ポスト2015 年開発目標への日本のビジョン
参議院議員 武見敬三
2014年1月17日
環境研究総合推進費S-11・Beyond MDGs Japan合同公開シンポジウム
加盟国間の交渉
首脳会議
国連総会決議
ポスト2015年開発目標
事務総長統合報告書
リオ+20
2012年6月
ファイナンス委員会
持続可能な開発のためのファイナンシング戦略に関する政府間委員会
ファイナンス報告書
2013年8月~2014年8月
2014年9月頃
SDGs OWG
持続可能な開発目標に関する政府間オープンワーキング
グループ
SDGs報告書
2013年3月~2014年7月
2014年7月頃
2014年秋以降
2015年9月
2016年~
2013年5月31日
ハイレベルパネル報告書
事務総長報告書
国連総会MDGs
特別イベント
総会議長主催
テーマ別討論(各3回)
ハイレベルイベント(各3回)
総会議長主催
ハイレベルイベント
(ストックテイキング)
2013年8月
2013年9月25日
2014年2014年9月
2014年12月まで
1 ポスト2015年開発目標策定に向けたスケジュール
2
ポストMDGの主要課題
現行MDGsを基礎とし,その経験と教訓を土台に 簡素・明快さを保つ(目標の整理・統合も)。 貧困撲滅を中心に(持続可能な開発にも配慮)。
成長・雇用に光を当てる 成長・雇用は富を創出する源。 質の高い成長(グリーン・包摂的成長)を目指す。
国内格差の拡大に着目 世界の貧困層の約4分の3が中所得国に居住。 衡平性・包摂性が鍵。
この10年間の国際社会の変化への対応 人間の安全保障を指導理念の一つに位置づける。 保健,教育等の主要分野で課題・指標を改善。
※保健ではユニバーサル・ヘルス・カバレッジを重視。 防災,食料安全保障・栄養など新たな課題に対処。 民間セクターの関与。新興国,NGOなどの役割。
途上国自身の努力(オーナーシップ)を推進 ガバナンス強化・途上国内の資源の動員の促進。
野心的かつ動員力のある目標策定を主導。
日本の技術の活用。
日本企業の進出先であるアジアも重視。
日本らしい支援と新たなパートナーシップの確立。
開発効果の向上。脆弱国にも配慮。
3
MDGsからポスト2015年開発目標へ
国際社会の開発に関する議論において、従来の貧困撲滅に加えて、新たな視点や課題が俎上に
特に持続可能な開発を貧困撲滅と並ぶ中核的概念に据えるという考え
MDGsは国連ミレニアム・サミットで採択された首脳宣言に基づいて国連事務局が作成したのに対し、ポスト2015年開発目標は加盟国間の交渉を経て決定
MDGsは途上国の開発に重点が置かれているのに対し、持続可能な開発は先進国も対象となる概念
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2 「持続可能な開発」概念の変遷
(1)ブルントラント委員会
「環境と開発に関する世界委員会」(委員長:ブルントラント・ノルウェー首相(当時))が1987年に公表した報告書「Our Common Future」の中心的な考え方として持続可能な開発の概念を打ち出した。
「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」
開発と環境を互いに反するものではなく共存し得るものとしてとらえ、環境保全を考慮した節度ある開発が重要であるとの考え方に立つもの。
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2 「持続可能な開発」概念の変遷
(2)ヨハネスブルグ・サミット
「持続可能な開発に関する世界首脳会議」が2002年にヨハネスブルグ(南アフリカ)で開催。
成果文書として採択された「持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言」において、①経済開発、②社会開発、③環境保護が持続可能な開発の3本の柱として規定される。
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2 「持続可能な開発」概念の変遷
(3)リオ+20
「国連持続可能な開発会議」が2012年にリオデジャネイロ(ブラジル)で開催。
成果文書「The Future We Want」においても、持続可能な開発の3側面(経済、社会、環境)を確認。
この3側面をバランス良く取り入れた「持続可能な開発目標(SDGs)」の策定を決定。また、SDGsはポスト2015年開発目標に統合されることを決定。SDGsを策定する「オープンワーキンググループ」の設置を決定。
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2 「持続可能な開発」概念の変遷(4)ポスト2015年開発目標に向けた議論
ハイレベルパネル報告書(2013年5月)「持続可能な開発を中心に据える。…社会的、経済的、環境的行動を統合して動員することによって初めて、不可逆的に貧困を撲滅することができる。」
パネルとして例示的目標体系案(12の目標と54のターゲット案)を提示。
目標1 :貧困の撲滅(指標に防災を含む。)目標2 :女児と女性の能力強化とジェンダー平等の実現目標3 :質の高い教育と生涯学習の提供目標4 :健康な人生の実現(説明でユニバーサル・ヘルス・カバレッジに言及)目標5 :食料安全保障と良好な栄養状態の確保目標6 :水・衛生への普遍的なアクセスの達成目標7 :持続可能なエネルギーの確保目標8 :雇用,持続可能な生計及び衡平な成長の創出目標9 :天然・自然資源の持続可能な管理目標10:良い統治と実効的な制度・機構の確保目標11:安定的で平和的な社会の構築目標12:開発に資するグローバルな環境整備と長期的資金の動員 8
国連事務総長報告「万人に尊厳ある生活を」(2013年8月)
「これまでの議論において、持続可能な開発を中心とした、…すべての国に適用可能な開発アジェンダの重要性が指摘されている。」
MDGs特別イベント首脳成果文書(2013年9月)
「我々は、持続可能な開発の三つの側面をバランス良く統合する一貫したアプローチの必要性を強調する。」
2 「持続可能な開発」概念の変遷
9
3 ポスト2015年開発目標に向けた日本のビジョン
SDGsもポスト2015年開発目標も、持続可能な開発の三つの柱(経済・社会・環境)をカバーする政策目標を設定することが必要
現行のMDGsは一定の成果を挙げたが、課題も(特に格差の拡大)
貧困の撲滅、持続可能な開発、格差の拡大への対応いずれの観点からも、人間の安全保障の視点が重要
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3 ポスト2015年開発目標に向けた日本のビジョン
人間の安全保障
人間一人ひとりに着目し、保護と能力強化を通じ、個人が持つ豊かな可能性を実現するという概念
開発の陰で格差が拡大した結果、取り残された脆弱層に焦点を当てることが重要
人間中心で包摂的なアプローチ、個人の保護と能力強化(強靱性の構築)といった人間の安全保障の理念・要素が、ポスト2015年開発目標に反映されることが重要
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65歳以上の世界人口 2000
1212
65歳以上の世界人口 2030:高齢化社会
1313
出生時の平均寿命の推移(1900~2008年)
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
80
85
Life
expe
ctanc
y (y
ears)
1900 1920 1940 1960 1980 2000Year
AustraliaUKGermanyFranceItalySwedenCanadaUSAJapan (1947-2008)Japan (1900-1936)
25
30
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Life
exp
ecta
ncy
(yea
rs)
1900 1920 1940 1960 1980 2000Year
AustraliaUKGermanyFranceItalySwedenCanadaUSAJapan (1947-2008)Japan (1900-1936)
男性 女性
出典: ランセット日本特集号 Population Health 14
死亡原因予測(2004~2030)
0
2
4
6
8
10
12
2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030
Deat
hs (m
illio
ns)
Updated from Mathers and Loncar, PLoS Medicine, 2006
癌
脳卒中
出産
交通事故
HIV/エイズ
結核
マラリア
急性呼吸器感染症
虚血性心疾患
1515
男性の平均寿命と健康寿命はそれぞれ、約70歳と80歳。また女性のそれは74歳と86歳で、男女とも約10年くらいの差があります。つまり、これは介護状態や寝たきりになる期間が10年くらいあることを意味します。
60 65 70 75 80 85 90(歳)
70.4279.55
平均寿命と健康寿命の差
■平均寿命■
86.3073.62
男性
女性
縮めたい!約10年の平均寿命と健康寿命の差
[平均寿命と健康寿命の差]
9.13年
12.68年健康寿命(日常生活に制限のない期間)
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3 ポスト2015年開発目標に向けた日本のビジョン
【日本の取組例:保健】
(1)「国際保健外交戦略」発表(2013年5月) 国際的な保健分野の取組を我が国外交の重要課題と位置づけ、
世界の健康課題の解決に向けて関係省庁及び官民が一体となって取り組むことを通じ、日本に対する国際社会の信頼を高めていくことを関係閣僚間で決定。
人間の安全保障の理念を具現化する上で不可欠な分野として保健を位置づけ、世界で最も優れた健康長寿社会を達成している日本の優位性を活かし、世界の全ての人が基礎的保健医療サービスを受けられること(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:UHC)を推進することを掲げる。
二国間援助のより効果的な実施、国際機関等が行う取組との戦略的な連携の強化、国内の体制強化と人材育成、アフリカにおけるMDGs達成に向けた支援の継続などに取り組む。
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3 ポスト2015年開発目標に向けた日本のビジョン
(2)TICAD Vにおける発信(2013年6月)
第5回アフリカ開発会議(TICAD V)において、MDGsの達成に向けた更なる取組を進めるとともに、UHCの推進に貢献することを発信。
開会式における安倍総理オープニングスピーチ「日本では、少し健康を害しても、誰もが気楽に、病院へ行ける制度を、築きあげています。そんな、日本の制度と経験を、アフリカに生かしたいと思います。万人にとっての、保健医療、つまり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、UHCの推進です。…民間と、政府、まさしくPPPで、日本の外交戦略として、UHCを進めたいのです。私は、「UHC」を、これから、「ジャパン・ブランド」にしてしまうつもりです。」
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3 ポスト2015年開発目標に向けた日本のビジョン
(3)国際的医学雑誌『ランセット』安倍総理寄稿(2013年9月)
「我が国の国際保健外交戦略-なぜ今重要か-」
①多様化する世界の保健ニーズに対応する上で、全ての人々が基礎的保健医療サービスを受けられること(UHC)を目指し、包括的な対策が重要。
②我が国は、5月に国際保健外交戦略を策定し、保健を外交の柱の一つと位置付け、UHCを推進している。
③我が国は、健康長寿社会を達成した経験を活かし、成熟国家として世界の共通課題の解決に貢献していく。
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3 ポスト2015年開発目標に向けた日本のビジョン
(4)国連総会での発信(2013年9月)
一般討論演説において、安倍総理より、(1)女性を対象とする保健医療分野の取組に力を加える、(2)ポストMDGsにおいてフォーカスを広げ、UHCを推進する旨発言。
MDGs特別イベントに安倍総理が出席し、ポスト2015年開発目標においては人間の安全保障を指導理念として極度の貧困の撲滅を目指すべきであり、UHCや防災の主流化を特に重視する旨発信。
9月25日、サイドイベント「ポスト2015年:保健と開発」を開催。安倍総理より、ポスト2015年開発目標におけるUHCの主流化の重要性を発信。
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