事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2....

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事業報告書

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Page 1: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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事業報告書

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2 目次

1. はじめに……………………………………………………………………………………………………………… 3 1-1. メディアコンテンツ産業を捉えるための2つの軸 4

2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析…………………………………………………………………………… 5 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業支援策…………………………………………………………………………………………… 7 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS)

2-1-2. 間接的経済効果 (コ・フェスタ) 2-2. 現在のコンテンツ産業の市場規模……………………………………………………………………………………………… 12 2-2-1. 現在のコンテンツ産業の国内市場規模 2-2-2. 現在のコンテンツ産業の海外展開状況 2-2-3. 現在のコンテンツ産業の間接効果

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測………………………………………………………………………… 19 3-1. コンテンツ産業を取り巻く環境 「技術的変化」と「社会的変化」……………………………………………………… 20 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境…………………………………………………………… 27 3-3. 2015年における国内コンテンツ産業の状況………………………………………………………………………………… 39 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み…………………………………………………………………………… 46

4. ビジョンを実現するために官民が連携して取り組むこと…………………………………………………… 59 4-1. 2030年のコンテンツ産業に向けたエコシステムの確立…………………………………………………………………… 60 4-2. 4-2. ビジョン実現のための2つの戦略:「ローカルコンテンツ戦略」と「グローバルコンテンツ戦略」…………… 61 4-2-1. ローカルコンテンツ戦略 (コンテンツ面) 4-2-2. グローバルコンテンツ戦略 (メディア・流通面)

4-3. 戦略を推進するための具体的な政策………………………………………………………………………………………… 64

《参考》各国政策比較

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3 1. はじめに

日本のコンテンツ産業には世界的な需要があり、過去10年間で見たコンテンツ産業の経済規模が成長していることからも、これまでの政策が一定の成果を挙げていると言える。

しかしながら、コンテンツ産業を取り巻く環境は日々変化を続けている。モバイルデバイスやインターネットインフラの普及・拡大、クラウドサービスの一般化、誰も

が制作者になれる開発環境といった技術的な変化に加え、経済のボーダレス化による競争の激化、新興市場としての魅力を増すASEAN諸国の経済的成長、SNSの普及やビッグデータ分析利用による消費者参加型の社会、少子高齢化にともなう個人の嗜好のパーソナライズ化といった社会的な変化が、コンテンツ産業に多大な影響を与えることとなる。

今後2030年まで、コンテンツ産業がさらなる成長を遂げるには、こうした環境の変化を考慮したうえで長期的ビジョンを考える必要があり、進化する技術を活かした

新たなサービスの確立、ASEANを中心とした新たな海外市場の開拓などにつなげることが求められる。 上記を踏まえ、本事業報告書においては、「2.日本のコンテンツ産業の経済効果分析」で過去の政策効果を計測したうえで、「3.コンテンツ産業の現状と構造変化予

測」で技術的・社会的変化を整理するとともに、「4.ビジョンを実現するために官民が連携して取り組むこと」で具体的な取り組み案を示していくものとする。

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4 1-1. メディアコンテンツ産業を捉えるための2つの軸

メディア・流通

パッケージ ネットワーク 劇場

専用スペース 放送 新市場

動画

• DVD • Blu-ray

• 動画配信 • 映画 • ステージ

• 地上波 • BS • CS • CATV

音楽・音声

• CD • DVD • Blue-ray

• 音楽配信 • カラオケ • コンサート

• ラジオ

ゲーム

• ゲーム機 向けソフト

• オンラインゲーム • ソーシャルゲーム

• アーケードゲーム

静止画 テキスト他

• 書籍 • 雑誌 • 新聞 • フリーペーパー

• 電子書籍 • 各種情報配信

新サービス

メディアコンテンツ産業を「コンテンツ」と「メディア・流通」の2つの軸で捉える

メディアコンテンツ産業は、「動画」「音楽」「ゲーム」といった「コンテンツ軸」と「パッケージ」「ネットワーク」「劇場」といった「メディア・流通軸」の2つの軸で捉えられている。本編ではこの2軸で考えていくために、明示的に「コンテンツ」に関するものをオレンジ、「メディア・流通」に関するものを水色で表現する。

コンテンツ (制作・技術)

1. はじめに >

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2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析

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6 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 [サマリ]

2-1.過去10年間のコンテンツ産業支援策

2-1-1. 直接的効果(JCS) 商談金額は、開催回数を重ねるたびに増加し、それぞれ初回開催時「約6.7億円」(商談件数「1,110件」)から、2014年時では、「約54.0億円」 (商談件数「5,699件」)の取引がされるマーケットに成長。

2-1-2. 間接的効果(コ・フェスタ) オフィシャルイベントと、パートナーイベントが連携することにより、全体として来場者数が増加し、業界内連携も促進された。

2-2. 現在のコンテンツ産業の経済規模

商談金額

54億円

商談金額

6.7億円

2004年 2014年

BtoC市場への効果 • 国内/海外からの

来場者増加

BtoB市場への効果 • 業界内連携の

促進

メディア コンテンツ産業 合計 12兆3,247億円

BtoC市場の追加要素 合計 4兆6,318億円

BtoB市場の追加要素 合計 4兆6,032億円

メディア コンテンツ産業 合計 12兆0,748億円

2004年

2014年

委託費

3.5億円 委託費

1.5 億円

2-2-1. 直接的効果 2004年当時と現在では、新しいデバイスの誕生や新サービスの誕生のほか、社会が変容し、コンテンツ産業の経済規模を算出するにあたり、以下の変化を考慮し、現在の規模を算出する。

2-2-3. 間接効果 日本のコンテンツに起因するインバウンドの経済効果。

外国人観光客への間接効果 2,588億円

2014年

Partner 6件 4万人

Official 18件 76万人

Partner 15件 34万人

Official 18件 100万人

2007年

BtoC市場の追加要素

BtoB市場の追加要素

4つの視点から経済効果分析を行う

以下のように、「2-1.過去10年間のコンテンツ産業政策」について2つ、「2-2. 現在のコンテンツ産業の経済規模 」について2つの、合計4つの視点から経済効果に関する分析を行う。

外国人観光客への間接効果 905億円

2-2-2. 海外展開状況 日本のコンテンツの海外展開。

海外展開 1兆5,775億円

海外展開 6,037億円

2007年 2014年

2004年

2014年

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7 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 >

過去10年間のコンテンツ産業の海外展開支援策についての経済効果を測定する

海外展開支援策については、直接的経済効果(JCS(Japan Content Showcase))と間接的経済効果(コ・フェスタ) について分析する。

2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) Japan Content Showcase は、映像・音楽・アニメーションの国際見本市を集約し、コンテンツの垣根を越えたコンテンツマーケットである。日本で唯一の国際 映画製作者連盟公認の国際映画祭である東京国際映画祭(TIFF)併設マーケットの「TIFFCOM」と、音楽の国際マーケット「東京国際ミュージックマーケット(TIMM)」、アニメーション関連を中心とした「東京国際アニメ祭(TIAF)」との合同マーケットとして、東京・お台場のホテル グランパシフィック LE DAIBAにて開催されている。

2-1-2. 間接的経済効果(コ・フェスタ) コ・フェスタ( JAPAN国際コンテンツフェスティバル )とは日本が誇るゲーム、アニメ、マンガ、キャラクター、放送、音楽、映画といったコンテンツ産業およびファッション、デザイン等コンテンツと親和性の高い産業に関わる各種イベントを効果的に海外に発信するための海外発信力強化支援プロジェクトである。

日本コンテンツ ファンである世界30カ国・地域以上の留学生を組織化した「コ・フェスタ アンバサダー」を通じて、SNSによる情報発信や外国人消費者としてのリアルな声を提供することによって、日本コンテンツの海外発信力強化を支援している。

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8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策 >

2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

事業費は、2011年までは約1.5億円(TIFFCOM)、2012年以降は約3.5億円(JCS)で推移しており、商談金額は、初回開催時の約6.7億円(商談件数1,110件)から開催回数を重ねるたびに増加し、2014年では約54.0億円(商談件数5,699件)まで成長している。累計では、委託費 約21.5億円に対して、成約金額 約339.8億円(商談件数33,147件)の効果を得ている。

115 百万円 125 百万円 125 百万円 150 百万円 141 百万円 141 百万円 160 百万円 168 百万円 328 百万円 345 百万円 350 百万円

668 百万円

971 百万円

1,554 百万円

1,794 百万円

1,975 百万円

4,206 百万円

3,336 百万円

3,596 百万円

4,135 百万円

6,339 百万円

5,403 百万円

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度

事業費と成約金額

事業費(百万円) 成約金額(百万円)

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9 2-1-1. 直接的経済効果(JCS)の経年変化 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策 >

JCSの商談件数、成約金額については増加傾向にある

「JCS」の認知度が各国のコンテンツ産業界に浸透することによって、商談件数および成約金額は増加傾向にある。また、来場者数および出展社数についても同様に増加傾向にある。

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度

JCS実績値(右軸:入場者数、左軸:その他)

入場者数

出展社数

商談件数

成約金額(百万円)

(右軸)

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10 2-1-2. 間接的経済効果(コ・フェスタ) (1)

コ・フェスタの実施により、世界各国および各業界に対して「コンテンツ産業」への関心が広がった

2007年以降、コンテンツ産業と親和性の高いファッションやデザインなどの各種イベントを効果的に発信するための海外発信力強化プロジェクトとして「コ・フェスタ」を開催。来場者は、初回開催時の約80万人から最大で約230万人まで増加し、累計、約1,140万人が参加。毎年のイベント規模を維持するとともに、Official Event ,

Partner Event に、開催時の26件から2014年までの累積では88件のイベントが参画。2012年からは日本のコンテンツファンである留学生を中心に組織した「コ・フェスタアンバサダー」制度を開始。

2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策 >

BtoC市場への効果

国内/海外からの来場者増加

BtoB市場への効果

業界内連携の促進

コ・フェスタイベント・入場者数

• イベント累計:88件 • 入場者累計:約1,140万人

コ・フェスタ アンバサダーによる情報発信

• 2012年~2015年累計:40か国、657名が全世界に情報発信し、それを見た海外の日本のコンテンツファンによって情報を共有・拡散

2014年

Partner Event 15件

34万人

Official Event 18件

76万人

Official Event 18件

100万人

2007年

Partner Event 6件

4万人

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コ・フェスタによる国際展開 (BtoB市場への効果)

コ・フェスタには、コンテンツ産業以外の関連産業からも数多くの参加があり、これらとのコンテンツ産業との連携が生まれ、各イベントの商談件数の増加にも貢献した。

人材

ロボット

技術

教育

デザイン

ファッション

コ・フェスタ アンバサダーによる国際展開 (BtoC市場への効果)

2012年より日本のコンテンツファンである留学生を中心に組織した「コ・フェスタ アンバサダー」制度を開始。毎年、約35か国、約150名程度が参加し、SNS等を活用しながら、日本コンテンツのファンが参加・共有するかたちで、合計47か国に情報発信を行った。フィリピンの有名コスプレイヤーであるAlodia(アローディア)やシンガポールの有名ブロガーであるXiaXue(シャーシュエ)など、ネット上で影響力のあるインフルエンサーも海外アンバサダーとして参加しており、世界への情報発信が強化された。

(Alodia はFacebookページで560万以上、XiaXue はInstagramで60 万以上のファンを抱えており、両者ともひとつの投稿で数十万単位にリーチし、万単位の「いいね!」を獲得している)

2-1-2. 間接的経済効果(コ・フェスタ) (2) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策 >

コ・フェスタ アンバサダーによる情報発信

• 2012年:31か国 137名 • 2013年:35か国 166名 • 2014年:36か国 154名 • 2015年:40か国 200名

発信力の高い コ・フェスタアンバサダーによる拡散

(例)著名なコ・フェスタ アンバサダーのフォロワー数 • Alodia(フィリピン)

Facebook:約560万 Instagram:約50万 • XiaXue(シンガポール)

Facebook:約40万 Instagram:約60万

連携したコンテンツ関連産業の例 コ・フェスタによる連携効果による商談件数の増加

東京ゲームショウ JCS 2007年: - 2,044件 2008年: - 2,559件 2009年: - 2,871件 2010年: 228件 3,041件 2011年: 235件 3,137件 2012年: 249件 4,033件 2013年: 397件 4,844件 2014年: 437件 5,699件 2015年: 475件 6,663件

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2-2-1. 国内市場規模 21兆3,108億円 2-2-1. 国内市場規模 18兆4,091億円

2-2-2. 海外展開(2007年※1) 6,037億円 ※1 デジタルコンテンツ白書2015基準で取得できる最も古い年の数値であるため2007年度の 数値を代用

2-2. 現在のコンテンツ産業の市場規模 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析

BtoCの追加要素 合計4兆6,318億円

BtoBの追加要素 合計4兆6,042億円

メディアコンテンツ産業 合計12兆0,748億円 デジタルコンテンツ白書2015ベース

デジタルコンテンツ白書基準とBtoC / BtoB市場の追加要素、および海外展開分を合算して市場規模を算出

デジタルコンテンツ白書の基準にBtoC / BtoB市場の各統計情報と海外展開分の金額を合算すると、コンテンツ産業の市場規模は2004年次の約19兆円から、2014年では約23兆円まで拡大している。

メディアコンテンツ産業 合計12兆3,247億円 デジタルコンテンツ白書2004ベース

BtoC市場の追加要素 合計3兆3,836億円

BtoBの追加要素 合計2兆7,008億円

2-2-2. 海外展開 1兆5,775億円

2004年 合計19兆1,033億円

2014年 合計23兆1,471億円

2-2-3. 海外からの訪日観光客への間接効果 905億円

2-2-3. 海外からの訪日観光客への間接効果 2,588億円

約4兆0,438億円の増加

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2004年 合計18兆4,091億円

2014年 合計21兆3,108億円

2-2-1. 現在のコンテンツ産業の国内市場規模 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-2. 現在のコンテンツ産業の市場規模 >

メディアコンテンツ産業 合計12兆3,247億円 デジタルコンテンツ白書2004ベース

• 映像 4兆6,152億円 • 音楽・音声 1兆6,878億円 • ゲーム 1兆1,043億円 • 静止画・テキスト 4兆9,174億円

BtoCの追加要素 合計4兆6,318億円

• モバイルコンテンツ 1兆4,566億円 • フューチャーフォン 1,540億円

(ソーシャルゲーム、着メロ、着うた、その他) • スマートフォン 1兆3,026億円

(ゲーム・ソーシャルゲーム、動画・映像、電子書籍、音楽コンテンツ、その他)

• キャラクタービジネス市場規模(商品化権、版権) 2兆3,110億円 • テーマパーク 6,061億円 • eラーニング 1,745億円 • スポーツ観戦 746億円 • ウェアラブル機器&サービス 90億円

BtoBの追加要素 合計4兆6,042億円

• カラオケソフト制作費 374億円 • 企業向け Webインテグレーション(WEB制作)市場 966億円 • プロモーションメディア系広告費 1兆9,294億円 • ネット広告制作費 2,274億円 • 制作ゲームアプリ費 266億円 • インターネット附随サービス業>コンテンツ配信 4,390億円 • インターネット附随サービス業>サイト運営業務 6,586億円 • コンテンツ関連派遣人件費 5,946億円 • 上記を受け入れる企業のコンテンツ担当者の人件費 5,946億円

メディアコンテンツ産業 合計12兆0,748億円 デジタルコンテンツ白書2015ベース

• 映像 4兆5,399億円 • 音楽・音声 1兆3,271億円 • ゲーム 1兆5,768億円 • 静止画・テキスト 4兆6,310億円

デジタルコンテンツ白書基準とBtoC / BtoB市場の追加要素を合算して国内市場規模を算出

デジタルコンテンツ白書の基準にBtoC / BtoB市場の各統計情報を合算すると、コンテンツ産業の国内市場規模は2004年次の約18兆円から、2014年では約21兆円まで拡大している。

BtoC市場の追加要素 合計3兆3,836億円

• モバイルコンテンツ 2,603億円 • キャラクタービジネス市場規模(商品化権、版権) 2兆5,725億円 • テーマパーク 4,108億円 • eラーニング 823億円 • スポーツ観戦 577億円 • ウェアラブル機器&サービス ---億円

BtoBの追加要素 合計2兆7,008億円 • カラオケソフト出荷額 413億円 • 企業向けWEBインテグレーション 653億円 • プロモーションメディア系広告費 1兆9,561億円 • ネット広告制作費 180億円 • 制作ゲームアプリ費用 ----- • インターネット附随サービス業>コンテンツ配信 275億円 • インターネット附随サービス業>サイト運営業務 3,208億円 • コンテンツ関連派遣人件費 1,359億円 • 上記を受け入れる企業のコンテンツ担当者の人件費 1,359億円

約2兆9,017億円の増加

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14 2-2-1-1. コンテンツ産業の市場規模の変遷

119,578 億円

118,037 億円

118,623 億円

119,138 億円

120,748 億円

116,500 億円

117,000 億円

117,500 億円

118,000 億円

118,500 億円

119,000 億円

119,500 億円

120,000 億円

120,500 億円

121,000 億円

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

メディアコンテンツ産業の市場規模(デジタルコンテンツ白書2015より) 市場規模(億円)

東日本大震災の影響を受け、2011年に大きく落ち込むがその後、回復

2011年3月の東日本大震災の影響を受け、消費者のコンテンツへの接触機会が減ることにより市場規模が縮小したが、徐々に回復し、2014年には2010年の規模を超えている。

[出典] デジタルコンテンツ白書2015

2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-2. 現在のコンテンツ産業の市場規模 > 2-2-1. 現在のコンテンツ産業の国内市場規模 >

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15 2-2-1-2. 近年のコンテンツ産業構造の変化について(メディア別)

メディア別コンテンツ産業の市場規模ではネットワークメディアの市場が拡大

2010年以降のコンテンツ産業は、ネットワークメディアの市場が堅調に拡大している。一方で、パッケージメディアの市場は逓減。その他のメディアは、ほぼ横ばいで推移し、コンテンツを保有するメディアに変化が起きている。

[出典] デジタルコンテンツ白書2015

市場規模(億円)

パッケージ

ネットワーク

0 億円

10,000 億円

20,000 億円

30,000 億円

40,000 億円

50,000 億円

60,000 億円

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

メディア別コンテンツ産業の市場規模の推移(デジタルコンテンツ白書2015より)

パッケージ ネットワーク 劇場・専用スペース 放送

2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-2. 現在のコンテンツ産業の市場規模 > 2-2-1. 現在のコンテンツ産業の国内市場規模 >

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16 2-2-1-3. 近年のコンテンツ産業構造の変化について(配信環境別)

スマートフォン向け市場の成長とフィーチャーフォン向け市場の縮小

スマートフォンシフトにより、フィーチャーフォン向けの売上については2010年以降、大きく減少している。逆にスマートフォンを主な対象としたネットワークコンテンツ配信サービスは好調に成長を続けており、特にPuzzle and Dragon やモンスターストライクなど大ヒットのあった「オンラインゲーム、運営サービス売上」の伸びが顕著である。また2012年以降、静止画・テキスト(主に電子書籍)が拡大しているのは、Amazon Kindleや楽天koboなどの「電子書籍」端末およびサービスが普及し始めたためと考えられる。

0 億円

1,000 億円

2,000 億円

3,000 億円

4,000 億円

5,000 億円

6,000 億円

7,000 億円

8,000 億円

9,000 億円

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

ネットワークメディアの市場規模 (デジタルコンテンツ白書2015より)

ネットワーク動画 音楽・音声配信売上 静止画・テキスト売上

フィーチャーフォン向け売上 オンラインゲーム 運営サービス売上

市場規模(億円)

オンラインゲーム 運営サービス売上※1

(スマホゲーム含む)

フィーチャーフォン 向けの売上

静止画・テキスト売上

(電子書籍含む)

※1 一般社団法人日本オンラインゲーム協会「市場調査レポート」 、総務省「モバイルコンテンツの産業構造実態に関する調査結果」および一般社団法人モバイル・コンテンツフォーラム調査より推計

2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-2. 現在のコンテンツ産業の市場規模 > 2-2-1. 現在のコンテンツ産業の国内市場規模 >

Page 17: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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17 2-2-2. 現在のコンテンツ産業の海外展開状況

スマホゲームの登場などにより大きく変化している

2007年と比較して、2014年の海外展開は、約1兆円拡大している。

※家庭用ゲームソフトについて、2012年までは、日本法人による海外向け出荷本数の数値となる。2013年以降は、日本法人に加えて、海外法人による出荷本数が含まれている。

2007年 合計6,037億円 映画 映画輸出実績 79億円

家庭用ゲーム ゲームソフト出荷規模 5,600億円

オンラインゲーム 海外輸出(ライセンスアウト) 3億円 国内運営売上(海外でサービス) - 億円 海外拠点でサービス売上(日系企業等) - 億円

アニメーション アニメプロダクションの海外収入 263億円

放送 番組放送権の輸出額 92億円 放送コンテンツ関連輸出額 (番組放送権を除く) - 億円

2014年 合計1兆5,775億円 映画 映画輸出実績 91億円

家庭用ゲーム ゲームソフト出荷規模 1兆3,747億円

オンラインゲーム 海外輸出(ライセンスアウト) 86億円 国内運営売上(海外でサービス) 17億円 海外拠点でサービス売上(日系企業等) 1,501億円

アニメーション アニメプロダクションの海外収入 195億円

放送 番組放送権の輸出額 62億円 放送コンテンツ関連輸出額 (番組放送権を除く) 76億円

約9,738億円の増加

2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-2. 現在のコンテンツ産業の市場規模 >

[出典] デジタルコンテンツ白書2015

Page 18: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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18 2-2-3. 現在のコンテンツ産業の間接効果

2014年 合計2,588億円

コンテンツ起因の訪日外国人旅行消費額 サービス(旅行)インバウンドを観光庁「訪日外国人の消費動向」から推計。

(訪日外国人数) (平均消費額) (寄与率)

821万人 × 136,459円 × 23.1% =2,588億円

[算出方法] • 総量:訪日外客数(観光・レジャー目的)13,413,467人×観光・レジ

ャー 61.2(%)=8,209,042人 • 訪日外国人1人当たり旅行支出:日本国内での旅行中支出(パッケ

ージ内訳を含まない)=109,897円 • パッケージツアー参加費に含まれる国内収入分(パッケージ内訳)

=26,562円 • 上記より、訪日外国人の日本国内での旅行支出(パッケージ内訳含

む)=136,459円 • 訪日外国人旅行消費額(観光・レジャー目的):8,209,042人×

136,459円=約1.1兆円 • 起因:「ASEAN3ヵ国訪日インバウンド・ニーズ調査(2013年3月

27日)」より日本旅行の「きっかけ」となった理由でコンテンツ起因(日本のアニメやマンガ)から23.1%と推計

• 推計値:1.1兆円×23.1%=約2,588億円

コンテンツ産業の海外からの訪日観光客への影響を推計

コンテンツ産業の間接経済効果を算出するにあたり、コンテンツ起因の観光客の消費額について推計する。

2004年 合計905億円

コンテンツ起因の訪日外国人旅行消費額 サービス(旅行)インバウンドを観光庁「訪日外国人の消費動向」から推計。

(訪日外国人数) (平均消費額) (寄与率)

334万人 × 117,371円 × 23.1% = 905億円

[算出方法] • 総量:訪日外客数(観光・レジャー目的)6,137,907 人×観光・レジ

ャー 54.4(%)=3,339,021人 • 訪日外国人1人当たり旅行支出:日本国内での旅行中支出(パッケ

ージ内訳を含まない)=96,610円 • パッケージツアー参加費に含まれる国内収入分(パッケージ内訳)

=20,761円 • 上記より、訪日外国人の日本国内での旅行支出(パッケージ内訳含

む)=117,371円 • 訪日外国人旅行消費額(観光・レジャー目的): 3,339,021人×

117,371円=約3,919億円 • 起因:「ASEAN3ヵ国訪日インバウンド・ニーズ調査(2013年3月

27日)」より日本旅行の「きっかけ」となった理由でコンテンツ起因(日本のアニメやマンガ)から23.1%と推計

• 推計値:3,919億円×23.1%=約905億円

約1,683億円の増加

2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-2. 現在のコンテンツ産業の市場規模 >

Page 19: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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19

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測

Page 20: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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20 3-1. コンテンツ産業を取り巻く環境 「技術的変化」と「社会的変化」

[制作者にとっての変化] • 制作ツールの変化

かつて高額だった制作環境の低価格化に加え、Unityなどの簡易な開発エンジンの普及により誰もが制作できる時代となった。一方で、メジャーコンテンツにおいては、資金力と技術力の差による二分化もみられる。

• AI(人工知能)の一般化 AIのさらに高度な技術の進化が続いており、「人間の仕事が奪われる」といった議論もある。

[流通事業者にとっての変化] • ネットワーク回線の高速化

インターネットの普及と高速化が全世界的に進んでおり、中国やASEAN諸国といった新興国においても同様である。

• クラウドコンピューティング インターネットインフラの拡大により、クラウドコンピューティングの一般化が進んでいる。回線の高速化とあわせて、多くのコンテンツがクラウドベースで配信されるようになってきている

[消費者にとっての変化] • SNSの普及

Facebook、LINE、Instagramなど、ほとんどの人が何らかのSNSサービスを利用している。

• 新しいデバイスの登場 スマートフォンに引き続き、ウェアラブルデバイスが登場してきている。

[全世界的変化] • ボーダレス経済

TPPやWTOなどの広域経済連携により、経済がボーダレス化している。また、社会がフラット化していることによって競争も激化している。

• 新興市場 かつては「世界の工場」として注目を集めていたASEANが、経済の成長により、消費市場としても魅力的になってきている。

• 消費者参加型社会 ITインフラの成熟で取引コストがゼロになったり、SNSの普及で個人の意見が広く拡散するようになったり、あるいはUGCやCGMなど、消費者自身が制作したコンテンツを直接他の消費者に届けられるようになったりしたために、消費者が生産に対して大きな影響を及ぼすようになってきている。生産者、流通、消費者という3者で見た場合、かつては生産者が影響力を持つ時代が続いていたが、消費者に感動を与える販売店が支持されるなど、流通や消費者に影響力がシフトしてきた。これは、ビッグデータやディープラーニング等の消費者行動分析を活用できるようになった影響が大きい。

[国内における変化]

• 人口減少社会 多くの分野で個人の嗜好によるパーソナライズ化が進んでいる。大衆から小衆への変化と言うこともでき、マスメディアの筆頭にあったテレビが時代にマッチしなくなったことも、この影響によるところが大きい。

技術的変化 社会的変化

• 「技術的な変化」により、コンテンツ産業の拡大・消費者の利便性の向上が図られ、同時に進展する「社会的な変化」により、コンテンツ産業の拡大と海外市場の拡大が図られる。

• これらの環境変化は、双方の視点からボーダーレス環境が進んでいくことを現しており、より魅力的なコンテンツへと、人材、資金、そして情報が集中することを意味している。このことから、今後は、国際的な視点において考えることが重要となり、今後さらに進んでいくであろうこれらの変化に対して、しかるべき対策を講じなかった場合には、国内のさまざまな資源が流出し、国内コンテンツ産業の衰退をもたらすこととなる。

次ページ以降では、2016年段階の全世界のコンテンツ産業の外部要因、および国内コンテンツ産業の内部要因を行い、 課題を整理する。

[対策を講じない場合に起こりうること] • IP利用の活性化が進まないこと • 制作資金が集まらないこと • IPが海外に流出してしまうこと • AI、VR、3Dプリンタなどの新技術において、海外勢に先行されてしまい、輸入に頼るよ

うになってしまうこと

• 海外プラットフォーマーによる市場支配・ルール形成により制作会社等の下請構造が拡大してしまうこと

• 国産コンテンツの展開が海外コンテンツに負けてしまうこと

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 >

Page 21: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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21

無料/一部無料のゲーム開発ツール

ゲーム開発ツールは無料、または一部無料のものが多く存在しており、「オブジェクト管理ツール」「描画システム(2D)」「プログラミング言語」の組み合わせからできている。iOS、Android、Windows Phone、Web、Mac、Windows、Xbox、PS3、PS4、 PSVitaなど、多くのプラットフォームに対応しているため、商業用ゲームを開発することも可能である。また、近年ではVRデバイスへの出力も始まってきている。

[具体例]

UNITY AssetStoreで他のユーザーが作った データを購入することができ、 コミュニティーも発達している。

http://japan.unity3d.com/

UNREAL ENGINE Epic Gamesによる開発。他に比べて、 3D表現の美しさに定評がある。

https://www.unrealengine.com

CRY ENGINE Crytek社(ドイツ) による開発。 最近では、このエンジンをベースに Amazonから「Amazon Lumberyard」と してリリースされた。

http://cryengine.com/

• 無料、または一部無料の開発ツールが登場している

• すでに一部で、AI(人工知能)を利用したコンテンツ制作が始まっている

• AI(人工知能)が人間の仕事を奪うという議論もある

3-1. [技術的変化][制作者にとっての変化]の事例 - 制作ツールの変化 3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 >

[ファクト]

AI(人工知能)の一般化

現状ではコンテンツ制作を補助・効率化する目的でAI(人工知能)が使われることが多いが、ゲームの「レベルデザイン(難しさ・楽しさの調整)」のような職人的な技術を要する場面でも、将来的な活用可能性が研究されている。

[具体例]

Wordsmith 必要なデータを与えるだけで自動的に文章にしてくれるというプラットフォーム。AP通信社などで採用されている。 [開発元] Automated Insights(AI)社 [関連URL] https://automatedinsights.com

[引用] Wordsmith公式ウェブサイト https://automatedinsights.com/

ANGELINA 「レベルデザイン」すなわちステージ設計を行うAI。単に迷路状のステージをコンピュータが自動生成するものは以前からあるが、ANGELINA はステージを生成しながらそれを自分でプレイし、「楽しさ」を向上させるために調整を繰り返すという機能を持っている。

[開発元] Imperial College London Computational Creativity Group

[関連URL] http://www.gamesbyangelina.org/

MOBIUS FINAL FANTASY SQUARE ENIX iOS / Android

[利用例]

DRAGON QUEST VIII (スマホ版)

SQUARE ENIX iOS / Android

STREET FIGHT V capcom PlayStation 4

[利用例]

FINAL FANTASY VII :Remake SQUARE ENIX PlayStation 4 (予定)

Crysys2 Electric Arts PlayStation 3 / Xbox360 / PC

[利用例]

[引用] Game By Angelina http://www.gamesbyangelina.org/

Page 22: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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22 3-1. [技術的変化][流通事業者にとっての変化]の事例

• 世界各国でネットワークの高速化が進んでいる

• 発展途上国では敷設にコストのかかる固定ブロードバンドよりも、無線ブロードバンドの普及が進んでいる

• ネットワーク回線の高速化に伴い、クラウドコンピューティングが一般化してきている

ネットワーク回線の高速化

インターネットの普及と高速化が全世界的に進んでおり、中国やASEAN諸国といった新興国においても同様である

クラウドコンピューティング

従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由で、サービスとして利用者に提供するもの。利用者側が最低限の環境(パーソナルコンピュータや携帯情報端末などのクライアント、その上で動くWebブラウザ、インターネット接続環境など)を用意することで、どの端末からでも、さまざまなサービスを利用することができる。

クラウドサービスは以下の3つに分類される。

• SaaS(サース、サーズ:Software as a Service) インターネット経由での、電子メール、グループウェア、顧客管理、財務会計などのソフトウェア機能の提供を行うサービス。以前は、ASP(Application Service Provider)などと呼ばれていた。 例) Gmail, Dropbox, Evernote …

• PaaS(パース:Platform as a Service) インターネット経由での、仮想化されたアプリケーションサーバやデータベースなどアプリケーション実行用のプラットフォーム機能の提供を行うサービス。 例) Heroku, Windows Azure, Google App Engine

• IaaS(アイアース:Infrastructure as a Service) インターネット経由で、デスクトップ仮想化や共有ディスクなど、ハードウェアやインフラ機能の提供を行うサービス。HaaS(Hardware as a Service)と呼ばれることもある。 例) Amazon EC2

[ファクト]

固定ブロードバンド

無線ブロードバンド(3G + LTE)

加入者数(件) % 加入者数(件) %

中国 174,285,380 13.0 231,614,860 17.2

米国 87,974,583 28.0 234,412,672 74.7

日本 35,556,075 27.9 144,077,507 113.1

ドイツ 27,674,074 34.0 33,336,214 41.0

フランス 24,780,180 37.8 34,233,625 52.2

イギリス 21,455,580 34.0 45,419,806 72.0

ロシア 20,630,858 14.5 75,344,817 52.9

韓国 18,354,447 37.6 51,810,697 106

ブラジル 18,275,780 9.2 73,021,400 36.6

インド 16,600,000 1.2 104,280,000 7.6

台湾 5,548,270 23.9 10,715,720 46.1

ベトナム 4,535,696 5.0 17,378,598 19.0

タイ 4,182,458 6.2 95,940 0.1

インドネシア 3,030,983 1.2 79,225,759 31.9

マレーシア 2,447,906 8.4 3,945,130 13.5

フィリピン 2,308,994 2.2 3,969,394 3.8

香港 2,257,221 31.6 5,256,334 73.5

シンガポール 1,396,352 26.1 6,600,483 123.3

先進国平均 - 27.0 - 84.0

発展途上国平均 - 6.0 - 21.0

[出典] ICT Facts and Figures 2014, Telecommunication Development Bureau, International Telecommunication Union (ITU). Retrieved 24 May 2015.

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 >

Page 23: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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23

• 様々なデバイスが量産化される段階まできている

• これらのデバイスは小型化、軽量化により個人向けでウェアラブルなものが多い

• これらのデバイスからアップロード&集約された情報は「ビックデータ」として解析されることとなる

スマートウォッチ

スマートウォッチとは、腕時計の方式で手首に装着できるウェアラブルデバイスのことである。 時計の他に演算処理や通信といったスマートデバイスの機能を兼ねた端末とも表現できる。 スマートウォッチの多くは、フルタッチパネルのユーザーインターフェースを備え、アプリの実行や通信などを行うことができる。常時装着することが想定されているため、ヘルスケア分野での活用が期待されている。

スマートグラス

スマートグラスとは、メガネをかける要領で頭部に装着して使用するウェアラブルデバイスのことである。 スマートグラスの多くは、実際に見ている光景に情報を重ねて表示する方式で構想されている。 実世界に情報を付加するという意味で「ARメガネ」と呼ばれることもある。

3-1. [技術的変化][消費者にとっての変化]の事例

ドローン +アクションカメラ

無人で遠隔操作や自動制御によって飛行できる航空機の総称。小型のカメラを装着することができるため、比較的安価に空撮を行うことができる。また、ドローンはGPSを測位することによって高度を割り出し、安定飛行が可能となる。

VR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)

バーチャルリアリティ (VR) に特化したヘッドマウントディスプレイ (HMD) 。外部カメラと赤外線LEDにより、ヘッドトラッキングしているため、向いている方向にあわせて映し出さされるコンテンツが変わる。

[ファクト]

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 >

Oculus Rift PlayStation VR [引用]公式ウェブサイト http://playstation.com/psvr/)

Sony SmartWatch3 ASUS ZenWatch 2 Samsung Gear S2

Microsoft Holo lens DJI Phantom4 (引用元:公式ウェブサイト http://www.dji.com/jp/)

GoPro HERO4 (引用元: プレスリリースより)

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24 3-1. [社会的変化][全世界的な変化]の事例

• かつては「世界の工場」として注目を集めていたASEANが、経済の成長により、消費市場としても魅力的になってきている

• 2030年には約7億人の市場に成長することが見込まれている

• 高い経済成長率を維持しており、2030年のGDPは現在の2.5倍の規模に拡大することが予測されている(IMF)

ASEANにおける人口、市場、投資額の変化

[ファクト]

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 >

0

1

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1960 1970 1980 1990 2000 2010 2014

人口変化

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10000

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20000

25000

30000

1990 2000 2010 2014

GDPの推移

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40000

60000

80000

100000

120000

140000

1980 1990 2000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

投資額 (単位:億人) (単位:十億ドル) (単位:百万ドル)

[出典] ASEAN Foreign Direct Investment Statistics Database, [出典] Population Division of the Department of Economic and Social Affairs of the United Nations Secretariat,

[出典] IMF - World Economic Outlook Databases

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25 3-1. [社会的変化][全世界的な変化]の事例

• スマートフォンの登場以来、さまざまなSNSの普及やキュレーションメディアの拡大が進んでいる

• 若年層ほどSNS普及率が高いものの、中高年世代でも利用者は少なくない

• キュレーションメディアは「自動生成型」「編集者型」「ユーザー投稿型」の3種に大別される

SNSの普及

若年層ほどSNS普及率は高いものの、中高年世代でも普及が進んでいる。2015年段階においては全世代的にFacebookの普及率が高い。

[出典] 総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)

キュレーションメディアの拡大

近年、ネットにあふれる多くの情報をテーマごとにまとめた、キュレーションメディアと呼ばれるサービスが増えてきている。

(キュレーションメディアの例)

[自動生成型] 機械がキュレーションしているタイプ

• NewsPicks (https://newspicks.com/)

• Gunosy (https://gunosy.com/)

[編集者型] 特定の分野に明るい人が記事をキュレーションしているタイプ

• LINE NEWS (https://news.line.me/)

• HORIEMON.COM (http://horiemon.com/)

[ユーザー投稿型] ユーザーが独自の視点で情報を切り取ってキュレーションしているタイプ

• NAVERまとめ (http://matome.naver.jp/)

• MERY (http://mery.jp/)

[ファクト]

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 >

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26 3-1. [社会的変化][全世界的な変化]の事例

• e-Sportsとは、複数のプレイヤーで対戦されるコンピュータゲームをスポーツ・競技として捉える際の名称

• 年収1億円を超えるプロ・ゲーマーも存在するプロチームやプロリーグも多数あり、世界のe-Sports競技人口は5500万人以上となっている

• e-Sportsのプロ・ゲーマーのような競技者ではないが、YouTuberなどの動画配信者にとっても、ゲーム実況は非常に人気が高いコンテンツ

e-Sportsの普及

e-Sportsとは「エレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)」の略でコンピューターゲームやビデオゲームで行われる競技のことを指す。IOC(国際オリンピック委員会)ではチェスや、ビリヤード、囲碁等の国際競技団体が加盟団体や承認団体になっており、海外ではe-Sportsもスポーツとして認識されており、2007年からOCA(アジアオリンピック評議会)が主催する「アジアインドアゲームズ」では、 e-Sportsを正式種目として採用している。トッププレイヤーになると年間に数十億円を稼ぐ者もいる。

[世界大会の例]

世界で最もプレイヤーの多いPCゲームと言われる「League of Legend」は米国ではプロスポーツ選手用のビザが認定されるなど、プロ・ゲーマーが競い合うエレクトロニック・スポーツの種目としても注目されている。

[日本での展開]

一般社団法人日本eスポーツ協会が主催する「eスポーツを体感せよ!」というスローガンのもと、地方大会及びオンライン大会の開催も含めて可能な限り多くの競技者が参加できるよう門戸を開き、競技者へのモチベーションと機会を提供することを目指している。

YouTuberとゲーム実況の関係

YouTuber(ユーチューバー)とは、主に動画共有サイトYouTube上で独自に制作した動画を継続して公開している人物や集団を指す名称。狭義では「YouTubeの動画再生によって得られる広告収入を主な収入源として生活する」人物を指す。上位のYouTuberの提供するコンテンツとしては、ゲーム実況に関するものが多い。

[世界的で最も稼ぐYouTuber](※ゲーム実況者を色付け)

[出典] Forbes 2015年11月号

[ファクト]

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 >

実況者名 年収 備考

1 PewDiePie 1200万ドル(約14億円)

ゲーム実況者。ホラー系ゲーム「ウォーキング・デッド」の実況動画でも注目を集めている

2

Smosh 850万ドル(約10億円)

ゲーム実況者。ポケモンのゲーム実況動画で注目を集めた。

- Fine Brothers 850万ドル(約10億円)

オンラインを活動の場とするコメディアン。

4 Lindsey Stirling

600万ドル(約7.1億円)

バレエを踊りながらバイオリンを演奏する

5 Rhett & Link 450万ドル(約5.4億円)

日々の出来事をコミカルに紹介するニュース番組Good Mythical Morningで人気。

- KSI 450万ドル(約5.4億円)

イギリスのゲームコメンテーター。

[出典] EU LCS Finals http://2015.na.lolesports.com

[出典]一般社団法人 日本eスポーツ協会 http://www.jespa.org/information/details.html?id=16

Page 27: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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27 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境

[技術主導型コンテンツ] • VRなどの新しい表現環境の出現

次世代の映像技術の主力と考えられ、新たな制作環境や市場を生み出す。

• AIによる制作の効率化 CGをリアルタイムでレンダリングするようなシーンもあり、そのすべてをデザイナーの手作業で制作しておくのは非効率的なため、AIを活用したプロシージャルな技術が必要とされる。この分野が新たな市場となり、技術者の進出をもたらす。

[制作者と顧客の接近] • クラウドファンディングの一般化

流通を介さずに制作者と消費者がつながる時代となり、新たな意思決定やプロモーションが生まれている。

• 一般企業資金の活用、企業タイアップ 他産業連携に見られるプロダクトプレイスメントやブランデッドエンターテインメントにおいて、世界市場まで見据えた戦略が生まれる。

積極的に活動できる点 (

機会)

留意しておいたほうが良い点 (

脅威)

[人材・技術の流動化] • グローバル競争による人材・技術の流動化

開発や制作の技術に加え、優れた人材の流動化が懸念される。国内で育成した人材が、高額な報酬を出せる海外企業に刈り取られるケースもある

[アジア圏での国際分業] • 人材の特性に合わせた国際分業

地域の得意性を請けの価格競争により、単価を安く抑えられる地域・企業が求められる。

[各国のコンテンツ政策] • 国家によるメインストリーム戦略競争

コンテンツにかける予算規模は国によって力の入れ方が異なる。

• 補助金を含めた文化保護、都市間競争の激化 映像のロケ誘致、企業誘致における都市間の競争が起こっている。

[流通事業者優位の進行] • 流通事業者の影響力の増大

サブスクリプションサービスにおいては制作者に比べて、流通事業者のほうが強く、多くのコンテンツが買い叩かれる可能性もある。

[世界展開が可能な配信環境] • 世界展開が可能なコンテンツ配信プラットフォームの登場

世界に配信できるプラットフォーマーの登場により、オリジナルIPを活かした小規模企画であれば、制作者が直接流通に出せる環境がある。

• 新たな制作資金回収スキーム 世界市場の配給権を担保に、制作資金を回収する新たなスキームが成立する。流通面のみならず、制作資金面でも新たな機会となる。

[マーケティング・テクノロジー] • ビッグデータ解析

消費者行動分析を活用することにより、ユーザーの嗜好に合わせたマーケティング手法が発達する。

[国際資本流通事業者によるプラットフォームの集約] • OTT等によるプラットフォーム間競争

放送と通信の競争のなかに、海外企業が加わってプラットフォーム間の競争が起こり、アメリカをはじめとする海外企業に先行されている。

• ネット広告分野が海外企業に抑えられていること プラットフォームだけでなく、ネット広告分野においても海外企業におされている。

[国際資本によるIP保有企業の買収] • 中国のIP購入意欲の高まり

ASEANの新興国ではIPの需要があるが、現実的にはASEANへの経由元である中国に買い漁られている。

コンテンツ(制作・技術) メディア・流通

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 >

• 現在の全世界のコンテンツ市場を、制作・技術を中心としたコンテンツ面と、メディアを中心とした流通面に分けて整理した上で、それぞれにおいて、今後積極的に活動できる点と、留意しておいたほうが良い点において、注目すべき事象を整理した。

• 積極的に活動できる点においては、新技術の活用や消費者との接点領域において新たな可能性が見られ、ネットを介した新たな配信環境や新たなマーケティング手法により国際的な展開はさらに進んでいくことが予想される。その一方で、資金や人的資源の流動化に伴い、新たな構造変化が起きる可能性があることに留意しておく必要性がある。

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28 [技術主導型コンテンツ]の事例

• VRやAIなどの新技術が登場してきている

• VRデバイスに向けては専用のコンテンツを作る必要がある

• AIの進歩と一般化によって、自動・半自動でのコンテンツ制作が可能となりつつある

ヘッドマウント型VRディスプレイ

近年登場しているヘッドマウント型のVRディスプレイの多くは、広視野角、頭の動きに表示が追従するヘッドトラッキングといった特徴を持っている。また、複雑な計算を行わなければならないため、PCやゲーム機への接続が前提として考えられているが、中にはスマートフォンとダンボールを組み合わせただけの簡易なものもある。

Oculus Rift (オキュラス リフト)

Oculus社が開発・発売しているバーチャルリアリティ向けヘッドマウントディスプレイ。製品名自体はRiftであるが、Oculus Rift(オキュラス・リフト)として表記されることが多い。

[関連URL] https://www.oculus.com/

PlayStation VR ソニー・コンピュータエンタテインメント (SCE) が開発している仮想現実ヘッドセット。2014年の発表当時は「プロジェクト・モーフィアス」と呼ばれていた。

[引用] http://www.jp.playstation.com/psvr/

FOVE アイコンタクトでキャラクターが反応し、キャラクターの反応の違いを体感できる。2015年6月に行ったKickstarterでは48万ドル(約5,800万円)を獲得。

[関連URL] http://www.getfove.com/jp/

Google Cardborad 折りたたみボール紙製の本体に手持ちのスマートフォンと組み合わせることで完成するHMD。安価なVRシステム。

[関連URL] https://www.google.com/get/cardboard/

AI(人工知能) (※21ページの追加事例)

lamus (ラムス)

スペインのマラガ大学は作曲をする人工知能「ラムス(lamus)」を開発。アルゴリズムによりわずか8分で楽曲を自ら作成し、MP3や楽譜などの形式で書き出すことが可能。実際に作曲された楽曲を演奏する動画も公開され、販売もされている。 [開発元] マラガ大学 [関連URL] http://www.uma.es/

Tailor Brands (テイラー ブランズ)

テイラーブランド社は、人工知能によりロゴを自動にデザインするサービスを提供。ロゴの文字や色、営んでいるビジネスの種類等の情報を入れると利用者に合ったロゴをわずか数分で生成可能。

[開発元] テイラーブランド社 [関連URL] https://www.tailorbrands.com/

制作 ✕ 機会

[ファクト]

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境 >

[引用元] YouTube [引用元] amazon.co.jp

[引用元] 制作ロゴ例 公式ウェブサイトより https://www.tailorbrands.com/

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29 [制作者と顧客の接近]の事例 制作 ✕ 機会

[ファクト]

• 制作者が、消費者(カスタマー)や一般企業(クライアント)と直接結びつき、コンテンツを製作する事例が始まってる

• クラウドファンディングは消費者から直接資金調達をすることを可能にすると同時に、開発初期段階からのプロモーションの役割も兼ねている

• 制作会社と共同して一般企業が直接コンテンツを製作する事例も見られる

クラウドファンディング (カスタマー型)

不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。 ソーシャルファンディングとも呼ばれる。 [クラウドファンディングによる調達事例]

リトルウィッチアカデミア2

サービス kickstarter 達成額 625,518ドル

(約7000万円) 目標額 150,000ドル 達成率 417%

この世界の片隅に

サービス makuake 達成額 36,224,000円 目標額 20,000,000円 達成率 181%

一般企業資金の活用、企業タイアップ(クライアント型

)

一般企業がよりブランドイメージを高め、より効率的に広告宣伝費を使うために、独自にコンテンツを制作する事例が出始めてきている。

[例]

NEXT A-Class

製作 メルセデス・ベンツ日本、博報堂

制作 production I.G. 企画、原案、監修 佐藤夏生 演出 西久保瑞穂 キャラクターデザイン 貞本義行 作画 黄瀬和哉 音楽 川井憲次

大成建設CM

製作 コミックス・ウェーブ・ フィルム TYOプロダクションズ

絵コンテ・演出・監督 新海誠

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境 >

[引用元] Kickstarter プロジェクトページ https://www.kickstarter.com/projects/13114

01276/little-witch-academia-2 [引用元] Production I.G 作品紹介ページ http://www.production-ig.co.jp/works/next_A_class/

[引用元] Other Vices(新海誠ウェブサイト) http://shinkaimakoto.jp/

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30 [世界展開が可能な配信環境]の事例(動画)

• 月額固定料金を支払うことで、定められた期間中に提供される動画コンテンツが見放題になるサービスが登場してきている

• 固定の料金で膨大なコンテンツを視聴できる

• Netflixなどは過去の作品に加えて、そこでしか観ることの出来ないオリジナルコンテンツを提供している

Netflix

本社はカリフォルニア州ロスガトスに置かれている。10万種類、延べ4200万枚のDVDを保有し、レンタル向けに1,600万人の顧客を得ている。また、ストリーミング配信では既存のコンテンツに加え、独占配信やオリジナル作品も扱っている。2015年6月末現在の加入者数は、全世界で6,560万人(うち米国4,230万人)。コンテンツの開発なども行っており、日本で公開された「シドニアの騎士」(ポリゴン・ピクチュアズ)の日本国外での独占配信権を得ている。 [関連URL] https://www.netflix.com/jp/

hulu

Hulu(フールー)はアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスに本拠地を置く動画配信サービス。 2011年、世界に先駆けて日本でhulu.jpのサービスを開始したが、地上波による定時番組テレビジョン放送が世界的に見て突出して充実している日本ではSVOD事業は苦戦し、2014年に日本テレビ放送網が買収した。 [関連URL] http://www.hulu.jp/

Amazon Prime Video

Amazonプライムビデオは、アマゾンプライム会員なら動画が見放題になるサービス。Amazonプライムの年会費は3900円で、月々325円で動画が見放題になる計算。他のサービスに比べて見放題の動画は極端に少ない。 [関連URL] http://www.amazon.co.jp/

流通 ✕ 機会

[ファクト]

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境 >

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31 [世界展開が可能な配信環境]の事例(音楽)

• 月額固定料金を支払うことで、定められた期間中に提供される音楽が聴き放題となるサービスが登場してきている

• 固定の料金で膨大なコンテンツを視聴できる

• 有名人のプレイリスト公開やユーザーが好みの音楽を探すためのチャンネルなど、キュレーション(楽曲紹介)を行っているサービスもある

Spotify

2015年現在、7500万人を超えるユーザーをかかえる世界最大手。2006年夏にスウェーデンで創業され、2008年10月にサービスを開始。創業から1年半でヨーロッパで800万人を超える顧客を獲得し、2011年にはアメリカに進出。2012年現在本拠を置くイギリスやドイツ、フランスなどヨーロッパ12カ国とアメリカの計13カ国でサービスを展開している。2種類の月額制と広告付きの無料のものがあり、ユーザーは1500万を超える楽曲をクラウド経由で聴いたり、専用のアプリをインストールすることでデジタルオーディオプレーヤーやスマートフォンに保存したりすることができる。Facebookとの連携も行っており、配信にはP2P技術を利用している。日本でのサービスはまだ開始されていない。 [関連URL] https://www.spotify.com/

Pandora Radio

自動化された音楽レコメンデーションサービスでミュージック・ゲノム・プロジェクトによるプレイリスト管理システムである。Pandora Media, Inc.が運営しており、アメリカ合衆国、オーストラリア、ニュージーランドで展開されている。 [関連URL] http://www.pandora.com/

流通 ✕ 機会

[ファクト]

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境 >

Apple Music

アップルコンピュータ社が運営する定額制の音楽配信サービス。ユーザーが検索や選曲を能動的に行なう“オンデマンド型”の機能をとり入れながらも、充実したプレイリスト、さらにはラジオ機能など複合的な音楽との接触ポイントを用意している。さらに、iOS機器の[ミュージック]アプリに機能を統合する形となっているため、iTunesで購入した楽曲やCDからリッピングした曲もシームレスに扱えるサービスとなる。 [月額利用料金] 980円 [関連URL] http://www.apple.com/jp/music/

Page 32: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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32 [世界展開が可能な配信環境]の事例(ゲーム)

• 月額固定料金を支払うことで、定められた期間中に提供されるゲームがプレイし放題となるサービスが登場してきている

• 現状では、最新タイトルではなく、ひと世代前のものを中心に提供されている

流通 ✕ 機会

PlayStation Now

PlayStation4 の他、様々な端末に提供するクラウド型ゲームサービスで、 「PlayStation Now」という名称で正式発表された。SCEの子会社であるGaikaiの技術を用いてPlayStation 3 のゲームを提供する。 Playstation3、PlayStation4、PlayStation VITA他、同社のテレビブランドBRAVIAにも配信される。将来的にはSCEやソニー製品以外にも対応を広げる予定。

[月額料金] 2,315円 [タイトル数] 約150タイトル(2016年3月) [対応デバイス] PlayStation4 PlayStation Vita PlayStation Vita TV ソニー製 液晶テレビ ブラビア ソニー製 ブルーレイディスクプレイヤー

[URL] http://www.jp.playstation.com/psnow/

[引用] 公式ウェブサイト http://www.jp.playstation.com/psnow/

GeForce Now

米国のGPU開発・販売企業NVIDIA Corporationが手がける、定額課金のゲームサービス。同社の販売するゲームコンソール NVIDEA SHIELD他、Android端末でプレイすることができる

[月額料金] 7ドル(日本国内では1,026円)

[タイトル数] 約50タイトル(2016年3月)

[対応デバイス] Android端末

[URL] http://www.nvidia.co.jp/object/game-streaming-with-geforce-now-jp.html

[引用] 公式ブログ https://blogs.nvidia.com/blog/2015/09/30/geforce-now/

[ファクト]

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境 >

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33 [人材・技術の流動化]の事例 制作 ✕ 脅威

• 優秀な人材の引き抜きが世界で起こっている

• 製造業においては技術流出が数多く、コンテンツ産業においても同様の事例が起こりうる

製造業における技術流出

製造業においては数多くの技術流出が起こっているが、コンテンツ産業も作品を作るという面においては製造業と変わらず、同様の事態が起こることも考えられる。

Q. 技術流出が発生したことはあるか?

Q. どのようなルートで流出したか?

グローバル・ビジネス人材の不足

• Google による東京大学・大学院生のリクルート活動 米IT大手・グーグルが東京大学において、AIを研究する大学院生を対象としてリクルート活動を行っている。提示条件は年収約15万ドル(1,800万円)。(出典: 毎日新聞2015年4月2日 ウェブ版)

[ファクト]

明らかに技術流出し

たと思われる事象が

あった

19%

明らかではないがお

そらく技術流出では

ないかと思われる事

象があった

16%

技術流出に当たる事

象はなかった

61%

その他

4%

62.2%

71.7%

52.8%

0.0%

31.0%

人(ヒト)を通じた流出

製品(モノ)を通じた流出

技術(ワザ)を通じた流出

大学との共同研究

その他

[出典] 我が国製造業のおける技術流出問題に関する実態調査, 経済産業省, 2006年

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境 >

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34 [アジア圏での国際分業]の事例 制作 ✕ 脅威

• 日本アニメの国外下請は1967年に韓国から始まり、中国、東南アジアの国にも広がるなどアニメーション制作の国際分業が進んだ

• ただし、最近は中国を中心に人件費が高騰しており、特に作画(動画)人材の確保が課題となっている

韓国 1967-

台湾 1970’ s -

フィリピン 1986 -

中国 1970’s -

ベトナム 1990’s タイ

1987 -

マレーシア 1987 -

インド 2000s -

[ファクト] 日本アニメの国外下請けの状況と開始時期

[参考] 『東映アニメーション50年史』東映アニメーション、2006年 アニメージュ編集部編『TVアニメ25年史』徳間書店、1988年 山口康男『日本のアニメ全史 世界を制した日本アニメの奇跡』テン・ブックス、2004年

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境 >

Page 35: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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35 [各国のコンテンツ政策]の事例 制作 ✕ 脅威

• 各国のコンテンツ産業に対する政策は、様々な施策の組み合わせにより構成されているが、国際的な連携の形やそれぞれの国の特色などから以下のような分類をすることもできる。

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境 >

[ファクト]

B. 市場共有と文化の独立性を両立 [概要] 国際共同制作の推進により、自国のみでは小さな消費市場を市場の共有化により拡大させる一方、自国の言語による文化コンテンツの支援等により、文化的アイデンティティも同時に保持しようとしている。 [当該国] EU各国 [主な政策] • 自国文化関連制作支援 • 国際共同制作支援

A. グローバル分業を推進 [概要] 世界最大の映画産業の集積地であるハリウッドを中心として、その制作の一部を国際分業の形で受けるタイプ。コミュニケーションの必然性から、アメリカと同じ英語圏の国々から構成される。 [当該国] カナダ、オーストラリア、ニュージランド [主な政策] • ロケ誘致&インセインティブ • 大規模CGスタジオの開発

D. 文化保護と積極的な投資の組み合わせ [概要] 作品流通に関して強い規制を課しており、表現内容と量の両面から自国作品の保護政策をとっている。一方で、ハリウッドメジャー作品等にも積極的に投資を行っている。 [当該国] 中国 [主な政策] • 制作拠点整備 • 海外企業誘致

C. コンテンツ振興と他産業連携を推進 [概要] コンテンツをサービス産業輸出の一つとして推進している他、製造業など他産業の輸出促進のためのプロモーションとしても位置付けている。 [当該国] 韓国、ASEAN諸国 [主な政策] • 海外展開支援 • 海外からの受託業務支援

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36 [流通事業者優位の進行]の事例 制作 ✕ 脅威

• 流通事業者は顧客満足度向上のため、より多くのコンテンツを揃えようとする

• 新規コンテンツは、過去の膨大なコンテンツ(ロングテール)と戦わなければならなくなっている

• 流通事業者が新規コンテンツを制作しているものの大作化の傾向にあり、制作機会は減少している

映像制作者にとってのこれまでの問題 映像制作者にとってのこれからの問題

制作費は少なかったものの、制作機会は多かった。 [スポンサーが支払った広告費の内訳]

制作費は高くなるかもしれないが、制作機会は少なくなる

テレビ局電波料 500万

孫請け制作費 860万

広告代理店 1500万

地方局電波料 5000万

テレビ局制作費 2340万

過去作品(ロングテール)

一部の作品のみに 制作費が集中する

[出典] 関西テレビ「発掘!あるある大事典」調査委員会報告書, 2007年より作成

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境 >

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37 [国際資本流通事業者によるプラットフォームの集約]の事例 流通 ✕ 脅威

• 国内でもいくつかの事業者がSVODサービスを行っている

• その一方、前出のとおりNetflixやAmazon Prime Videoなど外資系企業が国内でもサービスを開始しており、競争が激化している

dTV

NTTドコモが運営する、動画配信サービスである。2015年4月21日までの旧名称はdビデオ powered by BeeTV。NTTドコモのスマートフォン、タブレットユーザーであれば申し込みが可能となっており、月額500円(税別)で、国内、海外のドラマや映画、アニメーション、ミュージッククリップ、カラオケなどを、視聴することができる。そのほかに、NTTドコモ(エイベックス通信放送)でかつてよりオンデマンド配信しているBeeTVの動画コンテンツも視聴可能となっている。 2013年8月4日に会員数450万人を突破し、定額制動画配信サービスとしては国内最大規模の会員数を誇る。 [関連URL] http://video.dmkt-sp.jp/ [引用]公式ウェブサイト http://pc.video.dmkt-sp.jp/

U-NEXT

U-NEXT(ユーネクスト)とは株式会社U-NEXTが運営する映像配信サービスである。2007年(平成19年)6月にサービスをスタート。2015年10月8日の時点で、配信数は100,000本以上である。コンテンツは定額制の見放題プランに対応した見放題作品と、一本の視聴ごとに課金されるPPV(ペイ・パー・ビュー)作品に分かれている。 [関連URL] http://video.unext.jp/ [引用] 公式ウェブサイト http://video.unext.jp/

バンダイチャンネル

バンダイチャンネルは、インターネットを用いた映像配信(インターネットテレビ)事業を行う日本の動画サイトである。運営会社はバンダイナムコグループの一社である株式会社バンダイナムコライツマーケティング。日本のテレビアニメ・OVA・特撮等を配信している。また、コンテンツプロバイダとしてGyaO!といった他インターネットテレビサイトやアクトビラなど、ビデオオンデマンドサービスへの供給を行っている。 [関連URL] http://www.b-ch.com/ [引用] 公式ウェブサイト http://www.b-ch.com/

[ファクト]

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境 >

Page 38: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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38 [国際資本によるIP保有企業の買収]の事例 流通 ✕ 脅威

• 2016年1月、中国企業・大連万達グループによりレジェンダリー・ピクチャーズへ資本が投入された

• 同社は中国でも最大の映画館チェーンでもある

• 大連万達グループが所有するAMC シアターズが、2016年3月に米カーマイク・シネマズを11億ドル(約1,250億円)で買収することを発表し、 600以上の劇場を持つ全米最大の映画館チェーンが誕生

大連万達グループによるレジェンダリー・ピクチャーズへの資本投入

ダークナイトやGODZILLA ゴジラ、ジュラシック・ワールドで知られるレジェンダリー・ピクチャーズを2016年1月、中国・大連の不動産企業・大連万達グループが買収。同社は、大連の不動産開発で築いた財産を元手に、中国全土で映画館の買収を開始しており、2012年には国産映画の製作・配給に乗り出している。

大連万達集団(ワンダ・グループ)傘下であるワンダシネマライン社(万達電影院線)が中国最大の映画館チェーンであり、また親会社の万達集団は2012年に米映画館チェーンのAMCエンターテインメントを26億ドル(約2665億円)で買収している。万達電影院線の映画館では大型スクリーンのIMAX仕様を展開している。

[ファクト]

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-2. 2015年における全世界のコンテンツ市場を取り巻く外部環境 >

[引用] 万達集団 公式ウェブサイト (英語版) http://www.wanda-group.com/ [引用] LEGENDARY PICTURES 公式ウェブサイト http://corporate.legendary.com/

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39 3-3. 2015年における国内コンテンツ産業の状況

[国民全体の文化性の高さ] • マンガ、小説を中心とした原作の宝庫

日本には、海外でも人気のコンテンツの原作が多数存在する。

• 制作文化としての国民性の高さ、クリエイター人材の厚み 上記の背景として、日本の制作文化としての国民性の高さが挙げられる。音楽ではヤマハ音楽教室などによる習い事が普及しており、マンガでは多数の少年少女マンガ誌の存在がイラストやストーリー創作の意欲を高め、クリエイター人材の厚みを生んでいる。

[製造業の強さ] • 電子産業の基盤と情報系人材の厚み

電子産業においても国内の基盤があり、この土壌から優れたプログラマーなどの情報系人材を多く生んでいる。

[人材の不足] • 労働環境の悪さ 深夜労働や低賃金など、就労条件の悪さにより、優秀な人材が確保されにくい。

• 倒産・廃業の増加による制作環境の空洞化 起業するものの、資金繰りの悪化などから廃業する企業が多い。

[技術を産業化することの弱さ] • 新技術への対応の遅れ 技術ベンチャーに対するリスクマネー供給の弱さが見られる。

• 開発エンジンなど基盤技術の主導権が不足 市販技術により制作環境の裾野は広がったが、日本オリジナルの開発エンジンを持たないため独自の技術や表現を打ち出せていない。

競争力がある点 (

強み)

克服したい点 (

弱み)

[国内市場の大きさ] • 輸出関連企業が持つ潤沢な企業広報宣伝費の活用

貿易立国である日本は製造業が海外展開を行っており、そのノウハウをコンテンツ産業が活用することによって強みとなる。

[コンソールゲーム企業の国際的存在感] • ゲームを中心とした流通網

ゲーム分野では、ソニーと任天堂が世界的な流通網を持つ。

[プロデューサー人材の不足] • プロデューサー人材の不足

海外のスタンダードを理解している国際人材、マクロ経済的な観点を持つ人材、国家ブランドを高めるためのコンテンツ利活用を考えられる人材などが不足し、その対応も遅れている。

[権利処理の複雑さ] • 製作委員会に代表される権利処理の複雑さ

製作委員会方式は資金調達に有効だが、とくに海外展開するうえで権利処理の複雑さが障壁となる。

[資金調達に関する対応] • 資金調達に関する対応の遅れ

国際資金調達スキームと回収手段が整備できていない。海外のニーズを把握し、世界から資金調達するための機能が不足している。

コンテンツ(制作・技術) メディア・流通

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 >

• コンテンツ面とメディア流通面の双方において、現時点において競争力があるものと、克服したい点という視点で整理を行った。

• 国内企業においては、製造業を中心にすでにグローバル展開を十分に進めている企業がある一方、サービス産業のひとつであるコンテンツ産業においては、ゲーム分野を除き、ほぼローカル市場において市場を形成しているのが現状。

• 文化性の高さなどから形成される独自のコンテンツについては、海外からの潜在的な需要はある一方、国内市場に調整された取引慣行等については、グローバル展開を遅くさせる要因の一つにもなっている。

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40 [国民全体の文化性の高さ]の事例 制作 ✕ 強み

マンガ文化

マンガ雑誌の存在 日本では多くのアニメがマンガ原作である。アニメ以外にも、多くの実写映画やドラマなどもマンガ原作である。

代表的な漫画雑誌の例)

クリエイティブ分野の学習機会

学校教育 日本の学校教育では、図画工作、美術、書道といった芸術系の科目が小学校から高等学校まで必修科目となっている。

課外活動(部活動) 日本特有の課外活動として「部活動」があり、スポーツ系以外にも多くの文化系クラブがある。

例) 美術部、写真部、映画部、マンガ部、演劇部、書道部、オーケストラ部など

習い事 楽器演奏、習字、絵画などのクリエイティブ分野の「習い事」が一般的に行われており、特に音楽系についてはヤマハやカワイなど大手の楽器製造メーカーが直接行っている。

[ファクト]

• マンガ雑誌そのものが、才能の発掘とテストマーケティングの場となっており、ストーリーボードの段階で課金できているともいえる

• 読者が二次創作をおこない、それを刺させる文化的土壌も存在している

• 「学校教育」「課外活動(部活動)」「習い事」などで、楽器演奏や習字、絵画などを学ぶ機会が多くあり、将来のクリエイターの母体となっている

コミックマーケットの様子

33%

7%

19%

4%

33%

8%

3%

7%

9%

5%

25%

18%

楽器、歌

バレエ、ダンス、日舞

習字

絵画

水泳

サッカー

野球

体操

武道

そろばん

英語

その他

[出典] ベネッセ 教育情報サイト 2007 n=505 より抜粋

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-3. 2015年における国内コンテンツ産業の状況 >

男子児童向け • コロコロコミック

少年誌 • 少年ジャンプ • 少年マガジン • 少年サンデー

青年誌 • ヤングジャンプ • ヤングマガジン • モーニング

女子児童向け • なかよし • りぼん

少女向け

• マーガレット • 花とゆめ

コミックマーケット 毎年2回、東京ビックサイトで行われる同人誌即売会。出展ブース数は約3万5000、一般参加者数は59万人にも上る。これ以外にも、全国で大小様々なイベントが行われているほか、秋葉原、池袋、中野などの街では常設的にこれらのコンテンツが取引されている。

Page 41: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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41 [製造業の強さ]の事例 制作 ✕ 強み

• 日本はトヨタなどの大企業だけでなく、ものづくりを支える中小企業の層が厚い

• Sony、Panasonic、日立といった情報関連産業における工業製品、消費者向け製品、デバイスなどに関わる層が厚い

ものづくり企業の層の厚さ

後継者問題などで減少傾向にはあるものの、日本の製造業事業者数は10万を超えており、GDP比で18.5%(2013年)を占めている。

名目GDPにおける産業別構成比の推移

[出典] 内閣府「国民経済計算確報」

GDPに占める製造業比率の主要国比較

[参照] 国際連合「NationalAccountsMainAggregatesDatabase」

情報関連産業における工業製品、 消費者向け製品開発企業の層の厚さ

消費者向け製品、デバイスを手がけており、世界的に展開する企業が多くある。

例)

18.5% 19.9% 14.5% 11.8% 5.9% 18.0% 9.1% 2.3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

製造業 サービス業 卸売・小売業 不動産業

建設業 その他産業 政府サービス 対家計民間・非営利

18.8%

12.1%

9.7%

22.2%

11.3%

29.9%

31.1%

日本

米国

英国

ドイツ

フランス

中国

韓国

[ファクト]

• brother

• Canon

• CASIO

• EPSON

• FUJIFILM

• Fujitsu

• HITACHI

• JVC

• Kyocera

• MITSUBISHI

• NEC

• Nikon

• OLYMPUS

• Panasonic

• Pioneer

• RICHO

• SHARP

• Sony

• TOSHIBA

• wacom

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-3. 2015年における国内コンテンツ産業の状況 >

Page 42: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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42 [国内市場の大きさ]の事例 流通 ✕ 強み

日本のGDP

現在でも日本のGDPは世界第3位であり、高い水準を維持している。

日本のコンテンツ市場の規模

コンテンツ市場の大きさは、世界第2位の規模。

[ファクト]

0.00

2,000.00

4,000.00

6,000.00

8,000.00

10,000.00

12,000.00

14,000.00

16,000.00

18,000.00

20,000.00

単位:10億USドル

0

1

2

3

4

5

6

7

8

アメ

リカ

日本

イギ

リス

ドイ

フラ

ンス

イタ

リア

スペ

イン

中国

ブラ

ジル

ロシ

イン

韓国

単位:10億USドル

[出典] A.T.カーニー (2011) 『平成22年度 クール・ジャパン戦略推進事業 (メディア・コンテンツ分野における戦略構築及び他分野への波及効果調査)』 経済産業省.

• 日本のGDPは現在、世界第3位である

• コンテンツ市場の大きさでは世界第2位の規模を誇る

[出典] IMF – World Economic Outlook Database 2015, March

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-3. 2015年における国内コンテンツ産業の状況 >

Page 43: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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43 [コンソールゲーム企業の国際的存在感]の事例 流通 ✕ 強み

Sony PlayStation 3 & 4 PSP vita

PlayStation4は、現世代でもっとも売れている、据え置き型のゲームハードである。Playstation 3、4ともにネットワーク機能が強化されている。

[販売台数]

国内 1,020万6741台 (2015年12月) 全世界 8,000万台 (2013年11月)

国内 213万0733台(2015年12月) 全世界 3,590万台(2016年1月)

国内 438万2,417万台(2015年12月) 全世界 671万台(2013年11月)

[PS4のゲーム配信機能]

PS4のコントローラーには「Share」ボタンがついており、これまで様々な機材を導入しなければならななかったプレイ動画共有機能が標準で搭載されている。なお、現状では以下の3種の機能がある。

1. 「ビデオクリップをアップロードする」 プレイ動画の録画と簡易編集,およびSNSへと投稿する機能

2. 「スクリーンショットをアップロードする」 スクリーンショットの撮影とSNSへと投稿する機能

3. 「ゲームプレイをブロードキャストする」 映像配信サービスを使ったゲームプレイ動画の生配信する機能

任天堂 Wii Wii U & 3DS

Wii Uは液晶ディスプレイコントローラー「Wii U GamePad」という特徴的なデバイスを搭載している。

[販売台数]

国内 1,275万台 (2014年9月) 全世界 10,152万台 (2014年9月)

国内 303万台 (2016年1月) 全世界 1,2600万台 (2015年12月)

国内 2,004万台(2015年12月) 全世界 5,794万台(2015年12月)

[ファクト]

• コンソールゲームにおいては日本の2つの企業が国際的な存在感を持っている

• Sonyは「PSN」、任天堂は「ニンテンドーネットワーク」というネットワークサービスでユーザーの囲い込みを行っている

[引用] 公式サイトの画像に加筆 http://www.jp.playstation.com/ps4/peripheral/cuhzct1j.html

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-3. 2015年における国内コンテンツ産業の状況 >

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44 [技術を産業化することの弱さ]の事例 制作 ✕ 弱み

• 日本の科学インフラは、米国に続いて世界第2位を保ち続けているが全体的な国際競争力では世界第27位である

• 「開発」「事業化」には先に成功しても「産業化」まで結びつかない事例が多く見られる

ダーウィンの海

ニュービジネスあるいは、製品化(パイロットライン)から、事業化までの間の難関・障壁

魔の川

基礎研究から応用研究までの間の難関・障壁

死の谷

応用研究からニュービジネスあるいは、製品化(パイロットライン)までの間の難関・障壁

[研究] [開発] [事業化] [産業化]

「国際競争力」世界第27位(2015)

(国際経営開発研究所(IMD))

「科学インフラ」世界第2位 (2015)

(国際経営開発研究所(IMD))

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-3. 2015年における国内コンテンツ産業の状況 >

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45

信託方式

製作委員会方式

流通 ✕ 弱み [資金調達に関する対応]の事例

• 我が国の重要な成長分野であるコンテンツ産業の海外展開を促進するため、我が国のコンテンツ製作・流通に関する現状を把握しつつ、コンテンツの海外展開を円滑に進め、海外展開における収益の最大化を図るための必要な方策・制度。

• 国内市場に最適化して いるため

• 海外事業者が参入し にくい構造であること - 製作委員会契約が不透明 - 海外販売窓口が不明確 - 窓口手数料の存在など、収益構

造が不明確

• 権利処理の煩雑と

機動性のなさ - 組合員全員から許諾が必要 - 一組合員が交渉しても、権利が

分散しているため買い取ってもらえないリスク

• 組合員以外からの資金調

達が見込めないこと - 出資者が組合員(事業者)に限

定されていることの限界

コンテンツ製作の現状 必要な方策

映画製作における現状

• 現在の主流は製作委員会方式 • 映画製作における資金調達方法とし

て合理性がある - 映像利用に関する窓口権 - プロモーション力(TV局のほか、各組合員の

ツールで広報可) - 製作コストを押さえやすい(組合員同士の権

利獲得競争がない) →収益最大化(国内)

- 国内における二次利用ビジネスの最大化 - 組成コストが安い(契約により組成可能)

映像コンテンツの海外展開にあたり、多くの映像コンテンツの制作において採用されている製作委員会を前提とした対応策の構築

• 製作委員会方式 • 募集株式発行 →吉本興業

→東映アニメーション • 知的財産信託 →フラガール • ハリウッド型プリセール方式

→レイン・フォール • 知的財産担保証券化 →男はつらいよ • 投資信託

海外展開の現状

コンテンツ制作における様々な資金調達手法

海外展開が進まない理由

多様な資金調達の在り方

海外展開可能な製作委員会方式

• 金融商品取引法に基づく 出資モデル - 米国型の完成保証スキームを組

み合わせた資金調達手法 例)レイン・フォール 等

• コーポレート ファイナンスモデル - 普通株/優先株

例)東映アニメーション、ゴンゾ 等

• クラウドファンディング モデル - 寄付型/購入型

例)この世界の片隅に 等

• 他産業との共同製作モデル - ドラえもんが家電製品の高性能

高品質をアピールするCMをASEAN諸国向けに制作して放送 等

資金調達の分類

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-3. 2015年における国内コンテンツ産業の状況 >

クラウド ファンディン

商品ファンド

ノンリコースローン (非遡及型融資)

社債発行

銀行借入

助成金

ベンチャー キャピタル

株式公開

デット・ファイナンス (間接金融)

プロジェクト ファイナンス

コーポレート ファイナンス

エクイティ・ファイナンス (直接金融)

[出典] みずほ産業調査 2014 No.5 48 コンテンツ産業の展望

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46 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み

• コンテンツ産業を取り巻く環境の変化が進む中で、民間企業においても、新たな企業の登場や新たなサービスの開発など独自の取り組みが進んできている。

• これらの中には、ボーダーレス化を見据えた活動により既に直接海外から評価されているものや、技術革新により既存の制作フローや、流通フローを一変させるものも登場してきている。

コンテンツ (制作・技術) メディア・流通

• 日本オリジナルの新しい制作技術 • ボーカロイド • Live2D

• 海外で評価されている新分野コンテンツ

• チームラボ • Rhizomatiks

• 他産業連携型コンテンツ • 医療分野における3DCGと3Dプリンタの利用 • 大科学実験 • 小学校での教育 • ガールズ&パンツァー ✕ 大洗町(地域)

あの花 ✕ 西武鉄道(企業)

• 消費者主導型コンテンツ • ニコニ・コモンズ • ケータイ大喜利 • 東芝 REGZA

• 過去作品のIP開放によるコンテンツ • カタログIPオープン化プロジェクト

• 動画、音楽、マンガ、ゲームの 配信プラットフォーム • dTV • U-Next • ニコニコ動画 • Tver (tver.jp) • bonobo • AWA • COMICO etc

• IPホルダー主導のエージェントビジネス • コルク(corkagency.com)

• ビックデータ・AIを活用したマーケティング • hontoポイント • Rtoaster • metaps • 車両プローブ情報分析システム • ZenClerk

新たなサービス

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 >

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VOCALOID

VOCALOID(ボーカロイド)とはヤマハが開発した音声合成技術、およびその応用製品の総称。略称としてボカロという呼び方も用いられる。メロディーと歌詞を入力することでサンプリングされた人の声を元にした歌声を合成することができる。対応する音源については、主にヤマハとライセンス契約を締結した各社がサンプリングされた音声を収録した歌手ライブラリを独自に製作し、ヤマハ製のソフトウェア部分と組み合わせて製品として販売されている(「VOCALOID(ボーカロイド)」および「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標)。なお、VOCALOIDという言葉は応用製品に設定されているキャラクターを指すために用いられる場合もある。

[開発元] ヤマハ株式会社

[関連URL] http://www.vocaloid.com/

日本オリジナルの新しい制作技術の事例1

[ファクト]

• 2004年、メロディーと歌詞を入力することでサンプリングされた人の声を元にした歌声を合成することができるシステムをヤマハが開発

• 同技術を活用して2007年に発売された「初音ミク」の登場以来、ネット上で大きなコミュニティーが形成されている

• メジャーレーベルから楽曲が発売されたり、北米のトヨタのCMで使われるなど展開の幅は広い

[展開例] 音楽素材や関連ソフトのクリプトン・フューチャー・メディア(札幌市)が開発した歌うキャラクター東京・千代田の日本武道館で「コンサート」を開催。武道館の舞台に3D画像の初音ミクが登場し、3回公演。国内で最も人気のあるバーチャルシンガーの活躍の場を広げ、関連ビジネスにつなげる。

クリプトンなどが主催する「マジカルミライ」と題したイベントの中で約2時間のコンサートを開く。舞台上に透明のスクリーンが用意され、3Dの映像で初音ミクが映し出される仕組み。隣接する科学技術館では初音ミクなどクリプトンのキャラクターを使った創作物の「企画展」も開催。

マジカルミライの実施は2015年までで3回目。1回目は2013年に横浜で1万5000人を集めた。2回目の14年は東京と大阪で2日ずつ開催、計2万4000人が来場している。武道館の最大収容人数は2万人。コンサートの回数も増やすことでさらなる集客増を目指している。

ヤマハの歌声合成技術「ボーカロイド」を使って8年前に発売したが、非営利使用であれば、自由に利用できるようにした。このため、自作の曲を初音ミクに歌わせた動画がインターネット上で多く発表され、人気が高まった。

米国で音楽番組にも出演。バーチャルなキャラクターながら、活躍の場を海外にも拡大してきた。クリプトンでは指揮者に合わせて歌うことができるようにするなど、ソフトとしての初音ミクの技術も高めている。音楽ソフトの側面と、キャラクタービジネスの両面から、展開を拡大する方針。

(出所: 雑誌・記事、事務局分析 )

制作

[出典] VOCALOID ウェブサイトより http://www.vocaloid.com/

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み>

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48

Live2D

Live2Dとは、株式会社Live2D(旧名:サイバーノイズ、2014年7月に改称)によるアニメーション作成ソフト群。これまで3D以外に手段が無いと思われていた本格的な立体表現を、完全に2次元で行うことを目指して開発された技術であり、「絵を描きたい」 クリエイターにとって理想的な 『 描きたい通りに描き、動かしたい通りに動かす 』 ことを目標に進化している。

[開発元] 株式会社Live2D

[関連URL] http://www.live2d.com/

日本オリジナルの新しい制作技術の事例2

[ファクト]

• 日本のセルアニメ独特の表現は3DCGでは表現が難しく、また多くの労力がかかっていた

• これらの問題を解決するために、2006年にLive2Dが開発された

• 近年はゲーム分野での活用が広がっている

[展開例] ゲームアプリのリッチ化の一環として近年脚光を集めており、『ガールフレンド(仮)』や『バトルガールハイスクール』、『あんさんぶるスターズ』など有力タイトルで利用されるようになっている。

株式会社コロプラは、株式会社Live2Dへの出資を実施。原画の魅力を損なうことなく、3Dとは異なるアプローチによって実現した同社の「Live2D」は業界内で高い注目を集めており、モバイルゲームやポータブルゲーム、動画など多数のコンテンツで採用されている。キャラクターの立体表現ニーズはグローバルで高まりを見せていることから、「Live2D」は日本発の世界標準技術となる可能性を秘めている。コロプラは「Live2D」の可能性を評価するとともに、クリエイティブツールとして世界標準を目指す同社の姿勢に共感し、「Live2D」の普及ならびに、世界中のクリエイターに愛される製品づくりを支援する。

(出所: 雑誌・記事、事務局分析 )

制作

[出典] Live2D ウェブサイトより http://www.live2d.com/

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み >

Page 49: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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teamlabbody

医学アプリ。人体全身の筋肉・神 経・骨・関節を3Dビジュアル化、骨格の動きは生きた人間の動きを世界で初めて再現している。

お絵かき水族館

子どもたちが描いた魚たちが泳ぐ水族館。同じ形の魚は、群をつくった、子どもたち自身が水族館に近づくと、魚にエサをあげることもできる。

海外で評価されている日本コンテンツの事例

チームラボ

東京都文京区に本社を持つ、独立系のシステムインテグレート企業である。東京大学発のベンチャー企業と して知られている。ウルトラテクノロジスト集団を自称し、プログラマ(アプリケーションプログラマ、ユーザーインター フェイスエンジニア、DBエンジニア、ネットワークエンジニア)、ロボットエンジニア、数学者、建築家、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、CG アニメーター、編集者など、情報化社会のさまざまなものづくりのスペシャリストから構成されている。 [URL] http://www.team-lab.com/ [作品例]

Rhizomatiks

Webから空間におけるインタラクティブ・デザインまで、幅広いメディアをカバーする高い技術力と表現力を併せ持った少数精鋭のクリエイター集団。 [関連URL] http://rhizomatiks.com/ [作品例]

Perfume at Cannes Lions International Festival of Creativity カンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルでのパフォーマンス。3人がまとう真っ白な衣装がスクリーンとなり、次々と色鮮やかなグラフィックが映し出される。

[出典] 真鍋大度(ライゾマティックス) ウェブサイト

http://www.daito.ws/work/perfume-cannes.html

[ファクト]

• IT系企業発で、新技術を活かしたコンテンツの制作が始まっている

• 概ね国内での評価以上に、海外での評価が高い

• これらの企業ではプログラマ、デザイナー、編集者、建築家など様々な人材でプロジェクトチームが構成されている

[出典] チームラボウェブサイト http://www.team-lab.com/

制作

FUTURE WORLD: WHERE ART MEETS SCIENC

チームラボとアートサイエンス・ミュージアム(シンガポール)のコラボレーションによる常設展示。ミュージアムのギャラリースペース全体の4分の1を占める1,500平米もの空間に、インタラクティブな作品など、全15作品を展示。

KABUKI Spectacle at FOUNTAINS OF BELLAGIO

市川染五郎の歌舞伎「鯉つかみ」に合わせて、ベラージオの噴水を吹きあげてつくり出すウォータースクリーンに、巨大な鯉のホログラム映像を出現させた作品。

[出典] チームラボウェブサイト http://www.team-lab.com/

[出典] チームラボウェブサイト http://www.team-lab.com/

[出典] チームラボウェブサイト http://www.team-lab.com/

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み >

Page 50: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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50 他産業連携型コンテンツの事例2

[ファクト]

• エンターテインメント分野以外でのコンテンツの利用や、コンテンツをつくる技術の他分野への応用が行われている

• これらは「シリアスコンテンツ」や「エデュテイメント」と呼ばれることもある

制作

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み >

[医療]✕[コンテンツ]

医療分野における3DCGと 3Dプリンタの利用

現在、日本国内のいくつかの病院で、すでに手術の検討のために3DCGと3Dプリンタが活用されており、成功率の向上に寄与している。また、将来的には人体に直接接着や移植が可能な身体部位を作り出すために、胚幹細胞や生きたヒト組織をプリンターで再生する方法も期待されている。

[出典] ウォール・ストリート・ジャーナル ウェブ版「進化する3Dプリンター、内臓模型で手術の予行が可能に」 http://www.wsj.com/articles/SB10001424127887324504704578410764264855512

[教育] ✕ [コンテンツ]

大科学実験

NHK教育テレビジョン(NHK Eテレ)で2010年3月31日から放送されている科学実験番組。NHK、NHKエデュケーショナル、アル・ジャジーラ子どもチャンネルの共同制作番組。NHKは1959年以来、様々な教育コンテンツの制作を行っているが、同作品はそのなかでも最も海外で売れたものである※。

[出典] 大科学実験 ウェブサイトより http://www.daikagaku.jp/ ※ 平成22年度アジアコンテンツプラットフォーム構築事業(教育・健

康・環境関連コンテンツの輸出促進事業)報告書 http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001928.pdf

[教育] ✕ [コンテンツ]

小学校での教育

Minecraftは従来は仮想世界で建築や探索をするゲームだが、同シリーズの教育向けエディションを活用し、プログラミング教育を実施。仮想世界では街づくりや建築を行うことができ、作業はプログラムコードに置き換えることが可能で、作業をより大規模かつ高速に行うことができるようになる。また、ネットワークを介して一つの仮想空間に複数のプレイヤーが参加することで、大規模建築や運動会などの様々な協同活動を行うことができる。Minecraftのこのような特徴を活かすことで、創作活動のゲーム性を楽しみながらプログラミングを学習できるコンテンツを提供。

[出典] 総務省 ドリームスクール実証モデル 実施計画書

http://www.soumu.go.jp/main_content/000378832.pdf MINECRAFT EDUCATION EDITION http://education.minecraft.net/announce011916/

Page 51: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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51 他産業連携型コンテンツの事例1

ガールズ&パンツァー ✕ 大洗町(地域)

「ガールズ&パンツァー」は、戦車を使った武道「戦車道」が、華道や茶道と並んで大和撫子のたしなみとされている世界を舞台にした2012年放送のTVアニメ。大洗町を舞台に、女子高生が戦車に乗って他校と対戦するという奇抜な設定。水島努監督によるリアルな戦車の描写と、多数の美少女キャラでアニメファンとミリタリーファンを中心に話題になった。舞台となった大洗町には全国から多くのファンが集まり、「ガルパンの聖地」として人気を集めている。 2014年度は763万円だったふるさと納税が、同作品のグッズを返礼に加えたところ、2015年度は11億7725万2901円(6369件)の寄付金が集まった。

[出典] 劇場版ポスター 公式Twitterより [出典] 茨城交通ウェブサイト http://www.ibako.co.jp/

あの花(あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。) ✕ 西武鉄道(企業)

秩父が舞台設定のモデルになったアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」は平成23年4月からフジテレビ“ノイタミナ”ほかで放送され、全国からファンが訪れるようになりアニメの聖地になった。同地域への鉄道アクセスを持つ西武鉄道は、アニメや地域とタイアップして、旅客の増加を目的とした様々なキャンペーンを行っている。

[出典] メインビジュアル 公式Twitterより [出典] 秩父市観光Webサイト「秩父観光なび」

http://navi.city.chichibu.lg.jp/ 2014『あの花』スタンプラリー in ちちぶ ~春爛漫『あの花』街めぐり~

[ファクト]

• コンテンツの販売そのもので収益を上げるだけなく、他産業と連携することによってさらなる利益を上げる手法がある

• 「聖地巡礼」など地域や企業と組む事例は数多くある

• コンテンツ開発段階から事前的に連携するものと、コンテンツが流通した後から事後的に連携するものがある

制作

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み >

Page 52: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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52 消費者主導型コンテンツの事例

ニコニ・コモンズ

日本の代表的な動画共有サイトの1つであり、多くの用語や文化を生み出している。 ニコニコ動画の特徴は、配信される動画の再生時間軸上に対しユーザーがコメントを投稿できる独自のコメント機能であり、その他にもユーザーやアップロード者同士が交流できる機能を数多く備えている。 また、「ニコニ・コモンズ」というプロ・アマチュア問わず、動画製作に利用可能な素材を投稿、利用できる仕組みを設けている。 [引用] ニコニ・コモンズ

http://commons.nicovideo.jp/

ケータイ大喜利

『着信御礼! ケータイ大喜利』は、月3回土曜深夜(日付上は翌日曜)にNHK総合テレビジョンと海外向けのNHKワールド・プレミアムで放送されているバラエティ番組である。放送中に大喜利形式でお題が出され、回答を視聴者が携帯電話で送信。このうち何らかの基準で抽出したものについて出演者らが評価するという内容である。 [引用] 着信御礼!ケータイ大喜利

http://www.nhk.or.jp/o-giri/

東芝 REGZA

東芝が2006年2月から販売している液晶テレビの世界統一ブランド。2010年からは同ブランドにレコーダーやプレーヤーなどが追加され、同社が販売する映像機器関連の総合ブランドとして展開している。2015年より、「レグザ」利用者で同意が取れた16万人のテレビ視聴・録画の分析結果を、コンテンツ制作者向けに販売を始めており、「ロイヤル視聴者」の分析などに活用されている。 [引用] 東芝レグザクラウドサービス

http://www.timeon.jp/

[ファクト]

• コンテンツ制作にインターネットの双方向性を活かしたざまざまな事例が生まれている

制作

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み >

Page 53: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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53

カタログIPオープン化プロジェクト

[運営元] 株式会社バンダイナムコエンターテインメント(旧:バンダイナムコゲームス)

[関連URL] https://open.channel.or.jp/

過去作品のIP開放によるコンテンツ

[ファクト]

• クリエイター(プロシューマー)等が多種多様なコンテンツの制作・公開を通じ、より個々人の趣味嗜好に合ったコンテンツを消費できる環境が整ってきている

• そのような中、クリエイター等による多様なコンテンツの制作を促進するため、株式会社バンダイナムコエンターテインメントでは国内クリエイターに自社のコンテンツの改変を自由に公開する「カタログIPオープン化プロジェクト」を開始している

制作

マンガアンソロジー CATALOG IP RETRO GAME COMIC

VAMPIRE HOLMES×パックマンコラボ ~星屑の救世主~

[出典] カタログIPオープンプロジェクト ウェブサイトより https://open.channel.or.jp/

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み >

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

Page 54: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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54 動画、音楽、マンガ、ゲームの配信プラットフォームの事例1 流通

動画配信 音楽配信 ゲーム配信 書籍配信

EST Electronic Sell-

Through

(購入)セル配信

TVOD Transactional

Video On Demand

レンタル配信

SVOD Subscription Video

On Demand

月額課金

AVOD Advertising Video

On Demand

無料広告モデル

• amazon instant video • Google Play • iTunes • Rakuten Showtime • TSUTAYA TV

• amazon instant video • Bandai channel • DMM.com • GYAO!ストア • Google Play • itunes • TSUTAYA TV

• TBSオンデマンド • テレビ東京オンデマンド • テレ朝動画 • 日テレオンデマンド • フジテレビオンデマンド

• auビデオパス • Bandai channel • dTV • hulu • Netflix • NotTV • U-Next • UULA

• TBSオンデマンド • テレビ東京オンデマンド • テレ朝動画 • 日テレオンデマンド • フジテレビオンデマンド

• 日テレ無料 • TBS FREE • プラスセブン • life CATCH UP • テレ朝キャッチアップ • TV TOKYO PLAY • TVer

• Amazon Digital Music

• iTunes • LISMO • mora • music.jp • ototoy • レコチョク

• Amazon Prime Music

• Apple Music • AWA • Google Play Music • LINE Music

Music Unlimited • Spotify

※PVが動画配信されている場合がある

• kindle ストア • 楽天Kobo電子書籍ス

トア • Book Live • honto • ブックリスタ

• DMM コミックレンタル

• Renta!

• auブックパス • Book Walker • dマガジン • Yahoo!ブックストア

• 青空文庫 • Jコミ

• PlayStation Store • App Store • Google Play • Nintendo eShop • Xbox Games ストア

• PlayStation Now

• PlayStation Now • GeForse Now

• App Store • Google Play

• ゲーム配信以外はマルチプラットフォーム対応であるため、多くの事業者が存在している

• 音楽とゲームのTVODサービスは存在していない。

• 音楽のAVODサービスは、PVなど動画配信として存在している。

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み >

Page 55: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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55

株式会社コルク

漫画家・小説家などのクリエイターのエージェント企業。出版のみならず、作家からIPの管理を委託されるので、海外展開、または映画化や商品化などの展開を行っている。新人発掘を行う他、消費者の意見を取り入れつつ販売促進をしていくために、ソーシャルメディアを活用したファンコミュニティーの形成・運営にも力を入れている。

[関連URL] http://corkagency.com/about

IPホルダー主導のエージェントビジネスの事例 3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み >

[ファクト]

• 株式会社コルクは、作家から直接IPの管理を委託されてエージェント業務を行う企業である

• ネットを活用することによって、既存の流通経路以外への進出も図っている

• ソーシャルメディアを活用したファンコミュニティーの形成・運営を行い、顧客と直接的な関係を構築している

[展開例] 「ドラゴン桜」の版権を管理するコルクは、日中間の版権取引・保護などを手がけるIPフォワード・グループ(上海)を通じて、アリババにドラマ化する権利を販売した。アリババが中国人俳優を起用して1話40分間のドラマを40話制作し、コルクは内容を監修する。制作費は5千万元(約10億円)程度になる見通し。

中国電子商取引最大手のアリババが自社制作する初の日本作品となる。同社は日本の漫画やアニメを「分かりやすく、中国の若者を魅了している」と評価。中国市場でも有望なコンテンツとして、積極的にドラマ化する。中国では検閲や海外番組の輸入規制などが障壁となり、日本のコンテンツを流すことが難しかった。今回の枠組みが成功すれば、日本のコンテンツを中国市場に売り込む道が広がる。中国ではスマートフォンやタブレット端末を使い、動画サイトでドラマや映画を視聴する消費者が増えている。アリババは11月、中国の動画配信大手、優酷土豆を買収することで合意。今回のドラマも動画サイトを中心に配信する。狙いは動画配信とネット通販の融合だ。

アリババは今後、ドラマに登場する小道具とネット通販サイト上の商品をつなぎ、ドラマを見ながら、劇中で使われた商品をワンクリックで購入できる仕組みを整える考え。大学受験をテーマにした「ドラゴン桜」は日本でお守りや鉛筆付きの問題集がヒットした経緯があり、ネット通販との親和性が高いと判断したもようだ。コルクは日本の漫画や小説など約300作品の版権を管理し、米国や東南アジアなど海外での版権販売にも積極的に乗り出している。今後は中国への版権販売も本格化する。 (出所: 雑誌・記事、ヒアリング、事務局分析 )

[出典] 株式会社コルク ウェブサイトより http://corkagency.com/

流通

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hontoポイント

hontoは、大日本印刷とNTTドコモの合弁会社である株式会社トゥ・ディファクトが運営するオンライン書店、マルチプラットフォーム型電子書籍配信・販売サイトであり、hontoポイントは同サービスおよび、提携する書店で利用可能なポイントサービスである。

ビックデータ・AIを活用したマーケティングの事例1

[運営元]

株式会社トゥ・ディファクト

[関連URL]

http://honto.jp

流通

• hontoポイントは、1枚のポイントカードで各提携先書店でのポイントの貯蓄、利用できるサービスで、カードを提示して購入した個人情報をデータベース化し、書籍のレコメンドサービスを行っている

• 株式会社ブレインパッドは、企業の効果的なデジタルマーケティングの支援サービスで協業し、各社の持つデータ分析機能やレコメンド機能を組み合わせた新しいデジタルマーケティング支援ソリューションを提供している

[ファクト]

[引用] トゥ・デファクトウェブサイトより http://www.2dfacto.co.jp/vision/

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み >

Rtoaster(アールトースター)

データ分析および関連サービスを提供する株式会社ブレインパッドとソフトバンクグループで企業のデジタルマーケティングを支援する株式会社ジェネレイトおよびソフトバンクテレコム株式会社は、企業の効果的なデジタルマーケティングの支援サービスで協業し、各社の持つデータ分析機能やレコメンド機能を組み合わせた新しいデジタルマーケティング支援ソリューションを提供。

[運営元] 株式会社ブレインパッド

[関連URL] http://www.brainpad.co.jp/news/2014/12/03.html

Page 57: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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metaps (メタップス)

Metapsはアプリマーケティングに必要なデータ分析、プロモーション、収益化を1つのSDKで提供するサービス。データ解析時においては、人工知能を活用して、収益を最大化するようにしている。

ビックデータ・AIを活用したマーケティングの事例2 流通

• スマートフォンアプリの収益化プラットフォームmetapsはデータの解析に人工知能を用い、現在、世界8カ国で展開中である

• 天気や道路の状況、曜日など、条件ごとの統計を基に、交通状況を予測する従来のシステムに加え、個別の自動車の動きまで加えたところに、IBMのシステムの特徴がある

[ファクト]

[出典] メタップス ウェブサイトより http://www.metaps.com/ja

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み >

[運営元]

株式会社メタップス

[関連URL]

http://www.metaps.com/ja

車両プローブ情報分析システム

プローブ車両(位置情報センサーを搭載した探査車両)から得られる情報を集約、分析することによって、リアルタイムに道路交通情報を提供するシステム。車両の通行が極端に少ない道路においても、過去のパターンを分析することによって、欠損する交通情報を高精度に推定し補完することができる。

[情報源]

HITACHI製造業・流通業向けソリューション ウェブサイト

[関連URL]

http://www.hitachi.co.jp/products/it/industry/solution/cis/traffic_information.html

[出典] HITACHIウェブサイトより http://www.hitachi.co.jp/products/it/industry/solution/cis/traffic_information.html

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ZenClerk

株式会社エモーショナルインテリジェンスは、電子商取引サイトにおけるマウスやタッチスクリーンのユーザーの行動を学習し、適切なタイミングで適切なクーポンを自動表示するサービス「ZenClerk」を展開。行動記録から消費者の感情を解析することで購買決定率の向上を図り、電子商取引事業者の生産性の向上を図る。

[運営元] 株式会社エモーショナルインテリジェンス

[関連URL] https://www.zenclerk.com/

ビックデータ・AIを活用したマーケティングの事例3 流通

• ZenClerkはに購入を迷っているユーザーに対して最後のひと押しとなるクーポンを最適なタイミングで表示するサービスである

• 同社の開発した人工知能エンジン「Emotion I/O」を用いて、行動記録から、消費者の感情を解析し、最適なタイミングを割り出している

[ファクト]

[出典] ZenClerk ウェブサイトより https://www.zenclerk.com/

3. コンテンツ産業の現状と構造変化予測 > 3-4. 2015年における国内コンテンツ業界の取り組み >

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4. ビジョンを実現するために官民が連携して取り組むこと

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60 4-1. 2030年のコンテンツ産業の発展に向けたエコシステムの確立 4. ビジョンを実現するために官民が連携して取り組むこと >

• 技術イノベーションによるコンテンツの 新ジャンルの創出

• シリアスコンテンツやエデュケーションコンテンツを言われる医療分野や、教育、スポーツにおけるコンテンツ産業領域の拡大

• 地域活性や観光インバンドを目的とした、 他産業との連携によるコンテンツ産業領域の拡大

• 消費者が豊かな余暇生活を過ごせる

• 消費者が便利な製品により豊かな生活が過ごせる

• 他産業の従事者がより多くの収入を得る

• オープンイノベーションのよる コンテンツ関連技術・サービスの数

• 日本由来コンテンツにおけるIPの収入

• 日本のコンテンツ消費目的での 訪日外国人数

• 訪日外国人の日本でのコンテンツ消費量

• 平均的エンターテインメント消費時間

• 医療、教育、介護分野等での コンテンツ消費時間

• コンテンツ起因による他産業連携効果

• コンテンツ関連技術数 / オープンイノベーションの開発技術数

• 日本由来コンテンツ売上 x 取分比率

• コンテンツ消費額 / 訪日外国人総数

• コンテンツ消費額 / 訪日外国人全体の消費額

• 余暇の使用時間

• 医療、教育分野でのコンテンツ接触時間

• アンケート等による定点観測

• 消費者側の生産への参加 (ローカルコンテンツの一つ)

• 消費による生産者への還元

• コンテンツ産業への従事者、起業の増加

• コンテンツ分野への投資

• 参加事例 • CGM,クラウドファンディング

• コンテンツ消費額 / 訪日外国人全体の消費額

• 制作者の平均所得

• IPO,M&Aによる成功企業の数

• 業界団体への協力依頼数

• 関連企業の投資受け入れ額

項目 指標例 測定可能と思われる指標

• これまでの分析を踏まえ、将来ビジョンを考えるにおいては、将来におけるコンテンツ産業のエコシステムを確立することが必要とされる。まず競争力があるとみられイノベーションを軸にした未来型コンテンツ、そして他産業との融合領域におけるシリアスコンテンツ、そして他産業を支援するコンテンツなど、コンテンツ産業によるシナジー効果の拡大を図る。その結果として、消費者全般において余暇の活用など生活の質全般が向上し、制作者にとっても、所得の分配という形で生活の質が向上することとなる。制作者の平均所得の向上や、知名度や経済的にも成功を収めた成功者、および成功企業の登場は、産業全体に人材を呼び込むことや、成功企業による再投資、日本のコンテンツが海外から注目を集めることによる海外消費の拡大に加えた対日投資の拡大にもつながってくる。これらの流れにより、持続的にコンテンツの成長が進むというのが、目指すべきエコシステムの流れである。

• このエコシステムを構築していく中では、結果としての流通市場の大きさに注目するだけでなく、生産者の視点、消費者の視点においてモニタリングしていくことが重要である。しかしながら、技術革新や流通フローの革新などにより、既存の測定点は常に変化していくことが予想される。よって下記のように測定領域を定めた上で、複数の定点をKPIとして設定し、観測していくことにより、産業の成長や効果を測定していくことが求められる。

コンテンツによる

生活の質の向上

コンテンツ産業による

シナジー効果の拡大

魅力ある

コンテンツ産業へ

再投資による拡大

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ローカルコンテンツ戦略

4-2. ビジョン実現のための2つの戦略:「ローカルコンテンツ戦略」と「グローバルコンテンツ戦略」

新市場開拓 世界市場、もしくは特定の海外市場をにらんで、流通を活性化させていく

• 全世界向けの流通(ユニバーサル型)

• 特定地域やニッチ市場向けの流通(リージョナル型)

• 国内向けコンテンツの海外展開(トランスレーション型)

多角化

左記において生み出された新しいコンテンツのうち、国際競争力のあると考えられるものを、上記で開拓した流通経路にて展開していく。

市場浸透

現状のコンテンツ産業の主軸である映画、テレビ、アニメ、音楽、出版の産業規模(生産量、流通量、消費量、雇用規模など)と、パッケージ、ネットワーク、劇場専用スペース、放送という流通面を維持していく

既存の産業と市場の規模は、人口構成やGDPの影響を受けて下がる可能性があり、急激な落ち込みを避けるために、各分野でフォローして全体を維持する戦略的な考えが必要となる

新製品開発 イノベーションや他産業との連携により、新たなコンテンツを開発していく • 技術イノベーション型コンテンツ

• 他産業連携型コンテンツ

• 消費者中心型コンテンツ

新市場・海外市場 国内市場

既存コンテンツ

新規コンテンツ

4. ビジョンを実現するために官民が連携して取り組むこと

グローバルコンテンツ戦略

• 前段のエコシステムを作動させるための大きな戦略を、技術イノベーションや他産業連携など新サービス開発を積極的行い未来型コンテンツの創生を進める「ローカルコンテンツ戦略」と、海外の新市場を積極的に開拓していくなど全世界へ向けたコンテンツの発信を進める「グローバルコンテンツ戦略」の二つと定める。

Page 62: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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62 4-2-1. ローカルコンテンツ戦略 (コンテンツ面) 4. ビジョンを実現するために官民が連携して取り組むこと > 4-2.ビジョン実現のための未来型コンテンツの開発と海外市場開拓による2つの戦略 >

技術イノベーション型コンテンツ

イノベーションによって生成される新たなコンテンツ。VRのように、これから本格的に導入される新しい技術を活かしたコンテンツのほか、技術イノベーションが既存のメディアと融合することで新たな価値を生むコンテンツも含まれる。後者の例としては、プロジェクションマッピングとモーションキャプチャーシステムを合わせたライブパフォーマンスや、高性能カメラで撮影したオペラや歌舞伎の舞台公演をスクリーン上映

するODS(Other Digital Stuff)などが挙げられる。

消費者主導型コンテンツ

IoT、ビックデータなどユーザーのコンテンツの消費行動や動機を意識したものや直接、消費者が加わるようなコンテンツ。消費者行動を意識したコンテンツとしては、ビッグデータ解析により、アーティストのCDを購入する消費者層の併売分析を行ない、その傾向を新たなコンテンツ制作やプロモーション戦略に活かす事例が見られる。

また、ユーザー自身が独自のコンテンツを制作。発信(UGC)していく他、SNSやブログ上においてこれらのコンテンツや個人の意見を拡散 (CGM)していく動きも見られる。

制作者

他産業事業者

消費者

流通担当 プロデューサー (ハスラー)

制作担当 クリエイター (デザイナー)

技術担当 テクノロジスト (ハッカー)

• ローカルコンテンツ戦略として位置付けられるコンテンツについては、幾つかの類例として整理することができる。一つは技術革新や制作者間の連携から生まれる「技術イノベーション型コンテンツ」、さらに、他産業と連携することによって生まれる「他産業連携型コンテンツ」、そして、消費者データのさらなる活用や消費者の参加によって生まれる「消費者中心型コンテンツの」の3つがある。

他産業連携型コンテンツ

• シリアスコンテンツ 他産業との接点領域において生み出される新たなコンテンツ。医療分野や教育、スポーツにおける三次元映像の活用や、製造業と連携した製品マニュアルの作成、地方自治体と協力した伝統工芸技術のアーカイブなどが挙げられる。

• 他産業支援型コンテンツ 他産業の成長を支援する位置付けであり、訪日外国人の増加などのインバウンドや、企業や特定産業のアウトバウンド推進を目的として生み出されるコンテンツ。アニメ作品と観光事業者が連携して地域活性を進めた例や、広告分野におけるブランデッドエンターテインメントなどがその一例。

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63 4-2-2. グローバルコンテンツ戦略 (メディア・流通面) 4. ビジョンを実現するために官民が連携して取り組むこと > 4-2.ビジョン実現のための未来型コンテンツの開発と海外市場開拓による2つの戦略 >

全世界向けの流通

全世界の消費者を一つの市場としてコンテンツを企画・製作し、 展開する戦略 (例)2015年の全世界展開コンテンツ [映画]

• スターウォーズ • ジュラシックワールド • ワイルド・スピード • アベンジャーズ

[音楽]

• テイラー・スウィフト • ジャスティン・ビーバー • ワン・ダイレクション

[ゲーム] • クラッシュ・オブ・クラン • アングリーバード • キャンディークラッシュ • スプラトゥーン • キングダムハーツ

国内向けコンテンツの海外展開

国内市場を主軸とし、 コンテンツ自体には変更を加えず 展開する戦略 (例)2000年以降に展開されたコンテンツ [映画]

• 千と千尋の神隠し [ドラマ]

• おしん [音楽]

• VAMPS • Perfume

[ゲーム]

• パズドラ • ドラゴンクエスト

特定地域やニッチ向けの流通

自国以外の特定地域やニッチマーケットに向けてコンテンツを適応させ 展開する戦略 (例)2000年以降に展開されたコンテンツ [アニメ] • スーラジ ザ・ライジングスター

(インド版 巨人の星) [音楽]

• 超新星 • 東方神起 • 少女時代 • KARA • BoA • BABYMETAL

[ゲーム]

• LINEゲーム(ツムツム他)

• コンテンツの国際展開を中心に考えるグローバルコンテンツ戦略においては、その展開手法によってにとるべき戦略が異なる。まず、全世界の消費者が共通に興味を示し共感を覚えるコンテンツを中心に据えた上で、世界展開を図る「全世界向けの流通」モデル、自国以外の特定地域や、世界市場においてはマイナーな領域ながら一定の消費者が存在するニッチマーケットに注力する「特定地域やニッチ向けの流通」モデル、そして国内市場をメインとして制作されながら、その独自性や日本でしか視聴できなコンテンツを翻訳など一部の加工を除き、そのまま展開する「国内向けコンテンツの海外展開」モデルに分類する。

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64 4-3. 戦略を推進するための具体的な政策 4. ビジョンを実現するために官民が連携して取り組むこと

民間が主体と

なって取り組むこと

政府が主体と

なって取り組むこと

ローカルコンテンツ戦略 グローバルコンテンツ戦略

(例) • 地域発コンテンツの発掘・活

性化のための仕組み作り

(例) • 産業構造の変化に対応した

規制の在り方の検討 • グローバル・プラットフォ

ームを巡る対応の検討

(例) • 海外消費者のニーズに合

わせた海外展開(国際共同製作の促進)

(例) • VR・ARを初めとしたコンテ

ンツ開発技術の国際標準化

(例) • 国際コンテンツマーケッ

トの基盤整備

(例) • コンテンツ権利関係情報デー

タベースによる海外バイヤーとのマッチング

• デジタル・オンライン時代における情報発信力の強化

• ローカルコンテンツ戦略として技術革新を中心に新市場への開拓を目指すとともに、各取引市場を通じたグローバル化、また、それらを円滑に行うための著作権データベースの整備を進める。更に、共通事項として人材育成、規制緩和、資金調達の多様化を進めるとともに、コンテンツを供給するプラットフォームを有効に活用する。

(例) • ビジネスプロデューサーの人材育成 • 海外市場をターゲットとした多様な資金調達

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《参考》各国政策比較

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66 A-

66 国別政策: 中国(1)

財源 主要実施機関 政策と制度

• 行政府からの支援予算 財政部50億元

• 国と国有企業の投資分担 映画とアニメ中心のインフラ支援や制作支援に加え、表現規制 (検閲) が行われていることが最大の特徴。政府は表現したい題材や社会的関心を喚起できるプロジェクトや、農村部での作品上映を普及するための投資を行い、営利目的のプロジェクトは、国有資本を持つ大企業が担う。

• 表現規制(検閲) 公開を認める海外作品を34作品/年に規制。社会的に影響力のある作品を優遇支援。

• 投資と海外上映支援 中国文化産業投資基金(投資額:200億元 〔約4,000億円〕) による映画、アニメなどコンテンツ全般への投資と低予算映画の有名映画祭での上映を支援。

特徴的な政策

[基本方針] 国内流通への量的、質的規制と、大規模な資金投下による海外出資と国内文化強化への還流

作品流通に関して強い規制を課しており、表現内容と量の両面から自国作品の保護政策をとっている。一方で、ハリウッドメジャー作品等にも積極的に投資し、その利益を自国作品に還流させるなど、特に映画の強化に注力している。

メディア・流通 消費

技術

資金

人材

情報

コンテンツ制作

• 大規模スタジオの整備 実写・アニメの撮影・制作スタジオの整備

• TV番組の無線デジタル化 CCTV、CNRの番組の無線デジタル化等

• 農村・障がい者向け流通促進 農村部や障がい者向けのデジタルコンテンツ普及の支援

• 主要作品(映画・アニメ)の制作支援 社会的に影響力のある作品に資金支援

• 投資評価プラットフォームの整備 脚本開発・ビッグデータを活用した評価システム

• 販売等収益に係る税免除 ソフト販売、興行収入等に対する税の免除

• 上映環境等整備基金 上映環境の再整備、チケッティングサービス開発等の基金造成

• テレビドラマ脚本支援 基金の設立により脚本家を支援・育成

• 音楽高等教育機関 天津ジュリアード音楽学院の開設予定

• 表現規制のルール化 映画の質の担保と社会主義精神文明を作る表現規制の水準を一定化するルールの策定

• 対外貿易企業の認定 コンテンツの輸出企業の認定制度を運用

• 上映技術の向上 各映画館の3D作品等の上映技術の向上策を実施

• 特許関連サービス機関 特許検索・コンサルサービスの提供

• 取引市場の支援:映画やテレビ番組等の取引市場の開催支援 優先放送作品選定:ラ・テ総局選定国産アニメ作品の優先放送通達 中国映画週間開催:国外での中国映画流通に向けた上映会の実施

• 国外への書籍紹介 中国文化の伝達手段として国外への書籍紹介

• ネットTV/TVボックス規制 違法流通等の規制

广电总局 (ラ・テ総局)

文化部

中国文化 産業投資基金

財政部

版権局

知的財産局

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67 A-

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コンテンツ支援においては、映画とアニメを中心としてインフラ支援や制作支援が行われているが、それと並行して指導または監視をするための表現規制 (検閲) が行われていることが最大の特徴である。

政府が直接資金援助をするプロジェクトは、政府が表現したい題材や社会的関心を喚起できる公益性を持つもの、または農村部での上映を普及するための投資といった非営利目的のものが多く、営利目的のプロジェクトは、国有資本を持つ大企業が担っている。

また、中央政府とは別に、各地方の政府もそれぞれの裁量権を用いて、制作支援、税金のインセンティブ、人材育成支援などを行っている。

コンテンツ文化支援と表現規制の両輪からなる政策 ラテ総局が実施している政策は、映画とアニメの支援に重点的に力を入れており、映画に対しては主にインフラ支援と制作支援を行っている。直接的な資金援助と指導または監視をするための表現規制 (検閲) が同時に行われているのが特徴である。また、音楽、ゲーム、テレビなどの分野に関しては、直接の出資よりも表現規制、版権保護、管理の強化に関する政策が多い。

非営利プロジェクトは政府機関、営利プロジェクトは国有企業により推進 政府が直接資金援助を行うプロジェクトは非営利目的のものが多い。例えば、社会に良い影響の与えるような政府が表現したい題材の映画、社会的関心を喚起できる公益性を持つもの、または農村部での上映を普及するための投資などである。そして、営利目的のプロジェクトは政府機関が直接関わるのではなく、国有資本を持つ大企業が担っている。

国有資本を持つ企業による海外販売支援や投資の取組 国有資本を持つ代表的な企業として中影集団 (中国映画グループ)、中国文化産業投資基金などがある。中影集団は、映画製作、映画館建設、ロケ地運営等本業務のほかに、海外への輸出を推進するための子会社「中国電影海外推広公司」を持ち、カンヌ映画祭などの海外の有名な映画祭の開催中に中国電影週間 (Chinese film week) を実施し、国産の低コスト映画の海外での販売を援助している。また、中国文化産業投資基金は、財政部、中国銀行が大株主となり、200億元 (約4,000億円) の投資額を持ち、映画、アニメなどコンテンツ全般に投資を行っている。

上海、北京、天津といった地方政府による文化産業支援 中央政府とは別に、各地方の政府もそれぞれの裁量権を用いてコンテンツ振興に対しての支援を盛んに行っている。例えば、上海政府が、毎年2億元 (400億円) の専用資金を使って映画の支援を行っているほか、税金のインセンティブ、人材育成支援等も行っている。同じようにコンテンツ振興に大きく力を入れている地方政府には、北京市、天津市、江蘇省、浙江省などがある。

• 国家新聞出版広電 (ラテ) 総局 • 文化部 • 財政部 • 版権局知的財産局

中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

国別政策: 中国(2)

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68 A-

68 出典: 中国(3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • http://www.gov.cn/xinwen/2014-06/19/content_2704238.htm • http://citv.chnpec.com/citv/cn/index.html • http://www.sarft.gov.cn/art/2015/8/19/art_114_28164.html • http://www.gapp.gov.cn/news/1663/220380.shtml • http://www.sarft.gov.cn/art/2015/12/10/art_113_29274.html • http://www.gapp.gov.cn/news/1670/252344.shtml • http://www.sarft.gov.cn/art/2015/12/25/art_113_29415.html • http://www.gapp.gov.cn/news/1656/240023.shtml • http://dy.chinasarft.gov.cn/html/www/article/2011/012d8317393067964028819e2d789a1d.html

ニュース等サイト • http://news.sina.com.cn/m/2015-03-16/123831611712.shtml • http://news.ifeng.com/a/20151104/46098970_0.shtml • http://www.nbd.com.cn/articles/2015-11-16/962773.html • http://www.ce.cn/culture/gd/201502/17/t20150217_4620976.shtml • http://news.xinhuanet.com/overseas/2014-04/15/c_126392838.htm • http://news.mtime.com/2015/01/30/1538984.html • http://www.newasp.net/tech/118561.html • http://www.entgroup.cn/news/Policies/1123540.shtml • http://news.gmw.cn/2015-09/26/content_17177847.htm

Page 69: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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69 A-

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• 映画・アニメのシナリオ創作人材育成 シナリオ作家育成、創作センター、原作小説創作、ストーリー創作素材発掘ワークショップ開催、地域のストーリー創作施設運営を支援

国別政策: 韓国(1)

財源 主要実施機関 政策と制度

• 行政府からの支援予算 • ジャンルに共通する海外進出支援 映画振興と、それ以外の文化コンテンツ振興を別々の組織が担当し、幅広いコンテンツ開発と支援に注力。映画・アニメは、制作支援のほか、国外進出支援を、音楽関連は、国内での創作活動、公演などの支援のほか、上演機会提供、海外流通、海外との共同創作の支援などを実施。

• 幅広い支援 政府機関と各地方政府のFCが、映像、音楽、キャラクター、コミック、ファッションを79事業で支援。

• 制作段階をメインとした映像コンテンツ支援 企画開発からポスプロまでの手厚い財政支援。共同製作の制作費25%還付制度など。

• 音楽コンテンツの海外展開支援 国内活動のみならず、海外でのショーケースライブの開催、海外の音楽フェスティバル/マーケット参加、共同創作を支援

特徴的な政策

[基本方針] 政府主導的な事業推進とコンテンツと他産業との連携による海外展開

メディア・流通 消費

技術

資金

人材

情報

コンテンツ制作

• 技術研修支援 海外技術の研究支援、技術展示会参加、技術商用化、SFX導入、ソフトウェア提供

• 上映環境整備 上映環境の向上コンサルティング支援

• 映画・アニメの総合支援 企画開発、脚本翻訳、パイロット・本編制作、編集に関する支援

• 撮影誘致支援 脚本開発時の滞在費、ロケハン移動、撮影時の緊急医療支援など

• アニメ劇場公開支援 プリント制作費、広報媒体制作費支援

• 映画国内外配給・マンガ流通支援 広報、ローカライズ支援、マーケット参加

• 幼児向けアニメ制作支援 未就学児向けのアニメ作品の製作支援

• 共同製作マッチング 企画開発のマッチング、会議渡航費支援、オフィス開設

• 取引市場の開設 ライセンシングショー、ファッション文化、音楽ショーケースなど

Ministry of Culture, Sports and Tourism

Korean Film Council

Korean Creative Content Agency

Publication Industry Promotion Agency of Korea

• 人材の市場進出支援 ストーリー創作作家のデビュー支援 新人ミュージシャンのコンサート開催、フェスティバル参加、放送出演支援

Page 70: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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70 A-

70

映画支援をKorean Film Council (KOFIC) が、それ以外の文化コンテンツ支援をKorea Creative Content Agency (KOCCA) が担当し、幅広い文化コンテンツの開発と支援に力を入れている。

映画・アニメーションへの支援としては、制作支援を中心に、国際共同製作イベントへの参加支援、シナリオ翻訳支援、シナリオマーケット運営、人材育成など、音楽関連の支援としては、国内での創作活動、公演などのサポートに加えて、ショーケースライブの実施、海外フェスティバル及びマーケット参加支援、海外アーティストとの共同創作の支援など幅広く提供している。

また、地方政府のフィルムコミッションでは海外資本映画の撮影誘致を活発に行っている。

中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

中央政府、地方政府をあげた、幅広い文化コンテンツへの文化支援 韓国政府によるコンテンツ関連支援事業の主な実施機関はMinistry of Culture, Sports and Tourismの傘下にあるKorean Film Council (KOFIC) , Korea Creative Content Agency (KOCCA)、Publication Industry Promotion Agency of Korea (KPIPA) 等であるが、地方政府傘下のフィルムコミッションもいくつかの関連政策を実施している。映画をKorean Film Council (KOFIC) が、映像コンテンツ、音楽、コミック、ファッション等の文化コンテンツをKorea Creative Content Agency (KOCCA) が担当しており、幅広い文化コンテンツの開発と支援に力を入れている。支援の対象となるコンテンツは、79の事業のうち、 映画が50、アニメーションが8と映像関連コンテンツが半数以上を占めており、映像コンテンツ以外には音楽、キャラクター、コミック、ファッションなどのコンテンツを支援している。

映画・アニメーションに対する数多くの支援施策 映画・アニメーションに対しては、主に制作支援が行われており、本編制作を始め、撮影地調査、パイロット映像制作などのプリプロダクション、撮影後の編集などのポストプロダクションを支援している。また、日本、フランスなど海外との共同製作のために、海外でのCo-Productionイベントへの参加支援、航空券やシナリオの翻訳料支援を行っており、制作費の20%以上の海外資本が投資された共同製作映画には、韓国での制作費の25%をペイバックするという制度もある。それ以外にも、映画・アニメーションの素材となる良質のシナリオ及びシナリオ作家を発掘するために、KOFICではシナリオマーケットを運営し、シナリオ及びシナリオ作家と映画制作者が円滑に連携できるよう取り組んでいる。なお、応募されたシナリオは毎月審査を行って優秀作を選定し、活動費を支援したうえで、専門家の指導を提供するなど人材育成にも力を注いでいる。

海外展開支援を中心とした音楽への支援 音楽関連の支援事業では、KOCCAの主導により、アーティストの国内での創作活動、公演などをサポートするとともに、海外にも活動を発信できるようにショーケースライブの実施、海外フェスティバル及びマーケット参加、海外アーティストとの共同創作等を支援している。

地方フィルムコミッションによる積極的な海外映画の撮影誘致 地方政府のフィルムコミッションでは、海外資本映画の撮影誘致を活発に行っており、2014年にはKorean Film Council (KOFIC)、ソウルフィルムコミッションなどの機関がMarvel Studios (米国) と『Avengers:Age of Ultron』の韓国での撮影のために「撮影及び大韓民国敢行活性化のための了解覚書」を締結し、撮影の協力・支援に加えて、制作費の支援を行った。

• Ministry of Culture, Sports and Tourism • Korean Film Council (KOFIC) • Korea Creative Content Agency (KOCCA) • Publication Industry Promotion Agency of Korea (KPIPA)

国別政策: 韓国(2)

Page 71: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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71 A-

71 出典: 韓国(3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • http://eng.kocca.kr/en/contents.do?menuNo=201441 • http://www.arko.or.kr/english/programs/liter.jsp • http://www.scenariomarket.or.kr/pages/index.jsp • http://www.kofic.or.kr/kofic/business/prom/promotionBoardList.do • http://www.kofic.or.kr/kofic/business/prom/promotionBoardDetail.do • http://www.kofic.or.kr/kofic/business/prom/promotionBoardDetail.do?seqNo=2418 • www.bfc.or.kr • www.jejufc.or.kr • http://www.jjfc.or.kr/ • http://st.cjculture.org • www.gculture.or.kr • http://www.koreanfilm.or.kr/ • www.seoulfc.or.kr

業界団体等 • www.wffis.or.kr • http://acf.biff.kr

Page 72: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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72 A-

72 国別政策: フランス (1)

財源 主要実施機関 政策と制度

CNCの主な財源 • テレビ局への課税(TST, 約750億

円、2013年)

• 映画チケットの10%として徴収される税金(約180億円、同)

• ビデオへの2%程度の課税(約36億円、同)

• SOFICA(視聴覚産業資金調達組合)による支援(約60億円、同)

• 産業収入の支援財源化による エンターテイメント・アートの文化的価値の創出 支援対象を「アート」及び「アーティスト(作家)」を主軸とする一方、チケット収入を支援策の財源化に接続し、エンターテイメントの文化と産業を区別せずに、エンターテイメントのアート価値を確立している。 (CNC) CNCが人材育成から作品の開発、制作、供給まで支援する一方、uniFranceやフランス・インスティチュートが「フランス文化」の世界発信拠点として機能している。

• CNCによる一元的支援 テレビ局とチケット代の10%などを税金として徴収し、約900億円の予算規模を持つCNCが自国作家の活動ともに、興行、共同製作、技術、税制度で支援

• 文化側面の重視 ヒット作を志向せず映画の文化多様性を重視した支援を実施。また、長編映画だけでなく、短編やドキュメンタリーなども開発段階から細かな支援策を設定。

• 国内作品/共同製作作品の配給等支援 一定基準を満たした国内/共同製作長編作品の配給、テレビ放送、公私用ビデオ販売支援を自動化

• SOFICA(視聴覚産業資金調達組合)による支援の増加 税控除と組み合わせたこのしくみをより投資に慎重になったテレビ局などが財源確保の代替案として選択することにより、その存在感はこの10年程で飛躍的に増している。

特徴的な政策

[基本方針] 自国文化の保護/育成を通じた国家ブランドの確立とゲーム産業クラスター形成

「フランス文化」を表象するコンテンツの保護/育成により国家ブランドを醸成し、具体的な効果として観光とクリエティブ産業の相乗効果を創出。また、州政府の支援により各地方にゲーム産業の集積を目指す動きがある。

メディア・流通 消費

技術

資金

人材

情報

コンテンツ制作

• 技術開発等に対する経済的支援 映画、その他の視聴覚芸術、アニメーションに対して作品開発に関わる設備、あるいはその資金を援助。

• 制作用の新しいテクノロジーに対する支援 革新的なテクノロジーを用いたプロジェクトの支援。

• 海外視聴覚プログラムプロモーション・ 販売支援 海外におけるプロモーションの一部をプロデューサーまたは興行者に対して支援する。

• 設備が不十分な地域の創造と近代化に 対する支援 十分に設備が整っていない地域の映画館に対して、改装を支援し、上映の多様性を確保する。

• VODの配給に対する自動的経済支援 全ての商業的ビデオ・オンデマンドに関連し、レンタル、ダウンロード、サブスクリプションに対する支援を行う

• 海外販売のためのマーケットリサーチ支援 • ユニ・フランスのネットワーク

長編プロデューサー、監督、配給など幾つかのカテゴリーに分かれて形成される委員会がある。

• 人気のないプログラムを維持するための援助 競争力の弱い作品を上映する映画館に対する支援。

• ハンディキャップのある人のための字幕支援

• ワールドシネマ・マーケットの研究 • ユニ・フランスによる世界映画市場の研究とデータ管理/活

用 • CNCによる年間報告書

ウェブサイトにて情報は一般公開される。

• VODカタログ VODのための検索を簡易化するため、CNCが王手映画データサイトなどと協力し作り上げた検索システム。

• CNCによる映画、アニメ、漫画、ゲームに対する制作支援 • ワールドシネマ支援

仏語以外での国際共同制作作品に対して三千万までをめどに支援を行う • 国際的プロダクションのための税控除 • SOFICA(視聴覚産業資金調達組合)による資金調達

• フランス国立映像音響芸術学院(6) CNCの管轄下にある国立映画学校。

• レジデンス、脚本開発、ドキュメンタリー開発支援 様々な地域でレジデンス形式などにより作品開発を支援。

• カナルプラスによる映画館配給援助 • CNCによるアーカイブ

• フィルム・フランスによるロケーション情報 CNCの支援を受け、41の地方映画撮影委員会のネットワークを形成し、ロケーション情報をはじめ、手続きや経済支援情報も合わせて提供する。

文化・通信省 CNC

フランス・インスティチュート

Femis

Uni-France

外務省

SOFICA 経済・財務省

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73 A-

73

国としての制度は日本でいう文化庁的な支援が多いと言えるが、支援しているのは「エンターテインメント」ではなく「アート」である。

ただし、CNCに業務が統括され、その収入源とチケットの売り上げと接続することによって、産業面とアート面との折り合いが図られているため、フランスの制度を文化と産業に分割するのはかなり難しく、すべてのエンターテインメント・アートには文化的価値があると考えられていると理解する方が妥当である。

ルール作りからチケット売上の自動還元まで多くの機能がCNCに集中 国立のフランス映画センターであるCNCはフランスでの支援制度だけでなく、ルール作りまで一括して行っており、映画を中心にアニメ、 テレビ、ドキュメンタリーゲームと視聴覚エンタテイメントを全般的に扱っている。予算規模はおよそ850~900億円 (667M euros、2014年) であり、チケットの10%が直接CNCに自動的に還元されるなど、企画から配給までの流れが循環するしくみが整っている。もうひとつの支援組織であるユニ・フランスが、文化的な活動に特化し、その支援規模も限られているのに対し、CNCは作家支援的な文化的側面だけでなく、興行、 共同製作、技術支援、税制度などあらゆる側面での活動に関わる総合的な組織となっている。

映画という文化に対する支援を重視 文化の多様性に寄与するための支援が多数あり、「ヒット作」を生むことを必ずしも目的とはしていない。これは、ヒット作によって映画を支えるのではなく、映画を文化として定着させ、それを支える業界全体を一様に支援することによって底上げし、人々を多様な形で映画に引き寄せ続けるということを第一の目的としているからと考えられる。

企画から配給まで、新しい人材や技術などへの幅広い支援 特徴として、制作だけでなく、その構想段階から支援が存在し、配給、興行、さらにはFEMISといった人材育成の段階でも支援が存在することが挙げられる。興行に関しても、映画館がない地域に対する新設・改装などの支援があるなど、映画が国の隅々にまでいきわたるための制度がある。また、新しい人材に支援がいきわたるように考慮されている。フランスは映画発祥の地としての歴史を持っているが、新しい技術に関しても積極的に取り入れる配慮がなされている。

EU諸国をはじめとした共同製作の推進と中国の存在感の拡大 諸外国との共同製作に関する同意を推進しつつ、支援としては特にドイツ、カナダ、ポルトガル、ギリシャなどの国との共同製作にたいする支援がある。また、2015年11-12月号のCNCの報告書 (la lettre du CNC no 126) には、中仏関係がトップで取り上げられ、CNCセンター長のフレデリック・ブルダンがオランド大統領とともに北京を訪問し、またワイルドバンチがチャイナ・フィルム、TVキャピタルとともに数十億円規模の基金を創設したことが触れられている。これらはフランスのプロデューサーが中国市場を開拓する一助となると記されている。共同製作への支援があるフィルム・フランスのWebサイトも、英語とフランス語とともに中国語ページがある。

• CNC • ユニ・フランス 中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

国別政策: フランス (2)

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74 A-

74 出典: フランス(3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • http://www.cnc.fr/web/fr/aide-a-la-promotion-et-a-la-vente-a-l-etranger-des-programmes-audiovisuels • http://www.cnc.fr/web/fr/aide-a-la-prospection-pour-la-vente-a-l-etranger • http://www.cnc.fr/web/fr/aide-financiere-automatique-a-la-diffusion-en-video-a-la-demande-vad • http://www.cnc.fr/web/fr/contribution-ocs-a-la-distribution • http://www.cnc.fr/web/fr/contribution-canal-a-la-distribution-de-films-en-salles • http://www.cnc.fr/web/fr/soutien-financier-aux-industries-techniques • http://www.cnc.fr/web/fr/cinemas-du-monde • http://www.cnc.fr/web/en/acm-distribution • http://www.cnc.fr/web/fr/soutien-au-scenario-aide-a-l-ecriture • http://en.unifrance.org/ • http://www.cnc.fr/web/fr/sofica • http://www.gncr.fr/presentation • http://www.moulinande.com/ceci.php • http://www.procirep.fr/ • http://www.saif.fr/spip.php?page=actioncul2&id_article=88 • http://www.saif.fr/spip.php?page=actioncul2&id_article=88

Page 75: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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75 A-

75

メディア・流通 消費 コンテンツ制作

国別政策: カナダ(1)

財源 主要実施機関 政策と制度

• 自主財源/基金/税収からの再投資額等

カナダメディアファンド $375.2 m/年

• 共同製作によるノウハウ・技術習得と産業集積の推進 国は世界で最多の共同製作協定を締結し、国際共同製作の推進を国内コンテンツの発展につなげている。また、米国との近接性を活かし、ハリウッド映画等の撮影誘致に注力し、連邦や州政府の優遇措置や税控除なども充実。他方、自国の言語や民族を対象とした作品の保護制度も多い。VFXや3D製作会社が数多く、州政府の支援でゲーム産業も盛ん。

技術

資金

人材

情報

• 制作技術供与

• 制作に係る3-5千ドル相当の技術提供

• 学生作品へのポスプロサービスの提供

• 複数プラットフォーム化 作品供給プラットフォームの多様化を求める消費者ニーズへの対応を支援(TV++α)

• 実験的作品の支援(映画・音楽) 実験的な作品について企画開発から制作(・流通)まで支援

• 言語の多様性を保全するプログラムへの支援

• カナダで撮影する国外作品への税額控除

• 移動費支援 音楽業界関係者のイベント参加の移動費を支援

• 作品の多言語化 より多くの国民の視聴のため既存作品の多言語化を支援

• 新人研修

• アニメ若手作家の見習い期間の支援

• 業界志望者と業界のネットワーキング

• 各分野についての情報を記載 分野別の特徴の説明。分野別の特徴の説明。分野別の特徴の説明。分野別の特徴の説明。

• 各国との共同製作協定の締結 世界で最多の共同製作協定を締結

• 取引市場への参加支援 映画・音楽の取引市場への参加を支援

• 撮影誘致と共同製作促進 優遇措置・税額控除等によるロケ誘致と協定締結により共同製作を促進。

• ゲーム開発・映像スタジオの進出促進 タックスクレジット、人件費への優遇措置等を通じて技術系企業のゲーム開発・映像スタジオの進出を促す。

• 技術供与支援 アニメーション制作において監督が必要とする3,000~5,000ドル相当分の技術を提供

特徴的な政策

[基本方針] 映像制作工程のワンストップ化と州単位の企業誘致による人材育成や技術分野でのコンテンツ振興

国外との共同製作協定によるコンテンツの企画開発から、インフラ整備投資の誘導によるポスプロまで、コンテンツの制作工程の国内水準を高め、他国作品・企業の誘致等によるコンテンツ振興を推進している。

民族遺産省 カナダ メディア ファンド

芸術議会

映画製作庁

テレフィルムカナダ

ケベック州政府文化省 ソデック

オンタリオ州文化省 OMDC

BC州政府文化省 CREATIVE BC

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76 A-

76

カナダは映像コンテンツ振興に力を入れている国として知られており、世界で最も多くの国と共同製作の協定を締結し、締結国との国際共同製作を推進することで国内コンテンツの発展につなげている。また、米国から近いという地の利を生かして、ハリウッド映画をはじめとする海外映画の撮影誘致に力を入れており、連邦や州政府からの優遇措置や税額控除なども充実している。

その一方でカナダの言語や民族を取り上げたコンテンツに対する保護制度も多く、文化的なアイデンティティを維持しながら、自国文化の保護を図っている。

従来の映像コンテンツだけでなくハイテク分野にも強く、クオリティの高いVFXや3D製作会社が数多くあるほか、ゲーム産業も盛んである。

世界で最も多くの国と共同製作協定を締結 カナダは世界で最も多くの国と共同製作協定を締結している。共同製作協定に基づき製作されたコンテンツは、各国で「国作」として承認されることで、カナダの製作会社が各国の助成制度に申請することが可能となり、国内コンテンツの発展につなげている。

文化的アイデンティティの維持と自国文化の保護 カナダの公用語 (フランス語・英語) と全州と民族 (アボリジニ民族、少数派英語・フランス語地方など) を代表するコンテンツと発展を支援する企業への保護制度も多く、各制度の支援率も高く、文化的アイデンティティを維持しながら、自国文化に対する保護の色も強い。

州政府による積極的な映像産業振興 州政府も政策支援を実施しており、各州レベルの映像産業振興やフィルムポリシーがみられる。州文化省の傘下で支援を実施している主なプレイヤーは、ケベック州のSodec、オンタリオ州のOntatio Media Development Corporation、BC州のCreative BCなどである。

地の利を生かした撮影誘致と積極的な優遇措置 米国から近く、米ドルに対するカナダドルの安さ、撮影に適した街並みや自然などからロケ地として活用されており、連邦と州政府からの優遇措置や税額控除により海外の製作会社による撮影が多く、「ノースハリウッド」と呼ばれるほどハリウッド映画の撮影も多い。

テクノロジーやゲームコンテンツの振興による次世代コンテンツ製作の発展 ハイテク分野に強く、クオリティの高いVFXや3D製作会社が多く、映像産業だけでなくゲーム産業も盛んである。ゲーム産業では、マルチメディアR&Dタックスクレジットや外資系企業のカナダへの海外投資戦略の拠点として、人件費などへの優遇措置を実施することにより、メジャーなゲーム開発スタジオ (Warner Bros Games, Ubisoft, E&A ,Bandai Namco、DeNA等) や映像スタジオ (英国のFramestoreやMPC) が進出してきており、これらの民間による人材育成も成立しており、次世代の映像製作の継承と発展に向けたエコシステム構築への姿勢が見られる。デジタルメディア産業においては、州政府によって、ゲーム産業の税額控除の支援をする自治体と各州の経済省の非営利企業、投資銀行が平行して外資投資支援を実施している。主なプレーヤーは、BC州のInteractive Digital Media Tax CreditとNew media Venture Capital, ON州のOntario Ginteractive Digital Media Tax Credit やQC 州のInvest Quebecであるが、その他の州(Manitoba州、Nova Scotia州、NF州、Prince Edwards島)でも条件に満たされる人件費やプロトタイプ・製品開発やマーケティング費用などの支援を実施)。

• Canadian Heritage (カナダ民族遺産省) • Telefilm Canada • National Film Board (NFB) • Canada Media Fund (CMF)

中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

国別政策: カナダ(2)

Page 77: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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77 A-

77 出典: カナダ(3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • https://www.telefilm.ca/en/funds-and-programs/development-program • https://www.telefilm.ca/en/funds-and-programs/canada-feature-film-fund/production-program • https://www.telefilm.ca/en/funds-and-programs/canada-feature-film-fund/marketing-program • https://www.telefilm.ca/en/funds-and-programs/micro-budget-production-program • https://www.telefilm.ca/en/funds-and-programs/mini-treaties • https://www.telefilm.ca/en/funds-and-programs/international-marketing-program • https://www.telefilm.ca/en/funds-and-programs/promotion-program • http://www.cmf-fmc.ca/ • http://onf-nfb.gc.ca/en/produce-with-the-nfb/french-program/nfb-french-program-directing-co-producing/ • http://onf-nfb.gc.ca/en/produce-with-the-nfb/filmmaker-support-programs/nfb-uqam-partnership/ • http://www.bac-lac.gc.ca/eng/Pages/home.aspx • http://www.pch.gc.ca/eng/1289312416804 • http://canadacouncil.ca/media-arts/find-a-grant/grants/grants-to-film-and-video-artists-scriptwriting-grants-production-

grants-research-creation-grants • http://canadacouncil.ca/~/media/files/grants%20prizes%20-

%20en/media%20arts/grants%20to%20film%20and%20video%20artists%20scriptwriting%20grants%20production%20grants%20and%20researchcreation%20grants/mag14ae07-14.pdf?force=1

Page 78: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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78 A-

78

メディア・流通 消費

技術

資金

人材

情報

コンテンツ制作

• ネット環境整備 遠隔地等の5MB高速のネット環境の整備

• 州政府による制作支援

• 州内映画の振興を目的とした税額控除

• ゲーム制作プロジェクト誘致のインセンティブ

• フィルムスクールの整備 大学等の高等教育機関での人材育成

• 撮影地情報の提供 各地のフィルムコミッションによる撮影地情報の提供

国別政策: 米国(1)

財源 主要実施機関 政策と制度

• 国の間接的支援と州の直接的支援 世界最大のコンテンツ市場を有し強い影響力を持つが、国の直接的な産業振興は現在行われていない。他方、ほとんどの州政府または知事室にコンテンツ関連の部署があり、7割の州でインセンティブ制度を設定し、他国や、州の間でも撮影誘致競争をしている。

• 政治的サポート 貿易に関する条約・協定の締結等を通じて海外進出企業の国際戦略をサポート

• フィルムスクールの充実 600校以上で展開されるフィルムスクールにて人材を育成

• 各州の撮影インセンティブ 雇用創出等を目指しほとんどの州政府が撮影支援を実施。36/50州で雇用助成、宿泊/消費税免除、タックスクレジット等のインセンティブを設定

特徴的な政策

[基本方針] IP活用の国際戦略の政治的サポート並びに人材育成、州政府によるロケ誘致等による雇用創出

国は世界規模で市場を有する映画を中心にIP活用に関して外交政策的サポートを、大学等ではコンテンツ産業人材の育成を担い、州政府は地元雇用創出に資する作品への助成等を行い、結果としてのコンテンツ産業支援を行っている。

Page 79: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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79 A-

79

政府によるコンテンツ振興支援は特にない 米国は、そのコンテンツ市場の大きさや影響力に関わらず、歴史的に国としての振興支援は特に行ってきていない。合衆国憲法の規定上、各州による合意によって政策が決められるため、国として政策を掲げるためには憲法を改正する必要があると言われている。その中で唯一、国単位で活動している芸術関連機関としてNational Endowment for the Arts (全米芸術基金) があるが、民芸や芸術の普及・教育団体であり、コンテンツ産業との関連性は薄い。

各州の様々なインセンティブ制度による撮影誘致競争の激化 その一方で、各州・市単位でコンテンツ関連政策を作ることは自由であり、ほとんどの州政府または知事室にコンテンツ関連のオフィスが設けられており、50州のうち現時点でインセンティブ制度を設けているものは36州である。ほとんどのインセンティブは映画・テレビ製作に関連するもので、ミニマム・スぺンド、州在住民の報酬の割引、宿泊税、消費税免除、タックスクレジット等、細かい条件は州によって大きく異なっており、結果として州同士で撮影誘致を競争することになっている。

南部を中心とした音楽制作に対するインセンティブ制度 音楽制作に対するインセンティブを有している州が7州あるが、そのほとんどは歴史的に音楽の文化・産業が根付いている南部に集中している。

デジタルメディアに対するインセンティブと海外との競争 5つの州がデジタルメディア・VFX関連のインセンティブを設けており、そのうち、カリフォルニア州・テキサス州・コネチカット州は、デジタル産業のハブとして評価されているが、常にカナダやその他よりインセンティブが有利な国と競い合っている。

なし 中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

米国は世界最大のコンテンツ市場を有しており、多大な影響力を持つにも関わらず、国としての振興支援は現在行われていない。

しかしながら、ほとんどの州政府または知事室にコンテンツ関連のオフィスが設けられており、7割の州でインセンティブ制度を設けているが、カナダやその他のよりインセンティブが有利な国との競争のほか、州の間でも撮影誘致を盛んに行っている。

国別政策: 米国(2)

Page 80: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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80 A-

80 出典: 米国(3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • http://www.illinois.gov/dceo/whyillinois/Film/FilmTaxCredit/Pages/default.aspx • http://gov.texas.gov/film/incentives/miiip • http://gov.texas.gov/film/incentives/miiip_game • http://gov.texas.gov/film/incentives/miiip_vfx • http://filmoffice.hawaii.gov/incentives-tax-credits/ • http://filmoffice.hawaii.gov/hawaii-film-studio/ • https://www.tax.ny.gov/pubs_and_bulls/tg_bulletins/st/film_production_in_nys.htm • http://www.nylovesfilm.com/pdfs/HowTheTaxCreditWorks2014.pdf • http://esd.ny.gov/BusinessPrograms/filmCredit.html • http://esd.ny.gov/BusinessPrograms/filmCredit.html • http://www.georgia.org/about-us/entertainment-contacts/ • http://www.film.ca.gov/Incentives.htm • http://ca.reel-scout.com/loc.aspx

Page 81: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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81 A-

81 国別政策: イギリス(1)

財源 主要実施機関 政策と制度

• 行政府からの支援予算、 全国宝くじ売上金の一部

• 担当省庁(DCMS)における幅広い政策立案、 実施は各種準公共団体で専門家による判断 中心となる省庁はコンテンツ産業以外にも放送、観光、非営利文化・芸術、文化遺産も所管し、経済成長政策・文化政策の両面からイギリスの国際競争力を高めることを目的とした政策立案を行う。細かい施策の企画・実施、資金配分、評価等は各種専門家がそろった団体に任せる仕組み。

メディア・流通 消費

• デジタルコンテンツ制作技術 一般的なITイノベーション政策。

技術

資金

人材

情報

• デジタル・シネマ化、VOD環境の推進 映画館のデジタル化費用の助成、ビデオ配信環境を進めるための大容量通信機能強化。

• デジタル・シネマ化、VOD環境の推進

• 特に映像関係に資金助成をする伝統 BFIが、宝くじ売上金を原資とする映像関係事業助成を行う。

• 公共文化施設等における非ハリウッド映画の 上映支援 施設運営助成、上映費用助成等。

• 大学、専門機関等(NTFSなど)での教育 制作に必要な技術的訓練も大学における専門教育コースに組み入れられるようになった。

• 大学、専門機関等での教育 大学院等でメディア、クリエイティブ関係の経営専門コースが増えた。

• 非ハリウッド映画の鑑賞教育 ハリウッド映画以外の作品普及を目的に鑑賞者教育・開発・啓蒙活動を助成。

• 特に映像関係は年次報告書を発刊 映像産業・市場に関するデータ収集・分析。

• クリエイターと流通業者とのマッチング支援 特に音楽、ゲーム関係では重要

• アーカイブの公開、利用促進 各種コンテンツのアーカイブにふれる機会を提供。アーカイブ化した作品の上映。

コンテンツ制作

• 映像作品撮影ロケ誘致 ハリウッド映画プロジェクトの誘致のための税制的優遇措置。税制を使った「間接支援」だが、イギリス国内プロジェクトへの「直接支援」を上回る金額。ただし「文化テスト」をパスした作品のみ。

• Creative Industries Council―政府と業界との対話重視 各産業を代表する人物と文化コミュニケーションおよびビジネス・イノベーション関係省庁の代表による評議会。業界の成長を阻む課題につき協議、解決策を探る。

• クール・ブリタニア 「創造産業」政策を1990年代後半に打ち上げて以来、他国のモデル的存在

• 映像振興については文化政策的色彩が強い 非営利文化を除いたコンテンツ産業にしぼると、基本的にはその経済規模と成長率に期待しているが、映像については文化政策的色彩も強い。

特徴的な政策

[基本方針] 「創造産業政策」の震源地―産業政策と文化政策の混在、結合

オーストラリア、NZ、アジア諸国などに拡がった「創造産業」政策を1990年代後半に打ち上げて以来、他国のモデル的存在。非営利文化を除いたコンテンツ産業全般に対しては、その経済規模と成長率を政策根拠としているが、映像については文化政策的色彩も強い。

Department for Culture, Media, and Sports

British Film Institure

Department for Business, Innovation and Skills

Page 82: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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82

これまで英国のコンテンツ産業政策を担ってきたUK Film Councilが2011年に活動を停止したあと、 Department for Culture, Media, and Sport 傘下のBritish Film Institute (BFI) が中心となって、海外に発信する作品を対象とした制作・流通支援を目的としたBFI Film Fundと、インディペンデント映画の流通支援を目的としたBFI Audience Fundの2つを柱として支援を行っている。

DCMS以外の省では、Department for Business, Innovation and Skillsが、UK Games Talent and Finance Community Interest Companyを設立し、英国のゲーム産業を育成するためのVideo Games Prototype Fundを成立させたほか、UK Trade & Investmentが、英国コンテンツの流通のための活動を行っている。

UK Film Councilの活動停止とBritish Film Instituteによる引き継ぎ 英国におけるコンテンツ関連政策を実施している主な行政機関はDepartment for Culture, Media, and Sportであり、文化・芸術・スポーツおよび英国国内の放送やインターネットなど、メディアに関する行政を担っている。 2011年にこれまでコンテンツ産業政策を担ってきたUK Film Councilの活動が停止したあと、 DCMS担当機関の中で最も大きな存在を持っているのは、1933年に英国国内の映画促進を目的として設立され、これまでは主に映画の保存や英国市民の映画リテラシー向上に向けて活動してきたBritish Film Institute (BFI) である。

海外に発信する作品を対象とした制作・流通支援とインディペンデント映画の流通支援 BFIが実施しているコンテンツ製作関連の政策は大きく二つに分けられる。ひとつは主に海外に発信する作品を対象とした制作・流通支援を行っているBFI Film Fundである。年間50作以上支援するFeature development fundingの他、制作費・ドキュメンタリー・初監督作品・国際共同製作、映画祭出品支援・デジタルまたはクロスメディアプロジェクトに対する支援など、複数の項目において支援が行われており、ロッタリーのファンドから年間£2600万投資しており、2017年には£3000万まで増加する予定である。

もうひとつの大きな政策は主に英国のインディペンデント映画の流通を支援するBFI Audience Fundである。英国のインディペンデント映画を増やし、より入手可能な環境を作ることが目的であり、主に国内を対象とした支援を行っている。年間予算は£3800万であり、その中で映画観客層の拡大、インディペンダント映画の流通支援、地方映画祭の支援、全国の映画上映設備管理・プログラミング支援などを行っている。

ゲーム産業を育成するためのVideo Games Prototype Fund DCMS以外の省では、Department for Business, Innovation and Skillsが、UK Games Talent and Finance Community Interest Companyを設立し、Video Games Prototype Fundを成立させた。このファンドは、英国のゲーム産業を育成するために設立され、人材育成や製作支援を行うことによって、英国におけるゲームIPを増やしていくことを大きな目的とする。このプロジェクトは2015年-2019年実施予定である。

英国コンテンツの流通のためのUK Trade & Investmentの活動 UK Trade & Investment (英国貿易投資総省、UKTI) は、英国コンテンツの流通に関して、The Great Britain Campaignという大規模なマーケティング政策を通して、英国への観光・留学・ビジネスの拡大を狙っているほか、コンテンツ関連においては、世界各地の大使館等で活躍しているCommercial Officerを通して、英国会社の海外進出、見本市・映画祭出展支援を行っている。その他、UKTIは海外のコンテンツ産業との交流を促進するためMOUを結んでおり、2014年は中国とのMOUが話題になり、年間を通して2か国でコンテンツ関連のイベントを実施した。

• Department for Culture, Media, and Sport • British Film Institute 中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

国別政策: イギリス(2)

Page 83: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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83 A-

83 出典: イギリス(3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • http://www.britishfilmcommission.org.uk/film-production/uk-film-tax-relief/#sthash.geOsZwJT.dpuf • http://www.britishfilmcommission.org.uk/hetvtaxrelief/#sthash.b8bzJTdm.dpuf • http://ukgamesfund.com/ • https://www.gov.uk/government/publications/2010-to-2015-government-policy-communications-and-telecomms/2010-

to-2015-government-policy-communications-and-telecomms • http://creativeskillset.org/who_we_help/creative_professionals/funding_for_film_training • http://network.bfi.org.uk/about-bfi-network • http://www.bfi.org.uk/supporting-uk-film/bfi-film-fund/funding-production-development/feature-development-funding • http://www.bfi.org.uk/supporting-uk-film/funding-production-development/production-funding • http://www.bfi.org.uk/what-s/around-uk/film-audience-network • http://www.bfi.org.uk/film-industry/lottery-funding-distribution/distribution-fund • http://creativeskillset.org/who_we_help/creative_professionals/funding_for_film_training • http://www.greatbritaincampaign.com/ • https://www.services.ukti.gov.uk/ • https://www.bpi.co.uk/megs.aspx • http://northernmedia.org/ • http://www.screenyorkshire.co.uk/ • http://www.screensouth.org/ • http://www.ffilmcymruwales.com/

Page 84: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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84 国別政策: EU(1)

財源 主要実施機関 政策と制度

• 域内の国境を超えた支援による多様性の維持 コンテンツ関連政策は欧州委員会に2006年に設立されたEducation, Audiovisual and Culture Executive Agency(教育・視聴覚・文化執行機関)が実施。文化、生涯学習、高度教育、メディア、市民、ユースを対象とした支援策で、EU加盟国、並びに諸外国・地域間との国際関係構築を推進。

• 大規模支援 7年間で€14.6億(約1,800億円)に達する予算を確保し、25万人のコンテンツ関連人材、2,000の映画館、800本の映画、4,500冊分の書籍翻訳を支援

• 総合支援 制作/共同製作、ローカライズ、海外配給、域内上映(映画館)支援を実施

• 人材育成 デジタル技術を活用したオーディエンス拡大や市場展開のビジネスモデルの教育に€750万(約9.3億円)の予算を配分

特徴的な政策

[基本方針] デジタルテクノロジーを中心とした域内連携体制の強化

加盟各国の各種メディア(映画、テレビ番組、ビデオゲーム)の製作支援の他、域内上映・流通、翻訳等の支援を行い各国間の連携を醸成。人材育成・教育等によりデジタルコンテンツ製作を支援。

メディア・流通 消費

技術

資金

人材

情報

コンテンツ制作

• 独立系映像制作会社の支援 独立系の制作会社の多国間連携、経営拡充など多角的に支援

• 共同製作支援 欧州内又は国際共同製作の作品を支援

• ビデオゲームの制作支援

• 多国間作品の劇場公開支援 多国間作品の劇場公開、プロモーションに投資

• 世界的市場に進出するための字幕・吹き替えの支援

• 欧州映画上映館の支援 若い世代の聴衆向けに欧州映画を上映する映画館を支援

• デジタル化支援 映像関係の専門家や技術者のデジタル化対応研修

• プロデューサー人材の育成

• セールスエージェント支援 欧州映画の配給に貢献するセールスエージェントを支援

• データベース整備 MEDIAプログラムで支援した作品のデータベース化。

Education, Audiovisual and Culture Executive Agency

Page 85: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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85 A-

85

• Education, Audiovisual and Culture Executive Agency

中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

EUにおけるコンテンツ関連政策は欧州委員会のEducation, Audiovisual and Culture Executive Agency(教育・視聴覚・文化執行機関)が実施しており、EACEAはEUにおける文化支援プログラムを運営する機関として2006年に設立された。プログラムは多岐にわたり、文化プログラム、生涯学習プログラム、高度教育プログラム、メディアプログラム、市民プログラム、ユースプログラムなどを通して、EU加盟国のみならず、諸外国・地域との間との国際関係を推進している。

ヨーロッパの視聴覚・文化・クリエイティブ産業の支援を目的としたCreative Europe 2014年から2020年に渡って実施予定のCreative Europeは、ヨーロッパの視聴覚・文化・クリエイティブ産業の支援を目的としている。7年間の予算は€14.6億であり、おおよそ25万人のコンテンツ関連人材、2,000の映画館、800本の映画、4,500冊分の書籍翻訳に割り当てられ、2016年には小企業向けの助成金としてさらに€7.5億が割り当てられる予定である。2007-2013年に実施されたMEDIA、MEDIA Mundus、Culture ProgrammeはCreative Europeに吸収されたが、一部は現在も続いている。この中でコンテンツ産業関連政策を実施しているのはCreative Europe MEDIAであり、MEDIAの傘化で約15の政策が行われている。

豊富な予算を背景としたさまざまな助成制度 制作支援においては映画・テレビ番組・ビデオゲームを対象としたプログラムがそれぞれあり、2016年は映画に計€1750万、テレビに€1250万、ビデオゲームに€260万の助成金が割り当てられている。このほかに、国際共同製作には計€150万の助成金がついているほか、配給・流通関連政策にも力が入っており、作品のローカライゼーション支援予算は2016年に€2200万、その他セールスエージェントを対象とした流通政策、ヨーロッパ映画の海外配給に対する助成金もある。このように、ヨーロッパ発のコンテンツを生み出すだけではなく、EUを越えて展開していくことがCreative Europe MEDIAの大きな目標である。一方、ヨーロッパ内でヨーロッパ作品がより上映されるよう、EU内の映画館に対する助成も行っている。

デジタルテクノロジーを中心とした人材育成政策 人材育成の政策には2015年は€750万が投資されており、特にデジタル技術を活用したオーディエンス拡大や市場展開のビジネスモデルを教えることに力を入れている。欧州委員会の活動全般も、2007年から2013年まで実施した制度に比べて、よりデジタルテクノロジーを取り入れた政策に力を入れている。

国別政策: EU(2)

Page 86: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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86 出典: EU(3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • http://www.mfdb.eu/en/ • http://www.europa-cinemas.org/en/ • https://eacea.ec.europa.eu/sites/eacea-site/files/guidelines_int_coproduction_funds_11_2015.pdf • https://eacea.ec.europa.eu/sites/eacea-site/files/guidelines_access_to_markets_eacea-15-2015.pdf • http://eacea.ec.europa.eu/about/media-documents/support-for-training/guidelines_en.pdf • https://eacea.ec.europa.eu/sites/eacea-site/files/call_notice_sp_2016_en.pdf • https://eacea.ec.europa.eu/sites/eacea-site/files/guidelines_dev_sf_2016.pdf • http://ec.europa.eu/programmes/creative-europe/opportunities/audiovisual-support/video-games_en.htm • http://ec.europa.eu/programmes/creative-europe/opportunities/audiovisual-support/tv-programming_en.htm • http://ec.europa.eu/programmes/creative-europe/opportunities/audiovisual-support/distribution_en.htm • https://eacea.ec.europa.eu/sites/eacea-site/files/en-sales-agents-eacea_07_2015.pdf • https://eacea.ec.europa.eu/sites/eacea-site/files/en-sales-agents-eacea_07_2015.pdf • http://www.europa-cinemas.org/en/ • http://eacea.ec.europa.eu/about/media-documents/support-for-training/guidelines_en.pdf • https://eacea.ec.europa.eu/sites/eacea-site/files/call_notice_dev_vg_2016-en.pdf • https://eacea.ec.europa.eu/sites/eacea-site/files/tv_guidelines_eacea.21.2015_.pdf

Page 87: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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87 国別政策: オーストラリア(1)

財源 主要実施機関 政策と制度

米国を中心とした他国との連携による産業育成 主力のDepartment of Communications and the Arts(DCA)の他、外交貿易、財

務部門等もコンテンツ振興支援を実施。DCAは、映画・音楽を同等に支援。映画振興には主に制作支援を行い、自国と関係の薄い作品にも適用するLocation Offset(撮影還付制度)は、ハリウッド作品撮影の呼び水に。音楽振興には主に配給・流通を支援。Victoria州政府は、ゲーム振興を支援。開発拠点整備や助成を行っている。

• 3種の還付制度 ロケーション撮影、ポスプロ、製作者向けの3種の還付制度を設定

• インフラ整備 国有企業を設立しデジタルコンテンツ制作に不可欠な通信インフラを整備、民間事業者に供用

• 観光振興等を目的に国外作品への直接投資 撮影地化による観光客誘致が期待される作品に、1900万ドル、4700万ドルを政府が投資した例がある。リベートも30%に引き上げ予定

特徴的な政策

[基本方針] 映画・音楽・ゲーム産業の国際競争力復権と観光振興

かつて一定の国際競争力を有していた自国コンテンツの復権と観光地イメージ形成のため、還付制度の設定による海外作品の誘致を行い、また自国企業向けのインフラ整備等も行っている。観光振興に寄与する海外作品には、政府が直接投資も行っている。

メディア・流通 消費

技術

資金

人材

情報

コンテンツ制作

• 先住民の視覚アート支援施設の設置 先住民族のアート継承、雇用開発、マネジメント支援

• ネットインフラ整備 固定電話・ブロードバンド環境の整備

• ゲーム開発拠点の整備支援 日営利のゲーム開発拠点の整備を支援

• 音楽家のツアー助成 音楽家の国内ツアーの移動費補助

• 対外貿易振興助成金 観光・知財の貿易に関する市場形成の助成金

• 国立の人材育成機関の設置 映画・テレビ番組の教育・研修機関の設置

• 音楽業界団体の設置と人材育成 各州の音楽業界を連携・代表する業界団体と作家・関連人材の育成

• ゲーム人材育成 女性や高度技術者の要請に対する支援

• 各分野についての情報を記載 分野別の特徴の説明。分野別の特徴の説明。分野別の特徴の説明。分野別の特徴の説明。

• 映画・音楽の取引市場の開設 自国産業界と国外バイヤーのネットワーキング

• 対外貿易振興策 アート等分野を含む対外貿易振興策の実施

• 研究開発に対する税制優遇、共同製作支援・撮影インセンティブ 脚本、予算、観衆の点で国際基準に合致するプロジェクトの育成や、撮影作品のインセンティブ

• 外国人俳優の認証基準 国外の俳優のビザ発給に関する認証基準の設定

• 視聴覚アーカイブの設置 オーストラリア産の視聴覚作品の収集、クリエティブ産業の研究機関設置

• 科学・技術・工学分野の学術研究の推進

Department of Communications and the Arts

Department of Foreign Affairs and Trade Australia Tax

Office Department of Finance

Film Victoria

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88 A-

88

オーストラリア連邦政府が関わっているコンテンツ産業関連政策は、主にDepartment of Communications and the Arts (DCA) が実施しているが、その他Department of Foreign Affairs and Trade、Australian Tax Office、Department of Finance等も独自の政策を実施している。

Department of Communications and the Artsが実施している政策は、映画振興・音楽振興に同じように力を入れている。映画振興に対しては主に制作支援を行っており、オーストラリアを大きく取り扱っていない作品でも活用できるLocation Offsetは、ハリウッドの大作の撮影で最近頻繁に活用されて世界的に話題になっている。

音楽振興については主に配給・流通支援を行っている。

制作支援を中心とした映画振興支援 DCAの管轄下で運営されているScreen Australiaが主体として実施している共同製作支援の他に、DCAが直接実施しているAustralian Screen Production Incentiveという制度がある。Australian Screen Production Incentiveの傘化にはLocation Offset、PDV (Post, Digital and Visual Effects) Offset、Producer Offsetがあり、これらは海外からの撮影を誘致するために活用されている。

幅広い作品で活用できるLocation Offsetと巨額の政府投資 Location Offsetはオーストラリアを大きく取り扱っていない作品でも活用できる制度であり、ハリウッドの大作の撮影で最近頻繁に活用されて世界的に話題になっている。また、2015年はディズニーの『Pirates of the Caribbean 5』のクイーンズランドロケを実現させるため、政府が1900万ドルを直接投資したことが報道され、同様に『King Kong: Skull Island』に対して政府は4700万ドル投資した。現時点ではリベート率が16.5%にセットしてあるが、今後はリベートを30%まで上げ、他国と競争する予定である。コンテンツの配給・流通支援はJETROと同様な活動をしているAustradeが主に実施している。

デジタルコンテンツのインフラ整備に注力 オーストラリア政府はデジタルコンテンツのインフラ整備に力を入れており、DCAとDepartment of Financeが共同でNational Broadband Networkという国有企業を設立し、固定電話とインターネット通信サービスを通信サービス会社に提供している。この政策は2011年から2019年まで執行される予定であり、予算は計430億ドルである。

配給・流通支援を中心とした音楽振興政策 音楽振興においては主に配給・流通支援を行っている。特に、Australia Council for the Artsの支援を基に成立されたSounds Australiaは、自国音楽を海外へ出していくことが主な目的であり、海外でのコンサート開催支援等の配給・流通関連支援の他、国内音楽制作者を海外バイヤーと結び付ける取引市場支援をしている。また、Australian Music Industry Networkは各州の音楽機関と連携を取り、国に対するロビーイングや流通活動を行っている。さらに、ニュージーランド政府とも提携してレコード会社のマネージャー育成やビジネスマネージメントに関する教育もしている。

アボリジニー族の文化保護活動 国としてアボリジニー族の文化保護活動を行っているが、主な目的は文化の保存・国内向けの啓蒙、または人材育成である。

• Department of Communications and the Arts (DCA) • Department of Foreign Affairs and Trade • Australian Tax Office • Department of Finance

中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

国別政策: オーストラリア(2)

Page 89: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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89 出典: オーストラリア (3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • https://www.aftrs.edu.au/ • http://arts.gov.au/film-tv/australian-screen-production-incentive • http://arts.gov.au/guidelines-entry-to-Australia-foreign-actors • http://www.nfsa.gov.au/site_media/uploads/file/2015/04/08/NFSA_Strategic_Plan_2015-2018.pdf • http://www.amin.org.au/projects/control/ • http://www.amin.org.au/projects/music-industry-legal-pack/ • http://www.australiacouncil.gov.au/funding/new-grants-model/contemporary-music-touring-program/ • http://arts.gov.au/indigenous/ivais • http://dfat.gov.au/people-to-people/public-diplomacy/Documents/public-diplomacy-strategy-2014-16.pdf • http://www.exportawards.gov.au/ • http://www.cci.edu.au/ • https://www.austrade.gov.au/Australian/Export/Export-Grants • https://www.film.vic.gov.au/funding/games-funding/

業界団体等 • http://www.nbnco.com.au/ • http://soundsaustralia.com.au/index.php/showcasing/ • http://thearcade.melbourne/

Page 90: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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90 A-

90 国別政策: ニュージーランド(1)

財源 主要実施機関 政策と制度

映像の製作促進と独自の文化創出 コンテンツ関連政策は、主にMinistry for Culture and Heritage(MCH)が

担当し、映画支援はその管轄下のNew Zealand FC が実施。主に制作支援を通じた独自の映画製作促進・映画文化の創出を目的とし、海外作品誘致の助成制度等を運用。音楽支援は同じくMCHの管轄下のNew Zealand Music Commissionが海外出展支援や、独立系音楽業界の育成プログラムを実施。

• ロケーション撮影助成 海外からの中・大規模作品の映画・テレビ番組の撮影を誘致するための助成金、リベートを提供

• 産業振興としてのポスプロ支援 海外作品を対象に産業振興策としてNZ国内のポスプロスタジオ利用を支援。海外との協業経験での技術向上を促進

• 自国映像文化・製作の支援 国民/特別永住権者に限定したNZ要素が強い作品に対するドキュメンタリー・ポスプロ・企画開発・制作・低予算作品を支援

特徴的な政策

[基本方針] ロケ誘致をきっかけとした映像製作の地場産業化

自国のコンテンツ製作、特に映像分野の技術水準、制作能力の向上を図るために、ハリウッド作品等に対して、撮影のみならずポスプロに対する融合制度を設定し誘致し、映像製作の地場産業化を進めている。

メディア・流通 消費

技術

資金

人材

情報

コンテンツ制作

• 映画祭出品支援 短編映画の映画祭出品支援。

• 若手キャリア形成プログラム 技術習得、脚本開発、制作支援、マーケット出展を支援

• インターンシップ支援

• 音楽家育成プログラム ビジネスモデル研究、創作・ビジネス活動に関する心理学的サポート

• プロジェクトケーススタディ 成功した作品の製作過程・市場の反応などをレポート

• 音楽イベントの開催 楽曲発表、ネットワーキングイベント、国際会議の開催

• 視聴覚アーカイブ 映画、テレビ、ゲーム等のアーカイブ

• 制作支援 企画開発・制作に対する融資・投資等の支援、民間投資誘導

• 撮影助成・還付 NZで撮影して経済的に貢献する作品の支援

• マオリ語番組の支援 マオリ語のラジオ・テレビ番組、音楽の製作支援

Ministry for Arts, Culture, and Heritage

New Zealand Film Commission

Page 91: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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91 A-

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ニュージーランドが実施しているコンテンツ関連政策は、そのほとんどをMinistry for Arts, Culture, and Heritage (MACH) が担当しており、映画関連政策はその管轄下にあるNew Zealand Film Commissionが実施している。幅広く活動しているが、圧倒的に力を入れているのは制作支援であり、ニュージーランド独自の映画製作・映画文化を作り上げることを目的としている。

同じくNew Zealand Film Commissionが実施しているNew Zealand Screen Production Grantは、海外からの中・大規模作品の映画・テレビ番組の撮影を誘致するために設けられている。

音楽においてはMACHの管轄下にあるNew Zealand Music Commissionが海外見本市への出展支援や、オーストラリアと共同でインディペンデント音楽業界の育成プログラムを実施している。

ニュージーランド独自の映画製作・映画文化を築くための制作支援 映画関連政策は主にMinistry for Culture and Heritageの管轄下にあるNew Zealand Film Commissionが実施しており、調査・制作支援・人材育成など、幅広く活動しているが、圧倒的に力を入れているのは制作支援である。Fundingという大きなスキームの中で、ドキュメンタリー・ポスプロ・企画開発・制作・低予算作品など、細かく分けて支援しているが、これらはニュージーランド独自の映画製作・映画文化を作り上げていくことを目的としているため、全ての制度はニュージーランド要素が強い作品であることを必須条件とし、応募者もニュージーランド国民または特別永住権を持っている人に限っている。また、ファンドからの出資以外に、製作費をローンとして貸し出すという他国ではあまり見られない支援の形がある。

海外からの撮影誘致を目的としたNew Zealand Screen Production Grant 同じくNew Zealand Film Commissionが実施しているNew Zealand Screen Production Grantは、Fundingとは違い、海外からの中・大規模作品の映画・テレビ番組の撮影を誘致するために設けられたものである。助成金やリベートを提供するほか、ポスプロ支援も行っているが、Post, Digital and Visual Effects Grantにおいては、Ministry of Business, Innovation and Employmentが実施している。PDV Grantの主な目的はニュージーランドのポスプロ受注機会を拡大させ、さらに海外との制作を増やすことである。

New Zealand Music Commissionによる音楽振興支援 音楽においてはMACHの管轄下にあるZealand Music Commissionが海外見本市への出展支援や、オーストラリアのAustralian Music Industry Networkと共同にインディペンデント音楽業界におけるビジネスやマネージャーの育成プログラムを実施している。

映像・音響文化のデジタルアーカイブ化の支援 MACHはNgā Taonga Sound & Visionという映像・音響文化のアーカイブ化を目的とした独立機関を支援している。年間$750万NZドルを活用し、今後はデジタル保存化に大きく力を入れていく予定である。

マオリ族の文化保護と普及のための政府機関Te Māngai Pāho 先住民であるマオリ族の文化保護と普及に力を入れている機関、Te Māngai PāhoはMinistry of Justiceの管轄下にある。予算の大半はマオリ文化をテーマとしたテレビ番組の制作に割り当てられ、予算はNZ$1600万ドルである。この金額はCrown revenueと呼ばれる、税金による収益から成り立っている。

• Ministry for Arts, Culture, and Heritage (MACH) • New Zealand Film Commission

中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

国別政策: ニュージーランド(2)

Page 92: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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92 出典: ニュージーランド (3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • http://www.nzfilm.co.nz/sites/nzfc/files/field/resources/Doco%20development%20%20guidelines%20FINAL%20Sep%2022%202015_0.pdf

• http://www.nzfilm.co.nz/node/6983 • http://www.nzfilm.co.nz/funding/feature-films/post-production-funding/feature-film-finishing-grant • http://www.nzfilm.co.nz/funding/feature-films/private-investment • http://www.nzwg.org.nz/seed-funding/ • http://www.nzfilm.co.nz/funding/feature-films/early-development/early-development-fund • http://www.nzfilm.co.nz/funding/feature-films/advanced-development-fund • http://www.nzfilm.co.nz/funding/feature-films/production-funding/lower-budget-feature-films • http://www.nzfilm.co.nz/funding/feature-films/production-funding/nzfc-production-financing • http://www.nzfilm.co.nz/funding/business-development • http://www.nzfilm.co.nz/funding/short-films/post-production-fund • http://www.nzfilm.co.nz/international-productions/co-productions • http://www.nzfilm.co.nz/funding/feature-films/production-funding/new-zealand-screen-production-grant/nzspg-new-

zealand-productions • http://www.nzfilm.co.nz/funding/feature-films/production-funding/nzspg-international-productions/accessing-the-5-uplift • http://www.nzonair.govt.nz/publications/accountability-documents/ • http://www.nzonair.govt.nz/digital/what-we-fund/ • http://www.creativenz.govt.nz/about-creative-new-zealand/corporate-reports/statement-of-intent-2014-2018

業界団体等 • http://www.nbnco.com.au/ http://soundsaustralia.com.au/index.php/showcasing/

• http://thearcade.melbourne/

Page 93: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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93 A-

93 国別政策: タイ(1)

主要実施機関 政策と制度

デジタルコンテンツ振興と映画支援

アニメーションを基礎としたデジタルコンテンツの人材育成、海外との連携、技術基盤整備を行っている。

また、民間、NPOを含む関係団体との連携体制を強化し、出展等のビジネスチャンス創出も実施。

映画は、自国製作の底上げを目的に撮影誘致を積極的に行っている。

特徴的な政策

技術

資金

人材

情報

• プロダクションパイプラインの確立 モーションキャプチャスタジオ、レンダリングファームの整備

• ビジネスマッチング 韓国、マレーシア等との連携マッチング

• 各種関係団体の連携組織の設立 ソフトウェア産業、ゲーム産業の連携組織の設立

国際取引市場の開設 Thai Animation & Multimediaの主催、海外出展

• 減免措置 CG,アニメーション、ゲーム制作のソフトウェア関連企業としての認定と企業所得の減免

• コンテスト開催 Imagine Cupの開催

• 人材育成プログラム ワークショップ・勉強会の開催

Ministry of Tourism and sport

Department of

Tourism Film Office

The National Federation of Motion Pictures and

Contents Associations

Software Industry

Promotion Agency

[基本方針] デジタルコンテンツと映画製作の振興

1979年にスタートしたアニメ産業を基礎に、アニメーション技術、ソフトウェア開発の振興を強化、国際連携による制作振興を図っている。また、映画については積極的なロケーション撮影の誘致により自国の映画製作を振興し、ASEAN諸国でのシェアトップを獲得。さらなら振興のための共同製作促進策の準備を進めている。

財源

メディア・流通 消費 コンテンツ制作

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94 A-

94

1979年にスタートしたアニメーション産業、その人材基盤と民間が主導するCG産業を基に、2003年にソフトウェア産業振興を目的としたSIPA(Software Industry Promotion Agency)が設立され、デジタルコンテンツの振興が図られている。アニメーション及びマルチメディアソフトウェア、モバイルゲームを戦略的コンテンツサービスと位置づけ、プロダクションパイプラインの確立を図っている。

併せて、国際取引市場の主催、東京ゲームショウを含む海外出展、CG、デジタルアニメーション、ゲーム制作をソフトウェア関連企業と認定し、企業所得の8年間の免税措置を行っている。

その他NPOや社団法人との連携・協力関係を築く団体設立、アニメーション等に関する国外とのマッチング、ソフトウェアのコンテンスと開催、人材育成にも取り組んでいる。

映画に関するコンテンツ関連政策は、Ministry of Culture が検閲を含め自国の映画に関する政策を管轄し、 Film OfficeのあるDepartment of Tourismが海外の映画製作に対する政策を、またThe National Federation of Motion Pictures and Contents Associationsが民間に対する政策を管轄している。

業界団体の設立 SIPAの設立によるソフトウェア産業の支援、IGDA Bangkok、Thai Game Cluster、Thai Game Dev XといったNPOやThai Animation and Computer Association等の社団法人との産学連携促進に向けたThai Digital Content Entertainment Federationを設立している。

撮影に関するワンストップサービス 一方で、タイ国内における撮影(ロケ)や編集に関しては、BOI(タイ投資委員会)により税制優遇が行われ、更に映画制作サービス協会(Film Production Service Association)では、タイ国内の撮影許可の申請手続き等をワンストップサービスで提供。それらの成果で映画産業が成長し、ASEAN域内のシェアのトップとなり、この5年間で、タイ映画の20%が海外での配給で1500億バーツの収益を上げている。

• Ministry of Culture

• The National Federation of Motion Pictures and Contents Associations

• Thailand Film Office Development of Tourism

国別政策: タイ(2)

中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

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95 A-

95 出典: タイ (3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • http://www.sipa.or.th/en • http://www.thailandfilmoffice.org/index.php/en • http://www.mpc.or.th/main/

日本語文献 • 『変貌する日本のコンテンツ産業 –創造性と多様性の模索‐』ミネルヴァ書房 2013年

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96 A-

96 国別政策: フィリピン(1)

主要実施機関 政策と制度

独自の文化創出と映像の製作振興 1. The National Film Archive of the Philippines 映像文化のアーカイブ化

2. CINEMATHEQE 映像配給・上映

3. Film Cultural Exchange Programフィリピン映画の海外普及促進

4. Sineng Pambansa (National Cinema) 上映先の提供

5. the Philippine Film Export Service Office 映画製作のハブ化

特徴的な政策

技術

資金

人材

情報

• CINEMATHEQE (自国の映画を国民へ届ける) 上映先で映画製作者のシンポジウムを開催

• Film Cultural Exchange Program (自国映画の海外普及促進) 国内外の映画人に対して学ぶ機会を設けている

[基本方針] ロケーションとプロダクションのハブ化をきっかけとした映像製作の地場産業化

コンテンツ産業である映画に対して、まずは国民に見る機会を作り、映画製作者には上映先を提供。自国の映画を観て自国の文化や社会を知り、また海外の映画祭の出品を促進させ海外での評価を上げることで、自国やその映画文化に対する国民の誇りを高めることが最優先されている。2010年に入りグローバル化に伴い映画製作に関して主にポストプロダクションのハブを担い、映画製作の地場産業化と位置付けている。

財源

メディア・流通 消費 コンテンツ制作

office of the President of the Philippines

The Film Development Council of the

Philippines

Page 97: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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97 A-

97

フィリピンが実施しているコンテンツ関連政策は、大統領直轄の組織The Film Development Council of the Philippinesが担当している。映画関連政策が主となっており、人材育成、映画文化の向上に向けた効率的な支援を目的としている。

当該組織は、以下の5つの機能を有している。

1. 映像文化のアーカイブ化 2. シネマテーク(映像配給・上映) 3. フィリピン映画の海外普及促進 4. 上映機会の提供 5. 映画製作のハブ化

The National Film Archive of the Philippines(NFAP) 映像文化のアーカイブ化 フィリピン映画の名作である古いフィルムの修復と保存、またデジタルマスターなど映像の素材を保存しアーカイブ化させ、フィリピン映画の歴史と文化を語り伝え、今後の映画文化に活かす目的で設置されている

CINEMATHEQE 自国の映画を国民へ届ける Sineng Pambansa (National Cinema) の中心的な事業で使命は「自国の映画を国民へ届ける」こと。新旧の自国映画でメジャーもインディーズ作品も上映、Film Cultural Exchange Program(自国映画の海外普及促進)を通じて選ばれた海外の最新作の上映、映画製作にかかわる分野のシンポジウムを各地域で実施。

Film Cultural Exchange Program フィリピン映画の海外普及促進 海外の映画機関と、各国の大使館や領事館など政府機関を通じて、パートナシップを築く役割を担う。またフィリピンで行われる映画祭やフィリピン映画の海外上映のために海外の政府機関と交渉したり、海外の映画関係者とつないだり、国内外の映画人のために学ぶ機会も設けている。また国際共同製作の促進にも努めている。

Sineng Pambansa (National Cinema) 上映機会の創出 FDCPの要となる事業であり、基本的な使命としてフィリピンの映画産業を活気づかせることにある。そのために質の高いフィリピン映画に対して国内はもとより海外の映画祭に出品させている。これは、フィリピンの映画芸術が発展することで自国の文化や自国への国民の誇りにつながるからである。具体的には地域の映画祭や上映先を提供したり、映画を使って自国文化に対する誇りを高めたり、社会問題に目を向ける機会を作っている。また地方の自治体には海外の映画を上映するコミュニティーの一員になる機会を提供している。そして地方が持っている独特の文化や遺産を使ってフィリピン文化の多面性を映画を通じて紹介している。

The Philippine Film Export Service Office (PFESO) 映画製作のハブ化対策 2002年、FDCPは、フィリピン映画の国内外での市場の進出のために設けられた。その5年後、世界のグローバル化にともないロケーションとポストプロダクションを担うためにPFESOが設立され、映画製作におけるハブとなっている。国内には10以上の映画スタジオを持ち、撮影、編集、色補正、視覚効果など高度な設備を整えている。経済効果は10億ペソで、25万人の雇用と彼らの高い専門性で一連の映画製作をになっている。

The Film Development Council of the Philippines

国別政策: フィリピン(2)

中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

Page 98: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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98 A-

98 出典: タイ (3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • http://www.fdcp.ph/

Page 99: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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99 国別政策: マレーシア(1)

財源 主要実施機関 政策と制度

情報産業振興とデジタル経済移行による経済発展

ICT技術の基盤整備と知識活用によるデジタル経済により先進国の仲間入りを目指す。国内企業の支援、人材育成、コンテンツ振興の連携を展開している。

• 貧困対策とデジタル化推進の両立 低所得者層(B40:月額所得がRM3,050 (約10万円)以下の40%のマレーシア国民)の所得底上げとデジタル産業の雇用確保を狙った制度。 クラウドソーシングにより、2020年までに30万人以上のワーカーを育成し、月額平均RM550 (約18,000円)の所得を得ることを目標。

特徴的な政策

[基本方針] 通信・情報産業振興と国家アイデンティティの形成

通信・マルチメディア、コンテンツ産業の国際的な主要拠点の一つとなり、国民の仕事と生活の質を高めるとともに、地域の情報源と文化的表現の育成を通じて多民族国家の国家アイデンティティ形成と国際的な多様性を醸成することを目指している。

メディア・流通 消費

技術

資金

人材

情報

コンテンツ制作

• 制作関連機材の提供 制作関連機材、スタジオの提供、大規模スタジオの整備

• 税制優遇 機材輸入に係る関税免除

• 開発・商業化助成 技術のさらなる開発・商業化を対象とした助成

• 映画祭出品支援 短編映画の映画祭出品支援。

• デジタル産業の参入・活用支援 起業、貧困層のICT業界への就業、中小企業のデジタル化支援、ICTキャリア形成に向けた産学連携促進

• ゲーム開発マッチング 国内外のゲーム開発者とIT事業者のマッチング

• 若年者教育 デジタルリテラシー、技術研修プログラムの提供

• 優遇制度(MSC)活用の窓口開設 ICT系企業の認証・支援制度の活用相談窓口の開設

• 取引市場の出展支援 各地の取引市場にナショナル・パビリオンを出展

• 国内作品の上映の義務化 劇場上映での国内作品の上映を義務化

• 興行成績情報の提供

• 制作助成 ドキュメンタリー、特殊効果作品の助成、外資活用・投資税免除

• 製作インセンティブ 国内外の製作者に対してマレーシア国内の支出額の305を還付

Ministry for Arts, Culture, and Heritage

MDeC

FINAS

e-Xpats Centre

Page 100: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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知識産業に着目し、2020年に先進国となることを目指してるマレーシアでは、1996年から情報産業振興に取組んでいる。その最初の取組みがマルチメディアスーパーコリドー(Multimedia Super Corridor)プログラムである。

その取組みは、クアラルンプールのペトロナスツインタワーからCyberjaya、Putrajayaを経由し、セバンのクアラルンプール国際空港までをブロードバンド情報ネットワークで連携させ、高度情報化社会を築くというものである。

このようなICT活用の推進による経済振興を出発点としている。ICTを活用とした技術系のサポートを担うMDeC、映画を中心としたコンテンツ振興等を担うFINASとの役割分担で進められている。

また、デジタル経済の進行に特化した施策も展開されており、マルチメディア分野の起業支援、若年層の育成などが進められている。

Multimedia Super Corridor(MSC) 一定基準を満たしマレーシア国内で情報産業を牽引する企業を認証する制度と認証企業には、安定した情報インフラ、その他の物理的インフラの提供、グローバル資本の自由な活用、税制優遇、投資税控除、マルチメディア機器等の関税免除などの支援策を実施している。

EXPATS MSCの推進に向け、MSCにより提供される支援策の活用に関する企業からの相談を受付、実現に向けたコンサルティングを行う。

Digital Malaysia デジタル経済への移行を目指し、①供給から需要の重視への転換、②消費の中心から生産の中心へ、③低い水準から高い水準の知識提供へ、の3つの重点方針を持って実施。デジタル分野の起業家支援、国民の40%に達する貧困層のクラウドソーシングワーカーとしての育成、若年層に対するデジタル経済に関する教育/研修、中小企業におけるデジタル技術採用の促進を図っている。

映画支援 FINASにより、映画製作に係る認証、機材レンタル、資金助成、上映機会創出、海外マーケットへの出展支援等が行われている。また、マレーシア国内での映像作品の製作/撮影の促進に資するため、同国内の支出の30%を還付する助成制度の運用も行っている。

• Ministry of Communications and Multimedia • Multimedia Development Corporation • National Film Development Corporation Malaysia

中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

国別政策: マレーシア(2)

Page 101: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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101 出典: マレーシア (3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • http://www.kkmm.gov.my/index.php?lang=en • http://www.mdec.my/ • http://www.expats.com.my/expats2009/ • http://www.finas.gov.my/ • http://www.mscmalaysia.my/ • http://www.digitalmalaysia.my/ • http://www.filminmalaysia.com/

日本語文献 • 『変貌する日本のコンテンツ産業 –創造性と多様性の模索‐』ミネルヴァ書房 2013年

Page 102: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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102 国別政策: シンガポール(1)

財源 主要実施機関 政策と制度

• 行政府からの支援予算 Singapore Media Fusion Plan 147億円

• 自主財源/基金/税収再投資等メディア関連ファンド 960億円

• 関係機関の連携 二つの省庁の指揮の下、3つの外局が相互の施策展開を常に把握しながら、各施策の相乗効果を生み出すことにより、「New ASIA MEDIA」の世界的な中心拠点化 の実現を目指してる。

• 外資系企業の誘致と人材育成(EDB) 外資系企業のシンガポール拠点設置に対する優遇策と、同企業の海外拠点での研修生の受け入れ支援(給与と滞在費負担)

• コンテンツ企業の育成及び産官連携の促進(MDA) 国内企業(外資含む)への短期研修派遣、ベンチャーに対する制作助成、ならびにメディア関連のカンファレンス開催、インキュベーション拠点の設置

• 情報インフラの構築と関連産業の振興(IDA) オンラインゲームに掛かる企業交流促進等による課金・セキュリティ関連業界の底上げと、シンガポール製ゲームの普及支援

特徴的な政策

[基本方針] 全知的産業の国内集積「ナレッジハブ」構想

製造業におけるオフショア開発の拠点化からスタートし、東南アジア地域における QA および技術サポート拠点としての位置づけや国際金融センターとしての位置づけを確立した後、「全ての知的産業をシンガポールに集約すること」を目標に様々な施策を展開。

メディア・流通 消費

技術

資金

人材

情報

コンテンツ制作

• インキュベーション拠点の設立 メディア・デバイス関連の研究施設の集約

• ゲーム開発拠点の設置 英国と共同でプロジェクト募集。国際共同開発を奨励

• 仮想空間のコミュニケーション 拡張現実、Mixed Reality とリアルタイムコミュニケーションを統合させたプログラムの開発。

• 制作助成 番組パイロット版、ゲームデモ制作などの初期投資支援。輸出作品への出資

• 人材交流プログラム 外資系長期研修生受入れ支援、短期研修派遣、VCと企業のマッチングセッション、国際的著名企業を招いたカンファレンス開催

• ゲーム学習機会の提供 仮想空間上に国立大学キャンパスを設置し、学生の利用を促す。

• シンガポール拠点設置の優遇 外資系企業のシンガポール進出を優遇。

• 国内製ゲームの無料開放施設の整備 開発企業にユーザーテスト環境を提供

• ヨーロッパ市場へのアクセス提供 開発支援したゲームの市場へのアクセス提供

• 国内製ゲームの無料開放施設の整備 無料利用コーナー利用者にゲームクーポンを発行

EDB Economic Development Board

MDA Media Development Authority

IDA Infocomm Development Authority

MCI Ministry of Communications and Information

MTI Ministry of Trade and Industry

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真のグローバルメディア都市となるため、デジタルコンテンツ制作のスキル向上、資金調達の仕組みづくり、シンガポール人のエンパワーメントを図っている。

具体的なことでは、EDBが人材の海外派遣や海外大手コンテンツ企業の誘致を、MDAが開発、制作、マーケティング、才能発掘、共同制作支援を、IDAが技術系開発支援等を行うなど、それぞれの組織がそれぞれの強みや特徴を活かしたシナジーを生む施策展開を図っている。

開発支援 企画段階にあるアイディアを具体化するための支援(助成)を行う。対象ジャンルは、アニメーション、放送番組、映画、ゲーム、他インタラクティメディア、書籍で、それぞれのジャンルにより助成額は異なり、$4万~20万となっている。

IDA Lab. 新しい発想、技術開発のコンセプトテストなどを個人、企業、行政の連携で実行するために設置された機関。国内に、3カ所設置され、技術開発に必要な資機材の利用や、研修プログラムの受講、デモンストレーション、異分野間のネットワーキングの場の提供などを行っている。

外資系企業研修派遣 外資系企業にて長期にわたり研修を受けるプログラム。研修中の給与や滞在費などは、すべて EDB が負担する。基本的に受け入れ先の企業は、シンガポールで拠点を設置することが前提となっているため、上記の研修生が研修終了後は即戦力として現地での採用が可能だというところに企業側のメリットがある。日本企業では、コーエー、セガ、元気、カプコンなどに実績がある。

• Ministry of Trade and Industry • Ministry of Communications and Information • Economic Development Board • Media Development Authority • Infocomm Development Authority

中心となる組織名

政策の詳細

特徴的な事例

国別政策: シンガポール(1)

Page 104: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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104 出典: シンガポール (3)

提供元 情報取得先

主な出典は以下のとおり

政府系機関 • http://www.mti.gov.sg • http://www.mci.gov.sg • http://www.edb.gov.sg/ • http://www.mda.gov.sg/ • https://www.ida.gov.sg/

日本語文献 • 『変貌する日本のコンテンツ産業 –創造性と多様性の模索‐』ミネルヴァ書房 2013年

Page 105: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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105 《参考》具体的な文化関連施策(1)

具体的な文化関連施策

1. 自国文化振興 各国における各種政策のうち、特に資金配分が大きい。具体的内容は製作費の助成・貸し付けなどである。映像関係に特に顕著に見られる。フランス、イギリスを始めとするヨーロッパ諸国、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアは特に映画制作に対する制度が充実しており、短編映画・長編映画・テレビ番組・ドキュメンタリー・ポストプロダクションなど、細分化したカテゴリーを設け、異なる助成基準、上限額を定めている。 ゲームや音楽に対する制作支援は限定的であるが、イギリスやオーストラリアにはゲームソフト開発や人材育成のための公的資金から生まれた基金がある。

2. 自国文化保護 映画分野に特徴的であるが、海外(ハリウッド)作品が自国市場において圧倒的シェアをとるようになることを防止するため、映像作品輸入制限を設けたり(例えば中国では海外から34タイトルまでしか映画は輸入できない)、自国作品が上映される日数・時間数などの最低ラインを法律で決めることがある。合わせて一般的にスクリーン・クォータ制度という。貿易自由化を進める国際交渉の場で、アメリカはこれをしばしば問題にしてきており、このような保護制度の撤廃を主張している。

3. 官民投資の促進 フランスにある映画投資ファンドの制度(SOFICA)を利用すると、一般投資家が映画制作を目的とした投資をするにあたり、税制上優遇される。また、フランスの全てのテレビ局は広告収入、映画(館)は映画館上映のチケット収入の一定比率にあたる金額をCNC(国立映像センター)に対して納めることが義務付けられている。CNCは映像振興に関する総合的な支援機関であるが、その資金は税収からの配分ではなく、このようなテレビ産業の売上に依存している。イギリスでは宝くじ(National Lottery)売上金の一部が映画制作助成にあてられる。目的は映画製作費、およびより広く国家的な映画文化振興に必要な財源を民間部門から調達することである。

4. 企業誘致・ クラスター戦略

地域経済活性化の一環として、メディア、映像、音楽、CG、ゲーム制作に関連する技術部門と制作会社を誘致し、一定の集積による経済効果を狙うものである。地域、都市単位で行われる。イノベーション、IT戦略に力を入れるシンガポール政府はハリウッドからルーカス・フィルム社(この中にはアニメーションおよびCGなどのデジタル技術に優れたIndustrial Light and Magic社も含まれる)を誘致し、アニメーション作品、実写映像作品とデジタルゲームに利用されるCG制作活動を支援している。 コンテンツ産業興自体の経済効果もこのような企業誘致の理由の一つであるが、より広くはオリジナルなコンテンツが充実しているほど、デジタル技術開発が推進され、通信インフラの競争力が高まると考えられるからである。産業・社会・生活(教育、福祉、医療なども含め)のあらゆる場面におけるシームレスなデジタル技術利用状況を作り、生産性と生活の質が高い社会を実現することに政府の大きな目標がある。国際競争力のあるコンテンツの制作はこのような政策目標推進を加速させるきっかけだと考えられている。韓国も同じような考えに基づいてコンテンツ政策を推進しているものと思われる。

Page 106: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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106 《参考》具体的な文化関連施策(2)

6. 人材育成 映像関係の大学等高等専門教育機関で、監督等のクリエイティブ人材およびプロデューサー人材の育成にあたっている。特にヨーロッパ諸国では国家財源によりこのような教育機関が維持・運営されている。アメリカでは、成功した映画人等からの寄付金が財源として重要である。 音楽関係は、いわゆるクラシック音楽の専門大学・コンサバトリー等が数多くあり、ここからより商業的色彩の強い音楽の道に進んでいくミュージシャンもいる。新しいところでは、「ゲーム学」や「メディア経営学」のような専攻が大学学部・大学院などに増えている。若者によるショートフィルム作成を助成する仕組みなどもある。

7. 国際共同製作支援 アメリカ以外の国では、大型映画作品を製作するのに必要な多額の資金を調達することが難しい。そこで、国境をまたいでいくつかの中小規模の国が結合し、大型映画の制作を可能とするため、国家間で協定を結ぶ。この協定があることで、国際共同制作に関わった国においては「自国映画」の認定を受けることができ、スクリーン・クォータ制度がある場合、これを回避できるという大きな意味がある。また、「自国映画」であるから、各種公的助成を受けやすくもなる。 制作の現場においては、自国の制作レベルでは体験し得ない大きな仕事に携わることでスタッフのスキルアップが可能となる。映像産業およびその関連産業への経済波及効果も通常より大きい。 また、国際共同製作作品には、それぞれの国の俳優が出演することが多く、各国の市場攻略にも有利に働く。

8. 撮影誘致 アメリカ内の各州およびほぼすべての本調査対象国は、ハリウッド作品等のロケ撮影誘致のためのインセンティブを用意している。目的は、大型映像作品撮影ロケ(ポスト・プロダクションを含む)により現地に雇用を生むことであり、この獲得競争は年々熾烈なものとなっている。ハリウッド作品に関与することで自国製作の学習効果が得られることも考えられるが、誘致に熱心な国が独自の映像産業・映像文化が高度に発達させているとは限らない。むしろ、「映像ロケ招致」は観光客やコンベンション参加者を呼び込むことと同じレベルでの支援策となっている。 具体策としては、税制上の優遇措置、キャッシュバック、ロケ地・スタッフ選定支援、公道等の公的スペース使用にかかる許認可取得の支援、スタジオの貸与などがある。フィルム・コミッションの中にはこれらの多種にわたるサービスを無料で提供するところもある。カナダではオンタリオ州、ケベック州、ブリティッシュ・コロンビア州がハリウッド映画、テレビドラマなどの誘致をめぐり競い合っている。ニュージーランド、オーストラリアも熱心である。誘致対象はもちろんハリウッド映画に限らず、大型予算のものであればあるほど望ましく、ボリウッド映画でも最近は海外ロケをするようになっている。

具体的な文化関連施策

5. 中小ビジネス支援 音楽、ゲームのコンテンツ開発は社員数名の中小企業が担っており、この規模の会社に特有の課題(資金調達、パブリッシャーやプラットフォーム企業とのネットワーク化、経営基盤の強化など)を持つ。スタート・アップ支援を含み、中小ビジネス支援はこれらの業界支援として重要な意義を持つ。

Page 107: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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107 《参考》具体的な文化関連施策(3)

9. 配給・流通支援 特に映像作品については、配給網・流通システムが整っていないことには、どれほど質が高い、あるいはマーケットで成功する可能性が高い作品が製作されようとも、ビジネスとして成立しない。ハリウッド映画が世界各国で成功している理由の一つは、劇場公開向けには独自の配給網を、その他の流通形態や二次利用については同じ資本下にある会社が独占的に展開するモデルを構築していることにある。この点、ハリウッド・メジャー以外の配給会社は基本的に体力がなく、誤った判断が続くと簡単に倒産してしまう。 少なくともヨーロッパ内で力を持つ配給会社を、政策的に育成する必要は以前から指摘されている。イギリスで、宝くじ売上金を使って、いくつかの「フランチャイズ」と呼ぶ映画の垂直的統合組織を育成しようとした時期があったが、うまくいかなかった。 また、自国の映像作品をアメリカで売り込むために、イギリスはロサンゼルスに拠点を持ち、情報収集・人脈づくりを手伝っている。イギリスで最も商業的成功を収めてきたプロダクションのワーキング・タイトル(「フォー・ウェディングス」「ブリジット・ジョーンズの日記」他を製作)は、以前にはフィリップスの傘下にあったが、その後ミラマックスと国際配給に関する継続的契約を結んでおり、宣伝・マーケティング面ではハリウッド映画と同格の地位を得ている。ここまでハリウッドに食い込んだ会社は他には少なく、例えばフランス国内で大ヒットした作品があっても(「最強のふたり」など)、ハリウッドにリメイクの権利を売るのが精一杯である。 ハリウッド以外の作品の国内流通には各国は熱心である。これは映像文化における「多様性」の確保という文化政策的な目標だという言い方をする。ヨーロッパ諸国では、こうした映画作品を上映する映画館(ミニ・シアター、公共文化施設など)の運営費用あるいは建物・設備改修費用を助成したり、海外の作品の輸入支援を行っている。広告宣伝費やプリント作成費(P&A)の助成もある。

具体的な文化関連施策

10. 取引市場整備 コンテンツの海外輸出にあたっては、各テリトリーにおいて有力な配給会社、販売代理店などと信頼関係を築き契約を進める必要がある。デジタル情報のやりとりだけではなく、見本市等の場で顔を合わせたコミュニケーションを繰り返すことが重要である。特に映像作品についてはプリ・セールの契約がほとんどであるから、見本市の場で未公開作品の一部を見たり相手から説明を受けたりすることが必要である。買い付けのため、あるいは出展するための費用はそれなりの金額になることから、これを助成する制度を持つ国もある。 一方、自国内において、各国関係者が注目する見本市を定期的に開催することも自国の業界支援にとって重要である。自国内のより多くの関係者が参加して世界各国の業界人と交流を深めて情報交換できるからである。世界で評価の高いフェスティバルと合わせて見本市を開き、関係者にとって参加必須のイベントとして認識されるために、フェスティバル、見本市、付随するセミナー等のイベントを充実させて開催するものである。

11. 調査・統計 より適切なマーケティング計画を立てられるよう、興行成績などのデータの定期的発表および年間での詳細にわたる制作・配給・上映活動、資金調達状況、作品の輸出入、世界市場の動向等をまとめた調査レポート、特定トピック(例えばVOD、デジタルシネマなど)に関する調査の委託とその結果の公表がある。

12. アーカイブ 多くのコンテンツは消費されて消えていくが、きちんとした記録を残し保存し、次世代に伝えていくことは、長期的に業界が発展していくためには必要である。作品の保存と修復を行うミュージアム的な機能を持つ機関で、作品を一般公開するところもある。映像関係でこれが最も進んでいる。ゲームについては、プレイに必要なコンソール等もアーカイブの対象と考えられる。

Page 108: 事業報告書8 2-1-1. 直接的経済効果 (JCS) 2. 日本のコンテンツ産業の経済効果分析 > 2-1. 過去10年間のコンテンツ産業政策> 2014年のJCSは、2004年次と比較して約8倍以上の規模に成長

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13. 消費・普及・ 教育など

ニッチなマーケットにおいては高評価を得られるコンテンツを、より広く普及させるための活動。フェスティバルやファンが集うイベントの開催も含まれる。また、例えばアート性が高い(あるいは社会的メッセージ性の強い)作品を教師と生徒が議論するような「鑑賞教育」のパッケージを製作・頒布するといった施策がある。

具体的な文化関連施策

14. その他― 通信インフラ整備、著作権等の法整備と執行

コンテンツの制作・流通・消費のあらゆる場面において、大容量の通信インフラが整っていることは今や必須である。 コンテンツ産業は「著作権産業」とも呼ばれるように、オリジナルの複製・二次利用といった著作権活用こそがビジネスモデルである。そのため、著作権(および隣接権)の法制度とその執行がどのような状況であるかは大きな影響力を持つ。特に近年はデジタル技術の発展により、違法なコピー等の不正利用がグローバルに進んでいることから、それへの対応策としての法改正も数を重ねている。また、二国間・多国間の貿易自由化においても知的財産権の強化が規定に含まれるようになっている。この他、肖像権、個人情報・プライバシーの保護などもコンテンツ政策に関係する法的問題としてあげられる。また、内容的規制が国家単位である場合(中国、シンガポールなどの検閲制度)と産業による自主規制による場合(映画、ゲームなど)、ある程度の枠組みの中で自主規制がなされる場合(テレビ放送)がある。

15. その他― 放送関係

テレビで放映されるオリジナル映像作品および既存の映画作品の放映は、映像産業全体にとって大きな収入をもたらす。この20~30年の間、放送のデジタル化、衛星放送の導入などにより、多チャンネル化し、放送局の民営化が進んだことで、映像コンテンツへの需要は大きく上がった。内容と放映時間との関係に関する規制、放送コンテンツ制作の外部化を義務付ける法律、放送と通信の融合に関する規制と自由化などの動きも大きな影響力を持つ。 テレビ局が映画制作に投資することは、日本でスタンダード化しているが、イギリスのBBC、チャネル4も経験豊富であり、この資金がイギリス映画の再生に貢献してきた。映画専門チャネルは、放映権の買い付けを基本とするが、映画制作に投資するところもある。