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1 ブルガリア概要 在ブルガリア大使館 2014年3月

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ブルガリア概要

在ブルガリア大使館

2014年3月

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目次

1 概要----------------------------------------------3

2 歴史----------------------------------------------3

3 政治----------------------------------------------4

4 経済----------------------------------------------9

5 社会----------------------------------------------15

6 我が国との関係------------------------------------17

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1 概要

地 理: ブルガリア共和国(Republic of Bulgaria)は,ヨーロッパ大陸の東南端,バルカン半

島の東寄りに位置し,ヨーロッパと小アジ

ア半島の接点に位置する。総面積は

110,993.6平方キロメートルで,日本の面

積の3分の1よりやや小さい。

面 積:11万k㎡(日本の約1/3)

人 口:725万人(2012年,IMF)

首 都:ソフィア市

民 族:スラブ系ブルガリア民族(約85%)

トルコ系(約9%),ロマ人(推定約5%)

言 語:ブルガリア語

宗 教:ブルガリア正教,イスラム教

国祭日:3月3日(オスマントルコからの解放記念日)

GDP:396億6705万ユーロ(名目GDP),

272億6873万ユーロ(実質GDP)

一人当たりのGDP:5436.06ユーロ

インフレ率:2.4%

主要産業:農業,製造業,IT・アウトソーシング,観光業

貿 易:輸出―207億7020万ユーロ,輸入―242億3040万ユーロ

2 歴史

現在のブルガリアの地には古代トラキア人が最初に定住し,世界最古の黄金文明を築

いたとされる。その後ギリシャ,マケドニアが勢力を拡大し,紀元前1世紀にはローマ

帝国が台頭した。7世紀,中央アジアからブルガール族が侵入し,スラブ人と同化して,

第 1次ブルガリア王国を建設した(681年)。同王国はシメオン1世(893~92

7)の治世下で最盛期を迎えたが,ビザンツ帝国に滅ぼされた。その後,ビザンツ帝国

支配(1018~1185年),第 2次ブルガリア王国(1185~1393年)を経

て,ブルガリアはオスマン・トルコ帝国に約500年間支配された。15~19世紀の

民族復興時代にはオスマン帝国からの解放を求め様々な反乱が起こるがいずれも失敗し

た。露土戦争(1877~78年)の結果,ロシアがオスマン帝国に勝利し,ブルガリ

アはオスマン帝国の支配から解放された。第一次・第二次バルカン戦争(1912~1

913),両世界大戦を経て,1946年には王制を廃止し共産党一党独裁の時代に入

り,旧ソ連とは16番目の共和国と言われるほどの親密な関係を築いた。その後198

9年に35年間政権を握ったジフコフ共産党書記長が辞任,共産党独裁体制が崩壊した。

1991年には東欧諸国では初の民主的な憲法が制定,各種選挙が実施され,民主制へ

の移行を果たした。1990年代はハイパー・インフレの発生等による経済状況の悪化

や経済政策等の失敗による頻繁な政権交代のため政治的・経済的に混乱したものの,2

004年にはNATO(北大西洋条約機構),2007年にはEU(欧州連合)への加

盟を果たした。

●ヴァルナ

●ブルガス

●ヴィディン

●プロヴディフ

●ルセ

●ヴェリコ・タルノヴォ

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3 政治

(1) 国家体制

ブルガリアは多数政党制による議会制民主主義をとる共和国である。

(ア)大統領

国家元首であり,軍の最高総司令官を務める。任期は5年で,2期まで可能。直接選挙に

より選出される。大統領の主な職務は,選挙及びレファレンダムの管理,外国に対し国家

を代表すること,条約の締結,国家安全保障評議会の長を務めること等。法案に対する拒

否権を有する(ただし国民議会の絶対多数で可決することが可能)。

現在の大統領はロセン・プレヴネリエフ大統領で,与党(当時)GERBの推薦を受けて

出馬した2011年10月の大統領選挙で選出され,2012年1月に就任した。また,

マルガリータ・ポポヴァ氏が副大統領を務めている。

(イ)閣僚評議会(内閣)

通常,議会の多数政党及びその連立政党により構成される閣僚評議会が中央政府としての

職務を行う。首相が首班となり,国家政策の遂行,国家予算の管理,法及び秩序の維持に

責任を負う。また,閣僚評議会は,国民議会による不信任案が可決された場合,総辞職し

なければならない。現在の首相は社会党(BSP)の指名によるプラメン・オレシャルス

キ首相で,2013年5月29日に国民議会の承認により就任した。

(ウ)国民議会

一院制で240議席,任期は4年,議員は比例代表制により選出される(得票率4%以下

は足きり)。現在は第42回国民議会(2013年5月~)である。国民議会は,立法,予

算の承認,首相及び閣僚評議会(中央政府)の選出などを行う。現在の第42回国民議会

議長はミハイル・ミコフ議長(社会党)。

第42回国民議会の党会派及び議席数は以下のとおり(2013年の総選挙後,同年12

月にGERB所属の2名の議員が党籍離脱し,無所属となった)。

GERB「ブルガリアの欧州における発展のための市民」(中道右派) 95

「ブルガリアのための連合」(社会党等による左派連合) 84

MRF「権利と自由のための運動」(トルコ系) 36

アタッカ(ナショナリスト) 23

無所属 2

(エ)地方制度

ブルガリアは28県(oblast)に区分され,その下に264の市(obstina)がある。各市の下には,首都ソフィア市,プロヴディフ市,ヴァルナ市については区(raion),その他の市については町(kmestvo)がある。市が地方自治を行う基本的な地域行政単位であり,市長及び市議会議員はそれぞれ市民による直接選挙により選出される。地方選挙は4年に1度

行われる。また,県はより大きな地域行政単位であり,主に国家による地方行政の管理を

行う。県知事は閣僚評議会により任命される。

(2)内政

1989年の共産主義体制の崩壊後,1991年7月に新憲法が採択され,民主制へ移行

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した(体制転換後の政権略史:別添1)。

2013年2月,電気料金の高騰に端を発する政府に対する抗議行動を受け,ボリソフ首

相によるGERB政権(当時)が総辞職した。同年5月に第42回国民議会総選挙が行わ

れた結果,前政権与党のGERBが第一党となったものの,過半数の議席を獲得した政党

はなく,社会党(BSP)及びMRF(トルコ系)によるオレシャルスキ首相を首班とす

る連立政権が成立した(現閣僚名簿:別添2)。議席の過半数を獲得していない現政府は,

極右政党アタッカの実質的な協力を受けながら政権を運営している。政策面では,経済危

機以降の低迷が続く中で経済成長に重点を置く他,社会的支出の増大による国民生活の向

上を表明しているが,悪評高い議員を国家保安庁長官に選出したことをきっかけとして,

政府発足後の早期から反政府の抗議行動が継続して行われている。抗議行動の根底にはマ

フィアやオリガーキーによる支配及び寡占,汚職,政治システムへの要求など,国家状況

に対する国民の根本的な不満があり,抗議行動は長期化しており,現政府は安定した政権

運営が困難な状況が続いている。

(3)外交

2007年1月にEU加盟を果たしたブルガリアは,外交政策の主軸を欧米・EUに置く

一方で,エネルギー資源を依存しているロシアとの関係にも配慮し,近隣バルカン諸国と

の友好関係の確立にも努めている。また,地理的な要因もあることから,中東情勢に関し

ても相応の貢献を行う姿勢を示している。

(ア)対EU関係

ブルガリアはEU加盟以降,結束政策によるEUファンドや農業補助金を受領することに

より自国のインフラ整備や農業の保護に役立ててきた。一方で,EU加盟時より司法改革・

汚職対策等の遅れを指摘されており,司法改革及び汚職・組織犯罪対策等の進捗に関する

協力・検証メカニズム(CVM)に基づく定期的な管理が行われている。また,シェンゲ

ン協定については,ブルガリアはルーマニアとともに司法改革や汚職対策の進捗の遅れ等

を理由に一部の加盟国の反対により発効が先送りされている状況が続いている。

(イ)対ロシア関係

オスマン・トルコからの独立(1878年)の際のロシアの支援等の歴史的経緯もあり,

ブルガリアには伝統的に親ロシア的な国民感情がある。また,天然ガス,核燃料及び原油

など,エネルギー資源の大半をロシアからの輸入に依存していることや,ロシア主導のサ

ウスストリーム・天然ガスパイプライン計画に参画していること等の関係から,ロシアと

はエネルギー分野における結びつきが強い。

(ウ)対近隣バルカン諸国関係

全ての近隣バルカン諸国との友好関係の確立に努めている他,BSEC(黒海経済協力機

構),SEECP(南東欧協力プロセス)等の地域枠組の活用を通じた南東欧及び黒海沿岸

地域等地域の協力促進に努めている。対マケドニア関係について,ブルガリアは1992

年の同国の独立を最初に承認した国の一つであり,経済・文化交流も活発である。ブルガ

リアは独立したマケドニア言語,マケドニア民族の存在については認めない立場をとって

いるが,善隣協定の締結に向けた両国の友好関係の確立に努めている。

(4)軍事

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2004年3月のNATO加盟以降,ブルガリアはNATO作戦への部隊派遣を行ってお

り,アフガニスタンのISAF(国際治安支援部隊)への人員派遣はその主軸である。2

003年8月からアフガニスタンへの人員派遣を行っており,2012年には600名以

上を派遣していたが,同年,活動を段階的に縮小することが決定され,2014年末まで

に大部分が撤退する予定である。なお,2013年8月には400名以上の隊員が帰国し

た。アフガニスタン以外では,イラクへ2003年から2008年の間に全11次の駐留

部隊を派遣(延べ3,200人以上)するなどの海外派遣を行っている。

米国との関係では,2006年に両国間で防衛協力協定が締結され,ブルガリアに米軍と

の共同軍事施設が設置された。ブルガリア軍と米軍は合同軍事演習を行うなど,緊密な協

力関係を築いている。

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別添1

体制転換後の政権略史

(1)民主化後の混乱

1989年の共産党独裁政権崩壊後,1990年以降は右派の「民主勢力同盟」(U

DF)及び左派の「ブルガリア社会党」(旧共産党)(BSP)が交互に政権に就いた

が,いずれも経済政策等の失敗から短命な政権に終わった。

(2)コストフ政権

1997年,UDFのコストフ党首を首班とする政権が発足,IMF等の国際金融機

関の指導による通貨準備委員会(カレンシー・ボード)を設置,その後,為替相場の安

定,インフレの沈静化等が見られ,それまで続いた経済的混乱は収束した。

(3)サクスコブルク政権

2001年,SNM(中道派)とトルコ系住民を支持母体とする「権利と自由のため

の運動」(MRF)の連立政権,サクスコブルグ政権が成立した。同政権は,2004

年3月にNATO加盟を実現,またEU加盟についても2004年6月に加盟交渉をす

べて終了するなど,外交面で大きな成果を上げた。

(4)スタニシェフ政権

2005年,BSPのスタニシェフ党首の下でBSP,SNM及びMRFからなる3

党連立政権が成立した。同政権は,ブルガリアの最重要課題であったEU加盟を200

7年1月に果たし,EU諸国との経済交流の活発化により高い経済成長,低い失業率を

達成する一方,経済格差・地方格差が拡大するなど,ブルガリア社会の様相は従来から

一変した。一方政府は,EU加盟に際してベンチマークを付された司法改革,組織犯罪

の追放,汚職対策等の課題への取り組みについて十分な成果を得ていないと欧州委員会

に重ねて指摘され,また,EUファンドの吸収が容易に進まない等,行政の非効率が顕

著となった他,情実等の不適切な運用が指摘されEUファンドの部分凍結の措置を受け

るに至った。

(5)ボリソフ政権

2009年7月,総選挙で第一党となった新興の中道右派政党GERBは僅差で単独

過半数を得られなかったものの,野党右派の閣外協力を得て,ボリソフ首相を首班とす

るGERB単独政権(少数与党)が成立した。ボリソフ政権は選挙公約である汚職・組

織犯罪の追放に一定の成果を挙げると共に,EUファンドを利用した道路鉄道等のイン

フラ建設を推進し,飛行場・港湾等をコンセッションに出す等の政策を行ったが,国際

経済危機以降の物価の上昇,失業の増加等の問題をなかなか克服できない状況が続いた。

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別添2

現閣僚名簿

現政権:社会党(BSP)の指名を受けたオレシャルスキ首相を首班とする社会党(BS

P)及びMRF(トルコ系)による政権

政権発足日:2013年5月29日(※ボベヴァ副首相は6月27日に選出)

首相:プラメン・オレシャルスキ(Plamen Oresharski) 副首相兼司法大臣:ジナイダ・ズラタノヴァ(Zinaida Zlatanova) 副首相兼内務大臣:ツヴェトリン・ヨフチェフ(Tsvetlin Yovchev) 経済発展担当副首相:ダニエラ・ボベヴァ(Daniela Bobeva) 外務大臣:クリスティアン・ヴィゲニン(Kristian Vigenin) 財務大臣:ペタル・チョバノフ(Petar Chobanov) 国防大臣:アンゲル・ナイデノフ(Angel Naydenov) 経済・エネルギー大臣:ドラゴミル・ストイノフ(Dragomir Stoynev) 労働社会大臣:ハッサン・アデモフ(Hasan Ademov) 投資計画大臣:イヴァン・ダノフ(Ivan Danov) 農業食糧大臣:ディミタル・グレコフ(Prof.Dimitar Grekov) 地域開発大臣:デシスラヴァ・テルジエヴァ(Desislava Terzieva) 運輸・IT・通信大臣:ダナイル・パパゾフ(Danail Papazov) 環境・水大臣:イスクラ・ミハイロヴァ(Iskra Dimitrova Mihaylova-Koparova) 保健大臣:タンヤ・アンドレエヴァ(Dr. Tanya Lyubomirova Andreeva-Raynova) 教育科学大臣:アネリヤ・クリサロヴァ(Prof. Aneliya Klisarova) 文化大臣:ペテル・ストヤノビッチ(Peter Stoyanovich) 青年スポーツ大臣:マリヤナ・ゲオルギエヴァ(Prof. Mariana Vasileva Georgieva)

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4 経済

(1)現状

ブルガリアは1996年の経済危機を受け,1997年にカレンシー・ボード制を導入。

その後,ブルガリア経済はマクロ的に一定の安定を達成したが,2008年の世界同時経

済不況の煽りを受け,GDP成長率が2009年には-5.5%と大幅に下落。

2007年7月,ブルガリア政府はユーロ導入のため,ERMIIへの同年末までの参

加を表明するとともに,財政均衡政策を開始。しかしながら,国内外の諸要因により,参

加を延長せざるを得ない状況となった。

欧州債務危機におけるギリシャやスペイン等の状況を踏まえ,2009年に発足したボ

リソフ政権下ではユーロ導入に性急となるべきではないとしつつも,緊縮財政が継続され

た。しかしながら,こうした緊縮財政は,国民への大きな負担となり,2013年2月の

デモの一因となった。2013年6月に発足したオレシャルスキ政権は,補正予算を行い,

マーストリヒト条約の規定(財政赤字を対GDP比3%以内に抑えるというもの)を順守

しつつ,緊縮財政を緩和する政策を行っている。

【主な経済指標】

2009年 2010年 2011年 2012年

GDP成長率(%) -5.5% 0.4% 1.8% 0.8%

GDP(名目)(百万BGN) 68,322 70,511 75,308 77,582

GDP(実質)(百万BGN) 51,762 51,966 52,922 53,333

1人あたりGDP(BGN) 9,007 9,359 10,248 10,619

インフレ率(%) 2.5% 3.0% 3.4% 2.4%

平均月給(BGN) 609 648 686 777

貿易収支(百万EUR) -4,173.9 -2,763.7 -2,156.1 -3,460.3

輸出(百万EUR) 11,699.2 15,561.2 20,264.3 20,770.2

輸入(百万EUR) 15,873.1 18,324.8 22,420.4 24,230.4

財政収支(百万BGN) -626.1 -2822.8 -1488.5 -358.8

基礎財政収支(百万BGN) -105.3 -2,336.9 -941.5 213.9

歳入(百万BGN) 25,040.9 23,932.6 25,378.1 27,469.4

歳出(百万BGN) 25,666.9 26,755.4 26,866.6 27,828.3

対外債務額(百万EUR) 37,816.4 37,026.3 36,228.1 37,592.1

為替レート(対USD) 1.36 1.47 1.51 1.48

(注:1ユーロ=1.95583BGN)

(2)対EU関係

(ア)EU基金及び共通農業政策(CAP)補助金の活用

ブルガリアにとり,EU加盟による最大の利点はEU基金及び共通農業政策(CAP)

補助金の活用である。EU基金については,インフラ整備,環境保全及び人材育成等の分

野において積極的に活用され,2011年のGDP成長の65%はEU基金によるものと

されている。なお,今期(2014-2020年期)のEU基金のブルガリア割当額は7

4.2億ユーロ(2007-2013年期は69億ユーロ),CAP補助金の割当額は未定

であるが,2007-2013年期は51億ユーロであった。

他方,一時前払金を除いて基本的に後払い制のEU基金の活用のためには,実施事業体

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にある程度の自己資金能力が必要とされ,資金力の弱い企業が多い当国では,割り当てら

れた予算を100%活用することが困難な状況。また,CAP補助金については,大手農

業企業7社が補助金の5割の受益者となる等,補助金受給者間の格差があり,ブルガリア

の農業構造の変化に繋がる等の影響を与えている。

(イ) EU加盟による経済効果

EU加盟により,ブルガリアの対EU貿易は大幅に増加した。また,EU加盟諸国から

のブルガリアへの入国者数が加盟前と比べ約100万人増加し,観光分野をはじめとする

当国の経済分野に少なからぬ影響を与えている。さらに,EU加盟国であることが「安定

した国」であるというイメージを与えたことから,中国,韓国等,非EU諸国からの投資

増加にも繋がった。

他方,対EU貿易は,とりわけ輸入の面で増加し,当国の伝統的産業の衰退にも繋がって

いる。また,財政赤字をGDPの3%以内に抑えるというマーストリヒト条約の義務を順

守することは,そもそも経済力の低い当国にとり,大型公共事業の実施等,経済活性化の

ための大幅な財政支出が制限され,ある意味において,経済発展の足枷ともなっている。

(3)産業構造

(ア)製造業

ブルガリアでは,古くより,食品加工(ビール・ワイン製造,乳製品,野菜・果物缶詰

等),化学製品生産(ソーダ灰・重層生産,肥料生産,製薬業等),繊維・アパレル,重工

業(造船,フォークリフト生産等)が盛んであり,バルカン地域・欧州をはじめとする多

くの国々に製品を輸出している。民主化・市場経済化以降は,安価な人件費と職業訓練に

より培われてきた人材等を魅力材料として,有望分野企業に対しては欧米企業からの投資

が積極的に行われてきた。他方,国営企業の民営化が失敗した事例も多々あり,失敗例と

成功例との間では相当の乖離も見られる。

近年では,自動車産業部門への外国投資が盛んになっており,我が国の矢崎総業及び住

友電装をはじめ,中国の長城汽車,仏Montupet社等も当国に進出し,自動車部品製造や自動車組立等の事業を行っている。

(イ)農業

かつて農業国とされていたブルガリアの農業は,現在はGDPの5.9%を占める程度と

なり,民主化・市場経済化以降は,大規模農地により穀物・工芸作物栽培を行い平均所得

以上の収益を得,生産高の9割近くを形成する少数の農業経営者と,零細農業を営み,平

均所得以下の収入を得ている8割以上の農業経営者とによる「二重の構造」を成すように

なった。

ブルガリアの主要作物は,タバコ,ひまわり種,小麦,ワイン用ぶどう,トマトなどで

ある。とりわけ,タバコは伝統的に栽培が盛んであったが,現在においてもEU加盟国内

第1位の生産量となっている。ひまわり種についてもEU加盟国中,第3位の生産量であ

る。また,小麦についても,北部ドブリッチ地域における小麦栽培が古くから盛んであり,

一時,生産量が減少していたものの,近年は復調傾向にあり,生産量はEU加盟国中第1

0位となっている。他方,野菜・果物類については零細農家が栽培しており,近年は輸入

野菜に押される傾向にある。農作物の輸出入状況を見ても,穀物,タバコは輸出超である

ものの,野菜・果物については輸入超となっている。

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(ウ)サービス業

サービス業はGDPの63.2%を占め(2012年),ブルガリア経済の主要分野とな

っている。とりわけ,不動産,金融分野については,外資企業も多く参入しており,ブル

ガリアの銀行部門の資産の55%は外資銀行5行(イタリア系,ハンガリー系,ギリシャ

系及びオーストリア系)により形成されている。また,不動産分野では,2014年1月

より在ブルガリア定住者ではないEU市民も農地所有が可能となるため,外資企業による

農地の売買が活発になる可能性がある。

なお,近年ではブルガリアの得意分野であるIT・アウトソーシング分野に参入する外

資企業(Microsoft社,IBM社,Hewlett-Packard社等)も多く,成長分野の1つとなり,雇用創出源となっている。

(エ)観光業

ブルガリアには文化遺産と自然遺産合わせて9つの世界遺産がある(ボヤナ教会,マダ

ラの騎士,カザンラクのトラキア人の墳墓,イヴァノヴォの岩窟教会群,ネセバルの古代

都市,リラ修道院,スベシュタリのトラキア人の墳墓,スレバルナ自然保護区及びピリン

国立公園)他,国内各地に200以上存在する修道院も観光スポットとなっている。また,

近年はワイナリー・ツアーやスパ・ツアー等も充実してきており,ブルガリア政府として

も観光業を主産業の一つとして強化する政策を取っている。

2012年の観光客数は462万2710人であり,うちEU諸国からの観光客数は2

78万4966人であり,全体の6割を占める。とりわけ多いのはルーマニア(55万25

27人),ドイツ(52万9615人)及びギリシャ(50万3504人)からの観光客である。

また,非EU諸国からの観光客の中では,ロシア(48万1539人),マケドニア(33万

2575人),セルビア(24万2706人),ウクライナ(20万9902人),イスラエル

(9万712人)等が多く,日本からの観光客は9302人である。とりわけ,隣国以外か

らの観光客は夏場に集中しているのが当国の観光分野の特徴である。

【2012年分野別対GDP比】

農林水産業6%

鉱業・製造業・

電力・ガス・上

下水道・廃棄物

管理21%

建設5%

卸売り・小売り・

自動車修理・輸

送・保管・宿泊・

食品サービス17%

情報通信5%

金融・保険7%

不動産8%

専門的・科学技

術活動,行政・

支援サービス4%

行政・軍事,社

会保障,教育,

保険,社会活動11%

芸術・娯楽等2%

調整(税金)14%

2012年分野別対GDP比

(4)貿易・投資

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貿易については,対EU貿易が輸入・輸出(58.4%,2012年),(47.5%,

2012年)ともに5割前後を占めているが,国別に見ると,輸出についてはドイツ,ト

ルコ,イタリア,ルーマニア,ギリシャ,フランス,ベルギー,ジブラルタル,中国,ロ

シアの順,輸入についてはロシア,ドイツ,イタリア,ルーマニア,ギリシャ,トルコ,

スペイン,オーストリア,オランダ,ハンガリーの順となっており(いずれも2012年),

隣国トルコや中国との交易関係も盛んである。なお,ロシアについては,原油及びガスを

輸入しているため,対輸入第1位である。

2012年の対ブルガリア外国投資については,2010年及び2012年と比べると

復調傾向ではあるものの,ピーク時であった2008年のレベルには達していない。なお,

2013年は当国の内政状況の不安定さが要因となり減少傾向にある。ブルガリアはオラ

ンダ等と二重課税防止条約を締結しているため,オフショア企業を含めたこれらの国々か

らの投資が多いが,ドイツをはじめとする他の欧州諸国の企業やロシア企業からの投資も

多い。なお,近年,中国企業も対ブルガリア投資に積極的な関心を示している。

【2012年国別輸出高】

0500

10001500200025003000350040004500

2012年輸出高(単位:百万レヴァ)

【2012年国別輸入高】

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

2012年輸入高(単位:百万レヴァ)

【対ブルガリア外国投資額の推移】(単位:10億ユーロ)

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2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年

6,222 9,052 6,728 2,437 1,151 1,315 1,478

【主要国の対ブルガリア投資額(1996-2012年の累計)】(単位:10億ユーロ)

オランダ オーストリア ギリシャ 英国 ドイツ キプロス ロシア ハンガリー

6,601 5,638 3,576 2,606 2,501 2,317 1,658 1,332

(5)エネルギー

ブルガリアは伝統的に電力輸出国であり,現在も隣国に電力を輸出している。国内の電

力は,火力,原子力,再生可能エネルギーによって賄われており,一次エネルギー国内供

給に占める割合は,それぞれ,52.1%,34.4%,7.1%(2011年)であった

が,2012年以降,外資企業にとり好条件であった再生可能エネルギーの割合が2割近

く(17.7%)にまで急増したことで電力料金高騰の要因となり,国民の不満を解消す

るため,政府は頻繁に法改正を行うなど対応に苦慮してきた。こうした政府の対応は,外

資企業が同分野への参入を躊躇する主要因となっているが,再生可能エネルギーの買取価

格を補填するために電気・暖房料金が引き上げられたことに対する国民の不満は,201

3年2月のデモ,さらには,ボリソフ政権の総辞職へと繋がった。

ブルガリアは天然ガス及び核燃料の9割以上をロシアからの輸入に依存しており,こう

した依存状態からの脱却が一つの大きな課題となっている。そうした意味において,ブル

ガリア政府はナブッコ天然ガス・パイプライン・プロジェクトの推進派であったが,20

13年6月にナブッコ・プロジェクトが事実上停止となり,同時並行的に交渉が進められ

てきた,ロシアの推進するサウスストリーム天然ガス・パイプライン・プロジェクトへの

参画を決定し,ブルガリア領土内のパイプライン建設に関し,請負企業選定を開始した。。

ブルガリアには北部ドナウ河沿いのコズロドゥイに,最盛期には6基の原子炉が稼働し

ていた原子力発電所があるが,EU加盟に際して4基が廃炉となり,現在は2基のみが稼

働している。コズロドゥイ原子力発電所とは別に,社会主義時代末期より第2の原子力発

電所をベレネ(コズロドゥイの東約150㎞)に建設する計画があるが,2012年,ブ

ルガリア政府はベレネ原発建設のために調達された機材を転用し,コズロドゥイ原子力発

電所の新規原子炉(7号基)を建設する決定を下した。その後,2013年1月に行われ

た国民投票を受けた国民議会における審議において,ベレネ原発建設の中止が決定された。

他方,コズロドゥイ原発の7号基建設については,企業側との交渉開始を宣言し,201

4年1月より請負業者の選定を開始した。

なお,ブルガリアには,社会主義時代より自国産褐炭を利用した火力発電所の他,水力

発電所,熱併給発電所等がある。

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【主なエネルギー関連プロジェクト】

案件名 概要

サウスストリーム天然ガ

ス・パイプライン建設

ロシアの進めるロシア発黒海経由欧州向け天然ガス・パイプライン

建設プロジェクト。ブルガリアにとっては,同パイプラインからの

ガス供給及びガス通過料の収入がメリット。2012年 11月,ブルガ

リア政府は同プロジェクトへの参画を正式決定し,露ガスプロム社

と契約締結。現在,ブルガリア領土内のパイプライン建設に関する

請負企業選定中。

ガス・パイプライン連結管

建設

ブルガリア政府は,セルビア,トルコ,ルーマニアとの間のガス・

パイプライン連結管の建設を計画・実施中。

ベレネ原子力発電所建設 元来は社会主義時代から計画されていたものであるが,2013年に行

われた国民投票を受けた国民議会における審議において建設中止

が正式決定された。

コズロドゥイ原子力発電所

新規原子炉建設

ベレネ原子力発電所建設を中止する代替案として進められてきた。

現在,ブルガリア政府は建設に向けて企業側と交渉中。

石油・天然ガス開発 黒海沿岸地域を中心に石油・天然ガス開発が行われており,石油・

天然ガスの自給率拡大に徐々に貢献。なお,シェールガス開発につ

いては,2012年1月に禁止された。

石炭開発 内陸部を中心に石炭開発が行われており,国内の火力発電所に供

給。

再生可能エネルギー 国内各地において各国企業が参入しているが,2012年の再生可能エ

ネルギー接続料課金制度導入等の制度改正により,投資拡大が進ま

ない状況。なお,接続料課金制度は最高行政裁判所により違法行為

とされ,事実上廃止。2013年12月,国民議会は再生可能エネ

ルギー法を改正し,売上の20%に相当する手数料の導入を決定。

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5 社会

(1)人口動態

(ア)人口

ブルガリアの人口は725万人(2012年,IMF)であり,年々人口が減少している(10年前より約60万人減少)。2013年には698万人まで減少したとの報告もある(2

013年7月,CIA)。少子高齢化が進行していることに加え,国外への留学・出稼ぎ・

移住等の人口流出が主要な原因と見られる。また,首都ソフィア市を中心とした都市部へ

の人口集中及び農村部の過疎化の傾向が顕著となっており,国民の約7割が都市部に居住

している。首都ソフィア市の人口は130万人(国家統計局,2012年)。

平均寿命は74.2歳(男性70.7歳,女性77.8歳)(ユーロスタット,2011年)

であり,上昇傾向にあるが,依然としてリトアニア,ラトビアに次いでEU各国中で最低

水準となっている。国民の平均年齢は42.8歳(2012年,国家統計局)。

(イ)民族・宗教

民族別では,スラブ系のブルガリア民族が全人口の約85%を占め,トルコ系住民が約

9%の他,ロマ人が約5%となっている(国家統計局,2011年)。スラブ系ブルガ

リア人の人口が減少する中で,出生率の高いロマ人の人口が増加しており,実際のロマ

人人口は統計より多いと推定されている。低所得者層が多くを占めるロマ人の社会から

の周縁化が問題となっており,就学及び雇用の促進を含めた一般ブルガリア社会への融

和が課題となっている。

宗教については,東方正教会の一派であるブルガリア正教会が大部分を占めており,そ

の他イスラム教徒の他,少数のカトリック教徒及び新教徒等がいる。

(2)社会保障制度

健康保険制度と社会保険制度があり,ともに国民皆保険制度である。

(ア)健康保険制度

保健省が保健政策を管轄しており,国家健康保険基金(NHIF)が基金を管理運営している。健康保険料は総所得の約8%であり,被雇用者の場合は労使が6:4の割合で支払う。公

務員,18歳以下,年金生活者などについては保険料の自己負担が不要。外国人の永住者,

長期滞在者,大学の留学生等も加入義務がある。被保険者はまず一般医(GP)の診察を受

け,その後必要があれば専門医の診察を受ける。医療や医薬品については種類により自己

負担額が異なる。近年,無保険者の増大による保険料財源の減少などによる医療サービス

の低下や病院経営の悪化が問題となっている。また,特に肥満予防,禁煙指導,感染症予

防などの予防医療や長期医療の分野が遅れている。

(イ)社会保険制度

労働社会省が社会政策を管轄しており,国家社会保障機関(NSSI)が年金,失業手当,労災等の社会保険を管理運営している。社会保険料は,労働カテゴリーによって異なるが,

総所得の約22%~25%であり,被雇用者の場合は労使が約6:4の割合で支払う。公

務員,裁判所関係者,軍関係者などについては自己負担が不要。外国人を含むすべての労

働者に加入義務がある。老齢年金の最低受給額は月150レヴァ,最高受給額は月770

レヴァ(2013年4月以降)。なお,オレシャルスキ政権は,社会福祉政策を重視して

おり,2014年7月1日以降,年金受給額の3%の引き上げが行われる予定。社会保障

制度についても近年は,保険料収入の低下や少子高齢化の進行による財源不足が問題とな

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っている。なお,我が国とブルガリアは社会保障協定を締結していない。

(3)教育

ブルガリアの教育制度は,8年の義務教育(初等学校4年,中等学校4年),4年の中等教

育(高等学校,高等専門学校),職業専門学校及び高等教育(大学,大学院)から成る。就

学年齢は6歳又は7歳。義務教育では公立学校及び私立学校があり,公立学校の授業料は

無料。高等教育については,国内に500の職業専門学校,53の大学及び大学院がある。

大学への進学率は約38%。ソフィア大学は1888年に設立されたブルガリア国内最古

かつ最高峰の大学であり,1990年に開設された文学部日本語専攻では約50名が日本

研究に携わっている。

(4)治安状況

ブルガリアにおける犯罪発生件数は,日本のそれと人口当たりの数値で比較すると,殺人

6.38倍,強盗13.97倍,強姦2.2倍,放火28.5倍,略取誘拐・人身売買2

5倍,窃盗1.08倍,強制わいせつ0.69倍と,強制わいせつを除き,全ての犯罪に

おいて上回っている(2012年統計)。ここ数年発生件数において変化はないが,日常生

活に身近な窃盗事件が多発しており,また,殺人,強盗,放火などの凶悪事件の発生率が

高い。窃盗事件は刑法犯認知件数の約7~8割を占めており,この傾向は日本と同程度で

あるが,軽微な窃盗被害に遭っても警察に被害届を提出しないことが多く,実際の窃盗被

害は統計より多く発生していると言える。邦人が被害者となる犯罪の大半は窃盗であり,

公共交通機関内や繁華街では窃盗(スリ、置き引き)被害に注意することや私有車両にセ

キュリティシステムを装備することが求められる。

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6 我が国との関係

(1)政治関係

(ア)歴史

ブルガリアは社会主義時代から我が国と良好な関係にあり,ハイレベルの政治対話が継

続して行われている。また,両国間ではこれまで計9回の政務協議が行われている(直近

の開催は2010年10月(於:ソフィア))他,ブルガリア国民議会では対日友好議連が

組織されている。

主な要人往来

日本より ブルガリアより

1979年 皇太子同妃両殿下(今上天皇・

皇后両陛下)

1983年 安倍外務大臣

1987年 三笠宮同妃両殿下

1970,1978,1985年 ジフコフ国家評議会議長

1990年 小此木衆議院友好議連会長 ジェーレフ大統領(即位の礼出席)

ヴァルコフ副首相兼外務大臣

1991年 ヴァシレフ副首相兼教育・科学大臣

ヴァルコフ副首相兼外務大臣(外務省賓客)

1992年 綿貫自民党幹事長

櫻内衆議院議長

プラマタルスキ貿易大臣

1993年 綿貫衆議院友好議連会長 ガーネフ国連総会議長(元外務大臣)

(外務省賓客)

ヨルダノフ国民議会議長(衆議院招待)

1994年 海部元総理

伊江参議院友好議連会長

綿貫衆議院友好議連会長

マティンチェフ副首相

1995年 柳沢外務政務次官 ゲチェフ副首相兼経済開発大臣

1996年 亀井運輸大臣

清子内親王殿下

センドフ国民議会議長(参議院議長招待)

1997年 堀之内郵政大臣 ストヤノフ大統領(国賓)

1999年 中馬衆議院外務委員長 バガルジエフ副首相兼地域開発・公共事業大臣

(外務省賓客)

2000年 綿貫衆議院議長

浅野外務政務次官

ガヴァルジエフ副大統領(小渕総理の葬儀出席)

2001年 ゲルジコフ国民議会議長(衆議院議長招待)

2002年 松浪外務大臣政務官

倉田参議院議長

ヴァシレフ副首相兼経済大臣

2003年 パシ外務大臣(外務省賓客)

アルセノヴァ環境・水大臣

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2004年 松宮外務大臣政務官

関谷参議院友好議連会長

川口総理大臣補佐官

サクスコブルク首相(実務訪問賓客)

(シューレヴァ副首相兼経済大臣同行)

2005年 常田農林水産副大臣

衆議院選挙制度等実情調査議員団

(団長:井上喜一議員)

鳩山由紀夫衆議院議員(自由主義イン

ター定期大会出席)

コヴァチェフ経済大臣

マーリン副大統領(博覧会賓客)

2006年 南野参議院議員(世界女性会議出席)

衆議院中東バルカン各国政治経済事情

調査議員団(団長:村田吉隆議員)

角田参議院副議長(ブルガリア国民議

会の招待)

ピリンスキ国民議会議長(参議院議長招待)

エテム副首相兼緊急事態・災害担当大臣

スヴィナロフ国民議会国家安全・公安委員長

ガイダルスキ保健大臣

2007年 麻生外務大臣

田中財務副大臣

カルフィン副首相兼外務大臣

2008年 マスラロヴァ労働・社会政策大臣

国民議会青年・スポーツ委員会議員団

ヴァルチェフ副首相兼教育・科学大臣

2009年 秋篠宮同妃両殿下

パルヴァノフ大統領

(公式実務訪問。カルフィン副首相兼外務大臣,チ

ャカロフ水・環境大臣同行)

2011年

ボリソフ首相(実務訪問賓客。ムラデノフ外務大臣

,ラシドフ文化大臣,トライコフ経済・エネルギー

・観光大臣,ナイデノフ農業・食糧大臣同行)

2012年 山根外務副大臣

ツァチェヴァ国民議会議長(参議院議長招待)

ドブレフ経済・エネルギー・観光大臣

2013年 ヤネヴァ経済・エネルギー次官(明治ブルガリア・

ヨーグルト日本発売40周年記念式典に出席)

(イ)二国間条約・取極

通商航海条約(1970年),文化交流取極(1975年),科学技術協力取極(1978

年),租税条約(1991年),青年海外協力隊派遣取極(1992年),技術協力協定(2

005年)

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(2)経済関係

ブルガリアのEU加盟を機に同加盟国のプレゼンスが高まる中,我が国のプレゼンスは

相対的に低くなっているものの,2006年にソフィアにおいて我が国企業による最先端

の医療機器を持つ総合病院が開業し,また,2007年以降は我が国企業2社による自動

車部品産業への投資が行われ,雇用創出にも貢献しているとブルガリア側より高い評価を

受けている。

貿易については,体制変革後,二国間貿易額は大幅に減少したが,近年は若干の回復傾

向にあり,2013年の我が国の対ブルガリア貿易は輸出が69億円,輸入が113億円

となった。我が国からの主な輸出品は鉄鋼,繊維製品,電気製品,農業用機械,自動車等

であり,ブルガリアからの主な輸入品は衣類,金属くず,ローズオイル等となっている。

また,経済交流としては,日本・ブルガリア経済合同委員会が定期的に東京及びソフィ

アで相互に会合を開催している。2012年12月には経済・エネルギー・観光大臣が訪

日し,日本ブルガリア経済委員会40周年記念行事に出席した他,ブルガリア投資セミナ

ーが開催された。

なお,2010年度末を以て終了した我が国の対ブルガリア経済協力は,社会主義時代

に行われた協力も含め,無償資金協力,有償資金協力,技術協力及び国際機関を通じた支

援等により,累計で900億円超の規模となり,ブルガリアの民主化・市場経済化の推進

に寄与した。

【我が国の対ブルガリア経済協力】

供与額 主な案件

円借款 770.06億円 ソフィアホテル建設計画

(48.32億円,1975年)

ブルガス港拡張計画

(143億円,1998年)

ソフィア地下鉄拡張計画

(129億円,2001年)

無償資金協力(国際機関を

通じた支援を含む)

33.98億円 ソフィア市ビストリッツァ浄水場排水処理施設建

設計画

(11.17億円,1998年)

草の根・人間の安全保障無償資金協力

(82件)

緊急無償援助(1997年及び2005年)

技術協力 112.61億円 研修員受入(842人)

専門家派遣(243人)

調査団派遣(617人)

機材供与(9億1340円)

協力隊派遣(253人)

その他ボランティア(2人)

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【我が国企業の直接投資案件】

企業名 分野 概要

住友電気工業及び住

友電装

自動車部品産

メズドラ市及びカルノバット市に合計約 1900名を雇用する工

場を設立。カルノバット工場は 2004年,メズドラ工場は 2008

年操業開始。

東芝ウェスティンハ

ウス

原子力発電 制御システムの納入。独仏露とのコンソーシアムで 10億ユー

ロの規模。2006年終了。

徳洲会(トクダ病院) 医療 1016床の近代設備を備えた病院を建設。投資額は1億ユーロ

超。2006年開業。

徳洲会(トクダ銀行) 金融 ソフィア市内11支店を含め,ブルガリア全国に36支店を有す

る。国内29行中,第25位の規模。2004年設立。

HOYA グ ル ー プ

(PENTAXヨーロッ

パ)

医療用内視鏡

修理サービス

プロヴディフ市にサービス・センターを開設。初期投資は 200

万ユーロ。2012年開設。

三菱重工,JCF 風力発電 黒海沿岸のカリアクラ市に 35MWの風力発電を設置。2008年

操業開始。

MPP(三井物産子

会社)

火力発電 マリッツァ・イースト2火力発電所にて脱硫装置及びタービン

等を補修(補修事業の一部は東芝と契約)。2011年3月終了。

矢崎総業 自動車部品産

ヤンボル市及びスリーヴェン市に約 3000人を雇用する工場を

設立。ヤンボル工場は 2007年操業開始。スリーヴェン工場は

2012年一部操業開始。

【日本企業の駐在事務所】

ブルガリアに駐在事務所を設置している日本企業は,三菱商事,伊藤忠商事,パナソニック,横河電

機の4社

【日本の対ブルガリア貿易の推移】

0

5,000,000

10,000,000

15,000,000

20,000,000

25,000,000

30,000,000

35,000,000

19851986198719881989199019911992199319941995199619971998199920002001200220032004200520062007200820092010201120122013

(千

円)

日本の対ブルガリア貿易の推移

対ブルガリア輸出

対ブルガリア輸入

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(3)文化・教育交流

(ア)1975年に文化取極が締結されて以来,日本・ブルガリア間の文化交流は活発

に行われている。ソフィア少年少女合唱団,ソフィアオペラ座等日本で頻繁に公演する

音楽家・団体も多い。ブルガリア人一般の日本文化に対する関心は高いが,日本文化に

触れられる機会が少ないため,当館は交流事業を積極的に実施乃至実施協力している。

(イ)当館は各種団体と共に1990年から毎秋「日本文化月間」を開催。2014年

は第25回「日本文化月間」を開催予定。ブルガリアにおける我が国文化の紹介におい

て中心的役割を果たしている。2011年からは,当地日本愛好団体の傘機関である「日

本友の会」との共催で開催し,当地日本関連企業の協賛も得て,より充実した日本文化

紹介を目指している。

(ウ)対ブルガリア支援の実績

我が国は1991年度から一般文化無償協力を,2000年度からは草の根文化無償協

力をそれぞれ実施しブルガリアの各界から高い評価を受けた(別紙,「文化無償実績一

覧」参照)。

(エ)ソフィア大学,ヴェリコ・タルノヴォ大学において日本語・日本文化専攻・コース

が設置されているほか,主に中等以下の教育機関を中心にソフィア市だけでなくルセ市,

ヴァルナ市でも日本語学習者が増加している。ブルガリア全土では約1400名が日本

語を学習している。

(オ)学術交流に関してはソフィア大学をはじめ,ブルガリア科学アカデミーやソフィ

ア工科大学等が日本の大学や研究機関との間で35件もの学術交流協定を締結してい

る。2012年には、日本学術会議とブルガリア科学アカデミーが協力協定を締結した

他,大学間では2012年に、文京学院大学がソフィア大学・ヴェリコ・タルノヴォ大

学双方との間で、また、2013年には、共愛学園前橋国際大学がヴェリコ・タルノヴ

ォ大学との間でそれぞれ学術交流協定を締結した。これらの協定に基づき,学生交換や

共同研究が行われている。

(カ)1991年からこれまでに渡日した文部省(文科省)国費留学生は累計462名

(2013年12月現在)。その他,外務省・国際交流基金による各種招聘事業,明治

乳業のスポンサーで AFS 日本協会が実施する高校生短期交流プログラム等により日本に渡航する学生が増えている。

(4)地方連携等

(ア)協定関係等

・岡山市・プロヴディフ市;姉妹都市協定(1972年)

・ソフィア市・横浜市保土ヶ谷区;文化・教育・スポーツ等パートナー協定(2008

年)

・福岡県宗像市・カザンラク市;パートナーシップ協定(2010年)

・カザンラク市・福山ブルガリア協会;協力協定(2012年)

その他,カザンラク市バラの女王による日本訪問(福山ブルガリア協会の招待),カ

ザンラク市民族舞踊団のブルガリアフェア(福岡)出演,ひろしま・ブルガリア協会の

ブルガリア訪問などが伝統的交流事業として継続され,草の根交流の拡大に貢献。

(イ)当地には、各都市に対日友好協会があり(2003年,カザンラク日本友好協会,

2004年,ヴェリコ・タルノヴォ市対日友好協会,2008年,ヴァルナ・日本友好

協会がそれぞれ発足),民間レベルの交流が活発に行われており,我が国文化の発信を

通じた対日理解促進に貢献している。

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文化無償実績一覧

1.一般文化無償:11億5100万円

年度 被援助機関名 機材名 金額(百万円)

1991年度 国営テレビ テレビ撮影機材 48

92年度 柔道連盟 トレーニング機材 43

93年度 ボヤナ教会 撮影、編集、空調機材 40

94年度 国立図書館 印刷、撮影機材 48

95年度 国営テレビ 番組ソフト 47.9

96年度 国立音楽アカデミー 楽器、音響機材 49.1

97年度 国立劇場「イヴァン・ヴァゾフ」 音響機材 36.6

98年度 国立海外美術館 記録、保存、修復機材 41.3

99年度 国立文化財保存研究所 記録、保存、修復機材 42.3

2000年度 国立演劇・映画芸術アカデミー 視聴覚機材 49.4

01年度 ソフィア・フィルハーモニー 楽器、録音機材 49.8

02年度 国立文化宮殿 音響機材 46.3

04年度 ソフィア国立オペラ 音響・録音機材 43.3

05年度 考古学博物館 研究分析機材 41.3

06年度 ブルガリア国立ラジオ 楽器 50.7

07年度 国立文化省国立文化財保存研究所 保存・研究機材及び施設建設費 341

09年度 国立美術ギャラリー 修復室機材及び視聴覚室機材整備 46.5

10年度 「コンスタンティン・キシモフ」音楽演劇劇場 音響機材 50.6

2.草の根文化無償:3844万円

年度 被援助機関名 機材名 金額(百万円)

2000年度 中央人形劇場 音響機材 9.5

02年度 フォークアート・ソサエティ 視聴覚機材 1.1

04年度 スポーツ・アソシエーション・ブルガリア 柔道器材 1.89

05 年度 ブルガリア相撲連盟 土俵、畳、稽古着等 6.3

06年度 ブルガリア剣道連盟 剣道器材 0.86

06年度 ソフィア第18総合学校 日本ブルガリア教育文化センター設立 8.07

08年度 ルセ市ヴァシル・レフスキ総合学校 日本語LL教室整備及び日本語教材供与 4.30

08年度 プロヴディフ市民俗復興期博物館 展示機材 2.99

09年度 プロヴディフ歴史博物館 展示室整備 2.11

11年度 ヴェリコ・タルノヴォ大学 日本語学習機材整備 1.32