オペラ座が作るパリの心象風景
—建築・演目・幻影— 澤田 肇
ガルニエ宮
バスティーユオペラ
歴代のオペラ座の主な所在地:サル・モンタンシエ(1794〜1820)→サル・ル・ペルティエ(1821〜1873)→ガルニエ宮(1875〜)
オペラ座は権力者の関心事 皇帝ナポレオン1世(在位:1804-1814, 1815)
1807年
・オペラ座の財政破綻を救済
・「観劇部門担当長官」の設置
・オペラ座とオペラ・コミック座の
上演作品の区分を指示
サル・モンタンシエ
ナポレオンが主役ともなったオペラ座
・19世紀初頭
の人気ある通り
<リシュリュー
街>
・正面は国立
図書館
1811年にもっとも人気を集めた作品
題材は神話や歴史から
1 アルミード
2 サビニの女たちの略奪
3 ペルセウスとアンドロメダ
4 トラヤヌスの勝利
5 バヤデール
• ナポレオンは新古典主義の擁護者
• 時代の主要な芸術思想はナポレオンの政治的プロパガンダに好都合
ジャック=ルイ・ダヴィッド『サビニの女たちの仲裁 』 (1799)
ベリー公爵暗殺事件(1820) シャルル10世(在位:1824-1830)の子
フランス・オペラの黄金時代
サル・ル・ペルティエ
サル・ル・ペルティエ初演の作品(オペラ)
ダニエル・オベール『ポルティチの唖娘』(1828)
ジョアキーノ・ロッシーニ『ギヨーム・テル』(1829)
ジャコモ・マイヤベーア『悪魔のロベール』(1831)
フロマンタル・アレヴィ『ユダヤ女』(1835)
ガエタノ・ドニゼッティ『ラ・ファヴァリット』(1840)
ジュゼッペ・ヴェルディ『シチリアの晩鐘』(1855)
アンブロワーズ・トマ『ハムレット』(1868)
シャルル・グノー『ファウスト』(1869)
エドガール・ドガ 『悪魔のロベール』 (1871)
サル・ル・ペルティエ初演の作品(バレエ)
フィリッポ・タリオーニ『ラ・シルフィード』(1832)
ジョゼフ・マジリエ『恋する悪魔』(1840)
ジャン・コラーリ、ジュール・ペロ『ジゼル』(1841)
ジャン・コラーリ『ラ・ペリ』(1843)
ポール・フーシェ『パキータ』(1846)
サン=ジョルジュ『海賊』(1856)
アルテュール・サン=レオン『泉』(1866)
シャルル・ニュイテール『コッペリア』(1870)
オーギュスト・ローレ『王立音楽アカデミー劇場』(1864) →『ジゼル』?
ヨーロッパの首都としての名声の確立
ーロマン主義の全面的な開花以来ー
・文学:ユゴーの戯曲「エルナニ」(1830)
・美術:ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」(1830)
・音楽:ベルリオーズ「幻想交響曲」(1830)
・オペラ:マイヤーベーア「悪魔のロベール」(1831)
・バレエ:フィリッポ・タリオーニ「ラ・シルフィード」(1832)
王政復古(1814-1830)から7月王政(1830-1848)
19世紀の音楽の首都はパリ
外国人も音楽文化・舞台芸術を創る
ヨーロッパの首都にふさわしいオペラ座の建設 →見果てぬ夢?
パリ大改造
ナポレオン3世とオスマン (第2帝政皇帝在位: (セーヌ県知事
1852-1870) 在職:1853-1870)
国威と栄華の発揚を見せつける
スペクタクルとしての都市パリ
・広場から放射線状に
・美しく広い大通り
・建物の高さ制限
・上下水道の整備
(エトワール広場)
スペクタクル都市パリが提供する 特別なイベント=万国博覧会
1867年のパリ万博入場者1500万人
新オペラ座建設計画の実行
・1855年:パリ万国博覧会
・1858年:ナポレオン3世暗殺
未遂事件
・1860年:設計案の公募が始まる
・1862年:シャルル・ガルニエ案が
採択される
・1875年1月:落成式
パリという劇場の中の劇場 景観整備との融合
カミーユ・
ピサロ
『オペラ座
大通り』
(1898)
外国人向けパリ案内書
アドルフ・ジョアンヌ『パリ・ガイド』
アシェット、1863.
ガイドブックの中の新オペラ座 完成前から神話的存在に
世界の首都であることを伝える風景 ガルニエ宮とオペラ座大通り
5つの帝室劇場
オペラ座の1回分の料金
• 2階の正面桟敶、舞台横の前桟敶が12フラン。
• 1階平土間席、舞台横のボックス席が10フラン。(途中いろいろ)
• 5階の側面桟敶、階段席および6階の正面桟敶が2
フラン50。
オペラ座賛歌
テオフィル・ゴーティエ (1811-1872)
オペラ座、それは現代文明の総本山であり、そこに芸術、奢侈、優雅、高級な生活のあらゆる洗練されたものが集結するのだ。[…]新しいオペラ座は、
パリのもっとも美しい建造物の仲間入りをするだろうし、大都市の七不思議の一つに数えられるだろう。この巨大な建物、舞台の上の屋根裏は高さでノートル・ダム寺院の塔に匹敵するのだ、にあっては、すべてが目新しく、工夫がこされ、わざわざ発明されたものだ。バロック的というのではなく、すべてが独創的なのである。(1867年8月7日付け「ル・モニトゥール・ユニヴェルセル」紙)
社交と快楽 夢と憧れの地
ルノワールの描くオペラ座の桟敶 (1880)
アンリ・ルモワーヌの
写真(1900頃)
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