Post on 19-Jun-2020
京都次世代ものづくり産業雇用創出プロジェクト 第5回ライフサイエンスビジネス・セミナー
日本の技術をいのちのために委員会 事務局長
医療機器産業研究所 上級研究員
日吉 和彦
hiyoshi@inochinotameni.jp
医療機器ビジネス参入の
メリットとリスク
2014/12/5
京都リサーチパーク バズホール
薬事法改正の概要説明と医療機器ビジネス参入の具体的事例
2
医療機器はなんだか怖そう…と思っている人は
いませんか?
医療機器の製造物責任(PL)は怖いぞ…と思い
込んでいる人は いませんか?
ようこそ医療機器ワールドへ。
お話を始める前に・・・
3
以下の工業製品のうち、製品の故障・不具合により
人の命を奪ったことのあるものはどれか?
大規模リコールで会社が大打撃を受けたものは何か?
自動車
石油ファンヒーター
ガス瞬間湯沸かし器
加湿器
エアバッグ
医療機器
4
医療機器のPL(製造物責任)は怖いらしい・・・
世界の中で日本だけに、はびこった迷信
なんでそうなったか? ⇒ 本日省略
自分の頭で考えずに、理由もなく怖いと
信じ込むのは、大人の態度ではない。
いのちに関わるモノは
①法規制
・世に出る前に厳しくチェック
・厳しい品質管理
・ヒヤリ・ハットの吸い上げ
②教育訓練された医療者が使う。
5
医療機器のPLリスクの正しい理解
医療機器メーカー:PL訴訟の可能性はゼロに出来ないが、
日本では実質ゼロ。米国では普通の事。
材料部品メーカー:ゼロに出来る。
我が国のPL訴訟の実態
国内医療機器メーカーが、 訴えられれたことはない。
材料部品供給業者は、当然、訴えられることはない。
PL法の免責条項
経産省ガイドライン
材料部品メーカー: ありもしないリスクを怖れないこと。
医療機器メーカー: リスクは自らの努力で下げられるもので
あることを認識しよう。
6
では、本題へ
7
医療イノベーション5カ年戦略(H24年6月7日公表)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/iryou/dai5/gijisidai.html 日本再生戦略(H24年7月12日公表)
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2012/2/10.20120918_5.pdf
日本再興戦略-JAPAN is BACK-(平成25年6月14日)
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html 戦略市場創造プラン テーマ1:国民の「健康寿命」の延伸
健康医療戦略(平成25年6月14日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/pdf/senryaku.pdf 関係閣僚持ち回り 医療分野の研究開発の司令塔機能(日本版NIH)の創設
医療機器産業ビジョン2013(平成25年6月14日)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shinkou/vision_2013.html 厚労省:次元の違う取組で、優れた医療機器を 迅速に世界の人々に届ける
日本再興戦略改定2014(平成26年6月24日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/honbun2JP.pdf
健康・医療戦略(平成26年7月22日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/ketteisiryou/dai2/siryou1.pdf
医療は、国の重点領域
8
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/kaihatsu/kaisai.html
なかでも、医療機器は最優先席に
医療機器開発は国の最優先課題なのだと感動する。
9
10
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/kaihatsu/dai1/gijisidai.html 10月28日公表の最新資料です
https://www.med-device.jp/net/ 11月4日サイトオープン!!
11
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/12/dl/kekka.pdf 厚労省
医療費が
経済成長率を超えて
増え続けている!
12
13
医療費の6.3%が、医療機器
y = 0.067x - 1025.2
R2 = 0.978相関係数0.99
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0
国民医療費(兆円)
医療機器市場(兆円)
1984
19851986
1987
1988
1989
19901991
19921993
1994
1995
1996
1997
1998
19992000
20012002
2003
2006
2005
20042007
2008
2009
対象期間:1984年~2009年
国内市場/国民医療費:平均6.3%
中野:日本の医療機器市場の長期動向,医療機器産業研究所リサーチペーパーNo.2(2010)
医療費(=医療機器市場)は
増えざるを得ない。
14
それを成長と云うか?
それを成長戦略にできるか!
そうではなくて
現政権は、医療・ヘルスケア産業を
成長戦略に取り込んでいる。
15
自動車 電機製品 医薬品 医療機器
52 60 7.0 2.6
業 界 別 売 上 高
(兆円)
業界動向SEARCH.COM http://gyokai-search.com/2nd-genre.htm
薬事工業生産動態統計 http://www.mhlw.go.jp/topics/yakuji/2012/nenpo/
16 http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/jisedai_healthcare/pdf/001_05_00.pdf
17
「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂しました
http://www.meti.go.jp/press/2013/02/20140203003/20140203003.html
どれも医療機器ではない。
経産省HP
18
・国が一番やりたいことは、医療費の抑制
・政府が目先直ぐやりたいことは、景気回復
・医療を経済政策に上げてしまった。
・医療機器は成長領域と云ってしまった。
・新法の名前は 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の
確保等に関する法律
・話せば長い経緯のある薬事法改正の流れが、 規制緩和⇒景気回復の声で急加速。
・厳しい品質マネジメントをやって始めて国際競争力につながる。
本日、 薬事法改正=規制緩和⇒新規参入が簡単になる…
と期待してきた方には残念ですが、
19
きわめて広いヘルスケア産業の中で、医療機器とは….
赤枠の中が法規制の対象
健康サイクル
健康器具
医 療 施 設
医療機器 介護・福祉
機器
原料・部品・ソフトウエア供給産業
健康 予後の 未病
予防 診断 治療
リハビリ
健康
金融保険、情報・通信、ヘルスケアサービスなどの産業
医療技術研究施設
理化学機器
健康+在宅医療
1.自社ブランド医療機器を製造・販売
2.医療機器を受託製造
1. 医療機器向けの材料・部品
2. 介護・福祉器具、部品
3. 健康器具、部品
4. 病院で使われる医療機器以外の器具
5. 理化学研究・分析用機器装置類
20
規制産業に飛び込むか、 規制の外側のヘルスケア機器か
しっかり考えよう。
7つの参入ルート
罰則付き取締法の規制下で
規制外 普通の工業製品
内か外か?境目は?
本日のお題は、医療機器ビジネス参入のメリットとリスク
話を医療機器に絞ります。
1.メリット:国策をふまえてよく考えよう。
2.リスク
21
① 産業政策 :国策リスク
② 法規制 :規制リスク
③ 製造物責任:民事リスク
④ 医産連携 :開発リスク
医療機器に踏み出して 最初に出会う落とし穴が
あるところ
医療機器への挑戦
素人が思いつきでやれるものではない。 医者・学者との連携が必須。良いコンサルが必須。
実用化する力 (産)
先進工学の 取り込み (工)
医療介護福祉 現場のニーズ
(医) 医工連携
産学連携
伴走コンサルティング
23
医療機器参入の失敗例:最近激増中
1 :医療機器ブームで様々のセミナーが開催される。
2:こんなものが欲しい!これを作って!という学者の話に感動する。
3:そんなものなら、我が社で簡単に作れるぞ、と手を挙げる。
4:偉いセンセイが感謝感激してくれる。
5:いい気持ちになって、よしやってやろうと調子に乗る。
6:センセイの言うとおりに作ったら、売れると信じて疑わない。
7:いつまでたっても できた!と云ってもらえない。 できた筈なのに全く売れない。
・・・
なぜ?どうして?…分からないままズルズル…止めるに止められない
24
作って売りたいモノが、医療機器か非医療機器か分からないままに
取り組んではならない。(規制の内か外か)
医療機器(=法令で規制される機器)を製造販売するには、法規制に
沿った手順が必要。
医療機器の法規制は、作って売りたい事業者を対象とする。
お医者センセイは、規制の当事者ではない。
法規制に対応するのは企業。
自ら勉強しないで、センセイを頼りにしようという考えでは、
ビジネスゴールに到達できない。
25
事業につながる医産連携
• 威張るセンセイは絶対に駄目。俺の云うとおりにやれ!というセンセ
イとは絶対に付き合わないこと。後悔するだけ。
• 医者は、患者のために使えるモノは何でも使いたい。
自分にとって使い良いモノが手に入ればいい、売れるかどうか知った
ことでない。
• 論文が書ければよいというセンセイはダメ。
• 医者と連携のない工学部研究者も、要注意。
医者として当然のことだが、開発パートナーとしては不向き。
26
二つの極端なケース
現実問題として
規制対象の医療機器であるか否か・・・判断は意外に難しい。
法規制に詳しくない者が勝手に判断すると、間違う。
分かっている人に、必ず、聞こう。
2.病院にある器具道具は全て規制対象の医療機器だと思って敬
遠する。 ⇒多くが雑品。ビジネスチャンス逃がすな!
非医療機器は、規制の外で自由にやれる。
1.医療機器は法律で規制されていることを気にせずに、勝手に
作って売る。⇒違法行為。
27
医療関連のお話では、
参入障害として
・法規制
・PL
が挙げられるが、しかし、
本当の参入障壁は・・・
以上ここまで
背景知識と心構えのお話
28
異業種から医療への新規参入を考える人の多くは
リーマンショック前は、自動車・家電メーカーへの部品供給
B to B ビジネス。 B to C ビジネスの経験はない!
ビジネスの基本形が変わることが 参入障壁
経産省も、まず部品供給の旗振りをしてきた。(2009年~)
既に多くの企業が、医療機器向け部品供給を指向している。
しかし、日本の医療機器メーカーの出荷額は、合計で1.5兆円。
もはや既に、買い手市場となっている。
部品では、なかなか厳しい。それよりも、そもそも 参入した気にならない。医療機器を作って売りたい…
⇒製品ビジネス(B to C)にチャレンジ!
すばらしい技術を持っているので、モノの開発はできるだろう…
29
モノはできたがさっぱり売れない。売り方が分からない。
医療機器は難しい・・・・それは違うでしょ
元来、作る力はあっても、売る力は持っていなかったことを自覚しなければ・・・・ B to B と B to C の大きな違い
患者のための医療機器ではあるが、買うのはお医者・病院。
お客様とのつきあい方を知っていますか?
・我が社の技術なら簡単なもの、と作っては見たけれど、 ・法規制の仕組みを何も知らない。 ・どこに売りに行ったらいいか分からない。 売れるはずがないですね。
医療機器へのチャレンジとは、部品供給とは異なり、
製品を製造・販売するビジネスへの挑戦。
言葉が違う新世界の人たちと付き合う覚悟と意欲がいる。
30
医療機器・ヘルスケア機器分野への参入フローチャート
今日の話を聞いて よし、やるぞ!と思う。
ニーズ情報を得るため 活動開始
おもしろそうなテーマに出会う
医療機器か
yes
C-1
病院の非医療機器
健康介護福祉・理化学機器
医療機器の部品
No
C-2 C-3 C-4
出会いの場
:地元の産業振興機関の腕の見せどころ
:地元のみで受け身参加では宝くじ以下
:見本市や全国的な催しものに出かける
本日省略
31
規制対応の難度を見極める
医療機器を、設計開発・製造・販売する。 C-1
⇒ 分かっている人に聞く! :
認証品目 クラスⅡ (一部のⅢ)
承認品目 後発+改良 治験無し
3年早いが
やれる
5年早いが 計画的に
取り組み可
② ③ 承認品目
改良 治験有り
承認品目 新
医療機器
15年早い
20年早い
④
⑤
届出だけで 製造販売可 クラスⅠ
必要な法規制の 勉強開始
製造販売業許可
取得準備
開発 規制
①
32
クラスⅠ医療機器 開発
医療者の話を良く聞く
リスク評価
開発会議仕様決定
議事録とデータを 徹底的に 残すこと
規制
①②県知事に出す 窓口は薬務課 http://www.pref.osaka.lg.jp/yakumu/shinsei/
②製造業は、旧法では許可制⇒新法では届出 簡単にはなったが
QMS体制構築
①製造販売業許可 申請・取得
②製造業届出
旧法では指導をしてくれる県が多かった。 新法ではどうなるか?
どこで相談を?
製造開始 販売開始
製造販売届出書 作成
作成の手引き http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/info/iryokiki/file/iryokiki-list_2.pdf
届出 直ちに製造販売可
(独) 医薬品医療機器総合機構(PMDA)にネットで送信
同時並行!!
本日詳細省略
33
どうやって売るのか。
・ 結局のところ、
医療機器販売業を持っている会社に売ってもらう。
医療機器メーカーに販路を相談する。
・ とはいうものの、どこへ売りに行くのか? ⇒ 医療機関は新参者と取引しない。多品目を扱う販売業者としか取 引しない。
⇒ 医者に会って売り込みたくとも、会わせてもらえない病院も多い。
・ 原則として、販売業者しか売ることができない。
製造販売業、製造業の資格を持っていても、医療機関に直接売ること はできず、販売業の業資格がある人に売ってもらう。
・ クラスⅠ医療機器の場合は、簡単
販売業の届出も許可も不要。PMDAに製造届出したら直ちに売りに 行ける。
今日は、この後、苦労話が聞けます。
34
医療機器・ヘルスケア機器分野 参入のまとめ
参入ルート 勝手なコメントですが・・・
自社ブランド医療機器 正面突破では、必要な資格要員を育てるだけで3年以上かかる。ざっと5年計画が必要。
医療機器OEM 法改正で参入が簡単になるが、自由度が全く無い下請け。他社への販売は医療機器法、商法に触れる。
医療機器用部品 誰でもできる。⇒仕事は見つかりにくい。儲けるのは大変。
病院用非医療機器 良い病院がパートナーとして見つかれば、新規参入に良い。全国規模に拡大するのは難しい。
介護・福祉機器 これから市場は拡大の一途。ニーズに適した製品開発が意外と困難。規模拡大は大変。
健康器具 ささやかに開発しても、販売ルートは? 大手の大量生産品が結局は勝つ。
理化学研究装置 地元の大学など文科省研究費が取れる施設があれば、くい込む値打ちあり。関西にはたくさんある。
規制対応は勉強が必要。医療者とのつきあいには医学用語の勉強を。
35
未知の新規分野への参入では、
どんな分野でも勉強が必要。
外国へ行くのと同じ。
言葉が通じるほど楽しめる。
医療、ヘルスケア分野 ⇒ それなりの医学用語
医療機器 ⇒ 医療機器の法律用語
36
日本の製造業の技術を
ほんの少し医療機器に向けるだけで
日本発医療機器は
世界一流の製品となることが可能。
ヘルスケア分野には大きな市場がある。
使いやすい医療機器を
世界が待ち望んでいる。
日本の技術を、いのちのために
united heart…命のシンボルを、たくさんのピースが支えています。
シンプルな形は確かな技術と安心を、色鮮やかな赤は人の生きる力を表現しています。
日本の技術をいのちのために委員会 http://www.inochinotameni.jp/
世界の
ご発展を お祈りします!
ご静聴ありがとうございました。 hiyoshi@inochinotameni.jp