ジオエコノミクス・レビュー Vol.13 20160806

2
1 ジオエコノミクス・レビュー 1 巻 13 号 理論編 PEST 分析に立ち戻る 第 9 号で触れましたように、マクロ環境分析のフレームワークとして PEST 分析があ ります。PEST とは、「P」=Politics(政治的要因)、「E」=Economy(経済的 要因)、「S」=Society(社会的要因)、「T」=Technology(技術的要 因)の頭文字を取ったものです。本号で経済的要因および社会的要因について見 ていくことにしましょう。 経済的要因は、大きくは①景気動向、②価格変動(インフレ・デフレ)、③消費 動向、④経済成長率、⑤為替・株価・金利・原油価格、⑥雇用水準、⑦業界動 向等が挙げられますが、在庫等その他の経済指標も含まれます。これらの経済分析 の手法についてはエコノミストやアナリストの方々が解説されているところですので、ここ では敢えて解説しません。本号では社会的要因に焦点を当てていきたいと思いま す。 社会的要因は顧客セグメントの変化として考える 社会的要因は、代表的な物として①人口動態・密度・構成、②ライフスタイル・価 値観、③流行、④宗教・教育・言語等の文化等が挙げられますが、これらに限られ ません。より幅広く考えるならば、マーケティングで言うところの顧客セグメンテーション 理論で考えると分かりやすいかもしれません。 人口動態は、もっとも固い未来予測が可能 人口動態は、実は最も正確な予測が可能と言われています。なぜならば、 社会的要因は、代表的な物として①人口動態・密度・構成、②ライフ スタイル・価値観、③流行、④宗教・教育・言語等の文化等が挙げられ ご挨拶 本ニューズレターも第 13 号発行とな りました。 本ニューズレターでは最近注目を集 めている「ジオエコノミクス」的観点か ら日本を取り巻く政治経済情勢を 分析し、皆様のビジネス上の意思 決定の一助となれればと思っており ます。 今回も引き続き PEST 分析につい て解説させていただきます。 株式会社藤村総合研究所 代表取締役 藤村慎也

Transcript of ジオエコノミクス・レビュー Vol.13 20160806

1

ジオエコノミクス・レビュー 1 巻 13 号 理論編

PEST分析に立ち戻る

第 9 号で触れましたように、マクロ環境分析のフレームワークとして PEST 分析があ

ります。PEST とは、「P」=Politics(政治的要因)、「E」=Economy(経済的

要因)、「S」=Society(社会的要因)、「T」=Technology(技術的要

因)の頭文字を取ったものです。本号で経済的要因および社会的要因について見

ていくことにしましょう。

経済的要因は、大きくは①景気動向、②価格変動(インフレ・デフレ)、③消費

動向、④経済成長率、⑤為替・株価・金利・原油価格、⑥雇用水準、⑦業界動

向等が挙げられますが、在庫等その他の経済指標も含まれます。これらの経済分析

の手法についてはエコノミストやアナリストの方々が解説されているところですので、ここ

では敢えて解説しません。本号では社会的要因に焦点を当てていきたいと思いま

す。

社会的要因は顧客セグメントの変化として考える

社会的要因は、代表的な物として①人口動態・密度・構成、②ライフスタイル・価

値観、③流行、④宗教・教育・言語等の文化等が挙げられますが、これらに限られ

ません。より幅広く考えるならば、マーケティングで言うところの顧客セグメンテーション

理論で考えると分かりやすいかもしれません。

人口動態は、もっとも固い未来予測が可能

人口動態は、実は最も正確な予測が可能と言われています。なぜならば、

“社会的要因は、代表的な物として①人口動態・密度・構成、②ライフ

スタイル・価値観、③流行、④宗教・教育・言語等の文化等が挙げられ

ご挨拶

本ニューズレターも第 13号発行とな

りました。

本ニューズレターでは最近注目を集

めている「ジオエコノミクス」的観点か

ら日本を取り巻く政治経済情勢を

分析し、皆様のビジネス上の意思

決定の一助となれればと思っており

ます。

今回も引き続き PEST分析につい

て解説させていただきます。

株式会社藤村総合研究所 代表取締役

藤村慎也

2

ますが、これらに限られません。より幅広く考えるならば、マーケティングで言

うところの顧客セグメンテーション理論で考えると分かりやすいかもしれませ

ん。”

まずほとんどの人は、1 年後に 1 歳年を取ります。すなわち、現在 20 歳の人が何

人いるかわかれば、かなりの確率で 1 年後の 21 歳の人口を予測することができま

す。実際には死亡される方もいらっしゃいますが、死亡率も統計的に数字が取れま

すので、かなりの精度で予測できます。そうすると問題は次の 1 年間で生まれる人と

いうことになりますが、実際にはこの出生率も緩やかに変化していきます。昨年 1.4

だった出生率が翌年いきなり 2.0 になるという例はほとんどありません。したがって、数

年先の人口および人口構成は、かなりの精度で予測ができるのです。

高齢化・少子化の企業への影響

高齢化・少子化も、ある意味人口動態の一部と考えることができます。すなわち年

齢別人口構成が大きく変わります。このことは企業にとって少なくとも 2 つの大きな意

味を持ちます。1 つは顧客セグメントの変化です。誰だって若い頃と年老いてからで

は購入するものは変化します。年齢は顧客セグメントの大きな軸の 1 つです。2 つめ

は労働力です。日本でも盛んに労働力不足が言われています。若い人の比率が低くなればなるほど、生産年齢人口比率が低くな

り、若い人を採用するのも難しくなっていきます。このように人口動態の変化は予測精度が高いのに加えて企業にもたらすインパクトが

とても大きく、重要なファクターと言えます。

参考文献

フィリップ・コトラー (著), Philip Kotler (原著), 木村 達也 (翻訳)「コトラーの戦略的マーケティング―いかに市場を

創造し、攻略し、支配するか」(東京: ダイヤモンド社、2000)

梅澤高明編著、「最強のシナリオプランニング」(東京: 東洋経済新報社、2013)

ボストン、チャールズ・リバーのほとりにて

お問い合わせ先

株式会社藤村総合研究所

〒101-0054

東京都千代田区神田錦町 3-21-1017

090-3684-5781

[email protected]

http://www.fujirc.com