材料の熱力学初歩 solidification - Kagoshima U
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1
材料の熱力学初歩
本稿では、これまで習ってきた熱力学を用いた材料設計・解析のアプローチ
について皆で考える。
現実の材料は熱処理の条件によって必ずしも自由エネルギーが最小の平
衡状態ではない。このもっとも典型的な例は、a-Fe中に溶けないC原子の析
出形態である。熱平衡状態ではC原子はグラファイトとして析出することにな
るが、実用の熱処理条件では準安定なセメンタイトFe3Cが形成される。実用
材料では、このようにかならずしも熱力学的に最も安定ではない相や組織が
多い。
しかし、そのような場合であっても、我々は熱力学的に安定な平衡状態の
形成条件から考えていくことの方が利益が大きい。本稿では、溶融状態から
組織制御を行う上で、まず重要な凝固過程について考える。これを基礎とし
て、析出過程について考察することができる。
参考書)1) 日本機械学会テキスト「熱力学」(熱力学の復習)2) ムーア「物理化学(上)」(熱力学の初歩と応用)
凝固 solidification
純物質の凝固を考える。液相と固相の1
モルあたりのギブス自由エネルギーをそれ
ぞれGL、GSとすると、
固相
液相
T
LG
自由エネルギー
SG
mT融点 温度
mTT > LS GG >で
mTT < LS GG <で
であり、融点Tmでは2相が平衡であるので
LS GG = LmLSmS STHSTH −=−
Hi、Si;i相のエンタルピー、エントロピー
となる。これらは、バルク(大容積)の材料に関する熱力学的平衡条件である。
mm
SLSLm
T
L
T
HHSSS =
−=−=∆
これより、以下の融解のエントロピーが定まる。
ただし、L = HL − HSは融解の潜熱
金属では、融解エントロピーは1モルあたり、以下となる(経験則)。
RSm ≈∆ (Richard's law) R;気体定数
固相
液相
T
LG
自由エネルギー
SG
mT
融点
温度
T∆
G∆
LT
TL
T
TL
SSTHHGGG
mm
SLSLSL
∆
∆
=−≈
−−−=−= )(
融点Tmから∆Tだけわずかに外れた温度T
での自由エネルギーは以下で与えられる。
圧力が一定で力学的仕事を無視できる時
∫+=T
Tpo
o
dTCHTH )(
∫+=T
T
p
oo
dTT
CSTS )(
∫∫
∫∫
−+=
−−+=−=
T
T
pT
Tpo
T
T
p
o
T
Tpo
oo
oo
dTT
CTdTCG
dTT
CTTSdTCHTTSTHTG )()()(
Ho;標準エンタルピー
So;標準エントロピー
Go;標準ギブス自由エネルギー
T (K)
-100
-80
-60
-40
-20
0
20
40
200 400 600 800 1000 1200
H, -TS, G (kJ/mol) SH
LH
LTS−
STS−
LG
SG
mT
アルミ
L
! free energy of Al liquid and solid
FOR tr = 273 TO 1200
LET t = tr/1000
LET AL = 31.75104
LET BL = 3.935826e-8
LET CL = -1.786515e-8
LET DL = 2.6941713e-9
LET EL = 5.480037e-9
LET FL = -0.945684
LET GL = 73.39949
LET AS = 28.08920
LET BS = -5.414849
LET CS = 8.560423
LET DS = 3.427370
LET ES = -0.277375
LET FS = -9.147187
LET GS = 61.90981
LET HL = AL*t + BL*t^2/2 + CL*t^3/3 +
DL*t^4/4 - EL/t + FL
LET HS = AS*t + BS*t^2/2 + CS*t^3/3 +
DS*t^4/4 - ES/t + FS
LET HL = HL * 1000
LET HS = HS * 1000
LET SL = AL*LOG(t) + BL*t + CL*t^2/2 +
DL*t^3/3 - EL/t^2/2 + GL
LET SS = AS*LOG(t) + BS*t + CS*t^2/2 +
DS*t^3/3 - ES/t^2/2 + GS
LET GibssL = HL - tr *SL
LET GibssS = HS - tr *SS
LET DGmol = GibssS - GibssL
PRINT tr;",";HL*1e-3;",";-tr*SL*1e-
3;",";GibssL*1e-3;",";HS*1e-3;",";-tr*SS*1e-
3;",";GibssS*1e-3
NEXT tr
END
熱化学データはNIST Chemistry WebBook(http://webbook.nist.gov/chemistry/)より引用
(K)T
2
∆G (kJ/mol)
SL GGG −=∆
LT
TL
T
TLG
mm
∆∆ =−≈
(K)TmT
アルミ
! difference in Gibbs free energy between Al liquid and solid
LET Tm = 933.45
LET L = 398*27
FOR tr = 273 TO 1200
LET t = tr/1000
LET AL = 31.75104
LET BL = 3.935826e-8
LET CL = -1.786515e-8
LET DL = 2.6941713e-9
LET EL = 5.480037e-9
LET FL = -0.945684
LET GL = 73.39949
LET AS = 28.08920
LET BS = -5.414849
LET CS = 8.560423
LET DS = 3.427370
LET ES = -0.277375
LET FS = -9.147187
LET GS = 61.90981
LET HL = AL*t + BL*t^2/2 + CL*t^3/3 + DL*t^4/4 - EL/t +
FL
LET HS = AS*t + BS*t^2/2 + CS*t^3/3 + DS*t^4/4 - ES/t +
FS
LET HL = HL * 1000
LET HS = HS * 1000
LET SL = AL*LOG(t) + BL*t + CL*t^2/2 + DL*t^3/3 -
EL/t^2/2 + GL
LET SS = AS*LOG(t) + BS*t + CS*t^2/2 + DS*t^3/3 -
ES/t^2/2 + GS
LET GibbsL = HL - tr*SL
LET GibbsS = HS - tr *SS
LET DGmol = GibbsL - GibbsS
PRINT tr;",";DGmol *1e-3;",";L*(Tm - tr)/Tm*1e-3
NEXT tr
END
液相と固相のギブス自由エネルギー
の差∆Gは、融解の潜熱Lを用いて、∆G = ∆TL/Tmで近似しうる。
熱化学データはNIST Chemistry WebBook(http://webbook.nist.gov/chemistry/)より引用
J/g398=L
固相
液相
液相 一方、体積VLの液相がある場合を考える。単位体
積あたりのギブス自由エネルギーをgLとすれば、液
相全体のギブス自由エネルギーは以下となる。
LLL VgG =
次に、液相中に体積VSの1個の固相が形成された場
合を考える。固相の単位体積あたりのギブスエネル
ギーをgSとすると、液相ー固相全体のギブス自由エネ
ルギーの変化は、まず
SLSLSSSLLL VggGVgVVgG )()( −+=+−=′
体積VL
体積 VL-VS
体積VS
と見積もられる。しかし、液相と固相の界面はエネル
ギーが高い状態にあるので、界面を形成するための
エネルギーが必要となる。固相の表面積をA、液相・
固相の界面エネルギーをγLS(単位面積あたり)とすれば、このエネルギーは以下となる。
LSint AW γ=
均一核形成(homogeneous nucleation)
表面積A
LSSLSL
intSSSLLL
AVggG
WVgVVgG
γ+−+=
++−=′
)(
)(
以上より、液相・固相系の自由エネルギーは
LSSLSLL AVggGGG γ∆ +−=−′= )(
となり、固相が形成されることによる自由エネ
ルギーの変化は以下となる。
固相
液相
r
今、液相中に形成された固相が1個であり、
半径rの球とすれば、上記の自由エネル
ギー変化は以下で与えられる。
LSLS rggr
G γππ
∆ 23
4)(3
4+−=
-1
-0.5
0
0.5
1
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
)(3
4 3
LS ggr
−π
LSr γπ 24
G∆
エネルギー
半径rmaxG∆
Cr
gS < gLであれば、∆Gは半径とともに増加して最大値を迎えた後、減少する関数となる。
0}2)({48)(4 2 =+−−=+−=∂
∂LSSLLSLS rggrrggr
r
Gγπγππ
∆
自由エネルギー変化が最大となる半径rCとその時のエネルギー∆GCは、
SL
LSC
ggr
−=
γ2
より、以下となる。
2
3
)(3
16
sL
LSC
ggG
−=
πγ∆
液相+固相
液相
T
LG
自由エネルギー
LG′
mT
融点温度
T∆
CG∆
融点ではバルク材の液相と固相の自由エネ
ルギーは同じなので、gL > gSで∆Gmaxとなるの
は融点よりも低い温度である。すなわち、液相
から固相が晶出する(凝固が開始する)のは
融点Tmよりも低い温度Tsとなる。これを過冷却
(undercooling, supercooling)という。sT
過冷却点
3
V
m
SL LT
Tgg
∆≈−
融点と過冷却温度の差∆Tが小さければ、
LV;単位体積あたりの潜熱
TL
Tr
V
mLSC ∆
γ2=
であるので固相の核形成(nucleation)における臨界半径、自由エネルギーは
22
23
3
16
TL
TG
V
mLSC
∆
πγ∆ =
となるので、過冷却の温度差は以下となる。
V
mLSLS
V
mLS
L
T
GGL
TT
γ∆πγ
∆πγ
∆maxmax
2
23
34
3
16==
CV
mLS
rL
TT
γ∆
2= あるいは
以上より、核形成の確率は
−−=
−−=
−=
)(3
16exp,
)(3
16expexp
2
2
2
3
2
2
2
3
TTT
T
Lkor
TTT
T
LkTk
Gp
m
m
VB
LS
m
m
VB
LS
B
CN
∆∆πγ
πγ∆
で与えられることになる。
D. Turnbull, Journal of Applied Physics,
Vol. 21, 1022 (1950)
Material L (kJ/kg) Material L (kJ/kg)
Aluminum 398 Osmium 142
Antimony 161 Platinum 100
Beryllium 1356 Plutonium 12.6
Bismuth 51.9 Potassium 61
Cadmium 55 Rhodium 167
Chromium 331 Selenium 67
Cobalt 25 Silicon 1926
Copper 205 Silver 111
Gold 63 Sodium 113
Iridium 138 Tantalum 172
Iron 272 Thorium 71
Lead 23 Tin 59
Magnesium 368 Titanium 419
Manganese 268 Tungsten 193
Mercury 11.3 Uranium 50
Molybdenum 289 Vanadium 410
Nickel 297 Zinc 113
Niobium 285
Latent heat of fusion
アルミ
3
mT≈
(K)T
pN
銅
! homogeneous solidification
LET gs = 93e-3
LET kB = 8.3145/6.022e23
LET Lv = 398*2.7*1e6
LET A = 16*PI*gs^3/(3*kB*Lv^2)
LET Tm = 931.7
LET B = 0
FOR T = 0.5 TO Tm - 0.5
LET pn = EXP(- A*Tm^2/(Tm -
T)^2/T)
LET B = B + pn
NEXT t
FOR T = 1 TO Tm - 1 STEP 2
LET pn = EXP(- A*Tm^2/(Tm -
T)^2/T)
PRINT t;",";pn/B
NEXT t
END
−=
Tk
Gpp
B
CNON
∆exp
10
=∫mT
NdTp
として計算
核形成の確率を計算すると以下のようになる。 核形成の速度は、液相から拡散して凝固相を形成する原子の流束JLに比
例する。よって核形成速度は以下のように表すことができる。
−=∝
Tk
GpJpJN
B
CNOLNLN
∆expɺ
−=
Tk
GADN
B
CLN
∆expɺ
原子の流束は液相の拡散係数DLに比例するので、核形成速度は以下の形
に表すことができる。
dt
dNN N
N =ɺ
A;係数
一方、液相中の拡散係数は以下の法則に従う。
LO
BL
r
TkD
απη= ストークス-アインシュタイン(Stokes-Einstein)の式
α;定数(= 4 ~ 6), η;粘性係数、rLO;拡散する粒子の半径
さらに粘性係数は以下の温度依存性を持つ。
=
Tk
E
B
O
ηηη exp Eη ;粘性流動の活性化エネルギー
4
+−=
Tk
EG
T
TAnN
B
C
m
VN
η∆expɺ
以上より、核形成速度は以下の式でまとめられる。
例)アルミニウム
kJ/mol23.14=ηE
S. Mudry, V. Sklyarchuk, A. Yakymovych ,
"INFLUENCE OF DOPING WITH Ni ON
VISCOSITY OF LIQUID Al", JOURNAL
OF PHYSICAL STUDIES, v. 12, No. 1
(2008) 1601(5 p.)
nV;単位体積あたりの原子数
0
1E+17
2E+17
3E+17
4E+17
5E+17
6E+17
7E+17
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900
アルミ
(K)T
ANN /ɺ
核形成速度 (/cm
3/s)
仮に、融点以上の温度で測定
された粘性係数のデータを、融
点以下の液相にも適用できると
仮定すると、右図を得る。
温度が低くなると粘性抵抗が増
すため、核形成速度のピーク値
は核形成の確率よりも高温側に
シフトする。
0
200
400
600
800
1000
10-2010
-1810
-1610
-1410
-1210
-1010
-810
-610
-410
-2
温度T (K)
時間t (sec)
液相
凝固相の核生成までの時間τN
1Tɺ冷却速度
2Tɺ冷却速度
mT
1sT
2sTN
NNɺ
1=τ
一個の凝固相が形成されるまで
の待ち時間は以下で与えられる。
アルミ
右の図はアルミを例にとって、凝
固相の形成する温度を時間の関
数として計算したものである。TTT
(時間・温度・変態)曲線において、
核形成はノーズ形の形状を示して
いることがわかる。
冷却速度が大きい場合には、温
度Ts2で凝固相が形成されるのに対
し、冷却速度が小さい場合にはそ
れよりも高い温度Ts1で形成される。
すなわち、冷却速度が速いほど過
冷却度は大きくなる。
不均一核生成(heterogeneous nucleation)
器、るつぼ等
固相
液相
SLγ
MSγLMγθ
液相からの固相の形成は、それを入れ
る器やるつぼ等の表面から優先的に生じ
ることが多い。このとき
ネルギー;固相ー液相の界面エSLγ
エネルギー;固相ーるつぼの界面SMγ
エネルギー;液相ーるつぼの界面LMγ
とすれば、これらはそれぞれの界面の表
面張力と考えることもでき、横方向のつり
あいから
θγγγ cosSLSMLM +=
が成り立つことになる。
器、るつぼ等
固相
液相
SLγ
MSγMLγθ
rd θ r′
凝固相を半径rの球の切り取った上部
とみなすとその半径は以下となる。
θsinrr =′
−−−=−=′= ∫∫ 3
)(33
23222 drdrrdyyrdyrV
r
d
r
dS πππ
これより、固相の体積は以下となる。
ここでd = rcosθなので、上の式はさらに以下のように書き換えられる。
)cos2()cos1(3
)coscos2)(cos1(3
)}cos1(cos)cos1(2{3
)coscos32(3
23
23
23
33
θθπ
θθθπ
θθθπ
θθπ
+−=−−−=
−−−=+−=
rr
rrVS
また、固相ー液相の界面の面積は以下となる。
[ ] )cos1(2cos2sin2 2
0
2
0θπφπφφπ θθ
−=−=×= ∫ rrrdrASL
固相とるつぼの界面の面積は以下となる。
)cos1(sin 22222 θπθππ −==′= rrrASM
凝固相の体積がdVSだけ増加することによる自由エネルギーの変化は
SMLMSMSLSLSLS dAdAdVggdG )()( γγγ −++−=
である。
5
)}cos1)((2
4)cos2)(cos1)(){(cos1(
)cos1(2)(
)cos1(4)cos2()cos1()(
)(
2
22
θγγ
γθθθπ
θπγγ
θπγθθπ
γγγ
+−+
++−−−=
−−+
−++−−=
−++−=
LMSM
SLLS
LMSM
SLLS
SMLM
SMSM
SLSL
SLS
rggr
r
rrgg
dr
dA
dr
dA
dr
dA
dr
dVgg
dr
dG
これより、以下を得る。
)cos2)(cos1)((
)cos1)((24
θθθγγγ
+−−
+−+=
SL
LMSMSLC
ggr
よって、dG/dr = 0より、臨界半径は以下となる。
θsinCC rr =′
ここで、 であったから、上式に代入するとθγγγ cosSLSMLM +=
SL
SL
SL
SL
SL
SL
SL
SLC
gggg
ggggr
−=
+−−
−+=
+−−
−−=
+−−
+−=
γθθ
θθγ
θθθθ
γθθ
θθγ
2
)cos2)(cos1)((
)cos1)(cos2(2
)cos2)(cos1)((
coscos22
)cos2)(cos1)((
)cos1(cos22
2
SL
SLC
ggr
−=
γ2θ
γsin
2
SL
LSC
ggr
−=′
以上より、不均一核形成の時の大きさに対する条件は以下となる。
}
4
)cos2()cos1(4
3
4)(
)cos1()coscos2(
)cos2)(cos1(3
)(
)cos1(cos
)cos1(2)cos1()cos1(3
)(
)()(
22
3
22
3
22
22
3
*
θθγπ
π
θθθγπ
θθπ
θθπγ
θπγθθπ
γγγ∆
+−
+−=
−−−+
+−−=
−−
−++−−=
−++−=
SLCC
LS
SLC
CLS
CSL
CSLC
LS
SMLMSMSLSLSLSC
rr
gg
r
rgg
r
rr
gg
AAVggG
また、このときのギブス自由エネルギーは以下となる。
4
)cos2()cos1( 2* θθ
∆∆+−
= CC GG∆GCO;均一核形成の時の 臨界自由エネルギー
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0 30 60 90 120 150 180
固相の濡れ角θ (deg)
g(θ
) =
∆GC/∆GCO 固相とるつぼの濡れ角θが小さく
なると、核形成に要する自由エネ
ルギーは減少する。
)(3
1622
23* θ
∆
πγ∆ g
TL
TG
V
mLSC =
不均一核形成の場合の凝固点
降下∆Tとの関係は以下となる。
ただし
である。
4
)cos2()cos1()(
2 θθθ
+−=g
均一核形成
不均一核形成°= 30θ
アルミ
核形成の確率 pn
(K)T
アルミにおいて、濡れ角θ = 30oとした場合、右下図に示すように、融
点直下で不均一核形成の確率が
急激に増加し、均一核形成に比べ
て凝固点降下が非常に小さくなる
ことが分かる。
10-2410
-2210
-2010
-1810
-1610
-1410
-1210
-1010
-810
-610
-410
-2
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
不均一核形成
均一核形成
液相
+−=
Tk
EG
T
TAnN
B
C
m
VN
η∆ *
*expɺ
以上より、核形成速度が
で与えられるものとすると、核形
成までの時間を均一核形成と比
較した場合、右図のようになる。
T (K)
t (sec)
柱状晶
等軸晶
鋳造組織
アルミ θ = 30o
6
析出物 precipitate
参考書:1)バレット「材料科学1」(基礎中の基礎)2)スワーリン「合金の熱力学」3)D. A. Porter, K. E. Eastering, "Phase Transfomations in Metals and Alloys"
溶質原子が過飽和なとき、第2相の
化合物を形成して析出する。無論、化
合物の形成エネルギーが大きいなら
ば、化合物は作らず、母相と溶質原
子は溶け合わない状態でいることも
ある。Fe-C合金では、析出するもっと
も安定な相はグラファイトであるが、
実用材料では準安定なセメンタイト
Fe3Cが形成されることは良く知られて
いる。焼きなましではセメンタイトは層
状に析出するが、焼入れ後の焼き戻
しでは球状に析出し、析出形態に与
える熱処理の影響も大きい。Fe
第2相の形成過程を考える際には、
1)熱力学的取り扱い→系の自由エネルギーが最小条件
2)反応速度論的取り扱い→析出粒子を形成する原子の拡散、反応
を律速するメカニズム
3)析出粒子の構造→弾性ひずみエネルギー、析出の優先的な結晶
面・方向
4)結晶欠陥との相互作用→転位や粒界上の偏析、不均一核生成
などを取り入れなければならない。さらには、現代では、例えば線形弾性
論は原子レベルでは適用できないので、原子の電子分布に基づく計算が
隆盛である。
AI-Cu phase diagram showing the metastable GP zone, θ" and θ' solvuses.(Reproduced from G. Lorimer. Precipitnrion Processes in Solids. K.C. Russell andH.1. Xaronson (Eds.). The Metallurgical Soclety of AMIE. 1978. p. 87.)
Al
例) Al-Cu合金
今、Cuを4 wt%含むAl合金を考える。
この合金を500oC程度に上げると、固
溶限内になるので、元々存在していた
析出物は固溶する(これを溶体化処
理という)。
溶体化処理した合金をゆっくり冷却
するとθ相が析出する。 溶体化温度から室温に焼入れする
と、固溶していた溶質原子はかくさん
できないため、過飽和状態になる。こ
の状態から温度を上げていくと、GP
ゾーン、θ”相、θ’相そしてθ相が形成さ
れていくことになる。このように過飽和
状態から析出物を形成することを時効
という。
溶質原子が過飽和状
態において、時効熱処理
を行った場合、温度、時
間によって析出物の性状、
形態、大きさが変化する。
よって、時効による析出
物形成による強度の増
加(時効硬化、age
hardening)も、温度と時
間に依存して変化するこ
とになる。
亜時効過時効
7
GPゾーン
θ"相
θ’相
θ相