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負の数と整数 統計基礎 の補足資料 2018423金沢学院大学経営情報学部 藤本祥二

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負の数と整数

統計基礎の補足資料

2018年4月23日金沢学院大学経営情報学部

藤本祥二

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今回の講義の目的

• 負の数を正しく理解する◦ 記号「-」の意味を正しく捉える

▪ 演算の意味の「-」記号

▪ 符号の意味の「-」記号

• 足し算引き算のルールを納得して覚える

• 掛け算のルールを納得して覚える◦ (正の数)×(正の数)=正の数

◦ (正の数)×(負の数)=負の数

◦ (負の数)×(正の数)=負の数

◦ (負の数)×(負の数)=正の数テストでできてない人が続出納得して腑に落ちてないと、肝心な時に使えない。

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自然数の引き算(減算)

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引き算について

• 引き算(減算,subtraction)

• 引き算の操作

・「取り除く」操作 ・「違い」「差」を求める操作

・足し算の逆演算

○○○ ○○ 5 − 2

○○○ = 3

取り除く

0 1 2 3 4 5

52 5 − 2 = 3

2 + □ = 5 ⟹ 5− 2 = □

「5は2からどっち方向にどれくらい違うか?」2の矢の頭から5の矢の頭に向けて矢印を引く(引く数の頭から引かれる数の頭に向けた矢印)「正の方向に3違う(差は3である)」が答え

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自然数の引き算

• 自然数の範囲内では引き算に答えが出せない場合がある(自然数で閉じない)

2 − 5 =?

• 交換則,結合則が成り立たない2 − 5 ≠ 5 − 22 − 5 − 7 ≠ 2 − 5 − 7

• 負の数を導入して自然数を整数に拡張する

◦ 拡張する際に重要なのは数の基本法則を満足するように演算ルールを定めること▪ 閉じている、結合則、交換則、分配則、を壊さないようにする

◦ 負の数を使った演算ルールはどのようにするべきか?

◦ 演算ルールの解釈はどうなるのか?

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負の数の歴史

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負の数の歴史

• 起源は0の概念よりも古い

• 紀元前1世紀頃の中国,前漢,「九章算術」◦ 第八章「方程」に正負術

◦ 赤い算木(正の数),黒い算木(負の数)

画像元:算木

江戸時代に使われていた算木と算盤画像元:頭ではなく身体で理解する

日本では陰陽師などが算木を使ってた

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• 7世紀頃のインド,8世紀頃のアラビア世界◦ 借金を表すのに負の数は使われていた

◦ 方程式で負の解を認めれば様々な場合分けが必要なくなって便利

• 12世紀頃の中国,インド

◦ 負の数の掛け算や割り算の計算ルールの確立

• 17~18世紀頃ヨーロッパで受け入れられる◦ 13世紀頃には伝わっていたが、負数の概念を受け入れるまでにはかなりの抵抗があった

◦ 15世紀頃,パチョーリ(イタリア)「近代会計学の父」

複式簿記(資産と負債,借方と貸方,を並べて書く)では負の数を直接使わなくても大丈夫だった

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負の数への抵抗

• ヨーロッパの一流の数学者の言葉

◦ シュケ(15世紀)負の数を「馬鹿げた数」と呼ぶ

◦ カルダーノ(16世紀)「マイナス×マイナスはプラスだというのは間違った結論だ」

◦ クラビウス(16世紀)「プラス・マイナスの掛け算の規

則を証明するのはやめたほうがよい.この規則の正しい理由を理解できないのは,人間の精神の無力によるというほかはない」

◦ デカルト(17世紀)方程式の負の解を「偽の解」と呼ぶ

◦ パスカル(17世紀)「0から4を引けば0であることを理解できない人がいることを私は知っている」

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• ヨーロッパ数学の源流はギリシャ数学(哲学)

◦ 「幾何学」には強かったので「比」等の概念は発達していたが「負の数」は図に描けないので受け入れ難かった。(負の長さや面積が描けない)

◦ 「論理」や「証明」に厳しかったので「負の数」を受け入れるまでに時間がかかった。

◦ 「代数学」(方程式)などはアラビア世界や東洋に比べて遅れていた。

◦ 「数直線」の概念が導入されて「負の数」が目に見えるようになってやっと受け入れられるようになっていった。

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負の数(反数)と引き算

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演算記号と符号の混同に注意

• 演算子(operator) plus operator +,minus operator -◦ 演算操作を表現する記号◦ 2 plus 3 equals 5. (2足す3は5と等しい)

2 + 3 = 5◦ 2 minus 3 equals negative 1. (2引く3は負の1と等しい)

2 − 3 = −1

• 符号(sign) positive sign +,negative sign -◦ 正の数か負の数かを表現する記号◦ positive 5 (正の5)

+5◦ negative 5 (負の5)

−5

足し算引き算と符号は別の物なのに、同じ記号を使ってしまっている。(記号が節約される良い面も大きい)

日本のカタカナ語では符号の表現に間違ってプラス,マイナスという呼び方を使ってしまっている。(弊害が大きい)

+符号は続く数の符号を変えないという操作の単項演算子、−符号は続く数の符号を反対にするという操作の単項演算子、と考えるのはOK

2項を結合する演算子を2項演算子という

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符号と演算

+符号+𝑎

• +1と𝑎との掛け算に変換できる+𝑎 = +1 × 𝑎

• 0と𝑎との足し算に変換できる

+𝑎 = 0 + 𝑎

−符号−𝑎

• −1と𝑎との掛け算に変換できる−𝑎 = −1 × 𝑎

• 0と𝑎との引き算に変換できる

−𝑎 = 0 − 𝑎

𝑎の正負を変えない単項演算子 𝑎の正負を反転させる単項演算子

+1と𝑎を結合する二項演算子 −1と𝑎を結合する二項演算子

0と𝑎を結合する二項演算子 0と𝑎を結合する二項演算子

「このような変換が正しいかどうか?」本来なら証明が必要

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負の数と反数

• 正の数(positive number)

• 負の数(negative number)

• 足して0になる数,以下の式の□𝑎 + □ = 0

で反数 ത𝑎を定義する.

• つまり,次の式が反数の定義𝑎 + ത𝑎 = 0

• 正の数の反数が負の数である

• 負の数の反数は正の数である

ここでの ത𝑎は現代表現の −𝑎 です。引き算操作と混同しないようにするためあえて普通とは違った表現を使います。左の式は 𝑎 + −𝑎 = 0 のことです。適時 ത𝑎を −𝑎 に読み替えてください。

ത𝑎 + തത𝑎 = 0が示せるので തത𝑎 = 𝑎 とみなせる。つまり反数の反数は元の数であることが示せる。また,0 + 0 = 0なので 0の反数は 0である。

数直線で 0を挟んだ反対の数が反数のイメージ(次ページ)

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数直線

0 1 2 3 4 5ത1ത2ത3ത4ത5

തത1 തത2 തത3 തത4 തത5ത0

0を挟んで反対の数が互いに反数

0の反数は0 反数の反数は元の数

തതത1തതത2

തതത3തതത4

തതത5

−1−2−3−4−5引き算記号と混同しないようにこのような現代的な符号の表現を避けた。(適時読み替えるとよい)

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整数

• 整数(integer:英語)(zahlen:ドイツ語)

• 自然数,0,負の数,の合併で整数集合ℤを作るℤ = 負の数 ∪ 0 ∪ ℕ

= 0,1, ത1, 2, ത2, 3, ത3, 4, ത4, 5, ത5,…

= 0,1, −1,2, −2,3, −3,4, −4,5, −5,…

• 数概念を自然数から整数に拡張する

◦ 整数世界で閉じてる,結合則,交換則,分配則これらの数の基本法則を壊さないように拡張する

◦ 拡張した際の負の数の計算ルールはどうなるか?

◦ 負の数の計算ルールはどのように解釈できるか?

このスライドでの符号の表現

現代の標準的な符号の表現

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数の概念の拡張

• 古い概念の数 新しい概念の数

• 古い概念の便利な法則が、新しい概念でも可能な限り成り立てば便利どうしても成り立たせられないときや、成り立たせると更に不便になるようなときは、その法則はあきらめる。

概念の拡張

負の数を含めた新しい概念ℤ = 0,1, ത1, 2, ത2, 3, ത3, …(古い概念の法則が成り立つように数概念を拡張する)

古い概念 0 ∪ ℕ = {0,1,2,⋯ }

基本法則(交換則,結合則,分配則,・・・)

こっちでも基本法則が成り立つように拡張する

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反数同志の足し算

• ത𝑎 と ത𝑏を足すとどうなるか?(数の基本法則のみを仮定して考える)𝑎 + ത𝑎 = 0, 𝑏 + ത𝑏 = 0の両辺を足して、足し算の交換則と結合則を使うと

𝑎 + ത𝑎 + 𝑏 + ത𝑏 = 0𝑎 + ത𝑎 + 𝑏 + ത𝑏 = 0𝑎 + 𝑏 + ത𝑎 + ത𝑏 = 0

𝑎 + 𝑏 + ത𝑎 + ത𝑏 = 0

• 足して0なので ത𝑎 + ത𝑏は 𝑎 + 𝑏の反数である。そのため、次のように表現できる。

ത𝑎 + ത𝑏 = 𝑎 + 𝑏• 𝑎 = 2, 𝑏 = 3の時は

ത2 + ത3 = ത5 −2 + −3 = −5に読み替えられる

−𝑎 + −𝑏 = − 𝑎 + 𝑏に読み替えられる

左辺に結合法則を使った

左辺に交換法則を使った

左辺に結合法則を使った

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「引く」ことは「反数を足す」こと

• 反数を使えば引き算を足し算に変更できる𝑎 − 𝑏 = 𝑎 + ത𝑏 + 𝑏 − 𝑏 = 𝑎 + ത𝑏

• 足し算になったら交換則,結合則など自由に使える

◦ 5 − 2 = 5 + ത2 = 3 + 2 + ത2 = 3

◦ 2 − 5 = 2 + ത5 = 2 + ത2 + ത3 = ത3

◦ ത5 − 2 = ത5 + ത2 = ത7

◦ ത2 − 5 = ത2 + ത5 = ത7

0 = ത𝑏 + 𝑏を加えた同じものを取り除くので0になる

引くことと、反数を足すことは同じ。𝑎 − 𝑏 = 𝑎 + ത𝑏𝑎 − 𝑏 = 𝑎 + −𝑏

上式のように左辺を右辺に置き換えれば足し算になって交換則、結合則などが自由に使えるようになる。

ここに

計算過程を絵やイメージで納得すると良い→次のページと、その次のページ

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2 − 5 = ത3の解釈

• 2から5を取り除く方法1 =①, ത1 =①で表すことにする

2①①

2 + ത5 + 5① ① ①① ① ①① ①① ①① ①

2 + ത5① ①① ①①①①

ത3①①①

0 = ത5 + 5を加える

5を取り除く

0になるペアを消す

2 − 5は2 + ത5 と同じである

−5を行う操作

実際に1円玉などを使って手を動かしてみると良い

2 + ത2 + ത3① ① ①① ① ①

ത5 = ത2 + ത3

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2 − 5 = ത3の解釈(数直線)

• 2と5の違い(差)を数直線で見る

• 2 − 5は 2 + ത5と同じ0 1 2 3 4 5

5

2 2 − 5 = ത3

ത1ത2ത3ത4ത5

ത3

0 1 2 3 4 5

ത52

ത1ത2ത3ത4ത5

2 + ത5

引く数5の頭から引かれる数2の頭に向かって矢印を引く

足し算なので2右に移動して5左に移動する

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「反数を引く」のは「元の数を足す」こと

• 反数を引く演算𝑎 − ത𝑏 = 𝑎 + 𝑏 + ത𝑏 − ത𝑏 = 𝑎 + 𝑏

• 足し算になったら交換則,結合則など自由に使える

◦ ത5 − ത2 = ത5 + 2 = ത3 + ത2 + 2 = ത3

◦ ത2 − ത5 = ത2 + 5 = ത2 + 2 + 3 = 3

◦ 5 − ത2 = 5 + 2 = 7

◦ 2 − ത5 = 2 + 5 = 7

0 = 𝑏 + ത𝑏を加えた同じものを取り除くので0になる

反数を引くことと、元の数を足すことは同じ。𝑎 − ത𝑏 = 𝑎 + 𝑏𝑎 − −𝑏 = 𝑎 + 𝑏

上式のように左辺を右辺に置き換えれば足し算になり交換則、結合則などが自由に使えるようになる。

ここに

計算過程を絵やイメージで納得すると良い→次のページと、その次のページ

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2 − ത5 = 7の解釈

• 2からത5を取り除く方法1 =①, ത1 =①で表すことにする

2①①

2 + ത5 + 5① ① ①① ① ①① ①① ①① ①

2 + 5① ①① ①①①①

ത5を取り除く

7① ①① ①①①①

2 − ത5は2 + 5 と同じである

−ത5を行う操作

0 = ത5 + 5を加える

実際に1円玉などを使って手を動かしてみると良い

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2 − ത5 = 7の解釈(数直線)

• 2とത5の違い(差)を数直線で見る

• 2 − ത5は 2 + 5と同じ

0 1 2

ത52

2 − ത5 = 7

ത1ത2ത3ത4ത5

5 6 7

52

2 + 5 = 7

43210

引く数ത5の頭から引かれる数2の頭に向かって矢印を引く

足し算なので2右に移動して5右に移動する

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引き算のまとめ

• 引き算は反数の足し算に置き換える。その際に、引く数の符号を反対にするルールを守ればよい。

□ − 𝑎 = □ + ത𝑎□ − ത𝑎 = □ + 𝑎

• 足し算に置き変えた後は交換則や結合則を自由に使って良い。

• 現代数学の記号「−」は「引き算を表す演算記号」、「反数を表す符号記号」の両方で使っている。

現代の表式□ − 𝑎 = □ + −𝑎

□ − −𝑎 = □ + 𝑎

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整数の足し算の交換則と結合則

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数直線と整数の加算

• 数直線(数を少しだけ具体化したもの)を導入

• 足し算を移動で考える.+(正の数)は右の移動,+(負の数)は左の移動と考える.

. ത2 + 3 = 12 + ത3 = ത1

位置 + 変位 = (位置)

0 1 2 3ത1ത2ത3

3 ത3

ത2の位置から3移動すると1の位置に着く

2の位置からത3移動するとത1の位置に着く

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整数の加算の交換則

• 𝑎, 𝑏 ∈ ℤの時(𝑎, 𝑏は正負どちらの数でもOK)𝑎 + 𝑏 = 𝑏 + 𝑎

が成り立つ

ത2 + 3 = 13 + ത2 = 1

0 1 2 3ത1ത2ത3

3ത2

ത2の位置から3移動すると1の位置に着く

3の位置からത2移動すると1の位置に着く

どちらも結果は同じ

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整数の加算の交換則

• 0を起点に全て移動で考えると分かりやすい

0 + ത2 + 3 = 10 + 3 + ത2 = 1

0 1 2 3ത1ത2ത3

0から左に2,右に3移動

0から右に3,左に2移動

どっちの順番でも結果は同じ

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整数の加算の結合則

• 𝑎, 𝑏, 𝑐 ∈ ℤの時𝑎 + 𝑏 + 𝑐 = 𝑎 + (𝑏 + 𝑐)

が成り立つ

1 + ത2 + 3 = ത1 + 3 = 21 + ത2 + 3 = 1 + 1 = 2

0 1 2 3ത1ത2ത3

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計算例

2 − 3 + 4 − 5 − −6 + −7= 2 + −3 + 4 + −5 + 6 + −7

= 2 + 4 + 6 + −5 + −3 + −7= 2 + 10 + −5 + −10= 12 + −15= 12 + −12 + −3 = −3

2 − 3 + 4 − 5 − −6 + −7= 2 + −3 + 4 + −5 + 6 + −7

= 2 + 6 + −3 + −5 + 4 + −7= 8 + −8 + −3 = −3

−𝑎 → + −𝑎− −𝑎 → +𝑎を使って引き算を足し算にする

足し算の交換則結合則を使って順番を入れ替えて正の数の計算と負の数の計算に分ける

足し算の交換則結合則を使って順番を入れ替えて0になるペアを作る

ややこしい引き算は全て足し算に直して交換則,結合則を使って計算

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整数の乗算

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整数の乗算

• 整数(特に負の数)の乗算をどのように定義すればよいのか?

• 数の基本法則を破らないように定義する

• 𝑎, 𝑏 ∈ ℤとして交換則,結合則,分配則のみを使い,以下の式の左辺と右辺が等しいことを示す.

𝑎 × ത𝑏 = 𝑎 × 𝑏ത𝑎 × ത𝑏 = 𝑎 × 𝑏

• 自然数の計算ルールと、反数に対する上記の計算ルールを守れば整数の加算乗算に対する数の基本法則は自動的に成り立つ

𝑎 × −𝑏 = −(𝑎 × 𝑏)−𝑎 × −𝑏 = 𝑎 × 𝑏

この後6ページを使って証明する

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1 × ത1 = ത1の証明

• 題の式の左辺を変形していく1 × ത1 = 1 × ത1 + 1 + ത1

= 1 × ത1 + 1 × 1 + ത1= 1 × ത1 + 1 + ത1= 1 × 0 + ത1= 0 + ത1= ത1 + 0= ത1

0 = 1 + ത1 を加えた

1 = 1 × 1 を使った

分配則を使った

1 + ത1 = 0 を使った

前回証明した自然数と0の演算規則 1 × 0 = 0 を使った

0を加えても変わらないを使った

• 証明の際には、定義とこれまでに正しいと証明された関係式のみを使うことが重要

• 一度証明された関係式は次からどんどん使って良い

1 × −1 = −1に相当する式を証明した

足し算の交換則を使った

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0 × ത1 = 0の証明

• 題の式の左辺を変形していく0 × ത1 = 0 × ത1 + ത1 + 1

= 0 × ത1 + 1 × ത1 + 1= 0 + 1 × ത1 + 1= 1 × ത1 + 1= ത1 + 1= 0

0 = ത1 + 1 を加えた

前頁で証明したത1 = 1 × ത1 を使った

分配則を使った

0 + 1 = 1 を使った

前頁で証明した1 × ത1 = ത1 を使った

ത1 + 1 = 0 を使った

0 × −1 = 0に相当する式を証明した

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ത1 × ത1 = 1の証明

• 題の式の左辺を変形していくത1 × ത1 = ത1 × ത1 + ത1 + 1

= ത1 × ത1 + 1 × ത1 + 1= ത1 + 1 × ത1 + 1= 0 × ത1 + 1= 0 + 1= 1

0 = ത1 + 1 を加えた

前々頁で証明したത1 = 1 × ത1 を使った

分配則を使った

ത1 + 1 = 0 を使った

前頁で証明した0 × ത1 = 0 を使った

0を加えても変わらないを使った

−1 × −1 = 1に相当する式を証明した

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ത1 × 𝑎 = ത𝑎の証明

• 題の式の左辺を変形していくത1 × 𝑎 = ത1 × 𝑎 + 𝑎 + ത𝑎

= ത1 × 𝑎 + 1 × 𝑎 + ത𝑎= ത1 + 1 × 𝑎 + ത𝑎= 0 × 𝑎 + ത𝑎= 0 + ത𝑎= ത𝑎

0 = 𝑎 + ത𝑎 を加えた

𝑎 = 1 × 𝑎 を使った

分配則を使った

ത1 + 1 = 0 を使った

0 × 𝑎 = 0は前回のスライドの「0の乗算」と同じようにして証明できる

−1 × 𝑎 = −𝑎に相当する式を証明した「𝑎にマイナス1を掛けること」と「𝑎の反数を求めること」は同じ

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𝑎 × ത𝑏 = 𝑎 × 𝑏の証明

• 題の式の左辺を変形していく

𝑎 × ത𝑏 = 𝑎 × ത1 × 𝑏= 𝑎 × ത1 × 𝑏= ത1 × 𝑎 × 𝑏= ത1 × 𝑎 × 𝑏= 𝑎 × 𝑏

前頁で証明した式ത𝑎 = ത1 × 𝑎

の文字𝑎を𝑏に変更したത𝑏 = ത1 × 𝑏

を使った

前頁で証明した式ത𝑎 = ത1 × 𝑎

の文字𝑎を𝑎 × 𝑏に変更した𝑎 × 𝑏 = ത1 × 𝑎 × 𝑏

を使った

結合則・交換則を使った

𝑎 × −𝑏 = − 𝑎 × 𝑏に相当する式を証明した

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ത𝑎 × ത𝑏 = 𝑎 × 𝑏の証明

• 題の式の左辺を変形していく

ത𝑎 × ത𝑏 = ത1 × 𝑎 × ത1 × 𝑏= ത1 × ത1 × 𝑎 × 𝑏= 1 × 𝑎 × 𝑏= 𝑎 × 𝑏

前々頁で証明した式ത𝑎 = ത1 × 𝑎

の文字𝑎を𝑏に変更したത𝑏 = ത1 × 𝑏

を両方使った

結合則・交換則を使った

3頁前で証明した式ത1 × ത1 = 1

を使った

−𝑎 × −𝑏 = 𝑎 × 𝑏に相当する式を証明した

1を掛けても変わらないを使った

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ちなみに負×負=負としてみると?

• 試しに ത1 × ത1 = ത1が成り立つとして 1 × ത1 = ത1と同時に成り立たせることができるか考えてみよう◦ ത1 × ത1 = ത1と 1 × ത1 = ത1の両辺を足して左辺に分配則を使うと

ത1 + 1 × ത1 = ത2になる

◦ 上式の左辺は0なので0 = ത2

が証明できてしまう.

◦ こういう絶対にありえないことを矛盾と言う。論理学では矛盾を許すとありとあらゆることが証明できてしまうので、矛盾が現れる論理は厳しく否定される

実は分配則を放棄すれば負×負=負としても矛盾の現れない数体系を作ることができる。しかし、そのようにして作った数体系には良いことが何もない(使えない)

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整数の演算の基本法則𝑎, 𝑏, 𝑐 ∈ ℤの時 𝑎 + −𝑎 = 0 で正負の反転を定義• 𝑎 + 𝑏 ∈ ℤ 加算で閉じてる• 𝑎 × 𝑏 ∈ ℤ 乗算で閉じてる• 𝑎 + 𝑏 = 𝑏 + 𝑎 加算の交換則• 𝑎 × 𝑏 = 𝑏 × 𝑎 乗算の交換則• 𝑎 + 𝑏 + 𝑐 = 𝑎 + (𝑏 + 𝑐) 加算の結合則• 𝑎 × 𝑏 × 𝑐 = 𝑎 × (𝑏 × 𝑐) 乗算の結合則• 𝑎 + 𝑏 × 𝑐 = 𝑎 × 𝑐 + 𝑏 × 𝑐 分配則以上の演算法則を要請すれば負の数を含めた演算ルールが定まる.

そのためには𝑎 × −𝑏 = − 𝑎 × 𝑏 , −𝑎 × −𝑏 = 𝑎 × 𝑏が成り立たなければならない.

数の基本法則を満たすようになったので、これで負の数を含めた整数が数の仲間になった

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負数の掛け算の解釈

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反数の掛け算まとめ

• 数の基本法則を破らないように掛け算のルールを決めると次のようになった

𝑎 × −𝑏 = −(𝑎 × 𝑏)−𝑎 × −𝑏 = 𝑎 × 𝑏

• 計算ルールが定まったので後はこのルールをどのように解釈するか考える

正×負=負

負×負=正

ルールをやみくもに暗記しても忘れてしまう次のスライドからの解釈イメージがしっかりしていると、いざというときに忘れない

正×正=正

負×正=負

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整数の乗算の解釈

• 3倍は掛けられる数と「同方向」に3倍すること

• −3倍は掛けられる数の「逆方向」に3倍すること

3 × 2 = 6

3 × −2 = −6

−3 × 2 = −6

−3 × −2 = 6

正の数を同方向に倍すると正の数になる

負の数を同方向に倍すると負の数になる

正の数を逆方向に倍すると負の数になる

負の数を逆方向に倍すると正の数になる

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正の数の何倍の特徴

2の3倍:3 × 2 = 6

2の2倍:2 × 2 = 4

2の1倍:1 × 2 = 2

2の0倍:0 × 2 = 0

2の−1倍: −1 × 2 = −2

2の−2倍: −2 × 2 = −4

2の−3倍: −3 × 2 = −6

2ずつ増える

2ずつ減る

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負の数の何倍の特徴

−2の3倍:3 × −2 = −6

−2の2倍:2 × −2 = −4

−2の1倍:1 × −2 = −2

−2の0倍:0 × −2 = 0

−2の−1倍: −1 × −2 = 2

−2の−2倍: −2 × −2 = 4

−2の−3倍: −3 × −2 = 6

2ずつ減る

2ずつ増える

ずつ増える

-2ずつ減る

-2

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整数の何倍の特徴

• 𝑎 ∈ ℤとする(正の数でも負の数でも0でもよい)

𝑎の3倍:3 × 𝑎 = 3𝑎

𝑎の2倍:2 × 𝑎 = 2𝑎

𝑎の1倍:1 × 𝑎 = 𝑎

𝑎の0倍:0 × 𝑎 = 0

𝑎の−1倍: −1 × 𝑎 = −𝑎

𝑎の−2倍: −2 × 𝑎 = −2𝑎

𝑎の−3倍: −3 × 𝑎 = −3𝑎

ずつ増える

ずつ減る

𝑎 𝑎

この特徴、実は分配則を言い換えただけの特徴である例えば次の式は「3𝑎と𝑎は2𝑎違う」ということを分配則で示した式である

3𝑎 − 𝑎 = 3𝑎 + −1 𝑎 = 3 + −1 𝑎 = 2𝑎同じようにして「2𝑎と−3𝑎は5𝑎違う」ということを分配則で示すことができる

掛け算の特徴は分配則を言い換えただけのものに過ぎない

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負の数の掛け算の例

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負の数の掛け算の具体例

• 東向きに60[ Τkm 時]で走る車は3時間前にはどの位置にいた?

60[ Τkm 時] × −3 [時] = −180[km]現在地より西に180[km]の地点

• A君は1時間に100円 支払う座席に5時間座ってる.現在の持ち金は1300円である.座席に座る前の持ち金は?1300 円 + −100 [ Τ円 時] × −5 [時]= 1300 円 + 500 円 = 1800[円 ]

具体例に応用する時には、向きや単位をちゃんと考えないといけない

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間違い例

• スタンダール(19世紀のフランスの小説家)

◦ 「借金×借金が財産になるという公式が理解できない」と50歳を過ぎてから自叙伝に書く

• 単位をちゃんと考えると、

−100 円 × −200 円 = 20000 円2

円の2乗の単位の量を計算してるだけで借金が財産になったわけではない

• 具体的な問題では単位をしっかり意識しないと何の計算をやってるのか分からなくなる

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計算例

−2 × 3 × −4 × −5= −1 × 2 × 3 × −1 × 4 × −1 × 5= −1 × −1 × −1 × 2 × 3 × 4 × 5= −120

99 × 16 = 100 − 1 × 16= 100 + −1 × 16= 100 × 16 + −1 × 16= 1600 + −16 = 1584

−𝑎 = −1 × 𝑎を使う

交換則

(負×負)×負=正×負=負

負数を奇数個掛けると負,偶数個掛けると正になる

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𝑎 + 𝑏 2の展開公式

𝑎 + 𝑏 2 = 𝑎 + 𝑏 𝑎 + 𝑏= 𝑎𝑎 + 𝑎𝑏 + 𝑏𝑎 + 𝑏𝑏= 𝑎𝑎 + 𝑎𝑏 + 𝑎𝑏 + 𝑏𝑏= 𝑎2 + 2𝑎𝑏 + 𝑏2

𝑎 𝑏

𝑎

𝑏

𝑎 + 𝑏 2𝑎2 𝑎𝑏

𝑏2𝑎𝑏

=

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𝑎 − 𝑏 2の展開公式

𝑎 − 𝑏 2 = 𝑎 + −𝑏 𝑎 + −𝑏= 𝑎𝑎 + 𝑎 −𝑏 + −𝑏 𝑎 + −𝑏 −𝑏= 𝑎𝑎 + −𝑎𝑏 + −𝑎𝑏 + 𝑏𝑏= 𝑎2 − 2𝑎𝑏 + 𝑏2

𝑎 𝑏

𝑎

𝑏

𝑎2= 𝑎𝑏

𝑎𝑏 𝑏2

− +

1回余分に引いてる

𝑎 − 𝑏 2

引きすぎた分を足す

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𝑎 + 𝑏 𝑎 − 𝑏 の展開公式

𝑎 + 𝑏 𝑎 − 𝑏 = 𝑎 + 𝑏 𝑎 + −𝑏= 𝑎𝑎 + 𝑎 −𝑏 + 𝑏𝑎 + 𝑏 −𝑏= 𝑎𝑎 + −𝑎𝑏 + 𝑎𝑏 + −𝑏𝑏= 𝑎2 − 𝑏2

𝑎 𝑏

𝑎

𝑏

𝑎 + 𝑏× 𝑎 − 𝑏

= = 𝑎2 − 𝑏2

𝑎

𝑏

𝑎

𝑏

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補数について

• 2に3を補えば5になる。この時、「3は2に対する5の補数」という0 ⇔ 5, 1 ⇔ 4, 2 ⇔ 3 は互いに5の補数

• 4に6を補えば10になる.この時「4は6に対する10の補数」という0 ⟺ 10, 1 ⇔ 9, 2 ⇔ 8, 3 ⇔ 7,4 ⇔ 6, 5 ⇔ 5 は互いに10の補数

• そろばんや暗算では補数というものを習う◦ 10の補数を暗記すると10進数での計算が簡単になる

◦ 5の補数はそろばんに役立つ

◦ その他補数を使った様々な暗算テクニックがある

おぎな

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補数を使った計算例(暗算用)

• 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7= 2 + 3 + 7 + 4 + 6 + 5= 2 + 10 + 10 + 5 = 27

• 10000 − 5678 = 1 + 9999 − 5678= 1 + 4321 = 4322

• 43 + 98 = 43 + 100 − 2= 143 − 2 = 141

• 724 − 186 = 724 − 200 + 14= 524 + 14= 538

交換則,結合則を使って互いに10の補数になる数で纏める

10000 = 1 + 9999補数で分けると9999 − 5678の計算で桁を借りなくて済む

186 + 14 = 20014と186は互いに200の補数

186を引く際に200引いてから14足す

98 + 2 = 10098と2は互いに100の補数100足してから2を引く