熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University...
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熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title ビブリオバルニフィカス感染症の日本における疫学
Author(s) 井上 雄二
Citation
Issue date 2008-07-04
Type Thesis or Dissertation
URL httphdlhandlenet229815249
Right
学位論文
Doctorrsquos Thesis
ビブリオバルニフィカス感染症の日本における疫学
(Epidemiology of Vibrfo vulnificus infection in Japan)
井上雄二
Yuji lnoue
熊本大学大学院医学教育部博士課程臨床医科学専攻皮膚機能病態学
指導教授
ラ}浩信教授熊本大学大学院医学教育部博士課程臨床医科学専攻皮膚機能病態学
2008年度
論文題名
学 位 論 文
Doctorrsquos Thesis
ビブリオバルニフィカス感染症の日本における疫学
(Epideology of I伽 y雌∬in艶ction in Japan)
著者名
指導教員名
審査委員名
井上雄二 Yuj i l noue
熊本大学大学院医学教育部博士課程皮膚機能病態学
9 浩信教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程微生物学
赤池 孝章 教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程生命倫理学
浅井 篤 教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程環境保健医学
上田 厚 教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程脳神経外科学
倉津 純一 教授
2008年度
7
8
9
10
目次
要旨
発表論文リスト
謝辞
略語一覧
研究の背景と目的
方法
6-12001年6月~7月における熊本県八代地域での
ZVUnlfieus感染症集団発生の調査
6-2 Mvunifieus感染症の疫学調査
6-3熊本県におけるtrsquoμ傭伽粥感染症の集計
6-4有明海八代海における環境中のVvunficusについて
6-5奄美地方の海水調査
結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域での
VUUnfCUS感染症集団発生の調査
7-2 Vyunlfeus感染症の疫学調査
7-3熊本県におけるVvunffcus感染症の集計
7-4有明海八代海における環境中のVvunifieusについて
7-5奄美地方の海水調査
考察(文献的考察を含む)
結語
参考文献
1
り二り0【0公071
nVnVニリ直000
4蓬
噌
-
噌
4
1要旨
2001年6月~7月にかけて国内では始めてのVbrio yunffeus(以下y vunicus)感染症
の流行が発生した20日間に7人の感染症患者が確認され内6名は熊本県八代地区の限局
した地域での発生であった6例が敗血症型であり7例中4例が死亡したそこで当該流行
を含めた日本におけるVyunlficus感染症の発生状況と流行のメカニズムを明らかにするこ
とを目的として疫学研究を行った
1998年から2003年までの5年間に発生した本菌感染症について皮膚科専門医施設およ
び高度救急救命センターを含む全国の1683医療施設に対してアンケート調査を行い患者
の情報を収集し分析した5年間に94例のVvulnifieus感染症患者を確認した男性78例
女性16例で患者の平均年齢は606plusmn140歳であった敗血症型68人(723)創傷型
21人(223)消化器型5人(53)であった基礎疾患として全体の80以上が肝機能障
害を有しており約60の患者が肝硬変であった患者発生は7~8月多くは西日本特に
九州(有明海八代海沿岸)において発生していたさらに熊本県における本菌感染症を調
査した1990年より2006年号での17年間に43例の患者が発生しており発生数は近年増
加傾向にあった発生は玉名市周辺および八代市周辺で多く芦北地方や天草地方では少
なかったよって有明海および八代海は本菌に汚染された海域であることが示唆された
そこで有明海八代海において環境調査を行った結果河川水の影響を受けにくい海域に
おける本菌濃度(菌数)は低く河川水の影響を受けやすい海域における恥曝は高かったま
た河川が多い内海地域において本菌の増殖が盛んであったさらに同地域での降水量と
海水塩分濃度を調査したところ患者発生前に大量の雨が降り海水の塩分濃度が低下して
いた本縄は通常の海水より低い塩分濃度での増殖効率が良いことが分かっており地理的
要因に加えて気象的要因が本間感染症の流行に関与したものと考えられた
2
2発表論文リスト
1 Y111dUnggeu lno Tamano Matsui and Temomichi Ono An eutbreak ef Yhrio vunifieus
infeotion in Kumamoto Japan2001ノ4励g掬ゾ2004140=888-889
2 t11yiL111u 1 e Tomomichi Ono Tamano Matsui Jiro Miyasaka Kazuko Katsuki
Yoshihiro Kinoshita aRd Hironobu lhn Epidemiological survey of Vihrio vunfflcus
infection in Japan between 1999 afid 2003 JDermato2008 35 129-139
3エ幽Tomomichi Ono Jiro Miyasaka and Hironobu lhn The growth of吻ノカ
vunlfieus and the habitat of infected patients in Kumamoto BioSeienee lrends
2007 3 134-1 39
4 Tomotaka Tanabe Ayaka Naka Hiroaki Aso Hiroshi Nakao Shizuo Narimatsu
エ幽Tomomichi Ono and Shigeo Yamamoto A novel aerobactin utilization
c短ster in シり伽わyu7勉s with a gene involved in the transcription regulation of
the lutA homologue Mierebioゾ伽uno200549823-834
5 Tomotaka Tanabe Neriko Takata Ayaka Naka Youg-Hwa Moon Hireshi Nakao
t11LU1ggl o Shizuo Narimatsu and Shigeo Yamamoto ldentification of an AraC一like
regulater gene required for induction of the 78-kDa ferrioxamine B receptor in
レり乃ノブを71tunlfiGs邪』伽励ノang82005249=309-314
6井上錘二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性Vihrie
μ吻伽侭感染症EAtfi訥nt「 2004261289-1292
7井上鑑二小野友道「皮膚感染症についてperp盈床ま嗣腔200279=1533-1537
3
8井上雄二小野友道「壊死性筋膜炎による潰瘍を治す」皮膚科診療プラクティス
15難治性皮膚潰瘍を治すスキル(宮地良樹監修)2003249-254文光堂(東京)
9井上雄二Vbrie vunlfeus感染症nfeetien and leehnoegy 20041315-16
4
3謝辞
本研究を行うにあたりご指導ご支援頂きました熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機
能病態学教室サ浩信教授熊本大学大学院医学薬学研究部侵襲制御医学教室木下順
弘教授ならびに前熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機能病態学教室小野友道名誉教
授に深く感謝いたしますまた研究のご支援を頂きました教室員一同の皆様および教室補
助員の皆様に心より感謝いたしますまた本研究をご指導ご支援いただきしました国立感
染症研究所感染精報センター松井珠乃研究員岡部信彦センター長に深く感謝いたします
さらに本研究にあたりご援助いただきました国立医薬品食品衛生研究所山本茂貴先生
には深く感謝いたします
また本研究を行うにあたり当初より環境研究のご支援をいただきました熊本保健環境科
学研究所宮坂次郎研究員甲木和子部長には厚く御礼申し上げますまた本研究に当り
様々な情報をお寄せ頂きました奄美中央病院古垣斉拡先生に厚くお礼申し上げます
5
4略語一覧
ALPatkaline phesphatase=アルカiJブオスファターゼ
ChE eholinesterase=コリンエステラーゼ
CPKcreatine phosphel《inaseクレアチンボスホキナーゼ
FDPfibr】n degrada ti匪憾掲tsフィブリン分解産物
GOT= glutarrite oxaloaGette transaminaseグルタミン酸オキサ回酢酸トランスアミナーゼ
GPT9tutamlG pyruvie trraRsamlnaseグルタミン酸ピルビン酸転移酵素
γ一GTPγ』一91utamyltransteraseγグルタミントランスフェラーゼ
欺htemaせonal un忙国際単位
LAPleugine amitTopeptidase=回イシンアミノペプチダーゼ
LDH= laetate dehydrase乳酸脱水素酵素
LIM lySine indol motrdquottyリジンインFldquo一一ル半流動
MPM fnest probabie fiumber一層確数
ONPG orthornitrephenyl一 BDン9alactepyranosidetオrsquoルソーニトロフェニールーβ一D一ガラクトピラノシド
PBS= phosphate butterect saline=リン酸緩衝生理食塩水
PCRpolymerase ehain reactierrポリメラーゼ連鎖反応
TCBS=掘losulfate citτate協e saccharosαチオ硫酸クエン酸胆汁ショ糖
τ鉱面p悔sar lτon=3糖鉄
VPViblia parahaemalytleuslsquo腸炎ビブリオrsquo
6
5研究の背景と目的
VyunlfiCUSはコレラ菌や腸炎ビブリオ菌と同じビブリオ属のグラム陰性菌であるらせん状
の桿菌で長い鞭毛を持つことが特徴であり(図1)その鞭毛を動かすことよりyunificusと命
名された好塩性菌で海水中特に汽水域に広く分布する一般的には病原性はないと考え
られるが稀に壊死性筋膜炎の原因菌となる場合がある
訓
b
4
唯u
臨サ
雛
も
嗣
)i
箇
璽 冤 触鞘rsquoi躯螺蟹rsquos
L」圏1rdquo lb「b〕凹
図1 Ve yunifieUS電子顕微鏡像(新潟大学大学院国際感染医学講座山本達男教授提
供)長い鞭毛を持つらせん状のグラム陰性桿菌である
蕊
7
Vvunfieusの生化学的性状は表1の通りである Ornithine decarboxylase D-mannitol
fermentation sucrose fermentationは株により違いがみられるため通常の簡易同定キット
では判定できないこともある環境中にはindole production(一)の株も存在するこのため確
認にはcytotoxin-hemolysin等の遺伝子確認を併用する必要がある
Sucrose fermentation(+)株は TCBS寒天培地(ニッスイ)ではvbro ehoerae様の黄色コ
ロ=一となる
表1 trsquofvuniflcusの生化学性状好二二菌で3NaCI含有培地では良好に発育するが
8NaCl含有培地では発育がみられない乳糖を分解するがショ糖分解性については株に
よる違いがみられる
Kova6srsquos oxhase 十 gelatln hydrolysislsquo 十
hydorogen sulfide(TSI)一 esculin hydrolysis 十
indoleげPfoduction plusmn L-a「abimse fe「mentation 一motility 十 oe麗Obiose fermentation 十
一一一一一一一一一一一一r窒盾翌狽Einれutrient broth witb一
lactose feτmentation 十
0村aCl 一 SUCrose fermentation plusmn
3NaCi 十 ma量tose fe陥e耐ation 十
6NaC著 plusmn D-mamito暦fermentation plusmn
8NaC1 一 meiibiose femlentation 十
VogeSrProskauer一 trehalose fermenta髄on 十
一 一 一 一 「 一
撃usln deoarboxylase 十 一 一 一
c-xyfose fermentation 一 一 一 一 一 一 一 一 ゴ 一
ne窒奄獅撃獅dihydrolase 一
一
adonltol fermentation 一
ornith量ne decarboxylase plusmn dulsltol fermentation 一nitrate reduction 十 myo-inosit(刈fermentatioれ
一
urea hydrolys韮S一 D-sorbltol fefmenta{ion
一
ONPG test 十 sa髄ci月fermentatlon 十
8
1-970年にRoland(1)が非腸炎性の腸炎ビブVオ感染例〈下肢壊死とendotoxin sheGk)を
報告したこれがZ掘謝伽がヒトへ感染した最初の報告である1975年にFerれaれdezと
Pankey(2>はunnamed mar ine 1吻吻と呼んだ細菌による重篤な組織感染症3例を報告して
いるその後1976年にHoHisら(3)により血液中より分離同定された好塩性ビブリオ38例
が報告されたビブリオ属に属してもVbTIO parahaamytiasでも聯 a勧の傭とも具
なるビブリオであることを発見し乳酸分解性があることよりang(+Vlbr70と呼んだその後
1979年にFarmer(4)によりZvunificusと命名された Blakeら(5)が病症を敗血症型創傷
型に分類しKlont z(6)らが消化器症状を主体とする症例を追加した現在はM幽繍臨纒感
染症は敗血症型創傷型消化器型その他の4型に分類さ麗でいる
Vvcrlnfieus es染症は欧米においては創傷型の報告が多いのに対しアジアでは敗血症型
が多いこれは食習慣の違いや基礎疾患として多い肝機能障害の頻度の差によるとことが
大きいと考えられる
日本では1978年に河野(7>らが最初に報告して以来約200例の症例報告があ砿その半
数以上が北部九州での発症であるDしかしながら過去には東北地方でも発症しており地球
温暖化に伴って全国的に発生の危険性がある感染症であるまた日本での発生は6月から
11月に限られており最も鑑別を要するAレンサ球菌によるtexic sheok-ike syndretneが
冬季に多いこととは対照的である
ところで熊本県においてはほぼ毎年Zvelnlfieus lよる壊死性筋膜炎の患者が発生して
いたしかしながら1年間に1~2例と発生数が少なく予後不良で発生より数Rで死亡する
例が多いためにあまり注目されなかったところが2001年の6月~7月にかけて比較的
短期間に限られた地域においてZvulnifieus感染症が大量に発生し国内初のZ
yeXfiifias感染症の流行であった可能性が高いと考えられたそこで20G1年6月~7月にか
けて起こったy磁飛脚感梁症の流行の発生状溌を雨脚析しその流行のメカニズムを
明らかにすることを且的として本国感染症に関する疫学調査および環境調査を行った
9
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
学位論文
Doctorrsquos Thesis
ビブリオバルニフィカス感染症の日本における疫学
(Epidemiology of Vibrfo vulnificus infection in Japan)
井上雄二
Yuji lnoue
熊本大学大学院医学教育部博士課程臨床医科学専攻皮膚機能病態学
指導教授
ラ}浩信教授熊本大学大学院医学教育部博士課程臨床医科学専攻皮膚機能病態学
2008年度
論文題名
学 位 論 文
Doctorrsquos Thesis
ビブリオバルニフィカス感染症の日本における疫学
(Epideology of I伽 y雌∬in艶ction in Japan)
著者名
指導教員名
審査委員名
井上雄二 Yuj i l noue
熊本大学大学院医学教育部博士課程皮膚機能病態学
9 浩信教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程微生物学
赤池 孝章 教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程生命倫理学
浅井 篤 教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程環境保健医学
上田 厚 教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程脳神経外科学
倉津 純一 教授
2008年度
7
8
9
10
目次
要旨
発表論文リスト
謝辞
略語一覧
研究の背景と目的
方法
6-12001年6月~7月における熊本県八代地域での
ZVUnlfieus感染症集団発生の調査
6-2 Mvunifieus感染症の疫学調査
6-3熊本県におけるtrsquoμ傭伽粥感染症の集計
6-4有明海八代海における環境中のVvunficusについて
6-5奄美地方の海水調査
結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域での
VUUnfCUS感染症集団発生の調査
7-2 Vyunlfeus感染症の疫学調査
7-3熊本県におけるVvunffcus感染症の集計
7-4有明海八代海における環境中のVvunifieusについて
7-5奄美地方の海水調査
考察(文献的考察を含む)
結語
参考文献
1
り二り0【0公071
nVnVニリ直000
4蓬
噌
-
噌
4
1要旨
2001年6月~7月にかけて国内では始めてのVbrio yunffeus(以下y vunicus)感染症
の流行が発生した20日間に7人の感染症患者が確認され内6名は熊本県八代地区の限局
した地域での発生であった6例が敗血症型であり7例中4例が死亡したそこで当該流行
を含めた日本におけるVyunlficus感染症の発生状況と流行のメカニズムを明らかにするこ
とを目的として疫学研究を行った
1998年から2003年までの5年間に発生した本菌感染症について皮膚科専門医施設およ
び高度救急救命センターを含む全国の1683医療施設に対してアンケート調査を行い患者
の情報を収集し分析した5年間に94例のVvulnifieus感染症患者を確認した男性78例
女性16例で患者の平均年齢は606plusmn140歳であった敗血症型68人(723)創傷型
21人(223)消化器型5人(53)であった基礎疾患として全体の80以上が肝機能障
害を有しており約60の患者が肝硬変であった患者発生は7~8月多くは西日本特に
九州(有明海八代海沿岸)において発生していたさらに熊本県における本菌感染症を調
査した1990年より2006年号での17年間に43例の患者が発生しており発生数は近年増
加傾向にあった発生は玉名市周辺および八代市周辺で多く芦北地方や天草地方では少
なかったよって有明海および八代海は本菌に汚染された海域であることが示唆された
そこで有明海八代海において環境調査を行った結果河川水の影響を受けにくい海域に
おける本菌濃度(菌数)は低く河川水の影響を受けやすい海域における恥曝は高かったま
た河川が多い内海地域において本菌の増殖が盛んであったさらに同地域での降水量と
海水塩分濃度を調査したところ患者発生前に大量の雨が降り海水の塩分濃度が低下して
いた本縄は通常の海水より低い塩分濃度での増殖効率が良いことが分かっており地理的
要因に加えて気象的要因が本間感染症の流行に関与したものと考えられた
2
2発表論文リスト
1 Y111dUnggeu lno Tamano Matsui and Temomichi Ono An eutbreak ef Yhrio vunifieus
infeotion in Kumamoto Japan2001ノ4励g掬ゾ2004140=888-889
2 t11yiL111u 1 e Tomomichi Ono Tamano Matsui Jiro Miyasaka Kazuko Katsuki
Yoshihiro Kinoshita aRd Hironobu lhn Epidemiological survey of Vihrio vunfflcus
infection in Japan between 1999 afid 2003 JDermato2008 35 129-139
3エ幽Tomomichi Ono Jiro Miyasaka and Hironobu lhn The growth of吻ノカ
vunlfieus and the habitat of infected patients in Kumamoto BioSeienee lrends
2007 3 134-1 39
4 Tomotaka Tanabe Ayaka Naka Hiroaki Aso Hiroshi Nakao Shizuo Narimatsu
エ幽Tomomichi Ono and Shigeo Yamamoto A novel aerobactin utilization
c短ster in シり伽わyu7勉s with a gene involved in the transcription regulation of
the lutA homologue Mierebioゾ伽uno200549823-834
5 Tomotaka Tanabe Neriko Takata Ayaka Naka Youg-Hwa Moon Hireshi Nakao
t11LU1ggl o Shizuo Narimatsu and Shigeo Yamamoto ldentification of an AraC一like
regulater gene required for induction of the 78-kDa ferrioxamine B receptor in
レり乃ノブを71tunlfiGs邪』伽励ノang82005249=309-314
6井上錘二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性Vihrie
μ吻伽侭感染症EAtfi訥nt「 2004261289-1292
7井上鑑二小野友道「皮膚感染症についてperp盈床ま嗣腔200279=1533-1537
3
8井上雄二小野友道「壊死性筋膜炎による潰瘍を治す」皮膚科診療プラクティス
15難治性皮膚潰瘍を治すスキル(宮地良樹監修)2003249-254文光堂(東京)
9井上雄二Vbrie vunlfeus感染症nfeetien and leehnoegy 20041315-16
4
3謝辞
本研究を行うにあたりご指導ご支援頂きました熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機
能病態学教室サ浩信教授熊本大学大学院医学薬学研究部侵襲制御医学教室木下順
弘教授ならびに前熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機能病態学教室小野友道名誉教
授に深く感謝いたしますまた研究のご支援を頂きました教室員一同の皆様および教室補
助員の皆様に心より感謝いたしますまた本研究をご指導ご支援いただきしました国立感
染症研究所感染精報センター松井珠乃研究員岡部信彦センター長に深く感謝いたします
さらに本研究にあたりご援助いただきました国立医薬品食品衛生研究所山本茂貴先生
には深く感謝いたします
また本研究を行うにあたり当初より環境研究のご支援をいただきました熊本保健環境科
学研究所宮坂次郎研究員甲木和子部長には厚く御礼申し上げますまた本研究に当り
様々な情報をお寄せ頂きました奄美中央病院古垣斉拡先生に厚くお礼申し上げます
5
4略語一覧
ALPatkaline phesphatase=アルカiJブオスファターゼ
ChE eholinesterase=コリンエステラーゼ
CPKcreatine phosphel《inaseクレアチンボスホキナーゼ
FDPfibr】n degrada ti匪憾掲tsフィブリン分解産物
GOT= glutarrite oxaloaGette transaminaseグルタミン酸オキサ回酢酸トランスアミナーゼ
GPT9tutamlG pyruvie trraRsamlnaseグルタミン酸ピルビン酸転移酵素
γ一GTPγ』一91utamyltransteraseγグルタミントランスフェラーゼ
欺htemaせonal un忙国際単位
LAPleugine amitTopeptidase=回イシンアミノペプチダーゼ
LDH= laetate dehydrase乳酸脱水素酵素
LIM lySine indol motrdquottyリジンインFldquo一一ル半流動
MPM fnest probabie fiumber一層確数
ONPG orthornitrephenyl一 BDン9alactepyranosidetオrsquoルソーニトロフェニールーβ一D一ガラクトピラノシド
PBS= phosphate butterect saline=リン酸緩衝生理食塩水
PCRpolymerase ehain reactierrポリメラーゼ連鎖反応
TCBS=掘losulfate citτate協e saccharosαチオ硫酸クエン酸胆汁ショ糖
τ鉱面p悔sar lτon=3糖鉄
VPViblia parahaemalytleuslsquo腸炎ビブリオrsquo
6
5研究の背景と目的
VyunlfiCUSはコレラ菌や腸炎ビブリオ菌と同じビブリオ属のグラム陰性菌であるらせん状
の桿菌で長い鞭毛を持つことが特徴であり(図1)その鞭毛を動かすことよりyunificusと命
名された好塩性菌で海水中特に汽水域に広く分布する一般的には病原性はないと考え
られるが稀に壊死性筋膜炎の原因菌となる場合がある
訓
b
4
唯u
臨サ
雛
も
嗣
)i
箇
璽 冤 触鞘rsquoi躯螺蟹rsquos
L」圏1rdquo lb「b〕凹
図1 Ve yunifieUS電子顕微鏡像(新潟大学大学院国際感染医学講座山本達男教授提
供)長い鞭毛を持つらせん状のグラム陰性桿菌である
蕊
7
Vvunfieusの生化学的性状は表1の通りである Ornithine decarboxylase D-mannitol
fermentation sucrose fermentationは株により違いがみられるため通常の簡易同定キット
では判定できないこともある環境中にはindole production(一)の株も存在するこのため確
認にはcytotoxin-hemolysin等の遺伝子確認を併用する必要がある
Sucrose fermentation(+)株は TCBS寒天培地(ニッスイ)ではvbro ehoerae様の黄色コ
ロ=一となる
表1 trsquofvuniflcusの生化学性状好二二菌で3NaCI含有培地では良好に発育するが
8NaCl含有培地では発育がみられない乳糖を分解するがショ糖分解性については株に
よる違いがみられる
Kova6srsquos oxhase 十 gelatln hydrolysislsquo 十
hydorogen sulfide(TSI)一 esculin hydrolysis 十
indoleげPfoduction plusmn L-a「abimse fe「mentation 一motility 十 oe麗Obiose fermentation 十
一一一一一一一一一一一一r窒盾翌狽Einれutrient broth witb一
lactose feτmentation 十
0村aCl 一 SUCrose fermentation plusmn
3NaCi 十 ma量tose fe陥e耐ation 十
6NaC著 plusmn D-mamito暦fermentation plusmn
8NaC1 一 meiibiose femlentation 十
VogeSrProskauer一 trehalose fermenta髄on 十
一 一 一 一 「 一
撃usln deoarboxylase 十 一 一 一
c-xyfose fermentation 一 一 一 一 一 一 一 一 ゴ 一
ne窒奄獅撃獅dihydrolase 一
一
adonltol fermentation 一
ornith量ne decarboxylase plusmn dulsltol fermentation 一nitrate reduction 十 myo-inosit(刈fermentatioれ
一
urea hydrolys韮S一 D-sorbltol fefmenta{ion
一
ONPG test 十 sa髄ci月fermentatlon 十
8
1-970年にRoland(1)が非腸炎性の腸炎ビブVオ感染例〈下肢壊死とendotoxin sheGk)を
報告したこれがZ掘謝伽がヒトへ感染した最初の報告である1975年にFerれaれdezと
Pankey(2>はunnamed mar ine 1吻吻と呼んだ細菌による重篤な組織感染症3例を報告して
いるその後1976年にHoHisら(3)により血液中より分離同定された好塩性ビブリオ38例
が報告されたビブリオ属に属してもVbTIO parahaamytiasでも聯 a勧の傭とも具
なるビブリオであることを発見し乳酸分解性があることよりang(+Vlbr70と呼んだその後
1979年にFarmer(4)によりZvunificusと命名された Blakeら(5)が病症を敗血症型創傷
型に分類しKlont z(6)らが消化器症状を主体とする症例を追加した現在はM幽繍臨纒感
染症は敗血症型創傷型消化器型その他の4型に分類さ麗でいる
Vvcrlnfieus es染症は欧米においては創傷型の報告が多いのに対しアジアでは敗血症型
が多いこれは食習慣の違いや基礎疾患として多い肝機能障害の頻度の差によるとことが
大きいと考えられる
日本では1978年に河野(7>らが最初に報告して以来約200例の症例報告があ砿その半
数以上が北部九州での発症であるDしかしながら過去には東北地方でも発症しており地球
温暖化に伴って全国的に発生の危険性がある感染症であるまた日本での発生は6月から
11月に限られており最も鑑別を要するAレンサ球菌によるtexic sheok-ike syndretneが
冬季に多いこととは対照的である
ところで熊本県においてはほぼ毎年Zvelnlfieus lよる壊死性筋膜炎の患者が発生して
いたしかしながら1年間に1~2例と発生数が少なく予後不良で発生より数Rで死亡する
例が多いためにあまり注目されなかったところが2001年の6月~7月にかけて比較的
短期間に限られた地域においてZvulnifieus感染症が大量に発生し国内初のZ
yeXfiifias感染症の流行であった可能性が高いと考えられたそこで20G1年6月~7月にか
けて起こったy磁飛脚感梁症の流行の発生状溌を雨脚析しその流行のメカニズムを
明らかにすることを且的として本国感染症に関する疫学調査および環境調査を行った
9
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
論文題名
学 位 論 文
Doctorrsquos Thesis
ビブリオバルニフィカス感染症の日本における疫学
(Epideology of I伽 y雌∬in艶ction in Japan)
著者名
指導教員名
審査委員名
井上雄二 Yuj i l noue
熊本大学大学院医学教育部博士課程皮膚機能病態学
9 浩信教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程微生物学
赤池 孝章 教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程生命倫理学
浅井 篤 教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程環境保健医学
上田 厚 教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程脳神経外科学
倉津 純一 教授
2008年度
7
8
9
10
目次
要旨
発表論文リスト
謝辞
略語一覧
研究の背景と目的
方法
6-12001年6月~7月における熊本県八代地域での
ZVUnlfieus感染症集団発生の調査
6-2 Mvunifieus感染症の疫学調査
6-3熊本県におけるtrsquoμ傭伽粥感染症の集計
6-4有明海八代海における環境中のVvunficusについて
6-5奄美地方の海水調査
結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域での
VUUnfCUS感染症集団発生の調査
7-2 Vyunlfeus感染症の疫学調査
7-3熊本県におけるVvunffcus感染症の集計
7-4有明海八代海における環境中のVvunifieusについて
7-5奄美地方の海水調査
考察(文献的考察を含む)
結語
参考文献
1
り二り0【0公071
nVnVニリ直000
4蓬
噌
-
噌
4
1要旨
2001年6月~7月にかけて国内では始めてのVbrio yunffeus(以下y vunicus)感染症
の流行が発生した20日間に7人の感染症患者が確認され内6名は熊本県八代地区の限局
した地域での発生であった6例が敗血症型であり7例中4例が死亡したそこで当該流行
を含めた日本におけるVyunlficus感染症の発生状況と流行のメカニズムを明らかにするこ
とを目的として疫学研究を行った
1998年から2003年までの5年間に発生した本菌感染症について皮膚科専門医施設およ
び高度救急救命センターを含む全国の1683医療施設に対してアンケート調査を行い患者
の情報を収集し分析した5年間に94例のVvulnifieus感染症患者を確認した男性78例
女性16例で患者の平均年齢は606plusmn140歳であった敗血症型68人(723)創傷型
21人(223)消化器型5人(53)であった基礎疾患として全体の80以上が肝機能障
害を有しており約60の患者が肝硬変であった患者発生は7~8月多くは西日本特に
九州(有明海八代海沿岸)において発生していたさらに熊本県における本菌感染症を調
査した1990年より2006年号での17年間に43例の患者が発生しており発生数は近年増
加傾向にあった発生は玉名市周辺および八代市周辺で多く芦北地方や天草地方では少
なかったよって有明海および八代海は本菌に汚染された海域であることが示唆された
そこで有明海八代海において環境調査を行った結果河川水の影響を受けにくい海域に
おける本菌濃度(菌数)は低く河川水の影響を受けやすい海域における恥曝は高かったま
た河川が多い内海地域において本菌の増殖が盛んであったさらに同地域での降水量と
海水塩分濃度を調査したところ患者発生前に大量の雨が降り海水の塩分濃度が低下して
いた本縄は通常の海水より低い塩分濃度での増殖効率が良いことが分かっており地理的
要因に加えて気象的要因が本間感染症の流行に関与したものと考えられた
2
2発表論文リスト
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infeotion in Kumamoto Japan2001ノ4励g掬ゾ2004140=888-889
2 t11yiL111u 1 e Tomomichi Ono Tamano Matsui Jiro Miyasaka Kazuko Katsuki
Yoshihiro Kinoshita aRd Hironobu lhn Epidemiological survey of Vihrio vunfflcus
infection in Japan between 1999 afid 2003 JDermato2008 35 129-139
3エ幽Tomomichi Ono Jiro Miyasaka and Hironobu lhn The growth of吻ノカ
vunlfieus and the habitat of infected patients in Kumamoto BioSeienee lrends
2007 3 134-1 39
4 Tomotaka Tanabe Ayaka Naka Hiroaki Aso Hiroshi Nakao Shizuo Narimatsu
エ幽Tomomichi Ono and Shigeo Yamamoto A novel aerobactin utilization
c短ster in シり伽わyu7勉s with a gene involved in the transcription regulation of
the lutA homologue Mierebioゾ伽uno200549823-834
5 Tomotaka Tanabe Neriko Takata Ayaka Naka Youg-Hwa Moon Hireshi Nakao
t11LU1ggl o Shizuo Narimatsu and Shigeo Yamamoto ldentification of an AraC一like
regulater gene required for induction of the 78-kDa ferrioxamine B receptor in
レり乃ノブを71tunlfiGs邪』伽励ノang82005249=309-314
6井上錘二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性Vihrie
μ吻伽侭感染症EAtfi訥nt「 2004261289-1292
7井上鑑二小野友道「皮膚感染症についてperp盈床ま嗣腔200279=1533-1537
3
8井上雄二小野友道「壊死性筋膜炎による潰瘍を治す」皮膚科診療プラクティス
15難治性皮膚潰瘍を治すスキル(宮地良樹監修)2003249-254文光堂(東京)
9井上雄二Vbrie vunlfeus感染症nfeetien and leehnoegy 20041315-16
4
3謝辞
本研究を行うにあたりご指導ご支援頂きました熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機
能病態学教室サ浩信教授熊本大学大学院医学薬学研究部侵襲制御医学教室木下順
弘教授ならびに前熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機能病態学教室小野友道名誉教
授に深く感謝いたしますまた研究のご支援を頂きました教室員一同の皆様および教室補
助員の皆様に心より感謝いたしますまた本研究をご指導ご支援いただきしました国立感
染症研究所感染精報センター松井珠乃研究員岡部信彦センター長に深く感謝いたします
さらに本研究にあたりご援助いただきました国立医薬品食品衛生研究所山本茂貴先生
には深く感謝いたします
また本研究を行うにあたり当初より環境研究のご支援をいただきました熊本保健環境科
学研究所宮坂次郎研究員甲木和子部長には厚く御礼申し上げますまた本研究に当り
様々な情報をお寄せ頂きました奄美中央病院古垣斉拡先生に厚くお礼申し上げます
5
4略語一覧
ALPatkaline phesphatase=アルカiJブオスファターゼ
ChE eholinesterase=コリンエステラーゼ
CPKcreatine phosphel《inaseクレアチンボスホキナーゼ
FDPfibr】n degrada ti匪憾掲tsフィブリン分解産物
GOT= glutarrite oxaloaGette transaminaseグルタミン酸オキサ回酢酸トランスアミナーゼ
GPT9tutamlG pyruvie trraRsamlnaseグルタミン酸ピルビン酸転移酵素
γ一GTPγ』一91utamyltransteraseγグルタミントランスフェラーゼ
欺htemaせonal un忙国際単位
LAPleugine amitTopeptidase=回イシンアミノペプチダーゼ
LDH= laetate dehydrase乳酸脱水素酵素
LIM lySine indol motrdquottyリジンインFldquo一一ル半流動
MPM fnest probabie fiumber一層確数
ONPG orthornitrephenyl一 BDン9alactepyranosidetオrsquoルソーニトロフェニールーβ一D一ガラクトピラノシド
PBS= phosphate butterect saline=リン酸緩衝生理食塩水
PCRpolymerase ehain reactierrポリメラーゼ連鎖反応
TCBS=掘losulfate citτate協e saccharosαチオ硫酸クエン酸胆汁ショ糖
τ鉱面p悔sar lτon=3糖鉄
VPViblia parahaemalytleuslsquo腸炎ビブリオrsquo
6
5研究の背景と目的
VyunlfiCUSはコレラ菌や腸炎ビブリオ菌と同じビブリオ属のグラム陰性菌であるらせん状
の桿菌で長い鞭毛を持つことが特徴であり(図1)その鞭毛を動かすことよりyunificusと命
名された好塩性菌で海水中特に汽水域に広く分布する一般的には病原性はないと考え
られるが稀に壊死性筋膜炎の原因菌となる場合がある
訓
b
4
唯u
臨サ
雛
も
嗣
)i
箇
璽 冤 触鞘rsquoi躯螺蟹rsquos
L」圏1rdquo lb「b〕凹
図1 Ve yunifieUS電子顕微鏡像(新潟大学大学院国際感染医学講座山本達男教授提
供)長い鞭毛を持つらせん状のグラム陰性桿菌である
蕊
7
Vvunfieusの生化学的性状は表1の通りである Ornithine decarboxylase D-mannitol
fermentation sucrose fermentationは株により違いがみられるため通常の簡易同定キット
では判定できないこともある環境中にはindole production(一)の株も存在するこのため確
認にはcytotoxin-hemolysin等の遺伝子確認を併用する必要がある
Sucrose fermentation(+)株は TCBS寒天培地(ニッスイ)ではvbro ehoerae様の黄色コ
ロ=一となる
表1 trsquofvuniflcusの生化学性状好二二菌で3NaCI含有培地では良好に発育するが
8NaCl含有培地では発育がみられない乳糖を分解するがショ糖分解性については株に
よる違いがみられる
Kova6srsquos oxhase 十 gelatln hydrolysislsquo 十
hydorogen sulfide(TSI)一 esculin hydrolysis 十
indoleげPfoduction plusmn L-a「abimse fe「mentation 一motility 十 oe麗Obiose fermentation 十
一一一一一一一一一一一一r窒盾翌狽Einれutrient broth witb一
lactose feτmentation 十
0村aCl 一 SUCrose fermentation plusmn
3NaCi 十 ma量tose fe陥e耐ation 十
6NaC著 plusmn D-mamito暦fermentation plusmn
8NaC1 一 meiibiose femlentation 十
VogeSrProskauer一 trehalose fermenta髄on 十
一 一 一 一 「 一
撃usln deoarboxylase 十 一 一 一
c-xyfose fermentation 一 一 一 一 一 一 一 一 ゴ 一
ne窒奄獅撃獅dihydrolase 一
一
adonltol fermentation 一
ornith量ne decarboxylase plusmn dulsltol fermentation 一nitrate reduction 十 myo-inosit(刈fermentatioれ
一
urea hydrolys韮S一 D-sorbltol fefmenta{ion
一
ONPG test 十 sa髄ci月fermentatlon 十
8
1-970年にRoland(1)が非腸炎性の腸炎ビブVオ感染例〈下肢壊死とendotoxin sheGk)を
報告したこれがZ掘謝伽がヒトへ感染した最初の報告である1975年にFerれaれdezと
Pankey(2>はunnamed mar ine 1吻吻と呼んだ細菌による重篤な組織感染症3例を報告して
いるその後1976年にHoHisら(3)により血液中より分離同定された好塩性ビブリオ38例
が報告されたビブリオ属に属してもVbTIO parahaamytiasでも聯 a勧の傭とも具
なるビブリオであることを発見し乳酸分解性があることよりang(+Vlbr70と呼んだその後
1979年にFarmer(4)によりZvunificusと命名された Blakeら(5)が病症を敗血症型創傷
型に分類しKlont z(6)らが消化器症状を主体とする症例を追加した現在はM幽繍臨纒感
染症は敗血症型創傷型消化器型その他の4型に分類さ麗でいる
Vvcrlnfieus es染症は欧米においては創傷型の報告が多いのに対しアジアでは敗血症型
が多いこれは食習慣の違いや基礎疾患として多い肝機能障害の頻度の差によるとことが
大きいと考えられる
日本では1978年に河野(7>らが最初に報告して以来約200例の症例報告があ砿その半
数以上が北部九州での発症であるDしかしながら過去には東北地方でも発症しており地球
温暖化に伴って全国的に発生の危険性がある感染症であるまた日本での発生は6月から
11月に限られており最も鑑別を要するAレンサ球菌によるtexic sheok-ike syndretneが
冬季に多いこととは対照的である
ところで熊本県においてはほぼ毎年Zvelnlfieus lよる壊死性筋膜炎の患者が発生して
いたしかしながら1年間に1~2例と発生数が少なく予後不良で発生より数Rで死亡する
例が多いためにあまり注目されなかったところが2001年の6月~7月にかけて比較的
短期間に限られた地域においてZvulnifieus感染症が大量に発生し国内初のZ
yeXfiifias感染症の流行であった可能性が高いと考えられたそこで20G1年6月~7月にか
けて起こったy磁飛脚感梁症の流行の発生状溌を雨脚析しその流行のメカニズムを
明らかにすることを且的として本国感染症に関する疫学調査および環境調査を行った
9
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
7
8
9
10
目次
要旨
発表論文リスト
謝辞
略語一覧
研究の背景と目的
方法
6-12001年6月~7月における熊本県八代地域での
ZVUnlfieus感染症集団発生の調査
6-2 Mvunifieus感染症の疫学調査
6-3熊本県におけるtrsquoμ傭伽粥感染症の集計
6-4有明海八代海における環境中のVvunficusについて
6-5奄美地方の海水調査
結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域での
VUUnfCUS感染症集団発生の調査
7-2 Vyunlfeus感染症の疫学調査
7-3熊本県におけるVvunffcus感染症の集計
7-4有明海八代海における環境中のVvunifieusについて
7-5奄美地方の海水調査
考察(文献的考察を含む)
結語
参考文献
1
り二り0【0公071
nVnVニリ直000
4蓬
噌
-
噌
4
1要旨
2001年6月~7月にかけて国内では始めてのVbrio yunffeus(以下y vunicus)感染症
の流行が発生した20日間に7人の感染症患者が確認され内6名は熊本県八代地区の限局
した地域での発生であった6例が敗血症型であり7例中4例が死亡したそこで当該流行
を含めた日本におけるVyunlficus感染症の発生状況と流行のメカニズムを明らかにするこ
とを目的として疫学研究を行った
1998年から2003年までの5年間に発生した本菌感染症について皮膚科専門医施設およ
び高度救急救命センターを含む全国の1683医療施設に対してアンケート調査を行い患者
の情報を収集し分析した5年間に94例のVvulnifieus感染症患者を確認した男性78例
女性16例で患者の平均年齢は606plusmn140歳であった敗血症型68人(723)創傷型
21人(223)消化器型5人(53)であった基礎疾患として全体の80以上が肝機能障
害を有しており約60の患者が肝硬変であった患者発生は7~8月多くは西日本特に
九州(有明海八代海沿岸)において発生していたさらに熊本県における本菌感染症を調
査した1990年より2006年号での17年間に43例の患者が発生しており発生数は近年増
加傾向にあった発生は玉名市周辺および八代市周辺で多く芦北地方や天草地方では少
なかったよって有明海および八代海は本菌に汚染された海域であることが示唆された
そこで有明海八代海において環境調査を行った結果河川水の影響を受けにくい海域に
おける本菌濃度(菌数)は低く河川水の影響を受けやすい海域における恥曝は高かったま
た河川が多い内海地域において本菌の増殖が盛んであったさらに同地域での降水量と
海水塩分濃度を調査したところ患者発生前に大量の雨が降り海水の塩分濃度が低下して
いた本縄は通常の海水より低い塩分濃度での増殖効率が良いことが分かっており地理的
要因に加えて気象的要因が本間感染症の流行に関与したものと考えられた
2
2発表論文リスト
1 Y111dUnggeu lno Tamano Matsui and Temomichi Ono An eutbreak ef Yhrio vunifieus
infeotion in Kumamoto Japan2001ノ4励g掬ゾ2004140=888-889
2 t11yiL111u 1 e Tomomichi Ono Tamano Matsui Jiro Miyasaka Kazuko Katsuki
Yoshihiro Kinoshita aRd Hironobu lhn Epidemiological survey of Vihrio vunfflcus
infection in Japan between 1999 afid 2003 JDermato2008 35 129-139
3エ幽Tomomichi Ono Jiro Miyasaka and Hironobu lhn The growth of吻ノカ
vunlfieus and the habitat of infected patients in Kumamoto BioSeienee lrends
2007 3 134-1 39
4 Tomotaka Tanabe Ayaka Naka Hiroaki Aso Hiroshi Nakao Shizuo Narimatsu
エ幽Tomomichi Ono and Shigeo Yamamoto A novel aerobactin utilization
c短ster in シり伽わyu7勉s with a gene involved in the transcription regulation of
the lutA homologue Mierebioゾ伽uno200549823-834
5 Tomotaka Tanabe Neriko Takata Ayaka Naka Youg-Hwa Moon Hireshi Nakao
t11LU1ggl o Shizuo Narimatsu and Shigeo Yamamoto ldentification of an AraC一like
regulater gene required for induction of the 78-kDa ferrioxamine B receptor in
レり乃ノブを71tunlfiGs邪』伽励ノang82005249=309-314
6井上錘二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性Vihrie
μ吻伽侭感染症EAtfi訥nt「 2004261289-1292
7井上鑑二小野友道「皮膚感染症についてperp盈床ま嗣腔200279=1533-1537
3
8井上雄二小野友道「壊死性筋膜炎による潰瘍を治す」皮膚科診療プラクティス
15難治性皮膚潰瘍を治すスキル(宮地良樹監修)2003249-254文光堂(東京)
9井上雄二Vbrie vunlfeus感染症nfeetien and leehnoegy 20041315-16
4
3謝辞
本研究を行うにあたりご指導ご支援頂きました熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機
能病態学教室サ浩信教授熊本大学大学院医学薬学研究部侵襲制御医学教室木下順
弘教授ならびに前熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機能病態学教室小野友道名誉教
授に深く感謝いたしますまた研究のご支援を頂きました教室員一同の皆様および教室補
助員の皆様に心より感謝いたしますまた本研究をご指導ご支援いただきしました国立感
染症研究所感染精報センター松井珠乃研究員岡部信彦センター長に深く感謝いたします
さらに本研究にあたりご援助いただきました国立医薬品食品衛生研究所山本茂貴先生
には深く感謝いたします
また本研究を行うにあたり当初より環境研究のご支援をいただきました熊本保健環境科
学研究所宮坂次郎研究員甲木和子部長には厚く御礼申し上げますまた本研究に当り
様々な情報をお寄せ頂きました奄美中央病院古垣斉拡先生に厚くお礼申し上げます
5
4略語一覧
ALPatkaline phesphatase=アルカiJブオスファターゼ
ChE eholinesterase=コリンエステラーゼ
CPKcreatine phosphel《inaseクレアチンボスホキナーゼ
FDPfibr】n degrada ti匪憾掲tsフィブリン分解産物
GOT= glutarrite oxaloaGette transaminaseグルタミン酸オキサ回酢酸トランスアミナーゼ
GPT9tutamlG pyruvie trraRsamlnaseグルタミン酸ピルビン酸転移酵素
γ一GTPγ』一91utamyltransteraseγグルタミントランスフェラーゼ
欺htemaせonal un忙国際単位
LAPleugine amitTopeptidase=回イシンアミノペプチダーゼ
LDH= laetate dehydrase乳酸脱水素酵素
LIM lySine indol motrdquottyリジンインFldquo一一ル半流動
MPM fnest probabie fiumber一層確数
ONPG orthornitrephenyl一 BDン9alactepyranosidetオrsquoルソーニトロフェニールーβ一D一ガラクトピラノシド
PBS= phosphate butterect saline=リン酸緩衝生理食塩水
PCRpolymerase ehain reactierrポリメラーゼ連鎖反応
TCBS=掘losulfate citτate協e saccharosαチオ硫酸クエン酸胆汁ショ糖
τ鉱面p悔sar lτon=3糖鉄
VPViblia parahaemalytleuslsquo腸炎ビブリオrsquo
6
5研究の背景と目的
VyunlfiCUSはコレラ菌や腸炎ビブリオ菌と同じビブリオ属のグラム陰性菌であるらせん状
の桿菌で長い鞭毛を持つことが特徴であり(図1)その鞭毛を動かすことよりyunificusと命
名された好塩性菌で海水中特に汽水域に広く分布する一般的には病原性はないと考え
られるが稀に壊死性筋膜炎の原因菌となる場合がある
訓
b
4
唯u
臨サ
雛
も
嗣
)i
箇
璽 冤 触鞘rsquoi躯螺蟹rsquos
L」圏1rdquo lb「b〕凹
図1 Ve yunifieUS電子顕微鏡像(新潟大学大学院国際感染医学講座山本達男教授提
供)長い鞭毛を持つらせん状のグラム陰性桿菌である
蕊
7
Vvunfieusの生化学的性状は表1の通りである Ornithine decarboxylase D-mannitol
fermentation sucrose fermentationは株により違いがみられるため通常の簡易同定キット
では判定できないこともある環境中にはindole production(一)の株も存在するこのため確
認にはcytotoxin-hemolysin等の遺伝子確認を併用する必要がある
Sucrose fermentation(+)株は TCBS寒天培地(ニッスイ)ではvbro ehoerae様の黄色コ
ロ=一となる
表1 trsquofvuniflcusの生化学性状好二二菌で3NaCI含有培地では良好に発育するが
8NaCl含有培地では発育がみられない乳糖を分解するがショ糖分解性については株に
よる違いがみられる
Kova6srsquos oxhase 十 gelatln hydrolysislsquo 十
hydorogen sulfide(TSI)一 esculin hydrolysis 十
indoleげPfoduction plusmn L-a「abimse fe「mentation 一motility 十 oe麗Obiose fermentation 十
一一一一一一一一一一一一r窒盾翌狽Einれutrient broth witb一
lactose feτmentation 十
0村aCl 一 SUCrose fermentation plusmn
3NaCi 十 ma量tose fe陥e耐ation 十
6NaC著 plusmn D-mamito暦fermentation plusmn
8NaC1 一 meiibiose femlentation 十
VogeSrProskauer一 trehalose fermenta髄on 十
一 一 一 一 「 一
撃usln deoarboxylase 十 一 一 一
c-xyfose fermentation 一 一 一 一 一 一 一 一 ゴ 一
ne窒奄獅撃獅dihydrolase 一
一
adonltol fermentation 一
ornith量ne decarboxylase plusmn dulsltol fermentation 一nitrate reduction 十 myo-inosit(刈fermentatioれ
一
urea hydrolys韮S一 D-sorbltol fefmenta{ion
一
ONPG test 十 sa髄ci月fermentatlon 十
8
1-970年にRoland(1)が非腸炎性の腸炎ビブVオ感染例〈下肢壊死とendotoxin sheGk)を
報告したこれがZ掘謝伽がヒトへ感染した最初の報告である1975年にFerれaれdezと
Pankey(2>はunnamed mar ine 1吻吻と呼んだ細菌による重篤な組織感染症3例を報告して
いるその後1976年にHoHisら(3)により血液中より分離同定された好塩性ビブリオ38例
が報告されたビブリオ属に属してもVbTIO parahaamytiasでも聯 a勧の傭とも具
なるビブリオであることを発見し乳酸分解性があることよりang(+Vlbr70と呼んだその後
1979年にFarmer(4)によりZvunificusと命名された Blakeら(5)が病症を敗血症型創傷
型に分類しKlont z(6)らが消化器症状を主体とする症例を追加した現在はM幽繍臨纒感
染症は敗血症型創傷型消化器型その他の4型に分類さ麗でいる
Vvcrlnfieus es染症は欧米においては創傷型の報告が多いのに対しアジアでは敗血症型
が多いこれは食習慣の違いや基礎疾患として多い肝機能障害の頻度の差によるとことが
大きいと考えられる
日本では1978年に河野(7>らが最初に報告して以来約200例の症例報告があ砿その半
数以上が北部九州での発症であるDしかしながら過去には東北地方でも発症しており地球
温暖化に伴って全国的に発生の危険性がある感染症であるまた日本での発生は6月から
11月に限られており最も鑑別を要するAレンサ球菌によるtexic sheok-ike syndretneが
冬季に多いこととは対照的である
ところで熊本県においてはほぼ毎年Zvelnlfieus lよる壊死性筋膜炎の患者が発生して
いたしかしながら1年間に1~2例と発生数が少なく予後不良で発生より数Rで死亡する
例が多いためにあまり注目されなかったところが2001年の6月~7月にかけて比較的
短期間に限られた地域においてZvulnifieus感染症が大量に発生し国内初のZ
yeXfiifias感染症の流行であった可能性が高いと考えられたそこで20G1年6月~7月にか
けて起こったy磁飛脚感梁症の流行の発生状溌を雨脚析しその流行のメカニズムを
明らかにすることを且的として本国感染症に関する疫学調査および環境調査を行った
9
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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53
17)
18)
19)
20)
21)
22)
23)
24)
Chan TYK」レfbrlo vu7Zies infections in Asia=an overvier Soカheastlsalsquoノ
lrop Med Heath 1995 26 461-465
Joy耐GM Gomersall CD Lyon DJ Severe necrotizing fasciitis of the extremities
Gaused by vibronaceag experience of a Hong Kong tertiary hospital Hong Kong
Medlsquoノ1999563-68
Maxwell EL Maxwell BC Pearson SR et aL A Gase of vlbrio vunifieus
septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
epidemiology of vbrlo vu7faus infections in Denmark Eurlsquoノθ伽Merobo
nfect Ds 1996 15 227-232
Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
54
25)
26)
27)
28)
29)
30)
31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
1要旨
2001年6月~7月にかけて国内では始めてのVbrio yunffeus(以下y vunicus)感染症
の流行が発生した20日間に7人の感染症患者が確認され内6名は熊本県八代地区の限局
した地域での発生であった6例が敗血症型であり7例中4例が死亡したそこで当該流行
を含めた日本におけるVyunlficus感染症の発生状況と流行のメカニズムを明らかにするこ
とを目的として疫学研究を行った
1998年から2003年までの5年間に発生した本菌感染症について皮膚科専門医施設およ
び高度救急救命センターを含む全国の1683医療施設に対してアンケート調査を行い患者
の情報を収集し分析した5年間に94例のVvulnifieus感染症患者を確認した男性78例
女性16例で患者の平均年齢は606plusmn140歳であった敗血症型68人(723)創傷型
21人(223)消化器型5人(53)であった基礎疾患として全体の80以上が肝機能障
害を有しており約60の患者が肝硬変であった患者発生は7~8月多くは西日本特に
九州(有明海八代海沿岸)において発生していたさらに熊本県における本菌感染症を調
査した1990年より2006年号での17年間に43例の患者が発生しており発生数は近年増
加傾向にあった発生は玉名市周辺および八代市周辺で多く芦北地方や天草地方では少
なかったよって有明海および八代海は本菌に汚染された海域であることが示唆された
そこで有明海八代海において環境調査を行った結果河川水の影響を受けにくい海域に
おける本菌濃度(菌数)は低く河川水の影響を受けやすい海域における恥曝は高かったま
た河川が多い内海地域において本菌の増殖が盛んであったさらに同地域での降水量と
海水塩分濃度を調査したところ患者発生前に大量の雨が降り海水の塩分濃度が低下して
いた本縄は通常の海水より低い塩分濃度での増殖効率が良いことが分かっており地理的
要因に加えて気象的要因が本間感染症の流行に関与したものと考えられた
2
2発表論文リスト
1 Y111dUnggeu lno Tamano Matsui and Temomichi Ono An eutbreak ef Yhrio vunifieus
infeotion in Kumamoto Japan2001ノ4励g掬ゾ2004140=888-889
2 t11yiL111u 1 e Tomomichi Ono Tamano Matsui Jiro Miyasaka Kazuko Katsuki
Yoshihiro Kinoshita aRd Hironobu lhn Epidemiological survey of Vihrio vunfflcus
infection in Japan between 1999 afid 2003 JDermato2008 35 129-139
3エ幽Tomomichi Ono Jiro Miyasaka and Hironobu lhn The growth of吻ノカ
vunlfieus and the habitat of infected patients in Kumamoto BioSeienee lrends
2007 3 134-1 39
4 Tomotaka Tanabe Ayaka Naka Hiroaki Aso Hiroshi Nakao Shizuo Narimatsu
エ幽Tomomichi Ono and Shigeo Yamamoto A novel aerobactin utilization
c短ster in シり伽わyu7勉s with a gene involved in the transcription regulation of
the lutA homologue Mierebioゾ伽uno200549823-834
5 Tomotaka Tanabe Neriko Takata Ayaka Naka Youg-Hwa Moon Hireshi Nakao
t11LU1ggl o Shizuo Narimatsu and Shigeo Yamamoto ldentification of an AraC一like
regulater gene required for induction of the 78-kDa ferrioxamine B receptor in
レり乃ノブを71tunlfiGs邪』伽励ノang82005249=309-314
6井上錘二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性Vihrie
μ吻伽侭感染症EAtfi訥nt「 2004261289-1292
7井上鑑二小野友道「皮膚感染症についてperp盈床ま嗣腔200279=1533-1537
3
8井上雄二小野友道「壊死性筋膜炎による潰瘍を治す」皮膚科診療プラクティス
15難治性皮膚潰瘍を治すスキル(宮地良樹監修)2003249-254文光堂(東京)
9井上雄二Vbrie vunlfeus感染症nfeetien and leehnoegy 20041315-16
4
3謝辞
本研究を行うにあたりご指導ご支援頂きました熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機
能病態学教室サ浩信教授熊本大学大学院医学薬学研究部侵襲制御医学教室木下順
弘教授ならびに前熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機能病態学教室小野友道名誉教
授に深く感謝いたしますまた研究のご支援を頂きました教室員一同の皆様および教室補
助員の皆様に心より感謝いたしますまた本研究をご指導ご支援いただきしました国立感
染症研究所感染精報センター松井珠乃研究員岡部信彦センター長に深く感謝いたします
さらに本研究にあたりご援助いただきました国立医薬品食品衛生研究所山本茂貴先生
には深く感謝いたします
また本研究を行うにあたり当初より環境研究のご支援をいただきました熊本保健環境科
学研究所宮坂次郎研究員甲木和子部長には厚く御礼申し上げますまた本研究に当り
様々な情報をお寄せ頂きました奄美中央病院古垣斉拡先生に厚くお礼申し上げます
5
4略語一覧
ALPatkaline phesphatase=アルカiJブオスファターゼ
ChE eholinesterase=コリンエステラーゼ
CPKcreatine phosphel《inaseクレアチンボスホキナーゼ
FDPfibr】n degrada ti匪憾掲tsフィブリン分解産物
GOT= glutarrite oxaloaGette transaminaseグルタミン酸オキサ回酢酸トランスアミナーゼ
GPT9tutamlG pyruvie trraRsamlnaseグルタミン酸ピルビン酸転移酵素
γ一GTPγ』一91utamyltransteraseγグルタミントランスフェラーゼ
欺htemaせonal un忙国際単位
LAPleugine amitTopeptidase=回イシンアミノペプチダーゼ
LDH= laetate dehydrase乳酸脱水素酵素
LIM lySine indol motrdquottyリジンインFldquo一一ル半流動
MPM fnest probabie fiumber一層確数
ONPG orthornitrephenyl一 BDン9alactepyranosidetオrsquoルソーニトロフェニールーβ一D一ガラクトピラノシド
PBS= phosphate butterect saline=リン酸緩衝生理食塩水
PCRpolymerase ehain reactierrポリメラーゼ連鎖反応
TCBS=掘losulfate citτate協e saccharosαチオ硫酸クエン酸胆汁ショ糖
τ鉱面p悔sar lτon=3糖鉄
VPViblia parahaemalytleuslsquo腸炎ビブリオrsquo
6
5研究の背景と目的
VyunlfiCUSはコレラ菌や腸炎ビブリオ菌と同じビブリオ属のグラム陰性菌であるらせん状
の桿菌で長い鞭毛を持つことが特徴であり(図1)その鞭毛を動かすことよりyunificusと命
名された好塩性菌で海水中特に汽水域に広く分布する一般的には病原性はないと考え
られるが稀に壊死性筋膜炎の原因菌となる場合がある
訓
b
4
唯u
臨サ
雛
も
嗣
)i
箇
璽 冤 触鞘rsquoi躯螺蟹rsquos
L」圏1rdquo lb「b〕凹
図1 Ve yunifieUS電子顕微鏡像(新潟大学大学院国際感染医学講座山本達男教授提
供)長い鞭毛を持つらせん状のグラム陰性桿菌である
蕊
7
Vvunfieusの生化学的性状は表1の通りである Ornithine decarboxylase D-mannitol
fermentation sucrose fermentationは株により違いがみられるため通常の簡易同定キット
では判定できないこともある環境中にはindole production(一)の株も存在するこのため確
認にはcytotoxin-hemolysin等の遺伝子確認を併用する必要がある
Sucrose fermentation(+)株は TCBS寒天培地(ニッスイ)ではvbro ehoerae様の黄色コ
ロ=一となる
表1 trsquofvuniflcusの生化学性状好二二菌で3NaCI含有培地では良好に発育するが
8NaCl含有培地では発育がみられない乳糖を分解するがショ糖分解性については株に
よる違いがみられる
Kova6srsquos oxhase 十 gelatln hydrolysislsquo 十
hydorogen sulfide(TSI)一 esculin hydrolysis 十
indoleげPfoduction plusmn L-a「abimse fe「mentation 一motility 十 oe麗Obiose fermentation 十
一一一一一一一一一一一一r窒盾翌狽Einれutrient broth witb一
lactose feτmentation 十
0村aCl 一 SUCrose fermentation plusmn
3NaCi 十 ma量tose fe陥e耐ation 十
6NaC著 plusmn D-mamito暦fermentation plusmn
8NaC1 一 meiibiose femlentation 十
VogeSrProskauer一 trehalose fermenta髄on 十
一 一 一 一 「 一
撃usln deoarboxylase 十 一 一 一
c-xyfose fermentation 一 一 一 一 一 一 一 一 ゴ 一
ne窒奄獅撃獅dihydrolase 一
一
adonltol fermentation 一
ornith量ne decarboxylase plusmn dulsltol fermentation 一nitrate reduction 十 myo-inosit(刈fermentatioれ
一
urea hydrolys韮S一 D-sorbltol fefmenta{ion
一
ONPG test 十 sa髄ci月fermentatlon 十
8
1-970年にRoland(1)が非腸炎性の腸炎ビブVオ感染例〈下肢壊死とendotoxin sheGk)を
報告したこれがZ掘謝伽がヒトへ感染した最初の報告である1975年にFerれaれdezと
Pankey(2>はunnamed mar ine 1吻吻と呼んだ細菌による重篤な組織感染症3例を報告して
いるその後1976年にHoHisら(3)により血液中より分離同定された好塩性ビブリオ38例
が報告されたビブリオ属に属してもVbTIO parahaamytiasでも聯 a勧の傭とも具
なるビブリオであることを発見し乳酸分解性があることよりang(+Vlbr70と呼んだその後
1979年にFarmer(4)によりZvunificusと命名された Blakeら(5)が病症を敗血症型創傷
型に分類しKlont z(6)らが消化器症状を主体とする症例を追加した現在はM幽繍臨纒感
染症は敗血症型創傷型消化器型その他の4型に分類さ麗でいる
Vvcrlnfieus es染症は欧米においては創傷型の報告が多いのに対しアジアでは敗血症型
が多いこれは食習慣の違いや基礎疾患として多い肝機能障害の頻度の差によるとことが
大きいと考えられる
日本では1978年に河野(7>らが最初に報告して以来約200例の症例報告があ砿その半
数以上が北部九州での発症であるDしかしながら過去には東北地方でも発症しており地球
温暖化に伴って全国的に発生の危険性がある感染症であるまた日本での発生は6月から
11月に限られており最も鑑別を要するAレンサ球菌によるtexic sheok-ike syndretneが
冬季に多いこととは対照的である
ところで熊本県においてはほぼ毎年Zvelnlfieus lよる壊死性筋膜炎の患者が発生して
いたしかしながら1年間に1~2例と発生数が少なく予後不良で発生より数Rで死亡する
例が多いためにあまり注目されなかったところが2001年の6月~7月にかけて比較的
短期間に限られた地域においてZvulnifieus感染症が大量に発生し国内初のZ
yeXfiifias感染症の流行であった可能性が高いと考えられたそこで20G1年6月~7月にか
けて起こったy磁飛脚感梁症の流行の発生状溌を雨脚析しその流行のメカニズムを
明らかにすることを且的として本国感染症に関する疫学調査および環境調査を行った
9
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
2発表論文リスト
1 Y111dUnggeu lno Tamano Matsui and Temomichi Ono An eutbreak ef Yhrio vunifieus
infeotion in Kumamoto Japan2001ノ4励g掬ゾ2004140=888-889
2 t11yiL111u 1 e Tomomichi Ono Tamano Matsui Jiro Miyasaka Kazuko Katsuki
Yoshihiro Kinoshita aRd Hironobu lhn Epidemiological survey of Vihrio vunfflcus
infection in Japan between 1999 afid 2003 JDermato2008 35 129-139
3エ幽Tomomichi Ono Jiro Miyasaka and Hironobu lhn The growth of吻ノカ
vunlfieus and the habitat of infected patients in Kumamoto BioSeienee lrends
2007 3 134-1 39
4 Tomotaka Tanabe Ayaka Naka Hiroaki Aso Hiroshi Nakao Shizuo Narimatsu
エ幽Tomomichi Ono and Shigeo Yamamoto A novel aerobactin utilization
c短ster in シり伽わyu7勉s with a gene involved in the transcription regulation of
the lutA homologue Mierebioゾ伽uno200549823-834
5 Tomotaka Tanabe Neriko Takata Ayaka Naka Youg-Hwa Moon Hireshi Nakao
t11LU1ggl o Shizuo Narimatsu and Shigeo Yamamoto ldentification of an AraC一like
regulater gene required for induction of the 78-kDa ferrioxamine B receptor in
レり乃ノブを71tunlfiGs邪』伽励ノang82005249=309-314
6井上錘二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性Vihrie
μ吻伽侭感染症EAtfi訥nt「 2004261289-1292
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15難治性皮膚潰瘍を治すスキル(宮地良樹監修)2003249-254文光堂(東京)
9井上雄二Vbrie vunlfeus感染症nfeetien and leehnoegy 20041315-16
4
3謝辞
本研究を行うにあたりご指導ご支援頂きました熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機
能病態学教室サ浩信教授熊本大学大学院医学薬学研究部侵襲制御医学教室木下順
弘教授ならびに前熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機能病態学教室小野友道名誉教
授に深く感謝いたしますまた研究のご支援を頂きました教室員一同の皆様および教室補
助員の皆様に心より感謝いたしますまた本研究をご指導ご支援いただきしました国立感
染症研究所感染精報センター松井珠乃研究員岡部信彦センター長に深く感謝いたします
さらに本研究にあたりご援助いただきました国立医薬品食品衛生研究所山本茂貴先生
には深く感謝いたします
また本研究を行うにあたり当初より環境研究のご支援をいただきました熊本保健環境科
学研究所宮坂次郎研究員甲木和子部長には厚く御礼申し上げますまた本研究に当り
様々な情報をお寄せ頂きました奄美中央病院古垣斉拡先生に厚くお礼申し上げます
5
4略語一覧
ALPatkaline phesphatase=アルカiJブオスファターゼ
ChE eholinesterase=コリンエステラーゼ
CPKcreatine phosphel《inaseクレアチンボスホキナーゼ
FDPfibr】n degrada ti匪憾掲tsフィブリン分解産物
GOT= glutarrite oxaloaGette transaminaseグルタミン酸オキサ回酢酸トランスアミナーゼ
GPT9tutamlG pyruvie trraRsamlnaseグルタミン酸ピルビン酸転移酵素
γ一GTPγ』一91utamyltransteraseγグルタミントランスフェラーゼ
欺htemaせonal un忙国際単位
LAPleugine amitTopeptidase=回イシンアミノペプチダーゼ
LDH= laetate dehydrase乳酸脱水素酵素
LIM lySine indol motrdquottyリジンインFldquo一一ル半流動
MPM fnest probabie fiumber一層確数
ONPG orthornitrephenyl一 BDン9alactepyranosidetオrsquoルソーニトロフェニールーβ一D一ガラクトピラノシド
PBS= phosphate butterect saline=リン酸緩衝生理食塩水
PCRpolymerase ehain reactierrポリメラーゼ連鎖反応
TCBS=掘losulfate citτate協e saccharosαチオ硫酸クエン酸胆汁ショ糖
τ鉱面p悔sar lτon=3糖鉄
VPViblia parahaemalytleuslsquo腸炎ビブリオrsquo
6
5研究の背景と目的
VyunlfiCUSはコレラ菌や腸炎ビブリオ菌と同じビブリオ属のグラム陰性菌であるらせん状
の桿菌で長い鞭毛を持つことが特徴であり(図1)その鞭毛を動かすことよりyunificusと命
名された好塩性菌で海水中特に汽水域に広く分布する一般的には病原性はないと考え
られるが稀に壊死性筋膜炎の原因菌となる場合がある
訓
b
4
唯u
臨サ
雛
も
嗣
)i
箇
璽 冤 触鞘rsquoi躯螺蟹rsquos
L」圏1rdquo lb「b〕凹
図1 Ve yunifieUS電子顕微鏡像(新潟大学大学院国際感染医学講座山本達男教授提
供)長い鞭毛を持つらせん状のグラム陰性桿菌である
蕊
7
Vvunfieusの生化学的性状は表1の通りである Ornithine decarboxylase D-mannitol
fermentation sucrose fermentationは株により違いがみられるため通常の簡易同定キット
では判定できないこともある環境中にはindole production(一)の株も存在するこのため確
認にはcytotoxin-hemolysin等の遺伝子確認を併用する必要がある
Sucrose fermentation(+)株は TCBS寒天培地(ニッスイ)ではvbro ehoerae様の黄色コ
ロ=一となる
表1 trsquofvuniflcusの生化学性状好二二菌で3NaCI含有培地では良好に発育するが
8NaCl含有培地では発育がみられない乳糖を分解するがショ糖分解性については株に
よる違いがみられる
Kova6srsquos oxhase 十 gelatln hydrolysislsquo 十
hydorogen sulfide(TSI)一 esculin hydrolysis 十
indoleげPfoduction plusmn L-a「abimse fe「mentation 一motility 十 oe麗Obiose fermentation 十
一一一一一一一一一一一一r窒盾翌狽Einれutrient broth witb一
lactose feτmentation 十
0村aCl 一 SUCrose fermentation plusmn
3NaCi 十 ma量tose fe陥e耐ation 十
6NaC著 plusmn D-mamito暦fermentation plusmn
8NaC1 一 meiibiose femlentation 十
VogeSrProskauer一 trehalose fermenta髄on 十
一 一 一 一 「 一
撃usln deoarboxylase 十 一 一 一
c-xyfose fermentation 一 一 一 一 一 一 一 一 ゴ 一
ne窒奄獅撃獅dihydrolase 一
一
adonltol fermentation 一
ornith量ne decarboxylase plusmn dulsltol fermentation 一nitrate reduction 十 myo-inosit(刈fermentatioれ
一
urea hydrolys韮S一 D-sorbltol fefmenta{ion
一
ONPG test 十 sa髄ci月fermentatlon 十
8
1-970年にRoland(1)が非腸炎性の腸炎ビブVオ感染例〈下肢壊死とendotoxin sheGk)を
報告したこれがZ掘謝伽がヒトへ感染した最初の報告である1975年にFerれaれdezと
Pankey(2>はunnamed mar ine 1吻吻と呼んだ細菌による重篤な組織感染症3例を報告して
いるその後1976年にHoHisら(3)により血液中より分離同定された好塩性ビブリオ38例
が報告されたビブリオ属に属してもVbTIO parahaamytiasでも聯 a勧の傭とも具
なるビブリオであることを発見し乳酸分解性があることよりang(+Vlbr70と呼んだその後
1979年にFarmer(4)によりZvunificusと命名された Blakeら(5)が病症を敗血症型創傷
型に分類しKlont z(6)らが消化器症状を主体とする症例を追加した現在はM幽繍臨纒感
染症は敗血症型創傷型消化器型その他の4型に分類さ麗でいる
Vvcrlnfieus es染症は欧米においては創傷型の報告が多いのに対しアジアでは敗血症型
が多いこれは食習慣の違いや基礎疾患として多い肝機能障害の頻度の差によるとことが
大きいと考えられる
日本では1978年に河野(7>らが最初に報告して以来約200例の症例報告があ砿その半
数以上が北部九州での発症であるDしかしながら過去には東北地方でも発症しており地球
温暖化に伴って全国的に発生の危険性がある感染症であるまた日本での発生は6月から
11月に限られており最も鑑別を要するAレンサ球菌によるtexic sheok-ike syndretneが
冬季に多いこととは対照的である
ところで熊本県においてはほぼ毎年Zvelnlfieus lよる壊死性筋膜炎の患者が発生して
いたしかしながら1年間に1~2例と発生数が少なく予後不良で発生より数Rで死亡する
例が多いためにあまり注目されなかったところが2001年の6月~7月にかけて比較的
短期間に限られた地域においてZvulnifieus感染症が大量に発生し国内初のZ
yeXfiifias感染症の流行であった可能性が高いと考えられたそこで20G1年6月~7月にか
けて起こったy磁飛脚感梁症の流行の発生状溌を雨脚析しその流行のメカニズムを
明らかにすることを且的として本国感染症に関する疫学調査および環境調査を行った
9
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
8井上雄二小野友道「壊死性筋膜炎による潰瘍を治す」皮膚科診療プラクティス
15難治性皮膚潰瘍を治すスキル(宮地良樹監修)2003249-254文光堂(東京)
9井上雄二Vbrie vunlfeus感染症nfeetien and leehnoegy 20041315-16
4
3謝辞
本研究を行うにあたりご指導ご支援頂きました熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機
能病態学教室サ浩信教授熊本大学大学院医学薬学研究部侵襲制御医学教室木下順
弘教授ならびに前熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機能病態学教室小野友道名誉教
授に深く感謝いたしますまた研究のご支援を頂きました教室員一同の皆様および教室補
助員の皆様に心より感謝いたしますまた本研究をご指導ご支援いただきしました国立感
染症研究所感染精報センター松井珠乃研究員岡部信彦センター長に深く感謝いたします
さらに本研究にあたりご援助いただきました国立医薬品食品衛生研究所山本茂貴先生
には深く感謝いたします
また本研究を行うにあたり当初より環境研究のご支援をいただきました熊本保健環境科
学研究所宮坂次郎研究員甲木和子部長には厚く御礼申し上げますまた本研究に当り
様々な情報をお寄せ頂きました奄美中央病院古垣斉拡先生に厚くお礼申し上げます
5
4略語一覧
ALPatkaline phesphatase=アルカiJブオスファターゼ
ChE eholinesterase=コリンエステラーゼ
CPKcreatine phosphel《inaseクレアチンボスホキナーゼ
FDPfibr】n degrada ti匪憾掲tsフィブリン分解産物
GOT= glutarrite oxaloaGette transaminaseグルタミン酸オキサ回酢酸トランスアミナーゼ
GPT9tutamlG pyruvie trraRsamlnaseグルタミン酸ピルビン酸転移酵素
γ一GTPγ』一91utamyltransteraseγグルタミントランスフェラーゼ
欺htemaせonal un忙国際単位
LAPleugine amitTopeptidase=回イシンアミノペプチダーゼ
LDH= laetate dehydrase乳酸脱水素酵素
LIM lySine indol motrdquottyリジンインFldquo一一ル半流動
MPM fnest probabie fiumber一層確数
ONPG orthornitrephenyl一 BDン9alactepyranosidetオrsquoルソーニトロフェニールーβ一D一ガラクトピラノシド
PBS= phosphate butterect saline=リン酸緩衝生理食塩水
PCRpolymerase ehain reactierrポリメラーゼ連鎖反応
TCBS=掘losulfate citτate協e saccharosαチオ硫酸クエン酸胆汁ショ糖
τ鉱面p悔sar lτon=3糖鉄
VPViblia parahaemalytleuslsquo腸炎ビブリオrsquo
6
5研究の背景と目的
VyunlfiCUSはコレラ菌や腸炎ビブリオ菌と同じビブリオ属のグラム陰性菌であるらせん状
の桿菌で長い鞭毛を持つことが特徴であり(図1)その鞭毛を動かすことよりyunificusと命
名された好塩性菌で海水中特に汽水域に広く分布する一般的には病原性はないと考え
られるが稀に壊死性筋膜炎の原因菌となる場合がある
訓
b
4
唯u
臨サ
雛
も
嗣
)i
箇
璽 冤 触鞘rsquoi躯螺蟹rsquos
L」圏1rdquo lb「b〕凹
図1 Ve yunifieUS電子顕微鏡像(新潟大学大学院国際感染医学講座山本達男教授提
供)長い鞭毛を持つらせん状のグラム陰性桿菌である
蕊
7
Vvunfieusの生化学的性状は表1の通りである Ornithine decarboxylase D-mannitol
fermentation sucrose fermentationは株により違いがみられるため通常の簡易同定キット
では判定できないこともある環境中にはindole production(一)の株も存在するこのため確
認にはcytotoxin-hemolysin等の遺伝子確認を併用する必要がある
Sucrose fermentation(+)株は TCBS寒天培地(ニッスイ)ではvbro ehoerae様の黄色コ
ロ=一となる
表1 trsquofvuniflcusの生化学性状好二二菌で3NaCI含有培地では良好に発育するが
8NaCl含有培地では発育がみられない乳糖を分解するがショ糖分解性については株に
よる違いがみられる
Kova6srsquos oxhase 十 gelatln hydrolysislsquo 十
hydorogen sulfide(TSI)一 esculin hydrolysis 十
indoleげPfoduction plusmn L-a「abimse fe「mentation 一motility 十 oe麗Obiose fermentation 十
一一一一一一一一一一一一r窒盾翌狽Einれutrient broth witb一
lactose feτmentation 十
0村aCl 一 SUCrose fermentation plusmn
3NaCi 十 ma量tose fe陥e耐ation 十
6NaC著 plusmn D-mamito暦fermentation plusmn
8NaC1 一 meiibiose femlentation 十
VogeSrProskauer一 trehalose fermenta髄on 十
一 一 一 一 「 一
撃usln deoarboxylase 十 一 一 一
c-xyfose fermentation 一 一 一 一 一 一 一 一 ゴ 一
ne窒奄獅撃獅dihydrolase 一
一
adonltol fermentation 一
ornith量ne decarboxylase plusmn dulsltol fermentation 一nitrate reduction 十 myo-inosit(刈fermentatioれ
一
urea hydrolys韮S一 D-sorbltol fefmenta{ion
一
ONPG test 十 sa髄ci月fermentatlon 十
8
1-970年にRoland(1)が非腸炎性の腸炎ビブVオ感染例〈下肢壊死とendotoxin sheGk)を
報告したこれがZ掘謝伽がヒトへ感染した最初の報告である1975年にFerれaれdezと
Pankey(2>はunnamed mar ine 1吻吻と呼んだ細菌による重篤な組織感染症3例を報告して
いるその後1976年にHoHisら(3)により血液中より分離同定された好塩性ビブリオ38例
が報告されたビブリオ属に属してもVbTIO parahaamytiasでも聯 a勧の傭とも具
なるビブリオであることを発見し乳酸分解性があることよりang(+Vlbr70と呼んだその後
1979年にFarmer(4)によりZvunificusと命名された Blakeら(5)が病症を敗血症型創傷
型に分類しKlont z(6)らが消化器症状を主体とする症例を追加した現在はM幽繍臨纒感
染症は敗血症型創傷型消化器型その他の4型に分類さ麗でいる
Vvcrlnfieus es染症は欧米においては創傷型の報告が多いのに対しアジアでは敗血症型
が多いこれは食習慣の違いや基礎疾患として多い肝機能障害の頻度の差によるとことが
大きいと考えられる
日本では1978年に河野(7>らが最初に報告して以来約200例の症例報告があ砿その半
数以上が北部九州での発症であるDしかしながら過去には東北地方でも発症しており地球
温暖化に伴って全国的に発生の危険性がある感染症であるまた日本での発生は6月から
11月に限られており最も鑑別を要するAレンサ球菌によるtexic sheok-ike syndretneが
冬季に多いこととは対照的である
ところで熊本県においてはほぼ毎年Zvelnlfieus lよる壊死性筋膜炎の患者が発生して
いたしかしながら1年間に1~2例と発生数が少なく予後不良で発生より数Rで死亡する
例が多いためにあまり注目されなかったところが2001年の6月~7月にかけて比較的
短期間に限られた地域においてZvulnifieus感染症が大量に発生し国内初のZ
yeXfiifias感染症の流行であった可能性が高いと考えられたそこで20G1年6月~7月にか
けて起こったy磁飛脚感梁症の流行の発生状溌を雨脚析しその流行のメカニズムを
明らかにすることを且的として本国感染症に関する疫学調査および環境調査を行った
9
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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nfect Ds 1996 15 227-232
Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
54
25)
26)
27)
28)
29)
30)
31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
3謝辞
本研究を行うにあたりご指導ご支援頂きました熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機
能病態学教室サ浩信教授熊本大学大学院医学薬学研究部侵襲制御医学教室木下順
弘教授ならびに前熊本大学大学院医学薬学研究部皮膚機能病態学教室小野友道名誉教
授に深く感謝いたしますまた研究のご支援を頂きました教室員一同の皆様および教室補
助員の皆様に心より感謝いたしますまた本研究をご指導ご支援いただきしました国立感
染症研究所感染精報センター松井珠乃研究員岡部信彦センター長に深く感謝いたします
さらに本研究にあたりご援助いただきました国立医薬品食品衛生研究所山本茂貴先生
には深く感謝いたします
また本研究を行うにあたり当初より環境研究のご支援をいただきました熊本保健環境科
学研究所宮坂次郎研究員甲木和子部長には厚く御礼申し上げますまた本研究に当り
様々な情報をお寄せ頂きました奄美中央病院古垣斉拡先生に厚くお礼申し上げます
5
4略語一覧
ALPatkaline phesphatase=アルカiJブオスファターゼ
ChE eholinesterase=コリンエステラーゼ
CPKcreatine phosphel《inaseクレアチンボスホキナーゼ
FDPfibr】n degrada ti匪憾掲tsフィブリン分解産物
GOT= glutarrite oxaloaGette transaminaseグルタミン酸オキサ回酢酸トランスアミナーゼ
GPT9tutamlG pyruvie trraRsamlnaseグルタミン酸ピルビン酸転移酵素
γ一GTPγ』一91utamyltransteraseγグルタミントランスフェラーゼ
欺htemaせonal un忙国際単位
LAPleugine amitTopeptidase=回イシンアミノペプチダーゼ
LDH= laetate dehydrase乳酸脱水素酵素
LIM lySine indol motrdquottyリジンインFldquo一一ル半流動
MPM fnest probabie fiumber一層確数
ONPG orthornitrephenyl一 BDン9alactepyranosidetオrsquoルソーニトロフェニールーβ一D一ガラクトピラノシド
PBS= phosphate butterect saline=リン酸緩衝生理食塩水
PCRpolymerase ehain reactierrポリメラーゼ連鎖反応
TCBS=掘losulfate citτate協e saccharosαチオ硫酸クエン酸胆汁ショ糖
τ鉱面p悔sar lτon=3糖鉄
VPViblia parahaemalytleuslsquo腸炎ビブリオrsquo
6
5研究の背景と目的
VyunlfiCUSはコレラ菌や腸炎ビブリオ菌と同じビブリオ属のグラム陰性菌であるらせん状
の桿菌で長い鞭毛を持つことが特徴であり(図1)その鞭毛を動かすことよりyunificusと命
名された好塩性菌で海水中特に汽水域に広く分布する一般的には病原性はないと考え
られるが稀に壊死性筋膜炎の原因菌となる場合がある
訓
b
4
唯u
臨サ
雛
も
嗣
)i
箇
璽 冤 触鞘rsquoi躯螺蟹rsquos
L」圏1rdquo lb「b〕凹
図1 Ve yunifieUS電子顕微鏡像(新潟大学大学院国際感染医学講座山本達男教授提
供)長い鞭毛を持つらせん状のグラム陰性桿菌である
蕊
7
Vvunfieusの生化学的性状は表1の通りである Ornithine decarboxylase D-mannitol
fermentation sucrose fermentationは株により違いがみられるため通常の簡易同定キット
では判定できないこともある環境中にはindole production(一)の株も存在するこのため確
認にはcytotoxin-hemolysin等の遺伝子確認を併用する必要がある
Sucrose fermentation(+)株は TCBS寒天培地(ニッスイ)ではvbro ehoerae様の黄色コ
ロ=一となる
表1 trsquofvuniflcusの生化学性状好二二菌で3NaCI含有培地では良好に発育するが
8NaCl含有培地では発育がみられない乳糖を分解するがショ糖分解性については株に
よる違いがみられる
Kova6srsquos oxhase 十 gelatln hydrolysislsquo 十
hydorogen sulfide(TSI)一 esculin hydrolysis 十
indoleげPfoduction plusmn L-a「abimse fe「mentation 一motility 十 oe麗Obiose fermentation 十
一一一一一一一一一一一一r窒盾翌狽Einれutrient broth witb一
lactose feτmentation 十
0村aCl 一 SUCrose fermentation plusmn
3NaCi 十 ma量tose fe陥e耐ation 十
6NaC著 plusmn D-mamito暦fermentation plusmn
8NaC1 一 meiibiose femlentation 十
VogeSrProskauer一 trehalose fermenta髄on 十
一 一 一 一 「 一
撃usln deoarboxylase 十 一 一 一
c-xyfose fermentation 一 一 一 一 一 一 一 一 ゴ 一
ne窒奄獅撃獅dihydrolase 一
一
adonltol fermentation 一
ornith量ne decarboxylase plusmn dulsltol fermentation 一nitrate reduction 十 myo-inosit(刈fermentatioれ
一
urea hydrolys韮S一 D-sorbltol fefmenta{ion
一
ONPG test 十 sa髄ci月fermentatlon 十
8
1-970年にRoland(1)が非腸炎性の腸炎ビブVオ感染例〈下肢壊死とendotoxin sheGk)を
報告したこれがZ掘謝伽がヒトへ感染した最初の報告である1975年にFerれaれdezと
Pankey(2>はunnamed mar ine 1吻吻と呼んだ細菌による重篤な組織感染症3例を報告して
いるその後1976年にHoHisら(3)により血液中より分離同定された好塩性ビブリオ38例
が報告されたビブリオ属に属してもVbTIO parahaamytiasでも聯 a勧の傭とも具
なるビブリオであることを発見し乳酸分解性があることよりang(+Vlbr70と呼んだその後
1979年にFarmer(4)によりZvunificusと命名された Blakeら(5)が病症を敗血症型創傷
型に分類しKlont z(6)らが消化器症状を主体とする症例を追加した現在はM幽繍臨纒感
染症は敗血症型創傷型消化器型その他の4型に分類さ麗でいる
Vvcrlnfieus es染症は欧米においては創傷型の報告が多いのに対しアジアでは敗血症型
が多いこれは食習慣の違いや基礎疾患として多い肝機能障害の頻度の差によるとことが
大きいと考えられる
日本では1978年に河野(7>らが最初に報告して以来約200例の症例報告があ砿その半
数以上が北部九州での発症であるDしかしながら過去には東北地方でも発症しており地球
温暖化に伴って全国的に発生の危険性がある感染症であるまた日本での発生は6月から
11月に限られており最も鑑別を要するAレンサ球菌によるtexic sheok-ike syndretneが
冬季に多いこととは対照的である
ところで熊本県においてはほぼ毎年Zvelnlfieus lよる壊死性筋膜炎の患者が発生して
いたしかしながら1年間に1~2例と発生数が少なく予後不良で発生より数Rで死亡する
例が多いためにあまり注目されなかったところが2001年の6月~7月にかけて比較的
短期間に限られた地域においてZvulnifieus感染症が大量に発生し国内初のZ
yeXfiifias感染症の流行であった可能性が高いと考えられたそこで20G1年6月~7月にか
けて起こったy磁飛脚感梁症の流行の発生状溌を雨脚析しその流行のメカニズムを
明らかにすることを且的として本国感染症に関する疫学調査および環境調査を行った
9
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
4略語一覧
ALPatkaline phesphatase=アルカiJブオスファターゼ
ChE eholinesterase=コリンエステラーゼ
CPKcreatine phosphel《inaseクレアチンボスホキナーゼ
FDPfibr】n degrada ti匪憾掲tsフィブリン分解産物
GOT= glutarrite oxaloaGette transaminaseグルタミン酸オキサ回酢酸トランスアミナーゼ
GPT9tutamlG pyruvie trraRsamlnaseグルタミン酸ピルビン酸転移酵素
γ一GTPγ』一91utamyltransteraseγグルタミントランスフェラーゼ
欺htemaせonal un忙国際単位
LAPleugine amitTopeptidase=回イシンアミノペプチダーゼ
LDH= laetate dehydrase乳酸脱水素酵素
LIM lySine indol motrdquottyリジンインFldquo一一ル半流動
MPM fnest probabie fiumber一層確数
ONPG orthornitrephenyl一 BDン9alactepyranosidetオrsquoルソーニトロフェニールーβ一D一ガラクトピラノシド
PBS= phosphate butterect saline=リン酸緩衝生理食塩水
PCRpolymerase ehain reactierrポリメラーゼ連鎖反応
TCBS=掘losulfate citτate協e saccharosαチオ硫酸クエン酸胆汁ショ糖
τ鉱面p悔sar lτon=3糖鉄
VPViblia parahaemalytleuslsquo腸炎ビブリオrsquo
6
5研究の背景と目的
VyunlfiCUSはコレラ菌や腸炎ビブリオ菌と同じビブリオ属のグラム陰性菌であるらせん状
の桿菌で長い鞭毛を持つことが特徴であり(図1)その鞭毛を動かすことよりyunificusと命
名された好塩性菌で海水中特に汽水域に広く分布する一般的には病原性はないと考え
られるが稀に壊死性筋膜炎の原因菌となる場合がある
訓
b
4
唯u
臨サ
雛
も
嗣
)i
箇
璽 冤 触鞘rsquoi躯螺蟹rsquos
L」圏1rdquo lb「b〕凹
図1 Ve yunifieUS電子顕微鏡像(新潟大学大学院国際感染医学講座山本達男教授提
供)長い鞭毛を持つらせん状のグラム陰性桿菌である
蕊
7
Vvunfieusの生化学的性状は表1の通りである Ornithine decarboxylase D-mannitol
fermentation sucrose fermentationは株により違いがみられるため通常の簡易同定キット
では判定できないこともある環境中にはindole production(一)の株も存在するこのため確
認にはcytotoxin-hemolysin等の遺伝子確認を併用する必要がある
Sucrose fermentation(+)株は TCBS寒天培地(ニッスイ)ではvbro ehoerae様の黄色コ
ロ=一となる
表1 trsquofvuniflcusの生化学性状好二二菌で3NaCI含有培地では良好に発育するが
8NaCl含有培地では発育がみられない乳糖を分解するがショ糖分解性については株に
よる違いがみられる
Kova6srsquos oxhase 十 gelatln hydrolysislsquo 十
hydorogen sulfide(TSI)一 esculin hydrolysis 十
indoleげPfoduction plusmn L-a「abimse fe「mentation 一motility 十 oe麗Obiose fermentation 十
一一一一一一一一一一一一r窒盾翌狽Einれutrient broth witb一
lactose feτmentation 十
0村aCl 一 SUCrose fermentation plusmn
3NaCi 十 ma量tose fe陥e耐ation 十
6NaC著 plusmn D-mamito暦fermentation plusmn
8NaC1 一 meiibiose femlentation 十
VogeSrProskauer一 trehalose fermenta髄on 十
一 一 一 一 「 一
撃usln deoarboxylase 十 一 一 一
c-xyfose fermentation 一 一 一 一 一 一 一 一 ゴ 一
ne窒奄獅撃獅dihydrolase 一
一
adonltol fermentation 一
ornith量ne decarboxylase plusmn dulsltol fermentation 一nitrate reduction 十 myo-inosit(刈fermentatioれ
一
urea hydrolys韮S一 D-sorbltol fefmenta{ion
一
ONPG test 十 sa髄ci月fermentatlon 十
8
1-970年にRoland(1)が非腸炎性の腸炎ビブVオ感染例〈下肢壊死とendotoxin sheGk)を
報告したこれがZ掘謝伽がヒトへ感染した最初の報告である1975年にFerれaれdezと
Pankey(2>はunnamed mar ine 1吻吻と呼んだ細菌による重篤な組織感染症3例を報告して
いるその後1976年にHoHisら(3)により血液中より分離同定された好塩性ビブリオ38例
が報告されたビブリオ属に属してもVbTIO parahaamytiasでも聯 a勧の傭とも具
なるビブリオであることを発見し乳酸分解性があることよりang(+Vlbr70と呼んだその後
1979年にFarmer(4)によりZvunificusと命名された Blakeら(5)が病症を敗血症型創傷
型に分類しKlont z(6)らが消化器症状を主体とする症例を追加した現在はM幽繍臨纒感
染症は敗血症型創傷型消化器型その他の4型に分類さ麗でいる
Vvcrlnfieus es染症は欧米においては創傷型の報告が多いのに対しアジアでは敗血症型
が多いこれは食習慣の違いや基礎疾患として多い肝機能障害の頻度の差によるとことが
大きいと考えられる
日本では1978年に河野(7>らが最初に報告して以来約200例の症例報告があ砿その半
数以上が北部九州での発症であるDしかしながら過去には東北地方でも発症しており地球
温暖化に伴って全国的に発生の危険性がある感染症であるまた日本での発生は6月から
11月に限られており最も鑑別を要するAレンサ球菌によるtexic sheok-ike syndretneが
冬季に多いこととは対照的である
ところで熊本県においてはほぼ毎年Zvelnlfieus lよる壊死性筋膜炎の患者が発生して
いたしかしながら1年間に1~2例と発生数が少なく予後不良で発生より数Rで死亡する
例が多いためにあまり注目されなかったところが2001年の6月~7月にかけて比較的
短期間に限られた地域においてZvulnifieus感染症が大量に発生し国内初のZ
yeXfiifias感染症の流行であった可能性が高いと考えられたそこで20G1年6月~7月にか
けて起こったy磁飛脚感梁症の流行の発生状溌を雨脚析しその流行のメカニズムを
明らかにすることを且的として本国感染症に関する疫学調査および環境調査を行った
9
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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identification of 吻吻 vunfcus in artificially contaminated oystersノ11
En vron Mlcroblo1991 57 707-711
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)9
10)
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
5研究の背景と目的
VyunlfiCUSはコレラ菌や腸炎ビブリオ菌と同じビブリオ属のグラム陰性菌であるらせん状
の桿菌で長い鞭毛を持つことが特徴であり(図1)その鞭毛を動かすことよりyunificusと命
名された好塩性菌で海水中特に汽水域に広く分布する一般的には病原性はないと考え
られるが稀に壊死性筋膜炎の原因菌となる場合がある
訓
b
4
唯u
臨サ
雛
も
嗣
)i
箇
璽 冤 触鞘rsquoi躯螺蟹rsquos
L」圏1rdquo lb「b〕凹
図1 Ve yunifieUS電子顕微鏡像(新潟大学大学院国際感染医学講座山本達男教授提
供)長い鞭毛を持つらせん状のグラム陰性桿菌である
蕊
7
Vvunfieusの生化学的性状は表1の通りである Ornithine decarboxylase D-mannitol
fermentation sucrose fermentationは株により違いがみられるため通常の簡易同定キット
では判定できないこともある環境中にはindole production(一)の株も存在するこのため確
認にはcytotoxin-hemolysin等の遺伝子確認を併用する必要がある
Sucrose fermentation(+)株は TCBS寒天培地(ニッスイ)ではvbro ehoerae様の黄色コ
ロ=一となる
表1 trsquofvuniflcusの生化学性状好二二菌で3NaCI含有培地では良好に発育するが
8NaCl含有培地では発育がみられない乳糖を分解するがショ糖分解性については株に
よる違いがみられる
Kova6srsquos oxhase 十 gelatln hydrolysislsquo 十
hydorogen sulfide(TSI)一 esculin hydrolysis 十
indoleげPfoduction plusmn L-a「abimse fe「mentation 一motility 十 oe麗Obiose fermentation 十
一一一一一一一一一一一一r窒盾翌狽Einれutrient broth witb一
lactose feτmentation 十
0村aCl 一 SUCrose fermentation plusmn
3NaCi 十 ma量tose fe陥e耐ation 十
6NaC著 plusmn D-mamito暦fermentation plusmn
8NaC1 一 meiibiose femlentation 十
VogeSrProskauer一 trehalose fermenta髄on 十
一 一 一 一 「 一
撃usln deoarboxylase 十 一 一 一
c-xyfose fermentation 一 一 一 一 一 一 一 一 ゴ 一
ne窒奄獅撃獅dihydrolase 一
一
adonltol fermentation 一
ornith量ne decarboxylase plusmn dulsltol fermentation 一nitrate reduction 十 myo-inosit(刈fermentatioれ
一
urea hydrolys韮S一 D-sorbltol fefmenta{ion
一
ONPG test 十 sa髄ci月fermentatlon 十
8
1-970年にRoland(1)が非腸炎性の腸炎ビブVオ感染例〈下肢壊死とendotoxin sheGk)を
報告したこれがZ掘謝伽がヒトへ感染した最初の報告である1975年にFerれaれdezと
Pankey(2>はunnamed mar ine 1吻吻と呼んだ細菌による重篤な組織感染症3例を報告して
いるその後1976年にHoHisら(3)により血液中より分離同定された好塩性ビブリオ38例
が報告されたビブリオ属に属してもVbTIO parahaamytiasでも聯 a勧の傭とも具
なるビブリオであることを発見し乳酸分解性があることよりang(+Vlbr70と呼んだその後
1979年にFarmer(4)によりZvunificusと命名された Blakeら(5)が病症を敗血症型創傷
型に分類しKlont z(6)らが消化器症状を主体とする症例を追加した現在はM幽繍臨纒感
染症は敗血症型創傷型消化器型その他の4型に分類さ麗でいる
Vvcrlnfieus es染症は欧米においては創傷型の報告が多いのに対しアジアでは敗血症型
が多いこれは食習慣の違いや基礎疾患として多い肝機能障害の頻度の差によるとことが
大きいと考えられる
日本では1978年に河野(7>らが最初に報告して以来約200例の症例報告があ砿その半
数以上が北部九州での発症であるDしかしながら過去には東北地方でも発症しており地球
温暖化に伴って全国的に発生の危険性がある感染症であるまた日本での発生は6月から
11月に限られており最も鑑別を要するAレンサ球菌によるtexic sheok-ike syndretneが
冬季に多いこととは対照的である
ところで熊本県においてはほぼ毎年Zvelnlfieus lよる壊死性筋膜炎の患者が発生して
いたしかしながら1年間に1~2例と発生数が少なく予後不良で発生より数Rで死亡する
例が多いためにあまり注目されなかったところが2001年の6月~7月にかけて比較的
短期間に限られた地域においてZvulnifieus感染症が大量に発生し国内初のZ
yeXfiifias感染症の流行であった可能性が高いと考えられたそこで20G1年6月~7月にか
けて起こったy磁飛脚感梁症の流行の発生状溌を雨脚析しその流行のメカニズムを
明らかにすることを且的として本国感染症に関する疫学調査および環境調査を行った
9
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
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4 5 6 7
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R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
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R0
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P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
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1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
Vvunfieusの生化学的性状は表1の通りである Ornithine decarboxylase D-mannitol
fermentation sucrose fermentationは株により違いがみられるため通常の簡易同定キット
では判定できないこともある環境中にはindole production(一)の株も存在するこのため確
認にはcytotoxin-hemolysin等の遺伝子確認を併用する必要がある
Sucrose fermentation(+)株は TCBS寒天培地(ニッスイ)ではvbro ehoerae様の黄色コ
ロ=一となる
表1 trsquofvuniflcusの生化学性状好二二菌で3NaCI含有培地では良好に発育するが
8NaCl含有培地では発育がみられない乳糖を分解するがショ糖分解性については株に
よる違いがみられる
Kova6srsquos oxhase 十 gelatln hydrolysislsquo 十
hydorogen sulfide(TSI)一 esculin hydrolysis 十
indoleげPfoduction plusmn L-a「abimse fe「mentation 一motility 十 oe麗Obiose fermentation 十
一一一一一一一一一一一一r窒盾翌狽Einれutrient broth witb一
lactose feτmentation 十
0村aCl 一 SUCrose fermentation plusmn
3NaCi 十 ma量tose fe陥e耐ation 十
6NaC著 plusmn D-mamito暦fermentation plusmn
8NaC1 一 meiibiose femlentation 十
VogeSrProskauer一 trehalose fermenta髄on 十
一 一 一 一 「 一
撃usln deoarboxylase 十 一 一 一
c-xyfose fermentation 一 一 一 一 一 一 一 一 ゴ 一
ne窒奄獅撃獅dihydrolase 一
一
adonltol fermentation 一
ornith量ne decarboxylase plusmn dulsltol fermentation 一nitrate reduction 十 myo-inosit(刈fermentatioれ
一
urea hydrolys韮S一 D-sorbltol fefmenta{ion
一
ONPG test 十 sa髄ci月fermentatlon 十
8
1-970年にRoland(1)が非腸炎性の腸炎ビブVオ感染例〈下肢壊死とendotoxin sheGk)を
報告したこれがZ掘謝伽がヒトへ感染した最初の報告である1975年にFerれaれdezと
Pankey(2>はunnamed mar ine 1吻吻と呼んだ細菌による重篤な組織感染症3例を報告して
いるその後1976年にHoHisら(3)により血液中より分離同定された好塩性ビブリオ38例
が報告されたビブリオ属に属してもVbTIO parahaamytiasでも聯 a勧の傭とも具
なるビブリオであることを発見し乳酸分解性があることよりang(+Vlbr70と呼んだその後
1979年にFarmer(4)によりZvunificusと命名された Blakeら(5)が病症を敗血症型創傷
型に分類しKlont z(6)らが消化器症状を主体とする症例を追加した現在はM幽繍臨纒感
染症は敗血症型創傷型消化器型その他の4型に分類さ麗でいる
Vvcrlnfieus es染症は欧米においては創傷型の報告が多いのに対しアジアでは敗血症型
が多いこれは食習慣の違いや基礎疾患として多い肝機能障害の頻度の差によるとことが
大きいと考えられる
日本では1978年に河野(7>らが最初に報告して以来約200例の症例報告があ砿その半
数以上が北部九州での発症であるDしかしながら過去には東北地方でも発症しており地球
温暖化に伴って全国的に発生の危険性がある感染症であるまた日本での発生は6月から
11月に限られており最も鑑別を要するAレンサ球菌によるtexic sheok-ike syndretneが
冬季に多いこととは対照的である
ところで熊本県においてはほぼ毎年Zvelnlfieus lよる壊死性筋膜炎の患者が発生して
いたしかしながら1年間に1~2例と発生数が少なく予後不良で発生より数Rで死亡する
例が多いためにあまり注目されなかったところが2001年の6月~7月にかけて比較的
短期間に限られた地域においてZvulnifieus感染症が大量に発生し国内初のZ
yeXfiifias感染症の流行であった可能性が高いと考えられたそこで20G1年6月~7月にか
けて起こったy磁飛脚感梁症の流行の発生状溌を雨脚析しその流行のメカニズムを
明らかにすることを且的として本国感染症に関する疫学調査および環境調査を行った
9
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
1-970年にRoland(1)が非腸炎性の腸炎ビブVオ感染例〈下肢壊死とendotoxin sheGk)を
報告したこれがZ掘謝伽がヒトへ感染した最初の報告である1975年にFerれaれdezと
Pankey(2>はunnamed mar ine 1吻吻と呼んだ細菌による重篤な組織感染症3例を報告して
いるその後1976年にHoHisら(3)により血液中より分離同定された好塩性ビブリオ38例
が報告されたビブリオ属に属してもVbTIO parahaamytiasでも聯 a勧の傭とも具
なるビブリオであることを発見し乳酸分解性があることよりang(+Vlbr70と呼んだその後
1979年にFarmer(4)によりZvunificusと命名された Blakeら(5)が病症を敗血症型創傷
型に分類しKlont z(6)らが消化器症状を主体とする症例を追加した現在はM幽繍臨纒感
染症は敗血症型創傷型消化器型その他の4型に分類さ麗でいる
Vvcrlnfieus es染症は欧米においては創傷型の報告が多いのに対しアジアでは敗血症型
が多いこれは食習慣の違いや基礎疾患として多い肝機能障害の頻度の差によるとことが
大きいと考えられる
日本では1978年に河野(7>らが最初に報告して以来約200例の症例報告があ砿その半
数以上が北部九州での発症であるDしかしながら過去には東北地方でも発症しており地球
温暖化に伴って全国的に発生の危険性がある感染症であるまた日本での発生は6月から
11月に限られており最も鑑別を要するAレンサ球菌によるtexic sheok-ike syndretneが
冬季に多いこととは対照的である
ところで熊本県においてはほぼ毎年Zvelnlfieus lよる壊死性筋膜炎の患者が発生して
いたしかしながら1年間に1~2例と発生数が少なく予後不良で発生より数Rで死亡する
例が多いためにあまり注目されなかったところが2001年の6月~7月にかけて比較的
短期間に限られた地域においてZvulnifieus感染症が大量に発生し国内初のZ
yeXfiifias感染症の流行であった可能性が高いと考えられたそこで20G1年6月~7月にか
けて起こったy磁飛脚感梁症の流行の発生状溌を雨脚析しその流行のメカニズムを
明らかにすることを且的として本国感染症に関する疫学調査および環境調査を行った
9
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
6方法
6-1200uarr年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのMvunificus感染症集団発生
の調査
熊本大学医学部皮膚科教室熊本県および国立感染症研究所の3施設で共伺講査を行っ
た2001年6月~7月にかけてPf VLthlfiaus感染症の治療を行った熊本大学医学部附属病
院熊本中央病院熊本済生会病院熊本労災病院玉名申央病院から患者の情報を収集
し解析したまた熊本県内の醗酵険所よリ絵革の発生状況についての情報を得たさらに
2001年6月~7月にかけての気温降水量の情報を熊本気象台より1八代海の海水温度
海水塩分濃度の情報を熊本県水産砺究所より得た
6-2κ働幅繍感染症の疫学調査
1998年から2003年までの5年閻におけるVvunificus感染症発生状況に関する全国調
査を行った皮膚科専門医施設および高度救急救命センターを含む全国の1683の医療施設
に対してアンケート謂査(郵送}を行い患者の構報を取集分析したこの場合選択した病院
は複数i診療秘を有し入院施設と整えた一次救急に対応できる総合病院を選択した
アンケー5調査
一次アンケート=
期間=2003年1月~12月
質開内容1998年より2003年まで仁κ属協顔跳感染症患者を経験したかどうかおよび
その患者の発生年性と年齢を調査した
回収率=1683施設申 1045施設よサ回答を得た回収鍛ま617であった
二次アンケート
期間=2003年3月~12月
一次アンケートにおいて患者を経験したことがあると回答した施設に関しては下記の二
次アンケートを送付して回答を得たσDagger07人の患者中94人の情報が得られたcr
lO
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
なお当アンケート調査を行った2003年当時熊本大学における臨床研究のための倫理委
員会未整備のために煽併ldquoo⑤籍se蒋tを含んだ患者および家族の承諾は取得していない
アンケートにご協力いただいた主治医の判断により患者構報を提供していただいた
以下に実際送付した二次アンケート用紙を記載する
rビブリオバルニフィカス感染症講査」その1
①ビブリオバルニフィカス感染症曝者さんi例につきi枚(裏表両面〉の調査用紙を記入くだ
さい
②該当するロにレでチェック( )及び に記入してください
③発症前の患者さんの状況について不明の場合はかかりつけの医叉は紹介元の医療機関
をお知らせ下さOQ一
fビブリオバル=フィカス感染症1発症後の所見についてお尋ねします
τ患者名性溺 イニシャル(姓 )(名 )ロ男性 ロ女性
2生年月日 ロ明治ロ大正ロ昭和( 〉年( )月( 》
及び年齢
3患者住所 都道 市 町(市町村名まで記入) 府県 区郡 村
4病型 ロ敗塩症型(経口感染の敗血症例)
創部感染症(創部感染によるもの)
口 急性胃腸炎型(経口感染で照照器症状のみで敗血症のない)
ロその他5発症日時と 平成( )年( )月( )日( )時ごろ
始発症状 ロ発熱ロ腹痛下露痛(部位 )
ロ他( )
6初診日 平成( )年( )月( 〉日( 〉時ごろ
7診断確定日 平成( )年( )月( )圓
細菌検出体( 〉
8基礎疾患 ロ特になし ロ慢性肝炎 ロ肝硬変 ロ肝癌(原発生転移
性) ロ糖尿病
ロその他( )ロ不明
うち肝疾患の ロ肝炎ウイルス性(ロB型 ロG型 ロ非B非C型) ロアルコー
原因 ル性ロその他( 〉口不明
II
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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epidemiologic findings in seventy patientsノA7lcadOermato199124=
397-403
Collier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermato
7her 2002 15 1-9
Wickboldt LG Sanders CV Vlbrlo vunlfleus infection-case report and update
since 1970一lsquoノノ響7l cadDenato19839=243-251
Chuang YC Yuan CY Liu CY et aL Vibrlo vuneus infection in Taiwan report of
28cases and review of olinical manifestations and treatment C伽7feetang7s
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Hsueh PR Lin CY Tang HJ et al吻ノ〕わvunficus in Taiwan Emerg7fectang)is
2004 1 O 1 363-1 368
53
17)
18)
19)
20)
21)
22)
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Chan TYK」レfbrlo vu7Zies infections in Asia=an overvier Soカheastlsalsquoノ
lrop Med Heath 1995 26 461-465
Joy耐GM Gomersall CD Lyon DJ Severe necrotizing fasciitis of the extremities
Gaused by vibronaceag experience of a Hong Kong tertiary hospital Hong Kong
Medlsquoノ1999563-68
Maxwell EL Maxwell BC Pearson SR et aL A Gase of vlbrio vunifieus
septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
epidemiology of vbrlo vu7faus infections in Denmark Eurlsquoノθ伽Merobo
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Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
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Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
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Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
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25)
26)
27)
28)
29)
30)
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Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
9症状
le初診時 の璽症度
科初診時の肝疾
患の重症度
12初診時の 血液生化学
髄採取日く )月( )日
13治療抗生剤
ロ有卦無
14治療外科処置
ロ有ロ無
15患者転帰
口発熱 口腹痛 口嘔吐 口下痢 口血憂ロ瘡痛(部位 ) ロ皮膚症状(部位
ロショック Uその他()〉
初診時の皮膚症状範囲体表のおよそ( )
初診時の出壷傾向 ロ有( ) ロ無 ロ不明初診時のショック(循環不全〉合併 ロ有 ロ無 ロ不明
脳症状 ロない ロ軽度 ロ時々昏睡
腹水 ロない ロ軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdl) 巳20未満 ロ20~30 [130超
アルブミン(阻g掴) ロ35超 ロ28~35 ロ28未満
プロトロンビン活性値(》 ロ70超 ロ4~70 40未満
プ回ト回ンビン丁丁 40秒以下の延 4G-60秒の延
u60秒以上の延
食道静脈瘤 三三 ロ無 ロ不明
食道静脈瘤の破裂 ロ有 三無
白血球数 赤血球数 ヘモグ回ピン
ヘマトクリット
FDP血小板数 プロトロンビン時闇
フィブりン
総蛋白 アルブミン
チモール混濁試験(TTT)
GOT G再 LDH
アンチト回ンビンlll
総ビリルビン
硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)
AtP LAP r-GTP ChE総コレステロール 血中アンモニア 血清鉄 GPKヘモグ回ビンAlc エンドトキシン
く
く
名ろ名ろ名ろ
剤ご剤ご剤ご
薬跨薬時薬時
)投与開始圓時( 〉月(
)投与開始日時( )月(
)投与開始日時( )月(
)憎く
)日(
)日(
)
)¥ノ
初回デブリドマン施行日時 ( )月( )日( )時ごろ
初回患肢切断術施行日時 ( )月( 〉日( )時ごろ
( ) 施行日( )月( 〉日( )時ごろ一
瞬生存 ロ死亡 平成( )年( )月く )日
12
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
「ビブリオバルニフィカス感染症調査」 その2
16飲酒歴
17発症10日以内 の海水汽水 への創暴露有無ロ不明
18発症前3日以 内の海産物の
生食
[i 画面 無
ロ 不明
期間( )年から(
口ほとんど毎日
清酒換算(
ロ機会飲酒
)年まで
)合
清酒1合に裾当する飲酒量
ビール(大)1本
ワイン2杯
焼酎コップ1杯
ウイスキーダブ
ル1杯ウイスキーシン
グル2杯平成( )年( )月( )日( )時ごろ
場所
同行者 ロ有 無
平成( )年( )月( )圓( )時ごろ
推定食材( )
食材の入手丁丁自家採取 ロ店で購入 ロ不明保管状況( )調理法 ロ生食(刺身など〉 憎憎加熱加工(醤油漬みど漬な
ど) ロ不明
一緒に食べた人 轟轟 ロ有( )ロ不明
蔚年の6~9月に同じ物を食べましたか
ロ食べた ロ食べない ロ不明
「ビブリオバルニフィカス感染癌発症前の基礎疾患についてお尋ねます
19かかりつけ医
不明の場合は紹
介元の医療機関を記入ください
20肝疾患の既往 (診断日)
21発産前の肝疾 患の重症度
所(住
)病院医院 主治医( )先生
電話( )ファックス( 〉
ロ急性肝炎
ロ慢性肝炎
丁丁硬変
ロその他(内容=
ロ昭和ロ平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
口昭和口平成( )年(
ロ昭和ロ平成( )年(
)
月月月月
)ノ))
脳症状 ロない 軽度 ロ時々昏睡
腹水 ない 軽度 ロ中等度総ビリルビン(mgdD ロ20未満 20~30 ロ30超
アルブミン(ノdl) U35超 ロ28~35 {]28未満
プ回トロンビン活性値() ロ70超 ロ4一70 ロ40未満
プロト回ンビン時闘 [14e一秒以下の延ロ40-60秒の延
6O秒以上の延食道静脈瘤 画論 ロ無 昼不明
食道静脈瘤の破裂rsquo 憎憎 ロ無
13
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
白血球数 赤血球数 ヘモグロビン ヘマトクリッ
g 血小板数 プ回トロンビン時閣 FDP22発症前のD血液生化学検査
フ取日i )月( 〉日
フィブリン アンチト回ンビン辮 一 一
穀`白 アルブミン 総ビリルビン 硫酸亜鉛混濁試験(Zττ>
fOτ
チモール混濁試験くTTT)
GPT LDH`LP 1 AP γ由Grsquo「P ChE 一
鴻Rレステロール 血中アンモニア 血清鉄 CPK
23肝疾患治療歴 (D 無
i2) 有( )
24糖尿病の 治療歴
(3) 無
i4) 有=(ロインシュリンロ経口薬ロ食事運動量法のみ)
25鉄剤投与歴 発症1ケ月以内に ロ無 ロ有(ロ経ロ ロ静注)
ロ不明
26その他
14
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
6-3熊本県におけるVvulrdquoifievs感染症の集計
熊本県におけるXVUnificas感染症患者の情報を学会報告および以下の主な病院主治
医より聞き取り講査によって得た
【情報を得た病院1
熊本大学附属病院国立熊本病院熊本市民病院熊本中央病院熊本済生会病院熊本
赤十字病院大牟田天領病院荒尾市民病院公立玉名中央病院国立熊本南病院天草
申央病院天草地域医療センター上天草総合病院八代総合病院熊本労災病院水俣市
立総合医療センター
15
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
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2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
6-4有明海八代海における環境中のMyunthicusについて
1)2004年5月から12月にかけて河川の影響を受けやすい汽水域の海域(菊池川河口
α図2)と河川の影響を殆ど受けない海域(有明町沿岸β図2)で海水と海泥を採取しy
vulnificusのMPN値(最確値後述)を出した
2)有明海八代海天草地方の25地点(図2A-Y)において2003年と2004年の同時期
に環境調査と海水採取を行い海水中のMPN値を算出し採取時期の降水量を調査した(熊
本気象台より)
添謎
が遜〆鱗
嫉聴ダ懸
図2海水および海泥採取地点α=菊池川河口β=有明町沿岸A-Y=海水採取地点
α地点は菊池川の河川水の影響を受けやすくβ地点は河川水の影響をほとんど受けない
A-Yについては海水浴場での海水摂取を行った
16
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
海水については1~15mの水深の海水を試料とした海水試料は10 mlを2倍濃度ア
ルカリ性ペプトン水10 mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mlの3本に
摂取し以下10-4倍までPBSで10段階希釈したその各1耐をアルカリ性ペプトン水10 m
婁に接種し35plusmn1でi8plusmn2時間培養した混濁がみら劇た培養液から1白金耳をクロモア
ガービブリオ寒天培地に塗抹し 35plusmn1Cで 18plusmn2時闘培養した
Vvunifausと推定されるコロニーを生化学性状試験(oxidase2NaCl加LIM2NaCl
加VP半流動培地23810塩分濃度における発育試験)及びHitl(8)らの
cytetexin-hemotysln遺伝子の確認により同定し M vulnlfieus陽性本数を最確数表にあては
めて100m陣の最確数(most prCbabie number MPN一値)を算出した
海泥は500gを採取ストマッカー用嚢に入れ密封し検体採取地の地温に近い温度で搬
送した袋ごと海泥を手で揉んで均一にし25gをシャーレに薄く広げて風袋ごと秤量した後
1102時悶乾燥した後デシケータ内に40分放置後評量して間隙水を計算した求めた聞
隙水の9倍量のP8Sを加えてte倍希釈試料としこの10 mlを2倍濃度アルカリ性ペプト
ン水le mlの3本に1耐を規定濃度アルカリ性ペプトン水10 mtの3本に接種し以下上
記に準じてκ磁繍を同定し聞隙水100 m陣のMPNを算出した
17
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
6-5奄美地方の海水調査
2004年1月30日~31日に奄美大島におけるMvunificusの分離を行った採取したの
は①旧笠利町前田川河ロ②旧住用村河内Jtl河口③旧住用村住用川および役勝Jllva口
④旧宇検村河内揖河口で何れも岸辺から1m以内の海水を試料とした(図3)
各資料は孔径045μmのメンブランフィルターで吸引ろ過しそのフィルターを50m量の
アルカリ性ペプトン水に入れ30Cで一昼夜培養した後クロモアガービブリオ寒天培地に
塗抹し35t1で18plusmn2時閥培養した培地上でV一白侭と推定されるコロニーを各種
生化学性状試験(oxidase2Naet加TSI2NaCt加LIM2NaCl加VP半流動培地0
3810塩分濃度による発育試験)により確認後cytotoxin-hemolysin遺伝子をターゲット
とするPCR法を併用したまた血清型別は国立感染症研究所から分与を受けたOl一〇
7を使用してスライド凝集により調定を行った
くlll~lsquo〔ド
ボ駄」一一 一ノrsquo t
r 1蒼 ③住用川及び役勝川面出 」Tk h v
図3奄美大島の海水採取地点東西海岸で二箇所ずつ流水量の比較的大きな河川を選
択した
18
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
7結果
7-12001年6月~7月における熊本県八代地域でのしC vunificus感染症集団発生の
調査
調査の結果2001年頃は熊本県内で10例のZvunlfieus感染症患者が発生していた内
7例は2001年6月29日より7月18日の20日間に発生し4人が亡くなった(表2)7人全
員に肝機能障害が認められたまた敗血症型の患者6人中4人がアナジャコを食べた1~
2日後に発症していた
表22001年夏のVvulnifleus感染症集団発生患者一覧6月29日より7月18日の20日
間で7人の患者が発生した
患者 年齢性 転機 発症日 菌分離 原因平準 十型 合併症
rarr64男 死亡 6丹29日 血液培養 刺身 敗血症アルコール性肝炎
フ硬変
2r 76男 生存 7月4日 血液培養
マグロアジ
フ刺身茄でスアナジャコ
敗血症 アルコール性肝炎
3 62男 生存 7月10昼 血液培養生のアナジャ
R創傷型
アルコール性肝炎
恃A病
4 71男 死亡 7月穐日 組織培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
5 56男 死亡 7月12日 組織培養 コチの刺身 敗血症アルコール性肝炎
恃A病
6 42男 死亡 7月16日 創培養生のアナジャ
R敗血症
C型肝炎肝硬変
恃A病
7 73男 生存 7月18日 創培養 不明 創傷型C型肝炎肝硬変
フ癌糖尿病
症例重61歳男性八代市在住1既往歴]アルコール性肝硬変【現病歴]2001年6月28
日に生魚を食べ6月29日に下痢発熱下肢の発赤腫脹が出現したMvunifieus va染
症を疑い治療を行ったが発症より22日目に死亡した血液培養よりXvunifieusを確認し
た
19
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
10参考文献
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
症例276歳男性岱明町在住【既往歴1アルコール性肝炎{現病歴12001『年7月2日
に生魚(アジマグロ)菰でたアナジャコを食べ7月4日に右下肢の発赤腫脹左肘の腫脹
が出現しその後発熱下痢を伴ったVμ協伽欝感染症と診断し治療を行い救命した
血液培養よりV麟翻鵡欝を確認した
症椀360歳男性鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】200t年7
月8日と9日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月10日より発熱下肢腫脹が出現
した(図4)V ffglnifiaas感染症と診断し治療を行い救命した血液培養よりif醐纏を
確認した
症例4=71歳男性宮原町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】
2001年7月8日にアナジャコの醤油漬けを食べ7月10日に発熱両下肢の発赤腫脹が出
現したMrttlnifietts感染症と診断し治療を行ったが発症より2ヵ月目に亡くなった血液培
養よりVvalnlflettsを確認した
症例556歳男惚鏡町在住【既往歴】アルコール性肝炎糖尿病【現病歴】2001年7
月12日に刺身(こち)を食べ7月13日に発熱下肢の発赤腫脹が出現したκVttlnffletts
感染症を疑い治療を行ったが発症より3日目に亡くなった血液培養よりVμ吻伽侭を罐
認した
症例642歳男性松橋町在住【既往歴】C型肝炎肝硬変糖尿病【現病歴12001年7
月16日にシャクミソ(アナジャコの内臓)を食べ7月17日に発熱両下肢の発赤腫脹が出現
したMyulrdquoiflcus感染症を疑い治療を行ったが発症より2日目に亡くなった創培養より
M脳繍63を確語した
症例771歳男性宮原町在住{既往歴】C型肝炎肝硬変肝癌糖尿病【現病歴】生
魚の食歴は不明7月17日に海岸で外傷を負った7月t8日に右手が腫れてきた M
Vrdquoiniflcus感染症と診断し治療を行い救命した創培養よりXvUtnlfieusを確認した
20
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
^嚢
チ
7
図4症例3の臨床写真2001年7月11日熊本大学附属病院搬送時(上)および8月8
日置下)の臨床所見初診時には下肢に紅斑紫斑を認め強い把握痛を訴えたその後紫斑
部分の皮膚は壊死し壊死物質をdebridementした後には良好な肉芽を伴った皮膚潰瘍が残
った潰瘍部に対しては後日植皮術を行った
21
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
2001年の6月から7月における八代地域の気象情報(降水量など)と海洋情報(海水温塩
分濃度など)は図5の通りであった八代地方では6月下旬より7月上旬までは気温が
30を超える日が続き海水温も25以上を示した(平年は海水温22~23)6月20日と
7月6日に洪水警報レベルの大雨が降り6月22~25日7月2~9日7月13日以降は八
代海の塩分濃度は25(外洋では34~35)以下と著明に低下していたつまり2001年
の6月下旬から7月上旬にかけて八代地域は平年に比べてかなり暑く降雨量も多かった
ことが判明した
り
2
2
t
(8)憾礎訳響耗爬
八代海の塩分濃度患者番号 患者が原因食材を食べた日旦
師
3
2
怖
-
05
1 3
4 5 6 7
o旦 」ユ
0σ} σ}
R コnヲ ぎ 匝 6月
ヨ ヨm きm 匝 7月
一匝躍hellip邑ハ帥(加図1)
00
X0
W0
V0
U0
T0
S0
R0
Q0
P0
0
図52001年6月~7月における八代地域の降水量と塩分濃度および患者発生時期患者
が原因と思われる食材を食べた日を矢印でしめしたが大量に雨が降った後に海水塩分濃度
が低下しその頃に寺門を食べていた
22
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
7-2 Vvunificus感染症の疫学調査
アンケートによる疫学調査により94例のVvunlfeus感染症の発生が確認された
表3日本における1yunlficus感染症の臨床的特徴
年齢性性別 7816
平均年齢plusmn標準偏差 606plusmn140
敗血症型 68(723)
病型 創傷型 21(223)
消化器型 5(53)
創傷型 敗血症型 ρ値
病型別
チ徴患者数 21 68
平均年齢plusmn標準偏差 622plusmn147 617plusmn113
予後 333 750 <0001
肝障害 16(762) 61(897) 0113
肝硬変 7(333) 46(676) 0005
高血圧 0 2
リウマチ 1 0病型別
radicケ症白血病 0 3
ネフローゼ 0 1
糖尿病 3(143) 9(132)
痛風 0 3
なし 2 1
【患者発生数】5年間に94例の患者発生を確認した男性78例女性16例で全体の83
が男性であった(表3)
【年齢】患者の平均年齢は606plusmn140歳であり病型による平均年齢に有意差は認めなか
った(表3)
【病型】敗血症型68人(723)創傷型21人(223)消化器型5人(53)であった(表
3)従来日本ではほとんど報告がなかった消化器型のVyunifieus感染症が確認された
【予後】創傷型の死亡率が333(721)敗血症型が750(5168)であり敗血症型の
予後が有意に不良であった(P<000D(表3)
23
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
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Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
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Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
54
25)
26)
27)
28)
29)
30)
31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
【発生月】患者発生は6月から11月に限られており冬の発生はなかった(図6)
30
25
20
1fiP 15
10
5
0
56
2003
福Q002001
20001999
5511
U
3
菱8
2
4
4 7 4
6月 7月 8月 9月 10月 11月
図6 Vyunificus感染症患者の月別発生数患者発生は7月8月が最も多かったが
2001年7月~8月に熊本県における大量発生が起こったためと考えられる12月~5月の
発生はなかった
24
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
【基礎疾患】合併症としては肝硬変を含めた肝機能障害の患者が89例中77例(865)
肝硬変の患者が53例(596)で9例(107)が肝癌を合併していたその他の合併症とし
ては糖尿病が11例(131)であった(図7)基礎疾患として敗血症型外傷型ともに肝臓疾
患の合併が高率であったが肝硬変の敗血症型での合併率は外傷型と比べて有意(P=
0005)に高かった
70
60
50
wh 40
冊垂30
20
10
o
評避メノ評諭癬図7病型別合併症敗血症型創傷型ともに大部分の患者が肝臓疾患の合併があった
61
創傷型
敗血症型
「肝
「「
幽
「」
9
2 10 03 01 3 03 21
25
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
肝機能障害の原因としては61例中32例(525)がウイルス性肝炎を基礎疾患としており
残りの475がアルコール性の肝障害であった(図8)
「00
300 25
癒20
頗15
10
g
〆ノ
図8肝臓疾患の原因C型肝炎によるものとアルコールによるものが多かった
33
27
79
26
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
また肝硬変の有無による予後の差は敗血症型(P =O424)創傷型(it「=0513)ともに認めら
れなかった(図9)
40
35
30
25
mp 20
15
10
5
o
生存
w死亡
15
12
10
1
肝硬変あり
敗血症型
肝硬変なし 肝硬変あり
創傷型
肝硬変なし
図9肝硬変の有無による予後敗血症型においても創傷型においても肝硬変の有無によ
る予後の差は認められなかった
27
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
【初発症状】確認が可能であった89例については癖痛と発熱が最も多かった腹痛下痢
などの消化器症状を初発症状とした症例が11例あった(表4)
表4if vulnlfieus感染症患者の初発症状(n= 89)
症状 患者数(人)
癒痛 67
発熱 44
腹痛 で1
下痢 5
嘔気 3
意識障害 2
吐血 1
その他 4
28
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
【重症度】初診時に皮疹の面積(対体表面積)と予後の関係を図10に示す
25
20
15
10
5
12
X3 6
6
躍
o 〈5 5NIO 11v20 20v 皮疹の面積(対体表面積)
図10皮疹面積および予後初診時の病変の面積を体表面積当たりに比で示した皮疹面
積が対表面積の10を超えるような患者は13例中12例が死亡した
29
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
初診時に皮疹が対表面積の25と算定され血中CPKが1 OOOO IUL以上であったにも
関わらず救命できた例が1例(前述7-1の症例3)あったしかしながら体表面積の10
を超える症例は殆どが死亡例であったまた初診時の血中CPK値が高い症例は予後不良
の傾向にあった(図11)
20
1
1
抑 圏
o
〈200 200N999 1000N9999 10000〈 初診時CPK値(IUL)
図111yunfeus感染症患者の初診時のCPK値筋源酵素であるCPKが高いことは広
範囲の筋肉の陣害を反映するために予後不良であると考えられる
10
側
16
7
5一
3
31
30
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
【治療】抗生剤投与が確認された症例89例について使用された抗生剤の種類は表5のと
おりであった殆どの患者が複数の抗生剤投与による治療を受けており89例中30例の患者
がミノサイタリンの投与を受けていた最も多かった抗生剤の投与法はカルバペネム系抗生
剤とミノサイタリンの併用療法であり一部クリンダマイシンの投与併用も行われていた
表5抗生剤の使用状況一人の患者で複数の抗生物質が投与されている場合が大部分で
あった
薬剤名 症例数 生存例(32例〉 死亡例(57例)
ミノサイタリン 30 10 20
イミペネムシラスタチン 19 5 14
パニペネムベタミプロン 12 8 4
クリンダマイシン 9 4 5
ピペラシリン 7 3 4
スルバクタムセフォペラゾン 7 1 6
セフタジジム 7 3 4
メロペネム 5 1 4
セフピロム 4 1 3
セブオタキシム 4 0 4
レボフ回キサシン 4 2 2
ボスホマイシン 4 3 1
フ回モキセフ 3 2 1
アンピシリン 3 o 3
シプ回フ回キサシン 3 重 2
セフオゾプラン 3 1 2
セブアゾリン 2 1 2
ドキシサイクリン 2 1 1
バンコマイシン 2 1 1
アスポキシシリン 書 0 1
セファレキシン 1 1 0
セフオピム 1 0 1
セフカペンピボキシル 1 重 0
セブ才チアム 1 0 1
セフトリアキソン 1 書 0
イセパマイシン 1 0 1
カナマイシン 1 1 0
31
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
患者によって治療状況や治療を始めた時期などが異なり単純に比較はできないしかしな
がらパニペネムを投与された症例については9例中5例が生存例であり救命率が高い可
能性が示唆される結果であったMVUnifieusの臨床株は加酢においては殆どの抗生物
質に対して感受性を有するその中でもテトラサイクリンやセフtタキシムが特に有効であると
の報告がある(910)
【手術療法】69例について手術の確認が取れた(表6)が敗血症型創傷型ともに手術の有
無による予後の差は認められなかった
表6手術状況手術の確認がとれた69例については30例435の患者で手術が行われ
た症例数が少なく有意差はとれないが手術による予後の改善は確認できなかった
敗血症型 創傷型手術
死亡 生存 死亡 生存
デブリドメン 16 5(238) 2 2(500)
切断 3 1(333) 書 1(500)
なし 20 9(3愚0) 2 5(71誘》
計 39 15(278) 5 8(6t5)
( )死亡率
【補助療法】免疫グロブリン大量療法持続的血液濾過透析療法などを行った症例が少数
認められた
32
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
【原因食材】尻VUnlfieusの原因食材を特定することは困難であるその理由として一般的
には壊死性筋膜炎の原因を食中毒とは考えないために大部分の症例において食材の保存
ができていないためである従って病歴より原因となった海産物を予想するしかない表7に
疫学調査によって原因と考えられた食材を記載したアナジャコが最も多かったが6例全員
が熊本県における発症であり八代地区が5例であったまた海外での報告が多い牡蠣に
よる発症は無かった
表7V vulnffieus感染症の原因と考えられた食材アナジャコによるものが最も多かったが
その他にもマグロタイサバなど多種類の海産物が原因食材となっていた
食材 Engllsh 患者数
アナジャコ ana4ako 6
マグロ tu恥a 5
タイ sea-brearn 4
寿司 sushl 4
刺身 raw flsh 3
ウミタケ sea weed 3
イカ cu槌lefish 3
あみつけ opossum shrimp 3
アジ laek 2
魚 質sh 2
員 she豚ish 2
サバ mackerei 2
コチ flathead 重
アサリ貝 asari c韮am 1
マテ員 razor clam で
あげまき razor clam 1
イサキ grunt 1
シャコ squilla 1
ボラ st巾ed muliet 1
ヒラス frigate mackerei 1
ニベ croaker 1
エビ shrimp 1
ヒラメ flatflsh 1
33
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
【発生地域】西日本での発生が多く九州北部の有明海および八代海の内海沿岸での発生が
顕著であったその他東京湾沿岸や瀬戸内海沿岸の中国地方でも比較的多くの患者を確認
した(図1213)94例の県別発生地域を図12に示す最も多いのが熊本県であり福岡
長崎佐賀を加えた北部九州で全体の約50を占めたより温暖な鹿児島宮崎沖縄県で
の発生は確認できなかった人口比では熊本県と佐賀県が最も高頻度であった(図13)
30
25
20
撫15
10
5
o
ぜ蔚認ぜβず薪遭榔総爵菱ぜぜ勾ボ麿絶ず認汐
毒識晒一lsquo三1ぎょ睡
脚写
図12都道府県別Zvunificus感染症発生数熊本県が最も多く北部九州で全体の半数を
占めたなお北限は栃木県であった
34
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
N oooOl
O000二rdquo
ooe6 rdquo
O〇二rdquo
O1 rdquo
g
pt
図13人口10万人当たりの1vunificus感染症患者発生分布(1998~2003年)熊本佐
賀福岡長崎の有明海沿岸の4県の頻度が高い
35
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
54
25)
26)
27)
28)
29)
30)
31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
7-3熊本県におけるltvunlfieus感染症の集計
1990隼以降熊本県においては年聞1~2例のVvunificus感染症息者が確認されていた
がその発生数は近年増加傾向にある(図14表8)1990年目2006年の17年間に熊本
県において43例のtrsquofyunlfieus感染症を確躍した男性38例女性5例で平均年齢=610
plusmn116歳であった病訴では敗血症型30例(698)創傷型12例(279)消化張型
1例(23)であった死亡例1ま敗血痘型722劇傷型 250であった(豪9)平均年齢
性差病型比死亡率は全国疲学臓卜の結果とほぼ同じ領向であった
12
10
8
11gi 6
4
2
o
訊説訊議議試聴議坤軸試ぱ試試賦ド網
図14熊本県における年別Ye vunifieus感染症患者発生数17年問に43例を確認したが
発生数は増加傾向にある
臨
卜
1
ぴ
1 ゴ 1
2
一
離し
1
3 御垂n
2
36
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
表81990~2006の熊本県におけるZvulnlfieus感染症一覧
番号 発生年 性別 年齢 頭型 発症日 転機1 1990 女 58 敗血症型 19901030 死亡2 1991 男 56 敗血症型 199t7pound 生存3 1992 男 48 敗血症型 199286 死亡4 1993 女 64 敗血症型 19938」5 死亡5 男 44 創傷型 1995712 死亡6
1995男 57 敗血症型 1995713 死亡
7 男 55 敗血症型 1996722 死亡8 1996 男 56 消化器型 1996731 生存9 男 67 敗血症型 量996息で8 死亡10
1997男 35 創傷型 1997五13 死亡
11 男 53 敗血症型 1997721 死亡12 女 66 敗血症型 199966 死亡13 女 74 創傷型 1999」78 生存14
1999男 38 敗血症型 19998 死亡
15 男 67 敗血症型 199軌921 死亡16 男 61 敗血症型 200t629 生存17 男 72 敗血症型 2001710 生存18 男 61 敗血症型 200t7」0 生存19 男 77 敗血症型 200174 生存20 男 62 創傷型 200177 生存21
2001男 56 敗血症型 200t712 死亡
22 男 43 敗血症型 2001717 死亡23 男 74 創傷型 200t7ユ8 生存24 男 77 創傷型 20018 生存25 男 68 敗血症型 200t8{4 死亡26 男 67 敗血症型 2002823 死亡27 2002 男 70 敗血症型 2GO2豆19 生存28 男 63 創傷型 20021α6 生存29 男 77 創傷型 2003724 死亡30 男 77 創傷型 2003815 生存34 2003 女 70 敗血症型 200395 生存32 男 32 創傷型 200397 生存33 男 70 敗血症型 2003108 死亡34 男 58 敗血症型 2004617 死亡35 2004 男 40 敗血症型 2004621 生存36 男 66 敗血症型 2004921 生存37 2005 男 59 敗血症型 2005エ15 死亡38 男 6重 敗血症型 2005712 死亡
37
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
39 男 59 創傷型 2005728 生存40 男 55 敗血症型 2005730 死亡41 男 70 創傷型 2005925 生存42 男 69 敗血症型 2006719 死亡43
2006男 70 敗血症型 200683 死亡
表9熊本県におけるLf吻伽感染症患者(n=43)の予後
生存 死亡 計 死亡率
敗血症型 8 22 30 733
創傷型 9 3 12 250
消化夏型 1 0 1 00
計 18 25 43 581
38
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
発生患者の居住地では八代市周辺玉名長洲地域および熊本市周辺に集中しており天
草や芦北地方での発生は少ない傾向にあった(図1516)
0敗血症型 死亡例
敗血症型 生存例
創傷型口 死亡例
創傷型 生存例
図15熊本県におけるZyunificus感染症の発生地域および病型玉名市周辺および八代
市周辺では発生が多く特に創傷型は2地点に集中している
39
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
srdquo
rdquooo且
oot rdquo
o3齢
o6齢
09の
ツ
図16熊本県の市町村別Zyunificus感染症発生率(息者数人ロx10000)宇土市が
最も発生頻度が高くなっているが多くは2000年以前の卜者であり最近は玉名市と八代市
で多くの患者が発生している
40
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
7-4有明海八代海における環境中のZvulnffieustついて
1)2地点(16ページ図2αβ地点)での1μ吻砺6侭のMPN値
2004年5~12月の海水と海泥のZvunfiausのMPN値を表1 O11に示す表10にみら
れるように河川の影響を受けやすい海域では表層海水温が20近くの5月になると海水申
にMyunffietisが出現し始め海水温が30C近くになる7~10月にピークとなった海泥に
は海水よりさらに多くのKVUnifrrsquoonsが生息していた海水の塩分濃度は降水量や河川水の
流入量に応じて変動が激しかった一方河川の影響を受けにくい海域では表11のとおり海
水からKvulnffivusを8月に1度検出したのみでMPN値も低かった海泥では8月と10月
に検出しいずれも海水より高い傾向は表10と同様であったまた河川等の影響を受けにく
いため塩分濃度は安定していた
以上より1vanlficusの増殖は河川の影響を受ける可能性が高く海水中よりも海泥中で
より多くのUvulnlfiausが増殖している可能性が高いと考えられた
41
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
表10剛の騨を受けやすい溺(α地点)のz吻伽瑚査
MPN(璽00 m})
2004年 海水 海泥水温(C) 塩分濃度()
5月 7 230000 190 184
6月 〈3 700 243 342
7月 2300 4300]0 305 2t1
8月 2300 1500 3⑯ 34」
9月 1500 2300 295 308
10月 75 21000 24澄 329
11月 3 290 2 300一」 一 rq 一一
12月 く3一 一 一 一 ゴ 一 一 一 「 一 一 一 一 一 『 一
150r一_一一一一一_一__r_一一ドー_一覧}一 「r 一一一一 larr 一胃「 「一一一一 一 曲h η5 307
間隙水100困申のMP三値
rsquoS11海州の影響を受けにくい海賎《β地点》のPf yulnifA us M査
M剛(100甜)
2004年 海水 海泥巌水温(〉 塩分濃度(〉
5月 《3 〈3一 1豊5 3a5
6月 く3 く3 290 341
」 『 」 」 一
V月田 - - 一一一一 一一 一 一 一 - 一 一一 一一 - 「 一一 一冨
く3 く3 28ρ「「 lsquo ゴ{rsquo ド 一一 一__-一一-_ 曲一 即 r r __一ド 「 P一 一 一一一一一一一
一一352
8月 3 30 29五 359
9月 〈3 く3 270 333
10月 く3 40 224 323
訓月 く3 く3 190 327
12月 く3 く3 170 290
間隙水 100ml中のMPN値
42
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
2)25地点(16ページ図2A-Y地点〉でのlt gulnifiausのMPN値
表12に203年及び2004年の7月から8月にかけて行eた熊本県内25海域のif
vunfflcus一生息講査結果を示す表申の降水量は海水採取前7目聞の総雨量であるb 2003
年は降雨量が多く2004年は少なかづた2eo3年には25地点中14地点でVμ吻吻粥を
検出したが2004年は5地点においてのみif vunZflcusJを検出した6この現象は摘査した
全地点で2903年の塩分濃度が低下していることからも推察されるまた降雨量が多くなり
塩労濃度が低くなってもV晒吻煽粥が検出されない地点は河口などVvulnficusが生息
する汽水域がもともと存在しない海域と推測されるb
43
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
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vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
表12県内25地点のif脱嚇粥調査(2eo3年及び2004年7~8月)地点名A-Yに
ついては」6ページ図2の海水採取埴点
2003年 2004年地点名
MPN(100粕1) 一~雨一量
imm)
塩分濃度()
MPN(100 mD降雨量 L
imm)
塩分濃席 (o)
A 23000 180 196 2300 o 34薯
B 〈3 30 337 〈3 o 373
C 〈3 30 335 〈3 0 378
D 〈3 35 3t8 〈3 0 365
E 7 174 300 く3 0 372
F 〈3 208 261 〈3 24 348
G 4 208 261 3 24 347
H 4 208 253 3 24 344
} 4 205 2t4 〈3 4 34肇
」 3800 205 221 〈3 4 344
K 〈3 205 240 く3 4 350
L 〈3 129 330 く3 6 36O
辮 〈3 30 327 〈3 6 362
肘 〈3 174 308 く3 6 355
0 93 128 256 く3 6 353
P 430 128 24重 〈3 6 365
Q 230 128 268 3 6 359
R 〈3 278 327 3 34 359
S く3 η4 313 く3 4 370
T 36 44 3t9 く3 70 358
u 6 44 3t3 く3 7G 364
V 〈3 44 3t7 〈3 70 364
W 2准 25董 3α3 〈3 30 356
X 9 251 3t6 〈3 0 354
Y 23 204 316 く3 2 350
採水日以前7日間の総雨量を示す
44
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
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いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
10参考文献
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autopsy case一 SashZnlgaku( in Japanese) 1978 33 1243-1248
8) Hill WE Keasjer SP Trucksess MW et aL Polymerase chajn reaction
identification of 吻吻 vunfcus in artificially contaminated oystersノ11
En vron Mlcroblo1991 57 707-711
52
)9
10)
11)
12)
13)
14)
15)
16)
Chuang YC Ko WC Wang ST et al Minocycline and cefotaxime in the treatment
of experimental murine Vbro infeGtion Antmcrob Agents ehemothr 1998 42
1319-1322
Bowdre JH Hull JH Cocchetto DM Antibiotic efficacy against Vlbro vunlfaus in
the mouse superiority of tetracycline lsquoノ Pharmaco ang7xp rher 1983 255=
595-598
Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of 吻ノrsquoo γ吻伽5
infections一一clinical and epidemiologic features in Florida cases 1981-1987一
ノ響ノ7as7te7aMed 198815=318-323
Park SD Shon HS Joh NJ Vlbrlo vunlfieus septicemia in Korea clinical and
epidemiologic findings in seventy patientsノA7lcadOermato199124=
397-403
Collier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermato
7her 2002 15 1-9
Wickboldt LG Sanders CV Vlbrlo vunlfleus infection-case report and update
since 1970一lsquoノノ響7l cadDenato19839=243-251
Chuang YC Yuan CY Liu CY et aL Vibrlo vuneus infection in Taiwan report of
28cases and review of olinical manifestations and treatment C伽7feetang7s
1992 15 271-276
Hsueh PR Lin CY Tang HJ et al吻ノ〕わvunficus in Taiwan Emerg7fectang)is
2004 1 O 1 363-1 368
53
17)
18)
19)
20)
21)
22)
23)
24)
Chan TYK」レfbrlo vu7Zies infections in Asia=an overvier Soカheastlsalsquoノ
lrop Med Heath 1995 26 461-465
Joy耐GM Gomersall CD Lyon DJ Severe necrotizing fasciitis of the extremities
Gaused by vibronaceag experience of a Hong Kong tertiary hospital Hong Kong
Medlsquoノ1999563-68
Maxwell EL Maxwell BC Pearson SR et aL A Gase of vlbrio vunifieus
septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
epidemiology of vbrlo vu7faus infections in Denmark Eurlsquoノθ伽Merobo
nfect Ds 1996 15 227-232
Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
54
25)
26)
27)
28)
29)
30)
31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
7-5奄美地方の海水調査
検査を行った環境データを表13に示した採水時の水温は19~20でありこれは奄美
大島周辺の最低海水温に近いものであった塩分濃度は前田川河口の227e以外では42
~粍1奪あった外海の30~3596eと比較すると4地点ともに汽水域といえる値であうた
調査した4地点全てにおいてt剛励欝株を検出した検出した13株の0血清型別はO
JI 4株04A 5株型別不能が4株であった(表14)生化学性状は一般的なM吻伽岬
の性状を示したが ornithifie decarboxytaseは不安定な傾向がみられたまた
cytotoxi崩m晦s遺伝子は全ての株で確認された
表13各調査地点での環境データ
①煎田川
河口
②河内慨
河口
③住用川及び
汾ヘロ
④河内餌
河口採取年月且 一一 一2004重30 200413霊 200413書 200413}
採取蒔刻 墨500 准5ズ}0 1420 15=40「
天気 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22O 19五 200 τ8ρ
水温 τ90 τ95 200 τ40
採取水深m 0」2 a 1 02全水深m a5 α2 α2 1心
透視度 2(LO 51澄 48沿
囲 7」 8愈 8か 75塩分濃度 237 56 生2 }1事
導電率mS釧れ 3α4 駄64 7斜 1824
45
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
10参考文献
1) Roland FP Leg gangrene and endotoxin shock due to吻ノrsquoloρarahaθ70tieusan
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1306-1307
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10)
11)
12)
13)
14)
15)
16)
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of experimental murine Vbro infeGtion Antmcrob Agents ehemothr 1998 42
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the mouse superiority of tetracycline lsquoノ Pharmaco ang7xp rher 1983 255=
595-598
Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of 吻ノrsquoo γ吻伽5
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epidemiologic findings in seventy patientsノA7lcadOermato199124=
397-403
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7her 2002 15 1-9
Wickboldt LG Sanders CV Vlbrlo vunlfleus infection-case report and update
since 1970一lsquoノノ響7l cadDenato19839=243-251
Chuang YC Yuan CY Liu CY et aL Vibrlo vuneus infection in Taiwan report of
28cases and review of olinical manifestations and treatment C伽7feetang7s
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Hsueh PR Lin CY Tang HJ et al吻ノ〕わvunficus in Taiwan Emerg7fectang)is
2004 1 O 1 363-1 368
53
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21)
22)
23)
24)
Chan TYK」レfbrlo vu7Zies infections in Asia=an overvier Soカheastlsalsquoノ
lrop Med Heath 1995 26 461-465
Joy耐GM Gomersall CD Lyon DJ Severe necrotizing fasciitis of the extremities
Gaused by vibronaceag experience of a Hong Kong tertiary hospital Hong Kong
Medlsquoノ1999563-68
Maxwell EL Maxwell BC Pearson SR et aL A Gase of vlbrio vunifieus
septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
epidemiology of vbrlo vu7faus infections in Denmark Eurlsquoノθ伽Merobo
nfect Ds 1996 15 227-232
Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
54
25)
26)
27)
28)
29)
30)
31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
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- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
表14奄美の河川水より分離した1μ瀦海5菌株の生化学的特長
菌株番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13
採取地点 ① ① ②② ② ② ② ② ③ ④ ④ ④ ④
oxidase 十十十十十 十 十十十 十 十十十
hydrogen sulfide 一 一 一 一 一 一 一 一 一 騨 一 一
indole produotion 十 十十十 十 十 十 十 十 十 十十十
modility 十 十十十十 十 十十 十 十十 十十
0NaCl 一 圃 一 一 一 闇 一 一 一 一 一 一
3NaCl 十十十十 十 十十十十 十十 十十
8NaCI 一 一 繭 一 一 一 一 騨 一
10NaCI 一 一 一 一 一 隔 騨 一 一 一 一 騨
Voges-Prokauer 一 一 繍 一 一 一 一 騨 一 一 一 一
lisin decarboxylase 十 十十十 十 十十 十 十 十十十十
arginine decarboxylase 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一
ornithine decarboxylase 十
十十 十幽 一
十十十 十 十十
Urea hydrOlySiS 一 一 一 一 一 一 一 隔 一 一 國
ONPG 十 十 十十 十十十 十 十 十 十 十十
gelatin 十十十十 十 十十十 十 十十十十
nitrate 十 十十十十十十 十十十十十十
esculin hydrolysis 十 十十十 十 十十十十 十十十十
oitrate(Simmons) 十 十十十 十 十 十 十 十十 十十十
D-gluoose acid 十十十十 十 十十 十 十 十十十十
D-gluoose gas一 一 一 一 暉 一 一 一 一 一 一 一
salicin 十十十十 十十十十十 十十十 十
oellobiose 十 十 十十十 十十 十十 十 十 十十
SUC「ose 一 一 一 一 一 一 一 一 一十十十十
Iactose 十 十十十十 十十 十十 十 十 十十
mamitoI一
十十十 十十十 十 十 十十十十
dulsitoI一 一 一 劇 一 一 一 噸 一 一
adnitoI一 一 一 騨 一 一 一 一 幽 一
insitol一 一 騨 一 一 一 一 一 騨 一 一 凹
sorbitol一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 願 幽 一
trehalose 十 十 十十 十十 十 十十 十 十十十
L-arabinose 一 一 一 一 一 一 一 一 幽 嘲 一 一
D-xylose 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一melibiose 十 一
十十 十十十 十 十 十十 十十
Oserological type(01
`07)不能
01 04`
01 04`
04`
04`
04`
不能
不能
不能
01 01
6ytotoxin-hemolysin 十 十十十 十十 十十 十 十 十十十
菌株採取地点 ①前田川河ロ
不能=判定不能
②河内川河ロ ③住吉川および役勝川河ロ ④河内川河ロ
46
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
10参考文献
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井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
8考察
Vvunlfieus感染症は世界中で発症が報告されている(11-21)米国や韓国においては
届出義務があり米国(14)では年間50~100例韓国(12)では40例台湾(15)では10
~15例程度の発症があるとされているしかしながら日本においては届出制度もなく全
国的な疫学調査が行われていなかったために患者数や発生地域などの詳細は不明であった
1978年以降約200例の症例報告があるが多くが西日本での発症である(22)またほとん
どの症例が肝機能障害を有する免疫力が低下したcompromized hostにおける発症であり集
団発生の報告はないまた米国や韓国においても集団発生の報告はなく今回の集団発生
は稀な事例と考えられた
疫学研究の結果本邦におけるltvunifieus感染症は敗血症型723創傷型223であ
った各国の敗血症型の割合は米国50(14)デンマーク36(20)韓国66(12)
台湾64(15)との報告がありアジアにおいては敗血症型の割合が高いこれはアジアに
おいては魚介類を生食する習慣があるためと考えられる原因食置については米国において
は牡蠣によるものが多い(1314)が今回の調査および既報告においても本邦では牡蠣によ
るものはほとんどみられないこれは東北地方の一部を除けば日本では牡蠣は冬にしか食
さないためではないかと考えられる発生時期は6月から11月に限られており冬に発生した
例はなかった日本よりも温暖な台湾(16)においても発生は5月から11月に限られており
本症は夏の感染症であると考えられる好発年齢は60歳台男女比は78対16で欧米と
比較して男性に好発していたこれは日本におけるZVUnfcus感染症は敗血症型が多く
その基礎疾患としてのアルコール及びウイルス性の肝硬変が多いためではないかと考えられ
る
初診時に紅斑紫斑などの病変を認めた皮疹面積(体表面積当たり)では10を超える症
例はほとんどが死亡例であったまた初診時の血中CPK値については有意差は認められ
なかったが初診時の値が高いほど予後不良の傾向にあったltf VUnfiaus感染症の重症度分
類については現在のところ有効な診断基準はないが皮疹の面積と血中CPK値は予後の判
断材料となる可能性が考えられる
治療で最も重要なことは早期診断早期治療であり薬物療法と外科療法が考慮される
既往歴病歴と臨床所見において同症を疑った場合には速やかに多系統の抗生剤(カル
47
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
10参考文献
1) Roland FP Leg gangrene and endotoxin shock due to吻ノrsquoloρarahaθ70tieusan
infection acquired in New England coastal watersEnglsquoノMed 1970282=
1306-1307
2) Fernandez CR Pankey GA Tissure invasion by umamed marine励丁os VAMA
1975 233 1173-1176
3) Hollis DG Weaver RE Baker CN et al Halophilic vbro species isolated from
blood cultureslsquoノCn Merobio19763=425-431
4) Farmer JJ III Vibro(Beneekeaノvu7fieus the bacterium associated with sepsis
septicaemia and the sea [letter] Lancet 1979 2 903
5) Blake PA Merson MH Weaver RE et al Disease caused by a marine
吻IOrleclinical characteristics and epidemiology一angFnglsquoノMed 19793001-5
6) Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of vbrio vunfeus
infeotions-olinical and epidemiologic features in Florida cases1981-1987一
ノ17nas7terna Med 198815318-323
7) Kawano S Matsuo T lkeda T et al Fulminating halophilie vibrlo septiGemia一 an
autopsy case一 SashZnlgaku( in Japanese) 1978 33 1243-1248
8) Hill WE Keasjer SP Trucksess MW et aL Polymerase chajn reaction
identification of 吻吻 vunfcus in artificially contaminated oystersノ11
En vron Mlcroblo1991 57 707-711
52
)9
10)
11)
12)
13)
14)
15)
16)
Chuang YC Ko WC Wang ST et al Minocycline and cefotaxime in the treatment
of experimental murine Vbro infeGtion Antmcrob Agents ehemothr 1998 42
1319-1322
Bowdre JH Hull JH Cocchetto DM Antibiotic efficacy against Vlbro vunlfaus in
the mouse superiority of tetracycline lsquoノ Pharmaco ang7xp rher 1983 255=
595-598
Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of 吻ノrsquoo γ吻伽5
infections一一clinical and epidemiologic features in Florida cases 1981-1987一
ノ響ノ7as7te7aMed 198815=318-323
Park SD Shon HS Joh NJ Vlbrlo vunlfieus septicemia in Korea clinical and
epidemiologic findings in seventy patientsノA7lcadOermato199124=
397-403
Collier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermato
7her 2002 15 1-9
Wickboldt LG Sanders CV Vlbrlo vunlfleus infection-case report and update
since 1970一lsquoノノ響7l cadDenato19839=243-251
Chuang YC Yuan CY Liu CY et aL Vibrlo vuneus infection in Taiwan report of
28cases and review of olinical manifestations and treatment C伽7feetang7s
1992 15 271-276
Hsueh PR Lin CY Tang HJ et al吻ノ〕わvunficus in Taiwan Emerg7fectang)is
2004 1 O 1 363-1 368
53
17)
18)
19)
20)
21)
22)
23)
24)
Chan TYK」レfbrlo vu7Zies infections in Asia=an overvier Soカheastlsalsquoノ
lrop Med Heath 1995 26 461-465
Joy耐GM Gomersall CD Lyon DJ Severe necrotizing fasciitis of the extremities
Gaused by vibronaceag experience of a Hong Kong tertiary hospital Hong Kong
Medlsquoノ1999563-68
Maxwell EL Maxwell BC Pearson SR et aL A Gase of vlbrio vunifieus
septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
epidemiology of vbrlo vu7faus infections in Denmark Eurlsquoノθ伽Merobo
nfect Ds 1996 15 227-232
Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
54
25)
26)
27)
28)
29)
30)
31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
バペネム系とミノサイタリンなど)を投与すべきである手術の適否については諸説ある全身
状態の悪い時期に手術の侵襲を加えることによって予後を悪化させる可能性のある一方で
感染巣を減少させることによって予後が改善するとの意見もある(2324)が今回の疫学調
査ではその有効性は確認できなかった明確な判断基準はないが病巣が比較的限局してい
る症例や創傷型では考慮すべきではないかと考えられる
半数以上が九州での発生であり有明海と八代海沿岸に集中していた1UUnffaus感染
症は海水温が20以上の地域で発生する(25)とされているが有明海や八代海よりも海水
温が高い四国での発生は少なかったさらにより温暖で面積的にも八代目とほぼ同じ錦江
湾沿岸での発生が確認できなかったこれらのことはZVUnlfieus増殖の条件として海水
温だけではなく他の要因があることを予想させるその1つは塩分濃度ではないかと考えられ
る7-1において八代海では大雨が降ると塩分濃度は急激に低下することを確認している
八代海有明海は日本最大の内海であり潮位差が大きいそのために広大な干鴻と汽水域
が存在するさらに有明海には筑後川や菊池川八代海には球磨川などの流域面積が大き
な河川が流入し河川がもたらす養分によって海がプランクトンに富むいわゆる「宝の海」を
作っている一方錦江湾は面積こそ八代海とほぼ同であるが流入する大きな河川がなく
潮位差も小さく大きな干潟もないそのことは有明海や八代海に比べて漁獲量が少ないこ
とにも繋がっているこれらのことよりSC VUnfflcus感染症は干潟の多い地域に発生しやすい
感染症であると予想され実際に九州以外で比較的発生期の多い岡山県や東京湾沿岸に
も多くの干潟が存在している
熊本県は1C vulnficus感染症が最も多く発生する地域の1つあり我々の行った調査による
と1990年より2006年の17年間に43名の患者発生が確認された患者居住地は有明海
八代海沿岸で大きな河川周囲に多発しておりより多く生魚を食すると予想される天草地方で
の発症は5例と少ないその5例も有明海八代海に面した東部地方のみで発生しており外
洋(東シナ海)に面した西海岸部では全く患者が確認されなかった(図15)これらの結果より
有明海および八代海はLVUnfieusに汚染された海域であることが予想される
ところで海水中のVVUnlfcus濃度に関する研究は少なくその動向には不明の点が多い
増殖に適した温度は20以上(25)で塩分濃度は15~25oであり25oを超えると抑制が
かかる(25)Hoiら(26)はデンマークにおける海水調査を行い V vunficusの増殖は海水
48
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
10参考文献
1) Roland FP Leg gangrene and endotoxin shock due to吻ノrsquoloρarahaθ70tieusan
infection acquired in New England coastal watersEnglsquoノMed 1970282=
1306-1307
2) Fernandez CR Pankey GA Tissure invasion by umamed marine励丁os VAMA
1975 233 1173-1176
3) Hollis DG Weaver RE Baker CN et al Halophilic vbro species isolated from
blood cultureslsquoノCn Merobio19763=425-431
4) Farmer JJ III Vibro(Beneekeaノvu7fieus the bacterium associated with sepsis
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5) Blake PA Merson MH Weaver RE et al Disease caused by a marine
吻IOrleclinical characteristics and epidemiology一angFnglsquoノMed 19793001-5
6) Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of vbrio vunfeus
infeotions-olinical and epidemiologic features in Florida cases1981-1987一
ノ17nas7terna Med 198815318-323
7) Kawano S Matsuo T lkeda T et al Fulminating halophilie vibrlo septiGemia一 an
autopsy case一 SashZnlgaku( in Japanese) 1978 33 1243-1248
8) Hill WE Keasjer SP Trucksess MW et aL Polymerase chajn reaction
identification of 吻吻 vunfcus in artificially contaminated oystersノ11
En vron Mlcroblo1991 57 707-711
52
)9
10)
11)
12)
13)
14)
15)
16)
Chuang YC Ko WC Wang ST et al Minocycline and cefotaxime in the treatment
of experimental murine Vbro infeGtion Antmcrob Agents ehemothr 1998 42
1319-1322
Bowdre JH Hull JH Cocchetto DM Antibiotic efficacy against Vlbro vunlfaus in
the mouse superiority of tetracycline lsquoノ Pharmaco ang7xp rher 1983 255=
595-598
Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of 吻ノrsquoo γ吻伽5
infections一一clinical and epidemiologic features in Florida cases 1981-1987一
ノ響ノ7as7te7aMed 198815=318-323
Park SD Shon HS Joh NJ Vlbrlo vunlfieus septicemia in Korea clinical and
epidemiologic findings in seventy patientsノA7lcadOermato199124=
397-403
Collier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermato
7her 2002 15 1-9
Wickboldt LG Sanders CV Vlbrlo vunlfleus infection-case report and update
since 1970一lsquoノノ響7l cadDenato19839=243-251
Chuang YC Yuan CY Liu CY et aL Vibrlo vuneus infection in Taiwan report of
28cases and review of olinical manifestations and treatment C伽7feetang7s
1992 15 271-276
Hsueh PR Lin CY Tang HJ et al吻ノ〕わvunficus in Taiwan Emerg7fectang)is
2004 1 O 1 363-1 368
53
17)
18)
19)
20)
21)
22)
23)
24)
Chan TYK」レfbrlo vu7Zies infections in Asia=an overvier Soカheastlsalsquoノ
lrop Med Heath 1995 26 461-465
Joy耐GM Gomersall CD Lyon DJ Severe necrotizing fasciitis of the extremities
Gaused by vibronaceag experience of a Hong Kong tertiary hospital Hong Kong
Medlsquoノ1999563-68
Maxwell EL Maxwell BC Pearson SR et aL A Gase of vlbrio vunifieus
septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
epidemiology of vbrlo vu7faus infections in Denmark Eurlsquoノθ伽Merobo
nfect Ds 1996 15 227-232
Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
54
25)
26)
27)
28)
29)
30)
31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
温が高いほど盛んであることを確認しているHervio-Heathら(27)の行ったフランスの全国環
境調査によればボルドー地方のジロンド川沿岸において高濃度のLf VUnficusを検出して
おりそのときの塩分濃度は10~20oとなっている一方より温暖な地中海においてはL
vunficusは少ないこれは地中海の塩分濃度が35以上(28)と他の海に比べて高いため
ではないかと考えられるさらに米国においては温暖なNorth Carolina(29)よりも内海であ
るChesapeake Bay(30)の方がより低い海水温度で1f vunz7cusを検出しているこれらの
報告では海水温度の重要性は指摘しているが海水塩分濃度についてはほとんど触れていな
い
我々が行った環境調査の結果河川水の影響を受けやすい海域の方がそうでない海域と
比べて塩分濃度の変動が大きくZvunlfleus濃度が高いことが判明したさらに2003年と
2004年に行った海洋調査の結果外洋に面した海域(図2ポイントLNNなど)では塩分濃度は
雨の影響を殆ど受けないが内海(図2ポイントAQOPJなど)では雨が多く降った後には塩
分濃度が減少しV VUnficusが増殖していることが判明した以上よりZVUnlfCUS感染症
の発生には海水温以外にも降水量と海水塩分濃度などが関係している可能性が高いと考え
られるLVUnflCUS感染症の敗血症型は基礎疾患を有する免疫力の低下したヒトに発症す
る感染症であり健常人に発生することはほとんどないしかしながら創傷型は健常人にも
発症しうることが確認されており(31)公衆衛生的な立場においても患者発生状況の把握
と環境調査が重要であるまたZVUnfieus感染症は夏の感染症であるという認識が一般
的であるが奄美大島から沖縄県にかけては亜熱帯に属しており冬でも海水温が15以下に
なることはない今回の奄美大島における海水調査の結果からも亜熱帯地域においては冬
でも海水中に高濃度のLf vunficusが存在する可能性が高いことが判明した今後地球の
温暖化に伴ってLrsquovunifiaus感染症が発生する期間と地域が拡大することが予想され壊
死性筋膜炎の患者を診た場合にはたとえ冬であっても1VUnfieus感染症を疑わなければ
ならないと考えられる
以上の疫学調査および環境調査の結果より2001年夏にltvunfeus感染症の集団発生
がおこった原因の1つとして環境中におけるUVUnficusの増加による可能性が高いと考えら
れたもう1つの原因はアナジャコの生食である集団発生の敗血症型6名中4名が発症
前にアナジャコを食していたアナジャコ(Upogeba maoゆ(図17)は10本の足を有する節足
49
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
10参考文献
1) Roland FP Leg gangrene and endotoxin shock due to吻ノrsquoloρarahaθ70tieusan
infection acquired in New England coastal watersEnglsquoノMed 1970282=
1306-1307
2) Fernandez CR Pankey GA Tissure invasion by umamed marine励丁os VAMA
1975 233 1173-1176
3) Hollis DG Weaver RE Baker CN et al Halophilic vbro species isolated from
blood cultureslsquoノCn Merobio19763=425-431
4) Farmer JJ III Vibro(Beneekeaノvu7fieus the bacterium associated with sepsis
septicaemia and the sea [letter] Lancet 1979 2 903
5) Blake PA Merson MH Weaver RE et al Disease caused by a marine
吻IOrleclinical characteristics and epidemiology一angFnglsquoノMed 19793001-5
6) Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of vbrio vunfeus
infeotions-olinical and epidemiologic features in Florida cases1981-1987一
ノ17nas7terna Med 198815318-323
7) Kawano S Matsuo T lkeda T et al Fulminating halophilie vibrlo septiGemia一 an
autopsy case一 SashZnlgaku( in Japanese) 1978 33 1243-1248
8) Hill WE Keasjer SP Trucksess MW et aL Polymerase chajn reaction
identification of 吻吻 vunfcus in artificially contaminated oystersノ11
En vron Mlcroblo1991 57 707-711
52
)9
10)
11)
12)
13)
14)
15)
16)
Chuang YC Ko WC Wang ST et al Minocycline and cefotaxime in the treatment
of experimental murine Vbro infeGtion Antmcrob Agents ehemothr 1998 42
1319-1322
Bowdre JH Hull JH Cocchetto DM Antibiotic efficacy against Vlbro vunlfaus in
the mouse superiority of tetracycline lsquoノ Pharmaco ang7xp rher 1983 255=
595-598
Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of 吻ノrsquoo γ吻伽5
infections一一clinical and epidemiologic features in Florida cases 1981-1987一
ノ響ノ7as7te7aMed 198815=318-323
Park SD Shon HS Joh NJ Vlbrlo vunlfieus septicemia in Korea clinical and
epidemiologic findings in seventy patientsノA7lcadOermato199124=
397-403
Collier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermato
7her 2002 15 1-9
Wickboldt LG Sanders CV Vlbrlo vunlfleus infection-case report and update
since 1970一lsquoノノ響7l cadDenato19839=243-251
Chuang YC Yuan CY Liu CY et aL Vibrlo vuneus infection in Taiwan report of
28cases and review of olinical manifestations and treatment C伽7feetang7s
1992 15 271-276
Hsueh PR Lin CY Tang HJ et al吻ノ〕わvunficus in Taiwan Emerg7fectang)is
2004 1 O 1 363-1 368
53
17)
18)
19)
20)
21)
22)
23)
24)
Chan TYK」レfbrlo vu7Zies infections in Asia=an overvier Soカheastlsalsquoノ
lrop Med Heath 1995 26 461-465
Joy耐GM Gomersall CD Lyon DJ Severe necrotizing fasciitis of the extremities
Gaused by vibronaceag experience of a Hong Kong tertiary hospital Hong Kong
Medlsquoノ1999563-68
Maxwell EL Maxwell BC Pearson SR et aL A Gase of vlbrio vunifieus
septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
epidemiology of vbrlo vu7faus infections in Denmark Eurlsquoノθ伽Merobo
nfect Ds 1996 15 227-232
Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
54
25)
26)
27)
28)
29)
30)
31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
類で干潟に1~2mの竪穴を掘りその中に生息する海泥中には海水中よりも高濃度の
ZVUnfieusが存在することを確認しており海泥中に生息するアナジャコはV VUnlficusに
汚染されやすい白材と考えられる瀬戸内海沿岸や九州地方では春から夏の白材として有名
であるが一般には茄でたり天ぷらにして食するところが八代地域においては以前より
生のアナジャコを磨り潰してミンチにし「シャクミソ」と称して食したり醤油漬けにして食べる
習慣があった疫学調査の結果もアナジャコによる発症が6例で最も多かったが全例が熊
本県での発症であり5例が八代地域での発症であったつまりアナジャコの生食は八代
地域に限定した食習慣である可能性が高いと考えられるこれらのことより今回のV
VUnfieUS感染症の集団発生は高温と大量降雨による気象条件とアナジャコの生食という
地域独特の食習慣の2つの要因が重なったために起こった可能性が高いと考えられた
図17アナジャコ(Upogebla maor)十脚目異尾下目アナジャコ上科アナジャコ科アナジャコ
属に属する
50
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
10参考文献
1) Roland FP Leg gangrene and endotoxin shock due to吻ノrsquoloρarahaθ70tieusan
infection acquired in New England coastal watersEnglsquoノMed 1970282=
1306-1307
2) Fernandez CR Pankey GA Tissure invasion by umamed marine励丁os VAMA
1975 233 1173-1176
3) Hollis DG Weaver RE Baker CN et al Halophilic vbro species isolated from
blood cultureslsquoノCn Merobio19763=425-431
4) Farmer JJ III Vibro(Beneekeaノvu7fieus the bacterium associated with sepsis
septicaemia and the sea [letter] Lancet 1979 2 903
5) Blake PA Merson MH Weaver RE et al Disease caused by a marine
吻IOrleclinical characteristics and epidemiology一angFnglsquoノMed 19793001-5
6) Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of vbrio vunfeus
infeotions-olinical and epidemiologic features in Florida cases1981-1987一
ノ17nas7terna Med 198815318-323
7) Kawano S Matsuo T lkeda T et al Fulminating halophilie vibrlo septiGemia一 an
autopsy case一 SashZnlgaku( in Japanese) 1978 33 1243-1248
8) Hill WE Keasjer SP Trucksess MW et aL Polymerase chajn reaction
identification of 吻吻 vunfcus in artificially contaminated oystersノ11
En vron Mlcroblo1991 57 707-711
52
)9
10)
11)
12)
13)
14)
15)
16)
Chuang YC Ko WC Wang ST et al Minocycline and cefotaxime in the treatment
of experimental murine Vbro infeGtion Antmcrob Agents ehemothr 1998 42
1319-1322
Bowdre JH Hull JH Cocchetto DM Antibiotic efficacy against Vlbro vunlfaus in
the mouse superiority of tetracycline lsquoノ Pharmaco ang7xp rher 1983 255=
595-598
Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of 吻ノrsquoo γ吻伽5
infections一一clinical and epidemiologic features in Florida cases 1981-1987一
ノ響ノ7as7te7aMed 198815=318-323
Park SD Shon HS Joh NJ Vlbrlo vunlfieus septicemia in Korea clinical and
epidemiologic findings in seventy patientsノA7lcadOermato199124=
397-403
Collier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermato
7her 2002 15 1-9
Wickboldt LG Sanders CV Vlbrlo vunlfleus infection-case report and update
since 1970一lsquoノノ響7l cadDenato19839=243-251
Chuang YC Yuan CY Liu CY et aL Vibrlo vuneus infection in Taiwan report of
28cases and review of olinical manifestations and treatment C伽7feetang7s
1992 15 271-276
Hsueh PR Lin CY Tang HJ et al吻ノ〕わvunficus in Taiwan Emerg7fectang)is
2004 1 O 1 363-1 368
53
17)
18)
19)
20)
21)
22)
23)
24)
Chan TYK」レfbrlo vu7Zies infections in Asia=an overvier Soカheastlsalsquoノ
lrop Med Heath 1995 26 461-465
Joy耐GM Gomersall CD Lyon DJ Severe necrotizing fasciitis of the extremities
Gaused by vibronaceag experience of a Hong Kong tertiary hospital Hong Kong
Medlsquoノ1999563-68
Maxwell EL Maxwell BC Pearson SR et aL A Gase of vlbrio vunifieus
septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
epidemiology of vbrlo vu7faus infections in Denmark Eurlsquoノθ伽Merobo
nfect Ds 1996 15 227-232
Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
54
25)
26)
27)
28)
29)
30)
31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
9結語
本研究によって従来不明な点が多かった日本におけるLtVUnlficus感染症の発生状況が
判明した毎年相当数の患者が発生しその大部分は肝機能障害などの基礎疾患を有して
いた発生地域では西日本特に北部九州の有明海沿岸と八代海沿岸地域において多く発
生していたこれは有明海八代海が日本有数の干潟を有する内海であり干潮と満潮の潮
位の差が大きく従って広い汽水域を有するためであると予想された汽水域特に大きな河
川が流入する海域においてはその塩分濃度は河川水の影響を受けやすい大量の雨が降っ
た後には海水が河川水により希釈され塩分濃度が下がり1VUnficusの増殖に適した環
境が形成される従って内海地域においては大雨が降った後には十分な注意が必要であ
ると考えられるまた夏の感染症と考えられる同症は亜熱帯地域では冬でも発生しうると
考えられる今後の地球温暖化に伴って発生数が増加するのではないかと懸念される
ZVUnficus感染症は稀ではあるが一旦発症すると予後不良であり予防することが肝要
である今後はV VUnlfiaus感染症に対する医師および社会の認知度を上げることにより
同症の発生を予防することができるのではないかと期待される
51
10参考文献
1) Roland FP Leg gangrene and endotoxin shock due to吻ノrsquoloρarahaθ70tieusan
infection acquired in New England coastal watersEnglsquoノMed 1970282=
1306-1307
2) Fernandez CR Pankey GA Tissure invasion by umamed marine励丁os VAMA
1975 233 1173-1176
3) Hollis DG Weaver RE Baker CN et al Halophilic vbro species isolated from
blood cultureslsquoノCn Merobio19763=425-431
4) Farmer JJ III Vibro(Beneekeaノvu7fieus the bacterium associated with sepsis
septicaemia and the sea [letter] Lancet 1979 2 903
5) Blake PA Merson MH Weaver RE et al Disease caused by a marine
吻IOrleclinical characteristics and epidemiology一angFnglsquoノMed 19793001-5
6) Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of vbrio vunfeus
infeotions-olinical and epidemiologic features in Florida cases1981-1987一
ノ17nas7terna Med 198815318-323
7) Kawano S Matsuo T lkeda T et al Fulminating halophilie vibrlo septiGemia一 an
autopsy case一 SashZnlgaku( in Japanese) 1978 33 1243-1248
8) Hill WE Keasjer SP Trucksess MW et aL Polymerase chajn reaction
identification of 吻吻 vunfcus in artificially contaminated oystersノ11
En vron Mlcroblo1991 57 707-711
52
)9
10)
11)
12)
13)
14)
15)
16)
Chuang YC Ko WC Wang ST et al Minocycline and cefotaxime in the treatment
of experimental murine Vbro infeGtion Antmcrob Agents ehemothr 1998 42
1319-1322
Bowdre JH Hull JH Cocchetto DM Antibiotic efficacy against Vlbro vunlfaus in
the mouse superiority of tetracycline lsquoノ Pharmaco ang7xp rher 1983 255=
595-598
Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of 吻ノrsquoo γ吻伽5
infections一一clinical and epidemiologic features in Florida cases 1981-1987一
ノ響ノ7as7te7aMed 198815=318-323
Park SD Shon HS Joh NJ Vlbrlo vunlfieus septicemia in Korea clinical and
epidemiologic findings in seventy patientsノA7lcadOermato199124=
397-403
Collier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermato
7her 2002 15 1-9
Wickboldt LG Sanders CV Vlbrlo vunlfleus infection-case report and update
since 1970一lsquoノノ響7l cadDenato19839=243-251
Chuang YC Yuan CY Liu CY et aL Vibrlo vuneus infection in Taiwan report of
28cases and review of olinical manifestations and treatment C伽7feetang7s
1992 15 271-276
Hsueh PR Lin CY Tang HJ et al吻ノ〕わvunficus in Taiwan Emerg7fectang)is
2004 1 O 1 363-1 368
53
17)
18)
19)
20)
21)
22)
23)
24)
Chan TYK」レfbrlo vu7Zies infections in Asia=an overvier Soカheastlsalsquoノ
lrop Med Heath 1995 26 461-465
Joy耐GM Gomersall CD Lyon DJ Severe necrotizing fasciitis of the extremities
Gaused by vibronaceag experience of a Hong Kong tertiary hospital Hong Kong
Medlsquoノ1999563-68
Maxwell EL Maxwell BC Pearson SR et aL A Gase of vlbrio vunifieus
septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
epidemiology of vbrlo vu7faus infections in Denmark Eurlsquoノθ伽Merobo
nfect Ds 1996 15 227-232
Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
54
25)
26)
27)
28)
29)
30)
31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
10参考文献
1) Roland FP Leg gangrene and endotoxin shock due to吻ノrsquoloρarahaθ70tieusan
infection acquired in New England coastal watersEnglsquoノMed 1970282=
1306-1307
2) Fernandez CR Pankey GA Tissure invasion by umamed marine励丁os VAMA
1975 233 1173-1176
3) Hollis DG Weaver RE Baker CN et al Halophilic vbro species isolated from
blood cultureslsquoノCn Merobio19763=425-431
4) Farmer JJ III Vibro(Beneekeaノvu7fieus the bacterium associated with sepsis
septicaemia and the sea [letter] Lancet 1979 2 903
5) Blake PA Merson MH Weaver RE et al Disease caused by a marine
吻IOrleclinical characteristics and epidemiology一angFnglsquoノMed 19793001-5
6) Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of vbrio vunfeus
infeotions-olinical and epidemiologic features in Florida cases1981-1987一
ノ17nas7terna Med 198815318-323
7) Kawano S Matsuo T lkeda T et al Fulminating halophilie vibrlo septiGemia一 an
autopsy case一 SashZnlgaku( in Japanese) 1978 33 1243-1248
8) Hill WE Keasjer SP Trucksess MW et aL Polymerase chajn reaction
identification of 吻吻 vunfcus in artificially contaminated oystersノ11
En vron Mlcroblo1991 57 707-711
52
)9
10)
11)
12)
13)
14)
15)
16)
Chuang YC Ko WC Wang ST et al Minocycline and cefotaxime in the treatment
of experimental murine Vbro infeGtion Antmcrob Agents ehemothr 1998 42
1319-1322
Bowdre JH Hull JH Cocchetto DM Antibiotic efficacy against Vlbro vunlfaus in
the mouse superiority of tetracycline lsquoノ Pharmaco ang7xp rher 1983 255=
595-598
Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of 吻ノrsquoo γ吻伽5
infections一一clinical and epidemiologic features in Florida cases 1981-1987一
ノ響ノ7as7te7aMed 198815=318-323
Park SD Shon HS Joh NJ Vlbrlo vunlfieus septicemia in Korea clinical and
epidemiologic findings in seventy patientsノA7lcadOermato199124=
397-403
Collier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermato
7her 2002 15 1-9
Wickboldt LG Sanders CV Vlbrlo vunlfleus infection-case report and update
since 1970一lsquoノノ響7l cadDenato19839=243-251
Chuang YC Yuan CY Liu CY et aL Vibrlo vuneus infection in Taiwan report of
28cases and review of olinical manifestations and treatment C伽7feetang7s
1992 15 271-276
Hsueh PR Lin CY Tang HJ et al吻ノ〕わvunficus in Taiwan Emerg7fectang)is
2004 1 O 1 363-1 368
53
17)
18)
19)
20)
21)
22)
23)
24)
Chan TYK」レfbrlo vu7Zies infections in Asia=an overvier Soカheastlsalsquoノ
lrop Med Heath 1995 26 461-465
Joy耐GM Gomersall CD Lyon DJ Severe necrotizing fasciitis of the extremities
Gaused by vibronaceag experience of a Hong Kong tertiary hospital Hong Kong
Medlsquoノ1999563-68
Maxwell EL Maxwell BC Pearson SR et aL A Gase of vlbrio vunifieus
septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
epidemiology of vbrlo vu7faus infections in Denmark Eurlsquoノθ伽Merobo
nfect Ds 1996 15 227-232
Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
54
25)
26)
27)
28)
29)
30)
31)
Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
55
- 標題13
- 目次13
- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
-
- 7 結果13
-
- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
-
- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
-
)9
10)
11)
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13)
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16)
Chuang YC Ko WC Wang ST et al Minocycline and cefotaxime in the treatment
of experimental murine Vbro infeGtion Antmcrob Agents ehemothr 1998 42
1319-1322
Bowdre JH Hull JH Cocchetto DM Antibiotic efficacy against Vlbro vunlfaus in
the mouse superiority of tetracycline lsquoノ Pharmaco ang7xp rher 1983 255=
595-598
Klontz KC Lieb S Schreiber M et al Syndromes of 吻ノrsquoo γ吻伽5
infections一一clinical and epidemiologic features in Florida cases 1981-1987一
ノ響ノ7as7te7aMed 198815=318-323
Park SD Shon HS Joh NJ Vlbrlo vunlfieus septicemia in Korea clinical and
epidemiologic findings in seventy patientsノA7lcadOermato199124=
397-403
Collier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermato
7her 2002 15 1-9
Wickboldt LG Sanders CV Vlbrlo vunlfleus infection-case report and update
since 1970一lsquoノノ響7l cadDenato19839=243-251
Chuang YC Yuan CY Liu CY et aL Vibrlo vuneus infection in Taiwan report of
28cases and review of olinical manifestations and treatment C伽7feetang7s
1992 15 271-276
Hsueh PR Lin CY Tang HJ et al吻ノ〕わvunficus in Taiwan Emerg7fectang)is
2004 1 O 1 363-1 368
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Chan TYK」レfbrlo vu7Zies infections in Asia=an overvier Soカheastlsalsquoノ
lrop Med Heath 1995 26 461-465
Joy耐GM Gomersall CD Lyon DJ Severe necrotizing fasciitis of the extremities
Gaused by vibronaceag experience of a Hong Kong tertiary hospital Hong Kong
Medlsquoノ1999563-68
Maxwell EL Maxwell BC Pearson SR et aL A Gase of vlbrio vunifieus
septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
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nfect Ds 1996 15 227-232
Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
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diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
Vbノrsquoovun7cuS the role of operative infeGtion」ノ4770ヒ鞠901 Surgeons 1996
183 329-334
Dollier DN Cutaneous infections from coastal and marine bacteria Dermatooga
7herapy 2002 15 1-9
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Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
coastal areas of France UAppIMeroblo 2002 92 1123-1135
Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
vbro vunffleus in seawater and plankton of a coastal zone of the Mediterranean
Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
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- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 6-5 奄美地方の海水調査13
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- 7 結果13
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- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 7-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
- 7-5 奄美地方の海水調査13
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- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
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Chan TYK」レfbrlo vu7Zies infections in Asia=an overvier Soカheastlsalsquoノ
lrop Med Heath 1995 26 461-465
Joy耐GM Gomersall CD Lyon DJ Severe necrotizing fasciitis of the extremities
Gaused by vibronaceag experience of a Hong Kong tertiary hospital Hong Kong
Medlsquoノ1999563-68
Maxwell EL Maxwell BC Pearson SR et aL A Gase of vlbrio vunifieus
septicaemia acquired in Victoriagdlsquoノノlusrsquoaa 1991154=214-215
Dalsgaard A Moller NF Hoi BB et al Clinical manifestations and molecular
epidemiology of vbrlo vu7faus infections in Denmark Eurlsquoノθ伽Merobo
nfect Ds 1996 15 227-232
Nair NV Sengupta DN Ghosh S Halophilic vbrlos from fish and meat in Calcutta
7da7lsquoノMed Res 197563=558-564
Kojo Y Johno M Nakagawa K et al Vlbro vunfueus infection strategy for
diagnosis and treatment VpnノDermato(in Japanese)199916=61-66
Halow KD Harner RC and Fontenelle LJ Primary skin infections secondary to
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Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
Med 1991 155 400-403
Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
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Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
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Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
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- 1 要旨13
- 2 発表論文リスト13
- 3 謝辞13
- 4 略語一覧13
- 5 研究の背景と目的13
- 6 方法13
-
- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
- 6-3 熊本県におけるVvulnificus感染症の集計13
- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
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-
- 7 結果13
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- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
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- 7-5 奄美地方の海水調査13
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- 8 考察13
- 9 結語13
- 10 参考文献13
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Keenig KL Mueller J Rose T VbrZo vunfeus-hazard on the half shell一 West lsquo
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Hoi L Larsen JL Dalsgaard l and Dalsgaad A Occurrence of vlbro vunifaus
biotypes in Danish marine environmentsノ響e En吻伽吻1199864=7-14
Hervio-Heath D Colwell RR Derrien A et al Occurrence of pathogenic吻ノ〕わ5 in
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Maugeri TL Carbene M Vera MT Gugliandolo C Detection and differentiation of
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Sea Reseaeh ln Mlcroboogy 2006 157 194-200
Pfeffer CS Hite MF Oliver JD Ecology of vbro vunlfeus in estuarine waters of
eastern North Carolina AppEnvlron Merobo2003 698 3526一3531
Wright AC Hill RT Johnson JA et al Distribution of vbro vulnfZeus in
Chesapeake Bay App En utron Mcrobo 1996 62 717-724
井上雄二三宅大我藤澤明彦宮坂次郎甲木和子小野友道外傷性VbrO
vunficus感染症鰯膨療2004261289-1292
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- 2 発表論文リスト13
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- 6 方法13
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- 6-1 2001年6月~7月にかけて熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 6-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
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- 6-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
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- 7-1 2001年6月~7月における熊本県八代地域でのVvulnificus感染症集団発生の調査13
- 7-2 Vvulnificus感染症の疫学調査13
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- 7-4 有明海八代海における環境中のVvulnificusについて13
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