることもできます。

あるいは、生徒に「膜による輸送」に関する白い方のカードを複数枚渡し、これらに該当

する色つきのカードを選択させることもできます。例えば、白いカードが「トランスポー

ター・ポンプたんぱく質」、「粒子」、「ATP」である場合には、生徒は色つきのカードか

ら「能動輸送」を選びます。

「生物」教師用参考資料24

サブトピックの学習活動の計画

学習活動4:能動輸送

学習活動4は、与えられた状況から特定の問題を解明する活動です。

この学習活動で生徒は、粒子が濃度勾配に沿って移動し、その粒子に対する透過性がある

膜だけを通過できることを理解した上で、細胞外液よりも細胞内液の濃度が高い粒子を細

胞がどのようにして獲得するのかを解明することに取り組みます。例えば、無機物の濃度

が細胞内よりも土壌内で低い時の根の上皮細胞による無機物の摂取は、これに関する典型

的な例です。他には、細胞または血中の糖の濃度が消化管の内容物よりも高い場合に、消

化管から糖を吸収する例が挙げられます。受動輸送が唯一のメカニズムである場合、消化

管への糖の喪失が起きます。生徒は、上記の状況の1つについて、1人でまたは小グルー

プで問題に取り組みます。

能動輸送の説明は、ナトリウム・カリウムポンプ、および、軸索内外の不均衡な電荷の

差について示します。また、このサブトピックは、活動電位を教える時に復習することが

できます。

参考用動画インターネット上には、このトピックの理解に役に立つ多くの動画があります。以下に

2つを示します。

brookscole.cengage.com/chemistry_d/templates/student_resources/shared_resources/animations/

ion_pump/ionpump.html

www.blackwellpublishing.com/patestas/animations/actionp.html

「生物」教師用参考資料 25

サブトピックの学習活動の計画

学習活動5:浸透圧の調査

学習活動5は、観察実験に基づいて行います。

溶液の浸透圧は、事実上、溶質ポテンシャルです。これは、溶液の浸透ポテンシャルひい

ては溶液を含む細胞の浸透ポテンシャルに影響するので、露出した細胞に対する体外環境

の影響の予測因子になります。細胞が高張液中にある場合、浸透作用によって水が細胞の

外へと移動しやすくなります。細胞が低張液中にある場合、水は細胞内へと移動します。

さらに、細胞が外液と等張である場合には、見かけ上の水の移動がなくなります。こうし

たことを理解することによって、細胞の浸透圧、より具体的には、細胞の内部環境を構成

する溶液の浸透圧を算出できます。

これを達成するためには、以下の2つが必要です。

1. 独立変数として、異なる濃度のさまざまな溶液

2. 細胞による水の摂取または喪失の測定手段

- タマネギ細胞の浸透圧の測定では、0~ 1 mol/dm-3のさまざまな濃度でスク

ロース溶液に組織の薄片を浸します。

ヒント! 赤タマネギを使うか、溶液にメチレンブルーを添加することで、膜が見やすく

なります。

- 次に、校正された接眼ミクロメーターを備えた顕微鏡のスライドガラス上

に組織サンプルを移して、細胞の液胞殻から水分を喪失していることを示し

ている、目に見える液胞膜を持つ細胞を確認します。

ヒント! サンプルが厚すぎる場合、縁の部分は薄い場合が多いので、そこを観察するこ

と。

- 細胞膜と液胞膜の間の距離を測定して、定量化できる勾配に対する水分喪

失のレベルを評価します。

結果として得られるグラフは、以下のようなものになるでしょう。

サブトピックの学習活動の計画

「生物」教師用参考資料26

グラフから、タマネギ細胞の溶質ポテンシャルの分析を行うことができます。グラフは、

ある一定の範囲内に収まることが予測されますが、より正確な分析を行う方法についての

議論をすることは有益です。溶液の濃度のより小さい勾配および顕微鏡のより高い解像度

を軸に議論することになるでしょう。

変数制御の課題に取り組むことにより、議論が活性化します。

浸透作用の効果的なシミュレーションが以下のリンクから入手できます。シミュレー

ションでは多くのパラメーターを変更することができます。

lsvr12.kanti-frauenfeld.ch/KOJ/Java/Osmosis_fast.html

ねらい6に沿った発展学習活動として、生徒に浸透圧の観点からさまざまな組織を調査

させ、集計表に結果を記録して、発見したことのデータベースを作製させるというものが

考えられます。後に、組織の機能に関してデータベースを活用することができます。

液胞膜と細胞膜の間の距離

液胞が浸透作用によって水分を失い始める点

溶液の濃度

「生物」教師用参考資料 27

サブトピックの学習活動の計画

学習活動6:腎臓透析

腎臓透析は、理論的には簡単な技術です。膜による輸送の方法について評価したり、理

解を深めたりするのに、さまざまに活用することができます。多くのアプローチがありま

すが、以下に3つの学習活動を挙げます。

オプション1生徒に透析装置を設計するよう求めます。以下のようなポイントについて検討します。

•どの物質を血液から除去して、どの物質を血液中に残す必要があるのか。

•これらの物質の適切な濃度はどの程度のものか。

•透析に使う膜の性質はどのようなものか。

•人工的な装置では、膜を通した輸送はどの形態が適切か。

オプション2腎臓の役割には、血液から潜在的に有毒な粒子を除去する一方で、その他の有益な物質を

保持することが挙げられます。血液は、大型のタンパク質および血球を除く成分がろ過さ

れ、次に、選択された物質を毛細血管に再吸収することができる細胞膜を持つ腎細管に通

されます。

以下の表は、腎細管および尿の中の尿素(潜在的に有毒)、グルコースおよびアミノ酸(と

もに代謝に重要)のレベルを示しています。この表は、腎静脈の血液中に残るこれらの粒

子の割合も示しています。

成分液体中の濃度(g/100ml)

血漿 腎細管(濾過物) 尿 再吸収%

尿素 0.03 0.03 1.8 50%

グルコース 0.10 0.10 なし 100%

アミノ酸 0.05 0.05 なし 100%

サブトピックの学習活動の計画

「生物」教師用参考資料28

腎臓を摘出した人は、血中から老廃物を除去して、尿中に排出することができません。こ

れを人工的に行うためには、週に数回腎臓透析を受ける必要があります。

a.血漿の内容物と腎細管の濾過物を、尿素、グルコース、およびアミノ酸について比較

しましょう。

b.尿素、グルコース、およびアミノ酸は、どのようにして腎細管へ移動しますか。

c.毛細血管への尿素の再吸収は受動輸送であり、グルコースおよびアミノ酸の再吸収

には能動輸送が関与しているという主張を、データはどのように支持しますか。

d.腎細管と尿に含まれる尿素の濃度の違いについて説明しましょう。

オプション3以下の図は、尿素、グルコース、およびアミノ酸について、血液中の内容物を表しています。

以下の図と同じ記号を用いて、グルコースおよびアミノ酸のレベルを保持しつつ患者の血

液から可能な限り多くの尿素を除去するために必要とされる透析液の組成を書き込みま

しょう。

尿素

グルコース

アミノ酸

透過性の異なる膜が患者の血液を透析液から分離する

患者の血液透析液

「生物」教師用参考資料 29

サブトピックの学習活動の計画

学習活動7:臓器提供

臓器移植および移植のための臓器提供は、今日的な医学の問題であり、倫理的な探究や

議論の機会を幅広く提供します。例えば、以下のような問題があります。

•生体ドナー

•臓器売買

•インフォームドコンセント

•ドナーとレシピエントの匿名性

•動物のドナー

•臓器提供は一種の利他的行為か

臓器提供同意書に署名する意欲は、国ごとに異なっています。以下のグラフは、同じよ

うな経済的・社会的発展の度合いの国の間に顕著な差があることを示しています。

これらの国の臓器提供の違いの原因は何でしょうか。

この違いの根本にあるのが、「能動的な同意」か「受動的な同意」かの問題(デンマー

ク、オランダ、英国、ドイツにおいては、該当欄に印を記入することで同意を示しますが、

グラフの残りの国では、該当欄に印を記入しないことで同意したことになります)である

ことに考えが至れば、この行為の倫理に関する議論につなげることができるでしょう。

同意の割合

同意の割合

デンマーク

オランダ英国

ドイツ

オーストリア

ベルギー

フランス

ハンガリー

ポーランド

ポルトガル

スウェーデン

「生物」教師用参考資料30

サブトピックの学習活動の計画

学習活動8:高分子の輸送

細胞のエンドサイトーシスとエキソサイトーシスのプロセスは、一連の過程で行われま

す。この過程は、以下のカードを順序づけることによって組み立てることができます。一

連の事象をまとめたら、色つきのカードを用いて、事象の説明をつけ加えることができま

す。基本的なところは、教師によってまたは動画を用いて説明できます。

詳しく述べる(describe) 説明する (explain)

小胞は、内部で粒子を処理するための他の細

胞小器官(リソソームなど)と融合すること

ができる。

細胞膜の流動性により、細胞膜は、必要であ

れば壊れて再形成することができる。

細胞外の粒子が検出される。 細胞は、栄養摂取のため、または小胞を破壊す

るために、小胞の内容物を消化しようとする。

細胞膜は粒子を取り囲む。 粒子は、タンパク質チャネルを通して取り込

まれるには大きすぎる。

細胞膜は、細胞質内で小胞を形成するために

ちぎれる。

細胞小器官は、細胞膜と同じような膜をもっ

ているので、小胞と融合することができる。

参考用動画www.youtube.com/watch?v=XFxHWWOpHDI

life9e.sinauer.com/life9e/pages/06/062003.html

highered.mcgraw-hill.com/sites/007337797x/student_view0/chapter5/animation_quiz_-_

endocytosis_and_exocytosis.html

「生物」教師用参考資料 31

サブトピックの学習活動の計画

学習活動9:まとめのシート

このシートは、制御に力点を置いて、細胞膜を通した粒子の輸送に用いられる方法をま

とめるために活用することができます。

まとめの問い

何が細胞に出入りしていますか。

膜輸送タンパク質は必要ですか。

濃度勾配は必要ですか。

ATPは必要ですか。

細胞はこのプロセスを制御できますか。

浸透作用

単純拡散

促進拡散

能動輸送

飲食作用

開口分泌

「生物」教師用参考資料32

認知学習言語運用能力(CALP)

「認知学習言語運用能力」(CALP)活用のための枠組み

IBの生徒は、学習にしっかりと参加しながら能力を十分に発揮するため、各科目におい

て必要となる学習言語を自由に扱える能力を身につけなければなりません。理科の科目も

例外ではありません。科学には科学のための独自の言語があり、そこでは日常で使用する

数々の言葉が異なる(多くの場合においてより精密な)意味をもちます。また、このよう

な言語には、理解や解釈が必要となる数学記号や数学的描写も含まれます。正確さや精密

さは、科学が「知る」ための効果的な手段である理由であり、また、科学における思考の

根幹を成します。世界中の科学者たちがさまざまな表現の意味を共有することにより、科

学者同士の協力やコミュニケーションが可能となり、研究の進歩へとつながっています。

生徒は、科学に対する理解を深めながら、カミンズ(1979)が呼ぶところの認知学習言語

運用能力(CALP)を発達させていきます。

図2は、科目の学習を通してCALPを発達させる方法を設計するための枠組みです。

この枠組みは、以下で紹介する、グラフの理解およびデータ分析のための学習活動を計画

する際に使用されています。これらの学習活動は応用可能であり、学習におけるさまざま

な状況において活用することができます。

認知学習言語運用能力(CALP)

「生物」教師用参考資料 33

Cognitive(認知)

Academic(学習)

Language(言語)

Proficiency(運用能力)

スキル

指導法

背景知識を活性

化する

新 た な 学 習 の

た め のスキャフォールディング(足場づくり)を行う

実践を通して新

たな学びを得る

能力を発揮する

聴解力

発話力

対話力

読解力

作文力

指示用語と

思考力

図2:CALPの発展を設計するための枠組み

認知学習言語運用能力の発達を設計するための枠組みを理解する枠組みは表を使って体系化されており、CALPのスキルを構成する要素(学習言語運

用能力と密接に関連する思考力を含む)は縦の列に、指導法は横の行にそれぞれ配置され

ています。背景知識とは、該当科目で使われる言語に関して生徒がすでにもっている知識

のことを指します。

背景知識を活性化する

背景知識は以前に学習した科目などから得られます。また、背景知識が全く別の言語に

よって培われていることもあります。背景知識を活性化することで、新たな学習の土台を

築くことができます。

認知学習言語運用能力(CALP)

「生物」教師用参考資料34

スキャフォールディング(足場づくり)と実践

スキャフォールディング(足場づくり)とは、学習者が自分の背景知識をベースにしな

がら学びを広げ、より難しい課題を達成するための助けとなる方法です。スキャフォール

ディング(足場づくり)のための学習活動は文脈化を可能にするため、新たに学習する情

報が生徒にとってしっかりと意味をもつようになります。また、新たな学びは実践を通し

て体得されます。

認知学習言語運用能力を発揮する

新たに得られた認知学習言語能力(CALP)を、生徒が自らの力でさまざまな状況にお

いて適用したり発揮したりできるようになることは、学習の成功を意味します。さらに、

このようにして得られた新たな学びは生徒の背景知識の一部となり、新たな段階でのより

発展した学習を支えるようになるでしょう。

認知学習言語運用能力の発展を設計するための枠組みを使う上記の表のすべてのマス目を隈なく詳細に扱う必要はありません。多くの場合において、

1コマの授業の中では一部のスキルと指導法の要素にのみ焦点をあてることになるでしょ

う。ただし、長期的に考えると、一連の授業もしくは探究の単元を通してすべての領域を

十分に扱うことが望まれます。

指導法に関する補足:アイデンティティーの肯定

生徒のアイデンティティーを肯定することは、CALPの発達を目的とする学習活動を

組み込んだ、実りある学習のための指導法を支える中心的原理です。アイデンティティーの

肯定には、言語を問わず生徒がもっているスキルや知識をはっきりとわかる形で尊重し、

これらを新たな考え方や学び方を指導・学習するためのリソースとして認識することが含

まれます。

グラフの分析に必要な認知学習言語運用能力を発展させるグラフはデータ分析において使用される一般的なテクストであり、したがって、グラフ

を正確に読み取ることのできる能力は学習における成功の鍵となります。履修開始時、

DPの生徒はデータ分析やグラフに関してそれぞれ異なる背景知識を持っているかもしれ

ません。例えば、科学的なデータ分析においては正確性と客観性が重視されますが、中に

は「莫大な増加」や「劇的に減少した」などのような表現に見られる形容詞や副詞を使っ

たある種の主観的なグラフの読み取り方に慣れている生徒もいるでしょう。グラフを解析・

作成する際に正確性と客観性を保つため、生徒は適切な言葉の使い方を学ばなければなり

ません。

認知学習言語運用能力(CALP)

「生物」教師用参考資料 35

以下で紹介する指導と学習のための学習活動は、CALPの発達のための枠組みに基づ

いており、次の4点を目標としています。

•グラフの説明に用いられる言語に関しての既得知識を活性化する。

•グラフの説明に用いられる学習言語を構築し、洗練させる。

•グラフの説明に用いられる学習言語を実際に使う機会を持つ。

•グラフの説明に用いられる学習言語に関する知識を定着させ、さらにこれを応用する。

(生徒のレベルや既得知識によっては、不要だと思われる学習活動もあるかもしれませ

ん。ただし、これらの学習活動はグループ内のレベルの差を見つけるために役立つことが

あります。また、状況によっては、言語サポートを専門とする教師と協力しながらこれら

の学習活動を活用することもできます)

図3は、CALPの発達を設計するための枠組みの実例です。

Cognitive(認知)

Academic(学習)

Language(言語)

Proficiency(運用能力)

スキル

指導法

背景知識を活性

化する

新 た な 学 習 の

た め のスキャフォールディング(足場づくり)を行う

実践を通して新

たな学びを得る

能力を発揮する

聴解力 学習活動4

発話力 学習活動2 学習活動4

対話力 学習活動2 学習活動2、3 学習活動3、4

読解力 学習活動2 学習活動2、3 学習活動3、4 試験問題

作文力 学習活動1、2 学習活動3 学習活動3、4 試験問題

指示用語と

思考力

指示用語:「簡単に述べなさい」(outline)「詳しく述べなさい」(describe)思考力:「科学的な情報を伝える」(評価目標1、2より)

図3:CALPの発展を設計するための枠組みの実例

認知学習言語運用能力(CALP)

「生物」教師用参考資料36

学習活動1背景知識を活性化する

目標•データ分析およびグラフに関連する概念の理解と、これらに必要な学習言語に関する背

景知識を活性化する。

•グラフの説明に関連する学習言語および概念の理解を構築する。

成果•すでにもっている背景知識や理解が活性化される。また、さらなる学習に必要なレベル

にまでこれらを引き上げることができる(必要であれば)。

用意するもの•ノート、異なる色のペンもしくは色鉛筆を2~3本(各生徒)

•付箋(1人1~2枚)

手順•生徒に、グラフに関する理解、知識、語彙について、思いつくものをどんなものでも構

わないのでノートに書き出すように指示します(これにより、授業のトピックが「グラ

フ」であることを示すことができます)。多言語使用の生徒に関しては、どの言語(も

しくは使用できるすべての言語)を使っても構わないことを伝えます。書き出したもの

を生徒同士で共有する必要はありませんが、助けが必要な生徒に関しては、周りのクラ

スメートにサポートするように促しても構いません。書き出したものについては、授業

の最後でもう一度触れます。

•授業の最後、もしくはある程度の時間をかけて背景知識を活性化・構築した後(例え

ば、学習活動2の終了後)、生徒は、授業の最初のブレインストーミングにおいて書き

出したものを見返し、授業内で触れられたすべての用語や知識を色分けしながら囲んで

いきます。新たに学んだことについては、別の色を使ってノートに書き加えます。最後

に、ノートに書き出したものの中で、授業内では触れられなかった知識や語彙を付箋に

書き、教師に提出させるようにしてください。

•この付箋は、さらなる指導のための情報として役立つ場合があります。例えば、付箋か

ら、生徒が科学的な分析には適さない主観的な形容詞や副詞を使ってグラフを説明する

ことに慣れていることがわかるかもしれません。また、この付箋が、生徒の言語プロ

フィールや、他言語で持っている知識に関する情報を提供することもあります。

学習活動2背景知識を活性化し、新たな学習のためのスキャフォールディング(足場づくり)を行う

目標•データ分析とグラフに関連する概念の理解と、これらに必要な学習言語についての知識

を強化する。

•データ分析とグラフに関連する概念や、これらに必要な学習言語を新たに学ぶための足

場をつくる。

成果•データ分析とグラフに関連する学習言語についての知識が定着する。

認知学習言語運用能力(CALP)

「生物」教師用参考資料 37

用意するもの•教室に掲示するための、サイズの大きいさまざまなグラフ

•色の違うカード2組:1組目のカードにはそれぞれ用語が書かれており、2組目のカー

ドにはこれらの用語に対応する意味が書かれている(図4を参照)。

手順•クラス全員に見えるようにグラフを掲示します。

•2組のカードを混ぜ、生徒にカードを1枚ずつ渡します。生徒は、単語と定義が合致す

るよう、組み合わせの相手を見つけてペアを作ります。

•もしくは、クラスをいくつかのグループに分け、各グループに単語と定義のカードの両

方を渡し、組み合わせを作るように指示します。

•それぞれのペアに、単語とその定義を読みあげるように指示します。また、掲示してあ

るグラフに言及することによって、単語の意味を文脈の中でも示すようにします。

•定義のカードをもっている生徒にカードを伏せるように指示し、どの生徒が用語に対し

ての定義を説明できるか、クラス全体に質問をします。続いて、用語のカードを持って

いる生徒にカードを伏せるように指示し、どの生徒が定義と合致する用語を答えられる

か、クラス全体に質問をします。

•いくつかの単語と定義が抜けている穴埋め問題のプリントを生徒に配布します(図5を

参照)。完成させたプリントは今後の参考のためにファイルに保管するように指示して

ください。

認知学習言語運用能力(CALP)

「生物」教師用参考資料38

1組目のカード用語

*用語は生徒のレベルやニーズに合わ

せて変えても構いません。

2組目のカード意味

*これらは絶対的な定義というわけではないので、実際に使

われている他の説明で代用しても構いません。

X軸 グラフの横軸

Y軸 グラフの縦軸

変数 研究・調査に影響をおよぼす可能性のある、変化し得

る要因

独立変数 研究・調査において、研究者が操作する要因

従属変数 研究・調査から得られる結果

交点 線グラフにおいて、2本以上の線が交わる点

凡例 グラフにおいて、異なるデータを表すために使用され

た色や形状などの記号の意味を解説したもの

正相関 独立変数が増加すると従属変数も増加する相関関係

逆相関 独立変数が増加すると従属変数が減少する相関関係

平坦域 独立変数が増加しているにもかかわらず従属変数が一

定のままである状態

~において最大値に達する その点において値が最大となる

増加した 数値が大きくなった

減少した 数値が小さくなった

図4:学習活動2のためのカードのひな型

生徒は以下の表において欠けている用語もしくは意味を書き入れます。

用語 意味

X軸

Y軸

変数 研究・調査に影響をおよぼす可能性のある、変化し得

る要因

研究・調査において、研究者が操作する要因

認知学習言語運用能力(CALP)

「生物」教師用参考資料 39

用語 意味

従属変数

線グラフにおいて、2本以上の線が交わる点

凡例

独立変数が増加すると従属変数も増加する相関関係

独立変数が増加すると従属変数が減少する相関関係

平坦域 独立変数が増加しているにもかかわらず従属変数が一

定のままである状態

~において最大値に達する

数値が大きくなった

数値が小さくなった

図5:学習活動2のための穴埋め問題

学習活動3:グラフの分析に使用する言語を正確に扱うための教師のサポートを伴う実践

目標•グラフの分析に関連する学術的言語を正確に実際に使う練習をする。

成果•実践を通して、グラフの分析に関連する学術的言語についての正確な知識が定着し始める。

用意するもの•図6のワークシート(各生徒に配布)

•異なる色のペンもしくは色鉛筆

•教師用に拡大した図6のワークシート(生徒全員に見えるようにする)

•学習活動2の語彙リスト(図4をコピーすること)

認知学習言語運用能力(CALP)

「生物」教師用参考資料40

学習活動3:グラフの分析に使用する言語を正確に扱うための教師のサポートを伴う実践

手順•生徒を小さな作業グループに分けます。指導言語での学習に努力を要する生徒が、同じ

グループの他のクラスメートから学ぶことができるよう、グループのバランスにはよく

気を配るようにしてください。

•各生徒にワークシートと語彙リストを配り、以下のタスクに協力して取り組むよう説明

します。

- グラフの説明にあてはまる用語を見つけて書き出す。用語は何回使っても構

わない。

- グラフの説明に適切だと思われるその他の用語を別の色のペンもしくは色

鉛筆を使って書き加える。

- 語彙リストの中で使用しなかった用語を丸で囲む。

•教師用に拡大したワークシートを使いながら、以下をクラス全体で確認します。

- 正確さ

- その他の同義語

- 科学的なデータ分析に主観的な言葉は適さないということ

- 前置詞の重要性

*代わりの(もしくは追加の)学習活動として、クロスワード、単語探し、アナグラムなど

を実施してもよいでしょう。

グラフのサンプル(他のグラフと差し替えても構いません)

用語

認知学習言語運用能力(CALP)

「生物」教師用参考資料 41

グラフのサンプル(他のグラフと差し替えても構いません)

用語

図6:学習活動3の分析用のグラフのサンプル

参考文献Cognitive academic language proficiency (CALP) is a term first coined by Jim Cummins.

Cummins, J.1979. “Cognitive/Academic Language Proficiency, Linguistic Interdependence,

the Optimum Age Question and Some Other Matters”. Working papers on bilingualism. Number 19.

Pp 121–9.

Inugai-Dixon, C. 2007. Unpublished interview with Jim Cummins on conditions for learning.

Krashen, SD. 1985. The Input Hypothesis: Issues and Implications. London, UK. Longman.

Swain, M. 1985. Communicative Competence: Some Roles of Comprehensible Input and

Comprehensible Output in its Development. In Gass, S and Madden, C, (eds). 1985. Input in Second

Language Acquisition. Rowley, Massachusetts, USA. Newbury House.

「生物」教師用参考資料42

情報コミュニケーション技術

はじめに

本セクションでは、理科の各科目の学習において、生徒が情報コミュニケーション技

術(ICT)のスキルを用いる方法や生徒にICTのスキルを身につけさせる方法をいく

つか概説します。「指導の手引き」では、「ねらい6」で、生徒に「最新技術を使用するな

ど、実験および研究の科学的スキルを身につけさせる」と記されているほか、「ねらい7」

では、生徒は「科学を学習する上で21世紀のコミュニケーションスキルを身につけ、応用

する」必要があるとされています。このセクションでは、理科の各科目の指導や学習での

ICTの活用について取り上げます。スマートフォンやシミュレーションの活用の具体例

はそれぞれ後のセクションで取り上げます。

知識の習得と理解指導のねらいとは、幅広い情報源から知識を習得し、その知識や吸収したものを評価し

て、多くの異なる方法で自分の見解を述べる批判的な考えをする人を育てることです。生

徒は、DPでの学びを豊かにするために履修している科目のオンラインコミュニティーに

参加することが推奨されています。また、卒業後に時を経て生涯を通じて学習するよう推

奨されています。情報源の質は多様であるため、正当性、内容、情報の妥当性を批判的に

評価する能力が重要で、学習者はそうした能力を身につける必要があります。情報源には

以下のようなものがあります。

•オンライン教科書

•オンライン百科事典

•大規模公開オンライン講座(MOOC)

•オンライン学術誌

•分子の可視化ソフト

•ポッドキャスト

•オンラインセミナー

•TEDトーク

•ユーチューブ

•iTunes U(ポッドキャストやアプリケーション)

•TVやラジオでの放送

さらに、「Web 2.0」の相互交流型のウェブの技術の活用は、生徒、そして教師の理解を支

えます。また、相互交流型のウェブサイトを活用することで、多様な方法を通じてトピッ

クについての指導や学習を支えることも可能になります。生徒はこうした技術を必要なだ

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料 43

け繰り返し活用することができるため、クラスでの授業時間を延長することなく、学習す

る時間を延ばすことができます。これらの例には以下のようなものがあります。

•ディスカッションフォーラム

•動画

•ゲーム

•クイズ

「Glogster」や「Padlet」などのマルチメディアのブログサイトでは、生徒がビデオや画

像、文を用いて簡単に人を引きつけるプレゼンテーションをまとめることができます。

すべてのデバイスで使用することができる学習管理や生徒の応答システムには

「Socrative」や「Infuse learning」があります。これらは特に投票的調査やデータ収集に使用

することができ、「グループ4プロジェクト」の計画段階で役立つ場合があります。

「The Biology Corner」などの授業における共同研究のツールでは、生徒が自分の研究を

他者のものと合わせることができ、理科の各科目での共同研究や研究結果のプレゼンテー

ションに役立ちます。

実習

記録計・データロガー

データを記録する装置を使用することは、特に経時的に大量のデータセットを正確かつ

効率的に収集する際、生徒や教師にとって多くのメリットがあります。これにより生徒は

データを記録するという時間のかかる作業から解放され、比較的長時間にわたる記録でも

授業時間を延長する必要がなく、手作業で可能なものより高い頻度でデータを収集するこ

とができます。

さまざまな要素を無線で記録し、結果を共有し他のソフトを用いて結果を組み立てるこ

とができるアプリは、携帯機器で利用することが可能です。

複数の教科に対応可能な総合的なスターターパッケージなど、適用性の広いセンサーに

関する詳細は、学校にICTを提供する企業を通じて入手することができます。

シミュレーション

シミュレーションには、概念を強化するためのデモンストレーションとして、または実

習の一部として使用するという2つの主な使用方法があります。インターネットでは通常

Javaアプレットとして、文字通り何千もの無料のシミュレーションが利用可能です。リソー

スが非常に多く、問題の原因となることもあります。優れたものを見つけるまで何回も検

索しなければならない場合もありますが、リソースは、常に変化し続け、改善されていま

す。教師はオンラインカリキュラムセンター(OCC)の「教師向けリソース情報の

交換」(Resource exchange)で、使用している優れたICTのリソースを共有するよう推

奨されています。

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料44

シミュレーションの多くは、デモンストレーション向けです。教師と生徒は内部評価用

の課題にシミュレーションを使用する際には、注意する必要があります。内部評価用の課

題に適したシミュレーションの選択に関するアドバイスは、本資料の「シミュレーション

の使用に関する指針」のセクションに記載されています。

インターネットで利用できる定評ある科学シミュレーションサイトには以下のようなも

のがあります。

•物理:PhET (phet.colorado.edu)

•物理:The Physics Classroom (www.physicsclassroom.com)

•物理:University of Oregon (jersey.uoregon.edu)

•化学:ChemCollective Virtual Lab (chemcollective.org/vlab/vlab.php)

•共通:KScience (www.kscience.co.uk/animations/anim_1.htm)

•共通:Explorelearning (www.explorelearning.com)

•共通:eduMedia (www.edumedia-sciences.com)

実験をシミュレーションするためのスプレッドシートの使用

物理的現象のモデルを作り出すためにスプレッドシートを使用することができます。こ

れは実験を行うことが不可能な場合や、論理的でない場合に特に役立ちます。この良い例

として、車の安全機能をデザインするのに使用するモデルが挙げられます。他には気候変

動を予測するのに使用するモデルがあります。

トラックの積み荷これは「エクセル」を使用してモデルを構築する簡単な例です。砂を積み込んでいる最

中のトラックがあるとします。毎分100kgの砂がトラックに積み込まれますが、毎分、最

後に10%の砂が取り除かれます。

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料 45

問題は、(もし)平衡に達した場合、トラックに積み込まれている砂の量はどのくらいか

というものです。課題はスプレッドシートを作成し答えを求めることです。生徒がすでに

実習で得たデータを分析するためにスプレッドシートを使用していたなら、どのように式

を立てるか、またその式をどのように縦の列に入れるかを理解していると考えられます。

下の表はどんなスプレッドシートができるかの一例です。

スプレッドシートの作成終了後、グラフを描き、砂の質量がどのように変化し、いつ平

衡に達するかがわかります。その後、毎回取り出される砂のパーセンテージを変化させた

ときの影響や積み込まれる砂の量を変化させたときの影響を調べることができるようにな

ります。

気候のモデル上記の例では、砂をトラックに積み込み、取り出しました。これは地球にエネルギーが

入り、地球からエネルギーが放出されるのと一部の点でよく似ており、この過程を気候の

モデルとしてモデル化するスプレッドシートを作成することが可能です。

仮想解剖IBワールドスクール(IB認定校)における動物の取り扱いのガイドラインでは、動

物全身の解剖は避けるべきとされています。解剖を観察することが生徒にとって有益であ

ると教師が考える場合には、以下のウェブサイトで、実際のカエルの解剖の段階を見るこ

とができます。http://www.mhhe.com/biosci/genbio/virtual_labs/BL_16/BL_16.html

以下は、生徒自身で解剖を行うことができるサケの仮想解剖のウェブサイトです。

www.mydoctorgames.com/salmon-dissection/game/

眼の仮想解剖

www.eschoolonline.com/company/examples/eye/eyedissect.html

ウェブサイト www.teachkind.org/dissectalt.asp では、ヒトの解剖の代替となるさまざまな

アイデアを提供しています。

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料46

処理と分析

理科の授業の中でICTが最も活用されるのは、収集したデータの処理です。データの

記録装置に含まれるデータなどをスプレッドシートのソフトやウェブサイトに転送するな

ど、装置特有のソフト内で直接データ処理が行われます。ほとんどの装置特有のソフトに

は、収集したデータを分析するための機能が追加されたスプレッドシートのバージョンが

含まれています。データの処理にソフトを使用する利点には、表形式でデータを示せるこ

と、式を解くことや代入ができること、グラフを作成し分析ができること、統計学的解析

を行うことができること、データセットの内挿や外挿ができること、結果を簡単に共有で

きることなどがあります。

データベースデータベースとは、異なる数量を結びつける1つあるいは複数の表のことです。データ

ベースの簡単な例としては、比熱容量や密度など、物質の物理学的性質のデータベースが

挙げられます。比較的複雑なデータベースには、ゲノムのデータベースに含まれている詳

細な情報や世界規模の気候変動のモデル化に使用されるデータセットなどがあります。個

別の表に勝るデータベースの利点は、異なる数量を結びつけることがデータベースでは比

較的簡単であることが挙げられます。科学の分野の例ではありませんが、ある劇場で起こっ

た盗難事件を考えてみましょう。警察には知られているすべての泥棒とその泥棒の住所が

記載された表があり、劇場には夜の各公演のチケットを購入した人の一覧表があるとしま

す。これらの2つの表は、どちらにも人名が記載されている欄によって関連づけられます

が、各表に記載された名前すべてが同じではないため、2つの表を統合することは不可能

です。しかし、この情報がデータベースに入力され、名前の欄が関連づけられると、検索

することで、盗難が起こった夜に劇場にいたすべての泥棒の一覧表が得られるようになり

ます。

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料 47

目的は、生徒がデータベースの作成法を学ぶことではありません。研究や関係のあるデー

タを抽出する際、データベースを使用できることを生徒に認識させることが目的です。イ

ンターネットで利用できる確立されたデータベースには以下のようなものがあります。

•CRCnetBase: www.crcnetbase.com 

•Intergovernmental panel on climate change (気候変動に関する政府間パネル IPCC):

www.ipcc.ch

•National Oceanographic Data Center (米国海洋データセンター NODC): www.nodc.

noaa.gov

•1000 Genomes: www.1000genomes.org 

•Gapminder: www.gapminder.org

データの提示生徒が各自の実験レポートの中でデータをどのように処理したかを説明することは重要

です。したがって、すべての生のデータが記載された表のコピーをレポートに含める必要

があります。表の見出しには単位を記載し、縦列全体で不確かさが同じである場合は、そ

れも見出しに含める必要があります。グラフの作成に用いられる欄を作図プログラムにコ

ピーするか、スプレッドシートのソフトの中で用いることでグラフを作成することができ

ます。わかりやすくするために、複数のデータの表にそれぞれ適切なタイトルをつけて使

用することも可能です。

グラフの作成

科学の世界では、グラフは複数の変数の間の関連性を示すために用いられます。手で直

線のグラフを書いて作成する場合と同じようにソフトを活用してグラフを作成することが

できます。また、グラフを作成し、非線形関数を解析する力は、生徒が関連性を調べるの

に非常に役立ちます。ほとんどのスプレッドシートやグラフ作成ソフトでは、データに最

も適合する線や曲線だけでなく、独自のエラーバーやレンジバーを加えることや、データ

セットからの外挿、最大勾配、最少勾配、曲線下面積、切片の値を求めることもできます。

ソフトによって、データの表をグラフの形に変える際に異なるオプションがある場合があ

ります。教師や生徒は、ソフトのさまざまな機能を試してみるとよいでしょう。

ソフトウェアパッケージからのグラフを含める際に、初期設定の書式設定のオプション

では、ほとんどの場合、グループ4の内部評価用の課題として提出するのに適したグラフを

作成することはできません。以下の書式設定を修正できるかどうかを調べてみてください。

•軸のタイトル、グラフのタイトル、各軸の数値に使用するフォントの大きさ

•グリッド線は、はっきりと見えるか、適切なものかどうか

•データポイントの大きさやエラーバーやデータに最も合う線の太さ

•簡単に複製できるように適切な色や陰影が使用されているかどうか。カラーよりグ

レースケールのグラフの方が望ましいことを考慮に入れる必要があります(カラー

を選択しなくてもよい場合)。

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料48

統計

データの有意性を分析するために統計学的方法を使用することで、生徒がグラフを目視

で評価する以上に、実験によって立証できる要素を分析に取り入れることができます。これ

は必須ではありませんが、生徒が値を入力し、データの有意性を評価できる「エクセル」

など非常に優れた統計用のパッケージが多数あります。生徒が検定の式を理解することや

計算を自分で行う必要はありません。しかしながら、生徒が検定を用いて、統計学的な結

果を研究課題の文脈に入れることができることは非常に重要です。

「生物」教師用参考資料 49

情報コミュニケーション技術

スマートフォンの使用

2013年にスマートフォンの世界的販売台数は他のすべての携帯電話の販売台数を超えま

した。スマートフォンの販売は、世界規模で急速に拡大しています。スマートフォンは強

力なコンピューターです。スマートフォンには完全なオペレーティングシステムが搭載さ

れています。通常「アプリ」と呼ばれる多くのソフトウェアプログラムがプログラム開発

者によって作成されており、スマートフォンの販売をけん引しています。自社ブランドや

「アンドロイド」のようにブランドに限定されないスマートフォンのオペレーティングシス

テムで利用できるアプリは何百万とあります。最大でその60%が無料で、他の多くのアプ

リも非常に安価で利用することができます。

一般的にスマートフォンには、指導用や学習用の多くの教育的活用法があります。この

文書ではそれらについて扱いませんが、理科に特化したアプリケーションに重点を置いて

概説し、適切な使用法に関する一般的な指針を示すこととします。

IBの理科教師の多くは、すでにスマートフォンを使用しており、教師はOCCの「教師

向けリソース情報の交換」(Teacher resource exchange)にある「理科」(グループ4)のホー

ムページにリソースの詳細を公表することが推奨されています。他の教師は、OCCの検

索機能を用いて、そのようなリソースを見つけることができます。スマートフォンの明ら

かな利点の1つは、携帯できることで、ユーザーの多くが学校の実験室や教室の外で使用

しています。

アプリの取得方法アプリの一部はすでにスマートフォンにインストールされています。他のアプリは各社

のオンラインストアからスマートフォンにダウンロードすることができます。例えば「高

校用アプリ、化学(または物理、生物)」と検索すると、検索機能で結果を絞り込むことが

可能です。

「iPhone( またはアンドロイド)の科学アプリ」と検索すると、多くのサイトが検索結果

として表示されます。「Google play」と検索すると、アンドロイドのアプリが表示されま

す。

一部の企業や組織では、以下のような独自のアプリを開発しています。

•アメリカ航空宇宙局(NASA)の www.nasa.gov/connect/apps.html#.U34C6fldV8E

•米国科学振興協会(AAAS)の sciencenetlinks.com/collections/science-apps

オンラインの情報源でアプリのレビューを調べることによって、推奨されるアプリを見

つけることが可能です。例えば以下のようなものがあります。

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料50

•www.sellcell.com/blog/five-data-logging-apps-for-schools-and-colleges

•10の科学アプリを推奨するウェブサイト

blog.laptopmag.com/best-science-apps-iphone

•22のiPhoneの科学アプリがあるウェブサイト

www.wired.com/wiredscience/2008/07/20-iphone-apps

存在するアプリの種類1.インターネットであらゆる種類の情報に直接個々にアクセスするアプリすべてのスマートフォンにはブラウザが搭載されており、そこからインターネットにア

クセスすればウェブ上のどんな科学リソースも閲覧することができます。理論的には、タ

ブレット、ノート型コンピューター、デスクトップ型コンピューターからアクセスできる

内容と違いはなく、プラットフォームを選ばず作動するアプリもあります。ウェブをベー

スとして科学のリソースを提供する科学アプリの中にはスマートフォンの画面用にカスタ

マイズされたものもあります。スマートフォン専用サイトでは、機能が限定されている場

合もあります。スマートフォンの明らかな利点の1つは携帯できることで、学校の実験室

や教室の外で使うことができることです。

2.内蔵式のセンサーやスマートフォンに組み込まれた他のハードウェアを使用する有用なアプリケーション

スマートフォンには特定の目的用にセンサーが含まれていますが、センサーを一般的な

実験や特定の実験用に外部の測定機器として活用できるアプリがあります。利用できるセ

ンサーには、近接センサー、環境光センサー、加速度計、コンパスのついた磁気計、ジャ

イロスコープセンサーがあります。スピーカーやマイク、ビデオ付カメラ、全地球測位シ

ステム(GPS)を提供する衛星とのリンクも多くのアプリで活用されています。

これらのアプリの中には、例えば、磁気を測定する実験など一般的な実験に用いること

ができるものがあります。また、1つの特定の実験を目的としているものもあります。ス

マートフォンは簡単にデータプロジェクターに接続できるので、教師によるデモンスト

レーションに用いることが可能です。内部評価用の研究に関する定量的な実験で用いるの

に測定値が十分に正確であるかを判断するのは教師次第です。正確でない場合は、調整が

必要となることがありますが、生徒はこれらに対処することで科学の本質について多くを

学習するでしょう。データを表示するグラフは、場合によっては、軸が適切ではなく、単

位が常に正しいとは限らないことがありますが、定量的に用いて影響を示すことが可能で

す。一部のアプリは、高価な機材に取って代わることができますが、信頼性が劣るものも

あります。その例としてオシロスコープのアプリが挙げられます。

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料 51

3.スマートなモノに変えることができるQRコード

ウェブサイトのページ、ビデオ、実況画像など情報の中には、QRコードを用いてアクセ

スできるものがあります。QRコードは、さまざまな物につけられており、さまざまなモ

ノを「スマート」化しています。多くの企業では、カタログやユーザー向けの文書および

他の情報をモノ自体につけたQRコードで置き換えています。例えば、化学物質のボトル

につけたQRコードでウェブサイトやその化学物質についての情報を提供する電子文書、

ビデオ、ポッドキャストに結びつけることができます。このQRコードの使用は、急成長

しており、すでに重要なものとなっています。

さらに、生徒や教師が自分自身のQRコードを作成することが可能で、自分自身のスマー

トなモノを作成することができます。以下はQRコードの作成の仕方を示すビデオへのリ

ンクです。

www.youtube.com/watch?v=JYYreDHvUQI

アプリの例生物

以下の一部は英語のみのリソースです。日本語でのリソースをご存知の方は、OCCに投稿して下さい。

www.pinterest.com/ntxscied/citizen-science-programs 50を超える Citizen Science projectのピンボードリスト

brunalab.org/apps 生物に関するアプリの包括的なリ

スト

www.whatsinvasive.org 位置情報付きの写真

www.imapinvasives.org 外来種の報告に関するオンライン

ツールとデータ管理

Nature’s Notebook の iPhone と Android のアプリ

www.invasivespeciesinfo.gov/toolkit/monitoringsmart.shtml米国農務省の国立農学図書館では

外来種の監視と特定に関するス

マートフォンのアプリケーション

とともにウェブサイトがある

play.google.com/store/apps/details?id=com.cosalux.welovestars 光害に関するプロジェクトの一部

として夜空の明るさを推定

ebird.org/content/ebird/news/birdlog Cornell Lab of Ornithologyの鳥に

関するプロジェクトへのデータ入

力用の公式アプリ

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料52

https://itunes.apple.com/us/app/national-geographics-handheld/id315268465?mt=8&ign-mpt=uo%3D8

National Geographic Birds iPhone アプリには他のアプリより多くの鳥

類(995)に関する最新の分布図、

記録、情報がある

www.marinedebris.engr.uga.edu 海岸線や河川のゴミの記録(米国

のみ)

www.noisetube.net/ あらゆる場所の騒音公害の監視、

アプリは音をデシベルで測定でき

るため実験室で使用可能

https://itunes.apple.com/us/app/expedition-white-shark/id488682903?mt=8

タグをつけたホホジロザメの追跡

を追跡が可能

www.inaturalist.org 野外に出ている間に種の地理位置

情報を記録する手段を提供。外来

種や絶滅危惧種の研究に関する多

くの拡張機能がある

www.projectnoah.org/mobile Project Noah は、野生生物の調査を

行い、記録するツールの1つで、

世界中の市民科学研究者の力を利

用するプラットフォーム

A brief history of genetics: www.biocourseware.com/iphone/ghistory/

Rosalind Franklinについて調べる必

要があれば、このインタラクティブ

な遺伝学年表を検討すること

化学

pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ed300329e The Journal of Chemical Educationでは科学者が使用する主要な化学

アプリを示す図を提示

www.sunsetlakesoftware.com/molecules 分子の3次元構造を見て、指で

操ることができる iPhone、iPod touch、iPad のアプリ

www.rcsb.org/pdb RCSB Protein Data Bank から新規

の分子をダウンロードすることが

可能

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料 53

The PubChem Project:pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/

NCBI(米国立生物工学情報セ

ンター)の化合物の公開データ

ベース。独自の分子構造を一般に

利用できるあらゆるウェブサー

バーからもデバイスにダウンロー

ドが可能

www.appszoom.com/android_applications/molecules(英語のみ)

www.appszoom.com/android_applications/molecules

生体分子とその三次元構造の国際

的な保管場所

アンドロイドのスマートフォン用

の分子を視覚化するアプリ

https://play.google.com/store/apps/details?id=com.budgietainment.oc

結合システムを非常に上手く表示

しており、どこからでも検討でき

るように分子が絶えず動き、回転

する

itunes.apple.com/gb/app/merck-pte-hd/id375734631 双方向性の解答の一部を含む周

期表

www.labcompare.com/6094-Laboratory-Apps/3631566-ChemSpider/

研究者が使用する ChemSpider で英国王立化学会(UK RSC)デー

タベースの検索が可能

物理

www.quakefeed.net/ 地震を調査するアプリ

http://www.sellcell.com/blog/five-data-logging-apps-for-schools-and-colleges www.iseismometer.com/

iPhoneや iPadの3軸モーションセ

ンサーを使用して動きを登録。ど

んな小さな動きでも検出可能でエ

クセルに転送して分析できるグラ

フが表示できる

itunes.apple.com/us/app/flight-data-recorder-mobile/id756318302

あらゆる移動する物体の高度、経

度、方向、スピードのデータを記

録し、グラフを描写するアプリ、

Flight Data Recorder Mobile

www.coachseye.com/ Coach’s Eye は身体の動きやス

ポーツを行っている際の動作を分

析する優れたアプリ

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料54

itunes.apple.com/us/app/particle-zoo/id325403123 Particle zoo では宇宙の亜原子粒子

を説明し、その歴史や素粒子の性

質を明示。また、LHC でのヒッグ

ス粒子の発見など最新の実験にも

対応

daugerresearch.com/orbitals/index.shtml Atom in a Boxアプリでは水素原子

が「どのようなものか」水素原子

軌道の実時間レンダリングを通し

て探究することが可能

www.wired.com/wiredscience/2010/04/review-of-some-iphone-acceleration-apps

5つの加速度アプリのレビュー

quantumprogress.wordpress.com/2012/05/24/using-smartphone-apps-to-take-physics-day-to-the-next-level

加速度計アプリの具体的な使用例

 

exoplanetapp.com/ すべての知られている太陽系外惑

星の実質的なデータベース、各惑星

に関する科学雑誌とウェブでリンク

www.star-map.fr/ Starmap は、メーカーが「携帯型

プラネタリウム」と呼ぶ洗練され

た双方向性の星図。アマチュアの

天文学者や星を見る人を簡単にサ

ポートする

itunes.apple.com/us/app/bio-hatcher/id522374495 4つの惑星から選んだ環境で生き

残るのに完璧な微生物を育て、極

端な地球圏外の環境で生き残るた

めに生命体を操作するゲーム

http://www.mobilefission.com/iskygaze/home.aspx この簡単なウェブアプリでは、例

えば火星など見たいものを入力す

ると、観察するのに最適な情報が

提示される

itunes.apple.com/us/app/uranus/id284969145 このGPSが使用可能なアプリで

は、地球上どこにいても夜空の案

内役として機能する

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料 55

一般

www.labcompare.com/General-Laboratory-Equipment/6127-Scientific-Lab-iPhone-app/

学術研究レベルのアプリ

http://blog.laptopmag.com/best-science-apps-iphone?slide=2 科学用語集

 アプリの多くは、内部評価用の研究や「グループ4プロジェクト」の実習およびCAS

活動の着想に役立つ情報源となります。本資料では取り上げませんが、アプリの中には「環

境システムと社会」と「スポーツ・エクササイズ・健康科学」の各科目と関連しているも

のもあります。

アプリは、生徒にとっても教師にとっても、刺激となりモチベーションを上げるきっか

けとなる可能性を持っています。百聞は一見にしかず。学習や思考の方法、時間の使い方

を変えてしまうようなエキサイティングで革新的なアプリも出ています。

「生物」教師用参考資料56

情報コミュニケーション技術

シミュレーションの使用に関する指針

以下は、教師が実験において活用するシミュレーションがどの程度、適切であるかどう

かを評価するための参考情報です。生徒が内部評価の規準を満たす適切な研究を行うのに

役立つシミュレーションとはどのようなものかがわかるような規準を挙げています。教師

には、シミュレーションが評価規準に合っているかどうか、または実習の他の部分で使用

する方が良いかどうかを判断することが求められています。

正確さ・単位・入手しやすさ•変数は現実の場面で遭遇すると考えられるものを反映しているか。

•変数から標準的で認識できる単位に適合するデータが得られるか。

•視覚化により何らかの点で誤解を招くおそれがあるか。

•シミュレーションはモデレーション(評価の適正化)担当者や試験官が自由に入手

し利用できるものか。

実験を行う能力

変数が表すこと•シミュレーションにより研究において各変数に関して適切な範囲の値を得ること

が可能となるか。

•有意義な結論に導くのに詳細な変数が十分にあるか。

•データの収集

•シミュレーションで十分なデータポイントが得られるか。

•シミュレーションは複数回実行することができるか。

•シミュレーションを繰り返すたびに結果が異なるか。

データ処理•データは生徒が自分で処理できるものか。

上記の規準のすべてまたはいずれかを満たしていることが、シミュレーションが実験で

有用であるための必須条件なのではありません。むしろ、上記の点を十分に考慮し、ツー

ルの欠点に対して建設的な解決策を考えることが重要です。実際、生徒が建設的で個人的

な解決策を見つけるためには、完全ではないシミュレーションのほうが、完全なものより

役立つと考えることができます。これが機能した例を以下に示します。

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料 57

酵素の作用をモデル化もしくは研究するシミュレーションこのシミュレーションは http://www.kscience.co.uk/animations/anim_2.htm にあります。

このシミュレーションでは、酵素が基質に作用し、多くの異なる条件下で生成物が生じ

ることが示されています。

正確性・単位・入手しやすさ

•変数は現実の場面で遭遇すると考えられ

るものを反映しているか。

反映している。酵素の濃度(容器の大きさ)、

温度、pH、阻害剤の影響、基質に対する酵素

の比がカバーされている。

•変数から標準的で認識できる単位に適合

するデータが得られるか。

このシミュレーションでは容器の大きさに

よって影響される溶液の濃度を除き、変数に

対する単位は標準的なものである。したがっ

て、これは、生徒が方法やデータを記録する

方法を増やす必要があると考えられる領域

になる。

•視覚化により何らかの点で誤解を招くお

それがあるか。

グラフは明らかに典型的なものである。誤解

となる可能性がある唯一の点は、容器の大き

さが変化した場合でもスクリーンの大きさ

が変化しないことである。

•シミュレーションはモデレーション(評価

の適正化)担当者や試験官が自由に入手し

利用できるものか。

できる。

実験を行う能力変数が表すこと

•シミュレーションにより研究において各

変数に関して適切な範囲の値を得ること

が可能となるか。

値の範囲は限定的である。個人が選択したも

のを入力するのではなく、利用できるものか

ら選択することが可能だが、各変数には5つ

以上の値がある。

•有意義な結論に導くのに詳細な変数が十

分にあるか。

ある。

データの収集

•シミュレーションやデータベースで十分

なデータポイントが得られるか。

得られる。各変数の中で値に範囲があるた

め、十分なデータポイントが得られる。

•シミュレーションやデータベースは複数

回実行することができるか。

できる。

•シミュレーションを繰り返すたびに結果

が異なるか。

異なる。異常な結果など、生成物が生じるの

にかかる時間に現実的な変化がある。

情報コミュニケーション技術

「生物」教師用参考資料58

データ処理

•データは生徒が独力で処理できるものか。 このシミュレーションでは実際にデータそ

のものが生じることはない。これは生徒が結

果を記録するために自分自身で方法を作る

必要があることを意味している。例えば、生

徒は生成物が生じるのにかかる時間を測る

か、もしくはある特定の時間後に生じた生成

物の量を記録することができる。

したがって、生徒は生のデータを収集し、そ

れを分析し読み取る方法を決定する必要が

ある。

「生物」教師用参考資料 59

実習

はじめに

実習は、理科の各科目の重要で不可欠な要素です。生徒は教室の内外で研究や実験を体験

します。生徒は実習を通じて、調査、計画、操作スキル、データ処理や分析、評価、チー

ムワーク、コミュニケーションなどさまざまなスキルを身につけます。実際に研究や実験

に取り組むための機会を設けることで、生徒は、科学者が経験するプロセスの多くを実地

に体験し、科学的な考え方や研究の本質を正しく理解することが可能となります。

教師は、各クラスの実習計画を立て、実習実施報告書「書式4:PSOW」(practical

scheme of work:実習を伴う学習活動)に記録します。SLだけのクラスまたはHLだけの

クラスでは、必要な実習実施報告書は1枚だけですが、クラスにSLの生徒とHLの生徒

が混在している場合、SLとHL用に別々の実習実施報告書が必要になります。実習実施

報告書は、規定の実習、「グループ4プロジェクト」、内部評価用の研究、その他の学習活

動(選択項目を含む学習活動)の各実習を完了したことの記録となります。教師はPSOW

に、ICTのスキルが使用された箇所を示し、各実習に割りあてられた時間を記録します。

規定の実習「指導の手引き」の「知識・スキルの活用」の項目には、生徒が実験室での活動またはシ

ミュレーションを通じて取り組まなければならない実習が明記されています。これらの一

般的な実習に関連するスキルや一般的な技術は、外部評価の一部として評価される場合が

あります。「生物」に必要な実習は、以下の一覧のとおりです。

トピック 1.1 光学顕微鏡を用いて、細胞、組織の構造、微細構造を調べ、細胞をスケッ

チし、スケッチの拡大倍率と、スケッチまたは顕微鏡写真に見られる構造

の実際のサイズを計算する。(実習1)

トピック 1.4 低張液および高張液にサンプルを浸すことによって組織の浸透圧濃度を

算出。(実習2)

トピック 2.5 酵素活性に影響する要因の実験的調査。(実習3)

トピック 2.9 クロマトグラフによる光合成色素の分離する。(実習4)

トピック 4.1 持続可能性の実証を試みるために閉鎖系メソコスム(海洋や湖沼の現場の

生態系構成要素を取り込んだ実験生態系)を設置する。(実習5)

トピック 6.4 休息時と穏やかな運動後および激しい運動後のヒトの呼吸をモニタリン

グする。(実習6)

トピック 9.1 吸水計を用いて蒸散速度を測定する。(実習7)

実習

「生物」教師用参考資料60

上記の表から、規定の実習では、個々の状況や必要性に応じてさまざまな方法で取り組

める研究の領域を取り上げていることがわかります。例えば、実習3の酵素活性では、酵

素または物質の濃度、温度、pH、もしくは阻害剤の酵素作用への影響を見ることができる

でしょう。さまざまな酵素または物質を用いて酵素作用を評価する方法もいくつかありま

す。このように、規定の実習には、地域の状況や制約を考慮した柔軟性があります。

追加実習実習にはSLで最低40時間、HLで60時間を配当します。「グループ4プロジェクト」

に10時間、内部評価用の課題の完成(セクション7.3を参照)、規定の実習および他の学習

活動に各10時間を割りあてます。

探究型学習プログラムの一環として、教師は、学習をより実りあるものにするための他

の課題を指導に組み込むことができます。そうした課題には、シミュレーション、コン

ピューターを活用したモデル化や研究のほか、デモンストレーションのような従来の学習

活動も含まれます。

「生物」教師用参考資料 61

実習

生物学におけるデータの提示

生物学におけるデータの提示以下に示すガイドラインは、HLおよびSLの生徒が評価用に提出するものかどうかに

かかわらず、調査に関する記述に取り組む際のためのものです。すべてを規定しているも

のではありませんが、生徒が明確で解釈しやすい提示方法を用いた成果物を作成するのに

役立ちます。

単位

国際単位系を可能な限り使います。ただし、目的に適した単位を用いているかどうかを

主眼に置かなければなりません。例えば、心拍に対する運動の影響や蒸散速度を分析する

場合など、一部の例においては、秒よりも分を用いることが望ましいといえます。また、

酵母細胞の呼吸によって産生される二酸化炭素量を記述するには、m3 よりも cm3 を用いる

ことが望ましいです。インチまたはカップなどの非メートル法を用いません。

表は、分析のためのデータを提示するためのものです。表には、何の表であるかを説明

するタイトルをつけなくてはなりません。「結果の表」は何の表であるかを説明するタイト

ルとはいえません。「異なる二酸化炭素濃度でカナダモが酸素 1cm3 を生産するのに要する

時間を示した表」というタイトルは、収集したデータの性質を詳述しています。その他の

ポイントは以下の通りです。

•単位は表本体ではなくセルの見出しにのみ示します。

•使用機器の誤差または測定値の精度を示す場合には、セルの見出しに示します。

•独立変数は、最初の列に配置します。

•続く列は、従属変数の結果を示します。

•小数点の位置は、列全体で一貫するようにします。

•平均値は、平均値を算出するのに用いた生データより小数の桁が多くなってはなり

ません。

データ処理に用いた方法は、わかりやすく示さなければなりません。また、処理された

データは、生データと同じ表に含めても構いません。処理されたデータと生データを別の

表にする必要はありません。

実習

「生物」教師用参考資料62

グラフ

グラフは、明確で、読み取りやすく、解釈しやすくするため、何のグラフであるかを説

明するタイトルをつけます。ITソフトウェアを使う場合、グラフには、明確に識別でき

るデータポイントと、区切りとラベルをつけた適切なスケールの軸を描きます。

隣接するデータポイントは、直線でつなぎます。この線は最初のデータポイントで始ま

り最後のポイントで終わらなければなりません。これらのポイントを超えた外挿はないは

ずだからです。中間点が2つのデータポイント間の線上に位置すると信じるに足る十分な

理由がある場合にだけ、近似線が有効です。通常、大量のデータを収集していることが信

じるに足る理由として挙げられますが、生徒が取り組むレベルの調査の時間的制約を前提

とすると、多くの場合、そのような量の収集は可能ではありません。同様に、この線の外

挿は、大量のデータが存在し、近似線が予測されるかまたは文献の値に対して参照がある

場合にだけ意味があります。生徒は、仮定を行う際には注意をしなくてはなりません。

最後に、選択するグラフのタイプは、収集したデータの性質に適したものでなければな

りません。

誤差

どのような調査でも調査では多くの段階で誤差が生じます。選択した方法での変数の制

御を考慮することによって、できるだけ多くの誤差に対処するよう試みなければなりませ

んが、それでも多くの誤差が残るでしょう。実験結果は、サンプルにすぎません(『「生物」

指導の手引き』の「科学の本質」(NOS)の第3項「科学の客観性」を参照)。生徒は、

誤差に落胆せずに、その誤差について、データを分析し結論を導く際に考慮しなければな

りません。不確かさと誤差の原因を綿密に評価すれば、調査に関する考え方を深めたり、

改善と発展の可能性を提案したりするのにも役立ちます。

不規則変動および正常変動生物学の調査では、誤差は、使用した材料の変化または実験が行われた条件の変化に

よって生じる可能性があります。生物学の材料は特に変動するものです。例えば、ジャガイ

モ組織の水ポテンシャルは、さまざまな濃度のスクロース溶液に組織片を浸すことによっ

て計算できます。しかし、特に、異なるジャガイモから組織片が採取された場合には、組

織片の水ポテンシャルはさまざまです。同じジャガイモから採取された組織片でも、水ポ

テンシャルが変動しますが、おそらく、異なるジャガイモから採取されたサンプルよりも

小さい正常変動を示すでしょう。したがって、確率的誤差は、材料を注意深く選ぶこと、

変数を注意深く管理することで最小限に保つことができます。例えば、ウォーターバスを

用いて、大気温度のランダムな変動を軽減します。

実習

「生物」教師用参考資料 63

人的過誤十分な注意で容易に避けることができるような間違いは、誤差の原因として許容されま

せん。大量の測定を行う必要がある場合には、データロガーを使って、集中力の低下から

生じる誤差を避けることができます。綿密な計画が、こうしたリスクの削減に役立ちます。

計測行為計測が実験の環境に影響する場合があります。例えば、ごく少量のお湯が入っている試験

管に冷たい温度計を入れると、水は温度計によって冷やされます。この場合は、体積を大

きくするか、最初から溶液に温度計を入れておくかします。動物の行動を記録する場合、

観察者の存在が、動物の行動に影響するかもしれません。観察者の影響を低減する方法は

ありますが、その影響は後で考慮すべきでしょう。

系統誤差系統誤差は、装置が正常に機能するように定期的にチェックまたは校正を受けていれ

ば、削減できます。例えば、温度計を電子ウォーターバスに入れて、ウォーターバスのサー

モスタットが正確に調整されていることをチェックします。装置の変動を補償するために

は、ブランクを用いて比色計を校正します。

データの精度および不確かさ生徒は、長さ、体積、pH、光強度などを測定するために適切な機器を選ばなくてはなり

ません。これは、すべての装置が正当でなければならないということではなく、通常の理

科実験室では、最適な機器が利用できない場合があるということを意味しています。

精度については、装置の±最小区分(最小読み取り単位)であることが最も簡単なルー

ルです。これは、デジタル表示の定規や機器に当てはまります。

機器の誤差限界は通常最小値よりも小さく、最小値の値の何分の一かであることが多く、

例えばビュレットでは、最小目盛の半分であることがよくあります。これは、ビュレット

の値が 34.1 cm3 であった場合は 34.10 cm3(± 0.05 cm3)となることを意味します。不確

かさと一致するように、体積の値が小数点第二位まで示されています。

推定される不確かさは、最小値や機器の誤差限界の概念だけでなく、該当する場合には、

通常オンラインで入手できる機器メーカーによって示された高いレベルの不確かさ、もし

くは、温度計の目盛を読む際の視差の問題、タイマーの開始および停止の反応時間、または

電子天秤の読み取りのランダムな変動などの質的な検討事項も考慮されています。生徒は

推定される不確かさの中にこれらの観察点を定量化するのに最善を尽くす必要があります。

不確かさが合理的で矛盾のない程度に記録されていることが明確である限りは、特に推

奨されるプロトコルは特定されていません。

実習

「生物」教師用参考資料64

誤差の伝播データ処理中の誤差の伝搬は想定されていませんが、実験誤差の根拠が説明されている

ならば、許容されます。

反復とサンプル

生物系は、その複雑さと正常変動ゆえに、反復観察と材料の複数のサンプルを必要とし

ます。大まかに言って、下限は、それぞれ3回の試行を行う測定を独立変数内で5回実行

することです。これは、分析に向けて5つのデータポイントを生み出します。酵素反応速

度に対する温度の影響の調査では、温度が独立変数(IV)であり、反応速度は従属変数

(DV)です。IVは、最低限でも5つの異なる温度で3回ずつの測定が必要です。明らか

に、この回数は、確保できる調査時間によって異なります。簡単な調査の中には、多数回

の測定または多数回の試行ができるものもあります。授業中、評価の対象とならない実習

中に、データの適切な処理ができるくらい十分な反復を生み出すため、クラス全員のデー

タを用いることも可能です。

標準偏差は、平均値の周りのデータのばらつきです。標準偏差が大きいほど、データの

ばらつきが大きくなります。標準偏差は、正規分布データに用いられます。これにより、

直線グラフ上の点の周りの一般的な変動・不確かさを示すのに役立ちますが、潜在的な異

常値を特定するにはあまり役に立ちません。

グラフ上にデータポイントとしてプロットされる平均値を通る垂直の線でつなぐことで

検定の最高値と最低値をプロットするエラーバーは、各データセットの変動・不確かさを

評価できるようにします。エラーバーが特に大きい場合には、測定値が信頼できないこと

を示すことがあります(一方で、何が実際に大きいのかを決定するために、スケールを参

照する必要があるかもしれません)。エラーバーが前後のポイントのエラーバーと重なって

いる場合には、データのばらつきが広すぎるために事実上区別できないことを示します。

傾向線が可能である場合には、決定係数(R2)を追加すれば、傾向線がデータにどれだけ

適合しているかを示す指標として役立ちます。

統計

データを効果的に提示できれば、傾向があるか否かを評価するのに大きく貢献します。し

かし、これは、こうした傾向の性質、そして、傾向が有意であるか否か、言い換えると、

グラフから主観的に判断された傾向が実際に妥当であるか否かを評価するために統計を用

いるのと同じことではありません。生徒は、データを評価するために、統計的検定を使う

ことを奨励されますが、検定の選択について簡単に説明し、作業仮説を概説し、検定の結

果を調査の文脈に当てはめる必要があります。統計的検定については、帰無仮説や対立仮

説、自由度、臨界値および確率水準を含め、正しい手順を提示しなければなりません。

「生物」教師用参考資料 65

実習

グループ4プロジェクト

「グループ4プロジェクト」に関する要件の詳細は、「指導の手引き」に明記されていま

す。このセクションでは、IB資料『Approaches to teaching and learning across the Diploma

Programme(ディプロマプログラムにおける指導と学習の方法)』(2012)の「Executive summary」

(要旨)で概説されている5つの指導と学習の方アプローチ

法に見られるコミュニケーションスキルや

社会的スキルの観点、および「指導の手引き」の「科学の本質」や本資料で詳述されてい

る「科学の本質」に含まれる「協働性」の観点から、「グループ4プロジェクト」の教育的

効果を説明します。

「グループ4プロジェクト」は、「理科」(グループ4)の科目を履修するすべての生徒(た

だし「環境システムと社会」では選択項目)が共同で行う研究です(「指導の手引き」を参

照)。実際の移動を伴うかどうかにかかわらず、どの学校も、他校との共同研究が推奨され

ています。OCCのフォーラムには、「グループ4プロジェクト」の専用フォーラムが設け

られており、学校が互いに連絡をとり、リソースやアイデアを共有することが可能です。共

同研究には、トピックのタイトルを共有し、プレゼンテーションや振り返りを交換するも

のから、すべての作業を完全に共同で行う完全一体型のプロジェクトまで多岐にわたって

います。このような共同研究では、ATL文書(ディプロマプログラム全体の指導と学習

の方法)で強調されているコミュニケーションスキルや社会的スキルだけでなく、国際的

な視野をもつ取り組みを実現できます。さらに、「指導の手引き」の「科学の本質」のセク

ションで概説されている現代の科学研究の国際的な性質を反映しているともいえます。ま

た、このような方法は、例えば病気などでプロジェクトに参加できなかった生徒や、すで

にプロジェクトを終了した後に転入してきた生徒にも推奨されています。プロジェクトで

重視されるのは、グループでの共同作業です。チームとして協働するには、ある程度の自

己認識と他のチームメンバーに対する共感が必要とされます。また、高いレベルのコミュ

ニケーションや動機も必要となります。これらの問題について、何がうまく行き、何を学

んだかという点に関して振り返りをする機会をもつことは、将来の共同研究や各生徒の人

格的成長にとってかけがえのないものとなるでしょう。生徒が成功と失敗の両方について

の振り返りを他の生徒と共有することが重要です。これをどのように達成するかは、教師

または生徒、あるいはその両者が共同で判断します。また、「理科」(グループ4)用のカ

バーシートの該当欄にプロジェクトに関する「振リフレクション

り返り」を簡潔に記入します。

チームでの学習活動を計画する際には、以下のようなチームをまとめるための学習活動

から始めるとよいでしょう。このような活動は、生徒が効果的なチームや生産性の高いチー

ムワークに関連する要素について考えるのに役立ちます。

実習

「生物」教師用参考資料66

チームをまとめるための学習活動誰にも見えないように、1枚の絵を教室の中心に置きます。絵には、簡単な形や線、シン

ボルなどが描かれています(例を参照)。各チームに紙と色ペンや色鉛筆、定規、消しゴ

ムなどを配布します。各グループから代表者が1人出てきて、絵を10秒間見ます。その

代表者はグループに戻り、他のメンバーがその絵を描けるように絵の内容を伝えます。最

初の1回で絵が完成しない程度に絵を複雑にしておくことが重要です。チームはこの作業

を30秒間続けます。その後、チームの別のメンバーが代表者となり10秒間、絵を見て、30

秒間、絵を描いている他のメンバーに指示をします。チームの各メンバーは順番に絵を見

て、チームにどのように絵を描くか指示します。最後にチームで描いた絵を中心に置いた

絵と比較します。

その後、生徒がそのプロセスについてや、うまく行ったこと、比較的難しかったこと、次

回に変えたいと思うことを話し合う評価の時間を設けます。

この学習活動で使う絵の例を以下に示します。

「チームをまとめるための学習活動」で用いる絵の例

「生物」教師用参考資料 67

実習

IB認定校における動物の取り扱いに関するガイドライン

教室内での動物の取り扱いに関するガイドラインがある理由動物を大切にすることは、人との関係を尊重することの基本的な足掛かりであるため、

IBの動物ガイドラインは、IB認定校での動物の取り扱いに関する指標を設定すること

を目指しています。

ガイドラインが適用されるものこのガイドラインは、IB認定校でのあらゆる動物の取り扱いに適用されます。PYP、

MYP、DP、IBCCのすべてのレベルの全児童生徒、および全教職員は、動物の取り

扱いに関するガイドラインの対象となります。評価対象となる課題かどうか、あるいは課

題論文(EE)、グループ4プロジェクト、MYPのプロジェクトなどの別にかかわらず、

すべての活動での動物の取り扱いに適用されるほか、教室内、学校の実験室、一般的な環

境などの場所も問いません。ガイドラインは以下のものに適用されます。

•校内での動物の飼育

•実験用動物の使用

•動物の解剖

•人を対象とする研究

校内での動物の飼育クラス内でペットの世話をすることは、ほぼすべてのレベルの児童生徒にとって、さま

ざまな真の学習の文脈を生み出します。また、児童生徒が他の生物に対して共感や思いや

りを育み、その学習の結果として行動を起こす機会につながります。最終的には、生きた

動物の世話をするかについての判断は、そのクラスの教師に委ねられています。その動物

を十分に研究し、適切な餌、育てる場所、運動、その動物に対する触れ合い、その動物の世

話をどのようにカリキュラムに組み込むことができるかを決定するための時間をとるよう

にします。クラスでペットの世話をすると決める前に以下を慎重に考慮するようにします。

•特定の種、餌、床敷きに対する児童生徒の感受性やアレルギー

•動物の種類(野生ではなく人になれている、有毒でも凶暴でもない、夜行性ではな

く昼行性など)

•安全、快適、清潔、かつクラスの環境を壊さない飼育場所の手配

実習

「生物」教師用参考資料68

•週末や休日の間に動物の世話を適切に行う手配

•将来、児童生徒にその動物に対するアレルギーが出た場合、もしくは他の理由によ

りクラスで動物が飼えなくなった場合の動物の長期的な世話

さらに、動物が児童生徒と触れ合う時間やその方法に関して基本的な合意をしておくよ

うにします。例えば、動物を手で触れる前後に手を洗うなどの合意により、生徒と動物両

者の健康と安全が確保されます。

実験用動物の使用生きた動物が関与する実験計画や実験の実施には、教師の承認を得ることが条件となり

ます。承認に際して、教師と生徒はIBのガイドラインに基づく話し合いをします。話し

合いでは、以下の「3Rの原則」の観点から正当な根拠のある判断を下す必要があります。

•代替(replacement)

•工夫 (refinement)

•縮小 (reduction)

動物が関与する研究については、はじめに動物の代わりに細胞や組織、植物、コンピュー

ターによるシミュレーションで代替することができないかを考える必要があります。動物

が研究に不可欠である場合は、動物の苦痛を軽減し、使用する動物の数を減らす工夫を行

わなければなりません。

動物が関与する実験は、動物の自然な行動を観察し、測定することに基づくものである

必要があります。実験では、脊椎動物であるか無脊椎動物であるかを問わず、いかなる動

物にも残虐な行為をしてはなりません。したがって、IB認定校では、薬物や医薬品を投

与する実験や、人道的な範囲を超えた環境操作や食餌操作を伴う実験は、容認されません。

動物の解剖PYP、MYPまたはDPの理科(グループ4)では、児童生徒が、脊椎動物であるか無

脊椎動物であるかを問わず、いかなる動物の解剖に立ち会ったり、解剖を行ったりするこ

とを要件にしていません。教師が解剖を教育上の経験として重要であると考え、解剖を授

業計画に加えることを望む場合、以下のガイドラインを適用しなければなりません。IB

では、PYPで動物の解剖や動物の体の一部を使用することを支持することはありません。

•一体の動物を解剖する理由を生徒と話し合うこと

•解剖に参加することを望まない生徒を解剖に立ち会わせないこと

•解剖数を減らす努力をすること

実習

「生物」教師用参考資料 69

•動物の解剖をコンピューターによるシミュレーションや、肉屋、食肉処理場、実験

用品の納入業者から得られる心臓や肺など動物の組織を使用することなど、もしく

はその両方で代替する努力をすること

•野生動物や道路で死んでいる動物、絶滅危惧種などではなく、倫理にかなった出所

の動物を解剖すること

人を対象とする実験人を対象とした実験を行う際には、直接、合法的な書面による許可を得る必要がありま

す。さらに、親や保護者の書面による同意がある場合を除いて、16歳未満の人を対象とし

た研究を行ってはなりません。以下の条件を守らなければなりません。

•被験者から書面による同意を得ていること

•研究結果は匿名とすること

•被験者は自分の自由意思で研究に参加すること

•被験者はいつでも研究への参加をやめる権利をもっていること

血液によって運ばれる病原菌が伝染するリスクがあるため、体液を使用する実験を行っ

てはなりません。ただし、自分の唾液や汗を使用する場合は例外とします。

二次データの使用これまでに述べた方針の範囲外であると考えられる研究結果として得られた二次データ

は、以下のような特定の状況下で使用することができます。

•専門の研究者が得たデータ。学術誌に掲載されている研究データや画期的なデータ

とされたものが、これに該当します。このような研究は研究グループの承認を得て、

使用許可が与えられます。

•研究が行われた際には倫理にかなっていると考えられた研究。私たちの動物や動物

保護に対する見方は近年大きく変化しています。多くの研究が現在の状況下では容

認されないものであっても、実験が行われた当時は容認できると考えられた研究が

多くあります。そのような実験のデータを受け入れることは可能です。

当時の文化的および歴史的背景の中でさえ倫理に反すると考えられる方法で得られた二

次データが一部存在しますが、そのようなデータの使用は、いかなる場合でも容認されま

せん。

ガイドラインの性質IBの動物実験ガイドラインは、一部地域や国の学校における実験の基準よりも厳しい

ものであるかもしれません。また、私たちは基礎研究や画期的な研究を行っているわけで

はないため、校内での研究に関する基準は、大学や研究開発グループのものより厳しいか

実習

「生物」教師用参考資料70

もしれません。学校での実習とは、概念を強化することや実用的なスキルや技術を教える

ことなど、他の目的をもつものです。実習に基づいた課題論文の場合でも、基礎研究や画

期的な研究に関するものではありません。

ガイドラインが守られなかった場合IBによるモデレーション(評価の適正化)のために送られた成果物のサンプルや課題

論文において、学校でガイドラインが守られなかった証エビデンス

拠を見つけた場合、証エビデンス

拠を見つけ

た内部評価のモデレーターや課題論文の試験官は、「Problem report form(問題報告書)」

(PRF)に記入し、IBカーディフ事務局に提出することが求められます。

「生物」教師用参考資料 71

内部評価

個人研究の実施

個人研究の実施に最適な方法を決定することは、DPの「生物」「化学」「物理」の教

師、特に経験の浅いIBの教師にとって重要な検討事項です。一方、ここで示す指針の多

くは、経験の豊かな教師には自明の事柄です。個人研究に割りあてられた10時間は、生徒

が個人研究で行うことを計画し、実行するのに必要な時間を指していることに留意してく

ださい。

個人研究は、生徒が科学研究における自分のスキルを示す機会です。また、それだけで

はなく、「グループ4プロジェクト」での共同研究と併せて、IBが提唱する5つの「学習

の方アプローチ

法」に有意義に取り組み、その方法をかなりの程度まで発展させる良い機会でもありま

す。5つの「学習の方アプローチ

法」については、IB資料『Approaches to teaching and learning across

the Diploma Programme(ディプロマプログラムにおける指導と学習の方法)』(2012)の「Executive

summary」(要旨)に記載されています。5つの指導と学習の方アプローチ

法とは、以下を指します。

•リサーチスキル

•コミュニケーションスキル

•思考スキル

•社会性スキル

•自己管理スキル

個人研究を各生徒の成長にとっての良い機会とするためにはどのように実施すれば良い

かを考える際に、以下について考える必要があります。

•生徒は、意味のある積極的な態度で研究に取り組むための十分なスキルや知識を備

えているか。

•個人研究を支援するために利用可能な物や人のリソースが十分にあるか。

•教師は、個人研究の計画・実施・レポートの各段階で、どのように生徒に自主的に

取り組むようにさせるか。

これらの中心的な考慮事項や他の関連事項は以下に詳細に述べられています。

(a)個人研究のスケジュール教師は、内部評価に割りあてられた10時間に、以下のものが含まれていることに留意し

てください。

•教師が生徒に内部評価の要件を説明する時間

•教師と各生徒の話し合いの時間

内部評価

「生物」教師用参考資料72

•研究を完成させる時間

•課題に目を通し、進行状況を確認する時間、および本当に生徒本人が取り組んだ課

題であるかどうかをチェックする時間

履修期間のうちのどの段階で個人研究を実施するのが適しているかを判断するのは各校

の自由です。個人研究のスケジュールを策定する際に考慮すべき点として、以下が挙げら

れます。

•多様な研究課題の中から、生徒がそれぞれ無理なく実現可能な研究課題を設定し、

取り組むことができるようにするためには、鍵となる概念や実験のスキルをどのタ

イミングで教えるか。

•クラスの全生徒が同時に個人研究を行う場合、物や人材が十分にあるか。

•学校内の他のDP科目の評価課題のスケジュールは、生徒が個人研究に十分な注意

を払い、時間を費やすことが可能なように組まれているか。

•同じ科目を担当する教師間の学校内でのモデレーション(評価の適正化)にどのく

らいの時間が必要か。

•内部評価の点数とサンプルの提出期限はいつか。

(b)研究計画の指導個人研究で成果を上げるためには、初期段階での計画が重要です。教師は、生徒の研究

課題の複雑さのレベルが適切なものかどうかを履修レベルや評価規準に照らし合わせて指

導します。個人研究の名が示すとおり、生徒は各自の興味に応じて、独自の研究課題を設

定し、単独で研究に取り組みます。研究課題を設定するのは生徒の責任です。また、研究

課題の設定は、「探究」の評価規準に基づいて評価されることを念頭に置くことが重要で

す。教師は、研究課題として設定可能なトピックや方法を示唆することはできますが、特

定の研究課題を割りあてることはできません。

しかしながら、生徒が授業での学習を進めていくのと同時に、教師が研究を行うと良い

と思われる領域に注意を促し、履修開始から早い段階で個人研究のねらいを大まかにまと

めることが役立つ場合があります。

教師はあらゆる種類の選択肢を探究し、興味のかき立てられる研究課題を追究するよう

生徒を前向きに促します。生徒は体験型実習を行うのか、データベースやシミュレーショ

ンのような二次的な情報源を使用するのか、それらの情報源や実習を合わせて個人研究を

行うのかを判断する必要があります。

(c)研究の実施担当する各生徒の個人研究の実施には、事前の考慮と計画が求められます。前述のとお

り、どのような方法が最適かは学校の考えに委ねられています。どのような方法をとるか

を最終的に決定づける鍵となる要素は以下の通りです。

内部評価

「生物」教師用参考資料 73

•個人研究に取り組む生徒数

•技術的サポートを行うスタッフが対応可能かどうか

•実験用のスペースを利用できるかどうか

•器具や材料を利用できるかどうか

•ITへのアクセス

それぞれの生徒により多くの注意を払い、限りあるリソースをより多くの生徒が利用で

きるようにするために、生徒が個人研究を行う時期をずらすことには、まったく問題があ

りません。ただし、これは一部の生徒が個人研究を行っている間、残りのクラスの生徒は

別の学習を行うことを意味します。

生徒が研究課題を同時に行うスケジュールを組んでいる学校では、以下の推奨事項が役

立つかもしれません。

•生徒が個人研究に必要な材料の詳細を早めに提出するようにすること

•同じ器具や材料に対する要求が重ならないようにするため幅広い研究トピックに

取り組むよう促すこと

•一部の生徒にITアプリケーションや2次データを基にした検討を行うように促

すこと

•洗練された概念は単純な器具や方法で有意義に研究できるという考えを奨励する

こと

ITアプリケーションや2次データもしくはその両方を用いた研究に関しては、教師が

指導、監視し、信頼性が確立されるように、教室や実験室において、生徒がデータ収集や

データの作成を監督下で行うようにすることが重要です。そのような研究を自宅でのみ行

うようなことがあってはなりません。

研究を実地調査で行う生徒に関しては、教師がその信頼性を確保する必要があります。

(d)レポート作成のための指導研究が終了時に、レポート作成についての最終的な要件を生徒に伝えるようにします。

以下を実践することが望まれます。

•評価規準の再確認

•生徒にレポートの長さは6~12ページの範囲でなければならないと注意すること

•最後まで書き上げた草稿の提出日をはっきりと決めること

•最終稿の提出日をはっきりと決めること

レポートには研究が独立して繰り返されるのに可能な限り詳細な内容が含まれている必

要があります。

最後まで書き上げた最初の草稿が提出されたら、教師は一般的なコメントを作成します。

草稿の長所と短所に関する注釈をつけることができますが、修正してはいけません。その

後、生徒が最終稿を書けるように、レポートを返却します。

内部評価

「生物」教師用参考資料74

評価を受ける最終稿が本当に生徒自身が取り組んだものかを調べ(turnitin.com などを用

いる)、IBISを通して得点を提出します。

(e)レポートの評価生徒のレポートが仕上がったら、教師は、評価規準を用いてレポートの評価を行います。

評価規準や課題で期待されている事項は、HLとSLの生徒で同一であることを重視する

必要があります。

個人研究は内部評価の後、IBによる外部モデレーション(評価の適正化)を受けます。

つまり、モデレーション担当者に対して教師の評価は明快でなければなりません。そのた

め、教師は別のマークシートに書いたコメントや生徒のレポートに書いた注釈もしくはそ

の両方を使用して、各レポートに下した評価に十分な証エビデンス

拠があることを確認します。

同じ科目で同じ集団の生徒を扱う教師が複数いる場合は、得点を提出する前に学校の下

した評価を標準化するため、内部でモデレーション(評価の適正化)を行います。

最終的な得点は、IBISを用いて記録されます。また、外部モデレーション用にサン

プルを選択します。この段階以降、レポートの得点に修正を加えることはできません。

「生物」教師用参考資料 75

内部評価

内部評価の評価規準

新しい評価モデルでは、5つの評価規準を用いて、個人研究の最終レポートの評価を行

います。それぞれの評価規準には以下の点数が割りあてられています。カッコ内は、合計

に占める各評価規準の割合です。

主体的な取り組み

探究 分析 評価コミュニケーション

合計

2(8%) 6(25%) 6(25%) 6(25%) 4(17%) 24 (100%)

評価では、最終レポートを、レベルごとに記述された複数の指標に照らし合わせて判断

します。多くのレポートは、複数の指標がある場合、特定の同一レベルに記述された複数

の指標と一致しますが、そうでない場合もあります。また、すべての指標が常に見られる

わけではありません。レポートに見られる特徴と一致する指標が、それぞれ異なるレベル

にあることもあります。このような場合に対応するため、IBでは、採点にマークバンド

(採点基準表)を用います。試験官と教師は、各評価規準に対してどの点数が適切かを決定

する際にベストフィット(適合)アプローチを使います。

教師は、採点を始める前に、マークバンド(採点基準表)の利用方法に関する指示を読

んでください。指示は、「指導の手引き」の「内部評価への評価規準の適用」に記載されて

います。教師用参考資料で取り上げられている採点例に完全に精通していることも欠かせ

ません。評価規準で用いられる指示用語の正確な意味は、「指導の手引き」の「指示用語の

解説」で説明されています。

主体的な取り組みこの評価規準では、生徒がどの程度、主体的に探究に取り組んだかについて評価します。

主体的な取り組みは、さまざまな資質とスキルにおいて認めることができます。具体的に

は、個人的に関心をもっていることに取り組んだり、研究の計画、実施、またはプレゼン

テーションにおいて、独自の思考、創造性、自発性を発揮したりすることが挙げられます。

評点 レベルの説明

0 このレポートは、以下の基準に達していない。

内部評価

「生物」教師用参考資料76

1 探究への主体的な取り組みを示す証拠が限定されており、レポートには、独自の思考、自発性、または洞察がほとんどない。研究で取り組んだ研究課題またはトピック(あるいはその両方)を選んだ理由

に、本人にとっての研究の意義、関心、または好奇心が示されていない。

研究の計画、実施、またはプレゼンテーションにおいて、自ら情報や考えを出したり、主体的に取り組んだりしたことがほとんどうかがえない。

2 探究への主体的な取り組みを示す証拠が明らかであり、レポートには、かなりの独自の思考、自発性、または洞察が含まれている。研究で取り組んだ研究課題またはトピック(あるいはその両方)を選んだ理由

に、本人にとっての研究の意義、関心、または好奇心が示されている。

研究の計画、実施、またはプレゼンテーションにおいて、自ら情報や考えを出したり、主体的に取り組んだりしたことがうかがえる。

探究この評価規準では、「研究の背景となる科学的文脈を設定できたか」「明確で焦点を絞っ

た研リサーチクエスチョン

究課題を提示できたか」「DPのレベルに適切な概念と技テクニック

法を用いているか」のそれ

ぞれについて、どの程度できたかを評価します。また、該当する場合には、この評価規準

で、安全性、環境、および倫理的配慮に対する意識について評価します。

評点 レベルの説明

0 このレポートは、以下の基準に達していない。

1~2 研究トピックが特定され、ある程度、関連性のある研究課題が提示されているが、焦点が絞られていない。研究の背景となる情報が表面的、または関連性が限定的なため、研究の文脈に

ついての理解を助けるものになっていない。

研究方法について、収集されたデータの関連性、信頼性、および十分性に影響

し得る重要な要素がほとんど考慮されていない。したがって研究方法は、研究

課題を扱うのに非常に限られた程度にしか適切でない。

研究方法に関連する重要な安全性、倫理、または環境の問題への意識が限定的で

あることがうかがえる。※

3~4 研究トピックが特定され、関連性のある研究課題が提示されているが、研究課

題の焦点は十分には絞られていない。

研究の背景となる情報は概ね適切で関連性があり、研究の文脈についての理解

を助けるものとなっている。

研究方法について、収集されたデータの関連性、信頼性、および十分性に影響

し得る重要な要素の一部だけを考慮している。したがって研究方法は、研究課

題に扱うのに概ね適切であるが限定的である。

研究方法に関連する重要な安全性、倫理、または環境の問題をある程度意識して

いることがうかがえる。※

内部評価

「生物」教師用参考資料 77

評点 レベルの説明

5~6 研究トピックが特定され、関連性のある研究課題が明確に提示されている。研

究課題は、十分に焦点が絞られている。

研究の背景となる情報は、十分に適切で関連性があり、研究の文脈についての

理解を高めるものとなっている。

研究方法について、収集されたデータの関連性、信頼性、および十分性に影響

し得る重要な要素のすべて、またはほとんどすべてを考慮している。したがっ

て研究方法は、研究課題を扱うのに非常に適切である。

研究方法に関連する重要な安全性、倫理、または環境の問題を完全に意識してい

ることがうかがえる。※

※この指標は、該当する場合にのみ適用します。英語版教師用参考資料の採点例を参照の

こと。

分析この評価規準では、生徒が研

リサーチクエスチョン

究課題と関連づけ、結論を裏づけるために、データを選

択、記録、処理、および解釈したことを示す証エビデンス

拠が、レポートの中にどの程度、見られる

かを評価します。

評点 レベルの説明

0 このレポートは、以下の基準に達していない。

1~2 研究課題に対する妥当な結論の裏づけとなる、関連性のある生データが十分に含まれていない。ある程度の基本的なデータ処理が行われているが、妥当な結論を導くには不正確または不十分である。

分析に関する測定値の不確かさの影響をほとんど考慮してないことがうかがえる。

処理されたデータの解釈が不正確または不十分である結果、結論が正しくない

かまたは非常に不完全である。

3~4 研究課題に対して簡単な結論、または部分的に妥当な結論の裏づけとなり得る、

関連性はあるが不完全な定量的および定性的生データが含まれている。

概して妥当な結論につながり得る適切かつ十分なデータ処理が行われている

が、処理においてはかなり不正確で矛盾している。

分析に関する測定値の不確かさの影響をある程度考慮していることがうかがえる。

処理されたデータの解釈は、研究課題に対して概して妥当であるものの不完全

または限定的な結論を導き出し得るものである。

内部評価

「生物」教師用参考資料78

5~6 研究課題に対する詳細で妥当な結論の裏づけとなり得る、十分に関連する定量

的および定性的な生データが含まれている。

適切かつ十分なデータ処理が行われている。そのデータ処理には、研究課題の

結論を実験データと完全に一致する形で引き出すことを可能にするのに必要と

される正確さが備わっている。

分析に関する測定値の不確かさの影響を十分かつ適切に考慮していることがう

かがえる。

処理されたデータの解釈は、間違いがなく、研究課題に対して完全に妥当で詳

細な結論を導き出し得るものである。

評価この評価規準では、研

リサーチクエスチョン

究課題および一般に受け入れられている科学的文脈に対して、研

究および結果についての評価したことを示す証エビデンス

拠がレポートの中にどの程度、見られるか

を評価します。

評点 レベルの説明

0 このレポートは、以下の基準に達していない。

1~2 研究課題に関連しない結論、または提示されたデータによる裏づけのない結論

が簡単に述べられている。結論を一般に受け入れられている科学的文脈と表面的に比較している。

データの限界やエラーの原因など研究の長所と短所が簡単に述べられているが、実際の作業、または手順に関して直面した問題の説明に限定されている。

研究を改善し、広げるための現実的で関連する提案がきわめてわずかに挙げら

れ、簡単に述べている。

3~4 研究課題に関連し、提示されたデータによって裏づけられた結論が詳しく述べられている。一般に受け入れられている科学的文脈とある程度関連性のある比較を踏まえ

て、結論が詳しく述べられている。

データの限界やエラーの原因など研究の長所と短所が詳しく述べられており、結

論の構築に関連する方法論の問題※をある程度意識していることがうかがえる。

研究を改善し、広げるための現実的で関連性のあるいくつかの提案が詳しく述べられている。

5〜6 研究課題と全面的に関連し 、 提示されたデータによって十分に裏づけられた詳

細な結論が詳しく述べられ、正当化されている。一般に受け入れられている科学的文脈と関連性のある比較を踏まえて、結論が

正確に詳しく述べられ、正当化されている。データの限界やエラーの原因など研究の長所と短所が議論されており、結論の

構築に関連する方法論の問題※を明確に理解していることがうかがえる。

研究を改善し、広げるための現実的で関連性のある提案について議論されている。

※英語版教師用参考資料の採点例を参照のこと。

内部評価

「生物」教師用参考資料 79

コミュニケーションこの評価規準では、研究の焦点、プロセス、成果を効果的に提示および報告できたかど

うかを評価します。

評点 レベルの説明

0 このレポートは、以下の基準に達していない。

1~2 研究のプレゼンテーションは、不明瞭で、研究の焦点、プロセス、および成果を理解することが難しい。レポートは、うまく構成されておらず不明瞭である。研究の焦点、プロセス、お

よび成果に関する必要な情報が欠けているか、あるいは一貫性のない状態、ま

たは整理されていない状態で提示されている。

研究の焦点、プロセス、および成果の理解が不適切、または無関係な情報が入っ

ているために曖昧である。

専門用語および表現技法に多くの間違いがある。※

3~4 研究のプレゼンテーションは、明瞭である。エラーがあっても、研究の焦点、プロセス、および成果を理解することを妨げない。レポートは、うまく構成されており明瞭である。研究の焦点、プロセス、およ

び成果に関する必要な情報が入っており、理路整然と提示されている。

レポートは、関連性があって簡潔であり、それによって研究の焦点、プロセス、

および成果を速やかに理解できる。

専門用語および表現技法が適切かつ正確である。エラーがあっても理解を妨げ

ない。

※例えば、グラフ、表、図のラベルの間違いや欠如、単位、小数の使い方。出典の明記お

よび引用の方法については「学問的誠実性」のセクションを参照のこと。

「生物」教師用参考資料80

内部評価

内部評価規準の使用に関する指針

「生物」の内部評価は以下の5項目で構成されています。

•主体的な取り組み

•探究

•分析

•評価

•コミュニケーション

各項目では、生徒の研究能力の異なる要素を評価します。これらの項目の配点の割合は、

研究の質への相対的な重要度によって、それぞれ異なります。研究や研究方法は各生徒に

より異なるため、採点の規準は、チェックリスト方式ではなく、文脈全体の中に位置づけ

る形をとっています。そのため、採点では、ある程度の解釈が必要となります。以下の説

明は、各項目の意図を理解するためのものです。絶対視されるべき方法というわけではあ

りません。

主体的な取り組みこの項目では、研究における個性と創造性を重視しています。ポイントは、生徒が選ん

だ研究課題が、生徒の個人的な経験から生まれたものであるかどうかです。生徒の個人的

な環境での観察が基になっている場合もあれば、クラスでの学習や読書、実験の結果とし

て生徒が得た考えが基となっている場合もあるでしょう。研究は画期的なものである必要

はありませんが、トピックの選択、探究の方法、研究結果の提示の仕方に独自の考えが含

まれていることを示すものでなければなりません。生徒が選択したトピックが適切な複雑

さであることも重要です。研究課題が非常に基本的である場合や、答えがわかりきったも

のである場合には、生徒が自分のスキルを示す機会がないため、「探究」や「分析」の項目

で満点をとることはほとんどありません。

探究この項目では、全体的な方法論を問題としています。生徒は独自の考えをもち、その考

えを実行可能な方法に転換することが必要です。さらに生徒は科目に関する知識を用いて

自分の考えを裏づける思考を示さなければなりません。提示する情報は、取り扱う問題に

的を絞ったものでなければなりません。トピックの内容を全般的に説明するのではなく、

その問題を対象としたものでなければなりません。

内部評価

「生物」教師用参考資料 81

研究では、科学的なプロトコルを用いて評価することのできる研究の厳密な流れが示さ

れている必要があります。生徒は、変数、コントロール、生成されるデータの性質の観点

から、研究で用いる方法を十分に詳しく示すことが求められます。「分析」や「評価」の項

目の基準を満たすには、研究の結論を導き出すことができるように、適切な方法で処理で

きるデータを十分に備えていなければなりません。生徒が考案した方法では十分かつ適切

なデータが得られない場合、評価の際に減点されます。

健康と安全の確保は、実験にあたって考慮すべき重要事項です。優れた実験方法には、健

康の確保と安全性を考慮することが欠かせません。生徒が動物や組織を実験に使用する場

合、IB認定校での動物の使用に関するガイドラインを理解し、準拠しているという証エビデンス

を示していることが期待されます。人間を実験の対象とする場合にもこの方針があてはま

ります。生徒が実験に化学物質を使用する場合は、安全な取扱いと廃棄の方法を説明する

ことが求められます。どうような潜在的な危険性があるかをすべて特定し、それらにどの

ように対処するかについて簡潔に説明されている場合に、完全な認識があると見なされま

す。リスクに関する評価の証エビデンス

拠を提示しなくてもよいのは、研究で用いるデータがデータ

ベースやシミュレーションによって生成されたものである場合など、明らかに研究に安全

上のリスクがないと認められる場合に限られます。

分析この項目は、生成されたデータとその処理の方法に基づいています。データが不十分な場

合は、どのようにデータを扱っても表面的なものに終始するでしょう。このような場合、

生徒には、不足点を認識し、分析を行う前に研究方法を再確認することが望まれます。ま

た、データが不十分な場合には、分析に向けて十分なデータを得るためにデータベースや

シミュレーションを使用することが役立ちます。

データの扱いは、研究課題に対する答えを導き出すためにあたって、適切なものでなけ

ればなりません。導き出された結論は、仮定ではなく、データから得られた証エビデンス

拠に基づく

ものである必要があります。内部評価用の課題として求められる範囲や配分された時間を

考慮すると、得られたデータのばらつきから暫定的な結論となることが想定されます。こ

のことを認識した上で、ばらつきの程度について検討しなければなりません。ばらつきを

示して説明した上で、結論に及ぼす影響を十分に説明するのです。「分析」の項目の評価規

準では、「結論」という言葉は、データを直接解釈することによって得られた演繹的結論を

意味します。「グラフが示しているものは何か」「結論を裏づけるために統計学的な検定が

使用されたか」などの問いに基づく推論であることに注意してください。

評価「評価」の項目においても、生徒にデータの分析を繰り返し、結論を再び導くことが求め

られているように見えるかもしれませんが、この項目での着目点は異なっています。デー

内部評価

「生物」教師用参考資料82

タや結論はこの項目でも再度精査されますが、「評価」では、結論が研究課題の文脈の中に

位置づけられます。したがって、「分析」で、xとyの間に正の相関関係があると結論づけ

られとすると、「評価」では、この結論を研究目的の文脈の中に位置づけるが求められま

す。言い換えれば、結論がそのトピックに関する生徒の当初の考えを裏づけるものになっ

ているかが重要なのです。そうなっていない場合には、その理由を考えることにより、研

究方法の限界についての評価や、より確かな結論を導くのに役立つデータを生成するため

に方法や取り組みをどう調整するべきかの再考察につながります。データのばらつきは、

結論の信頼性に関する証拠となるため、「評価」の中でも再び述べます。これは、研究方法

の限界の評価につながります。「評価」で重視されているのは、研究方法の限界の問題であ

り、データにばらつきがあることを繰り返すことが重要なのではありません。

コミュニケーション「コミュニケーション」の項目の採点では、全体としての書き方が対象となります。レ

ポートが明瞭で論理的に書かれていれば、教師はそのレポートを読み直す必要がありませ

ん。レポートで提示する情報や説明は、その領域の一般的な解説ではなく、研究課題の問

いに的を絞ったものでなければなりません。言い換えれば、レポートは、特定の焦点を備

えたものである必要があります。研究領域にふさわしい専門用語を使い、DPのレベルに

合った質のものでなければなりません。グラフや表を正しい形式で書くこと、分類名称が

正しいこと、単位が正確に使用されていること、誤差が正しく記録されていることが求め

られます。ただし、ミスが1つもない完璧なものでなければ満点を取ることができないと

いう意味ではありません。理解や結果の解釈に大きな影響がなければ些細なミスは容認さ

れます。

「生物」教師用参考資料 83

付録

シラバスの内容の変更点

『「生物」指導の手引き』2014年版 変更点

試験・評価についての変更点の概要

(a)「試ペ ー パ ー

験問題2」と「試ペ ー パ ー

験問題3」でさまざまな評コンポーネント

価要素の配点比率が変更されました。ま

た、「試ペ ー パ ー

験問題3」の素点が変更されています。

(b)各試験問題の「評価目標」に関する問題の配点比率が変更されました。最も注目すべき

は「試ペ ー パ ー

験問題1」に「評価目標3」の問題を含めたことです。

(c)「試ペ ー パ ー

験問題2」については、論述式問題の問題数が減りました。生徒は、HLでは3問

のうち2問を選択し、SLでは2問のうち1問を選択します。

(d)「試ペ ー パ ー

験問題2」については、短答式問題に割りあてられた点数が増え、論述式問題の点

数が減りました。

(e)「試ペ ー パ ー

験問題2」の論述式問題については、構成の質に、2点ではなく1点のみが割りあ

てられています。

(f)「試ペ ー パ ー

験問題3」では、選択項目以外も扱います。

(g)「試ペ ー パ ー

験問題3」は、SL・HL共通項目およびAHLを扱うパートAと、選択項目を扱

うパートBに分割されています。

SL・HL共通項目(95時間、以前の「指導の手引き」では80時間)

トピック1――細胞生物学(以前は12時間、現在は15時間)

注意以前は、トピック1は統計分析でしたが、統計分析は「指導の手引き」内の独立したトピッ

クではなくなりました。カイ二乗検定への言及が、以下で見られます。

トピック4.1 コドラートサンプリングによって得られたデータでカイ二乗検定を用いて 2

種間の相関関係を検証し、統計的有意性の認識および解釈を行います。

トピック10.2 カイ二乗検定は、頻度分布の観察値と期待値の間の差が統計的に有意である

か否かを決定するために用いられます。

「生物」の「指導の手引き」の数学的要件は以下も含みます。

•データセットの最頻値および中央値を決定し、標準偏差を計算して分析すること

•特定のデータの解析に適した統計的検定を選択し、結果を解釈すること

1.1 細胞の概論「2.1 細胞説」の大部分は、このトピックに網羅されていますが、分子、細胞膜の厚さ、ウ

イルス、細菌類、細胞小器官、および細胞の相対的なサイズを比較する明確な指示はありま

せん。残りは、「1.5 細胞の起源」と題した新しいセクションに網羅されており、そのセク

ションは、以下の追加も含んでいます。

•細胞内共生説によって、真核細胞の起源を説明できること

•遺伝子コードの普遍性、用いられる分子のタイプ、細胞内での分子過程が、地球上のす

べての生命の共通起源を示唆していること

•細胞や生物の自然発生は地球上では現在起こらないというパスツールの実験による証明

付録

「生物」教師用参考資料84

1.2 細胞の微細構造「2.2真核細胞」および「2.3原核細胞」を網羅しています。

2.3.4原核生物と真核生物細胞を比較すること

2.3.5植物細胞と動物細胞の違いを3つ述べること

2.3.6細胞外成分の役割を2つ概説すること

上記3つは、明示されていませんが、構造の理解は、構造を比較する能力が前提になります。

他には、以下の違いがあります。

細胞の区画化の概念を具体的に述べていること

肝細胞ではなく膵外分泌細胞を例にしていること

葉の柵状葉肉細胞を例にしていること

電子顕微鏡と光学顕微鏡の解像度の比較を含んでいること

1.3 膜構造トピック2.4 は、以前は同じトピック内で膜の構造と機能を網羅していました。2.4の内容

は、「1.3 膜構造」および「1.4 膜輸送」に分割されています。

ダニエリ‐ダブソンモデルの提案につながった電子顕微鏡からの証拠の分析

シンガー‐ニコルソンモデルにつながったダニエリ‐ダブソンモデルの反証の分析

1.4 膜による輸送ナトリウム‐カリウムポンプが、タンパク質ポンプの一例として詳細に述べられています。

医療処置で用いられる組織または器官は、浸透を防ぐために細胞質と同じ浸透圧の溶液中に

浸されなければならないことを理解します。

低張液および高張液にサンプルを浸すことによって組織の浸透圧を推定します。(実習2)

1.5 細胞の起源については、上記を参照してください。

1.6 細胞分裂同名の以前のトピック「2.5 細胞分裂」を引き継いでいます。新しいトピックは、以下の

追加も含んでいます。

サイクリン(真核生物の細胞で細胞周期を制御するタンパク質の一種)が、細胞周期の制御

に関与すること

突然変異原、ガン遺伝子、転移が、原発腫瘍と二次性腫瘍の増殖に関与していること

喫煙とガンの発生の間の相関関係

顕微鏡写真から分裂指数を決定すること

トピック2――分子生物学(21 時間のまま)

以前の「トピック3――生命の化学」の代わりです。

2.1 分子から代謝までカルシウムまたは硫黄など特定の物質の役割に関する情報は、もはや必要ありません(以前

はトピック3.1に含まれていました)。

代謝の基本原理がこのセクションに追加されています。

2.2 水水の水素結合の重要性を理解する助けとして、水とメタンの熱特性の比較についての知識の

活用が追加されていることを除けば、「3.1 化学元素と水」からの実質的な変更はありません。

付録

「生物」教師用参考資料 85

2.3 炭水化物と脂質(タンパク質は別のセクション:以下を参照)

食事の健康上の意義についての追加情報に加え、脂肪酸に関して、より詳細な情報が必要に

なっています。

•脂肪酸には、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、およびポリ不飽和脂肪酸があります。

•不飽和脂肪酸は、シスまたはトランス異性体になり得ます。トリグリセリドは、3つの

脂肪酸と1つのグリセロールの縮合によって形成されます。

•人間にとって、脂質は炭水化物よりも長期間エネルギーを蓄えるのに適しています。

•脂質に関する栄養機能表示の証拠と、その証拠を得るために用いられた方法を評価します。

•セルロース、デンプン、グリコーゲンの比較のために、分子視覚化ソフトウェアを利用

します。

•計算して、または計算図表を用いて、体格指数(BMI値)を決定します。

•デンプンの構造に、アミロースとアミロペクチンを含んでいなければなりません。

2.4 タンパク質以前に必要だったものは、アミノ酸の特定だけでした。SL・HL共通項目で必要なさらな

る詳細は以下の通りです。

•リボソームで合成されるポリペプチドには20種の異なるアミノ酸があること

•アミノ酸は、任意の配列で結合されて、非常に多くの種類のポリペプチドを形成すること

•ポリペプチドのアミノ酸配列は、遺伝子によってコードされていること

•タンパク質は、単一のポリペプチドまたは互いに結合した2つ以上のポリペプチドから

構成されること

•アミノ酸配列が、タンパク質の3次元構造を決定すること

•生物は、さまざまな機能を持つ多くの異なるタンパク質を合成すること

•個体ごとに独自のプロテオーム(ある生物が生産するタンパク質の総体)をもっている

こと

•ルビスコ、インシュリン、免疫グロブリン、ロドプシン、コラーゲン、クモの糸など

が、タンパク質の機能の幅の例であること

•熱によって、または最適pHからずれることによって、タンパク質が変性すること

2.5 酵素このトピックは、「3.6 酵素」で以前に網羅されていた情報と以下の追加を扱っています。

•酵素触媒反応は、分子運動、および、基質と活性部位との衝突を伴うこと

•固定化酵素が、幅広く産業に用いられていること

2.6 DNAおよびRNAの構造DNAとRNAが1つのトピックにまとめられていることを除けば、以前の3.3の学習項目

すべてを網羅しています。したがって、DNAとRNAの比較(以前は、3.5.1)もここに含

まれます。

2.7 DNA複製、転写、および翻訳このトピックは、以前は、トピック3.4と3.5で扱われていました。さらに、以下も含みます。

•ポリメラーゼ連鎖反応(PCRは以前は遺伝子工学に含まれていました)によって高速

でDNAの多数のコピーを生成するために、TaqDNA ポリメラーゼを用いること

•遺伝子コードの普遍性が種間での遺伝子導入を可能にする一例として、バクテリアでの

ヒトインスリンの産生

付録

「生物」教師用参考資料86

•メセルソンとスタールの結果を分析して、DNAの半保存的複製の理論の支持を得ること

•1遺伝子と1ポリペプチドの関係は詳細に述べられませんが、他の学習項目の理解にお

いて示唆されています。

2.8 細胞呼吸以前の3.7と同じ学習項目が、以下の追加とともに含まれています。

細胞呼吸の代謝経路の詳細は必要ないが、基質と最終老廃物は知っておくべきです。

具体的な例が提示されています。

•筋収縮の力を最大化するために嫌気呼吸を行う時のヒトにおける乳酸産生。呼吸計を用

いた発芽種子や無脊椎動物の呼吸速度の測定を含む実験の結果の分析。これは、IB認

定校における動物の取り扱いのガイドラインについて議論する機会です。

2.9 光合成•クロロフィルのクロマトグラフィーが必須の実習であることを除いては、以前のトピッ

ク3.8と基本的には同じです。

トピック3――遺伝学(15時間のまま)

3.1 遺伝子このトピックの学習項目は、染色体、対立遺伝子、突然変異とともに、以前は4.1に含まれ

ていました。さらに、以下を含みます。

•知識の活用:他の生物種(植物1種と細菌1種を含むこと)とヒトの遺伝子の数の比較

•データベースを用いて2種の遺伝子の塩基配列の違いを決定すること

3.2 染色体このトピックの学習項目は、遺伝子、対立遺伝子、突然変異とともに、以前は4.1に含まれ

ていました。さらに、以下を含みます。

•原核生物と真核生物の染色体の比較とプラスミドへの言及

•カリオグラム(染色体の数と形態を撮影し、観察用に表したもの)と核型を区別すること

•ゲノムサイズを比較すること

•データベースを用いて、ヒトの遺伝子の遺伝子座とそのポリペプチド産物を同定すること

3.3 減数分裂(以前はトピック4.2)

内容は同じですが、変異の発生に焦点を当てています。染色体不分離の頻度に両親の年齢が

影響するという概念が紹介されています。

3.4 遺伝的形質以前は、トピック4.3で扱っていました。検定交雑は削除されていますが、具体的な言及が

あります。

•嚢胞性線維症とハンチントン病の遺伝

•広島の原子爆弾投下およびチェルノブイリ原発事故後の放射線の影響

3.5 遺伝子組み換えとバイオテクノロジーこのトピックは、遺伝子工学ではなく遺伝子組み換えと名前を変えています。以前は、ト

ピック4.4で扱っていました。3.1ですでに述べているのでヒトのゲノムは含みません。

付録

「生物」教師用参考資料 87

トピック4――生態学(現在は12時間、以前は16時間)

進化は別のトピックにあります。

個体群生態学は割愛しています。以前は、生態学とともにトピック5に含まれていました。

エネルギー論は、別のセクション「4.2 エネルギーの流れ」にあります。

4.1 種、群集、生態系以前の「5.1 群集および生態系」の学習項目に加えて、このセクションは以下を含みます。

•持続可能性の実証を試みるための閉鎖系メソコスム(海洋や湖沼の現場の生態系構成要

素を取り込んだ実験生態系)の設置(実習5)

•コドラートサンプリング(方形区法)によって得られたデータでカイ二乗検定を用いて

2種間の相関関係を検証すること

•統計的有意性の理解と解釈

4.2 エネルギーの流れ基本的な概要は、以前の5.1と同じですが、理解においてより明確に概説しています。作用

中のプロセス・エネルギーの動き(つまり、光合成とエネルギー変換)を支えるプロセスに

焦点をあてています。

4.3 炭素循環炭素循環と温室効果は、以前は1つのセクション(「5.2 温室効果」)でしたが、2つのセ

クションに分けられました。

内容は概して同じですが、炭素循環に寄与する要因について詳述および説明されています。

追加は以下のとおりです。

•炭素循環の過程による炭素フラックス(大気、海洋、森林等の炭素を貯蔵する炭素プー

ル間の炭素の移動量)の推定

•年変動を説明するために大気モニタリングステーションからのデータを分析すること

4.4 気候変動「温室効果」を「気候変動」というタイトルに置き換えました。温室効果の本質が詳細に述

べられ、新たな知識の活用によって、さらに包括的なトピックになることが期待されます。

•溶存二酸化炭素濃度の上昇によるサンゴ礁への脅威

•世界の気温と地球上の二酸化炭素濃度の間の相関関係

•人間活動は気候変動の原因ではないという主張の評価

トピック5――進化と生物多様性(12時間)

以前の「指導の手引き」では、進化は生態学に含まれていました。新しい「指導の手引き」

では、進化は生態学から独立し、分岐分類学に関する新しいトピックとともに生物多様性に

追加されています。以前の「指導の手引き」では、進化と分類は、合計でおよそ6時間でし

た。より多くの学習項目を含めるために、割りあて時間を倍増しました。

5.1 進化の証拠このセクションの学習項目は、以前は5.4で扱われていたもので、以下が追加されています。

•種の個体群は、進化によって別の種へと漸進的に分岐する可能性があります。

•関連する個体群の地理的分布にわたる連続的な変異が、漸進的分岐の概念に適合します。

5.2 自然選択自然選択の例が、1例ではなく以下の2例になっていることを除けば、内容は以前のガイド

と同じです。

•ダフネ・メジャー島のフィンチのくちばしの変化

•細菌の抗生物質耐性の進化

付録

「生物」教師用参考資料88

5.3 生物多様性の分類学習項目の大部分は以前のガイドと同じですが、以下が追加されています。

•すべての生物は、3つのドメインに分類されます(より詳細は5.3の「指導」の項を参

照してください)。

•コケ植物門、シダ植物門、針葉樹植物門、被子植物門の特徴の認識に、維管束構造を有

しています。

•鳥類、ほ乳類、両生類、は虫類、魚類の特徴の認識。

5.4 分岐分類学このトピックは、シラバスでは完全に新しいもので、進化的なつながりの構築に関する現在

の考え方を反映しています。

トピック6――人間生理学(20時間のまま)

6.1 消化と吸収以前のタイトルは「消化」のみでした。1つのアミラーゼ、1つのプロテアーゼ、1つのリ

パーゼの供給源、基質、産物、最適pH条件を述べている要件6.1.3は削除して、あまり具

体的でない要件に代えています。生徒は、アミラーゼ、リパーゼ、エンドペプチターゼ(ペ

プシン、トリプシン、キモトリプシン)が膵臓から分泌されることを知識として身につけま

す。唯一の具体的な要件は、デンプンの消化です。

その他の変更点は以下のとおりです。

•小腸の環状筋と縦走筋繊維の収縮によって、食物と酵素が混ざり合い、消化管に沿って

移動すること

•組織層には、縦走筋と環状筋、粘膜、上皮組織が含まれなければならないこと

同化は削除されていますが、一方で、より吸収に注目しています。

•さまざまな方法の膜輸送が、さまざまな栄養の吸収に必要であること

•小腸で消化された食物の吸収のモデルとして透析管が用いられること

6.2 血液系血液は、すでに他で扱っているので、このセクションには含まれていません。

水に関する2.2に、以下のように述べている知識の活用があります。

•水への溶解度に関連した血液中のグルコース、アミノ酸、コレステロール、脂質、酸

素、塩化ナトリウム輸送の仕方

白血球と血小板は、「6.3感染症に対する防御」で扱われています。

追加された点は以下のとおりです。

•心臓がポンプとして機能することで血液が循環するというウィリアム・ハーヴェイの発見

•心周期中の左心房、左心室、大動脈の血圧の変化

•冠状動脈閉塞の原因と予後

6.3 感染症に対する防御HIVは以下に限定されています。

•HIVの免疫システムへの影響と感染方法(社会的影響は含まれていません)

血液凝固はSL・HL共通項目に含まれています。

•皮膚の傷口は、血液凝固によって密封されます。

•凝固因子は、血小板から放出されます。

付録

「生物」教師用参考資料 89

•カスケード反応(1つの反応が引き金となって次の段階の反応が連鎖的に引き起こされ

多段階の反応が進行する)の結果、トロンビンによってフィブリノーゲンからフィブリ

ンへの速やかな変換が起きます。

•冠状動脈における血栓の形成の原因と予後。

ウイルスに対する抗生物質の効果の比較に加えて、原核細胞では起きるが真核細胞では起き

ないプロセスを抗生物質が妨害するという事実が追加されています。

ここでは、抗生物質に対する細菌の耐性が強調され、一例として自然選択から展開されてい

ます。

細菌の株の中には、抗生物質耐性を与える遺伝子を持つように進化したものもあり、複数の

耐性をもつものもあります。

また、新しいシラバスでは以下が追加されています。

•マウスの細菌感染でペニシリンを試験したフローリーとチェーンの実験

6.4 ガス交換生徒は、ガス交換と換気システムというよりむしろ、肺胞とそれに付随する毛細血管を描く

ことができれば十分です。以下が追加されています。

•Ⅰ型肺細胞は、ガス交換を行うのに適応した非常に薄い肺胞細胞です。

•Ⅱ型肺細胞は、表面張力を減少させることで肺胞の側面が互いに付着することを防ぐ

ために肺胞の内部の表面を湿らせる界面活性剤を含む溶液を分泌します。

•肺がんの原因と予後。

•肺気腫の原因と予後。

•呼気、吸気が行われる際は、それぞれ異なる種類の呼吸筋の収縮が必要となります。

•休息時と穏やかな運動後および激しい運動後のヒトの換気のモニタリング。(実習6)

6.5 神経とシナプス「6.5神経、ホルモン、恒常性」から分離しました(ホルモンと恒常性は、生殖とともに次

のセクションです)。

以下は含まれていません。

•神経系が中枢神経系(CNS)と末梢神経系から構成されることの記載。

•運動ニューロンの構造の図を描き名称を記入すること。

•神経インパルスが、感覚ニューロンによって受容体からCNSへ、リレーニューロンに

よってCNS内部で、そして、運動ニューロンによってCNSから効果器へ伝達される

ことの記載(ただし、違う表現で記載されているとも言えます)。

•シナプスは、ニューロン間、および、ニューロンと受容体または効果細胞との間の接合

部位であること。

以下の学習項目が追加されています。

•神経細胞の髄鞘形成により跳躍伝導が可能になること

•神経インパルスは、閾値電位に達した場合にのみ引き起こされること

•ニューロンによるシナプスでのアセチルコリンの分泌と再吸収

•破傷風毒素が神経筋接合部のアセチルコリン受容体に結合すること

•静止電位と活動電位を示すオシロスコープの波形の分析

付録

「生物」教師用参考資料90

6.6 ホルモン、恒常性、生殖以下の恒常性システムの記述とリストは削除されています。

•恒常性には、血液の pH、二酸化炭素濃度、血中グルコース濃度、体温、および水分バ

ランスなど、内部環境を限界値の間に維持することが含まれているという記述。

インシュリン、グルカゴン、および性ホルモンに加えて、以下のホルモンをそれらの知識の

活用とともに追加しています。

•チロキシンは、甲状腺によって分泌され、代謝率を制御し、体温のコントロールを助け

ます。

•レプチンは、脂肪組織の細胞によって分泌され、脳の視床下部に作用して食欲を抑制し

ます。

•メラトニンは、松果腺から分泌され概日リズムをコントロールします。

•臨床的な肥満患者のレプチンの試験および疾病をコントロールできない理由。

•時差ぼけの原因と時差ぼけを軽減するためのメラトニンの使用。

恒常性の制御の段階は、以前のトピック6.5.9のようには明示されていません。

•恒常性には、変数のレベルのモニタリングと、負のフィードバックメカニズムによるレ

ベルの変化の修正が含まれることを説明しています。

しかし、以下のような具体例に追加されています。

•月経周期は、卵巣ホルモンおよび下垂体ホルモンが関与する負および正のフィードバッ

クメカニズムによって制御されています。

この説明には、平衡などを考察することが必要です。

生殖は、以前のガイドのセクション6.6と同じで、追加は以下の通りです。

•Y染色体上の遺伝子が、胎児性腺を睾丸に発達させ、テストステロンを分泌させます。

•ウィリアム・ハーヴェイによるシカでの有性生殖の研究。

HL発展項目(60時間、以前の「指導の手引き」では55時間、トピックは5つのままです)

トピック7――核酸(11時間から9時間に変更ですが、このトピックは、以前は「核酸とタ

ンパク質」というタイトルで、以前のセクション7.1は、タンパク質に関する追加の学習項

目を、セクション7.2は、酵素に関する追加の学習項目を扱っていました。現在は、タンパ

ク質に関する追加の学習項目は、このトピックの7.4で、酵素に関する追加の学習項目は、

「8.1 代謝」で扱っています)。

7.1 DNAの構造と複製これは、セクション7.1と7.2に代わるものです。同じ学習項目が網羅され、以下が追加され

ています。

•DNAジャイレース(DNAの二本鎖を切断し、二重らせんの撚りを戻す酵素)

•原核生物のシステムだけが求められています。

•ロザリンド・フランクリンとモーリス・ウィルキンスのX線回折によるDNA構造の研究

•塩基配列決定のサンプルの準備に、DNA複製を停止するためにジデオキシリボヌクレ

オチドを含むヌクレオチドを使用します。

•タンデム反復(DNAに複数見られる同じ配列の繰り返し領域)が、DNA個人識別法

に用いられます。

•DNAが遺伝物質である証拠を提供するハーシーとチェイスの実験の結果を分析します。

•分子視覚化ソフトウェアを用いて、ヌクレオソーム中のタンパク質およびDNAの関係

を分析します。

付録

「生物」教師用参考資料 91

7.2 転写と遺伝子発現基本的に以前のガイドと同じ学習項目ですが、重点が若干異なっていて、環境の影響がメチ

ル化パターンに関して含まれています。追加点は以下のとおりです。

•ヌクレオソームは、真核生物で転写を調整するのに役立ちます。

•mRNAのスプライシングは、生物が産生できる異なるタンパク質の数を増加させます。

•遺伝子発現は、DNA内の特異的な塩基配列に結合するタンパク質によって制御されます。

•細胞および生物の環境は、遺伝子発現に影響します。

•機能を持つ非コードDNAの一例としてのプロモーター遺伝子。

•DNAのメチル化パターンの変化の分析。

7.3 翻訳(「7.4 翻訳」に代わるものです)

•原核生物では核膜がないために、転写後すぐに翻訳が起こり得ます。

タンパク質の構造は、このセクションに移動されています。

•一次構造は、ポリペプチド内のアミノ酸の配列と数です。

•二次構造は、水素結合で安定化したαヘリックスとβシートの形成です。

•三次構造は、R基間の相互作用により安定化したポリペプチドがさらに折りたたまれた

ものです。

•四次構造は、2本以上のポリペプチド鎖を持つタンパク質に存在します。

•その他の追加は以下のとおりです。

•tRNA活性化酵素は、酵素基質特異性と、リン酸化反応の役割の例になります。

•原核生物と真核生物の電子顕微鏡写真でのポリソーム(複数のリボソームが1本のmR

NAに結合した形のもの)の特定。

•分子視覚化ソフトウェアを用いて、真核生物のリボソームとtRNA分子の構造を分析

します。

トピック8――代謝、細胞呼吸、光合成(14時間。以前は10時間、現在は、以前のセクショ

ン7.6を含んでいます)

8.1 代謝以前は7.6で扱われていた酵素に関する学習項目が含まれています。その他の追加は以下の

とおりです。

•知識の活用:潜在的な新しい抗マラリア薬を特定するためのデータベースの利用

•スキルの活用:実験結果の生データから反応速度を計算しプロットすること

•スキルの活用:特定の基質濃度でグラフから異なるタイプの阻害を識別すること

8.2 細胞呼吸以前のガイドの「8.1 細胞呼吸」と同じですが、知識の活用が、目立った特徴を若干明確

にするのに役立ちます。

•分子のリン酸化反応により分子が不安定になります。

•知識の活用:活性化したミトコンドリアの画像を生成するのに、電子線トモグラフィー

(電子顕微鏡を用いて断層像を作成する3次元再構成法の1つ)が用いられます。

•スキルの活用:好気的呼吸の経路の図を分析して、脱炭酸反応と酸化反応が起こるとこ

ろを推測します。

付録

「生物」教師用参考資料92

8.3 光合成この学習項目は、光合成に関する8.2で以前に扱われていたのと同じものです。変更点は以

下のとおりです。

•光化学反応は、チラコイド膜の膜間空間で起こります。

•カルビン・ベンソン回路は、ストロマで起こります。

•RuBP のカルボキシル化を解明するためのカルビンの実験。

トピック9――植物生物学(13時間。以前は11時間)

9.1 植物の木部における輸送旧「9.2 被子植物における輸送」は、このセクションと次のセクションで網羅されていま

す。異なる環境への適応を示すために水分条件の代わりに塩分条件を用いることを除けば、

蒸散については以前と同じです。

気孔に関する以下の詳細は、このセクションには含まれていません。

•孔辺細胞が気孔の開閉によって蒸散を調整できるという記述。

•植物ホルモンであるアブシシン酸が気孔を閉じさせるという記述。

•光、温度、風、湿度といった非生物的環境が、典型的な陸上植物の蒸散速度にどのよう

に影響するかの説明。

一方で、ガス交換の結果必然的に水分の喪失が起きることの最初の理解の結果として、ある

程度の気孔についての言及が期待できます。

以下は、網羅されている学習項目への追加と見なすことができます。

•砂漠や塩類土壌の植物の水の保持に対する適応

•吸い取り紙またはフィルタ紙、多孔質のポット、毛細管などの簡単な装置を使った木部

の水輸送のモデル

•顕微鏡画像に基づいた茎の断面図の一次導管の構造のスケッチ

•吸水計を用いて蒸散速度を測定すること(実習7)

•蒸散速度への温度または湿度の影響に関する仮説を検証する実験を計画すること

9.2 植物の師部における輸送以前のセクション9.2の情報が、以下のように1文ずつにまとめられています。

•水の非圧縮性により、静水圧勾配に沿って輸送できます。

•ソースの師管に有機化合物を送るために、能動輸送が用いられます。

•ソースでの師部内の溶質濃度が高いことにより、浸透圧による水の摂取につながります。

•静水圧が高められると、師部の内容物がシンクに向かって流れます。

•師管の構造と機能の関係性。

•茎と根の顕微鏡画像で木部と師部を同定します。

•アブラムシ口針と放射能でラベルされた二酸化炭素を用いて師部の輸送速度を測定す

る実験のデータを解析します。

9.3 植物の生長以前は「9.1 植物の構造と生長」に含まれていた内容です。根と茎の構造は、9.1 と 9.2 で

扱われています。

新しいセクションの焦点は、細胞レベルでの屈性と生長です。結果として、以下の学習項目

はすべて削除されています。

•双子葉植物の茎および葉の組織の分布を示す平面図を描き、名称を記入すること

•双子葉植物と単子葉植物の構造の違いを 3つ説明すること

•葉の組織の分布とこれらの組織の機能との間の関係を説明すること

付録

「生物」教師用参考資料 93

•異なる機能に対する根、茎、葉の変形を特定すること:球根、塊茎、貯蔵根、巻きひげ

•双子葉植物が、茎頂と形成層に分裂組織を持つことの記述

•双子葉植物の茎頂と形成層の分裂組織による成長の比較

以下が追加されています。

•植物の分裂組織の未分化細胞が、無限成長を可能にします。

•茎頂での有糸分裂と細胞分裂が、茎の伸張と葉の展開に必要な細胞を供給します。

•植物ホルモンが、茎頂での生長をコントロールしています。

•植物の芽は、屈性によって環境に応えます。

•オーキシン排出ポンプは、植物組織中のオーキシンの濃度勾配を設定できます。

•オーキシンは、遺伝子発現のパターンを変化させることによって細胞成長速度に影響し

ます。

•知識の活用:生長点からの組織、栄養寒天ゲル、成長ホルモンを使った植物のマイクロ

プロパゲーション(組織培養技術を用いた大量増殖)。

•知識の活用:新しい変種の迅速な増殖、既存の変種のウイルスフリー株の生産、およ

び、ランなどの希少な種の増殖のために、微細繁殖法が利用されます。

9.4 植物の繁殖以前のセクション「9.3 被子植物の繁殖」に代わるものです。以下は追加と見なすことが

できます。

•開花は、生長点での遺伝子発現の変化を伴います。

•ほとんどの種子植物は、有性生殖において花粉媒介者との共生関係を利用しています。

•発芽に影響する因子に関する仮説を検証する実験の計画。

トピック10――進化と生物多様性(旧トピック10では遺伝学だけ6時間。現在は8時間)

10.1 減数分裂以前の減数分裂に関するAHLセクションと同じ内容ですが、メンデル遺伝については特に

言及していません。

また、以前のガイドの10.2.3で、有糸分裂前期Ⅰでの相同対の非姉妹染色分体間の交差が対

立遺伝子の交換にどのように帰結し得るかを説明していましたが、今のシラバスでは二遺伝

子交雑ではなくこのセクションにあります。その他の追加は以下のとおりです。

•交差により形成されたキアズマを示す図を描きます。

•キアズマの図は、交差が起こりキアズマが形成された部分を除いては、まだ接近して並

んでいる姉妹染色分体を示さなければいけません。

10.2 遺伝的形質常染色体と性染色体の区別は、このセクションでは明示されていません。このセクションの

追加は以下のとおりです。

•ヒトの身長などのポリジーン形質(多数の遺伝子により制御されている形質)に対する

環境の影響。

•カイ二乗検定は、頻度分布の観察値と期待値の間の差が統計的に有意であるか否かを決

定するために用いられます。

10.3 遺伝子プールと種分化このセクション全体は、以前はSL・HL共通項目またはAHLの学習項目で扱われていな

かったので、追加の学習項目として扱うことができます。

付録

「生物」教師用参考資料94

トピック11――動物生理学(16時間。以前は17時間が割りあてられていた「ヒトの健康と生

理学」に代わるものです)

11.1 抗体産生と予防接種血液凝固はセクション6.3です。予防接種の原理の説明は明示されていませんが示唆されて

います。予防接種の利点と危険性の議論は、このセクションには含まれていません。以下が

追加されています。

•ヒスタミンが、アレルギー症状の原因となること。

•知識の活用:天然痘は、予防接種によって根絶された最初のヒトの感染症でした。

•知識の活用:抗HCGモノクローナル抗体が、妊娠検査キットに用いられています。

•知識の活用:赤血球細胞表面の抗原は、異なる血液型を持つヒトの抗体産生を刺激します。

•技能の活用:予防接種プログラムに関する疫学的データを分析します。

11.2 運動筋肉と運動11.2に代わるものであり、以下を省略しています。

•股関節と膝関節の運動の比較

•明帯と暗帯を備えた筋原繊維、ミトコンドリア、筋小胞体、神経核、筋鞘など、横紋筋

繊維の構造の記述

追加された点は以下のとおりです。

•骨と外骨格は、筋肉の固定点を提供して作用します。

•昆虫の肢の拮抗する筋肉対。

11.3 腎臓と浸透圧調節以前のシラバスからの変更は非常にわずかです。

•治療を受けていない糖尿病患者の尿にグルコースが存在することを説明します。旧「指

導の手引き」からは、知識の活用が追加されています。血液細胞、グルコース、タンパ

ク質、薬物が、尿検査で検出されます。

その他の追加は以下のとおりです。

•動物は、浸透圧調節型生物か浸透圧順応型生物のいずれかです。

•昆虫におけるマルピーギ管システムと腎臓は、浸透圧調節と窒素性老廃物の除去を行い

ます。

•ヘンレ係締の長さは、動物の水分保持の必要性と正の相関関係があります。

•治療を受けていない糖尿病患者の尿にグルコースが存在することを説明します。

•動物の窒素性老廃物のタイプは、進化の歴史と生息地に相関関係があります。

•血液透析または腎臓移植による腎不全の治療。

•血液細胞、グルコース、タンパク質、薬物が、尿検査で検出されます。

11.4 有性生殖これは「生殖」に代わるものですが、内容はかなりよく似ています。

精子形成におけるLH、テストステロン、FSHの役割の記載は、以下を除けばホルモンに

ついては他の箇所で扱っているので、このセクションには含まれていません。

•HCGは、妊娠初期にプロゲステロンを分泌するよう卵巣を刺激します。

•出産は、エストロゲンとオキシトシンが関与する正のフィードバックによってもたらさ

れます。

以下が追加されています。

•動物の受精は、体内で行うものと体外で行うものがあります。

•受精の際には、多精子受精を防ぐメカニズムがあります。

選択項目は、ほぼ全面的に改訂されています。新しいものとして見てください。